【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、Si化合物と、炭素質物または炭素質物と黒鉛とを、含んでなるリチウムイオン2次電池用負極活物質において、該負極活物質に3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、併せて「EDOT」という)またはヒドロキシメチル(Hydroxymethyl)EDOT(以下、併せて「ヒドロキシメチルEDOT」という)から選択される少なくとも1つのモノマーを0.1〜10重量部含有することにより、Si化合物の微粒子を用いても初期及びサイクル中の放電容量が大きく、サイクル寿命が長く、サイクルにより発生する不可逆な膨張が少ないリチウムイオン2次電池を与える負極活物質が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、SiまたはSi合金と、炭素質物または炭素質物と黒鉛とを、含んでなるリチウムイオン2次電池用負極活物質において、該SiまたはSi合金の平均粒径(D
50)が0.01〜6μmであり、該負極活物質がEDOTまたはヒドロキシメチルEDOTから選択される少なくとも1つのモノマーが0.1〜10重量部含有されていることを特徴とするリチウムイオン2次電池用負極活物質(活物質A)、又はSiまたはSi合金と、炭素質物または炭素質物と黒鉛とを、含んでなるリチウムイオン2次電池用負極活物質において、該SiまたはSi合金の平均粒径D
50が0.01〜6μmであり、該炭素質物が、遷移金属、周期表13族、15族元素の群から選択される少なくとも1つの元素とリチウムとの複合酸化物であるリチウム化合物と複合化されており、さらに、該負極活物質にEDOTまたはヒドロキシメチルEDOTから選択される少なくとも1つのモノマーが0.1〜10重量部含有されていることを特徴とするリチウムイオン2次電池用負極活物質(活物質B)である。
【0014】
以下、本発明のリチウムイオン2次電池用負極活物質について詳細に説明する。
【0015】
最初に活物質Aについて説明する。
【0016】
活物質Aは、SiまたはSi合金と、炭素質物または炭素質物と黒鉛とを、含んでなるリチウムイオン2次電池用負極活物質において、該SiまたはSi合金の平均粒径(D
50)が0.01〜6μmであり、該負極活物質がEDOTまたはヒドロキシメチルEDOTから選択される少なくとも1つのモノマーが0.1〜10重量部含有されていることを特徴とするリチウムイオン2次電池用負極活物質である。
【0017】
活物質AでいうSiとは、純度が98%程度の汎用グレードの金属シリコン、純度が2〜4Nのケミカルグレードの金属シリコン、塩素化して蒸留精製した4Nより高純度のポリシリコン、単結晶成長法による析出工程を経た超高純度の単結晶シリコン、もしくはそれらに周期表13族もしくは15族元素をドーピングして、p型またはn型としたもの、半導体製造プロセスで発生したウエハの研磨や切断の屑、プロセスで不良となった廃棄ウエハなど、汎用グレードの金属シリコン以上の純度であれば特に限定されない。
【0018】
活物質AでいうSi合金とは、Siが主成分の合金である。前記Si合金において、Si以外に含まれる元素としては、周期表2〜15族の元素の一つ以上が好ましく、合金に含まれる相の融点が900℃以上となる元素の選択および/または添加量が好ましい。
【0019】
活物質Aのリチウムイオン2次電池用負極活物質において、Si化合物の平均粒径D
50は0.01〜6μmであり、0.05〜0.5μmがさらに好ましい。0.01μmより小さいと、表面酸化による容量や初期効率の低下が激しく、6μmより大きいと、リチウム挿入による膨張で割れが激しく生じ、サイクル劣化が激しくなる。なお、D
50はレーザー粒度分布計で測定した体積平均の粒子径である。
【0020】
Si化合物の含有量は10〜80重量部が好ましく、15〜50重量部がさらに好ましい。Si化合物の含有量が10重量部未満の場合、従来の黒鉛に比べて十分に大きい容量が得られず、80重量部より大きい場合、サイクル劣化が激しくなる。
【0021】
活物質Aでいう炭素質物とは、非晶質もしくは微結晶の炭素物質であり、2000℃を超える熱処理で黒鉛化する易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)と、黒鉛化しにくい難黒鉛化炭素(ハードカーボン)がある。
【0022】
活物質Aのリチウムイオン2次電池用負極活物質において、炭素質物の含有量は5〜90重量部が好ましく、8〜40重量部がさらに好ましい。炭素質物の含有量が5重量部未満の場合、炭素質物がSi化合物を覆うことができず、導電パスが不十分となって容量劣化が激しく起こりやすく、90重量部より大きい場合、容量が十分に得られない。
【0023】
