(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリアルキレンオキシド(A)を50〜99.9重量%、ポリイソシアネート(B)を0.1〜50重量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポリアルキレンオキシド組成物。
ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が、分離カラムに粒径3μmの充填剤を充填したカラム4本を直列接続し、レファレンス側に抵抗管を接続、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いた条件で分析した分子量分布であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のポリアルキレンオキシド組成物。
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のポリアルキレンオキシド組成物に含まれるポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(B)との反応生成物からなるウレタンプレポリマー。
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のポリアルキレンオキシド組成物に含まれるポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させることを特徴とするウレタンプレポリマーの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0025】
本発明のポリアルキレンオキシド組成物は、ポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(B)を含む組成物であって、ポリアルキレンオキシド(A)が、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.029以下、かつ不飽和度が0.010meq/g以下であることをその特徴とする。
【0026】
<ポリアルキレンオキシド(A)の化学組成>
本発明のポリアルキレンオキシド組成物に用いるポリアルキレンオキシド(A)は、活性水素化合物R[−H]mを一種又は二種以上用い、炭素数が2〜12の3員環のアルキレンオキシドを一種又は二種以上付加したアルキレンオキシド付加物であることが好ましく、また、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシドであることが好ましい。
【0028】
[一般式(1)中、Rは、活性水素含有化合物(R[−H]m)からm個の活性水素を除いたm価の基;Zは炭素数2〜12のアルキレン基又はシクロアルキレン基であり、Aは炭素数3のアルキレン基である。複数のZ又はAがある場合、それぞれは同一でも異なっていてもよい;mは1又は2〜100の整数;pは0又は1〜500の整数、qは1〜1000の整数;rは0又は1〜500の整数である。]
これらのうち、オキシアルキレン基を有し、ポリマー末端、分岐鎖末端といった任意の箇所に分子内に1分子当たり活性水素基を少なくとも1個有している化合物、即ちモノオール(m=1の場合)又はポリオール(m=2〜100の整数の場合)が好ましい。
【0029】
活性水素含有化合物(R[−H]m)としては、活性水素基を有していれば特に限定されないが、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシアルキレンジオール等の2官能のジオール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等のビスフェノール類、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等のジヒドロキシベンゼン類、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等のアミン類等の2個の活性水素基を有する化合物が挙げられる。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、三洋化成工業社製のサンニックスGP−250、GP−400、GP−600、GP−1000等の3官能の低分子量ポリオール等のトリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等のテトラオール、ヘキソール、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類等の3個以上の活性水素基を有する化合物が挙げられる。更に、分子量1000以下のポリオキシアルキレンモノオール等の1個の活性水素基を有する化合物等の1個以上の活性水素を有する化合物が挙げられる。活性水素含有化合物(R[−H]m)としては、これらの中からから選ばれる一種又は二種以上の混合物を用いることができる。
【0030】
これらのなかでも、触媒調製の際の副生物が除去しやすく分子量分布が狭いポリアルキレンオキシドが得られやすいため、沸点が150℃以上の活性水素含有化合物が好ましく、沸点が200℃以上の活性水素含有化合物が更に好ましい。例えば、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシアルキレンジオール等の2官能のポリオール類、三洋化成社製のサンニックスGP−250、GP−400、GP−600、GP−1000等の3官能の低分子量ポリオール等のトリオール類、分子量1000以下のポリオキシアルキレンモノオール等の一種又は二種以上の混合物が挙げられる。
【0031】
活性水素含有化合物(R[−H]m)に付加させるアルキレンオキシドとしては、分子内にエポキシ環を1個以上有している化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の炭素数2〜12のアルキレンオキシドが挙げられ、一種又は二種以上のアルキレンオキシドを用いてもよい。
【0032】
これらのなかでも、工業的に入手が容易なプロピレンオキシド、エチレンオキシド等の炭素数が2〜3のアルキレンオキシドを含む一種又は二種以上のアルキレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドを含む一種又は二種以上のアルキレンオキシドが更に好ましい。
【0033】
また、アルキレンオキシド中の水分としては、反応途中で開始剤として作用して分子量分布が広がりにくく分子量分布が狭いポリアルキレンオキシドを得やすいため、200ppm以下であることが好ましい。更に好ましくは100ppm以下であり、最も好ましくは60ppm以下である。市販のアルキレンオキシドをゼオライト等の吸着剤を用いて、脱水することで200ppm以下のアルキレンオキシドを得やすい。
【0034】
上記一般式(1)中のZOとしては、粘度が低くなりやすく良好なウレタン成形性を示しやすいため、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の炭素数2〜12のアルキレンオキシド由来のポリエーテル構造を有することが好ましい。更に好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシドから選ばれる一種又は二種以上のアルキレンオキシド由来のポリエーテル構造であり、最も好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシドから選ばれる一種のポリエーテル構造である。
【0035】
上記一般式(1)中のpは0又は1〜500の整数であり、好ましくはp=0又は1〜100の整数であり、更に好ましくはp=0である。
【0036】
上記一般式(1)中のZとしては、例えば、下記一般式(2)で示される構造が挙げられる。
【0038】
[上記一般式(2)中、R
2、R
3、R
4、R
5は各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキルを表す。但し、R
2〜R
5の合計の炭素数が10を超えることはない。また、R
2〜R
5のいずれか2つが結合してシクロアルキル基を形成してもよい。]
また、上記一般式(1)中のAOとしては、粘度が低くなりやすくウレタンとした際に良好な機械物性を示しやすいため、プロピレンオキシド等の炭素数3のアルキレンオキシド由来のポリエーテル構造であることが好ましい。
【0039】
上記一般式(1)中のAとしては、例えば、下記式で示される構造が挙げられる。
【0041】
上記一般式(1)中のqは1〜1000の整数であり、好ましくはq=30〜500の整数であり、更に好ましくはq=50〜250の整数である。
