(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705002
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ドロップレット回収装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20200525BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
G03F7/20 521
H05G2/00 K
G03F7/20 503
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-536592(P2018-536592)
(86)(22)【出願日】2016年8月31日
(86)【国際出願番号】JP2016075529
(87)【国際公開番号】WO2018042563
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2019年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】上鉄穴 一磨
(72)【発明者】
【氏名】岩本 文男
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/097888(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/063825(WO,A1)
【文献】
特表2012−523666(JP,A)
【文献】
特開2013−084892(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/096377(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0258748(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20−7/24
G03F 9/00−9/02
H01L 21/027
H01L 21/30
H01L 21/46
H05G 1/00−2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバの壁の外壁面側に配置され、前記チャンバの壁に設けられる開口を介して前記チャンバ内部に連通するよう構成される回収用容器と、
前記回収用容器の内部に配置され、前記開口から前記回収用容器に供給されるドロップレットを衝突させる衝突板と、
前記衝突板よりも前記開口側に配置され、前記衝突板に衝突するドロップレットの衝撃を緩和する緩衝部材と
を備え、
前記緩衝部材は、複数の線材を束ねて板部材に固定した線材束を有し、
前記複数の線材はそれぞれカーボンにより構成され、前記板部材はグラファイトにより構成され、
前記複数の線材は、一方向に並べられた状態で、グラファイト化された接着剤により前記板部材に固定される
ドロップレット回収装置。
【請求項2】
前記板部材は、第1板部材と第2板部材とにより構成され、
前記複数の線材は、前記第1板部材と前記第2板部材との間に配置され、前記グラファイト化された接着剤により前記第1板部材および前記第2板部材に固定される
請求項1に記載のドロップレット回収装置。
【請求項3】
前記複数の線材の一端側の端部は前記第1板部材および前記第2板部材に固定され、前記複数の線材の他端側の端部は他の前記第1板部材および前記第2板部材に固定される
請求項2に記載のドロップレット回収装置。
【請求項4】
前記複数の線材が並べられる方向の両端に位置する線材間には、最も近接する線材間の幅よりも大きい幅の空間が設けられる
請求項1に記載のドロップレット回収装置。
【請求項5】
前記複数の線材は、第1線材と、前記第1線材よりも短い第2線材とにより構成され、
前記第2線材は、前記第1線材の間に配置され、
前記空間は、互いに隣り合う第1線材間である
請求項4に記載のドロップレット回収装置。
【請求項6】
前記複数の線材は、複数の組に分けられ、
互いに隣り合う組間の幅は、前記組を構成する線材のうち互いに隣り合う線材間の幅よりも大きくされ、
前記空間は、互いに隣り合う組間である
請求項4に記載のドロップレット回収装置。
【請求項7】
前記複数の線材の一端側の端部が前記板部材に固定され、
前記複数の線材は、当該線材の他端側に向かうほど線材間が大きくなるよう配置される
請求項1に記載のドロップレット回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドロップレット回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、20nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長13nm程度の極端紫外(EUV:extreme ultraviolet)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系(reduced projection reflective optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