活物質Aでいう黒鉛とは、グラフェン層がc軸に平行な結晶であり、鉱石を精製した天然黒鉛、石油や石炭のピッチを黒鉛化した人造黒鉛等があり、原料の形状としては鱗片状、小判状もしくは球状、円柱状もしくはファイバー状等がある。また、それらの黒鉛を酸処理、酸化処理した後、熱処理することにより膨張させ、黒鉛層間の一部が剥離してアコーディオン状となった膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物、もしくは超音波等により層間剥離させたグラフェン等も用いることができる。本発明の負極活物質に含まれる黒鉛の粒子サイズは、負極活物質粒子のサイズより小さければ特に限定はなく、黒鉛粒子の厚みは活物質の平均粒径D
50の1/5以下であることが好ましい。黒鉛の添加により活物質粒子の導電性および強度が高まり、充放電のレート特性およびサイクル特性が向上する。黒鉛粒子のX線回折で測定される(002)面の面間隔d002は0.338nm以下であることが好ましく、これは高度に黒鉛化が進んだ黒鉛を意味している。d002がこの値を超える場合、黒鉛による導電性向上効果が小さくなる。
【0024】
活物質Aのリチウムイオン2次電池用負極活物質において、炭素質物と黒鉛が含まれる場合、各々の含有量は5〜40重量部と20〜80重量部の割合が好ましく、8〜30重量部と40〜70重量部の割合がさらに好ましい。炭素質物の含有量が5重量部未満の場合、炭素質物がSi化合物および黒鉛を覆うことができず、Si化合物と黒鉛との接着が不十分となり、活物質粒子の形成が困難となりやすい。また、40重量部より大きい場合、導電性が炭素質物より高い黒鉛の効果が十分に引き出されない。一方、黒鉛の含有量が20重量部未満の場合、導電性が炭素質物より高い黒鉛の効果が十分でなく、80重量部より多い場合、従来の黒鉛に比べて十分に大きい容量が得られない。
【0025】
活物質Aは、EDOTまたはヒドロキシメチルEDOTから選択される少なくとも1つのモノマーが0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部含有されていることにより、負極活物質として電池化した際、初期及びサイクル中の高い電池容量を維持しつつ、サイクル特性及びサイクルによる不可逆な膨張抑制に優れる特性が得られる。その理由として、モノマーが充放電の際、電解酸化重合により、導電性ポリマー(Poly−EDOT)が生成され、各負極材同士の導電パスが確保され、さらに負極材や負極材中のSi粒子を覆うことで、電解液の接触を低減し、充放電中に発生するSi化合物の劣化を防止することで上記特性向上に繋がると考えられる。
【0026】
活物質Aのリチウムイオン2次電池用負極活物質においては、導電助剤がさらに含まれていても良い。導電助剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、CNT等が挙げられ、粒子サイズとしては1μm以下で、含有量は前記炭素質物の重量に対して30重量%以下が好ましく、添加時には、使用する溶剤に対して分散性を確保可能な表面処理がされていることが好ましい。
【0027】
活物質Aのリチウムイオン2次電池用負極活物質は、形状が丸みを帯びた平均粒径D
50が1〜40μmの複合粒子であることが好ましく、特に好ましくは2〜30μmである。D
50が1μm未満の場合、嵩高くなって高密度の電極が作製しにくくなり、40μmを超える場合、塗布した電極の凹凸が激しくなって均一な電極が作製しにくくなる。また、前記Si化合物の平均粒径が該負極活物質の平均粒径の1/5以下であり、前記モノマーが、少なくとも活物質表面を覆っていることが好ましい。
【0028】
サイクル特性の観点からより好ましい前記負極活物質の平均粒径D
50の範囲は2〜20μmであり、かつ10%粒子径D
10が1μm以上で、厚みが1μm未満の薄片状粒子が少ないことが好ましい。
【0029】
形状が丸みを帯びた複合粒子とは、粉砕等により生成した粒子の角が取れているもの、球状もしくは回転楕円体形状、円板もしくは小判形状で厚みを有して角が丸いもの、またはそれらが変形したもので角が丸いものなどである。形状が丸みを帯びることにより複合粒子の嵩密度が高まり、負極にした時の充填密度が高まる。また、炭素質物が、少なくとも活物質表面を覆っていることにより、充放電の過程で電解液に溶媒和したリチウムイオンが、炭素質物の表面で溶媒から離れて、リチウムイオンのみがSi化合物および/または黒鉛と反応するため、溶媒の分解生成物が生成しにくくなり、充放電の効率が高まる。
【0030】
活物質Aのリチウムイオン2次電池用負極活物質においては、前記Si化合物が、炭素質物と共に0.2μm以下の厚みの黒鉛薄層の間に挟まった構造であり、その構造が積層および/または網目状に広がっており、該黒鉛薄層が活物質粒子の表面付近で湾曲して活物質粒子を覆っており、最外層の表面を前記モノマーが覆っていることが好ましい。
【0031】
活物質Aでいう黒鉛薄層とは、先に述べた黒鉛を酸処理、酸化処理した後、熱処理することにより膨張させて黒鉛層間の一部が剥離してアコーディオン状となった膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物、超音波等により層間剥離させたグラフェン等、またはこれらが圧縮力を受けることで生成した、グラフェン1層(厚み0.0003μm)〜数百層(厚み〜0.2μm)からなる黒鉛薄層である。黒鉛薄層の厚みは薄い方が、黒鉛薄層間に挟まれたSi化合物と、炭素質物の層が薄くなって、Si化合物への電子の伝達が良くなり、厚みが0.2μmを超えると黒鉛薄層の電子伝達効果が薄まる。黒鉛薄層を断面で見て線状の場合、その長さは負極活物質粒子のサイズの半分以上あることが電子伝達に好ましく、負極活物質粒子のサイズと同等程度であることがさらに好ましい。黒鉛薄層が網目状の場合、黒鉛薄層の網が負極活物質粒子のサイズの半分以上に渡って繋がっていることが電子伝達に好ましく、負極活物質粒子のサイズと同等程度であることがさらに好ましい。
