(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の乳濁液状調味料を詳細に説明する。
【0013】
<本発明の特徴>
本発明は、平均粒子径が小さい加工澱粉と当該澱粉よりも平均粒子径の大きい加工澱粉とを併用し、乳濁液状調味料を特定条件で粒度分布を測定した際に、2種類の加工澱粉に相当するピークを有し、その累積頻度が特定の比率であることにより、低粘度、低脂質にも拘わらず、乳化液状調味料と同等の白濁感を有し、更にサラダ等食品にかける時の物性を乳化タイプと同等にすることができる。
【0014】
<乳濁液状調味料>
本発明の乳濁液状調味料は、低粘度、低脂質であるにも拘わらず、乳化された油滴に起因する白濁感、即ち乳化様の外観を有する調味料である。
このような本発明の乳濁液状調味料としては、具体的には、例えば、フレンチドレッシング、サウザンアイランドドレッシング、ゴマドレッシング等のJAS規格で定められる乳化液状ドレッシング類、カルボナーラソース、ホワイトソース等の各種乳化ソース類、胡麻だれ、味噌だれ等のタレ類等の油滴により白濁感を有する液状調味料と外観が類似する乳濁液状調味料が挙げられる。
【0015】
<粘度>
乳濁液状調味料の粘度は、本発明がガム質等の粘度調整に依らず、澱粉の沈降抑制技術に関するため、15Pa・s未満であり、更に13Pa・s以下、10Pa・s以下がよい。下限値は、特に限定されないが、乳化液状ドレッシングや乳化ソースと同程度の粘度が好ましいため、0.9Pa・s以上がよく、1Pa・s以上が更によい。
【0016】
<粘度の測定条件>
上記粘度の測定は、BH型粘度計で、品温25℃、回転数:10rpmの条件で粘度が0.7Pa・s未満のときローター:No.1、0.7Pa・s以上2.8Pa・s未満のときローターNo.2、2.8Pa・s以上7Pa・s未満のときNo.3、7Pa・s以上28Pa・s未満のときNo.4、28Pa・s以上のときをローターNo.5を使用し、測定開始後ローターが2回転した時の示度により算出した値である。
【0017】
<脂質含有量>
本発明の乳濁液状調味料は、脂質含有量が10質量%以下の乳濁液状調味料である。前記脂質含有量のとおり、低脂質にも拘わらず、乳化タイプと同様の白濁感を有する点が本発明の特徴である。
本発明の乳濁液状調味料の脂質含有量は、更に、8質量%以下、5質量%以下、3%質量以下、3質量%未満であるとよい。
【0018】
<脂質含有量の測定方法>
前記脂質含有量は、栄養表示基準(平成15年4月24日厚生省告示第176号)別表第2の第3卵記載のエーテル抽出法に準じて測定することができる。
【0019】
<ノンオイルの乳濁液状調味料>
脂質含有量が10質量%以下の低脂質の乳濁液状調味料のうち、ノンオイルの乳濁液状調味料とは、食用油脂を使用せず且つ脂質含有量が3質量%未満の乳濁液状調味料を言う。これは、JAS規格とドレッシング類の表示に関する公正競争規約に基づく。
【0020】
<低オイルの乳濁液状調味料>
低オイルの乳濁液状調味料は、上記ノンオイルの乳濁液状調味料以外の脂質含有量が10質量%以下の乳濁液状調味料をいう。
より具体的には、食用油脂を使用し且つ脂質含有量が10質量%以下、好ましくは8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、3質量%未満である乳濁液状調味料、又は食用油脂を使用せず且つ脂質含有量が3質量%以上10質量%以下、好ましくは8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、3質量%未満である乳濁液状調味料を低オイルの乳濁液状調味料という。
なお、低オイルの乳濁液状調味料のうち、食用植物油脂を配合する調味料は、油滴が生じる可能性があるため、後述の濁度及び体積基準粒度分布測定の際には、以下の前処理を行うとよい。
当該前処理は、低オイルの乳濁液状調味料を油相と水相に分離できる程度に遠心分離を行い、上澄みの食用油脂を除去した後、水相部分を均一攪拌する処理である。当該前処理後、食用油脂を使用しない乳濁液状調味料と同様に後述の濁度及び体積基準粒度分布を測定するものとする。
【0021】
<濁度>
乳濁液状調味料の濁度は、当該調味料が乳化様に見える程度の濁り具合がよく、更にその濁り具合が少なくとも後述の加工澱粉(a)に起因するものであるのがよい。
