(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るチャンネル数変換装置10の構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るチャンネル数変換装置10は、番組を制作する制作側の装置、あるいは、番組音声を受信して再生するテレビなどの受信装置(放送受信機)に組み込まれ、チャンネル数Nで制作された番組音声を制作時とは異なるチャンネル数Mの信号に変換するチャンネル数変換を行うものである。
【0016】
図1に示すチャンネル数変換装置10は、チャンネル分配手段11と、信号レベル補正値算出手段12と、チャンネル数変換手段13とを備える。
【0017】
チャンネル分配手段11には、チャンネル数Nで制作された番組音声であるチャンネル数変換前の音声信号(入力信号)と、主要チャンネルを識別するためのチャンネル識別信号とが入力される。ここで、主要チャンネルとは、番組音声を構成するチャンネルの中で、チャンネル数変換の前後で信号レベルを調整しないチャンネル(チャンネル群)である。主要チャンネルには、例えば、センターチャンネル(チャンネルC)、レフトチャンネル(チャンネルL)、ライトチャンネル(チャンネルR)など、主要な情報が記録されるチャンネルが割り当てられる。また、主要チャンネルには、例えば、番組が再生される際に、番組を表示する表示装置の周辺に配置されるスピーカにより再生されるチャンネルが割り当てられる。
【0018】
チャンネル分配手段11は、入力信号を構成するチャンネルの中から、主要チャンネル識別信号に示されるチャンネルを主要チャンネルとして抽出する。そして、チャンネル分配手段11は、チャンネル数Nの入力信号(チャンネル数変換前の音声信号)と、抽出した主要チャンネル(主要チャンネル群)とを信号レベル補正値算出手段12に出力する。
【0019】
信号レベル補正値算出手段12には、チャンネル数変換前の音声信号と、主要チャンネル群とが、チャンネル分配手段11から入力される。また、信号レベル補正値算出手段12には、チャンネル数変換に用いるチャンネル数変換係数(N×M)と、チャンネル数変換前の各チャンネル(N個)とチャンネル数変換後の各チャンネル(M個)とを再生するスピーカの位置情報であるスピーカ位置情報が入力される。
【0020】
信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル数変換前の音声信号、主要チャンネル群、チャンネル数変換係数およびスピーカ位置情報を用いて、チャンネル数変換前の各チャンネルのうち、主要チャンネル以外のチャンネル、すなわち、チャンネル数変換の前後で信号レベルを調整するチャンネル(以下、通常チャンネルと称する)の信号レベル補正値を算出する。そして、信号レベル補正値算出手段12は、算出した信号レベル補正値をチャンネル数変換手段13に出力する。信号レベル補正値の算出方法の詳細については後述する。
【0021】
チャンネル数変換手段13には、チャンネル数Nの入力信号と、主要チャンネル識別信号と、チャンネル数変換係数とが入力される。また、チャンネル数変換手段13には、信号レベル補正値が信号レベル補正値算出手段12から入力される。
【0022】
チャンネル数変換手段13は、入力信号を構成するチャンネルの中から、主要チャンネル識別信号に示される主要チャンネル以外のチャンネルを通常チャンネルとして抽出し、抽出した通常チャンネルの音声信号に信号レベル補正値を乗算して、通常チャンネルの信号レベルを補正する。そして、チャンネル数変換手段13は、主要チャンネルと信号レベルを補正した通常チャンネルとにチャンネル数変換係数を乗算してチャンネル数変換を行い、チャンネル数変換後の音声信号(Mチャンネルの音声信号)を出力信号として出力する。
【0023】
なお、
図1においては、主要チャンネル識別信号、スピーカ位置情報、チャンネル数変換係数がそれぞれ、チャンネル数変換装置10の外部から入力される例を用いて説明したが、これに限られるものではない。チャンネル数変換の前後のチャンネル数や、各チャンネルの音声信号を再生するスピーカの位置などが既知である場合には、スピーカ位置情報やチャンネル数変換係数を予め、チャンネル数変換装置10で記憶しておいてもよい。また、各チャンネルの音声信号を再生するスピーカの位置などが既知である場合には、どのチャンネルを主要チャンネルと設定すべきかを予め決定することができるので、特定のチャンネルを予め主要チャンネルとして設定し、その主要チャンネルを示す主要チャンネル識別信号をチャンネル数変換装置10で記憶しておいてもよい。
【0024】
次に、信号レベル補正値の算出方法について説明する。
【0025】