極端紫外光生成システムとしては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置と、放電によって生成されるプラズマが用いられるDPP(Discharge Produced Plasma)式の装置と、軌道放射光が用いられるSR(Synchrotron Radiation)式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許昭56−17914号公報
【特許文献2】特開昭59−217994号公報
【特許文献3】特開2015−50436号公報
【特許文献4】国際公開第2015/097888号
【0005】
本開示の一態様によるドロップレット回収装置は、チャンバの壁の外壁面側に配置され、前記チャンバの壁に設けられる開口を介して前記チャンバ内部に連通するよう構成される回収用容器と、回収用容器の内部に配置され、開口から回収用容器に供給されるドロップレットを衝突させる衝突板と、衝突板よりも開口側に配置され、衝突板に衝突するドロップレットの衝撃を緩和する緩衝部材とを備え、緩衝部材は、複数の線材を束ねて板部材に固定した線材束を有し、複数の線材はそれぞれカーボンにより構成され、板部材はグラファイトにより構成され、複数の線材は、一方向に並べられた状態で、グラファイト化された接着剤により板部材に固定されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、極端紫外光生成システムの全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、ドロップレット回収装置の概略構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、比較例における線材束の概略構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3の線材束を線材の並び方向側から見た様子を示す側面図である。
【
図5】
図5は、ドロップレット回収装置でドロップレットが回収される様子を示す図である。
【
図6】
図6は、
図3の線材束を線材の一端側から見た様子を示す側面図である。
【
図7】
図7は、実施形態1における線材束の概略構成例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7の線材束を線材の並び方向側から見た様子を示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図7の線材束を線材の一端側から見た様子を示す側面図である。
【
図10】
図10は、実施形態2における線材束の概略構成例を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、実施形態3における線材束の概略構成例を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、実施形態4における線材束の概略構成例を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、実施形態5における線材束の概略構成例を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、実施形態6における線材束の概略構成例を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、実施形態7における線材束の概略構成例を示す斜視図である。
【0007】
1.概要
2.極端紫外光生成システムの説明
2.1 全体構成
2.2 動作
3.比較例
3.1 ドロップレット回収装置の構成
3.2 動作
3.3 課題
4.実施形態1
4.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
4.2 作用・効果
5.実施形態2
5.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
5.2 作用・効果
6.実施形態3
6.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
6.2 作用・効果
7.実施形態4
7.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
7.2 作用・効果
8.実施形態5
8.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
8.2 作用・効果
9.実施形態6
9.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
9.2 作用・効果
10.実施形態10
10.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
10.2 作用・効果
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成および動作の全てが本開示の構成および動作として必須であるとは限らない。
なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0009】
1.概要
本開示の実施形態は、極端紫外線(EUV:Extreme UltraViolet)と呼ばれる波長の光を生成する極端紫外光生成システムに関する。なお、以下本明細書では、極端紫外光は、EUV光と称される場合がある。
【0010】
2.極端紫外光生成システムの説明
2.1 全体構成