【0032】
活物質Aにおいては、黒鉛薄層が活物質粒子の表面付近で湾曲して活物質粒子を覆うことが好ましい。そのような形状にすることで、黒鉛薄層端面から電解液が侵入して、Si化合物や黒鉛薄層端面と電解液が直接接して、充放電時に反応物が形成され、効率が下がるリスクが低減する。
【0033】
活物質Aのリチウムイオン2次電池用負極活物質では、比表面積が0.5〜50m
2/gであることがさらに好ましい。
【0034】
活物質Aの製造方法は、SiまたはSi合金、炭素前駆体を原料とし、これらを混合する工程と、造粒・圧密化する工程と、粉砕および球形化処理して形状が丸みを帯びた複合粒子を形成する工程と、該複合粒子を不活性ガス雰囲気中で焼成する工程後、EDOTまたはヒドロキシメチルEDOTから選択される少なくとも1つのモノマーを0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部該複合粒子に添加する製造方法である。
【0035】
原料である黒鉛は、天然黒鉛、石油や石炭のピッチを黒鉛化した人造黒鉛等が利用でき、鱗片状、小判状もしくは球状、円柱状もしくはファイバー状等が用いられる。また、それらの黒鉛を酸処理、酸化処理した後、熱処理することにより膨張させて黒鉛層間の一部が剥離してアコーディオン状となった膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物、もしくは超音波等により層間剥離させたグラフェン等も用いることができる。原料の黒鉛は予め混合工程で使用可能な大きさに整えて使用し、混合前の粒子サイズとしては天然黒鉛や人造黒鉛では1〜100μm、膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物、グラフェンでは5μm〜5mm程度である。
【0036】
これらのSi化合物、炭素前駆体、さらに必要に応じて黒鉛との混合は、炭素前駆体が加熱により軟化、液状化するものである場合は、加熱下でSi化合物、炭素前駆体、さらに必要に応じて黒鉛を混練することによって行うことができる。また、炭素前駆体が溶媒に溶解するものである場合には、溶媒にSi化合物、炭素前駆体、さらに必要に応じて黒鉛を投入し、炭素前駆体が溶解した溶液中でSi化合物、炭素前駆体、さらに必要に応じて黒鉛を分散、混合し、次いで溶媒を除去することで行うことができる。用いる溶媒は、炭素前駆体を溶解できるものであれば特に制限なく使用できる。例えば、炭素前駆体としてピッチ、タール類を用いる場合には、キノリン、ピリジン、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、クレオソート油等が使用でき、ポリ塩化ビニルを用いる場合には、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ニトロベンゼン等が使用でき、フェノール樹脂、フラン樹脂を用いる場合には、エタノール、メタノール等が使用できる。
【0037】
混合方法としては、炭素前駆体を加熱軟化させる場合は、混練機(ニーダー)を用いることができる。溶媒を用いる場合は、上述の混練機の他、ナウターミキサー、レーディゲミキサー、ヘンシェルミキサ、ハイスピードミキサー、ホモミキサー等を用いることができる。また、これらの装置でジャケット加熱したり、その後、振動乾燥機、パドルドライヤーなどで溶媒を除去する。
【0038】
これらの装置で、炭素前駆体を固化、または、溶媒除去の過程における撹拌をある程度の時間続けることで、Si化合物、炭素前駆体、さらに必要に応じて黒鉛との混合物は造粒・圧密化される。また、炭素前駆体を固化、または溶媒除去後の混合物をローラーコンパクタ等の圧縮機によって圧縮し、解砕機で粗粉砕することにより、造粒・圧密化することができる。これらの造粒・圧密化物の大きさは、その後の粉砕工程での取り扱いの容易さから0.1〜5mmが好ましい。
【0039】
造粒・圧密化物の粉砕方法は、圧縮力を利用して被砕物を粉砕するボールミル、媒体撹拌ミルや、ローラによる圧縮力を利用して粉砕を行うローラミルや、被砕物を高速で内張材に衝突もしくは粒子相互に衝突させ、その衝撃による衝撃力によって粉砕を行うジェットミルや、ハンマー、ブレード、ピンなどを固設したローターの回転による衝撃力を利用して被砕物を粉砕するハンマーミル、ピンミル、ディスクミル等の乾式の粉砕方法が好ましい。また、粉砕後に粒度分布を整えるため、風力分級、ふるい分け等の乾式分級が用いられる。粉砕機と分級機が一体となっているタイプでは、一度に粉砕、分級が行われ、所望の粒度分布とすることが可能となる。
【0040】