まず、信号レベル補正値の算出方法の概要を説明すると、信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル数変換係数を用いて、主要チャンネルおよび入力信号を構成する全チャンネルそれぞれのチャンネル数変換を行う。次に、信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値(第1の平均ラウドネス値)およびチャンネル数変換後の全チャンネルの平均ラウドネス値(第2の平均ラウドネス値)を算出する。そして、信号レベル補正値算出手段12は、目標ラウドネス値とチャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値との差が、チャンネル数変換後の全チャンネルの平均ラウドネス値とチャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値との差と一致するように、通常チャンネルの信号レベル補正値を算出する。
【0026】
以下では、信号レベル補正値の算出方法をより詳細に説明する。
【0027】
チャンネル数変換に用いるチャンネル数変換係数の一例を
図2に示す。チャンネル数変換前のチャンネル21を7つのチャンネルC,L,R,SL,SR,BL,BRとし、チャンネル数変換後のチャンネル22を5つのチャンネルC’,L’,R’,Ls’,Rs’とすると、
図2に示す5×7のチャンネル数変換係数23をチャンネル数変換前のチャンネル21に乗じることで、チャンネル数変換後のチャンネル22が算出される。
図2に示す例では、側方のチャンネルSL,SRが、前方のチャンネルL’,R’および後方のチャンネルLs’,Rs’に割り振られる。
【0028】
信号レベル補正値算出手段12は、
図2に示す式に基づき、主要チャンネルおよび入力信号を構成する全チャンネルそれぞれのチャンネル数変換を行う。次に、信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値およびチャンネル数変換後の全チャンネルの平均ラウドネス値を算出する。
【0029】
ここで、非特許文献1において、チャンネルの方向に応じて平均ラウドネス値への寄与が異なるように、各チャンネルに重み係数(方向別重み係数)を乗じることが規定されている。
【0030】
図3Aは、チャンネル数変換後のチャンネルの配置および各チャンネルの方向別重み係数を示す図である。非特許文献1では、後方のチャンネルLs,Rsが、前方のチャンネルよりも平均ラウドネス値への寄与が大きくなるように規定されている。例えば、
図3Aに示すように、後方のチャンネルRsの重み係数G
Rsが1.414であるのに対し、前方のチャンネルCの重み係数G
c、チャンネルRの重み係数G
Rは1.0である。
【0031】
図3Bは、チャンネル数変換前のチャンネルの配置および各チャンネルの方向別重み係数を示す図である。非特許文献1では、側方のチャンネルSL,SRが、前方および後方のチャンネルよりも平均ラウドネス値への寄与が大きくなるように規定されている。例えば、
図3Bに示すように、側方のチャンネルSRの重み係数G
SRが1.414であるのに対し、前方のチャンネルCの重み係数G
c、チャンネルRの重み係数G
Rおよび後方のチャンネルBRの重み係数G
BRは1.0である。
【0032】
図3Cは、チャンネル数変換の前後の重み係数の違いを示す図である。
【0033】
図2に示すチャンネル数変換係数23を用いた場合、
図3Cに示すように、重み係数が大きいチャンネルSL,SRが、重み係数が大きくないチャンネルL’,R’に割り振られ、重み係数が大きくないチャンネルBL,BRが、重み係数が大きいチャンネルLs’,Rs’に割り振られる。そのため、チャンネル数変換を行うことによって、信号レベルの増減が無くても、平均ラウドネス値が変化する。
【0034】
図4は、平均ラウドネス値の測定法(算出法)を模式的に示す図である。
【0035】
まず、各チャンネル(
図4においては、5チャンネル)について、400ms区間の音声信号を切り出し、切り出した音声信号に対して、フィルタ処理が行われる。次に、フィルタ処理後の各チャンネルの音声信号の二乗平均が算出される。次に、各チャンネルの音声信号の二乗平均の値に対して各チャンネルに定められた重み係数(方向別重み係数)を乗じる。なお、各チャンネルの重み係数は、スピーカ位置情報から求めることができる。そして、重み係数を乗じた各チャンネルの値を加算する加算処理が行われ、加算値Ztが算出される。
【0036】
このとき、各時刻における瞬間的なラウドネス値は、以下の式(1)に基づき算出することができる。
Lt=−0.691+10log
10Zt(LKFS) ・・・式(1)
【0037】
