(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の粘着テープは、基材(A)の少なくとも一方の面側に粘着剤層(B)を有する粘着テープであって、前記基材(A)を85℃の環境下に500時間放置した後の収縮率(a1)が2%以下であり、前記基材(A)を90℃の環境下に1時間放置した後の収縮率(a2)が5%以下であり、かつ、前記基材(A)を100℃の環境下に1時間放置した後の収縮率(a3)が10%以上であることを特徴とする。
【0014】
[基材(A)]
前記基材(A)としては、それを85℃の環境下に500時間放置した後の収縮率(a1)が2%以下であり、前記基材(A)を90℃の環境下に1時間放置した後の収縮率(a2)が5%以下であり、かつ、前記基材(A)を100℃の環境下に1時間放置した後の収縮率(a3)が10%以上であるものを使用する。前記所定の収縮率を備えた基材(A)は、85℃の環境下に500時間という長時間放置した場合であっても、その面方向(長さ方向または幅方向)に大幅な収縮を引き起こさず、加熱前の形状を概ね保持する一方で、100℃の温度環境下に放置された場合に、著しい収縮を引き起こす。そのため、本発明の粘着テープは、生活環境温度(およそ−20℃〜60℃の常温環境温度)及び電子機器の内部温度(およそ−20℃〜85℃)といった実使用環境下85℃未満の環境下では強固な接着力を保持できる一方で、100℃の温度環境下では、前記基材(A)が収縮し、例えば湾曲形状となることによって、前記基材(A)と粘着剤層(B)との界面の剥離を引き起こし、その結果、被着体から粘着テープを容易に除去することが可能となる。
【0015】
前記収縮率(a1)は、0%以上2%未満であることが好ましく、0%以上1%未満であることが、前記実使用環境下において、優れた接着力を長期間保持することができるためより好ましい。
【0016】
前記収縮率(a2)は、0%以上5%未満であることが好ましく、0%以上3%未満であることが、被着体を損傷することなく被着体同士を容易に分離することができるためより好ましい。
【0017】
前記収縮率(a3)は、10%以上50%以下であることが好ましく、12%以上40%以下であることが、被着体を損傷することなく被着体同士を容易に分離することができるためより好ましい。
【0018】
なお、上記基材の収縮率(a1)〜(a3)は、以下に示す方法で測定及び算出された値を指す。
【0019】
はじめに、基材(A)を縦20mm及び横20mmの正方形に裁断した後、
図2に示す位置に、マジックペンを用い、2本の標線(それぞれ長さ20mm)を引いたものを試験片1とした。
【0020】
前記試験片1を85℃の環境下に500時間静置した後、23℃の環境下に1時間静置したものを試験片2とした。次に、前記試験片2の標線の長さをそれぞれ測定した。前記測定の際、試験片2が湾曲等に変形していた場合には、その形状に沿って標線の長さを測定した。
【0021】
前記試験片2の前記測定値と、前記試験片1の各標線の長さ(20mm)と下記式に基づき、試験片の縦方向及び横方向の収縮率を算出し、そのうち大きな収縮率を、各試験片のもととなった基材の収縮率とした。
【0022】
収縮率=100×[(試験片1の標線の長さ)−(試験片2の標線の長さ)]/(試験片1の標線の長さ)
収縮率(a2)及び(a3)も、温度を85℃からそれぞれ90℃及び100℃に変更し、時間を500時間から1時間に変更したこと以外は、上記収縮率(a1)と同様の方法で測定した。
【0023】
前記基材(A)としては、前記収縮率(a1)〜(a3)を満たすものであればいずれも使用できるが、例えばスチレンブタジエン共重合体等のスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、非晶性環状オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、または、これらの共重合体等からなるフィルムを使用することができる。
【0024】
前記基材(A)としては、粘着テープの薄型化を阻害しない程度の厚さであり、かつ、所定の温度に加熱された際に収縮し粘着テープの剥離を促すことができる程度の厚さであることが好ましく、具体的には、1μm〜125μmの厚さを有するものを使用することが好ましく、1μm〜100μmの厚さを有するものを使用することが好ましく、5μm〜50μmの厚さを有するものを使用することがより好ましい。
【0025】
[粘着剤層(B)]
