特許第6704591号(P6704591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704591
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】III型高脂血症の判定を補助する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20200525BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G01N33/53 W
   G01N33/92 A
   G01N33/92 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-536425(P2017-536425)
(86)(22)【出願日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】JP2016074402
(87)【国際公開番号】WO2017033897
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2019年8月16日
(31)【優先権主張番号】特願2015-166764(P2015-166764)
(32)【優先日】2015年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】306008724
【氏名又は名称】富士レビオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 静也
(72)【発明者】
【氏名】増田 大作
(72)【発明者】
【氏名】磯村 光男
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3833183(JP,B2)
【文献】 増田大作,家族性III型高脂血症の病因と臨床における意義,Pharma. Med.,2015年 8月20日,Vol.33,No.8,P.29-33
【文献】 YUASA-KAWASE Miyako et al.,Apolipoprotein B-48 to Triglyceride Ratio Is A Novel and Useful Marker for Detection of Type III hyperlipidemia after Antihyperlipidemic Intervention,J. Antheroscler. Thromb.,2012年,Vol.19,No.9,P.862-871
【文献】 三浦伸一郎、朔啓二郎,脂質異常の診断のすすめ方,月刊臨床と研究,2011年10月20日,Vol.88,No.10,P.1224-1228
【文献】 NAKAOKA H. et al.,APOB48/TG RATIO IS A NOVEL AND USEFUL MARKER FOR THE DETECTION OF TYPE III HYPERLIPIDEMIA AFTER ANTIHYPERLIPIDEMIC INTERVENTIONS ,ATHEROSCLEROSIS SUPPLEMENTS,2010年,Vol.11,No.2,P.90
【文献】 SAKAI Naohiko et al.,Measurement of fasting serum apoB-48 levels in normolipidemic and hyperlipidemic subjects by ELISA,JOURNAL OF LIPID RESEARCH,2003年,Vol.44,No.6,PP.1256-1262
【文献】 W A GROENEWEGEN et al.,Dysbetailipoproteinemia in a Kindred With Hypodetalipoproteinemia Due to Mutations in the Genes for ApoB(ApoB-70.5) and ApoE(ApoE2),ARTERIOSCLEROSIS AND THROMBOSIS,1994年,Vol.14,No.11,PP.1695-1704
【文献】 FRANCOIS TERCE et al.,Apolipoprotein B-48 and B-100 Very Low Density Lipoproteins ,ARTERIOSCLEROSIS,1985年,Vol.5,No.2,PP.201-211
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から分離した血液試料中のアポB−48値、トリグリセリド値及びLDL−コレステロール値を測定する工程と、
アポB−48値をトリグリセリド値で除した比、及びアポB−48値をLDL−コレステロール値で除した比を算出する工程とを含み、