式(1)に基づき算出されたLtが絶対閾値(−70LKFS)や相対閾値(平均値より10LKFSだけ小さい値)を下回る場合、聴感上、番組全体の音の大きさに寄与しない無効な区間として削除した後、残りの区間(有効な区間)の平均が平均ラウドネス値として算出される。番組制作においては、この平均ラウドネス値が目標ラウドネス値(−24LKFS)となるように各チャンネルの信号レベルが調整されている。
【0038】
図5は、チャンネル数変換の前後の各チャンネルの信号レベルの一例を示す図である。
図5においては、
図5(a)に示すチャンネル数変換前の11チャンネルの音声信号が、
図5(b)に示すように、チャンネル数変換により5チャンネルの音声信号に変換される例を示す。
【0039】
図5に示す例では、チャンネル数変換前のチャンネルCは、チャンネル数変換後のチャンネルC’に割り振られる。チャンネル数変換前のチャンネルLは、チャンネル数変換後のチャンネルL’に割り振られる。チャンネル数変換前のチャンネルRは、チャンネル数変換後のチャンネルR’に割り振られる。チャンネル数変換前のチャンネルSLは等分され、チャンネル数変換後のチャンネルL’とチャンネルLs’とに割り振られる。チャンネル数変換前のチャンネルSRは等分され、チャンネル数変換後のチャンネルR’とチャンネルRs’とに割り振られる。チャンネル数変換前のチャンネルBLは、チャンネル数変換後のチャンネルLs’に割り振られる。チャンネル数変換前のチャンネルBRは、チャンネル数変換後のチャンネルRs’に割り振られる。チャンネル数変換前のチャンネルTpLは、チャンネル数変換後のチャンネルL’に割り振られる。チャンネル数変換前のチャンネルTpRは、チャンネル数変換後のチャンネルR’に割り振られる。チャンネル数変換前のチャンネルTpBLは、チャンネル数変換後のチャンネルLs’に割り振られる。また、チャンネル数変換前のチャンネルTpBRは、チャンネル数変換後のチャンネルRs’に割り振られる。ここで、チャンネル数変換前の各チャンネルの信号レベルの加算値(
図4に示す加算値Zt)は、−24LKFSに対応する値である。
【0040】
チャンネル数変換前のチャンネルBL,BRの重み係数が1.0であり、チャンネル数変換によりチャンネルBL,BRが割り振られるチャンネルLs’,Rs’の重み係数が1.414である場合(チャンネル数変換後の重み係数の方が大きい場合)、チャンネル数変換後の全体の信号レベルの加算値が、重み係数が大きくなる分に対応する差分difの分だけ、チャンネル数変換前の全体の信号レベルの加算値よりも小さくなるように各チャンネルの信号レベルを調整する必要がある。
【0041】
ここで、チャンネル数変換後の全体の信号レベルを調整する方法として、チャンネル数変換前の全てのチャンネルの信号レベルを減じる方法(
図5(c))が考えられる。しかしながら、この方法では、主要な情報が記録されているチャンネル(例えば、チャンネルC,L,R)の信号レベルも小さくなってしまう。
【0042】
また、チャンネル数変換後の全体の信号レベルを調整する方法として、チャンネル数変換によりチャンネルC’,L’,R’に割り振られるチャンネルの信号レベルは一定のまま、側方のチャンネルLs’,Rs’に割り振られるチャンネルの信号レベルを減じる方法(
図5(d))が考えられる。なお、
図5において、右斜め上がり対角線のハッチングを付したチャンネルは、チャンネル数変換の前後で信号レベルが一定のチャンネルであることを示す。
【0043】
この方法では、本来、チャンネルSLが等分されるべきチャンネルLs’とチャンネルL’とで、チャンネルSLの信号レベルが変わってしまい、また、チャンネルSRが等分されるべきチャンネルRs’とチャンネルR’とで、チャンネルSRの信号レベルが変わってしまう。その結果、チャンネルSL,SRの音声信号が本来聞こえると想定される方向とは異なる方向から聞こえてしまう。
【0044】
そこで、本実施形態においては、信号レベル補正値算出手段12は、
図5(e)に示すように、チャンネル数変換前の主要チャンネル(例えば、チャンネルC,L,R)の信号レベルは固定のまま、残りのチャンネル(通常チャンネル)の信号レベルを減ずることで、全体の信号レベルを調整する。すなわち、信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル数変換後の全体の信号レベルが目標値となるように通常チャンネルの信号レベルを調整する信号レベル補正値を算出する。
【0045】
より具体的には、信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル数変換後の主要チャンネルの加算値Zaとその平均ラウドネス値La(第1の平均ラウドネス値)およびチャンネル数変換後の全チャンネルの加算値Zbとその平均ラウドネス値Lb(第2の平均ラウドネス値)を,
図4を参照して説明した処理を行って算出する。そして、信号レベル補正値算出手段12は、目標ラウドネス値(例えば、−24LKFS)をLoとし、それに対応する加算値をZoとすると、以下の式(2)に基づき、信号レベル補正値C