本発明の粘着テープを構成する粘着剤層(B)としては、前記基材(A)の収縮を阻害しにくいものであればいずれも使用することができる。
【0026】
前記粘着剤層(B)としては、例えば天然ゴム系粘着剤層や合成ゴム系粘着剤層等のゴム系粘着剤層、アクリル系粘着剤層、シリコーン系粘着剤層、ウレタン系粘着剤層、ビニルエーテル系粘着剤層等が挙げられる。なかでも、前記粘着剤層(B)としては、ゴム系粘着剤層、アクリル系粘着剤層を使用することが好ましく、好ましくは90℃、より好ましくは100℃に加熱されることによって軟化または溶融する合成ゴム系のブロック共重合体を含有する合成ゴム系粘着剤層、または、アクリル重合体を含有するアクリル粘着剤層を使用することが、前記基材(A)の収縮を阻害しにくく、その結果、100℃で加熱された際に、前記粘着テープによって貼付された被着体同士の容易な分離を阻害しにくいためより好ましい。
【0027】
本発明の粘着テープとしては、前記基材(A)の一方の面側に積層された粘着剤層がゴム系ブロック共重合体を含有する粘着剤層であり、かつ、前記基材(A)の他方の面側に積層された粘着剤層がアクリル重合体を含有する粘着剤層である両面粘着テープを使用することが好ましい。前記構成の粘着テープを構成するゴム系ブロック共重合体を含有する粘着剤層は、加熱により軟化し前記基材(A)の収縮に追従しやすい一方で、アクリル重合体を含有する粘着剤層は軟化しにくいため、前記基材(A)が収縮し被着体から粘着テープがはがれようとする力は、アクリル重合体を含有する粘着剤層に集中し、より一層容易に解体することが可能となる。
【0028】
前記粘着剤層(B)は、前記したとおりゴム系のブロック共重合体やアクリル重合体等のポリマーや必要に応じて使用可能な粘着付与樹脂等の粘着成分、及び、必要に応じてその他の添加剤等を含有する層であることが好ましい。
【0029】
前記合成ゴム系のブロック共重合体のポリマーとしては、いわゆるABAタイプのブロック共重合体(トリブロック共重合体)、ABタイプのブロック共重合体(ジブロック共重合体)、及び、それらの混合物を使用することができる。
【0030】
前記ゴム系ブロック共重合体としては、スチレン系ブロック共重合体を使用することが好ましい。前記スチレン系ブロック共重合体は、ポリスチレン単位とポリオレフィン単位とを有するトリブロック共重合体、ジブロック共重合体、または、それらの混合物を指す。
【0031】
前記ポリスチレン単位は、粘着剤層の弾性率を高め、85℃以下の温度領域下では非常に優れた接着力を発現できるとともに、例えばハロゲンランプ等を用い、短時間、加熱された場合にその接着力を著しく低下させることのできる特性に寄与する。
【0032】
前記スチレン系のブロック共重合体としては、例えばポリスチレン−ポリ(イソプロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(イソプロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体等を使用することができる。なかでも、前記スチレン系のブロック共重合体としては、ポリスチレン単位(a1)とポリイソプレン単位(a2)とを有するブロック共重合体を使用することが好ましく、ポリスチレン−ポリ(イソプロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン)ブロック−ポリスチレン共重合体、を使用することが、85℃以下の温度領域下では非常に優れた接着力を発現できるとともにうえで好ましい。
【0033】
前記ゴム系ブロック共重合体としては、優れた接着力と、加熱による解体性とをより一層向上させるうえで、1万〜80万の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、5万〜50万の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましく、15万〜45万の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することがさらに好ましい。
【0034】
前記アクリル系共重合体としては、(メタ)アクリル単量体等のビニル単量体を含有する単量体成分を重合して得られるものを使用することができる。
【0035】
前記ビニル単量体としては、例えば炭素原子数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有するビニル単量体を有するビニル単量体等を使用することが好ましい。