【0042】
上記一般式(1)中のrは、0又は1〜500の整数である。低温で固化しにくくハンドリング性に優れやすいため、好ましくはr=0又は1〜90の整数であり、更に好ましくはr=0である。
【0043】
上記一般式(1)中のpとqとrの関係としては、粘度が低くなりやすくウレタンとした際に良好な機械物性を示しやすいため、p+q>r(但し、p+qが10〜1000、qが10〜1000、rが0又は1〜90)を満たすことが好ましい。更に好ましくは、p+q>5r(但しp+qが30〜600、qが30〜500、rが0又は1〜90)を満たすことであり、最も好ましくはp+q>10r(但しp+qが50〜600、qが50〜500、rが0又は1〜90)を満たすことである。
【0044】
上記一般式(1)中のmは1又は2〜100の整数である。分子量分布が狭くなりやすくハンドリング性に優れやすいため、好ましくは1、2、又は3であり、最も好ましくは2である。
【0045】
<ポリアルキレンオキシド(A)の分子量分布>
本発明のポリアルキレンオキシド組成物に用いるポリアルキレンオキシド(A)は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.029以下である。好ましくは1.003〜1.026の範囲であり、更に好ましくは1.005〜1.019の範囲であり、最も好ましくは1.006〜1.016の範囲である。ポリアルキレンオキシドのポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.029を超えると顕著な粘度低減効果が得られなくなるため、バルクでのハンドリング性が悪く、更には溶媒への分散性も悪化するため使用が困難である。ポリウレタンの原料としても各原料との混合性が悪く、反応や組成が不均一となり使用が困難である。
【0046】
ポリアルキレンオキシド(A)のポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.029を超えると顕著な粘度低減効果が得られなくなるため、バルクでのハンドリング性が悪く、更には溶媒への分散性も悪化するため使用が困難となるおそれがある。ポリウレタンの原料としても各原料との混合性が悪く、反応や組成が不均一となり使用が困難となるおそれがある。
【0047】
本発明のポリアルキレンオキシド組成物に用いるポリアルキレンオキシド(A)のポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)と、後述する水酸基価(OHV)より算出した数平均分子量(M)との関係が下記数式(1):
【0049】
をを満たすことが好ましく、更に好ましくは下記数式(2):
【0051】
を満たすことであり、最も好ましくは下記数式(3):
【0054】
ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)は、後述する理由から、分離カラムに粒径3μmの充填剤を充填したカラム4本を直列接続し、レファレンス側に抵抗管を接続、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いた条件で測定して分析した分子量分布であることが好ましく、標準ポリスチレンを用いた3次近似曲線検量線を用いて算出した分子量分布(Mw/Mn)であることが望ましい。
【0055】
分離カラムの本数としては、分離能(理論段数)が高くベースラインの揺らぎや液中の不純物の微小ピークにより分子量分布が広がることを抑制しやすいため、好ましくは3〜5本であり、特に好ましく4本である。
【0056】
分離カラムの充填剤の粒径は、測定時間が適正で、ベースラインの揺らぎや液中の不純物の微小ピークにより分子量分布が広がることを抑制しやすいため、好ましくは1〜4.5μmであり、特に好ましくは3μmである。
【0057】
分離カラムの排除限界は好ましくは5万〜300万であり、更に好ましくは6万〜40万である。分離カラムの内径は好ましくは5〜7.5mmφであり、更に好ましくは6mmφである。分離カラムの長さ、好ましくは10〜25cmであり、更に好ましくは15cmである。
【0058】
このような分離カラムとしては、例えば、東ソー社製TskgelSuperH4000、Tskgel SuperH3000などが挙げられる。最も好ましい分離カラムの構成は、東ソー製TskgelSuperH4000×2本とTskgel SuperH3000×2本との計4本を直列接続する構成である。
【0059】
分離カラム側の流速は好ましくは0.5〜0.9ml/minであり、更に好ましくは0.6ml/minである。カラム温度は好ましくは30℃〜50℃であり、更に好ましくは40℃である。
【0060】
また、レファレンス側にはポンプの脈動により分子量分布が広がることを抑制しやすいため、抵抗管2本〜6本を接続することが好ましく、更に好ましくは抵抗管5本の接続であり、最も好ましくは抵抗管5本と分離カラム1本の接続である。
【0061】
抵抗管としては長さが2m、内径が0.1mmφのもの等が好適なものとして挙げられる。
【0062】
レファレンス側の流速は、ポンプの脈動周期が短くベースラインの揺らぎを抑制しやすくポンプの脈動により分子量分布が広がることを抑制しやすいため、抵抗管5本の状態で好ましくは0.1〜0.6ml/minであり、更に好ましくは0.15ml/minである。
【0063】
3次近似曲線検量線の標準物質に用いるポリスチレンは、好ましくは6点〜10点であり、更に好ましくは8点である。分子量既知の標準物質に用いるポリスチレンの分子量としては好ましくは300〜3000000の範囲からの選択であり、更に好ましくは450〜1100000の範囲からの選択である。具体的には、例えば500、1010、2630、10200、37900、96400、427000、1090000の8点選択などが挙げられ、標準物質の測定は500、2630、37900、427000の4点と1010、10200、96400、1090000の4点など2回に分けて測定してもよい。
【0064】
展開溶媒としては、好ましくはジメチルホルムアミド又はテトラヒドロフランであり、更に好ましくは和光純薬社製のBHT安定剤含有特級テトラヒドロフランである。
【0065】
サンプル濃度としては好ましくは0.5〜2mg/mlであり、更に好ましくは1mg/mlである。サンプル溶液の注入量はピークがブロードになりにくく分子量分布が広がりにくい10〜90μlが好ましく、更に好ましくは20μlである。
【0066】
ゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法における低分子量成分の面積比率は、ピーク全体の4.5%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましい。低分子量成分の面積比率減少に伴い粘度は上昇しやすいが、ポリウレタンとした際に移行成分が少なくハンドリング性や機械物性に優れやすいため好ましい。
【0067】
本発明において、ゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法における「低分子量成分の面積比率」とは、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定する際に算出される数平均分子量(Mn)の1/3以下の数平均分子量の低分子量成分を指し、ベースラインと分子量分布を測定する際に算出される数平均分子量(Mn)の1/3の点でピーク分割して低分子量成分の面積%を求めることができる。
【0068】
<ポリアルキレンオキシド(A)の性状>
本発明のポリアルキレンオキシド組成物に用いるポリアルキレンオキシド(A)の不飽和度は、0.010meq/g以下である。好ましくは、0.002〜0.009meq/gの範囲であり、更に好ましくは0.004〜0.008meq/gの範囲である。
【0069】
0.010meq/gを超える不飽和度が高いポリアルキレンオキシドを用いて得られるポリウレタンは、良好に硬化せず移行成分が多く発生して機械物性の悪化及びハンドリング性の悪化により使用が困難である。更には低分子量のモノオールを多く副生し、数平均分子量低下の要因となるためポリアルキレンオキシドの高分子量化が困難となるとともに、分子量分布の狭いポリアルキレンオキシドを得ること自体も困難となる。
【0070】