粉砕して得られた複合粒子は、アルゴンガスや窒素ガス気流中、もしくは真空など不活性雰囲気中で焼成する。焼成温度は600〜1000℃が好ましい。焼成温度が600℃未満であると、炭素前駆体由来の非晶質炭素の不可逆容量が大きく、またサイクル特性が悪いため、電池の特性が低下する傾向にある。一方、焼成温度が1000℃を超える場合、放電容量の低下が発生する傾向にある。
【0041】
焼成後、EDOTまたはヒドロキシメチルEDOTから選択される少なくとも1つのモノマーを0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部該複合粒子に添加する。添加する方法は、上記焼成後の複合粒子に上記モノマーを直接添加させる方法が好ましく、例えば希釈したモノマー溶液に浸漬させる添加方法等がある。また、完成した負極活物質を集電極シート化する際に、スラリー化した中に上記モノマーを混ぜて添加する方法でも良い。添加量は、各々0.1〜10重量部が好ましく、さらに好ましい範囲は0.5〜5重量部である。また、添加する際の乾燥温度は、モノマーの耐熱温度以下で行うことが好ましい。乾燥温度は、EDOTで120℃以下、ヒドロキシメチルEDOTでは150℃以下が好ましい。それ以上の乾燥温度では、容量の低下やサイクル特性の低下が発生する。
【0042】
このようにして得られる活物質Aは、リチウム二次電池の負極材料として用いることができる。
【0043】
活物質Aは、例えば、有機系結着剤、導電助剤および溶剤と混練して、シート状、ペレット状等の形状に成形するか、または集電体に塗布し、該集電体と一体化してリチウム二次電池用負極とされる。
【0044】
有機系結着剤としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンポリマー、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、イオン導電性の大きな高分子化合物が使用できる。イオン導電率の大きな高分子化合物としては、ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロロヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド等が使用できる。有機系結着剤の含有量は、負極材全体に対して3〜20重量%含有させることが好ましい。また、有機系結着剤の他に粘度調整剤として、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、その他のアクリル系ポリマー、または脂肪酸エステル等を添加しても良い。
【0045】
導電剤の種類は特に限定はなく、構成された電池において、分解や変質を起こさない電子伝導性の材料であれば良く、具体的にはAl,Ti,Fe,Ni,Cu,Zn,Ag,Sn,Si等の金属粉末や金属繊維、または天然黒鉛、人造黒鉛、各種のコークス粉末、メソフェーズ炭素、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、各種の樹脂焼成体等の黒鉛などを用いることができる。導電剤の含有量は、負極材全体中に対して0〜20重量%であり、さらには1〜10重量%が好ましい。導電剤量が少ないと、負極材の導電性に乏しい場合があり、初期抵抗が高くなる傾向がある。一方、導電剤量の増加は電池容量の低下につながるおそれがある。
【0046】
前記溶剤としては特に制限はなく、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、イソプロパノール、純水等が挙げられ、その量に特に制限はない。集電体としては、例えばニッケル、銅等の箔、メッシュなどが使用できる。一体化は、例えばロール、プレス等の成形法で行うことができる。
【0047】
このようにして得られた負極は、セパレータを介して正極を対向して配置し、電解液を注入することにより、従来のシリコンを負極材料に用いたリチウム二次電池と比較して、サイクル特性に優れ、高容量、高初期効率という優れた特性を有するリチウム二次電池を作製することができる。
【0048】
正極に用いられる材料については、例えばLiNiO
2、LiCoO
2、LiMn
2O
4、LiNi
xMn
yCo
1−x−yO
2、LiFePO
4、Li
0.5Ni
0.5Mn
1.5O
4、Li
2MnO
3−LiMO
2(M=Co,Ni,Mn)等を単独または混合して使用することができる。
【0049】
電解液としては、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSO
3CF
3等のリチウム塩を、例えばエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート等の非水系溶剤に溶解させた、いわゆる有機電解液を使用することができる。さらには、イミダゾリウム、アンモニウム、およびピリジニウム型のカチオンを用いたイオン液体を使用することができる。対アニオンは特に限定はなく、BF
4−、PF
6−、(CF
3SO
2)
2N