【0036】
前記粘着剤層(B)としては、前記ゴム系ブロック共重合体の他に、粘着成分として、必要に応じて粘着付与樹脂等を含有するものを使用することが好ましい。
【0037】
前記粘着付与樹脂としては、例えばロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、脂肪族(石油樹脂)系粘着付与樹脂、C5系石油系粘着付与樹脂を使用することができる。
【0038】
なかでも、前記粘着付与樹脂としては、被着面への濡れ性を向上するうえで、C5系石油系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂を使用することが好ましい。特にテルペンフェノール系粘着付与樹脂は、粘着剤層(B)に適度な柔軟性を付与でき、20℃〜85℃程度の温度領域下で非常に高い接着力を付与でき、かつ、一定の反発力がテープに加わった場合の経時的な剥がれ等を防止可能な熱解体性粘着テープを得るうえで使用することが特に好ましい。
【0039】
上記C5系粘着付与樹脂としては、一般にナフサの分解で得られるC5留分よりイソプレン及びシクロペンタジエンを抽出分離した残りを重合した樹脂を使用することができる。
【0040】
上記テルペンフェノール系粘着付与樹脂としては、テルペンモノマーとフェノールを共重合した樹脂を使用することができる。上記テルペンフェノール系粘着付与樹脂としては、軟化点105℃〜145℃の範囲のものを使用することが、前記ゴム系ブロック共重合体との相溶性を向上させ、その結果、85℃以下の温度領域下で非常に高い接着力を付与でき、かつ、一定の反発力がテープに加わった場合の経時的な剥がれ等を防止可能な耐剥がれ性を備えた粘着テープを得るうえで好ましい。
【0041】
前記粘着付与樹脂は、前記ゴム系ブロック共重合体100質量部に対して10質量部〜150質量部の範囲で使用することが好ましく、15質量部〜100質量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0042】
特に、テルペンフェノール系粘着付与樹脂は、前記ゴム系ブロック共重合体100質量部に対して50質量部〜100質量部の範囲で使用することが好ましく、65質量部〜80質量部の範囲で使用することが、85℃以下の温度領域下で非常に高い接着力を付与でき、かつ、一定の反発力がテープに加わった場合の経時的な剥がれ等を防止可能な耐剥がれ性を備えた熱解体性粘着テープを得るうえで好ましい。また、前記C5系粘着付与樹脂は、前記ゴム系ブロック共重合体100質量部に対して10質量部〜100質量部の範囲で使用することが好ましく、20質量部〜50質量部の範囲で使用することがより好ましく、25質量部〜50質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0043】
また、粘着付与樹脂としては、前記したもののほかに、室温で液状の粘着付与樹脂を使用することもできる。前記液状の粘着付与樹脂としては、例えばプロセスオイル、ポリエステル系粘着付与樹脂、ポリブテン等の低分子量の液状ゴムが挙げられる。
【0044】
また、前記粘着剤層(B)としては、前記粘着成分の他に、必要に応じて赤外線吸収剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、ガラスやプラスチック製の繊維、熱膨張性バルーン、ビーズ、金属粉末等の充填剤、顔料、増粘剤等を含有するものを使用することができる。
【0045】
前記粘着剤層(B)としては、厚さ5μm〜100μmであるものを使用することが好ましく、10μm〜80μmであるものを使用することがより好ましく、30μm〜70μmであるものを使用することが、85℃以下の環境下において優れた接着力を保持することができ、かつ、粘着テープを製造する際に粘着剤層を形成しやすいため好ましい。
【0046】
前記粘着剤層(B)は、前記粘着成分、粘着付与樹脂、その他任意成分を含有する粘着剤を用いて形成することができる。前記粘着剤としては、例えば溶剤系粘着剤、エマルジョン型粘着剤、水溶性粘着剤、ホットメルト型粘着剤、UV硬化型粘着剤、EB硬化型粘着剤、無溶剤系粘着剤等を用いて形成することができる。
【0047】
本発明の粘着テープは、例えば前記基材(A)の片面または両面に、ロールコーターやダイコーター等を用いて、前記粘着剤を塗布及び乾燥し粘着剤層(B)を形成することによって製造することができる(直接法)。
【0048】