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)の「不飽和度(meq/g)」とは、ポリアルキレンオキシド(A)の1g当たりに含まれる不飽和基の総量のことであり、JIS K1557 6.7に規定された方法に準拠して測定した値である。ポリアルキレンオキシドの不飽和度はポリアルキレンオキシド中に存在するモノオール量の指標となり、増加することで粘度は低下するが、ポリアルキレンオキシドの平均官能基数が低下することがあり、ポリウレタン原料として用いた際に停止反応となり、ポリウレタンの分子量低下や未架橋の低分子量成分の増加につながったり、ポリウレタン中でダングリング鎖として作用することで機械物性が低下することがある。
本発明のポリアルキレンオキシド組成物に用いるポリアルキレンオキシド(A)の数平均分子量は、500以上であることが好ましく、更に好ましくは1000〜30000の範囲であり、最も好ましくは1000〜5000の範囲である。数平均分子量500未満では顕著な粘度低減効果とならず、そのようなポリアルキレンオキシド(A)を用いポリアルキレンオキシドは得られるポリウレタンは機械物性のバラツキが大きくなりやすい。
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)の数平均分子量は、水酸基価より算出した数平均分子量を指し、ポリアルキレンオキシドの水酸基価(OHV、単位はmgKOH/g)に基づいて下記数式(4):
【0073】
ここで、「OHV」は、JIS K1557 6.4に準拠して測定した値である。また、「1分子当たりの水酸基数」とは、ポリアルキレンオキシド(A)を製造するときに原料として用いた開始剤である活性水素化合物1分子あたりの活性水素原子の数をいう。市販品で開始剤の活性水素原子の数を特定できない場合、公称官能基数を用いる。
【0074】
本発明のポリアルキレンオキシド組成物に用いるポリアルキレンオキシド(A)の25℃条件における粘度は、特に限定されず、用途により適宜選択されるが、好ましくは1〜2000Pa・s(25℃)の範囲であり、更に好ましくは2〜1000Pa・s(25℃)の範囲である。ポリアルキレンオキシド(A)の粘度が1〜2000Pa・s(25℃)の範囲であれば、ポリウレタンの物性を制御しやすいため好ましい。
【0075】
本発明において、25℃条件における「粘度」とは、JIS K1557−5 6.2.3項のコーンプレート回転粘度計で測定した値を指す。具体的には、せん断速度0.1(1/s)条件での粘度を指すが、粘度が測定範囲に入らない場合、測定範囲に入るようせん断速度範囲を0.01〜10(1/s)の範囲で調整しても良い。
【0076】
<ポリアルキレンオキシド(A)の製造>
本発明のポリアルキレンオキシド組成物に用いるポリアルキレンオキシド(A)の製造方法としては、特に限定するものではないが、例えば、活性水素含有化合物とイミノフォスファゼニウム塩触媒の存在下に、アルキレンオキシドの開環重合を行うことにより製造することができる。
【0077】
例えば、活性水素含有化合物とイミノフォスファゼニウム塩触媒を混合し、減圧処理して触媒活性種前駆体を調整する際に100℃以上、0.3kPa以下の厳しい減圧条件で2時間以上十分に水分や溶媒を除去することで分子量分布を広げる要因となる開始剤の活性水素含有化合物由来以外のポリアルキレンオキシドを抑制すること、
更にルイス酸を混合し、減圧処理して触媒活性種を調整する際に100℃以上、0.3kPa以下の条件で2時間以上十分に副生物を除去すること及び沸点が低い副生物となる特定のルイス酸を選定することで分子量分布を広げる要因となるルイス酸由来のポリアルキレンオキシドを抑制すること、
副反応が少ないイミノフォスファゼニウム塩触媒と特定のルイス酸を組み合わせた触媒としてアルキレンオキシドを付加する製造プロセスを経ること、
水分値が100ppm以下と少ないアルキレンオキシドを用いること、
等により、ポリアルキレンオキシド(A)がより得られやすくなるため好ましいが、特に限定されない。
【0078】
イミノフォスファゼニウム塩触媒として、特に限定するものではないが、アルキレンオキシドの適応範囲が広くて重合活性が高く、低不飽和度となりやすいため、イミノフォスファゼニウム塩とルイス酸とを併用した触媒系を用いることが好ましい。
【0079】
ここで、ルイス酸としては、特に限定するものではないが、例えば、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、ホウ素化合物等を挙げることができる。そして、これらの中でも、触媒性能に優れるアルキレンオキシド重合触媒となることから、有機アルミニウム、アルミノキサン、有機亜鉛が好ましく、更に好ましくは、有機アルミニウムである。
【0080】
アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、ジフェニルモノイソブチルアルミニウム、モノフェニルジイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム;メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、メチル−イソブチルアルミノキサン等のアルミノキサン;塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等の無機アルミニウムを挙げることができる。
【0081】
これらの中でも、触媒活性種調製の際の副生物の沸点が100℃以下と低くて除去しやすく、分子量分布を広げる要因となるルイス酸由来のポリアルキレンオキシドを抑制しやすいトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウムなどが好ましい。触媒活性種調製の際に副生する化合物はルイス酸の構造より判断でき、例えばトリメチルアルミニウムではアルミニウム上の置換基のメチル基にHが付加したメタン、トリイソブチルアルミニウムではアルミニウム上の置換基のイソブチル基にHが付加したイソブタン、トリイソプロポキシアルミニウムではイソプロポキシ基にHが付加したイソプロパノールである。
【0082】
亜鉛化合物としては、例えば、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等の有機亜鉛;塩化亜鉛、酸化亜鉛等の無機亜鉛を挙げることができる。
【0083】
ホウ素化合物としては、トリエチルボラン、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリイソプロポキシボラン、トリフェニルボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフルオロボラン等を挙げることができる。
【0084】
イミノフォスファゼニウム塩としては、イミノ基及びP−N結合を有する化合物であればよく、特に限定されないが、下記一般式(3)で示される化合物が挙げられる(例えば、特開2011−132179号公報参照)。
【0086】
[上記一般式中、R
1及びR
2は、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。なお、R
1とR
2が互いに結合して環構造を形成していても良いし、R
1同士又はR
2同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。X
−は、ヒドロキシアニオン、炭素数1〜4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンを表す。]
イミノフォスファゼニウム塩とルイス酸との割合は、特に限定するものではなく、アルキレンオキシド重合触媒としての作用が発現する限りにおいて任意であるが、例えばイミノフォスファゼニウム塩:ルイス酸=1:0.002〜500(モル比)の範囲である。
【0087】
本発明のポリアルキレンオキシドを製造する際の重合温度としては、特に限定されないが、ポリアルキレンオキシドが分解して分子量分布が広がりにくく触媒活性を発現しやすいため、70〜150℃の範囲が好ましく、更に好ましくは90〜110℃の範囲である。
【0088】
本発明のポリアルキレンオキシドを製造する際の重合圧力は、特に限定されないが、0.05〜1.0MPaの範囲、好ましくは0.1〜0.6MPaの範囲である。
【0089】
本発明のポリアルキレンオキシドを製造する際の撹拌速度としては、特に限定されず重合容器の形状や内容積、撹拌翼形状等によるが、内容積2Lの円筒型の重合容器でイカリ型の撹拌翼の場合、300rpm以上で十分に撹拌することが好ましい。
【0090】