アポB−48値をトリグリセリド値で除した比及びアポB−48値をLDL−コレステロール値で除した比の両方が共に各カットオフ値よりも高いことが、III型高脂血症である可能性が高いことを示す、III型高脂血症の判定を補助する方法。
【請求項2】
前記血液試料が血清試料である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アポB−48値を、アポB−48に特異的な抗体を用いて測定する、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高脂血症のWHO分類の表現型の1つであるIII型高脂血症(familial type III hyperlipoproteinemia)の判定を補助する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高脂血症は、脂質異常症に分類され、コレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸などの血清脂質の増加した状態を指す。脂質異常症は、放置すると動脈硬化を発症し、さらに進展すると心筋梗塞、脳梗塞を発症し、最悪の場合には死に至る疾患であり、その効果的な診断法及び治療法の確立が待望されている。厚生労働省の平成22年国民健康・栄養調査結果では、無作為に抽出した30歳以上の日本国民において、脂質異常症が疑われる者の割合は、男性22.3%、女性17.7%であったことが報告されている。
【0003】
脂質異常症の基準は、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」(以下、単に「ガイドライン」とも称する)では、血清低比重リポ蛋白(LDL)−コレステロール(LDL−C≧140mg/dL)、血清トリグリセリド(TG≧150mg/dL)、血清高比重リポ蛋白(HDL)−コレステロール(HDL−C<40mg/dL)とされている。
【0004】
脂質異常症に関与する代表的なリポ蛋白としては、カイロミクロン(CM)、CMの血中での中間代謝産物であるカイロミクロンレムナント(CMレムナント)、超低比重リポ蛋白(VLDL)、VLDLの血中での中間代謝産物である超低比重リポ蛋白レムナント(VLDLレムナント)、低比重リポ蛋白(LDL)、高比重リポ蛋白(HDL)等が知られている。
【0005】
動脈硬化症の病因の一つとして、体内を循環する血液中に存在するリポ蛋白のうち、血管壁へのコレステロールの沈着を促進する種々のリポ蛋白が増加し、又は、コレステロールの沈着を防止する種々のリポ蛋白が減少することが挙げられている。そこで、これらのリポ蛋白の血中量を直接測定し、脂質異常症や動脈硬化症の診断及び治療に役立てることが望まれている。
【0006】
脂質代謝の面からは、例えば、CMレムナントやVLDLレムナント(これらはレムナント様リポ蛋白(remnant−like particles;RLP)と呼ばれている)、LDL等は、コレステロールを血管壁に運び込むリポ蛋白であり、HDLは、動脈硬化巣からコレステロールを引き抜くリポ蛋白である。RLPは、食後脂質異常症の動脈硬化病変発現に関与していることが指摘され、動脈硬化症の危険因子の一つである。RLPを構成する部分蛋白(アポ蛋白)は、アポB−48を含む外因性のCM、CMレムナントと、アポB−100を含む内因性のVLDL、VLDLレムナントからなる。
【0007】
アポB−48は、アポB−100のアミノ酸配列の一部と同一のアミノ酸配列を有するペプチドである。アポB−100のアミノ酸配列もアポB−48のアミノ酸配列は非特許文献1で報告されている。抗アポB−48特異抗血清は、非特許文献2〜4で報告されている。また、抗アポB−48モノクローナル抗体と、これを使用した血中アポB−48の測定方法は、特許文献1、2で報告され、アポB−48の定量的な測定を可能とする検量線作成用の標準液は、特許文献3で報告されている。
【0008】
高脂血症のWHO分類の表現型はI型、IIa型、IIb型、III型、IV型、V型に分類される(文献:日本臨床検査医学会「診断群別臨床検査のガイドライン2003」pp.118-121)。I型は高カイロミクロン血症、IIa型は高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、IIb型は高コレステロール・高中性脂肪血症、IV型は高中性脂肪血症、V型は高カイロミクロン血症、高VLDL−コレステロール血症である。高脂血症患者では、特にIIa型、IIb型、IV型が多くみられる。
【0009】
III型高脂血症(familial typeIII hyperlipoproteinemia)は、高トリグリセライド血症、高LDL−コレステロール血症であり、動脈硬化に至るリスクが高い一方、早期であれば食事療法に反応をしやすい表現型であることが知られ、早期の診断、治療が非常に有用である。
【0010】