具体的には、乳濁液状調味料を清水で100倍希釈し、目開き150μmの篩を通過させた後の当該調味料の濁度が、25度以上であり、更に30度以上、35度以上であるとよい。上限値は、特に限定されるものではないが、95度以下がよく、90度以下であると更によい。
また、乳濁液状調味料を希釈及び篩通過等の処理を行なわずそのままの状態で測定した際の濁度は、75度以上、80度以上であると、よい。
【0022】
<濁度の測定条件>
上記濁度は、上水試験法中の積分球式光電光法に基づいた濁度計を用いて測定される。より具体的に、積分球式光電光法による濁度は、濁度=「拡散透過率」/「全光透過率」×100で表すことができる。なお、単位は「度」で表され、ポリスチレン系粒子懸濁液を標準液とした。また、測定には5mmのセルを用いた。例えば、WA2000N(日本電色工業株式会社)等の濁度計を用いることができる。
【0023】
<加工澱粉(a)>
本発明の乳濁液状調味料には、体積平均粒子径が3μm以上15μm以下の澱粉粒を有する加工澱粉(a)を含有する。当該加工澱粉(a)により乳濁液状調味料に白濁感を付与することができる。
【0024】
<加工澱粉(a)の体積平均粒子径>
加工澱粉(a)の体積平均粒子径は、白濁感を付与する観点から、15μm以下であり、10μm以下、8μm以下、8μm未満がよい。また、下限値は、3μm以上であり、5μm以上であるとよい。
【0025】
<体積平均粒子径の測定方法>
試料の調製:加工澱粉が無水換算で3質量%の水懸濁液を品温85℃まで達温させ、品温85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷させる。
体積平均粒子径の測定:上記調製した試料をレーザー回析式粒度分布測定装置により測定する。測定基準は体積とし、その他測定条件は常法に従って行う。
本発明の乳濁液状調味料は、その製造工程中に加熱殺菌工程があったとしても、調味料中の加工澱粉(a)及び加工澱粉(b)が少なくとも澱粉粒として存在することが肝要であるため、上記試料の調製において加熱処理を行う。
【0026】
<加工澱粉(a)の含有量>
加工澱粉(a)の含有量は、上述の濁度が25度以上となる程度であれば、特に限定されないが、1質量%以上、2質量%以上がよく、8質量%以下、6質量%以下が良い。加工澱粉(a)の含有量を前記範囲とすることで、乳濁液状調味料の白濁感を得ることができる。
【0027】
<加工澱粉(b)>
本発明の乳濁液状調味料には、体積平均粒子径が30μm以上70μm以下の澱粉粒を有する加工澱粉(b)を含有する。加工澱粉(a)と当該加工澱粉(b)を併用することにより、低粘度、低脂質にも拘わらず、乳化液状調味料と同等の白濁感を保存中維持することができ、且つサラダ等食品にかける時の物性を乳化タイプと同等にすることができる。
【0028】
<加工澱粉(b)の体積平均粒子径>
加工澱粉(b)の体積平均粒子径は、白濁感を維持する観点から、30μm以上70μm以下であり、更に65μm以下、60μm以下がよい。
【0029】
<加工澱粉(b)の含有量>
加工澱粉(b)の含有量は、乳濁液状調味料の粒度分布においてピークの累積頻度比率が後述のとおりになれば、特に限定されないが、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上がよく、10質量%以下、8質量%以下がよい。加工澱粉(b)の含有量を前記範囲とすることで、乳化液状調味料と同等の白濁感を保存中維持することができ、且つサラダ等食品にかける時の物性を乳化タイプと同等にすることができる。
【0030】
<加工澱粉(a)及び加工澱粉(b)の原料澱粉>
加工澱粉(a)及び(b)の原料澱粉としては、その種類によって限定するものではなく、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ(例えば、スイートコーン由来、デントコーン由来、ワキシーコーン由来のコーンスターチ)、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、および米澱粉のいずれのものでもよい。
澱粉粒の体積平均粒子径が小さい加工澱粉(a)の原料澱粉は、澱粉粒の体積平均粒子径が1〜15μm、更に1〜10μm、1〜8μmが好ましい。具体的には、米澱粉、サトイモ澱粉、小麦小粒子、馬鈴薯小粒子等が好適である。