イミノフォスファゼニウム塩とルイス酸を組み合わせた触媒を用い、活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを付加する際には、イミノフォスファゼニウム塩(その前駆体を含む)、ルイス酸、及び活性水素含有化合物を同時に混合し、加熱・減圧処理等を行って触媒活性種を調製する方法、これらのうちの1成分に他の2成分を混合し加熱・減圧処理等を行って触媒活性種を調製する方法、これらのうちの2成分に他の1成分を混合し加熱・減圧処理等を行って触媒活性種を調製する方法、これらのうちの2成分を混合し加熱・減圧処理等を行って触媒活性種前駆体を調製後、他の1成分を混合し更に加熱・減圧処理等を行って触媒活性種を調製する方法等の如何なる方法を用いても良いが、副生物や不純物が除去されやすく狭い分子量分布のポリアルキレンオキシドを得やすいため、好ましくはイミノフォスファゼニウム塩と活性水素含有化合物とを混合した後に加熱・減圧処理を行って、その後にルイス酸を混合し更に加熱・減圧処理等を行って触媒活性種を調製してアルキレンオキシドを付加する製造プロセスを経ることが好ましい。
【0091】
その際の加熱・減圧処理の温度としては副生物や不純物が除去されやすく狭い分子量分布のポリアルキレンオキシドを得やすいため100℃以上が好ましく、更に好ましくは100〜130℃の範囲である。加熱・減圧処理の際の圧力としては、副生物や不純物が除去されやすく狭い分子量分布のポリアルキレンオキシドを得やすいため0.5kPa未満が好ましく、更に好ましくは0.001〜0.2kPaの範囲である。その際の加熱・減圧処理の時間としては、反応容器の形状等により異なるがイミノフォスファゼニウム塩及び又はその前駆体、ルイス酸、及び活性水素含有化合物を混合後2時間以上であることが好ましく、更に好ましくはイミノフォスファゼニウム塩及び又はその前駆体と活性水素含有化合物を混合後2時間以上の加熱・減圧留去に加え、ルイス酸混合後更に加熱・減圧留去を2時間以上行うことが好ましい。更に不純物除去のため低沸点の脱水溶媒を添加し、共沸操作を行って不純物を除去してもよい。
【0092】
本発明のポリアルキレンオキシド組成物に用いるポリアルキレンオキシド(A)は、特に限定するものではないが、触媒が残存すると粘度が上昇することがあるため、重合後に触媒を除去することが好ましい。更に好ましくは触媒残渣量が200ppm以下であり、最も好ましくは100ppm以下である。ここで、触媒残渣量としては、触媒を2種類以上併用して用いる場合、合算した触媒残渣量を指す。
【0093】
<ポリイソシアネート(B)>
本発明のポリアルキレンオキシド組成物に用いるポリイソシアネート(B)としては、特に限定するものではないが、例えば、少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。
【0094】
具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネートー4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、それらとポリオールとの反応によるイソシアネート含有プレポリマー、及びこれらの二種以上の混合物等が例示される。更に、これらのイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基含有変性物)やポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の縮合体(多核体と称されることもある)も包含される。
【0095】
これらのなかでも生産性が優れ、更には硬化性が優れるポリアルキレンオキシド組成物を得やすいため、芳香族族イソシアネート、脂環式イソシアネート、及びこれらの変性体が好ましい。
【0096】
具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、芳香族イソシアネート含有プレポリマー、脂環式イソシアネート含有プレポリマー、これらのイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基含有変性物)等が例示される。これらイソシアネートは一種又は二種以上混合して使用してもよい。
【0097】
イソシアネート含有プレポリマーとしては、例えば、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、イソトリデカノール、ヘキシルデカノール、エチルヘキサノール、ブチルテトラグリコール等のモノオール、ポリオール、モノアミン又はポリアミン等と、イソシアネートとの反応生成物が挙げられる。
【0098】
<添加剤>
本発明のポリアルキレンオキシド組成物には、必要に応じてウレタン化触媒、消泡材、整泡剤、その他の添加剤を含んでもよい。
【0099】
本発明のポリアルキレンオキシド組成物中の添加剤の含有量としては、特に限定するものではないが、好ましくは5重量%以下の範囲であり、更に好ましくは0.1重量%以下の範囲である。
【0100】
<ポリアルキレンオキシド組成物>
本発明のポリアルキレンオキシド組成物中のポリアルキレンオキシド(A)の含有量としては、特に限定するものではないが、通常50〜99.9重量%の範囲であり、好ましくは60〜99.8重量%の範囲であり、更に好ましくは70〜99.5重量%の範囲である。ポリアルキレンオキシド(A)の含有量が50〜99.9重量%の範囲であれば、ペースト状や固体状となりにくく液状を保ちやすいため、ハンドリングしやすい。また上記の範囲内であれば均一な組成となりやすく、ウレタンプレポリマーとした際も低粘度となってハンドリングしやすい。
【0101】
また、ポリアルキレンオキシド組成物中のポリアルキレンオキシド(A)中のOH基総量とポリイソシアネート(B)中のNCO基総量のモル比率(NCO/OH)としては、得られるウレタン硬化物の用途により異なり、特に限定されないが、通常NCO/OH=0.001〜20の範囲である。
【0102】
なかでも、後述するイソシアネート基末端のウレタンプレポリマーを得るにはNCO/OH=1.3〜10の範囲が好ましく、更に好ましくはNCO/OH=1.5〜3.9の範囲である。NCO/OH=1.3〜10の範囲であれば、用途により異なるが低粘度すぎて液流れ等によりハンドリング性が悪化する可能性が低くなり、また粘度が高くなりすぎてハンドリング性が悪化する可能性も低くなるため好ましい。
【0103】
本発明のポリアルキレンオキシド組成物中のポリイソシアネート(B)の含有量としては、通常0.1〜50重量%の範囲であり、好ましくは0.2〜40重量%の範囲であり、更に好ましくは0.5〜30重量%の範囲である。ポリイソシアネート(B)の含有率が0.1〜50重量%の範囲であれば、ペースト状や固体状となりにくく液状を保ちやすい為ハンドリングしやすく好ましい。また上記の範囲内であれば均一な組成となりやすく、後述するウレタンプレポリマーとした際も低粘度となってハンドリングしやすい為好ましい。
【0104】
本発明のポリアルキレンオキシド組成物の粘度としては、得られるウレタンプレポリマー、ウレタン硬化物等に要求される物性や用途を発現するNCO/OH比等により異なるため、特に限定されないが、通常100〜10万mPa・sの範囲であり、好ましくは200〜3万mPa・sの範囲であり、更に好ましくは300〜3000mPa・sの範囲である。100〜10万mPa・sの範囲であれば、用途により異なるが撹拌や成形等のハンドリングがしやすい。
【0105】
<ウレタンプレポリマー>
本発明のウレタンプレポリマーは、本発明のポリアルキレンオキシド組成物に含まれるポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(B)との反応生成物からなる。
【0106】
本発明のウレタンプレポリマーは、粘度が低くハンドリング性に優れ、速硬化性を示す。また、本発明のウレタンプレポリマーは、同一分子量の低モノオール量のポリプロピレングリコール(PPG)を用いて合成したウレタンプレポリマーより低粘度なため均一に硬化しやすい。更に、本発明のウレタンプレポリマーは、汎用のPPGや同一分子量の低モノオール量のPPGを用いて得られたウレタンプレポリマーより硬化期間も短いためタック性を示す期間が短縮しゴミの混入等を抑制しやすいため、得られるウレタン硬化物の機械物性のバラツキが顕著に小さくなる。
【0107】
本発明のウレタンプレポリマーの製造方法としては、特に制限されず、例えば、例えば、本発明のポリアルキレンオキシド組成物に含まれるポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させることにより製造することができる。必要に応じて、ウレタン化触媒、溶剤、消泡材、その他添加剤等の存在下、ポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(B)とをウレタン化反応(プレポリマー化)させてもよい。よって、得られたウレタンプレポリマーは、ウレタン化触媒、消泡材、添加剤等を含んでいてもよい。
【0108】