−等が挙げられる。イオン液体は前述の有機電解液溶媒と混合して使用することが可能である。電解液には、ビニレンカーボネートやフロロエチレンカーボネートの様なSEI(固体電解質界面層)形成剤を添加することもできる。
【0050】
また、上記塩類をポリエチレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド等やこれらの誘導体、混合物、複合体等に混合された固体電解質を用いることもできる。この場合、固体電解質はセパレータも兼ねることができ、セパレータは不要となる、セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムまたはこれらを組み合わせたものを使用することができる。
【0051】
次に活物質Bについて説明する。
【0052】
活物質Bは、SiまたはSi合金と、炭素質物または炭素質物と黒鉛とを、含んでなるリチウムイオン2次電池用負極活物質において、該SiまたはSi合金の平均粒径D
50が0.01〜6μmであり、該炭素質物が、遷移金属、周期表13族、15族元素の群から選択される少なくとも1つの元素とリチウムとの複合酸化物であるリチウム化合物と複合化され、該負極活物質がEDOTまたはヒドロキシメチルEDOTから選択される少なくとも1つのモノマーが0.1〜10重量部含有されていることを特徴とするリチウムイオン2次電池用負極活物質である。
【0053】
活物質BでいうSiとは、純度が98%程度の汎用グレードの金属シリコン、純度が2〜4Nのケミカルグレードの金属シリコン、塩素化して蒸留精製した4Nより高純度のポリシリコン、単結晶成長法による析出工程を経た超高純度の単結晶シリコン、もしくはそれらに周期表13族もしくは15族元素をドーピングして、p型またはn型としたもの、半導体製造プロセスで発生したウエハの研磨や切断の屑、プロセスで不良となった廃棄ウエハなど、汎用グレードの金属シリコン以上の純度であれば特に限定されない。
【0054】
活物質BでいうSi合金とは、Siが主成分の合金である。前記Si合金において、Si以外に含まれる元素としては、周期表2〜15族の元素の一つ以上が好ましく、合金に含まれる相の融点が900℃以上となる元素の選択および/または添加量が好ましい。
【0055】
活物質Bのリチウムイオン2次電池用負極活物質において、Si化合物の平均粒径D
50は0.01〜6μmであり、0.05〜0.5μmがさらに好ましい。0.01μmより小さいと、表面酸化による容量や初期効率の低下が激しく、6μmより大きいと、リチウム挿入による膨張で割れが激しく生じ、サイクル劣化が激しくなる。なお、D
50はレーザー粒度分布計で測定した体積平均の粒子径である。
【0056】
活物質Bにおける炭素質物とは、遷移金属、周期表13族、15族元素の群から選択される少なくとも1つの元素とリチウムとの複合酸化物であるリチウム化合物と複合化されたものであり、該リチウム化合物とは、遷移金属、周期表13族、15族元素の群から選択される少なくとも1つの元素のオキソ酸のリチウム塩であり、例えば、遷移金属の場合、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、各種マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4、LiMnO
2、Li
2MnO
3等)、鉄酸リチウム(LiFeO
2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、各種チタン酸リチウム(Li
2Ti
2O
4、Li
4Ti
5O
12、Li
6Ti
5O
12等)、各種ニオブ酸リチウム(LiNbO
3、Li
2Nb
2O
5等)、タングステン酸リチウム(LiWO
2)、モリブデン酸リチウム(LiMoO
2)等が挙げられ、周期表13族の場合、アルミン酸リチウム(LiAlO
2)、メタホウ酸リチウム(LiBO
2),テトラホウ酸リチウム(Li
2B
4O
7)等が挙げられ、周期表15族の場合、トリリン酸リチウム(Li
3PO
4),ピロリン酸リチウム(Li
4P
2O
7)等が挙げられる。リチウム化合物はこれらの固溶体や混合物でも良く、組成が不定比となる不定比化合物でも良く、明瞭な結晶相を示さなくても良い。
【0057】
また、リチウム化合物の被覆層に含まれる遷移金属、周期表13族もしくは15族元素の群から選択される少なくとも1つの元素と価数が異なる金属元素が、前記リチウム化合物の被覆層にさらに含まれていることが、さらに好ましい。例えば、4価のTiを持つLi
4Ti
5O
12に対して1〜3価のNa、Cu、Mg、Al、Ni等の金属元素を添加や、3価と4価のMnを持つLiMn
2O
4に対して1〜2価のNa、Cu、Mg等の金属元素を添加等が挙げられる。
【0058】
炭素質物とリチウム化合物とを複合化させることにより、炭素質物が電子を伝導し、リチウム化合物がリチウムイオンを伝導し、充放電に伴う抵抗を下げる。また、遷移金属、周期表13族、15族元素の群から選択される少なくとも1つの元素は負極活物質を製造する時の熱処理により、Si化合物に僅かにドーピングされ、電気伝導度を高めると考えられる。電気伝導度の観点からより好ましい元素としては、周期表13族ではホウ素、周期表15族ではリンが挙げられる。これらの元素を含むリチウムの複合酸化物は融点が800〜1000℃にあり、後述するように焼成時に固相もしくは液相の焼結が進み、炭素質物と一体化してSiまたはSi合金を緻密に取り囲みやすい。