澱粉粒の体積平均粒子径が大きい加工澱粉(b)の原料澱粉は、加工澱粉(a)の沈降抑制及びサラダにかける際の乳濁液状調味料の物性の観点から、ワキシーコーン由来のコーンスターチが好適である。
【0031】
<加工澱粉(a)及び加工澱粉(b)の種類>
加工澱粉とは、食品衛生法で添加物に指定された化学的処理を施された澱粉であって食用として供されるものである。加工澱粉(a)及び加工澱粉(b)は、前記それぞれの体積平均粒子径となれば、特に限定されないが、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸化架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉が挙げられる。
特に、加工澱粉(a)及び加工澱粉(b)は、調味料中に少なくともそれぞれが粒子として存在することが肝要であるため、加熱膨潤を抑制できる架橋澱粉が好適であり、アセチル化アジピン酸架橋、アセチル化リン酸化架橋、ヒドロキシプロピルリン酸架橋、リン酸架橋等の架橋方法が挙げられ、特にリン酸架橋、ヒドロキシプロピルリン酸架橋、アセチル化アジピン酸架橋がよい。
【0032】
<乳濁液状調味料の体積基準粒度分布>
本発明の乳濁液状調味料を目開き150μmの篩を通過させた後に、レーザー回析式粒度分布測定装置にて測定される体積基準粒度分布は、以下の特徴を有するものとする。
3μm以上15μm以下の範囲にピーク(1)、
30μm以上70μm以下の範囲にピーク(2)を少なくとも有し、0.1μm以上1000μm以下の範囲における粒子頻度を100%とした時のピーク(1)の累積頻度に対するピーク(2)の累積頻度が0.05以上6.5以下。
【0033】
<ピークの定義、ピークの累積頻度の定義>
ピークの位置は、体積基準粒度分布中に存在する「山」の頂点の粒子径を言う。より詳細には、体積基準粒度分布のグラフを算出するための粒子径(μm)、頻度(%)、累積頻度(%)の生データを粒子径の小さい方から順に頻度を参照し、最も高く且つそこから減少に転じる際の粒子径をピークとする。2つ目以降のピークも同様に特定する。
また、ピークの累積頻度は、粒度分布中に存在する「山」の面積をいう。より詳細には、前記生データを参照し、ピークを起点として、粒子径の小さい方向と大きい方向の両方向において、頻度が最も低くなる粒子径を特定し、特定した2点に挟まれる粒子径の累積頻度をピークの累積頻度とする。
【0034】
<ピーク(1)>
本発明の乳濁液状調味料の体積基準粒度分布では、3μm以上15μm以下の範囲にピークを有する。これをピーク(1)とする。
本発明の乳濁液状調味料には、体積平均粒子径が3μm以上15μm以下の澱粉粒を有する加工澱粉(a)を含有することから、ピーク(1)は少なくとも加工澱粉(a)に起因するものであると言える。
より具体的に特定するならば、例えば以下の方法で特定することができる。乳濁液状調味料を目開き150μmの篩に通した後、更に目開き38μmの篩に通し、篩を通過した乳濁液状調味料を回収する。回収した調味料をヨウ素液と電子顕微鏡を用いて、ピーク(1)の粒子が澱粉由来であることを確認することができる。
【0035】
<ピーク(2)>
本発明の乳濁液状調味料の体積基準粒度分布では、30μm以上70μm以下の範囲にピークを有する。これをピーク(2)とする。
本発明の乳濁液状調味料には、体積平均粒子径30μm以上70μm以下の澱粉粒を有する加工澱粉(b)を含有することから、ピーク(2)は少なくとも加工澱粉(b)に起因するものであると言える。
より具体的に特定するならば、例えば以下の方法で特定することができる。乳濁液状調味料を目開き150μmの篩に通した後、更に目開き38μmの篩の上に残った乳濁液状調味料を回収する。回収した調味料をヨウ素液と電子顕微鏡を用いて、ピーク(2)の粒子が澱粉由来であることを確認することができる。
【0036】
<ピーク(1)及びピーク(2)の累積頻度の割合>
本発明の乳濁液状調味料は、上述の測定方法により得られた体積基準粒度分布において、0.1μm以上1000μm以下の範囲における粒子頻度を100%とした時のピーク(1)の累積頻度に対するピーク(2)の累積頻度が0.05以上6.5以下であり、0.1以上、0.2以上、0.3以上、6以下、5以下、4以下が更に良い。
前記累積頻度割合であることにより、本発明の乳濁液状調味料は、低粘度、低脂質にも拘わらず、乳化液状調味料と同等の白濁感を有し、更にサラダ等食品にかける時乳化タイプと同等の物性を得ることができる。