しかし、従来、高脂血症の表現型の判定方法は、電気泳動法に依るため操作上の煩雑さを伴うこと、スループットが高くないこと、定性法であるため客観的な判断が困難であることから、日常的な方法とはいえなかった。
【0011】
また、非特許文献5には、III型高脂血症の判定に、血中のアポB−48定量値を用いて、アポB−48値をTG値で除した比を用いる事が有用と記載されている。しかし、アポB−48値/TG比がIII型において他の表現型と比して有意に高い値を示したものの、臨床的にIII型高脂血症を判定するには、その診断効率に改良の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3440852号公報
【特許文献2】特許第3833183号公報
【特許文献3】特開2013−224863号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Nature, Vol.323, p.738 (1986年10月)
【非特許文献2】J.Biol.Chem., Vol.265, No.15, pp.8358-8360 (1990年)
【非特許文献3】J.Biol.Chem., Vol.267, No.2, pp.1175-1182 (1992年)
【非特許文献4】Clinical Science., Vol.85, pp.521-524 (1993年)
【非特許文献5】J.Atheroscler.Thromb., Vol.19, No.9, pp.862-871 (2012年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、高脂血症のWHO表現型III型(以下III型)高脂血症を、従来よりも簡便な方法で、かつ、高い診断効率で、他の表現型と判別する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは鋭意研究した結果、III型高脂血症の判定として、血中アポB−48値を測定し、血中TG値だけではなく、LDL−C値と組み合わせることで、III型高脂血症を高い判断効率で判定できることを見出した。
【0016】
すなわち、本発明は、生体から分離した血液試料中のアポB−48値、TG値及びLDL−C値を測定する工程と、アポB−48値をTG値で除した比、及びアポB−48値をLDL−C値で除した比を算出する工程とを含み、アポB−48値をTG値で除した比及びアポB−48値をLDL−C値で除した比の両方が共に各カットオフ値よりも高いことがIII型高脂血症である可能性が高いことを示す、III型高脂血症の判定を補助する方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法によれば、III型高脂血症を、従来よりも簡便な方法で、かつ、高い診断効率で他の表現型と判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】下記比較例1で作成した、アポB-48のROC曲線(I,III,V型を陽性とした場合)を示す。
図2】下記比較例2で作成した、アポB-48のROC曲線(III型を陽性とした場合)を示す。
図3】下記比較例3で作成した、アポB-48/TGのROC曲線を示す。
図4】下記比較例4で作成した、アポB-48/LDL-CのROC曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記のとおり、本発明の方法では、生体から分離した血液試料中のアポB−48値、TG値及びLDL−C値を測定する。本明細書では、特段の説明がない限り、アポB−48値、TG値、LDL−C値は、それぞれ、μg/mL、mg/dL、mg/dLを単位とした値とするが、これらに限定するものではない。
ここで、血液試料としては、血清又は血漿、特に血清を好ましく用いることができる。なお、TG値及びLDL−C値は、通常の健康診断でも測定されており、それらの値を利用することもできるが、食事の影響等の経時変化を排除して判定の正確性を高めるためには、上記3つの値は、単一の血液試料の値を測定することが好ましい。また、検査に供する血液試料の供給源である「生体」は、通常、哺乳動物であり、好ましくはヒトである。また、高脂血症の型判別を必要とする対象は、通常、脂質異常症患者である。なお、ヒト脂質異常症患者は、血清低比重リポ蛋白(LDL)−コレステロール(LDL−C)≧140mg/dL、血清トリグリセリド(TG)≧150mg/dL、又は血清高比重リポ蛋白(HDL)−コレステロール(HDL−C)<40mg/dLの患者である。
【0020】
アポB−48値、TG値及びLDL−C値の測定方法自体は周知であり、そのためのキットも市販されているので、これらの値は市販のキットを用いた周知の方法により測定することができる。以下、簡単に説明する。
【0021】
<アポB−48の測定方法>
