特許第6704564号(P6704564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704564
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20200525BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20200525BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20200525BHJP
【FI】
   B62D6/00
   G01B7/30 G
   B62D113:00
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-140454(P2016-140454)
(22)【出願日】2016年7月15日
(65)【公開番号】特開2018-8650(P2018-8650A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】塙 圭二
(72)【発明者】
【氏名】林田 淳一
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−117709(JP,A)
【文献】 特開2000−289636(JP,A)
【文献】 特開平2−27201(JP,A)
【文献】 特表2008−509382(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/043074(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/129090(WO,A1)
【文献】 特開2002−45006(JP,A)
【文献】 特開昭60−33169(JP,A)
【文献】 特開2003−118993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
B62D 5/00, 6/00,15/02
G01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの操作に応じて前輪を操舵する前輪操舵機構を備えるトラクタであって、
前記前輪操舵機構に連結部材を介して連結され、前記前輪の操舵角に応じて回動する操舵角検出部材と、
前記操舵角検出部材の回動位置に基づいて、前記前輪の操舵角を検出する第1操舵角センサと、
前記操舵角検出部材の回動位置に基づいて、前記前輪の直進付近の操舵角を前記第1操舵角センサよりも高い精度で局所的に検出する第2操舵角センサと、を備えることを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
前記第1操舵角センサは、前記操舵角検出部材の回動角を検出し、
前記第2操舵角センサは、前記操舵角検出部材のカム部に当接する従動部材の変位を検出することを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
前記カム部は、
前記前輪の操舵角が直進付近のとき、前記操舵角検出部材の回動に応じて前記従動部材を変位させる検出領域と、
前記前輪の操舵角が直進付近から外れたとき、前記操舵角検出部材が回動しても前記従動部材を変位させない不感帯領域と、を備えることを特徴とする請求項2に記載のトラクタ。
【請求項4】
前記カム部は、前記検出領域の中間位置を示す目印を備えることを特徴とする請求項3に記載のトラクタ。
【請求項5】
前記従動部材を変位自在に支持し、機体に取り付けられるセンサブラケットを備え、
前記センサブラケットは、
前記前輪の直進付近の操舵角変化に応じた前記従動部材の変位をガイドする長孔状のガイド孔と、
前記ガイド孔の外端を開口させ、前記前輪の直進付近以外の操舵角変化に応じた前記従動部材の変位を許容する切欠きと、を備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のトラクタ。
【請求項6】
前記操舵角検出部材は、前記連結部材との連結箇所を複数備え、該連結箇所の選択に基づいて複数の機種に兼用可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のトラクタ。
【請求項7】
前記前輪操舵機構は、前記前輪の操舵角が所定の切れ角を越えたとき、旋回検出スイッチ部を押圧するスイッチ押圧部を備え、
前記連結部材は、前記スイッチ押圧部に挟持状に固定可能な連結ブラケットを介して前記前輪操舵機構に連結されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のトラクタ。
【請求項8】
前記連結ブラケットは、前記旋回検出スイッチ部との干渉を回避する切欠きを備えることを特徴とする請求項7に記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪の操舵角を検出する操舵角検出手段を備えるトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