なお、加工澱粉(a)及び加工澱粉(b)の含有割合を使って本発明の効果を奏する範囲を特定する方法も考えられる。しかしながら、平均粒子径の異なる2種類の加工澱粉を特定の割合で含有させたとしても、最終的に得られる乳濁液状調味料中に、必ずしも含有割合と同割合で2種類の加工澱粉の粒子が存在するとは限らない。例えば、乳濁液状調味料の製造工程中に加熱工程があれば、加工澱粉の種類と加熱条件によって澱粉粒が崩壊して粒子が残らない場合が考えられる。したがって、本発明の効果を奏する範囲を特定するためには、最終的に得られる乳濁液状調味料中における2種の平均粒子径の加工澱粉が特定の割合で存在することを示す、累積頻度の割合で特定するのが肝要である。
【0037】
<ピーク(2)の半値幅>
本発明の乳濁液状調味料は、上述の測定方法により得られた体積基準粒度分布において、ピーク(2)の半値幅が、30μm以上、35μm以上、40μm以上がよく、90μm以下、90μm以下であるとよい。ピーク(2)の半値幅が前記範囲であることにより、本発明の乳濁液状調味料は、低粘度、低脂質にも拘わらず、乳化液状調味料と同等の白濁感を維持することができ、且つサラダ等食品にかける時に乳化タイプと同等の物性を得ることができる。
なお、ピークの半値幅は、上述の測定方法により得られた体積基準粒度分布において、ピーク高の1/2高さにおける幅(μm)として求めることができる。より具体的には、生データから読み取ることができる。なお、ピーク高の1/2高さに一致する生データがない場合は、最も近い点を参照する。
【0038】
<体積基準粒度分布における粒子径100μm以上の累積頻度>
本発明の乳濁液状調味料は、上述の測定方法により得られた体積基準粒度分布において、0.1μm以上1000μm以下の範囲における粒子頻度を100%とした時、100μm以上の粒子径の累積頻度が2%以上であるとよく、2.5%以上がよく、3%以上が更によい。
粒子径100μm以上の累積頻度が特定量以上あることにより、本発明の乳濁液状調味料は、低粘度、低脂質含有にも拘わらず、乳化液状調味料と同等の白濁感を維持することができ、且つサラダ等食品にかける時に乳化タイプと同等の物性を得ることができる。
【0039】
<加工澱粉(a)及び加工澱粉(b)の含有割合>
本発明の乳濁液状調味料のおける加工澱粉(a)と加工澱粉(b)の含有割合は、前記ピーク(1)及びピーク(2)の累積頻度が上述の範囲であれば特に限定されるものではないが、加工澱粉(a):加工澱粉(b)=1:10〜800:1であるとよく、1:2〜100:1、1:2〜50:1であると更に良い。
加工澱粉(a)と加工澱粉(b)の含有割合が前記範囲であることにより、本発明の乳濁液状調味料は、低粘度、低油脂含有量にも拘わらず、乳化液状調味料と同等の白濁感を維持でき、且つサラダ等食品にかける時に乳化タイプと同等の物性を得ることができる。
【0040】
<本発明の作用効果>
本発明の乳濁液状調味料は、平均粒子径が小さい加工澱粉と当該澱粉よりも平均粒子径の大きい加工澱粉とを併用し、乳濁液状調味料を特定条件で粒度分布を測定した際に、2種類の加工澱粉に相当するピークを有し、その累積頻度が特定比率であることにより、意外にも低粘度、低油脂含有量にも拘わらず、乳化液状調味料と同等の白濁感と物性を有するものである。
これは、最終的に得られる乳濁液状調味料中に、平均粒子径の大きい加工澱粉の粒が点在し、沈降の妨げとなっているからか、平均粒子径の小さい加工澱粉が沈降し難くなっていること、また大きい加工澱粉の粒の周辺に小さい加工澱粉が点在し、沈降し難くなっていること等が考えられる。
更に、乳濁液状調味料の体積基準粒度分布において、ピーク(2)の半値幅が特定以上の幅を有すること、又は粒子径100μm以上の累積頻度が特定量以上存在するとより好ましい作用機序は、以下のように推測される。
一般的に澱粉は、吸水、膨潤、崩壊、分散の過程をたどることが知られている。また、吸水又は膨潤工程を経ると、澱粉粒は徐々に大きくなり、崩壊過程では澱粉粒が最大になった後崩壊する。したがって、澱粉の一部が崩壊すると、粒として存在する澱粉、崩壊直前の大きさ最大の澱粉、崩壊して粒として存在しない澱粉が混在するため、粒度分布はブロードとなる。
本発明において、ピーク(2)の半値幅が特定の幅を有すること又は体積基準粒度分布における粒子径100μm以上の累積頻度が特定量以上存在するとは、即ち一部の澱粉粒が崩壊しピーク(2)に相当する粒度がブロード状態であることを示すものである。