血中アポB−48値の測定は、アポB−48を定量的に測定できる方法であれば特に限定されるものではないが、アポB−48に特異的な抗体を用いた免疫測定方法を好適に用いることができ、例えば、特許文献1〜3に示す方法を用いることができる。アポB−48に特異的な抗体としては、特に、アポB−100とは実質的に反応しない、抗アポB−48モノクローナル抗体を使用することが好ましい。
【0022】
例えば、アポB−48の測定は、以下の2ステップサンドイッチ法を原理とする化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)を用いて行うことが可能であるが、この方法に限定されるものではない。
【0023】
CLEIA法によるアポB−48測定方法では、まず、血清または血漿試料を、界面活性剤を主成分とする処理液で処理し、カイロミクロン及びカイロミクロンレムナント中のアポB−48を露出させる。次に、この処理済試料を、抗アポB−48モノクローナル抗体結合粒子(固相;第1抗体)懸濁液に加えて反応させ、粒子を洗浄した後、アルカリホスファターゼ標識アポBモノクローナル抗体(第2抗体)を加えて反応させ、試料中に第1抗体−アポB−48−第2抗体の3者サンドイッチ複合体を形成させる。未反応のアルカリホスファターゼ標識抗体を洗浄除去し、化学発光基質(3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−(3’’−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタン−2−ナトリウム塩;AMPPD)を加えて酵素反応を行う。固相に結合した試料中のアポB−48量は、酵素によるAMPPDの分解に伴う発光量に反映されるため、この発光量を測定することで、アポB−48値を求めることができる。
【0024】
<TGの測定方法>
血中TG値の測定は、公知の方法をいずれも使用可能であるが、通常、医療機関で広く用いられる、血清からの酵素法による測定方法を好適に使用できる。
【0025】
<LDL−Cの測定方法>
LDL−C値の測定は、公知の方法をいずれも使用可能である。LDL−Cは、総コレステロール値(TC)を用いてFriedelwaldの式(F式;(LDL−C)=(TC)−(HDL−C)−(TG/5))により算出するのが通常である。TC値の測定方法、HDL−C値の測定方法は、公知の方法をいずれも使用可能であるが、通常、医療機関で広く用いられる、血清からのコレステロール脱水素酵素(UV)法、直接法をそれぞれ好適に使用できる。しかし、TG≧400mg/dLの場合は、正確な値が算出できないので、F式を用いず、酵素反応を原理とする直接法を用いる事もある。
【0026】
本発明の方法では、測定した上記3つの値から、アポB−48値をTG値で除した比及びアポB−48値をLDL−C値で除した比を算出する。これらの比が、いずれも各カットオフ値よりも高い場合に、III型高脂血症である可能性が高いと判断することができる。
【0027】
ここで、各カットオフ値は、好ましくはROC(Receiver Operating Characteristic)分析により、より好ましくは各種脂質異常症患者を母集団とするROC(Receiver Operating Characteristic)分析により決定することができる。ROC分析は、カットオフ値を変化させ、それぞれのカットオフ値での有病正診率を縦軸に、1-無病正診率を横軸にプロットしたROC曲線に基づく分析であり、ROC曲線上の、有病正診率、無病正診率がともに1となる点(グラフの左上端)に最も近接する点に相当するカットオフ値を、最も診断効率の高いカットオフ値として採用する方法である。ここで、「有病正診率」は、「陽性確かさ率」、「陽性率」又は「感度」とも呼ばれ、真陽性例中に占める陽性と判定された症例数の割合を示す値であり、「無病正診率」は、「陰性確かさ率」又は「特異度」とも呼ばれ、真陰性例中に占める無病と判定された症例数の割合を示す値である。
【0028】
下記実施例では、123名のヒト脂質異常症患者についてROC分析を行った結果、アポB−48値(μg/mL)をTG値(mg/dL)で除した前記比の前記カットオフ値が0.045、アポB−48値(μg/mL)をLDL−C値(mg/dL)で除した前記比の前記カットオフ値が0.109であった。したがって、これらの値を各カットオフ値として用いることができる。もっとも、測定方法による測定値の差や母集団の差異に基づく差を考慮すれば、各カットオフ値はこれらの値に限定されるものではなく、通常、これらの値±20%の範囲、好ましくは、これらの値±10%の範囲から選択される。
【0029】
本発明の方法によれば、血液試料中のアポB−48値、TG値及びLDL−C値を測定するという簡便な操作により、高い診断効率でIII型高脂血症の判定を行うことができる。下記実施例では、非特許文献5に記載されたアポB−48値をTG値で除した比を用いた方法では、診断効率が72%であったが、本発明の方法では89%であった。なお、「診断効率」は、「正診率」とも呼ばれ、全被験例のうち、正しく判定された症例数の占める割合を示す。