Tを算出する。
C
T=((Zo−Za)/(Zb−Za))
1/2 ・・・式(2)
【0046】
すなわち、信号レベル補正値算出手段12は、入力されたチャンネル数変換係数を用いて、主要チャンネルおよび全チャンネルそれぞれのチャンネル数変換を行う。次に、信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値La(第1の平均ラウドネス値)、および、チャンネル数変換後の全チャンネルの平均ラウドネス値Lb(第2の平均ラウドネス値)を算出する。そして、信号レベル補正値算出手段12は、目標ラウドネス値とチャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値Laとの差が、チャンネル数変換後の全チャンネルの平均ラウドネス値Lbとチャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値Laとの差と一致するように、通常チャンネルの信号レベル補正値C
Tを算出する。
【0047】
なお、
図4を参照して説明したように、400ms毎の音声信号の各チャンネルの加算値が算出され、その加算値から式(1)に基づき瞬間的なラウドネス値が算出される。そして、その瞬間的なラウドネス値から平均ラウドネス値が算出される。ラウドネス値は対数であるため、算術平均を求めるためには加算値を用いる必要がある。チャンネル数変換後の主要チャンネルの加算値の平均Zaは平均ラウドネス値Laに対応し、チャンネル数変換後の全チャンネルの加算値の平均Zbは平均ラウドネス値Lbに対応するものである。したがって、式(2)においては、加算値Za,Zb,Zoを用いて信号レベル補正値C
Tを算出しているが、これは、平均ラウドネス値La,Lbおよび目標ラウドネス値Loを用いて信号レベル補正値C
Tを算出することと等価である。
【0048】
なお、本実施形態においては、目標ラウドネス値と平均ラウドネス値Laとの差が、平均ラウドネス値Lbと平均ラウドネス値Laとの差と一致するように、信号レベル補正値C
Tを算出する例を用いて説明するが、これに限られるものではない。例えば、信号レベル補正値算出手段12は、目標ラウドネス値と平均ラウドネス値Laとの差と、平均ラウドネス値Lbと平均ラウドネス値Laとの差との差が所定の範囲内となるように、信号レベル補正値C
Tを算出してもよい。
【0049】
チャンネル数変換手段13は、
図6に示すように、通常チャンネル(チャンネルSL,SR,BL,BR)の音声信号に信号レベル補正値C
Tを乗算して、通常チャンネルの信号レベルを補正し、主要チャンネルと信号レベルを補正した通常チャンネルとにチャンネル数変換係数を乗算してチャンネル数変換を行う。こうすることで、番組音声を制作時とは異なるチャンネル数に変換する際に、変換前の主要なチャンネルの信号レベルを一定に保ちつつ、番組全体の平均ラウドネス値を目標ラウドネス値に合わせることができる。
【0050】
なお、チャンネル間で相関がある場合や、信号レベルの増減で閾値(絶対閾値、相対閾値)を超える区間が生じる場合など、信号によっては想定以上の信号レベルの増減があり、一度の計算では、所望の誤差範囲内に平均ラウドネス値が収まらない場合(目標ラウドネス値と実際の平均ラウドネス値との差が所定値以下とならない場合)がある。この場合、信号レベル補正値算出手段12は、一度目の調整結果を新たな入力信号として、再度、同様の計算を行い、所望の誤差範囲内に平均ラウドネス値が収まるまで信号レベル補正値C
Tの算出を繰り返す。
【0051】
図7は、本実施形態に係るチャンネル数変換装置10の動作を示すフローチャートである。
【0052】
チャンネル分配手段11は、音声信号が入力されると、主要チャンネル識別信号に基づき、入力された音声信号を構成するチャンネルの割り振りを行う(ステップS101)。具体的には、チャンネル分配手段11は、入力された音声信号を構成するチャンネルの中から、主要チャンネル識別信号に示されるチャンネルを主要チャンネルとして抽出する。そして、チャンネル分配手段11は、入力された音声信号を構成する全チャンネルおよび抽出した主要チャンネルを信号レベル補正値算出手段12に出力する。
【0053】
信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル分配手段11から出力された主要チャンネルのチャンネル数変換を行い(ステップS102)、チャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値を算出する(ステップS103)。また、信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル分配手段11から出力された全チャンネルのチャンネル数変換を行い(ステップS104)、チャンネル数変換後の全チャンネルの平均ラウドネス値を算出する(ステップS105)。