図1に示すように、本実施形態の極端紫外光生成システム1は、チャンバ2、ドロップレット供給装置3、ドロップレット回収装置4、エッチングガス供給装置5、排気装置6を含んでいる。
【0011】
チャンバ2は、密閉可能かつ減圧可能な容器であり、チャンバホルダ21により保持される。このチャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられ、その貫通孔は、ウインドウ22によって塞がれている。ウインドウ22は、チャンバ2の外部に配置されるレーザ装置(図示せず)から出射されるパルスレーザ光PLを透過するものとされる。
【0012】
チャンバ2の内部では、チャンバ2の内部に供給されるドロップレットDLの軌道OTの一部を含む所定の領域が、そのドロップレットDLをプラズマ化するプラズマ生成領域ARとされる。
【0013】
またチャンバ2の内部では、回転楕円面形状の反射面23Aを有する集光ミラー23が、例えばチャンバ2の壁に固定されるミラーホルダ23Bにより保持されている。この集光ミラー23は、プラズマ生成領域ARでのドロップレットDLのプラズマ化により生じる光に含まれるEUV光ELを反射面23Aで反射させて焦点に集光し、チャンバ2の出射口24から露光装置(図示せず)に出力する。集光ミラー23の焦点は、第1焦点と第2焦点とを有していてもよい。例えば、第1焦点はプラズマ生成領域ARに位置され、第2焦点は露光装置(図示せず)の仕様等に応じて規定される集光位置である中間焦点IFに位置される。なお、集光ミラー23には、ウインドウ22からチャンバ2内に伝搬したパルスレーザ光PLが通る貫通孔23Cが設けられていてもよい。
【0014】
またチャンバ2の内部には、ウインドウ22からチャンバ2内に伝搬したパルスレーザ光PLをプラズマ生成領域ARに集光するレーザ集光光学系25が設けられる。例えば、レーザ集光光学系25は、集光ミラー23の反射面23A側とは逆側に配置されるプレート26に固定され、ウインドウ22からチャンバ2内に伝搬したパルスレーザ光PLを集光ミラー23の貫通孔23Cを介してプラズマ生成領域ARに集光する。なお、プレート26が3軸方向に移動し得るよう構成され、そのプレート26が移動されることでレーザ集光光学系25によってプラズマ生成領域ARに集光される集光位置が変更されてもよい。
【0015】
ドロップレット供給装置3は、プラズマ生成領域ARでプラズマ化するターゲットとされる物質であるターゲット物質をドロップレットDLとしてチャンバ2の内部に供給するものであり、例えば、チャンバ2の壁を貫通するように取り付けられる。ドロップレット供給装置3から供給されるターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノンのいずれか、または、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0016】
ドロップレット回収装置4は、チャンバ2の内部に供給されたドロップレットDLのうちプラズマ生成領域ARでプラズマ化されなかったドロップレットDLを回収するものである。例えば、ドロップレット回収装置4は、チャンバ2のうちドロップレット供給装置3が取り付けられる壁とは反対側のチャンバ2の外側に設けられる。
【0017】
エッチングガス供給装置5は、ドロップレットDLのプラズマ化などにより生じたデブリおよびイオンに反応するガスをチャンバ2の内部に供給するものである。例えば、エッチングガス供給装置5は、ガス発生部5Bと、そのガス発生部5Bで発生されるガスをチャンバ2内に導入するガス導入部5Aとにより構成し得る。ターゲット物質であるドロップレットDLの材料がスズである場合、エッチングガス供給装置5から供給されるガスは水素ガスや水素を含有するガス等とされる。この場合、ドロップレットDLのプラズマ化により生じるスズ微粒子およびスズイオンは水素と反応し、常温で気体のスタンナンとなる。
【0018】
排気装置6は、チャンバ2内の残留ガスを排気するものである。この排気装置6によって排気される残留ガスには、デブリおよびイオンと、それらがエッチングガスと反応することで生成される生成物と、未反応のエッチングガスとが含まれる。なお、排気装置6は、エッチングガス供給装置5からチャンバ2の内部に供給されるエッチングガスのガス量と同量の残留ガス量を排気するようにしてもよく、チャンバ2の内圧を略一定に保つようにしてもよい。
【0019】
2.2 動作
レーザ装置(図示せず)から出射されるパルスレーザ光PLは、ウインドウ22を透過してチャンバ2内のレーザ集光光学系25に伝搬し、そのレーザ集光光学系25によってプラズマ生成領域ARに集光される。また、ドロップレット供給装置3からチャンバ2内に供給されるドロップレットDLは、そのドロップレットDLの軌道OTの一部を含むプラズマ生成領域ARを通る。
【0020】
プラズマ生成領域ARを通るドロップレットDLの一部はレーザ集光光学系25によって集光されるパルスレーザ光PLが照射され、他の一部はパルスレーザ光PLが照射されることなくドロップレット回収装置4により回収される。
【0021】
パルスレーザ光PLが照射されたドロップレットDLはプラズマ化し、そのプラズマからEUV光ELを含む光が放射する。EUV光ELは集光ミラー23の反射面23Aで選択的に反射し、チャンバ2の外部の露光装置(図示せず)に出射される。
【0022】