【実施例】
【0030】
対象患者及び測定方法
ガイドラインの基準(上述)で脂質異常症と判断された123例のヒト脂質異常症患者の血清について、アポB−48値、TG値及びLDL−C値を測定した。高脂血症のWHOの表現型分類は、I型4例、IIa型29例、IIb型33例、III型11例、IV型23例、V型23例であった。アポB−48値は、「アポ蛋白B−48測定キット」(富士レビオ株式会社製)と、全自動免疫測定装置「ルミパルスフォルテ」(富士レビオ株式会社製)とを用いて測定した。TG値は通常の酵素法、LDL−C値は通常のF式法を用いて算出した。
【0031】
比較例1
I型、III型、V型を陽性とし、IIa型、IIb型、IV型を陰性として、アポB−48値についてROC曲線(受信者動作特性曲線)(図1)を作成し、アポB−48値のカットオフ値(10.0μg/mL)を割り出した。前記カットオフ値を基準として、カットオフ値以上の測定値を示す検体を陽性、カットオフ値未満の測定値を示す検体を陰性として振り分けた。振り分けられた検体の陽性確かさ率(有病正診率)、振り分けられた検体の陰性確かさ率(無病正診率)および合算した診断効率を算出した。
【0032】
比較例2
III型を陽性とし、I型、IIa型、IIb型、IV型、V型を陰性とし、アポB−48値についてROC曲線(受信者動作特性曲線)(図2)を作成し、アポB−48値のカットオフ値(15.0μg/mL)を割り出した。前記カットオフ値を基準として、カットオフ値以上の測定値を示す検体を陽性、カットオフ値未満の測定値を示す検体を陰性として振り分けた。振り分けられた検体の陽性確かさ率(有病正診率)、振り分けられた検体の陰性確かさ率(無病正診率)および合算した診断効率を算出した。
【0033】
比較例3
III型を陽性とし、I型、IIa型、IIb型、IV型、V型を陰性とし、アポB−48値をTG値で除した比(アポB−48/TG)についてROC曲線(図3)を作成し、カットオフ値(0.045)を割り出した。前記カットオフ値を基準として、カットオフ値以上の測定値を示す検体を陽性、カットオフ値未満の測定値を示す検体を陰性として振り分けた。振り分けられた検体の陽性確かさ率(有病正診率)、振り分けられた検体の陰性確かさ率(無病正診率)および合算した診断効率を算出した。
【0034】
比較例4
III型を陽性とし、I型、IIa型、IIb型、IV型、V型を陰性とし、ROCから算出したアポB−48値をLDL−C値で除した比(アポB−48/LDL−C)についてROC曲線(図4)を作成してカットオフ値(0.109)を割り出した。前記カットオフ値を基準として、カットオフ値以上の測定値を示す検体を陽性、カットオフ値未満の測定値を示す検体を陰性として振り分けた。振り分けられた検体の陽性確かさ率(有病正診率)、振り分けられた検体の陰性確かさ率(無病正診率)および合算した診断効率を算出した。
【0035】
実施例1
III型を陽性とし、I型、IIa型、IIb型、IV型、V型を陰性とし、それぞれROC曲線(図3及び図4)から割り出したアポB−48/TG、及びアポB−48/LDL−Cのカットオフ(それぞれ0.045、0.109)を基準として、いずれもカットオフ値以上の測定値を示す検体を陽性、それ以外の検体を陰性として、各検体を陽性または陰性に振り分けた。振り分けられた検体の陽性確かさ率(有病正診率)、振り分けられた検体の陰性確かさ率(無病正診率)および合算した診断効率を算出した。
【0036】
比較例1〜4及び実施例1の有病正診率、無病正診率、診断効率を表1に示す。比較例1では、ROC曲線から割り出されたアポB−48値をカットオフとしたI型、III型、V型の診断効率は81%であった。比較例2では、ROC曲線から割り出されたアポB−48値をカットオフとしたIII型の診断効率は77%であった。比較例3では、ROC曲線から割り出されたアポB−48/TG値をカットオフとした、III型の診断効率は72%であった。比較例4では、ROC曲線から割り出されたアポB−48/LDL−C値をカットオフとしたIII型の診断効率は79%であった。実施例1では、ROC曲線から算出したアポB−48/TG値及びアポB−48/LDL−C値をカットオフとしたIII型の診断効率は89%を示した。アポB−48/TG及びアポB−48/LDL−Cを用いる事でより高い診断効率を示した。
【0037】
通常、脂質異常症と判断された時点で、被験者のTG値、LDL−C値は測定済みである。本発明の方法は、TG値及びLDL−C値を測定したのと同一の血清検体、またはほぼ同時に採取された血清または血漿検体中のアポB−48値を測定し、これと既知のTG値、LDL−C値を組み合わせることで、具体的にはアポB−48/TG及びアポB−48/LDL−Cを用いることで、高いIII型判断効率を示すことがわかった。
【0038】
【表1】
図1
図2
図3
図4