また、前記粘着テープは、予め、離型ライナーの表面に、ロールコーター等を用いて、前記粘着剤を塗布し、乾燥することによって粘着剤層(B)を形成し、次いで、前記粘着剤層(B)を、前記基材(A)の片面または両面に貼り合せる転写法によって製造することができる。
【0049】
なお、前記直接法によって粘着テープを製造する場合、前記基材(A)の表面に粘着剤が塗布された後の乾燥工程で、前記基材(A)が収縮する可能性があるため、本発明の粘着テープは前記転写法によって製造することが好ましい。
【0050】
本発明の粘着テープは、例えば85℃以下、好ましくは20℃〜60℃程度の温度領域下において非常に優れた接着力を保持することができる。そのため、前記粘着テープは、各種被着体の接着に好適に使用することができる。
【0051】
前記粘着テープは、例えば常温(23℃)環境下において、ステンレス板からの180°引き剥がし接着力が10N/20mm〜40N/20mm程度の接着力を有するものであることが好ましく、20N/20mm〜40N/20mm程度の接着力を有するものであることが、被着体を強固に接着させ、経時的な剥がれ等を防止するうえでより好ましい。
【0052】
また、前記粘着テープは、後述する接着性試験(面方向の接着強度)において測定される接着力が20N/cm
2以上であることが好ましく、30N/cm
2以上であることが被着体を強固に接着させ、経時的な剥がれ等を防止するうえでより好ましい。
【0053】
前記粘着テープを用い2以上の被着体を接着させることによって物品を製造する方法としては、例えばいずれか一方の被着体の表面に前記粘着テープを構成する一方の粘着剤層(B)を貼付した後、他方の粘着剤層(B)の表面に他方の被着体を貼付し、必要に応じてそれらを圧着等させることによって物品を製造することができる。
【0054】
また、前記物品を解体する方法としては、前記粘着テープを構成する基材(A)の温度が、好ましくは90℃〜130℃程度、より好ましくは90〜125℃、さらに好ましくは90℃〜120℃、特に好ましくは100℃〜120℃の範囲で加熱し、前記接着された2以上の被着体を分離することによって前記物品を解体する方法が挙げられる。前記基材(A)を前記温度に加熱する際には、前記粘着テープや被着体も前記範囲の温度に加熱されてもよい。
【0055】
前記加熱方法としては、例えば電磁誘導で加熱する方法、活性エネルギー線を照射する方法等が挙げられる。
【0056】
前記活性エネルギー線としては、紫外線、赤外線、可視光線、α線、β線、ガンマ線等が挙げられる。
【0057】
前記活性エネルギー線としては、赤外線を使用することが、粘着テープを短時間で解体可能な温度にまで加熱できるため、解体作業効率を向上させるうえで好ましい。
【0058】
前記加熱方法としては、例えば粘着テープや被着体にハロゲンランプヒーター、電磁誘導加熱装置、レーザー照射装置等の加熱装置を接近または接触させる方法が挙げられる。
【0059】
前記加熱の際、前記粘着テープの端部が前記被着体の端部よりも外側に出ている場合、前記粘着テープの端部にハロゲンランプを接近または接触させてもよい。
【0060】
前記加熱工程では、前記加熱装置を用い、前記粘着テープの温度が90℃〜130℃になるまで加熱することが好ましく、90℃〜125℃になるまで加熱することがより好ましく、90℃〜120℃になるまで加熱することがさらに好ましく、100℃〜120℃に加熱することが特に好ましい。
【0061】
また、前記加熱時間は、被着体が熱の影響によって変形等することを防止するうえで、20秒以内であることが好ましく、15秒以内であることがより好ましく、10秒以内であるという比較的短時間に行うことがさらに好ましい。
【0062】
前記赤外線を照射することにより粘着テープを加熱する方法としては、ハロゲンランプを備えた加熱装置を使用する方法が挙げられる。ハロゲンランプとしては、例えば一定面積を短時間で加熱可能な平行光型ハロゲンランプヒーター、局所的な加熱が可能な集光型ハロゲン型ランプ等を使用することができ、平行光型ハロゲンランプヒーターを使用することが、広い範囲を一度に加熱することができるため、加熱時間を上記した時間にまで短縮することができる。
【0063】
前記平行光型ハロゲンランプヒーターが一度に加熱可能な面積は、10cm
2〜500cm
2程度であることが好ましい。また、平行光型ハロゲンランプヒーター等の加熱装置は、携帯可能な大きさ及び重さであることが、上記物品の解体作業の効率化を向上させるうえで好ましい。前記重さは、3kg以下であることが好ましく、2kg以下であることが好ましく、0.1kg〜1kgであることがさらに好ましい。