ここで、ウレタン化反応の温度としては、特に限定するものではないが、通常120℃以下であり、好ましくは50〜110℃である。120℃以下であれば、反応速度の制御や所定の数平均分子量と構造のウレタンプレポリマーが得られやすい。
【0109】
また、ウレタン化反応の反応時間としては、特に限定するものではないが、120℃以下で1〜20時間行なうのが好ましい。反応の終点は、滴定によるイソシアネート残留量測定、又はIR測定によるイソシアネートピークの消失により判断することができる。
【0110】
ウレタン化反応の際に、特に限定するものではないが、反応制御を容易にするため、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン、ベンゼン、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジグライム、ジメトルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルミアミド等が挙げられる。ウレタンプレポリマーの溶解性、溶媒の沸点等の点から特に、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン又はこれらの混合溶媒が好ましい。これら溶媒は、反応初期、反応中盤、反応終了後等任意のタイミングで添加してもよい。
【0111】
ウレタン化反応時に溶媒を使用した場合の、ウレタンプレポリマー溶液中のウレタンプレポリマー濃度(溶媒を除く未反応の原料を含む)としては、用途により選択され、特に限定するものではないが、好ましくは10〜90重量%の範囲であり、更に好ましくは20〜55重量%の範囲である。ウレタンプレポリマー溶液中のウレタンプレポリマー濃度が10〜90重量%の範囲であれば、ウレタン化の反応性の低下が小さく、ハンドリング性の向上効果が期待できる。
【0112】
本発明のウレタンプレポリマーの製造には、公知のウレタン化触媒を使用してもよい。例えば、三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
【0113】
三級アミン系化合物としては、特に限定するものではないが、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン(別名:DBU)等が挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0114】
有機金属系化合物としては、特に限定するものではないが、錫系化合物、及び非錫系化合物を挙げることができる。
【0115】
錫系化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(別名:DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、ジオクチル錫ジラウリレート(別名:DOTDL)、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0116】
非錫系化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネート等の鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0117】
上記ウレタン化触媒の中で、ジブチル錫ジラウレート(別名:DBTDL)、ジオクチル錫ジラウレート(別名:DOTDL)、2−エチルヘキサン酸錫等が、反応性及び衛生性の点で好ましい。
【0118】
上記三級アミン系化合物、有機金属系化合物等の触媒は、単独でも使用できるが、併用することもできる。
【0119】
本発明のウレタンプレポリマーの製造時における、上記ウレタン化触媒の添加量としては、特に限定されないが、使用量が少なすぎると生産性が低下する場合があり、また多すぎると反応が不均一となり物性が不安定となる場合があるため、ポリアルキレンオキシド組成物に対して、上記した3級アミン系化合物では0.01〜15重量%、上記した有機金属系化合物では0.0001〜5重量%の範囲が好ましい。合成後、これら触媒は、除去してもよく、残存していてもよい。
【0120】
本発明のウレタンプレポリマーは、高分子量化を促進するため、鎖延長剤を用いて鎖延長することができる。鎖延長剤としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のグリコール類、エチレンジアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミン等が挙げられる。
【0121】
本発明のウレタンプレポリマーの性状は、液状であることが望ましい。ゲル状や固体では塗工が難しい場合があり、溶媒に溶解して使用する場合にも不溶分等が発生する場合がある。
【0122】
本発明のウレタンプレポリマーは、分子内に反応性基を有することが好ましい。反応性基としては、特に限定するものではないが、活性水素基等のイソシアネート基と反応する反応性基、イソシアネート基等の活性水素基と反応する反応性基を含有することが好ましく、分子末端に水酸基を含有する水酸基末端ウレタンプレポリマーであることが特に好ましい。ポリイソシアネート(B)の有するNCO基とポリアルキレンオキシド(A)の有するOH基総量のモル比率(NCO/OH)が1.00以下の範囲では水酸基が末端構造である。また、1.00を超える範囲ではイソシアネート基が末端構造のものが多い。本発明のウレタンプレポリマーの末端構造としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、アリル基等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0123】
本発明のウレタンプレポリマーの標準ポリスチレン換算の数平均分子量は、特に限定するものではないが、1000〜30000の範囲であることが好ましく、2000〜10000範囲が更に好ましい。ウレタンプレポリマーの数平均分子量が1000〜30000の範囲であれば、ウレタンプレポリマーの粘度が高くなりすぎず、硬化反応に使用しやすい。標準ポリスチレン換算の数平均分子量は、カラム温度40℃、流速1.0ml/min、溶媒THFの条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いた3次近似曲線検量線として算出することができる。
【0124】
本発明のウレタンプレポリマーの粘度は、得られるウレタン硬化物に要求される物性や用途によって選択されるポリアルキレンオキシド組成物中のNCO/OH比やポリアルキレンオキシドの分子量等により異なるため、特に限定するものではないが、通常100〜50万mPa・sの範囲であり、好ましくは1000〜20万mPa・sの範囲であり、更に好ましくは2000〜10万mPa・sの範囲である。100〜50万mPa・sの範囲であれば、用途により異なるがハンドリングしやすい。
【0125】
なかでも、ポリアルキレンオキシド組成物中のNCO/OH比が1から離れるとウレタンプレポリマーの粘度が下がりやすく、NCO/OH比が1に近づくと粘度が上がりやすいため、ポリアルキレンオキシド組成物中のNCO/OH比が1.3〜3.9及びポリアルキレンオキシド分子量1000〜5000の範囲で、後述するウレタン硬化物の製造に用いる場合は、ウレタンプレポリマーの粘度は5500〜10万mPa・sの範囲であることが好ましい
本発明のウレタンプレポリマーの用途は、特に限定されず、種々のウレタン用途に使用できる。例えば、建築用弾性接着剤等の接着剤、表面保護フィルム、塗料、エラストマー、塗膜防水材、床材、建築・土木用シーリング材、可塑剤、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム等の用途が挙げられる。
【0126】
<ウレタン硬化物>
本発明のウレタン硬化物は、本発明のポリアルキレンオキシド組成物、又は本発明のプレタンプレポリマーのウレタン硬化物からなる。
【0127】
本発明のウレタン硬化物は、均一に硬化しやすく、硬化期間も短いためタック性を示す期間が短縮し、ゴミの混入等を抑制しやすいため、機械物性のバラツキが顕著に小さい。
【0128】
本発明のウレタン硬化物は、フィルム状、シート状、板状、ブロック状等の任意の形状で提供することができる。
【0129】
本発明のウレタン硬化物の製造方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明の記載のポリアルキレンオキシド組成物、又は本発明のウレタンプレポリマーを硬化させることにより製造することができる。必要に応じて、ウレタン化触媒、溶剤、消泡材、架橋剤、その他添加剤等の存在下、所定の形状でウレタン化反応、ウレア化反応を進行させることにより製造することができ、更に必要に応じて脱泡、乾燥して所定の形状で製造することができる。
