【実施例1】
【0020】
実施例1として、デポ工程とエッチング工程を交互に実施して微細パターンを加工するサイクルエッチング及びエッチング装置の実施例について説明する。
図1は実施例1に係る、複数のステップ(S)を含むサイクルエッチングのプロセスフローの一例を示す図である。
図2は
図1のプロセスフローを説明するための模式図であり、
図2の(a)はデポ工程(S1)、(b)はエッチング工程(S2)の説明図である。本実施例では、被エッチングパターンの一例として、被エッチング基板としてのウエハ1上に非エッチング層4、被エッチング材料2の層間膜が形成されており、マスク3に被エッチングパターンである微細なラインアンドスペースパターンが形成されている場合に、被エッチング材料2をエッチングする場合について説明する。なお、本実施例ではS2において、イオンのエネルギーを用いてエッチングする場合について説明するが、熱処理等の他のエネルギー供給手段を用いてエッチングしても良い。
【0021】
図1のプロセスフローが開始されると、
図2の(a)に示すように被エッチング材料2を含み、マスク3によるパターンを形成したウエハ1上にデポ膜5を形成させる(S1)。次に、プラズマ等によって生成されたイオンを被エッチングパターンに照射する。
図2の(b)に示すように、被エッチングパターンのうち、被エッチング材料2の表面では、イオンから供給されたエネルギーによってデポ膜5と被エッチング材料2が反応し、エッチングが進行する(S2)。マスク3や側壁6等の、被エッチング表面上では、デポ膜5によってイオンのエネルギーが失われ、被エッチング表面のエッチングが抑制される。本実施例ではS2において、イオンのエネルギーを用いてエッチングする場合について示したが、上述した通り、熱処理等の他のエネルギー供給手段を用いてエッチングしても良い。サイクルエッチング法では、このデポ膜5の形成(S1)とエッチング工程(S2)を1サイクルとし、このサイクルを繰り返し必要回数行うことで、所定の深さまで被エッチング材料2をエッチングする。
【0022】
上述のサイクルエッチング法では、1回のデポ工程で堆積させるデポ膜の厚さは数原子層〜数十nmと薄く、また、一回のエッチング工程でエッチングするエッチング深さも数原子層〜数十nmと薄く、各工程において、デポ膜厚とエッチング量を精密に制御する必要がある。しかし、パターン表面のデポ量はチャンバー内の雰囲気による影響が大きく、デバイスの生産現場においては、多量のウエハを処理する間にエッチングチャンバー壁へ付着したデポ物等によってチャンバー内雰囲気が変化して、所望の加工形状が得られなくなることが問題となっている。
【0023】
そこで、
図1のプロセスフローのS3、S4に示すように、本実施例のサイクルエッチングでは、被エッチングパターン表面上に堆積したデポ膜5の膜厚の指標と、エッチング量の指標をモニタし、デポ工程、或いはエッチング工程の処理条件をリアルタイムで調整する。すなわち、サイクルエッチングで堆積層を形成する際に、特定の角度に偏光した光を被エッチングパターンに照射し、被エッチングパターンによって反射された特定波長の干渉光の変化によって、堆積層の膜厚の変化量をモニタし、デポ膜の膜厚の指標とエッチング量の指標を得、これらの指標を用いて処理条件をリアルタイムで調整する。
【0024】
図3は、本実施例におけるデポ膜厚モニタ用の入射光の偏光方向と、被エッチングパターンであるラインアンドスペースパターンのライン方向との関係を示す模式図である。本実施例においては、デポ工程(S1)でパターン上に形成されるデポ膜厚をモニタするため、被エッチングパターンのレイアウト情報から、予めマスク上に形成されたラインアンドスペースパターン7の規則性を示す情報として、ラインアンドスペースパターンのライン方向9を抽出しておき、抽出したライン方向9の情報に基づき、ライン方向9に対して垂直方向になるように偏光フィルター8を回転させて偏光した光を入射する。そして、ウエハ上で反射した特定波長の干渉光の信号強度の時間変化に基づき、堆積層の膜厚の変化量をリアルタイムでモニタし、デポ膜厚の指標とエッチング量の指標を算出する。