前輪の操舵角を検出する操舵角検出手段を備えるトラクタが知られている。例えば、特許文献1、2に記載されるトラクタは、機体旋回時に前輪を増速させる前輪増速制御を行うにあたり、前輪の操舵角が所定の切れ角(旋回判定角度)を越えたか否かを検出するための操舵角検出手段(旋回検出スイッチ)を備えている。また、近年では、前輪の操舵角に応じた様々な制御を行うために、前輪の操舵角をポテンショメータなどの回転角センサを用いて広範囲に検出するトラクタも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4602108号公報
【特許文献2】特開2008−56071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、各種のセンサ情報に基づいて前輪を自動的に操舵する自動操舵制御機能が提案されている。例えば、機体に前方を撮影するカメラを設け、該カメラの撮影画像における目標物が所定の位置を維持するように前輪を自動的に操舵して機体を直進させる直進アシスト制御機能が提案されている。しかしながら、従来の操舵角センサは、前輪の操舵角を広範囲に検出するので、直進付近の操舵角を高精度に検出することが困難であり、その結果、直進アシスト制御機能による直進付近の操舵角変化を高精度にフィードバックできず、直進アシスト制御機能の制御精度が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、ステアリングホイールの操作に応じて前輪を操舵する前輪操舵機構を備えるトラクタであって、前記前輪操舵機構に連結部材を介して連結され、前記前輪の操舵角に応じて回動する操舵角検出部材と、前記操舵角検出部材の回動位置に基づいて、前記前輪の操舵角を検出する第1操舵角センサと、前記操舵角検出部材の回動位置に基づいて、前記前輪の直進付近の操舵角を前記第1操舵角センサよりも高い精度で局所的に検出する第2操舵角センサと、を備えることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のトラクタであって、前記第1操舵角センサは、前記操舵角検出部材の回動角を検出し、前記第2操舵角センサは、前記操舵角検出部材のカム部に当接する従動部材の変位を検出することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載のトラクタであって、前記カム部は、前記前輪の操舵角が直進付近のとき、前記操舵角検出部材の回動に応じて前記従動部材を変位させる検出領域と、前記前輪の操舵角が直進付近から外れたとき、前記操舵角検出部材が回動しても前記従動部材を変位させない不感帯領域と、を備えることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3に記載のトラクタであって、前記カム部は、前記検出領域の中間位置を示す目印を備えることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載のトラクタであって、前記従動部材を変位自在に支持し、機体に取り付けられるセンサブラケットを備え、前記センサブラケットは、前記前輪の直進付近の操舵角変化に応じた前記従動部材の変位をガイドする長孔状のガイド孔と、前記ガイド孔の外端を開口させ、前記前輪の直進付近以外の操舵角変化に応じた前記従動部材の変位を許容する切欠きと、を備えることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のトラクタであって、前記操舵角検出部材は、前記連結部材との連結箇所を複数備え、該連結箇所の選択に基づいて複数の機種に兼用可能であることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のトラクタであって、前記前輪操舵機構は、前記前輪の操舵角が所定の切れ角を越えたとき、旋回検出スイッチ部を押圧するスイッチ押圧部を備え、前記連結部材は、前記スイッチ押圧部に挟持状に固定可能な連結ブラケットを介して前記前輪操舵機構に連結されることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項7に記載のトラクタであって、前記連結ブラケットは、前記旋回検出スイッチ部との干渉を回避する切欠きを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、前輪の操舵角を検出する第1操舵角センサとは別に、前輪の直進付近の操舵角を第1操舵角センサよりも高い精度で局所的に検出する第2操舵角センサを備えるので、直進アシスト制御機能による直進付近の操舵角変化を高精度にフィードバックし、直進アシスト制御機能の制御精度を向上させることができる。しかも、第1操舵角センサ及び第2操舵角センサは、同じ操舵角検出部材の回動位置に基づいて前輪の操舵角を検出するので、操舵角センサ毎に操舵角検出部材を設ける場合に比べ、部品点数の削減や設定の簡略化が図れる。