また、ドロップレットDLがプラズマ化した場合、EUV光ELを含む光が放射するとともにデブリおよびイオンが拡散する。デブリおよびイオンの一部は、エッチングガス供給装置5からチャンバ2の内部に供給されるエッチングガスと反応することで気体に変化する。このため、ウインドウ22や集光ミラー23の反射面23Aへのデブリ堆積およびイオン衝突によるスパッタリングが抑制される。
【0023】
エッチングガスと、そのエッチングガス反応することで変化した気体と、エッチングガスと未反応であったデブリおよびイオンとは排気装置6により排気され、これらがチャンバ2内に残留することが抑制される。
【0024】
なお、プラズマ生成領域ARに達するドロップレットDLに対してプリパルスレーザ光を照射してターゲット物質を拡散させた後、その拡散ターゲット物質に対してメインパルスレーザ光を照射して拡散ターゲット物質をプラズマ化する場合がある。この場合、レーザ光のエネルギーからEUV光ELのエネルギーへの変換効率(CE)が向上し得る。
【0025】
3.比較例
3.1 ドロップレット回収装置の構成
次に、下記の実施形態の比較例としてドロップレット回収装置の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略される。
【0026】
図2に示すように、比較例のドロップレット回収装置は、回収用容器10、ホルダフレーム20、衝突板30、緩衝部材40、ヒータ50および被覆ケース60を備えている。
【0027】
回収用容器10は、プラズマ生成領域ARでプラズマ化されなかったドロップレットDLを回収するための容器であり、チャンバ2の壁の外壁面側に配置される。また、回収用容器10は、密閉可能かつ減圧可能な容器であり、その内部はチャンバ2の壁に設けられる開口27を介してチャンバ2内部と連通される。この回収用容器10は、チャンバ2と一体に成形されていてもよく、チャンバ2とは別体にされ、所定の固定具でチャンバ2に固定されていてもよい。
【0028】
例えば、回収用容器10は、アブソーバ部11とタンク部12とにより構成し得る。アブソーバ部11は、チャンバ2の開口27から供給されるドロップレットDLの衝突に起因する衝撃を緩和するための容器部分である。タンク部12は、ドロップレットDLの衝突により破砕するドロップレットDLの小滴を貯留するための容器部分である。
【0029】
アブソーバ部11は、入口側の開口部11Aおよび出口側の開口部11Bを有する。入口側の開口部11Aは、ドロップレットDLの軌道OT上に設けられ、チャンバ2の開口27に対向される。出口側の開口部11Bは、チャンバ2の開口27とは逆側であって最も下側に位置しており、例えば管状に形成されている。タンク部12は、そのタンク部12を設置した場合に上側となる位置に開口部12Aを有しており、例えば管状に形成されている。
【0030】
アブソーバ部11における出口側の開口部11Bは、タンク部12の開口部12Aに挿通して嵌合し得るように形成されている。アブソーバ部11における出口側の開口部11Bがタンク部12の開口部12Aに嵌合された場合、アブソーバ部11の内部空間とタンク部12の内部空間とが連通される。なお、開口部11Bと開口部12Aとの嵌合部分は密閉されてもよい。また、アブソーバ部11とタンク部12とが一体に形成されることでアブソーバ部11の内部空間とタンク部12の内部空間とが連通されていてもよい。また、アブソーバ部11およびタンク部12の内壁面と外壁面との双方または一方がSiC(炭化ケイ素)等の被膜で覆われていてもよい。
【0031】
ホルダフレーム20は、衝突板30および緩衝部材40を保持するためのフレーム部材である。例えば、ホルダフレーム20は、矩形状の板状部材として構成され、ドロップレットDLの軌道OTから所定距離を隔ててその軌道OTに沿って配置される。このホルダフレーム20は、アブソーバ部11の壁などに固定される。
【0032】
衝突板30は、回収用容器10におけるアブソーバ部11の内部に設けられ、チャンバ2の開口27から回収用容器10に供給されるドロップレットDLを衝突させるものである。この衝突板30は、チャンバ2の開口27から遠ざかる方向に向かってドロップレットDLの軌道OTに対して斜めに配置され、ホルダフレーム20に固定される。衝突板30のうちドロップレットDLが衝突する面である衝突面30Aは、アブソーバ部11における出口側の開口部11B側に向けられる。衝突板30の材料としては、SUSなどの合金が挙げられる。
【0033】
緩衝部材40は、衝突板30に衝突するドロップレットDLの衝撃を緩和するものである。例えば、緩衝部材40は、複数の線材41を固定具42に固定して束ねられる線材束43を1又は複数有する。
【0034】
線材41および固定具42は、熱伝導度が高くドロップレットDLと化学反応し難い材質とされる。具体的には例えば、固定具42がSUSなどの合金により構成され、線材41が固定具42よりも熱伝導度が高いカーボンにより構成される。
【0035】
図3および
図4に示すように、複数の線材41は、線材41の長手方向とは直交する方向に沿って並べられて配置される。固定具42は、一対の板部材42Aおよび42Bと、ボルトおよびナット(図示せず)とにより構成される。各板部材42A,42Bにおける長手方向の端部にはボルトを挿通可能な一対の貫通孔42Hが設けられる。これら一対の貫通孔42Hの間に各線材41が並べられ、当該線材41の端部が板部材42Aおよび42Bで挟み込まれた状態で、当該線材41と一対の板部材42A,42Bとがボルトおよびナットにより締め付けられることで線材束43が得られる。
【0036】