上記より、本発明の乳濁液状調味料中に一部崩壊した澱粉が存在することによって、平均粒子径の小さい加工澱粉の沈降を防ぎ、白濁感の維持に貢献しているものと推測できる。
【0041】
<その他の原料>
本発明の乳濁液状調味料には、上述の加工澱粉(a)及び加工澱粉(b)以外に本発明の効果を損なわない範囲で当該食品に一般的に使用されている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、食酢、グルタミン酸ナトリウム、食塩、醤油、味噌、乳製品等の各種調味料、各種エキス、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、アラビアガム、グアガム、タラガム等のガム質類、全卵、卵黄、ホスフォリパーゼA
1、ホスフォリパーゼA
2、ホスフォリパーゼC若しくはホスフォリパーゼDで酵素処理した卵黄、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、ラクトアルブミン、カゼインナトリウム等の乳化材、アスコルビン酸又はその塩、ビタミンE等の酸化防止剤、色素、香味食材や各種野菜のおろし、ペースト状物、截断物等の具材の粉砕物、大豆、胡麻、ピーナッツ等の種子類の具材が挙げられる。
低オイルの乳濁液状調味料の場合、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油等の動植物油又はこれらの精製油(サラダ油)、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂等の食用油脂等を用いることができる。
【0042】
<ガム質>
本発明の乳濁液状調味料には、更にガム質を0.01質量%以上1質量%以下含有させることができ、更に0.01質量%以上0.7質量%以下含有させることができる。ガム質の種類やその他の配合との組合せによるが、ガム質の含有量が前記範囲内であることにより、乳濁液状調味料がガム質特有のべたつきがなく、サラダなど食品にかける時、乳化タイプと同等の物性とすることができる。
【0043】
<セルロース>
本発明の乳濁液状調味料には、更にセルロースを0.01質量%以上0.4質量%以下含有させることができ、更に0.03質量%以上0.3質量%以下含有させることができる。本発明の乳濁液状調味料にセルロースを併用させると、サラダ等食品にかける時の物性が乳化タイプの物性により近づけることができる。
【0044】
<製造方法>
本発明の乳濁液状調味料の製造方法は、加工澱粉(a)及び加工澱粉(b)を必須原料として配合し、必要に応じてガム質、セルロース等を配合し、常法に則り製造できる。
【0045】
以下、本発明の実施例、比較例を述べ、本発明を更に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【0046】
[実施例1]
<ノンオイルの乳濁液状調味料(ゴマドレッシング)>
下記の配合割合に準じ、全体を均一に混合し、70℃に加熱し、70℃で5分間加熱殺菌を施した後、250mL容量のPET容器に250mL充填し、密栓しノンオイルの乳濁液状調味料を製した。
【0047】
<加工澱粉の体積平均粒子径の測定>
加工澱粉(a)及び加工澱粉(b)の各体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置である粒度分布径MT3300EXII(日機装株式会社製)を用いて、段落0025記載の測定条件で測定した。
【0048】
<ノンオイルの乳濁液状調味料の配合割合>
醸造酢(酸度5%) 15質量%
醤油 5質量%
砂糖 15質量%
食塩 4質量%
体積平均粒子径が7μmの加工澱粉(a) 1.5質量%
体積平均粒子径が42μmの加工澱粉(b) 0.5質量%
グルタミン酸ナトリウム 0.3質量%
キサンタンガム 0.3質量%
結晶セルロース 0.3質量%
焙煎ゴマ粉砕物 4質量%
清水 残余
――――――――――――――――――――――――――――
合計 100質量%
※体積平均粒子径が7μmの加工澱粉(a)は、原料澱粉が米の架橋澱粉
※体積平均粒子径が42μmの架橋澱粉(b)は、原料澱粉がワキシーコーンスターチの加工澱粉
【0049】
得られたノンオイルの乳濁液状調味料は、