【0054】
次に、信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値と、チャンネル数変換後の全チャンネルの平均ラウドネス値と、目標ラウドネス値とを用いて、式(2)に基づき、信号レベル補正値C
Tを算出する(ステップS106)。
【0055】
信号レベル補正値算出手段12は、音声信号を構成するチャンネルのうち、主要チャンネル以外の通常チャンネルに、算出した信号レベル補正値C
Tを乗算して、通常チャンネルの信号レベルを補正する(ステップS107)。次に、信号レベル補正値算出手段12は、主要チャンネルおよび信号レベルを補正した通常チャンネルのチャンネル数変換を行い(ステップS108)、チャンネル数変換後の全チャンネルの平均ラウドネス値を算出する(ステップS109)。
【0056】
次に、信号レベル補正値算出手段12は、算出した平均ラウドネス値と目標ラウドネス値との誤差が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS110)。
【0057】
算出した平均ラウドネス値と目標ラウドネス値との誤差が閾値未満であると判定した場合には(ステップS110:Yes)、信号レベル補正値算出手段12は、算出した信号レベル補正値C
Tをチャンネル数変換手段13に出力する。チャンネル数変換手段13は、音声信号を構成するチャンネルのうち、主要チャンネル以外の通常チャンネルに、信号レベル補正値算出手段12から出力された信号レベル補正値C
Tを乗算して、通常チャンネルの信号レベルを補正する。そして、チャンネル数変換手段13は、主要チャンネルおよび信号レベルを補正した通常チャンネルのチャンネル数変換を行い、出力する。
【0058】
算出した平均ラウドネス値と目標ラウドネス値との誤差が閾値未満でないと判定した場合には(ステップS110:No)、信号レベル補正値算出手段12は、主要チャンネルと信号レベルを補正した通常チャンネルとを入力信号としてチャンネル分配手段11に出力する。信号レベル補正値算出手段12からの入力に応じて、チャンネル分配手段11は、チャンネルの割り振りを開始し、以下、ステップS101〜ステップS109の処理が、チャンネル数変換後の全チャンネルの平均ラウドネス値と目標ラウドネス値との差が閾値未満となるまで繰り返される。
【0059】
このように本実施形態によれば、チャンネル数変換装置10は、番組音声を構成する全チャンネルを、信号レベルを調整しない主要チャンネルと信号レベルを調整する通常チャンネルとに分配するチャンネル分配手段11と、主要チャンネルおよび全チャンネルそれぞれのチャンネル数変換を行い、チャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値(第1の平均ラウドネス値)およびチャンネル数変換後の全チャンネルの信号の平均ラウドネス値(第2の平均ラウドネス値)を算出し、目標ラウドネス値と第1の平均ラウドネス値との差と、第2の平均ラウドネス値と第1の平均ラウドネス値との差との差が、所定の範囲内となるように、通常チャンネルの信号レベル補正値を算出する信号レベル補正値算出手段12と、算出された信号レベル補正値により通常チャンネルの信号レベルを補正し、主要チャンネルおよび信号レベルの補正後の通常チャンネルを用いてチャンネル数変換を行うチャンネル数変換手段13と、を備える。
【0060】
チャンネル数変換前の主要チャンネルの信号レベルは固定のまま、目標ラウドネス値と第1の平均ラウドネス値との差と、第2の平均ラウドネス値と第1の平均ラウドネス値との差との差が、所定の範囲内となるように、通常チャンネルの信号レベルを補正することで、番組音声のチャンネル数変換を行う際に、変換前の主要なチャンネルの信号レベルを一定に保ちつつ、番組全体の平均ラウドネス値を目標ラウドネス値に合わせることができる
【0061】
なお、本実施形態においては、主要チャンネルは3つのチャンネル(チャンネルC,L,R)である例を用いて説明したが、これに限られるものではなく、例えば、
図5(f)に示すように、後方チャンネル(チャンネルBL,BR,TpBL,TpBR)以外の7つのチャンネルを主要チャンネルとしてもよい。
【0062】
図5(f)においては、信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル数変換の前後で、チャンネルBL,BR,TpBL,TpBR以外の、チャンネルC,L,R,SL,SR,TpL,TpRの信号レベルを一定とする。ここで、上述したように、チャンネルSLは、チャンネルL’とチャンネルLs’とに等分して割り振られる。また、チャンネルSRは、チャンネルR’とチャンネルRs’とに等分して割り振られる。