請求項2の発明によれば、第1操舵角センサは、操舵角検出部材の回動角を検出するので、前輪の操舵角を広範囲に検出できる。また、第2操舵角センサは、操舵角検出部材のカム部に当接する従動部材の変位を検出するので、カム部の形状設定に基づいて、前輪の直進付近の操舵角を第1操舵角センサよりも高い精度で局所的に検出できる。
請求項3の発明によれば、カム部は、前輪の操舵角が直進付近のとき、操舵角検出部材の回動に応じて従動部材を変位させる検出領域と、前輪の操舵角が直進付近から外れたとき、操舵角検出部材が回動しても従動部材を変位させない不感帯領域と、を備えるので、前輪の操舵角が直進付近から外れたとき、従動部材が無駄に動いて誤った操舵角検出が行われることを防止できる。また、第2操舵角センサは、常に出力を行い、計測範囲外となるとハード的に出力を一定のものとし、ソフト的な規制を必要としないので、制御の簡略化も図れる。
請求項4の発明によれば、カム部は、検出領域の中間位置を示す目印を備えるので、カム部と従動部材との位置調整を容易に行うことができる。
請求項5の発明によれば、従動部材を変位自在に支持するセンサブラケットは、前輪の直進付近の操舵角変化に応じた従動部材の変位をガイドする長孔状のガイド孔と、ガイド孔の外端を開口させ、前輪の直進付近以外の操舵角変化に応じた従動部材の変位を許容する切欠きと、を備えるので、直進付近における従動部材の変位をガイドしつつ、それ以外の変位による従動部材の破損を防止できる。
請求項6の発明によれば、操舵角検出部材は、連結部材との連結箇所を複数備え、該連結箇所の選択に基づいて複数の機種に兼用できるので、機種毎に専用の操舵角検出部材を用意する場合に比べ、大幅なコストダウンが図れる。
請求項7の発明によれば、前輪操舵機構は、前輪の操舵角が所定の切れ角を越えたとき、旋回検出スイッチ部を押圧するスイッチ押圧部を備え、連結部材は、スイッチ押圧部に挟持状に固定可能な連結ブラケットを介して前輪操舵機構に連結されるので、連結部材の連結箇所を持たない既存の機種にも、操舵角検出部材や操舵角センサを後付けして前輪の操舵角を検出することが可能になる。
請求項8の発明によれば、連結ブラケットは、旋回検出スイッチ部との干渉を回避する切欠きを備えるので、旋回検出スイッチ部の検出精度を低下させる不都合もない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るトラクタの前輪操舵機構及び操舵角検出機構を下方から見た斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るトラクタの操舵角検出機構を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る操舵角検出機構の操舵角検出部を示す分解斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る操舵角検出部の操舵角検出ユニットを示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る操舵角検出ユニットを示す図であり、(a)は操舵角検出ユニットの下面図、(b)は操舵角検出ユニットの側面図、(c)は操舵角検出ユニットの正面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る操舵角検出ユニットを示す分解斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係る操舵角検出機構の連結ブラケットを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はトラクタであって、該トラクタ1は、図示しないエンジンが搭載されるエンジン搭載部2と、エンジン動力を変速するミッションケース3と、ミッションケース3から出力される前輪動力で前輪4を駆動させるフロントアクスルケース5(図2参照)と、ミッションケース3から出力される後輪動力で後輪6を駆動させるリヤアクスルケース(図示せず)と、各種の作業機(図示せず)を連結可能な作業機連結部7と、ステアリングホイール8などの操作具が設けられる操作部9とを備える。
【0009】
図2に示すように、フロントアクスルケース5は、左右に延出するセンターケース10と、センターケース10の左右両端部に前後回動可能に連結されるファイナルケース11と、ファイナルケース11に設けられるナックルアーム12とを備えており、ファイナルケース11に回転可能に支持される前輪車軸(図示せず)に前輪4が取り付けられる。
【0010】
図2に示すように、トラクタ1は、ステアリングホイール8の操作に応じて前輪4を操舵する前輪操舵機構13と、前輪操舵機構13の旋回操作を検出する旋回検出機構14と、前輪操舵機構13による前輪4の操舵角を検出する操舵角検出機構15とを備える。
【0011】
前輪操舵機構13は、複動両ロッド型の油圧シリンダで構成され、ロッド両端部がロッドエンド16を介して左右のナックルアーム12に連結されるパワステシリンダ17と、ステアリングホイール8の操作に応じてパワステシリンダ17を動作させるステアリングユニット(図示せず)とを備える。