【0064】
前記方法で加熱された前記物品は、それを構成する2以上の被着体に対しほとんど力を加えずとも、または、弱い力を加えることによって容易に解体される。前記被着体の表面には、前記粘着テープ由来の糊残りがほとんどないため、前記被着体をリサイクル等に使用することができる。
【0065】
本発明の粘着テープは、85℃以下の温度領域下において非常に優れた接着力を有するため、電子機器の内部温度が比較的高温になった場合であっても、前記粘着テープの接着力の低下による部品の脱落等を引き起こしにくい。とりわけ、本発明の粘着テープは、85℃の環境下に500時間さらされた場合であっても、優れた接着力を保持できるという点で接着信頼性が高いものである。
【0066】
一方、前記電子機器に使用される高価な部品をリサイクル等する際には、加熱によって前記基材(A)を収縮させることで、電子機器から前記部品を容易に分離することができる。
【0067】
そのため、本発明の粘着テープは、電子機器のなかでも、コピー機能やスキャン機能を備えた複写機や複合機等の画像読み取り装置、夏場等に高温環境にさらされやすい車載用ディスプレイの製造場面等で好適に使用することができる。
【0068】
前記コピー機能やスキャン機能を備えた複写機や複合機等の画像読み取り装置においては、それを構成する透明天板と、そのきょう体との固定に本発明の粘着テープを好適に使用することができる。
【0069】
前記透明天板としては、一般のコピー機能やスキャン機能を搭載した複写機や複合機に設置される透明天板を使用することができる。
【0070】
前記透明天板としては、例えばガラスまたはプラスチックからなる透明板状剛体を使用することができ、透明ガラス板を使用することが好ましい。前記プラスチックとしては、例えばアクリル板、ポリカーボネート板等を使用することができる。
【0071】
前記透明天板としては、それが設置される複写機等の形状に合ったものを使用できるが、通常は、正方形または長方形であるものを使用することが好ましい。
【0072】
前記粘着テープは、例えば長方形の前記透明天板であれば、対向する2辺の端部に沿って、貼付されることが好ましい。その際、前記粘着テープは、前記透明天板の辺の長さに対応した覆記載に裁断したものを使用できるが、例えば幅が0.5mm〜20mmで、長さが0.1mm〜2.0mmであるものを使用することが好ましい。
【0073】
前記画像読み取り装置を解体する方法としては、それを構成する前記粘着テープを、前記赤外線を照射する等の方法で、直接または間接的に加熱することによって、前記きょう体と透明天板とを分離する方法が挙げられる。
【0074】
前記車載用ディスプレイ等の情報表示装置の製造場面においては、例えばそれを構成する液晶表示パネル等とタッチパネル部材とを固定する際に、本発明の粘着テープを好適に使用することができる。
【0075】
前記前記車載用ディスプレイ等の情報表示装置を解体する方法としては、それを構成する前記粘着テープを、前記赤外線を照射する等の方法で、直接または間接的に加熱することによって、液晶表示パネル等の情報表示パネルと、タッチパネル部材とを分離する方法が挙げられる。
【0076】
また、本発明の粘着テープは、もっぱら、携帯電子機器を構成する部材の固定に使用することができる。前記部材としては、例えば電子機器を構成する2以上のきょう体またはレンズ部材が挙げられる。
【0077】
前記携帯電子機器としては、例えば前記部材としてきょう体と、レンズ部材またはその他きょう体の一方とが、前記粘着テープを介して接合された構造を有するものが挙げられる。
【0078】
前記部材の固定は、例えば、前記きょう体またはレンズ部材の一方と、他方のきょう体またはレンズ部材とを、前記粘着テープを介して積層した後、一定期間養生させる方法が挙げられる。
【0079】
前記携帯電子機器を解体する方法としては、それを構成する前記粘着テープを、前記赤外線を照射する等の方法で、直接または間接的に加熱することによって、前記きょう体と透明天板とを分離する方法が挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例により具体的に説明する。
【0081】
(製造例1)
合成ゴム系粘着剤層(B−1)の形成方法