線材束43の一端側はホルダフレーム20に配置され、その線材束43における固定具42を通じてホルダフレーム20に固定される。線材束43の他端側はホルダフレーム20に固定されず自由端にされ、ドロップレットDLの軌道OT上に位置する部分を有している。線材束43は、ドロップレットDLの軌道OTに対して斜めであって、その線材束43における各線材41の自由端側がチャンバ2の開口27から遠ざかるようそれぞれ配置される。
【0037】
緩衝部材40が複数の線材束43を有する場合、当該線材束43はホルダフレーム20のそれぞれ異なる位置に固定され、それら線材束43における線材41が延びる方向が異なっている。例えば、
図2に示すように、ドロップレットDLの軌道OTを含む面を境界として一方側と他方側に交互に線材束43が配置される。また、複数の線材束43のうち衝突板30に最も近い線材束43は、衝突板30と同様に、アブソーバ部11における出口側の開口部11B側に向けられる。なお、軌道OTを含む面は、
図2に示す例では紙面に対して直交する面であるが、境界を示す基準であれば紙面に対して直交していなくてもよい。
【0038】
ヒータ50は、回収用容器10内の温度がドロップレットDLの融点以上になるよう回収用容器10を加熱するものである。例えば、ヒータ50は、回収用容器10のアブソーバ部11の外壁に設けられるアブソーバ用ヒータ51と、回収用容器10のタンク部12の外壁に設けられるタンク用ヒータ52により構成し得る。
【0039】
被覆ケース60は、空間を隔てて回収用容器10を被覆するケースである。例えば、被覆ケース60は、回収用容器10のアブソーバ部11を被覆するアブソーバケース61と、回収用容器10のタンク部12を被覆するタンクケース62とにより構成し得る。アブソーバケース61とタンクケース62とは、互いに分離可能に構成されていてもよく、一体に構成されていてもよい。この被覆ケース60は、回収用容器10に取り付けられるヒータ50が発生する熱が大気に逃げるのを抑制する。従って、ヒータ50による加熱効率が向上する。なお、タンクケース62にはタンクホルダ62Aが設けられていてもよい。
【0040】
3.2 動作
ヒータ50が駆動されると、そのヒータ50によって回収用容器10壁面がドロップレットDLの融点以上に保持される。例えば、ドロップレットDLの材料がスズである場合、ヒータ50における設定温度が240℃から400℃の範囲で設定される。この設定温度が370℃で設定され、線材束43の複数の線材41がカーボンファイバーにより構成された場合、回収用容器10壁面の温度はおおむね370℃で保持され、その回収用容器10内に配置される線材41は290℃程度となる。この時回収用容器10内に配置される線材41は、ホルダフレーム20を介した固定具42からの伝熱およびアブソーバ部11からの輻射によって加熱される。
【0041】
ドロップレットDLの融点以上の温度に保持された回収用容器10には、例えば30〜120m/s程度の速度のドロップレットDLが供給される。
図5に示すように、アブソーバ部11の入口側の開口部11Aからアブソーバ部11内に入ったドロップレットDLは線材束43の線材41に衝突する。ドロップレットDLは、線材41に衝突することで運動エネルギーが小さくなる。従って、衝突板30にドロップレットDLが衝突する衝撃が緩和される。線材束43が2以上である場合には、ドロップレットDLがドロップレットDLの軌道OTの末端側に進行するほど、線材束43を経由する回数が多くなる。この場合、ドロップレットDLは、軌道OTの末端側に進行するほどその運動エネルギーが小さくなる。
【0042】
また、線材束43の線材41に衝突したドロップレットDLは破砕して小滴となり、ドロップレットDLの軌道OTの周囲に分散しながら進行する。線材束43が2以上である場合には、ドロップレットDLがドロップレットDLの軌道OTの末端側に進行するほど、線材束43を経由する回数が多くなる。この場合、ドロップレットDLは、軌道OTの末端側に進行するほど細かく破砕される。
【0043】
運動エネルギーが小さくなった小滴は衝突板30に衝突することでより細かくなり、それらの一部はアブソーバ部11の出口側の開口部11Bからタンク部12内に落下する。このタンク部12に至るまでのドロップレットDLの進行経路上にアブソーバ部11の線材束43および衝突板30が配置されることで、タンク部12に直接的にドロップレットDLが進行する場合に比べると、タンク部12から小滴が飛散することが抑制される。
【0044】
3.3 課題
ところで、線材束43では、上述したように、一対の板部材42A,42Bにおける長手方向の両端部が締め付けられることで、当該板部材42Aおよび42Bの間に配置される複数の線材41が固定されている。
【0045】
このため、
図6に示すように、一対の板部材42A,42Bの両端部の締め付けによって、当該板部材42A,42Bの中央部分が互いに離れるように撓んでその撓んだ部分の線材41を固定する力が弱くなる。したがって、回収用容器10に供給されたドロップレットDLの衝突等に起因して線材41が分散する、あるいは、板部材42A,42Bから線材41が脱落するといった不都合が生じ易い傾向になる。
【0046】
このような不都合が生じると、回収用容器10に供給されたドロップレットDLが線材41に接触することなく衝突板30に衝突することで、アブソーバ部11の内部で跳ね回る小滴の運動エネルギーが増大し、その一部がアブソーバ部11からチャンバ2に拡散する可能性が大きくなる。
【0047】