【0059】
リチウム化合物は微細なグレインが結合してなり、でき上がった負極活物質の粒子強度の観点からグレインサイズは0.2μm以下が好ましい。
【0060】
活物質Bのリチウムイオン2次電池用負極活物質においては、前記Si化合物の含有量が10〜80重量部、前記炭素質物の含有量が0.5〜65重量部であることが好ましい。なお、前記炭素質物の含有量は、さらに好ましくは、5〜40質量部、特に好ましく8〜30質量部である。
【0061】
活物質Bでいう黒鉛とは、グラフェン層がc軸に平行な結晶であり、鉱石を精製した天然黒鉛、石油や石炭のピッチを黒鉛化した人造黒鉛等があり、原料の形状としては鱗片状、小判状もしくは球状、円柱状もしくはファイバー状等がある。また、それらの黒鉛を酸処理、酸化処理した後、熱処理することにより膨張させ、黒鉛層間の一部が剥離してアコーディオン状となった膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物、もしくは超音波等により層間剥離させたグラフェン等も用いることができる。本発明の負極活物質に含まれる黒鉛の粒子サイズは、負極活物質粒子のサイズより小さければ特に限定はなく、黒鉛粒子の厚みは活物質の平均粒径D
50の1/5以下であることが好ましい。黒鉛の添加により活物質粒子の導電性および強度が高まり、充放電のレート特性およびサイクル特性が向上する。黒鉛粒子のX線回折で測定される(002)面の面間隔d002は0.338nm以下であることが好ましく、これは高度に黒鉛化が進んだ黒鉛を意味している。d002がこの値を超える場合、黒鉛による導電性向上効果が小さくなる。
【0062】
活物質Bのリチウムイオン2次電池用負極活物質において、炭素質物と黒鉛が含まれる場合、Si化合物の含有量が10〜70重量部、前記炭素質物の含有量が5〜40重量部、前記黒鉛の含有量が20〜85重量部であることが好ましい。また、前記Si炭素複合粒子に対する前記リチウム化合物の被覆層の重量比は、0.5重量部以上65重量部以下が好ましく、10重量部より大きく50重量部以下であることがさらに好ましい。
【0063】
活物質Bは、EDOTまたはヒドロキシメチルEDOTから選択される少なくとも1つのモノマーが0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部含有されていることにより、負極活物質として電池化した際、初期及びサイクル中の高い電池容量を維持しつつ、サイクル特性及びサイクルによる不可逆な膨張抑制に優れる特性が得られる。その理由として、モノマーが充放電の際、電解酸化重合により、導電性ポリマー(Poly−EDOT)が生成され、各負極材同士の導電パスが確保され、さらに負極材や負極材中のSi粒子を覆うことで、電解液の接触を低減し、充放電中に発生するSi化合物の劣化を防止することで上記特性向上に繋がると考えられる。
【0064】
活物質Bのリチウムイオン2次電池用負極活物質においては、活物質Aにおける炭素質物や導電助剤がさらに含まれていても良い。導電助剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、CNT等が挙げられ、粒子サイズとしては1μm以下で、含有量は前記リチウム化合物の重量に対して30重量%以下が好ましく、添加時には、使用する溶剤に対して分散性を確保可能な表面処理がされていることが好ましい。
【0065】
活物質Bのリチウムイオン2次電池用負極活物質は、形状が丸みを帯びた平均粒径D
50が1〜40μmの複合粒子であることが好ましく、特に好ましくは2〜30μmである。D
50が1μm未満の場合、嵩高くなって高密度の電極が作製しにくくなり、40μmを超える場合、塗布した電極の凹凸が激しくなって均一な電極が作製しにくくなる。また、前記Si化合物の平均粒径が該負極活物質の平均粒径の1/5以下であり、前記モノマーが、少なくとも活物質表面を覆っていることが好ましい。
【0066】
サイクル特性の観点からより好ましい前記負極活物質の平均粒径D
50の範囲は2〜20μmであり、かつ10%粒子径D
10が1μm以上で、厚みが1μm未満の薄片状粒子が少ないことが好ましい。
【0067】
形状が丸みを帯びた複合粒子とは、粉砕等により生成した粒子の角が取れているもの、球状もしくは回転楕円体形状、円板もしくは小判形状で厚みを有して角が丸いもの、またはそれらが変形したもので角が丸いものなどである。形状が丸みを帯びることにより複合粒子の嵩密度が高まり、負極にした時の充填密度が高まる。また、前記リチウム化合物と複合化している炭素質物が、少なくとも活物質表面を覆っていることにより、充放電の過程で電解液に溶媒和したリチウムイオンが、前記リチウム化合物と複合化している炭素質物の表面で溶媒から離れて、リチウムイオンのみがSi化合物および/または黒鉛と反応するため、溶媒の分解生成物が生成しにくくなり、充放電の効率が高まる。