【0130】
例えば、本発明のポリアルキレンオキシドをそのまま所定の形状で硬化する製造方法、本発明のウレタンプレポリマーを所定の形状で空気中の湿気によりウレア化を進行させ硬化させる1液湿気硬化型の製造方法、本発明のウレタンプレポリマーと活性水素基又はイソシアネート基に対し反応性を有する架橋剤とを混合し、所定の形状で硬化させる製造方法等が挙げられ、また、塗工することでシート状、フィルム状にすることができ、型内で成形することで板状、ブロック状等、任意の形状にすることができる。
【0131】
本発明のウレタン硬化物の用途は、特に限定するものではないが、例えば、機械物性のバラツキが小さいウレタン用途が挙げられる。具体的には、建築用弾性接着剤等の接着剤、表面保護フィルム、塗料、エラストマー、塗膜防水材、床材、建築・土木用シーリング材、可塑剤、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム等の用途が例示される。
【0132】
本発明のウレタン硬化物の製造に使用できる架橋剤としては、活性水素基に対して反応性を有する化合物、又はイソシアネート基に対して反応性を有する化合物であれば、特に限定されない。例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ架橋剤、メラミン樹脂、尿素樹脂、金属キレート系架橋剤、ポリオール架橋剤、アミン系架橋剤、水分等が挙げられる。これらの架橋剤は、一般に液状であるためそのまま使用することができるが、必要に応じて、有機溶媒で希釈して用いてもよい。
【0133】
ポリアルキレンオキシド組成物中のポリイソシアネート(B)に由来するNCO基総量と、ポリアルキレンオキシドに由来するOH基総量のモル比率(NCO/OH)が1.00以下の範囲やOH基末端のウレタンプレポリマーでは、架橋剤としては、活性水素基に対して反応性を有する化合物が好ましい。このような架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ架橋剤、メラミン樹脂、尿素樹脂、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらのなかでも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ架橋剤が耐熱性等の性能を発現しやすいため好ましい。
【0134】
一方、ポリアルキレンオキシド組成物中の、ポリイソシアネート(B)に由来するNCO基総量とポリアルキレンオキシドに由来するOH基総量のモル比率が1.00を超える範囲やNCO基末端のウレタンプレポリマーでは、架橋剤としては、イソシアネート基に対して反応性を有する化合物であることが好ましい。このような架橋剤としては、例えば、ポリオール架橋剤やアミン系架橋剤、水分等が挙げられる。
【0135】
本発明のウレタン硬化物の製造に用いることができる架橋剤の添加量は、ポリアルキレンオキシド組成物中の過剰な活性水素基又はイソシアネート基、ウレタンプレポリマーの反応性基に対して、0.0001当量〜20当量(モル比)の範囲が好ましく、0.01〜2当量の範囲が更に好ましく、0.1〜1.5当量の範囲が特に好ましい。架橋剤の添加量が、ポリアルキレンオキシド組成物中の過剰な活性水素基又はイソシアネート基、ウレタンプレポリマーの反応性基(系中の水分を含む)に対して、0.0001当量〜20当量(モル比)の範囲であれば、均一に硬化しやすいため機械物性のバラツキが小さく好ましい。
【実施例】
【0136】
以下、本発明を、実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例により限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で使用した原料、及び評価方法は以下に示すとおりである。
【0137】
(原料)
プロピレンオキシドは、和光社製特級のプロピレンオキシドをゼオライトにより脱水し、50ppm以下として使用した。その他の原料は試薬として購入し、そのまま使用した。
【0138】
(評価方法)
<水酸基価、数平均分子量>
ポリアルキレンオキシドの水酸基価(OHV)はJIS−K1557−1の方法に従い、測定した。また、ポリアルキレンオキシドの数平均分子量は、ポリアルキレンオキシドの水酸基価に基づき、上記数式(1)を用いて計算した値である。
【0139】
<不飽和度>
JIS−K1557−6の方法に従い、測定した。
【0140】
<分子量分布(Mw/Mn)>
サンプル瓶へポリオール10mgとTHF10mlを添加し、1終夜静置することで溶解し、PTFEカードリッジフィルター(0.5μm)でろ過することでサンプルを得た。検出器としてRI検出器RI8020、測定用カラムとして分離カラムに粒径3μmの充填剤を充填した東ソー製Tskgel SuperH4000×2本及びTskgel SuperH3000×2本の計4本を直列接続し、レファレンス側は抵抗管×5本を接続、展開溶媒に和光社製BHT安定剤含有の特級テトラヒドロフランを用い、分離カラム側の流速0.6ml/min、レファレンス側の流量0.15ml/min、カラム温度40℃の条件で分析した。分子量既知の東ソー社製標準ポリスチレン8点を用いた3次近似曲線を検量線として、分子量分布(Mw/Mn)の解析を行った。測定装置には東ソー製HLC−8320GPC、解析には東ソー製HLC−8320GPC−ECOSEC−WorkStationを用いた。
【0141】
<粘度>
ポリアルキレンオキシドについては、JIS−K1557−5の方法に従い、測定した。具体的には、測定温度は25℃、コーン・プレート回転粘度計を用いる方法により、せん断速度0.1〜10(1/s)間で測定してせん断速度0.1(1/s)の値を粘度とした。測定装置には、Anton−Paar社製MCR−300を用いた。
【0142】
また、ポリアルキレンオキシド組成物、ウレタンプレポリマーについては、JIS−K1557−5の方法に従い、測定した。具体的には、測定温度は25℃、B型粘度計を用いる方法により、製造後すぐに測定した。
【0143】
<NCO含量>
ジブチルアミンを用いた逆滴定法により求めた。
【0144】
<速硬化性>
速硬化性の指標として、以下に示す硬化時間、及びタックフリータイムを評価した。
【0145】
<硬化時間>
ポリアルキレンオキシド組成物又はウレタンプレポリマーをポリエチレンフィルム上に100μm厚みとなるように塗工して、空気中の湿気等によりウレタン化反応、ウレア化反応を進行させた際のNCO含量の推移を評価し、転化率90%に達する時間を硬化時間とした。なお、空気の循環により反応速度が変わるため、空気の流れのある同一の場所に静置して評価した。
<タックフリータイム>
ポリアルキレンオキシド組成物又はそれを用いて得られたウレタンプレポリマーをポリエチレンフィルム上に100μm厚みとなるように塗工して、空気中の湿気等によりウレタン化反応、ウレア化反応を進行させた際の経時でのタック有無を指触により評価し、タックがなくなった(指先に付着しなくなった)時間をタックフリータイムとした。なお空気の循環により反応速度が変わるため、同一の場所に静置して評価した。
【0146】
<ハンドリング性>
ポリアルキレンオキシドの粘度は、JIS−K1557−5の方法に従い、測定した。具体的には、測定温度は25℃、コーン・プレート回転粘度計を用いる方法により、せん断速度0.1〜10(1/s)間で測定してせん断速度0.1(1/s)の値を粘度とした。測定装置には、Anton−Paar社製MCR−300を用いた。
【0147】
また、ポリアルキレンオキシド組成物、ウレタンプレポリマーの粘度は、JIS−K1557−5の方法に従い、測定した。具体的には、測定温度は25℃、B型粘度計を用いる方法により、製造後すぐに測定した。
【0148】
ポリアルキレンオキシド組成物の粘度[mPa・s]が500未満を◎、500以上1400未満を○、1400以上を△と評価した。
【0149】
また、ウレタンプレポリマーの粘度[mPa・s]が15000未満を○、15000以上22000未満を△、粘度22000以上を×と評価した。
【0150】
<引張強度>
得られたウレタン硬化物に離型フィルムを軽く貼り合わせ、3号ダンベル型の打ち抜き機を用いて打ち抜き、離型フィルムを剥離し硬化物の厚みを測定。試験前に基材のポリエチレンフィルムを剥離し試験片を7つ以上作製した。引張試験機オリエンテック社製テンシロンRTG−1210を用いて、チャック間距離5cm、引張速度200mm/minで測定を行い、最初の7サンプル中の引張強度のバラツキが10%以内のサンプル数を求めた。
【0151】
触媒合成例1(イミノフォスファゼニウム塩Aの合成).