チャンバ2に小滴が拡散した場合、その小滴はエッチングガスと反応するか、もしくは、未反応のまま排気装置6によって排気される。しかしながら、アブソーバ部11からチャンバ2に拡散した小滴が排気装置6によって排気されることなく集光ミラー23などに付着し、EUV光ELの出力が低下する、あるいは、EUV光ELが生成されないといったことが懸念される。
【0048】
そこで、以下の実施形態では、ドロップレットDLの小滴がチャンバ2に拡散することを低減させ得るドロップレット回収装置が例示される。
【0049】
4.実施形態1
4.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
次に、実施形態1としてドロップレット回収装置における一部の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0050】
図7および
図8に示すように、本実施形態のドロップレット回収装置では、比較例の線材束43に代えて、その線材束43とは異なる構成の線材束63が採用される。この線材束63は、カーボンにより構成される複数の線材41をグラファイト板64に接着剤65により固定して束ねられる。
【0051】
グラファイト板64は、グラファイトにより構成される板部材であり、例えば直方体形状とされる。このグラファイト板64の長手方向に沿って複数の線材41が並べられる。例えば、複数の線材41が並べられる方向の両端に位置する線材間の距離である線材幅W1を25mmとした場合、その線材幅の範囲内に12000本の線材41が並べられる。また、互いに隣り合う線材間の幅W2はおおむね同程度とされる。このように並べられる線材41の一方側の端部がグラファイト板64の一面側に配置される。なお、グラファイト板64の表面のうち、少なくとも接着剤65が配置される部分以外の表面が、SiC(炭化ケイ素)等の被膜で覆われていてもよい。
【0052】
接着剤65は、線材41とグラファイト板64とをフェノール系樹脂によって結合した後に焼成することで、フェノール系樹脂をグラファイト化したものとして得られる。この接着剤65は、カーボン・コンポジットの状態で複数の線材41とグラファイト板64とを結合している。
【0053】
4.2 作用・効果
以上のとおり、本実施形態の線材束63では、複数の線材41が、一方向に並べられた状態で、グラファイト化された接着剤65によりグラファイト板64に固定される。このため、
図9に示すように、カーボンにより構成される複数の線材41と、グラファイトにより構成される板部材であるグラファイト板64とが接着剤65により一体的に結合されるので、当該線材41を固定する力が部分的に弱くなることが解消される。
【0054】
したがって、回収用容器10に供給されたドロップレットDLの衝突等に起因して線材41が分散する、あるいは、グラファイト板64から線材41が脱落するといった不都合が抑制される。このため、回収用容器10に供給されたドロップレットDLが線材41に接触することなく衝突板30に衝突することで、アブソーバ部11の内部で跳ね回る小滴の運動エネルギーが増大することがなくなる。この結果、本実施形態のドロップレット回収装置では、ドロップレットDLの小滴がアブソーバ部11からチャンバ2に拡散することが低減される。
【0055】
5.実施形態2
5.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
次に、実施形態2としてドロップレット回収装置における一部の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0056】
図10および
図11に示すように、本実施形態のドロップレット回収装置では、実施形態1の線材束63におけるグラファイト板64が、第1板部材64Aと第2板部材64Bとにより構成される。
【0057】
第1板部材64Aと第2板部材64Bとはともにグラファイトにより構成されており、例えば互いに同形同大とされてもよい。なお、第1板部材64Aおよび第2板部材64Bの表面のうち、少なくとも接着剤65が配置される部分以外の表面が、SiC(炭化ケイ素)等の被膜で覆われていてもよい。
【0058】
これら第1板部材64Aと第2板部材64Bとの間に複数の線材41の一方側の端部が配置され、当該線材41は接着剤65により第1板部材64Aおよび第2板部材64Bに固定される。
【0059】
5.2 作用・効果
以上のとおり、本実施形態の線材束63では、
図12に示すように、複数の線材41がグラファイト化された接着剤65により第1板部材64Aおよび第2板部材64Bに挟まれた状態で固定される。このため、本実施形態の線材束63は、第1板部材64Aおよび第2板部材64Bに挟んだ状態で双方に複数の線材41を固定している分だけ上記実施形態1の場合に比べてより線材41を安定的に保持し得る。また、本実施形態の線材束63は、第1板部材64Aおよび第2板部材64Bの厚み方向に重ねて線材41を配置しても、当該線材41を安定的に保持し得るため、高密度化し易くなる。
【0060】
6.実施形態3
6.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
次に、実施形態3としてドロップレット回収装置における一部の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0061】
図13に示すように、本実施形態のドロップレット回収装置では、複数の線材41が並べられる方向の両端に位置する線材間に、最も近接する線材間の幅W3よりも大きい幅の空間AR1が設けられる。