【0068】
活物質Bのリチウムイオン2次電池用負極活物質においては、前記Si化合物が、前記リチウム化合物と複合化している炭素質物と共に0.2μm以下の厚みの黒鉛薄層の間に挟まった構造であり、その構造が積層および/または網目状に広がっており、該黒鉛薄層が活物質粒子の表面付近で湾曲して活物質粒子を覆っており、最外層の表面を前記モノマーが覆っていることが好ましい。
【0069】
活物質Bでいう黒鉛薄層とは、先に述べた黒鉛を酸処理、酸化処理した後、熱処理することにより膨張させて黒鉛層間の一部が剥離してアコーディオン状となった膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物、超音波等により層間剥離させたグラフェン等、またはこれらが圧縮力を受けることで生成した、グラフェン1層(厚み0.0003μm)〜数百層(厚み〜0.2μm)からなる黒鉛薄層である。黒鉛薄層の厚みは薄い方が、黒鉛薄層間に挟まれたSi化合物と、前記リチウム化合物と複合化している炭素質物の層が薄くなって、Si化合物への電子の伝達が良くなり、厚みが0.2μmを超えると黒鉛薄層の電子伝達効果が薄まる。黒鉛薄層を断面で見て線状の場合、その長さは負極活物質粒子のサイズの半分以上あることが電子伝達に好ましく、負極活物質粒子のサイズと同等程度であることがさらに好ましい。黒鉛薄層が網目状の場合、黒鉛薄層の網が負極活物質粒子のサイズの半分以上に渡って繋がっていることが電子伝達に好ましく、負極活物質粒子のサイズと同等程度であることがさらに好ましい。
【0070】
活物質Bにおいては、黒鉛薄層が活物質粒子の表面付近で湾曲して活物質粒子を覆うことが好ましい。そのような形状にすることで、黒鉛薄層端面から電解液が侵入して、Si化合物や黒鉛薄層端面と電解液が直接接して、充放電時に反応物が形成され、効率が下がるリスクが低減する。
【0071】
活物質Bのリチウムイオン2次電池用負極活物質では、比表面積が0.5〜50m
2/gであることがさらに好ましい。
【0072】
活物質Bのリチウムイオン2次電池用負極活物質において、前記炭素質物とリチウム化合物の複合化物は、後述する炭素前駆体の炭化と同時に高度に焼結するため、緻密な組織を形成する。そのため、負極活物質粒子内部に通じるポアが少なく、充放電の過程で電解液に溶媒和したリチウムイオンが、直接Si化合物および/または黒鉛に接触しにくい構造となっており、比表面積が0.5〜50
2/gであることにより、Si化合物や黒鉛と電解液の反応が抑制され、表面での炭素質物と電解液の反応も少なく保たれるため、充放電の効率が高まる。負極活物質の緻密化による粒子強度の向上も相まって、Si化合物の膨張による割れが抑制され、不可逆な膨張が低減する。
【0073】
活物質Bの製造方法は、SiまたはSi合金、および遷移金属、周期表13族、15族元素の群から選択される少なくとも1つの元素とリチウムとの複合酸化物、さらに必要に応じて黒鉛を混合する工程と、造粒・圧密化する工程と、粉砕および球形化処理して形状が丸みを帯びた複合粒子を形成する工程と、該複合粒子を不活性ガス雰囲気中で焼成する工程後、EDOTまたはヒドロキシメチルEDOTから選択される少なくとも1つのモノマーを0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部該複合粒子に添加する製造方法である。
【0074】
活物質Bの製造方法は、活物質Aの負極活物質の製造方法において、リチウム化合物の添加なしで、混合分散する工程と、造粒・厚密化する工程と、粉砕および球形化処理して形状が丸みを帯びた複合粒子を形成する工程と、該複合粒子を不活性雰囲気中で焼成する工程を経て、Si炭素複合粒子を作製する。
【0075】
次に、リチウム化合物を被覆するためリチウム化合物を準備する。原料であるリチウム化合物は、遷移金属、周期表13族もしくは15族元素の群から選択される少なくとも1つの元素とリチウムとの複合酸化物粉末を、先に述べたSi化合物と同様な方法でSi化合物と同程度の平均粒径に粉砕したものを用いることが好ましい。また、遷移金属、周期表13族もしくは15族元素の群から選択される少なくとも1つの元素およびリチウムのアルコキシド、脂肪酸塩、無機塩を用いることもできる。
【0076】
準備したリチウム化合物原料をエタノール等の適当な溶媒に分散させ、Si炭素複合粒子と混合撹拌し、乾燥機で溶媒除去し、リチウム化合物原料で被覆されたSi炭素複合粒子を作製する。さらに、焼成して、リチウム化合物による被覆化まで行うことができる。焼成時の雰囲気は300℃未満であれば大気中でも良いが、それ以上では不活性ガス雰囲気中が好ましい。なお、リチウム化合物原料の被覆は転動流動コーティング装置等により、Si炭素複合粒子を流動床で流動させ、溶媒に分散させたリチウム化合物原料を噴霧し、同時に乾燥、さらに加熱してリチウム化合物の被覆まで行い、EDOTまたはヒドロキシメチルEDOTから選択される少なくとも1つのモノマーを0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部該複合粒子に添加しても良い。添加する方法は、上記焼成後の複合粒子に上記モノマーを直接添加させる方法が好ましく、例えば希釈したモノマー溶液に浸漬させる添加方法等がある。また、完成した負極活物質を集電極シート化する際に、スラリー化した中に上記モノマーを混ぜて添加する方法でも良い。添加量は、各々0.1〜10重量部が好ましく、さらに好ましい範囲は0.5〜5重量部である。また、添加する際の乾燥温度は、モノマーの耐熱温度以下で行うことが好ましい。乾燥温度は、EDOTで120℃以下、ヒドロキシメチルEDOTでは150℃以下が好ましい。それ以上の乾燥温度では、容量の低下やサイクル特性の低下が発生する。