【0025】
例えば、
図3に一例を示した関係では、ライン方向9がX方向であった場合、偏光フィルター8の方向はY方向に偏光フィルター8を回転させて調整する。このようにラインアンドスペースパターンのライン方向9と偏光フィルター8による偏光方向10を垂直(90度)となる方向に光をラインアンドスペースパターンに入射させると、反射される干渉光はラインアンドスペースパターンによる回折効果を生じ、ラインアンドスペースパターンの断面形状の変化に敏感に対応して変化するため、デポ膜の膜厚の指標と、エッチング量の指標を算出することができ、これら指標を用いてデポ工程でのデポ膜厚とエッチング工程でのエッチング形状の変化を精密にモニタ制御できるようになる。
【0026】
図4に、本実施例のサイクルエッチング方法を実現するためのエッチング装置の一全体構成を示す。プラズマ処理装置であるエッチング装置20は、処理室21、ガス供給部23、モニタ部28、モニタ制御部29、装置制御部36などから構成される。制御部108、算出部109、データベース110を有するモニタ制御部29、複数の機構ブロックを有する装置制御部36は、それぞれ中央処理部(CPU)や記憶部等を備えたコンピュータのプログラム実行で実現でき、両者は制御線47で接続されている。また、装置制御部36は、ガス制御部37、排気系制御部38、高周波制御部39、バイアス制御部40、記憶部41、クロック42などの機能ブロックとして機能する。これらの機能ブロックは、上述の通り一台のパーソナルコンピュータ(PC)で実現できる。なお、本明細書において、モニタ制御部29、装置制御部36を総称して、単に制御部と呼ぶ場合がある。
【0027】
エッチング装置20は、処理室21内に設けられたウエハステージ22と、ガスボンベやバルブからなるガス供給部23が設けられており、装置制御部36からの制御信号46に基づき、デポ工程用ガス24、エッチング工程用ガス25それぞれが、
図1に示した処理ステップで処理室21に供給される。供給された処理ガスは、高周波電源27によって生成され、高周波印加部31に印加される高周波電力44によって、処理室21内でプラズマに分解される。また、処理室21内の圧力は、処理室21に接続された、図示を省略した可変コンダクタンスバルブと真空ポンプにより、所望の流量の処理ガスを流した状態で、一定に保つことができる。
【0028】
まず、デポ工程(S1)が開始すると、制御信号46に基づき、デポ工程用ガス24が所定の流量で処理室21に供給される。供給されたデポ工程用ガス24は高周波印加部31に印加される高周波電力44によってプラズマとなり、ラジカル、イオン等に分解される。プラズマで生成したラジカルやイオンはウエハ1の表面に到達し、
図2の(a)に示したデポ膜5を形成する。次に、エッチング工程(S2)が開始すると、エッチング工程用ガス25が所定の流量で処理室21に供給される。供給されたガス25は高周波印加部31に印加される高周波電力44によってプラズマとなり、イオンやラジカルに分解され、ウエハ1表面に照射される。このとき、プラズマから照射されるイオンによってエッチングする場合、例えば、ウエハステージ22にバイアス電源30から供給されるバイアス電圧45を印加して、イオンエネルギーを制御することができる。
【0029】
各工程で使用するガスの種類は、エッチング処理を行うパターン材料に応じて適宜選択される。例えば、デポ工程用ガス24として、C
4F
8、CH
3F等のフロロカーボンガス、ハイドロフロロカーボンガスと希ガス、及び、O
2、CO
2、N
2ガス等の混合ガスを用いることができる。このとき、エッチング用ガス25としては、例えば、フロロカーボンガス、ハイドロフロロカーボンガスとAr、He、Ne、Kr、Xe等の希ガスと、O
2、CO
2、CF
4、N
2、H
2、無水HF、CH
4、CHF
3、NF
3、SF
3等の混合ガスが用いられる。また、例えば、デポ工程用ガス24として、HBr、BCl
3等と希ガス、及び、Cl
2、O
2、CO
2、N