図5(f)に示すように、信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル数変換により複数のチャンネルに振られるチャンネルSL,SRの信号レベルを一定とする。すなわち、信号レベル補正値算出手段12は、チャンネル数変換により複数のチャンネルに割り振られるチャンネルの音声信号が、複数のチャンネルに、信号レベル調整の前後で同じ割合で割り振られるようにする。こうすることで、チャンネル数変換により複数のチャンネルに割り振られるチャンネルが、制作時とは異なる方向から聞こえることを防止することができる。
【0063】
また、本実施形態においては、主張チャンネルの信号レベルは、チャンネル数変換の前後で一定とした。しかしながら、チャンネル数変換により、空間的に別々の方向になった音が一箇所に集まることによってダイアログ(例えば、ナレーション)が聞きにくくなることもある。そこで、ダイアログを聞きやすくするために、主要チャンネルの信号レベルを予め定められた係数で増幅させた後に、通常チャンネルの信号レベルで全体の平均ラウドネス値を調整してもよい。
【0064】
また、本実施形態においては、音声信号を構成する全チャンネルを、信号レベルを調整しない主要チャンネルと信号レベルを調整する通常チャンネルという2群にチャンネルを分類する例を用いて説明したが、これに限られるものではない。例えば、信号レベルを変更するものの、その変更幅を制限した準主要チャンネルなどを設定し、3群以上にチャンネルを分類するようにしてもよい。
【0065】
また、上述したように、本実施形態に係るチャネル数変換装置10は、放送受信機に組み込まれてもよい。この場合、信号レベル補正値算出手段12は、目標ラウドネス値の代わりに、チャンネル数変換前の平均ラウドネス値を用いて、信号レベル補正値C
Tを算出してもよい。
【0066】
具体的には、信号レベル補正値算出手段12は、番組の開始時刻から所定時刻(信号レベル補正値C
Tを算出するタイミング)までの平均ラウドネス値(チャンネル数変換前の全チャンネルの平均ラウドネス値)を記録する。そして、信号レベル補正値算出手段12は、記録したチャンネル数変換前の平均ラウドネス値とチャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値La(第1の平均ラウドネス値)との差と、チャンネル数変換後の全チャンネルの平均ラウドネス値Lb(第2の平均ラウドネス値)とチャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値La(第1の平均ラウドネス値)との差との差が、所定の範囲内となるように、所定時刻における信号レベル補正値C
Tを算出する。
【0067】
上述したように、番組全体を通しての平均ラウドネス値が、目標ラウドネス値(−24LKFS)の許容範囲内(±1dB)に収まるように運用規定が定められている。したがって、番組の開始時刻から所定時刻までの平均ラウドネス値とチャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値Laとの差と、チャンネル数変換後の全チャンネルの平均ラウドネス値Lbとチャンネル数変換後の主要チャンネルの平均ラウドネス値Laとの差との差が所定の範囲内となるように、信号レベル補正値C
Tを算出することによっても、チャンネル数変換前の主要なチャンネルの信号レベルを一定に保ちつつ、番組(生放送の番組を含む)全体の平均ラウドネス値を目標ラウドネス値に合わせることができる。
【0068】
なお、番組の開始時刻から所定時刻までの各時刻での平均ラウドネス値は、例えば、放送局から送信される信号に含ませることができる。この場合、放送受信機は、その信号を受信することで、番組の開始時刻から所定時刻までの平均ラウドネス値を取得することができる。また、放送受信機がインターネットなどのネットワークに接続されている場合には、放送受信機は、ネットワークを介して、番組の開始時刻から所定時刻までの平均ラウドネス値を取得してもよい。
【0069】
本発明に係るチャンネル数変換装置10にて行われる方法は、コンピュータに実行させるためのプログラムに適用してもよい。また、そのプログラムを記憶媒体に格納することも可能であり、ネットワークを介して外部に提供することも可能である。
【0070】
本発明を図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ブロックあるいはステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のブロックあるいはステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。