【0062】
本実施形態の場合、複数の線材41が第1線材41Aとその第1線材41Aよりも短い第2線材41Bとにより構成され、当該第2線材41Bが第1線材41Aの間に配置されるように並べられる。なお本実施形態の場合、互いに隣り合う第1線材41Aの線材間と、第2線材41Bの線材間と、第1線材41Aおよび第2線材41Bの線材間とはそれぞれ同程度とされる。
【0063】
第2線材41Bは、例えば第1線材41Aを切断することで得られる。なお、予め得た第2線材41Bが接着剤65によりグラファイト板64に固定されていてもよく、グラファイト板64に接着剤65により固定された第1線材41Aの一部を切断することで第2線材41Bが得られてもよい。
【0064】
本実施形態では、第1線材41Aと第2線材41Bとで囲まれる空間AR1は、当該第1線材41Aおよび第2線材41Bの固定端側とは逆の自由端側に設けられる。また、線材幅の中心に位置する第1線材41Aを境界として2つの空間AR1が線対称となる位置関係となるよう第1線材41Aと第2線材41Bとが配列されてもよい。
【0065】
なお、第1線材41Aの間に配置される第2線材41Bの数は1本であっても2本以上であってもよい。また、第1線材41Aの間に配置される第2線材41Bの数が2本以上である場合、当該第2線材41Bの長さは同じであっても異なっていてもよい。さらに、本実施形態の線材束63におけるグラファイト板64は、実施形態2と同様に、第1板部材64Aおよび第2板部材64Bにより構成され、当該第1板部材64Aおよび第2板部材64Bの間に第1線材41Aと第2線材41Bが挟まれた状態で接着剤65により固定されていてもよい。
【0066】
6.2 作用・効果
以上のとおり、本実施形態の線材束63では、複数の線材41が並べられる方向の両端に位置する線材間に、第1線材41Aとその第1線材41Aよりも短い第2線材41Bとに囲まれる空間AR1が設けられる。この第2線材41Bの長さや、第2線材41Bを並べる本数等に応じて、例えば、線材41に衝突するときにドロップレットDLの運動エネルギーが小さくなる程度を微調整し得る。また、線材41の密度が高すぎる場合、ドロップレットDLまたはその小滴が線材41に付着して堆積することある。本実施形態の線材束63であれば、ドロップレットDLまたはその小滴の堆積が抑制できるような線材41の密度を調整によって実現可能である。
【0067】
なお、線材41は接着剤65によりグラファイト板64に強固に固定し得るため、上述したように、グラファイト板64に接着剤65により固定された第1線材41Aの一部を切断等の加工が可能である。したがって、空間AR1の形状や大きさが簡単に変更し得るので、複数の線材41が並べられる方向の両端に位置する線材間における線材41の密度が調整し易い。
【0068】
7.実施形態4
7.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
次に、実施形態4としてドロップレット回収装置における一部の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0069】
図14に示すように、本実施形態のドロップレット回収装置では、複数の線材41が並べられる方向の両端に位置する線材間に、最も近接する線材間の幅W4よりも大きい幅の空間AR2が設けられる。
【0070】
本実施形態の場合、複数の線材41が複数の組S1〜S6に分けられる。互いに隣り合う組間の幅W5は、当該組を構成する線材41のうち互いに隣り合う線材間の幅W4よりも大きくされる。例えば、互いに隣り合う組で囲まれる空間AR2が同程度の大きさとなるよう各組S1〜S6が等間隔で配列されてもよい。
【0071】
なお、組S1、S2、S3、S4、S5又はS6を構成する線材同士の隙間は同じであっても異なっていてもよい。また組S1〜S6ごとに、当該組を構成する線材数は同じであっても異なっていてもよい。さらに、本実施形態の線材束63におけるグラファイト板64は、実施形態2と同様に、第1板部材64Aおよび第2板部材64Bにより構成され、当該第1板部材64Aおよび第2板部材64Bの間に各線材41が挟まれた状態で接着剤65により固定されていてもよい。
【0072】
7.2 作用・効果
以上のとおり、本実施形態の線材束63では、複数の線材41が複数の組に分けられる。このとき、互いに隣り合う組間の幅W5が、互いに隣り合う線材間の幅W4よりも大きくされる。そして、複数の線材41が並べられる方向の両端に位置する線材間であって、互いに隣り合う組間に空間AR2が設けられる。この組間の幅W5に応じて、例えば、線材41に衝突するときにドロップレットDLの運動エネルギーが小さくなる程度を微調整し得る。
【0073】
なお、本実施形態4が上記実施形態3と組み合わされていてもよい。例えば、各組S1〜S6を、第1線材41Aからなる組と、第1線材41Aよりも短い第2線材41Bからなる組とで構成し、これらを交互に配置することで本実施形態4と上記実施形態3との組み合わせが可能である。また、例えば、ドロップレットDLの軌道OT上の互いに異なる位置に配置される複数の線材束43(
図2)それぞれが本実施形態の線材束63に変更される場合、各線材束63における組間の幅W5が、当該軌道OTの末端側に近づくほど狭く又は広くされてもよい。
【0074】
8.実施形態5
8.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