【0012】
旋回検出機構14は、パワステシリンダ17の近傍に並列状に配置される旋回検出スイッチ部18と、パワステシリンダ17のロッド両端部に設けられ、前輪4の操舵角が所定の切れ角(旋回判定角度)を越えたとき、旋回検出スイッチ部18を押圧するスイッチ押圧部19とを備える。
【0013】
旋回検出スイッチ部18は、左右方向に沿う筒状のセンサケース20と、センサケース20に左右スライド自在に支持され、且つセンサケース20から左右外側方へ突出する方向に付勢される左右のセンサロッド21と、センサロッド21の先端部に設けられる円盤状のセンサプレート22と、センサケース20の中央部に設けられ、センサロッド21の押し込み動作を検出する旋回検出スイッチ(図示せず)とを備える。
【0014】
本実施形態のスイッチ押圧部19は、パワステシリンダ17のロッド両端部に設けられた円盤状のプレートであり、前輪4の操舵角が所定の切れ角を越えると、センサプレート22を押し込み方向に押圧し、センサロッド21を介して旋回検出スイッチをONさせる。これにより、トラクタ1では、前輪操舵機構13の旋回操作を検出し、機体旋回時に前輪4を増速させる前輪増速制御を実行することが可能になる。
【0015】
図2及び図3に示すように、操舵角検出機構15は、一端側が前輪操舵機構13に連結される連結部23と、該連結部23の他端側に連結されて前輪4の操舵角を検出する操舵角検出部24とを備える。図2図4に示すように、操舵角検出部24は、本発明の要部である操舵角検出ユニット25と、操舵角検出ユニット25を機体に取り付けるための取付ブラケット26とからなり、操舵角検出ユニット25は、取付ブラケット26に取り付けられた後、取付ブラケット26を介してトラクタ1に固定される。以下、操舵角検出ユニット25の具体的な構成について、図2図7を参照して説明する。
【0016】
操舵角検出ユニット25は、前輪操舵機構13に連結部23を介して連結され、前輪4の操舵角に応じて回動する操舵角検出部材27と、操舵角検出部材27の回動位置に基づいて、前輪4の操舵角を検出する第1操舵角センサ28と、操舵角検出部材27の回動位置に基づいて、前輪4の直進付近の操舵角を第1操舵角センサ28よりも高い精度で局所的に検出する第2操舵角センサ29と、これらの部材を支持するセンサブラケット30とを備える。
【0017】
センサブラケット30は、上下方向に対向する上下一対のブラケット部30a、30bを備える側面視コ字状の部材であり、第1ブラケット部30aには、操舵角検出部材27が支軸27aを介して回動自在に取り付けられ、第2ブラケット部30bには、第1操舵角センサ28及び第2操舵角センサ29が取り付けられている。
【0018】
本実施形態の第1操舵角センサ28は、センサ軸28aの回動角を検出するポテンショメータであり、センサ軸28aが操舵角検出部材27の支軸27aと同一軸芯上に配置されている。第1操舵角センサ28のセンサ軸28aには、検出レバー31が一体回動可能に設けられ、検出レバー31の先端部には係合溝31aが形成されている。
【0019】
操舵角検出部材27には、一対の固定具32、33を介してカム部材34(カム部)が取り付けられている。固定具32、33は、操舵角検出部材27及びカム部材34を貫通するボルト32a、33aと、ボルト32a、33aに螺合するナット32b、33bとを備えて構成されており、一方の固定具32を構成するボルト32aは、長尺に形成され、その先端部が検出レバー31の係合溝31aに係合している。これにより、第1操舵角センサ28は、ボルト32a、検出レバー31及びセンサ軸28aを介して操舵角検出部材27の回動角を入力し、前輪4の操舵角を広範囲に検出することが可能になる。
【0020】
本実施形態の第2操舵角センサ29は、第1操舵角センサ28と同様、センサ軸29aの回動角を検出するポテンショメータであるが、操舵角検出部材27の回動角を検出するのではなく、操舵角検出部材27に設けられたカム部材34に当接する従動部材35の変位を入力し、該変位に基づいて前輪4の直進付近の操舵角を第1操舵角センサ28よりも高い精度で局所的に検出する。
【0021】
具体的に説明すると、従動部材35は、センサブラケット30の第1ブラケット部30aに支軸35aを介して回動自在に設けられるアーム35bと、アーム35bの先端部に回動自在に設けられるローラ軸35cと、ローラ軸35cの一端側に設けられ、カム部材34に当接するローラ35dと、ローラ35dがカム部材34に当接する方向にローラ軸35cを付勢する捩りばね35eとを備える一方、第2操舵角センサ29のセンサ軸29aには、先端部にローラ軸35cの他端側に外方から当接する当接片36aが形成された検出レバー36が一体回動可能に設けられている。そして、第2操舵角センサ29は、内装されるばね(図示せず)の付勢力で検出レバー36の当接片36aをローラ軸35cに当接させることで、従動部材35の変位を検出することが可能になる。