25℃における粘度が0.9〜5Pa・s、
脂質含有量が2.1質量%、
目開き150μmの篩を通過させた100倍希釈乳濁液状調味料の濁度が25度以上であった。また、篩や希釈を行わず、そのまま乳濁液状調味料の濁度を測定したところ、89度であった。
なお、粘度の測定条件は段落0016、脂質含有量の測定条件は段落0018、濁度の測定条件は段落0022記載に従い、WA2000N(日本電色工業株式会社)を用いて行った。
また、段落0032記載の測定条件に従って、得られた乳濁液状調味料を目開き150μmの篩を通過させた後、レーザー回析式粒度分布測定装置である粒度分布径MT3300EXII(日機装株式会社製)を用いて、体積基準粒度分布を測定した結果を以下と
図1に示す。
ピーク(1):粒子径7.8μm
ピーク(1)の累積頻度:23.8%
ピーク(2):粒子径52.3μm
ピーク(2)の累積頻度:76.2%
ピーク(1)の累積頻度に対するピーク(2)の累積頻度:3.2
粒子径100μm以上の累積頻度:7%
ピーク(2)半値幅:61.8μm
【0050】
[試験例1]
加工澱粉(a)及び加工澱粉(b)の種類及び含有量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法で乳濁液状調味料を製した。
また、粘度、脂質含有量、濁度、体積基準粒度分布の測定は、実施例1記載の方法に従い行った。
得られた乳濁液状調味料を5℃で5日間保管した後、外観を確認し、次いで皿に流し出して物性を確認し、本発明の効果を評価した。
【0051】
<白濁・沈殿の評価基準>
〇:加工澱粉(a)の沈殿がなく、調味料全体が均一に白濁している。
×:加工澱粉(a)が沈殿している。又は乳化様の白濁感がない。
【0052】
<物性の評価方法>
皿から15cmの高さから各液状調味料を流し出し、流れ出る液状調味料の物性を確認し、皿の上の液状調味料の物性を確認する。なお、深煎りごまドレッシング(キユーピー(株)製)を対照として評価を行った。
【0053】
<物性の評価基準>
A:流れ出る際の物性及び皿上の物性共に、対照のドレッシングと同程度の物性である。
B:流れ出る際の物性に若干糸引き性が感じられるが、問題ない程度である。
C:流れ出る調味料の量が不均一であるか、皿上の調味料がブヨブヨしている。
【0055】
表1より、加工澱粉(a)及び加工澱粉(b)を含有し、体積基準粒度分布において、3〜15μmの範囲にピーク(1)を有し、30〜70μmの範囲にピーク(2)を有し、0.1〜1000μmの範囲における粒子頻度を100%とした時のピーク(1)の累積頻度に対するピーク(2)の累積頻度が0.05以上6.5以下である実施例1〜3の乳濁液状調味料は、加工澱粉(a)が沈殿することなく、対照と同等の白濁感を有し、調味料を流し出した時の物性が対照と同様に良好なものであることが分かる。
一方、加工澱粉(a)を除いた比較例1の液状調味料は、白濁感が得られず、対照の乳化液状調味料とは程遠い外観であった。また、加工澱粉(b)を除いた比較例2の液状調味料は、加工澱粉(a)が沈降しており、白濁感が不均一であり、対照の乳化液状調味料とは程遠い外観であった。
なお、実施例1〜3の乳濁液状調味料をそのまま濁度測定したところ、濁度は75度以上であり、白濁感を有していた。
【0056】
[実施例4]
<ノンオイルの乳濁液状調味料(ゴマドレッシング)>
加工澱粉(a)を5質量%、加工澱粉(b)を2質量%に変更した以外は、実施例1に準じてノンオイルの乳濁液状調味料を製した。
【0057】
得られたノンオイルの乳濁液状調味料は、
25℃における粘度が0.9〜5Pa・s、
脂質含有量が2.1質量%、
目開き150μmの篩を通過させた100倍希釈乳濁液状調味料の濁度が25度以上であった。
また、得られた乳濁液状調味料を目開き150μmの篩を通過させた後、体積基準粒度分布を測定した結果、
3〜8μmの範囲にピーク(1)、
30〜70μmの範囲にピーク(2)を有し、
0.1〜1000μmの範囲における粒子頻度を100%とした時のピーク(1)の累積頻度に対するピーク(2)の累積頻度が0.05以上6.5以下、
粒子径100μm以上の累積頻度が2%以上、
半値幅:30μm以上、
であった。
なお、これらの測定は実施例1に準じて行った。
【0058】
得られたノンオイルの乳濁液状調味料を試験例1の評価方法及び評価基準に従って評価したところ、乳化液状調味料と同様に白濁感があり、流し出した時の物性も乳化液状調味料と同様に良好であった。