【0077】
このようにして得られる活物質Bは、リチウム二次電池の負極材料として用いることができる。
【0078】
活物質Bは、例えば、有機系結着剤、導電助剤および溶剤と混練して、シート状、ペレット状等の形状に成形するか、または集電体に塗布し、該集電体と一体化してリチウム二次電池用負極とされる。
【0079】
有機系結着剤としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンポリマー、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、イオン導電性の大きな高分子化合物が使用できる。イオン導電率の大きな高分子化合物としては、ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロロヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド等が使用できる。有機系結着剤の含有量は、負極材全体に対して3〜20重量%含有させることが好ましい。また、有機系結着剤の他に粘度調整剤として、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、その他のアクリル系ポリマー、または脂肪酸エステル等を添加しても良い。
【0080】
導電剤の種類は特に限定はなく、構成された電池において、分解や変質を起こさない電子伝導性の材料であれば良く、具体的にはAl,Ti,Fe,Ni,Cu,Zn,Ag,Sn,Si等の金属粉末や金属繊維、または天然黒鉛、人造黒鉛、各種のコークス粉末、メソフェーズ炭素、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、各種の樹脂焼成体等の黒鉛などを用いることができる。導電剤の含有量は、負極材全体中に対して0〜20重量%が好ましく、さらには1〜10重量%が好ましい。導電剤量が少ないと、負極材の導電性に乏しい場合があり、初期抵抗が高くなる傾向がある。一方、導電剤量の増加は電池容量の低下につながるおそれがある。
【0081】
前記溶剤としては特に制限はなく、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、イソプロパノール、純水等が挙げられ、その量に特に制限はない。集電体としては、例えばニッケル、銅等の箔、メッシュなどが使用できる。一体化は、例えばロール、プレス等の成形法で行うことができる。
【0082】
このようにして得られた負極は、セパレータを介して正極を対向して配置し、電解液を注入することにより、従来のシリコンを負極材料に用いたリチウム二次電池と比較して、サイクル特性に優れ、高容量、高初期効率という優れた特性を有するリチウム二次電池を作製することができる。
【0083】
正極に用いられる材料については、例えばLiNiO
2、LiCoO
2、LiMn
2O
4、LiNi
xMn
yCo
1−x−yO
2、LiFePO
4、Li
0.5Ni
0.5Mn
1.5O
4、Li
2MnO
3−LiMO
2(M=Co,Ni,Mn)等を単独または混合して使用することができる。
【0084】
電解液としては、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSO
3CF
3等のリチウム塩を、例えばエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート等の非水系溶剤に溶解させた、いわゆる有機電解液を使用することができる。さらには、イミダゾリウム、アンモニウム、およびピリジニウム型のカチオンを用いたイオン液体を使用することができる。対アニオンは特に限定はなく、BF
4−、PF
6−、(CF
3SO
2)
2N
−等が挙げられる。イオン液体は前述の有機電解液溶媒と混合して使用することが可能である。電解液には、ビニレンカーボネートやフロロエチレンカーボネートの様なSEI(固体電解質界面層)形成剤を添加することもできる。
【0085】
また、上記塩類をポリエチレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド等やこれらの誘導体、混合物、複合体等に混合された固体電解質を用いることもできる。この場合、固体電解質はセパレータも兼ねることができ、セパレータは不要となる、セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムまたはこれらを組み合わせたものを使用することができる。