【0022】
図6の(a)及び図7に示すように、カム部材34は、前輪4の操舵角が直進付近のとき、操舵角検出部材27の回動に応じて従動部材35を変位させる検出領域34aと、前輪4の操舵角が直進付近から外れたとき、操舵角検出部材27が回動しても従動部材35を変位させない不感帯領域34b、34cとを備える。具体的に説明すると、検出領域34aは、操舵角検出部材27の回動に応じて、従動部材35を大きく変位させるように、支軸27aからの距離が大きく変化する形状であって、かつ、第2操舵角センサ29の出力がリニアに変化するように形状設定がなされている。また、一方の不感帯領域34bは、検出領域34aの一端側に繋がっており、操舵角検出部材27が回動しても従動部材35を変位させないように(第2操舵角センサ29の出力が変化しないように)、支軸27aを中心とする円弧形状を有する。また、他方の不感帯領域34cは、検出領域34aの他端側に繋がっており、操舵角検出部材27が回動しても従動部材35を変位させないように、支軸27aを中心とする円弧形状を有する。このような構成によれば、検出領域34aは、前輪4の操舵角が直進付近のとき、操舵角検出部材27の回動に応じて従動部材35を大きく変位させることで、前輪4の直進付近の操舵角を第1操舵角センサ28よりも高い精度で検出することを可能にする。
【0023】
また、カム部材34は、検出領域34aの中間位置(直進対応位置)を示す目印34d(例えば、孔)を備える。このような目印34dによれば、カム部材34と従動部材35との位置調整が容易になる。カム部材34と従動部材35との位置調整は、トラクタ1に操舵角検出ユニット25を取り付ける際や、操舵角検出ユニット25の部品交換を行う際に必要であり、例えば、固定具32、33が貫通するカム部材34の孔を長孔とすることにより調整代が確保される。なお、本実施形態では、操舵角検出部材27とカム部材34とを別部材としているが、両部材を一体形成してもよい。また、本実施形態のカム部材34は、支軸27aを中心とする点対称形状を有し、180°反転させても操舵角検出部材27に取付可能であるが、点対称形状に限定されるものではない。また、本実施形態のカム部材34は、図6の(a)に示すように、操舵角検出部材27に対して支軸27aを中心として回転方向にオフセットして取り付けられているが、その理由は、操舵角検出部材27及びカム部材34を多機種対応とするにあたり、各機種における動きの違いを操舵角検出部材27とカム部材34とのオフセット量に基づいて吸収するためである。また、本実施形態の検出領域34aは、目印34dを中心として非対称の形状を有するが、その理由は、操舵角検出部材27の回動量が、前輪操舵角全域において均等ではなく、前輪操舵角が内向きのときのと外向きのときとで相違するからであり、非対称とすることで第2操舵角センサ29の出力をリニアに変化させている。
【0024】
図7に示すように、本実施形態のセンサブラケット30は、前輪4の直進付近の操舵角変化に応じた従動部材35(ローラ軸35c)の変位をガイドする長孔状のガイド孔30cを備えるが、その外端側には、ガイド孔30cの外端を開口させることで、前輪4の直進付近以外の操舵角変化に応じた従動部材35の変位を許容する切欠き30dが形成されている。これにより、前輪4の直進付近以外の操舵角変化に応じた変位による従動部材35の破損を防止することが可能になる。
【0025】
図2及び図3に示すように、本実施形態の連結部23は、スイッチ押圧部19に挟持状に固定可能な連結ブラケット50と、一端側が連結ブラケット50を介して前輪操舵機構13に連結され、他端側が操舵角検出部材27に連結される連結部材37とを備える。連結部材37は、長さ調整可能なロッド部材であり、両端部に設けられるボールジョイント37aを介して連結ブラケット50及び操舵角検出部材27に連結される。なお、連結ブラケット50(スイッチ押圧部19)と操舵角検出部材27との連結は、機体の左右いずれか一方側のみで十分である。図8に示すように、連結ブラケット50は、連結部材37との連結片38aを有する連結プレート38と、連結プレート38との間でスイッチ押圧部19を挟み込む挟持プレート39と、連結プレート38及び挟持プレート39を両側から挟み込む一対のエンドプレート40、41と、連結プレート38、挟持プレート及びエンドプレート40、41を貫通する複数のボルト42と、各ボルト42に螺合して連結プレート38、挟持プレート39及びエンドプレート40、41を一体的に固定するナット43とを備える。
【0026】
連結プレート38、挟持プレート39及びエンドプレート40、41は、パワステシリンダ17のロッド17aを通す挿通孔38b、39a、40a、41aと、挿通孔38b、39a、40a、41aの一部を開口してパワステシリンダ17のロッド17aに対する後付けを可能にする切欠き38c、39b、40b、41bとを備える。切欠き38c、39b、40b、41bの幅寸法は、ロッド17aの直径よりも大きく設定されるが、さらに本実施形態では、連結ブラケット50と旋回検出スイッチ部18との干渉が回避されるように切欠き38c、39b、40b、41bの位置及び幅寸法が設定される。