2ガス等の混合ガスを用いた場合、エッチング用ガス25としては、例えば、HBr、BCl
3等とAr、He、Ne、Kr、Xe等の希ガスと、Cl
2、O
2、CO
2、CF
4、N
2、H
2、無水HF、CH
4、CHF
3、NF
3、SF
3等の混合ガスが用いられる。
【0030】
次に、本実施例のエッチング装置の構成において、サイクルエッチング処理中のデポ膜厚の指標、及びエッチング量の指標をモニタ部28、モニタ制御部29でモニタする方法の一具体例を説明する。
図5は、ウエハ1のノッチ方向と、ラインアンドスペース7のライン方向9、及び偏光フィルター8の回転方向の関係を説明するための図である。まず、参照データとして所望形状の参照パターンがパターニングされたウエハ1を処理室21に導入する。同図の(b)に示すように、処理室に導入されたウエハのノッチ11の方向、または、オリフラの方向は予め設定された方向に設置される。ウエハのノッチ11、または、オリフラの方向と参照パターンのライン方向9との関係は、予め、ウエハ情報としてモニタ制御部29のデータベース110や、装置制御部36の記憶部41などに記憶しておく。
【0031】
モニタ部28において、モニタ用光源102から発生した光は、回転機構103で回転制御される偏光フィルター8で偏光し、ウエハ1上の参照パターン上に照射する。このとき、モニタ用光源102として、例えば、190nmから900nmの波長領域の光が用いられる。偏光フィルター9は、ウエハのラインアンドスペースパターン7のライン方向9の情報に従って、モニタ制御部29の制御に基づき、回転機構103を使って回転して偏光方向10を調整することができる。ここで偏光フィルター8を通過した後の入射光104の偏光方向10は、装置制御部36の記憶部41に記憶されたウエハ情報に従って、参照パターンのラインアンドスペースパターン7のライン方向9に対して垂直となるように調整される。
【0032】
続いて、エッチングが開始されると同時に、ウエハ1上の参照パターンのモニタが開始される。モニタ用光源102から発生した光は偏光フィルター8で偏光されて、ウエハ1上の参照パターン上に照射される。ウエハ1上に形成されるラインアンドスペースパターン7のライン方向9はウエハのノッチに対して通常X方向、または、Y方向であるため、偏光フィルター8の偏光方向10は、ウエハ1の情報に従って、予めX方向、あるいはY方向に調整しておいても良い。次に、参照パターンで反射された干渉光105は、モニタ部28の検出部26、光ファイバー106を通って分光器107で分光される。このとき、分光器107で分光される干渉光は、入射光104を偏光した偏光フィルター8を再度通過させることによって、一方向に偏光した光のみを検出しても良い。モニタ部28の分光器107では、予め決定された複数の波長の干渉光の信号強度の時間変化を測定する。測定された少なくとも一つの特定波長の干渉光の信号強度の時間変化から、モニタ制御部29の算出部109により、参照パターンにおけるデポ膜厚の指標とエッチング量の指標を算出する。
【0033】
図6の(a)に、本実施例の構成を使って参照パターンを使って参照データとして取得した干渉光の特定波長の信号強度(I)の時間変化の一例を示す。本例の場合では、エッチングを開始すると、デポ工程(S1)で信号強度が増加し、エッチング工程(S2)で信号強度が減少している。本実施例では、この参照データとして取得した干渉光の特定波長の信号強度(I)の時間変化に基づき、
図1のサイクルエッチング法のS3とS4で、デポ膜5の厚さとエッチング形状を制御して、安定して所望形状のパターンを形成する。そのため、モニタ制御部29は、予め所望形状を加工中の複数の波長の干渉光の時間変化を参照データとして取得し、デポ工程(S1)とエッチング工程(S2)での干渉光の信号強度差が、例えば最大となる特定波長の干渉光の信号強度を抽出する。
【0034】