攪拌翼を付した2リットルの4つ口フラスコを窒素雰囲気下とし、五塩化リン96g(0.46mol)、脱水トルエン800mlを加え、20℃で攪拌した。攪拌を維持したまま、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン345g(2.99mol)を滴下した後、100℃に昇温し、更に1,1,3,3−テトラメチルグアニジン107g(0.92mol)を滴下した。得られた白色のスラリー溶液を100℃で14時間攪拌した後、80℃まで冷却し、イオン交換水250mlを加え、30分間攪拌した。攪拌を止めると、スラリーは全て溶解し、2相溶液が得られた。得られた2相溶液の油水分離を行い、水相を回収した。得られた水相にジクロロメタン100mlを加え、油水分離を行い、ジクロロメタン相を回収した。得られたジクロロメタン溶液をイオン交換水100mlで洗浄した。
【0152】
得られたジクロロメタン溶液を、攪拌翼を付した2リットルの四つ口フラスコに移液し、2−プロパノール900gを加えた後、常圧下で温度を80〜100℃に昇温し、ジクロロメタンを除去した。得られた2−プロパノール溶液を攪拌しながら内部温度を60℃に放冷した後、85重量%水酸化カリウム31g(0.47mol)を加えて、60℃で2時間反応した。温度を25℃まで冷却し、析出した副生塩を濾過により除去することによって、目的とするイミノフォスファゼニウム塩A[上記一般式(3)におけるR
1がメチル基、R
2がメチル基、X
−がヒドロキシアニオンに相当するイミノフォスファゼニウム塩]の2−プロパノール溶液860gを、濃度25重量%、収率92%で得た。
【0153】
<ポリアルキレンオキシド>
製造例1.
攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブを窒素雰囲気下とし、ポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製、サンニックスPP400)224.2g(活性水素量1121mmol)、合成例1で得られたイミノフォスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液11.58g(5.4mmol)を加えた。内温を100℃とし、180rpmで撹拌しながら0.3kPa未満で2時間減圧処理を行い触媒前駆体を得た。その後、トリイソプロポキシアルミニウムの29重量%ヘキサン溶液12.34g(17.3mmol)を加え、内温を100℃とし、310rpmで撹拌しながら0.3kPa未満で3時間減圧処理を行い、アルキレンオキシド重合触媒を得た。
【0154】
得られたアルキレンオキシド重合触媒存在下、オートクレーブの内温を110℃とし、プロピレンオキシド1230mlを撹拌速度380rpm、反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、反応させた。反応終了後、0.5kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去をおこない、ポリアルキレンオキシド1230gを得た。得られたポリアルキレンオキシドの触媒を除去し、得られたポリアルキレンオキシドは、粘度は359mPa・s、OHVから算出した数平均分子量は2040,不飽和度は0.006meq/g、分子量分布は1.011であった。低分子量成分の面積比率は0.12%であった。
【0155】
製造例2〜3.
合成例2からポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製、サンニックスPP400)、プロピレンオキシドの比率を変更した以外同様の操作により、ポリアルキレンオキシドを得た。得られたポリアルキレンオキシドの触媒を除去した性状を表1に記載した。
【0156】
製造例4、5.
触媒として市販の中国製DMC触媒を用い常法により製造した以外は実施例1と同様の方法により、ポリアルキレンオキシドを得た。触媒の投入量はプロピレンオキシドの投入量に応じて適宜調整を行った。
【0157】
得られたポリアルキレンオキシドの不飽和度は低いものであったが、実施例のものと比較して分子量分布が広く、同一分子量の製造例のものと比較して高粘度であった。
【0158】
製造例で得られたポリアルキレンオキシドの性状を表1に合わせて示す。
【0159】
【表1】
【0160】
<ポリアルキレンオキシド組成物の製造>
実施例1、2.
製造例1、2で合成したポリアルキレンオキシドを撹拌翼を付した4つ口のセパラブルフラスコに投入し、100℃2時間で減圧脱水を行い、室温に冷却後、窒素下でAldrich社製のフレーク状の4,4’−MDIを、ポリアルキレンオキシドと4,4’−MDIの比率がNCO/OH比で2となるようにセパラブルフラスコに投入し、窒素下で撹拌混合することによりポリアルキレンオキシド組成物を得た。
【0161】
得られたポリアルキレンオキシド組成物を少量抜出し粘度を測定した結果を表2に記載した。同等の分子量の比較例と比較して粘度が低く、ハンドリング性に優れた。また、ポリアルキレンキシドの分子量により用途が選択されるが、実施例のポリアルキレンオキシド組成物は、官能評価では通常用いられる用途に使用と判断されるものであった。
【0162】
【表2】
【0163】
実施例3.
実施例1、2において、ポリアルキレンオキシドと4,4’−MDIの比率をNCO/OH比で3とした以外は同様の方法によりポリアルキレンオキシド組成物を得た。得られたポリアルキレンオキシド組成物を少量抜出し粘度を測定した結果を表2に記載した。同等の分子量の比較例と比較して粘度が低く、ハンドリング性に優れた。また、ポリアルキレンキシドの分子量により用途が選択されるが、実施例のポリアルキレンオキシド組成物は、官能評価では通常用いられる用途に使用可能と判断されるものであった。
【0164】
比較例1、2.