【0059】
[比較例3]
<ノンオイルの乳濁液状調味料(ゴマドレッシング)>
下記の配合割合に準じ、全体を均一に混合し、90℃まで加熱後、冷却し250mL容量のPET容器に250mL充填し、密栓しノンオイルの乳濁液状調味料を製した。
なお、本比較例3は、特開2013−138637の実施例6を追試した結果である。
【0060】
<ノンオイルの乳濁液状調味料の配合割合>
醸造酢 10質量%
砂糖 7質量%
醤油 6質量%
練り胡麻 4.5質量%
味噌 2.0質量%
食塩 2.0質量%
酵母エキス 0.05質量%
体積平均粒子径が8μm以下の加工澱粉(a) 5質量%
(パインホワイトR 松谷化学工業(株)製)
体積平均粒子径が50μmの加工澱粉(b) 2.1質量%
(松谷マーガレット 松谷化学工業(株)製)
清水 残余
――――――――――――――――――――――――――――
合計 100質量%
【0061】
得られたノンオイルの乳濁液状調味料は、加工澱粉(a)の沈殿が生じており、白濁感が不均一であった。
そのため、体積基準粒度分布を測定する際は、原料が均一となるよう攪拌した後、段落0032記載の測定条件に従って測定した。結果を以下と
図4に示す。
ピーク(1):粒子径6.5μm
ピーク(1)の累積頻度:12.7%
ピーク(2):粒子径40.4μm
ピーク(2)の累積頻度:87.3%
ピーク(1)の累積頻度に対するピーク(2)の累積頻度:6.8
粒子径100μm以上の累積頻度:1.4%
ピーク(2)半値幅:28.5μm
【0062】
[実施例5]
<ノンオイルの乳濁液状調味料(ゴマドレッシング)>
結晶セルロースを除いた以外は、実施例1に準じてノンオイルの乳濁液状調味料を製した。
【0063】
得られたノンオイルの乳濁液状調味料は、
25℃における粘度が0.9〜5Pa・s、
脂質含有量が2.1質量%
目開き150μmの篩を通過させた100倍希釈乳濁液状調味料の濁度が25度以上であった。
また、得られた乳濁液状調味料を目開き150μmの篩を通過させた後、体積基準粒度分布を測定した結果、
3〜8μmの範囲にピーク(1)、
30〜70μmの範囲にピーク(2)を有し、
0.1〜1000μmの範囲における粒子頻度を100%とした時のピーク(1)の累積頻度に対するピーク(2)の累積頻度が0.05以上6.5以下、
粒子径100μm以上の累積頻度が2%以上、
であった。
【0064】
得られたノンオイルの乳濁液状調味料を試験例1の評価方法及び評価基準に従って評価したところ、乳化液状調味料と同様に白濁感があった。流し出した時の物性は、乳化液状調味料と比較して糸引き姓があったが、問題ない程度であった。
【0065】
[実施例6]
<ノンオイルの乳濁液状調味料(ゴマドレッシング)>
下記の配合割合に準じ、全体を均一に混合し、70℃に加熱し、70℃で5分間加熱殺菌を施した後、250mL容量のPET容器に250mL充填し、密栓しノンオイルの乳濁液状調味料を製した。
【0066】
<ノンオイルの乳濁液状調味料の配合割合>
醸造酢 10質量%
砂糖 7質量%
醤油 6質量%
練り胡麻 4.5質量%
味噌 2.0質量%
食塩 2.0質量%
酵母エキス 0.05質量%
体積平均粒子径が7μmの加工澱粉(a) 5質量%
体積平均粒子径が42μm以下の加工澱粉(b) 2.1質量%
清水 残余
――――――――――――――――――――――――――――――
合計 100質量%
※体積平均粒子径が7μmの加工澱粉(a)は、実施例1と同じもの
※体積平均粒子径が42μmの加工澱粉(b)は、実施例1と同じもの
【0067】
得られたノンオイルの乳濁液状調味料は、
25℃における粘度が0.9〜5Pa・s、
脂質含有量が10質量%以下、
目開き150μmの篩を通過させた100倍希釈乳濁液状調味料の濁度が25度以上であった。
また、得られた乳濁液状調味料を目開き150μmの篩を通過させた後、体積基準粒度分布を測定した結果を以下と
図5に示す。
ピーク(1):粒子径7.1μm
ピーク(1)の累積頻度:72.8%
ピーク(2):粒子径48μm
ピーク(2)の累積頻度:27.2%
ピーク(1)の累積頻度に対するピーク(2)の累積頻度:0.4
粒子径100μm以上の累積頻度:4.1%
【0068】
[実施例7]
<ノンオイルの乳濁液状調味料(シーザードレッシング)>