ここで、算出部109によるプロセスフローのS3、S4の判定で用いるデポ膜厚の指標とエッチング量の指標の算出方法の一具体例について説明する。なお、算出された各指標は参照データとして、データベース110に記憶される。すなわち、被エッチングパターンの参照パターンによって反射された、この特定波長の干渉光の変化に基づき算出した、デポ膜厚の指標とエッチング量の指標を参照データとして記憶して置き、モニタした堆積層の膜厚の変化量から算出したデポ膜厚の指標、又はエッチング量の指標と、これら記憶した参照データとを比較することにより、次サイクル以降の処理条件を決定することができる。
【0035】
図6の(a)に示したように、参照パターンからの干渉光の信号強度(I)の一例において、始めはデポ工程で信号強度が増加し、エッチング工程で信号強度が減少している。さらにエッチングが進行すると、デポ工程で信号強度が減少し、エッチング工程で信号強度が増加している。そして、エッチング工程終了時の特定波長の干渉光の信号強度のフィッティング曲線111は、エッチング工程終了後の被エッチングパターンの加工形状の情報に依存して変化していること、このフィッティング曲線111とデポ工程終了後の信号強度の差はデポ工程で形成されたデポ膜の厚さに依存していることを我々は見出した。
【0036】
さらに、デポ膜厚の指標rの一例として、
図6の(b)に示したように、(n-1)回目のサイクルのエッチング工程終了時の信号強度とn回目のサイクルのデポ工程終了時の信号強度の差dをフィッティング曲線の傾きa
0で規格化した値の絶対値|d/a
0|を、デポ膜厚の指標rとしてモニタした結果、デポ膜厚の指標の変化とエッチング後の断面形状との関係を見出した。同図の参照データは、参照パターンに基づき算出されたデポ膜厚の指標の時間変化を示す。この関係に基づき、エッチング工程終了時の特定波長の干渉光の信号強度と、引く続くデポ工程終了時の特定波長の干渉光の信号強度の差からデポ膜厚の指標を算出することができる。これにより、モニタ工程において、エッチング工程の干渉光の信号強度と、デポ工程の干渉光の信号強度の差に基づいて、堆積層の膜厚の変化量をモニタすることができる。
【0037】
また、
図6の(c)に示したように、エッチング工程終了時の信号強度のフィッティング曲線111の形状である振幅と周期、言い換えると、所定の時間におけるフィッティング曲線の信号強度(振幅)、またはフィッティング曲線の周期が、参照パターン基づくフィッティング曲線の所望形状からずれた場合に、フィッティング曲線の形状が断面形状によって変化することを見出した。その結果、特定波長の干渉光の信号強度のフィッティング曲線の振幅と周期に基づき、エッチング量の指標を算出することができる。
【0038】
図7は被エッチングパターンの各種断面形状の例の説明図であり、表1は、デポ膜厚の指標とエッチング量の指標から判定されるエッチングパターンの断面形状のカテゴリーと、デポ工程の処理パラメータの調整方法、及びエッチング工程の処理パラメータの調整方法の一例を示した表である。
【0039】
【表1】
【0040】
例えば、参照パターンの断面形状が
図7の(a)に示した垂直なパターンの場合であり、デポ膜厚の指標が指定された許容範囲r
01よりも大きく、エッチング量の指標の変化が指定値I
1よりも小さい場合、実際のエッチングパターンの断面形状は、例えば、
図7の(b)のエッチストップと判定することができる。また、デポ膜厚の指標が指定された許容範囲r
02よりも大きく、エッチング量の指標の変化、例えば振幅の変化が指定値I
2よりも小さい場合には、断面形状は、例えば、
図7の(c)のテーパー形状と判定することができる。同様に、デポ膜厚の指標が指定された許容範囲r
03よりも大きく、エッチング量の指標の変化、例えば周期の変化が指定値S
3よりも大きい場合には、断面形状は、例えば、
図7の(d)の線幅が増大した断面形状と判定することができ、デポ膜厚の指標が指定された許容範囲r
04よりも小さく、エッチング量の指標の変化、例えば周期の変化が指定値S
4よりも小さい場合には、断面形状は、例えば、
図7の(e)の線幅が減少した断面形状と判定することができる。更に、デポ膜厚の指標が指定された許容範囲r
05よりも小さく、エッチング量の指標の変化、例えば振幅の変化が指定値I