重量平均分子量20万のスチレン−イソプレンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は52質量%。前記スチレン−イソプレンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は15質量%、ポリイソプレン単位の質量割合は85質量%。)100質量部、C5石油系粘着付与樹脂(軟化点100℃、数平均分子量885)40質量部、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(軟化点125℃、数平均分子量880)30質量部、液状粘着付与樹脂としてHV−100(JX日鉱日石株式会社製、低分子量ポリブテン)5質量部を混合したものを、トルエンに溶解することによって粘着剤を得た。前記粘着剤を、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが50μmとなるように、離型ライナーの表面に塗布し、85℃で5分間乾燥させることによって合成ゴム系粘着剤層(B−1)を形成した。
【0082】
(製造例2)
合成ゴム系粘着剤層(B−2)の形成方法
重量平均分子量20万のスチレン−イソプレンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は20質量%。前記スチレン−イソプレンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は13質量%、ポリイソプレン単位の質量割合は87質量%。)100質量部、C5石油系粘着付与樹脂(軟化点100℃、数平均分子量885)40質量部、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(軟化点125℃、数平均分子量880)30質量部、液状粘着付与樹脂としてHV−100(JX日鉱日石株式会社製、低分子量ポリブテン)5質量部を混合したものを、トルエンに溶解することによって粘着剤を得た。前記粘着剤を、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが50μmとなるように、離型ライナーの表面に塗布し、85℃で5分間乾燥させることによって合成ゴム系粘着剤層(B−2)を形成した。
【0083】
(製造例3)
アクリル系粘着剤層(B−3)の形成方法
攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、ブチルアクリレート44.9質量部、2−エチルヘキシルアクリレート50質量部、アクリル酸2質量部、酢酸ビニル3質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.1質量部とを酢酸エチル100質量部に溶解し、70℃で10時間重合することによって、重量平均分子量80万のアクリル系共重合体溶液を得た。次に、アクリル系共重合体100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(軟化点125℃、数平均分子量880)30質量部を添加し、酢酸エチルを加えて混合することによって、不揮発分45質量%の粘着剤を得た。
【0084】
前記粘着剤100質量部に対し、日本ポリウレタン工業(株)製「コロネートL−45」(イソシアネート系架橋剤、固形分45質量%)を1.1質量部添加し15分攪拌した後、アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが50μmになるように、剥離シート上に塗布し、85℃下で5分間乾燥させることによってアクリル系粘着剤層(B−3)を形成した。
【0085】
(実施例1)
合成ゴム系粘着剤層(B−1)を厚さ35μmの熱収縮性ポリスチレンフィルム(クラボウ株式会社製オイディスHN)に貼り合せた。次に、前記合成ゴム系粘着剤層(B−1)を貼り合わせた面と逆側の面に、アクリル系粘着剤層(B−3)に貼り合わせた後、4kgf/cm
2で加圧しラミネートすることによって、粘着テープを作製した。
【0086】
(実施例2)
上記合成ゴム系粘着剤層(B−1)に代えて合成ゴム系粘着剤層(B−2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを作製した。
【0087】
(比較例1)
上記熱収縮性ポリスチレンフィルム(クラボウ株式会社製オイディスHN)に代えて厚さ40μm熱収縮性ポリスチレンフィルム(三菱樹脂株式会社製270−41S)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを作製した。
【0088】
(比較例2)