【0027】
本実施形態の操舵角検出部材27は、側面視でクランク状に折曲された位置に連結部材37との連結箇所27bを複数備える。つまり、本実施形態の操舵角検出部材27は、連結部材37との連結位置を、連結箇所の選択に基づいて前後方向及び左右方向に変更できるため、複数の機種において一つの操舵角検出部材27を兼用することが可能になる。
【0028】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、前輪4の操舵角を検出する第1操舵角センサ28とは別に、前輪4の直進付近の操舵角を第1操舵角センサ28よりも高い精度で局所的に検出する第2操舵角センサ29を備えるので、直進アシスト制御機能による直進付近の操舵角変化を高精度にフィードバックし、直進アシスト制御機能の制御精度を向上させることができる。
【0029】
しかも、第1操舵角センサ28及び第2操舵角センサ29は、同じ操舵角検出部材27の回動位置に基づいて前輪4の操舵角を検出するので、操舵角センサ毎に操舵角検出部材を設ける場合に比べ、部品点数の削減や設定の簡略化が図れる。
【0030】
また、第1操舵角センサ28は、操舵角検出部材27の回動角を検出するので、前輪4の操舵角を広範囲に検出できる。また、第2操舵角センサ29は、操舵角検出部材27に設けられたカム部材34に当接する従動部材35の変位を検出するので、カム部材34の形状設定に基づいて、前輪4の直進付近の操舵角を第1操舵角センサ28よりも高い精度で局所的に検出できる。
【0031】
また、カム部材34は、前輪4の操舵角が直進付近のとき、操舵角検出部材27の回動に応じて従動部材35を変位させる検出領域34aと、前輪4の操舵角が直進付近から外れたとき、操舵角検出部材27が回動しても従動部材35を変位させない不感帯領域34b、34cとを備えるので、前輪4の操舵角が直進付近から外れたとき、従動部材35が無駄に動いて誤った操舵角検出が行われることを防止できる。また、第2操舵角センサ28は、常に出力を行い、計測範囲外となるとハード的に出力を一定のものとし、ソフト的な規制を必要としないので、制御の簡略化も図れる。
【0032】
また、カム部材34は、検出領域34aの中間位置を示す目印34dを備えるので、カム部材34と従動部材35との位置調整を容易に行うことができる。
【0033】
また、従動部材35を変位自在に支持するセンサブラケット30は、前輪4の直進付近の操舵角変化に応じた従動部材35の変位をガイドする長孔状のガイド孔30cと、ガイド孔30cの外端を開口させ、前輪4の直進付近以外の操舵角変化に応じた従動部材35の変位を許容する切欠き30dとを備えるので、直進付近における従動部材35の変位をガイドしつつ、それ以外の変位による従動部材35の破損を防止できる。
【0034】
また、操舵角検出部材27は、連結部材37との連結箇所27bを複数備え、該連結箇所27bの選択に基づいて複数の機種に兼用できるので、機種毎に専用の操舵角検出部材27を用意する場合に比べ、大幅なコストダウンが図れる。
【0035】
また、前輪操舵機構13は、前輪4の操舵角が所定の切れ角を越えたとき、旋回検出スイッチ部18を押圧するスイッチ押圧部19を備え、連結部材37は、スイッチ押圧部19に挟持状に固定可能な連結ブラケット50を介して前輪操舵機構13に連結されるので、連結部材37の連結箇所を持たない既存の機種にも、操舵角検出部材27や操舵角センサ28、29を後付けして前輪4の操舵角を検出することが可能になる。
【0036】
また、連結ブラケット50は、旋回検出スイッチ部18との干渉を回避する切欠き38c、39b、40b、41bを備えるので、旋回検出スイッチ部18の検出精度を低下させる不都合もない。
【0037】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。例えば、前記実施形態の連結部材は、ロッド部材で構成され、スイッチ押圧部の動きを操舵角検出部材に伝達しているが、ファイナルケースの回動角が操舵角検出部材に伝達されるのであれば、連結部材の構成は任意であり、例えば、ワイヤ部材で連結部材を構成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 トラクタ
4 前輪
8 ステアリングホイール
13 前輪操舵機構
14 旋回検出機構
15 操舵角検出機構
17 パワステシリンダ
18 旋回検出スイッチ部
19 スイッチ押圧部
23 連結部
24 操舵角検出部
25 操舵角検出ユニット
27 操舵角検出部材
27b 連結箇所
28 第1操舵角センサ
29 第2操舵角センサ
30 センサブラケット
30c ガイド孔
30d 切欠き
34 カム部材
34a 検出領域
34b 不感帯領域
34d 目印
35 従動部材
37 連結部材
38c、39b、40b、41b 切欠き
50 連結ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8