次に、実施形態5としてドロップレット回収装置における一部の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0075】
図15に示すように、本実施形態のドロップレット回収装置では、実施形態2と同様に、線材束63におけるグラファイト板64が、第1板部材64Aと第2板部材64Bとにより構成される。
【0076】
また、複数の線材41の一端側の端部は第1板部材64Aおよび第2板部材64Bに固定され、当該線材41の他端側の端部は他の第1板部材64Aおよび第2板部材64Bに固定される。
【0077】
このような線材束63の一端側はホルダフレーム20(
図2)に配置され、その線材束63における第1板部材64Aおよび第2板部材64Bを通じてホルダフレーム20に固定される。また、線材束63の他端側は、線材束63の一端側が固定されるホルダフレーム20とは反対側のホルダフレーム20(
図2)に配置され、その線材束63における他の第1板部材64Aおよび第2板部材64Bを通じてホルダフレーム20に固定される。
【0078】
なお、複数の線材41の両端部における第1板部材64Aおよび第2板部材64Bのうちの一方が省略されていてもよい。
【0079】
8.2 作用・効果
以上のとおり、本実施形態の線材束63では、複数の線材41の両端部が第1板部材64Aおよび第2板部材64Bに挟まれた状態で接着剤65により固定される。このため、実施形態2のように複数の線材41の一方側の端部だけが固定される場合に比べると、ドロップレットDLの衝突により線材41の端部がばらけることが回避される。
【0080】
また本実施形態の場合、線材束63の両端部がホルダフレーム20に固定される。このため、線材束63の一方側の端部だけがホルダフレーム20に固定される場合に比べてより強固に線材束63が固定され、ドロップレットDLの衝突に対する耐久性が向上し得る。なお、線材束63の一方側の端部だけがホルダフレーム20に固定される場合に比べて、ドロップレットDLの軌道OTに対する角度等といった線材束63のレイアウトの自由度を向上させ易い。
【0081】
9.実施形態6
9.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
次に、実施形態6としてドロップレット回収装置における一部の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0082】
図16に示すように、本実施形態のドロップレット回収装置では、線材束63における線材幅W1が実施形態2に比べて大きくされる。なお、本実施形態における第1板部材64Aおよび第2板部材64Bのうちの一方が省略されていてもよい。
【0083】
9.2 作用・効果
線材41は接着剤65によりグラファイト板64に強固に固定し得るため、本実施形態の線材束63のように線材幅W1を広げても、当該線材41が不安定になることが解消される。
【0084】
なお、ドロップレットDLの軌道OT上の互いに異なる位置に配置される複数の線材束43(
図2)それぞれが本実施形態の線材束63に変更される場合、各線材束63における線材幅W1が、当該軌道OTの末端側に近づくほど大きされてもよい。
【0085】
10.実施形態7
10.1 ドロップレット回収装置における一部の構成
次に、実施形態7としてドロップレット回収装置における一部の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0086】
図17に示すように、本実施形態のドロップレット回収装置では、実施形態1の線材束63における複数の線材41が、当該線材41の固定端である一方側の端部とは逆側の端部に向かうほど線材間が大きくなるよう扇状に配置される。なお、本実施形態の線材束63におけるグラファイト板64は、実施形態2と同様に、第1板部材64Aおよび第2板部材64Bにより構成され、当該第1板部材64Aおよび第2板部材64Bの間に複数の線材41が挟まれた状態で接着剤65により固定されていてもよい。
【0087】
10.2 作用・効果
線材41は接着剤65によりグラファイト板64に強固に固定し得るため、本実施形態の線材束63のように線材41の配置自由度が向上される。
【0088】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態や変形例に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0089】
本明細書および添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」または「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、および添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」または「1またはそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0090】
1・・・極端紫外光生成システム、2・・・チャンバ、3・・・ドロップレット供給装置、4・・・ドロップレット回収装置、5・・・エッチングガス供給装置、6・・・排気装置、10・・・回収用容器、20・・・ホルダフレーム、30・・・衝突板、40・・・緩衝部材、41・・・線材、50・・・ヒータ、60・・・被覆ケース、63・・・線材束、64・・・グラファイト板、65・・・接着剤。