上記熱収縮性ポリスチレンフィルム(クラボウ株式会社製オイディスHN)に代えて厚さ40μm熱収縮性ポリエステルフィルム(三菱樹脂株式会社製LX−18S)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを作製した。
【0089】
(比較例3)
上記熱収縮性ポリスチレンフィルム(クラボウ株式会社製オイディスHN)に代えて厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製S10)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを作製した。
【0090】
上記実施例及び比較例にて得られた粘着テープについて、以下の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0091】
<収縮率(a1)〜(a3)の測定方法>
なお、上記基材の収縮率(a1)〜(a3)は、以下に示す方法で測定及び算出された値を指す。
【0092】
はじめに、基材(A)を縦20mm及び横20mmの正方形に裁断した後、
図1に示す位置に、マジックペンを用い、2本の標線(それぞれ長さ20mm)を引いたものを試験片1とした。
【0093】
前記試験片1を85℃の環境下に500時間静置した後、23℃の環境下に1時間静置したものを試験片2とした。次に、前記試験片2の標線の長さをそれぞれ測定した。前記測定の際、試験片2が湾曲等に変形していた場合には、その形状に沿って標線の長さを測定した。
【0094】
前記試験片2の前記測定値と、前記試験片1の各標線の長さ(20mm)と下記式に基づき、試験片の縦方向及び横方向の収縮率を算出し、そのうち大きな収縮率を、各試験片のもととなった基材の収縮率とした。
【0095】
収縮率=100×[(試験片1の標線の長さ)−(試験片2の標線の長さ)]/(試験片1の標線の長さ)
収縮率(a2)及び(a3)も、温度を85℃からそれぞれ90℃及び100℃に変更し、時間を500時間から1時間に変更したこと以外は、上記収縮率(a1)と同様の方法で測定した。
【0096】
<常温環境における接着性試験>
図1は、接着性試験の方法を説明する図である。23℃の環境下、実施例及び比較例で得た粘着テープを、1辺(外形)の長さが14mmの正方形で、幅2mmの額縁状に裁断した。
【0097】
前記裁断した粘着テープ2の一方の粘着面を、長さ15mm、幅15mm及び厚さ2mmの直方体であるアクリル板1に貼付した。その際、前記裁断した粘着テープ2の1辺が、前記アクリル板1の1辺15mmに対応するように貼付した。
【0098】
次に、中心部に直径10mmの穴を有する縦20mm、横50mm及び厚さ1mmのSUS板3と、前記粘着テープ2の他方の粘着面とを、それらの中心が一致するように貼付し、プレス機を用いて80N/cm
2で10秒加圧した。
【0099】
前記加圧を解いた後に得られたものを23℃の環境下に1時間静置したもの試験体とした。
【0100】
次に、直径8mmのステンレス製のプローブ4を備えた引張試験機(エイアンドディ社製テンシロンRTA−100、圧縮モード)を用意した。前記プローブ4が、前記試験体を構成するSUS板3の穴をとおして、前記アクリル板1に力を加えた際、前記アクリル板1及び粘着テープ2がSUS板3からはがれた時の強度(N/cm
2)を測定した。なお、前記プローブ4が試験片を押す速度は10mm/分に設定した。
【0101】
評価基準
〇:30N/cm
2超え
△:20N/cm
2超え30N/cm
2以下
×:0N/cm
2超え20N/cm
2以下
【0102】
<85℃環境下における接着信頼性試験>
前記加圧を解いた後の放置条件を「23℃の環境下に1時間静置」から「85℃の環境下に500時間静置」することに変更したこと以外は、上記<常温環境における接着性試験>に記載した方法と同様の方法で行った。
【0103】
評価基準
〇:30N/cm
2超え
△:20N/cm
2超え30N/cm
2以下
×:0N/cm
2超え20N/cm
2以下
【0104】
<解体性の評価試験>
前記加圧を解いた後の放置条件を「23℃の環境下に1時間静置」から「100℃の環境下に1時間静置」することに変更したこと以外は、上記<常温環境における接着性試験>に記載した方法と同様の方法で行った。
【0105】
評価基準
〇:10N/cm
2以下
△:10N/cm
2超え20N/cm
2以下
×:20N/cm
2超え
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】