製造例4,5で合成したポリアルキレンオキシドを用いて、実施例1、2と同様の方法により、ポリアルキレンオキシド組成物を得た。得られたポリアルキレンオキシド組成物を少量抜出し粘度を測定した結果を表2に記載した。同等の分子量の比較例と比較して粘度が高く、ハンドリング性が劣るものであった。
【0165】
また、ポリアルキレンキシドの分子量により用途が選択されるが、比較例のポリアルキレンオキシド組成物は、官能評価では分子量に対応する用途で使用が困難と判断されるものであった。
【0166】
<ウレタンプレポリマーの製造>
実施例4〜5.
実施例1、2で得た4つ口のセパラブルフラスコ内に入ったポリアルキレンオキシド組成物に熱電対温度計を刺しオーバーシュートしないように撹拌しながら素早く内温80℃に加温し、反応開始とした。反応器内容物のNCO基をジブチルアミン逆滴定により追跡し、ポリアルキレンオキシド組成物中のポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(B)の仕込み量から算出される理論NCO含量に達した段階で反応終了とした。得られたウレタンプレポリマーを少量抜出し、粘度を測定した結果を表に記載する。得られたウレタンプレポリマーは同等の分子量のポリアルキレンオキシドを用いて合成した比較例のウレタンプレポリマーに対して、粘度が低く、ハンドリング性に優れるものであった。
【0167】
また、ポリアルキレンキシドの分子量により用途が選択されるが、実施例のウレタンプレポリマーは、官能評価では通常用いられる用途に使用可能と判断されるものであった。
【0168】
【表3】
【0169】
比較例3、4.
比較例1、2で得たポリアルキレンオキシド組成物を用いた以外は同様の方法により、ウレタンプレポリマーを製造した。実施例1、2のポリアルキレンオキシド組成物と比較してプレポリマー化に時間を要し、生産性に劣るものであった。
【0170】
得られたウレタンプレポリマーを少量抜出し、粘度を測定した結果を表3に記載した。
【0171】
比較例3、4で得られたウレタンプレポリマーは、同等の分子量のポリアルキレンオキシドを用いて合成した実施例3、4のウレタンプレポリマーに比べると、粘度が高く、ハンドリング性に劣るものであった。
【0172】
また、ポリアルキレンキシドの分子量により用途が選択されるが、比較例のウレタンプレポリマーは、官能評価では分子量に対応する用途で使用が困難と判断されるものであった。
【0173】
参考例1.
市販のポリアルキレンオキシド(三洋化成社製、PP−2000:不飽和度0.043meq/g、分子量2000)を用いて実施例1と同様のポリアルキレンオキシド組成物を合成し、実施例4と同様の方法によりウレタンプレポリマーを合成した。
【0174】
実施例1のポリアルキレンオキシド組成物と比較してプレポリマー化に時間を要し、生産性に劣るものであった。
【0175】
得られたウレタンプレポリマーを用いて、実施例6と同様の方法により、ウレタン硬化物を得た。実施例のウレタンプレポリマーと比較して、硬化速度が遅く、タックフリータイムも長いものであった。また得られた硬化物の外観はサンプルによってはごく僅かにゴミが取り込まれたものもあった。
【0176】
参考例2.
市販のポリアルキレンオキシド(三洋化成社製、PP−4000:不飽和度0.093meq/g、分子量4000)を用いて実施例1と同様のポリアルキレンオキシド組成物を合成し、実施例4と同様の方法によりウレタンプレポリマーを合成。得られたウレタンプレポリマーを用いて、実施例6と同様の方法により、ウレタン硬化物を得た。
【0177】
<ウレタン硬化物の製造>
実施例6、7.
実施例4、5で得られたウレタンプレポリマーを窒素下で50度に加温して減圧脱泡後、ポリエチレン製の100μm厚みのシート状に、アプリケータを用いて塗工速度1.5m/minとして100μ厚みとなるように塗工した。
【0178】
塗工後23度55%RHの恒温室の空気の循環が十分な場所に静置し、NCO含量とタックの経時変化を評価した。1週間後得られたフィルムを透過IRを用いて測定し、NCO基が痕跡量以下であることを確認して反応終了とした。
【0179】
得られたウレタン硬化物は、硬化時間が速く、タックフリータイムも短いものであった。また、得られた硬化物の外観も良好であった。
【0180】
次に、得られたウレタン硬化物(フィルム)の引張強度のバラツキを評価した。7サンプル中5サンプル以上が10%未満のバラツキであり、機械物性のバラツキが小さいものあった。
【0181】
比較例5、6.
比較例3、4で得られたウレタンプレポリマーを用いた以外は、実施例6、7と同様の方法によりウレタン硬化物を得た。
【0182】
得られたウレタン硬化物は、実施例のウレタン硬化物と比較して、硬化時間が遅く、タックフリータイムも長いものであった。また得られた硬化物の外観は、サンプルによってはごく僅かにゴミが樹脂内に取り込まれたものや外観が不均一な箇所も微量あった。
【0183】
次に、得られたウレタン硬化物(フィルム)の引張強度のバラツキを評価した。7サンプル中3サンプル以上で十分な伸長前に破断し、引張強度のバラツキが10%以上と大きいものであった。またそれらのサンプルは、破断箇所がダンベルの中心部ではないものが多く、取り込まれたゴミや不均一な個所が破壊点となった可能性がある。
【0184】
実施例8.
実施例3で得たポリアルキレンオキシド組成物を減圧脱泡後、ポリエチレン製の100μm厚みのシート状に、アプリケータを用いて塗工速度1.5m/minとして100μ厚みとなるように塗工した。
【0185】
塗工後23度55%RHの恒温室の空気の循環が十分な場所に静置し、NCO含量とタックの経時変化を評価した。1週間後得られたフィルムを透過IRを用いて測定し、NCO基が痕跡量以下であることを確認して反応終了とした。
【0186】
次に、得られたウレタン硬化物(フィルム)の引張強度のバラツキを評価した。7サンプル中5サンプル以上が10%未満のバラツキであり、機械物性のバラツキが小さいものあった。
【0187】
参考例3.
参考例1で得られたウレタンプレポリマーを用いた以外は、実施例6、7と同様の方法によりウレタン硬化物を得、得られたウレタン硬化物(フィルム)の引張強度のバラツキを評価した。モノオール量が低いポリアルキレンオキシドを用いて得られた実施例4、比較例5のウレタン硬化物と比較して、引張強度が2/3以下と強度に劣るものであった。また、7サンプル中3サンプル以上で十分な伸長前に破断し、引張強度のバラツキが10%以上と大きいものであった。またそれらのサンプルは、破断箇所がダンベルの中心部ではないものが多く、取り込まれたゴミが破壊点となった可能性がある。
【0188】
以上のウレタン硬化物の評価結果を表4に合わせて示す。
【0189】
【表4】