5よりも小さい場合には、断面形状は、例えば、
図7の(f)の肩落ちした断面形状と判定することができる。
【0041】
そこで、本実施例のエッチング装置20では、モニタ制御部29により、データベース110に蓄積された参照パターンの干渉光スペクトル、デポ膜厚の指標、及びエッチング量の指標と、実際のモニタ結果である干渉光スペクトル、デポ膜厚の指標、及びエッチング量の指標を比較する。この比較はモニタ制御部29の算出部109が行い、その比較結果が、例えば
図6の許容範囲で示した所定範囲外となった場合に、制御部108が、次回以降のサイクルのデポ工程(S1)、および、エッチング工程(S2)での処理条件を調整・決定し、装置制御部36に調整・決定後の処理条件を送信するよう制御する。
【0042】
次に、
図4に示した本実施例のエッチング装置で、堆積層の膜厚の変化量をモニタし、被エッチングパターンのデポ膜厚の指標とエッチング量の指標をモニタして、リアルタイムでエッチングを制御する場合を説明する。まず、被エッチングウエハとして、予め測定され、参照データが記憶された参照パターンと同様のパターンがパターニングされたウエハ1が処理室21に導入される。このとき、ウエハ1のノッチ11、または、オリフラは予め設定された場所に設置される。ウエハのノッチ11、または、オリフラの方向と参照パターンのライン方向7との関係は、予め、ウエハ情報として装置制御部36の記憶部41に記憶されている。偏光フィルター8は参照パターンをモニタした際と同様に、記憶部41に記憶された被エッチング基板であるウエハのウエハ情報に従って、被エッチングパターンのラインアンドスペースパターン7に対して垂直となるように、モニタ制御部29の制御により、偏光フィルター8の回転角度を回転機構103によって調整する。
【0043】
被エッチングウエハのエッチングが開始されると同時に、モニタ部28による被エッチングパターンのモニタが開始される。モニタ部28のモニタ用光源102から発生した入射光104は、先に参照データを取得した場合と同様に、偏光フィルター8で偏光されて、ウエハ1上の被エッチングパターン上に照射される。次に、ウエハ1で反射された干渉光105は、参照データを取得した場合と同様に、検出部26、光ファイバー106を通って分光器107で測定される。分光器107では、予め参照データを取得した際に決定された特定波長の干渉光の信号強度の時間変化をモニタする。モニタ部28でモニタされた特定波長の干渉光の時間変化から、算出部109がデポ膜厚の指標と、エッチング量の指標を先の参照データと同様に算出する。
【0044】
図8に、デポ膜厚の指標が所定範囲以外の値となった場合、デポ工程プロセス条件を調整する、すなわち、被エッチングパターンのデポ膜厚の指標をモニタし、リアルタイムでデポ工程の時間を調整し、所望のエッチング形状に制御してエッチングした場合の一例を示す。
図8の(a)には
図6と同様、特定波長の干渉光の信号強度(I)の時間変化の一例を示し、
図8の(b)には、デポ膜厚の指標rの時間変化の一例を示す。例えば、nサイクル目のデポ膜の指標r(n)がr(n)の許容範囲を超えて小さい場合、(n+1)回目のサイクルのデポ工程のデポ時間t(n+1)は、例えば、次のように制御部108で決定される。
【0045】
図9に、デポ工程のデポ時間の調整方法の一例として参照データのnサイクル目のデポ工程内のデポ膜厚の指標rの時間変化を示す。(n+1)回目のデポ膜厚の指標として必要な値をr
0(n+1)、r
0(n+1)とr(n)との差をΔr、n回目のデポ工程の処理時間をt、時間tにおけるデポ膜厚の指標の傾きをbとすると、(n+1)回目の処理時間t(n+1)は(Δr/b + t(n))として決定することができる。このように、(n+1)回目のデポ工程の時間が調整されると、(n+1)回目のデポ膜厚の指標r(n+1)は(n+1)回目のデポ膜の指標の許容範囲内に制御することができた。また、