下記の配合割合に準じ、全体を均一に混合し、70℃に加熱し、70℃で5分間加熱殺菌を施した後、250mL容量のPET容器に250mL充填し、密栓しノンオイルの乳濁液状調味料を製した。
【0069】
<ノンオイルの乳濁液状調味料の配合割合>
醸造酢(酸度5%) 15質量%
粉チーズ 5質量%
乳加工品 5質量%
砂糖 5質量%
食塩 5質量%
体積平均粒子径が7μmの加工澱粉(a) 4.5質量%
体積平均粒子径が48μmの加工澱粉(b) 0.3質量%
キサンタンガム 0.4質量%
結晶セルロース 0.2質量%
ニンニク、胡椒等の調味料 0.5質量%
グルタミン酸ナトリウム等の旨味調味料 1質量%
レモン果汁 0.05質量%
卵黄 0.5質量%
清水 残余
――――――――――――――――――――――――――――
合計 100質量%
※体積平均粒子径が7μmの加工澱粉(a)は、実施例1と同じもの
※体積平均粒子径が48μmの加工澱粉(b)は、実施例1と同じもの
【0070】
得られたノンオイルの乳濁液状調味料は、
25℃における粘度が3Pa・s、
脂質含有量が2質量%、
目開き150μmの篩を通過させた100倍希釈乳濁液状調味料の濁度が72度であった。
なお、各種測定条件は実施例1と同様に行った。
また、実施例1と同様の方法で、得られた乳濁液状調味料を目開き150μmの篩を通過させた後、体積基準粒度分布を測定した結果を以下に示す。
3〜8μmの範囲にピーク(1)、
30〜70μmの範囲にピーク(2)を有し、
0.1〜1000μmの範囲における粒子頻度を100%とした時のピーク(1)の累積頻度に対するピーク(2)の累積頻度が0.05以下6.5以下、
粒子径100μm以上の累積頻度は2%以上であった。
【0071】
得られたノンオイルの乳濁液状調味料を試験例1の評価方法及び評価基準に従って評価したところ、乳化液状調味料と同様に白濁感があり、流し出した時の物性も乳化液状調味料と同様に良好であった。
【0072】
[実施例8]
<低オイルの乳濁液状調味料(ゴマドレッシング)>
食用植物油脂として胡麻油を5質量%注油する以外は、実施例1に準じて、低オイルの乳濁液状調味料を製した。
【0073】
得られた低オイルの乳濁液状調味料は、
25℃における粘度が0.9〜5Pa・s、
脂質含有量が7質量%
目開き150μmの篩を通過させた100倍希釈乳濁液状調味料の濁度が25度以上であった。
また、低オイルの乳濁液状調味料を油相と水相が分離されるよう遠心分離した後、上澄みの食用油脂を除去する前処理した。
得られた水相部分を再度均一に攪拌混合し、目開き150μmの篩を通過させた後、体積基準粒度分布を測定した結果、
3〜8μmの範囲にピーク(1)、
30〜70μmの範囲にピーク(2)を有し、
0.1〜1000μmの範囲における粒子頻度を100%とした時のピーク(1)の累積頻度に対するピーク(2)の累積頻度が0.05以上6.5以下、
粒子径100μm以上の累積頻度は2%以上であった。
【0074】
得られた低オイルの乳濁液状調味料を試験例1の評価方法及び評価基準に従って評価したところ、乳化液状調味料と同様に白濁感があった。流し出した時の物性は、乳化液状調味料と比較して良好な物性であった。
【0075】
[実施例9]
<低オイルの乳濁液状調味料(ゴマドレッシング)>
焙煎ゴマ粉砕物を8質量%に変更した以外は、実施例1に準じて、低オイルの乳濁液状調味料を製した。
【0076】
得られた低オイルの乳濁液状調味料は、
25℃における粘度が0.9〜5Pa・s、
脂質含有量が4質量%
目開き150μmの篩を通過させた100倍希釈乳濁液状調味料の濁度が25度以上であった。
また、低オイルの乳濁液状調味料を油相と水相が分離されるよう遠心分離した後、上澄みの食用油脂を除去する前処理した。
得られた水相部分を再度均一に攪拌混合し、目開き150μmの篩を通過させた後、体積基準粒度分布を測定した結果、
3〜8μmの範囲にピーク(1)、
30〜70μmの範囲にピーク(2)を有し、
0.1〜1000μmの範囲における粒子頻度を100%とした時のピーク(1)の累積頻度に対するピーク(2)の累積頻度が0.05以上6.5以下、
粒子径100μm以上の累積頻度は2%以上であった。
【0077】
得られた低オイルの乳濁液状調味料を試験例1の評価方法及び評価基準に従って評価したところ、乳化液状調味料と同様に白濁感があった。流し出した時の物性は、乳化液状調味料と比較して良好な物性であった。