図8の(b)に示すように、m回目にデポ膜の指標r(m)が許容範囲として図示した所定の範囲を超えて大きくなった場合も、m回目のデポ工程内でのデポ膜厚の指標の時間変化の測定値から、(m+1)回目のデポ工程の処理時間を調整することにより、デポ膜厚を所望の範囲内に制御することができた。本実施例の構成により、各サイクルでデポ膜厚の指標が所定の範囲内になるように、デポ時間の調整を実施することによって、再現性良く長期間にわたって、エッチング形状を制御してエッチングすることが可能となった。
【0046】
このように、デポ膜厚の指標が所定の範囲外と判定された場合は、デポ工程の時間以外に調整すべき処理パラメータとして、氷に示したように、例えば、エッチングガスの混合比等があり、これを調整する手段を設けることができる。例えば、エッチングガスの混合比として堆積性ガスと全てのガス流量との比を調整する場合、エッチングガスの流量比を変化させた場合のデポ膜厚の指標の変化量との関係を予め取得したデータファイルを記憶部41に保持しておき、測定したデポ膜厚の指標rと所定値roとの差Δr分を変化させてデポ膜厚の指標が所定範囲に入るためのガス流量比を算出部109で算出する。算出したガス流量比はガス制御部37に送られて、ガス流量比を制御することが可能となった。
【0047】
一方、デポ膜厚の指標が所定の範囲内であるのに、エッチング量の指標が所定範囲外と判定された場合には、例えば、エッチング工程の時間、ウエハバイアス電圧、ウエハ温度を調整する手段により、エッチング形状を精密に制御することが可能となった。例えば、バイアス制御部40により、エッチング工程のウエハバイアス電圧を調整する場合、エッチング量の指標が所定の範囲となるようにウエハバイアス電圧を、表1のエッチング工程パラメータの調整の欄に示すように微調整を行うことができる。算出部109で算出されたウエハバイアス電圧45の調整値は、バイアス制御部40に送られ、所定の値にバイアス電源30を調整することができる。同様に、高周波制御部39などを使って、エッチング工程の時間増減による微調整を行うことができる。
【0048】
以上詳述した本実施例においては、被エッチングパターンとして、例えばラインアンドスペースパターンの場合について説明した。しかしながら、本実施例の構成は、必ずしもラインアンドスペースパターンのみに限定して実施されるものではない。例えば、
図10に被エッチングパターンがホールパターンの場合にも実施することができる。この場合の入射光の偏光方向設定方法の一例の説明図を示す。
図10に示すように、ホールパターン120のピッチがX方向とY方向で異なる場合、すなわちホールパターンにおける一方の方向のピッチがホールパターンにおける他方の方向のピッチより小さい場合、一方の方向のピッチに対して垂直に偏光され、他方の方向の側におけるホールパターンの側壁の堆積層に係る膜厚の変化量をモニタする。例えば、ピッチの小さい方向、つまり、X方向が入射光104の偏光方向10と垂直となるように偏光フィルター8の回転を調整することにより、ピッチの大きい方の側壁121に対するデポ膜厚の指標とエッチング量の指標を精度良くモニタすることができる。
【0049】
但し、微細パターンを加工する際には、ピッチの小さい方向の側壁形状122をより精密に制御する必要がある場合もある。その場合には、パターンピッチの大きい方向、つまり、Y方向が入射光104の偏光方向10と垂直となるように、偏光フィルター8の回転角度を調整することにより、高精度なモニタが可能となった。あるいは、偏光フィルター8を回転機構103でX方向とY方向に高速に交互に回転させて、X方向に偏光した入射光を照射したときの干渉光の信号強度とY方向に偏光した入射光を照射したときの干渉光の信号強度を交互に測定することにより、ホールのデポ膜とエッチング形状を感度良くモニタすることも可能である。
【0050】
本実施例の構成により、モニタ部がモニタした堆積層の膜厚の変化量からデポ膜厚の指標、またはエッチング量の指標を算出し、算出したデポ膜厚の指標、またはエッチング量の指標に基づき、サイクルエッチングの次サイクル以降のデポ工程、あるいはエッチング工程の処理条件を決定し、決定した処理条件で被エッチング基板を処理することが可能となる。