特許第6705426号(P6705426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705426
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/14 20060101AFI20200525BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20200525BHJP
   C08G 77/50 20060101ALN20200525BHJP
   C09K 5/14 20060101ALN20200525BHJP
【FI】
   C08L83/14
   C08L83/04
   !C08G77/50
   !C09K5/14 102E
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-92742(P2017-92742)
(22)【出願日】2017年5月9日
(65)【公開番号】特開2018-188559(P2018-188559A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 邦弘
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−126568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/14
C08L 83/04
C08G 77/50
C09K 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(D)成分と(E)成分との付加反応物であるシリコーンゲル架橋物、
(D)下記平均組成式(2)
3b4cSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R3は、アルケニル基を表し、R4は、炭素数1〜6の非置換又は置換のアルキル基を表し、bは0.0001〜0.2の数であり、cは1.7〜2.2の数であり、但しb+cは1.9〜2.4を満たす数である。)
で表されるケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン、
(E)分子鎖非末端にケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも4個以上有し、下記式(3)
0.1<α/β (3)
(式中、αは分子鎖非末端のケイ素原子に結合した水素原子の数を表し、βは(E)成分中の全ケイ素原子数を表す。)
を満たすもののみからなるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)脂肪族不飽和結合及びSiH基をそれぞれ含有せず、下記成分(C)の表面処理剤としてのシリコーンオイル、
(C)熱伝導性充填剤
を含有してなり、粘弾性測定装置による25℃における周波数0.2ヘルツの損失係数Tanδが2.0以下、25℃における粘度が100〜1,500Pa・sであることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項2】
(A)下記(D)成分と(E)成分との付加反応物であるシリコーンゲル架橋物:100質量部、
(D)下記平均組成式(2)
3b4cSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R3は、アルケニル基を表し、R4は、炭素数1〜6の非置換又は置換のアルキル基を表し、bは0.0001〜0.2の数であり、cは1.7〜2.2の数であり、但しb+cは1.9〜2.4を満たす数である。)
で表されるケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン、
(E)分子鎖非末端にケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも4個以上有し、下記式(3)
0.1<α/β (3)
(式中、αは分子鎖非末端のケイ素原子に結合した水素原子の数を表し、βは(E)成分中の全ケイ素原子数を表す。)
を満たすもののみからなるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(B)下記一般式(1)で表される片末端加水分解性オルガノポリシロキサンからなるシリコーンオイル:201〜500質量部、
【化1】
(式中、R1は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、R2は、炭素数1〜18の脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基の群の中から選択される1種もしくは2種以上の基、aは5〜120の整数である。)
(C)平均粒径0.1〜150μmの熱伝導性充填剤:2,001〜10,000質量部を含有してなる請求項1記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項3】
付加反応における(E)成分の量が、(D)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個に対して、(E)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.3〜2.0個となる量である請求項1又は2記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項4】
更に、(G)25℃における動粘度が10〜500,000mm2/sである無官能性液状シリコーンオイルを成分(A)100質量部に対して10〜500質量部を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ズレ性に優れた熱伝導性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電気・電子部品は使用中に熱が発生するので、電気部品を適切に動作させるため除熱が必要であり、除熱用の種々の熱伝導性材料が提案されている。この熱伝導性材料は大別して、1)取り扱いが容易なシート状のもの、2)ペースト状のもの、の2種類の形態がある。
【0003】
シート状のものは、取り扱いが容易であり、かつ安定性に優れるメリットがあるが、接触熱抵抗が性質上大きくなるため、放熱性能はペースト状のものに劣ってしまう。また、シート状を保たせるためにある程度の強度/硬さが必要となり、電気・電子部品素子と放熱部材の間に生じる公差を吸収できず、それら応力によって素子を破壊してしまうこともある。
【0004】
一方、ペースト状のものは、塗布装置等を用いれば、大量生産にも適応できるし、接触熱抵抗が低いことから放熱性能は優れる。但し、スクリーン印刷等で大量生産する場合、そのペーストの粘度は低い方がよいが、その場合、素子の冷熱衝撃等でそのペーストがズレてしまい(ポンプアウト現象)、除熱が十分できないため、結果素子が誤作動を起こしてしまうようなことがあった。また、過去の技術として以下のようなシリコーン組成物などが提案されているが、更に十分な性能を与え、耐ズレ性に優れた熱伝導性シリコーン組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3948642号公報
【特許文献2】特許第3195277号公報
【特許文献3】特開2000−169873号公報
【特許文献4】特開2006−143978号公報
【特許文献5】特開2004−210856号公報
【特許文献6】特開2005−162975号公報
【特許文献7】特許第5300408号公報
【特許文献8】特許第4796704号公報
【特許文献9】特許第3541390号公報
【特許文献10】特許第4130091号公報
【特許文献11】特許第5388329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐ズレ性に優れる熱伝導性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、シリコーンゲル架橋物、特定のシリコーンオイル、特に片末端加水分解性オルガノポリシロキサン、及び熱伝導性充填剤を含み、かつ特定の周波数において、特定の損失係数Tanδ値を示す組成物が、流動性を有しながらも、耐ズレ性が飛躍的に向上することを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は下記熱伝導性シリコーン組成物を提供する。
〔1〕
(A)シリコーンゲル架橋物、
(B)脂肪族不飽和結合及びSiH基をそれぞれ含有せず、下記成分(C)の表面処理剤としてのシリコーンオイル、
(C)熱伝導性充填剤
を含有してなり、粘弾性測定装置による25℃における周波数0.2ヘルツの損失係数Tanδが2.0以下であることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物。
〔2〕
(A)シリコーンゲル架橋物:100質量部、
(B)下記一般式(1)で表される片末端加水分解性オルガノポリシロキサンからなるシリコーンオイル:201〜500質量部、
【化1】
(式中、R1は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、R2は、炭素数1〜18の脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基の群の中から選択される1種もしくは2種以上の基、aは5〜120の整数である。)
(C)平均粒径0.1〜150μmの熱伝導性充填剤:2,001〜10,000質量部
を含有してなる〔1〕記載の熱伝導性シリコーン組成物。
〔3〕
成分(A)が、下記(D)成分と(E)成分とのシリコーンゲル架橋物である〔1〕又は〔2〕記載の熱伝導性シリコーン組成物。
(D)下記平均組成式(2)
3b4cSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R3は、アルケニル基を表し、R4は、脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基を表し、bは0.0001〜0.2の数であり、cは1.7〜2.2の数であり、但しb+cは1.9〜2.4を満たす数である。)
で表されるケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン、
(E)分子鎖非末端にケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも4個以上有し、下記式(3)
0.1<α/β (3)
(式中、αは分子鎖非末端のケイ素原子に結合した水素原子の数を表し、βは(E)成分中の全ケイ素原子数を表す。)
を満たすオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個に対して、(E)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.3〜2.0個となる量。
〔4〕
更に、(G)25℃における動粘度が10〜500,000mm2/sである無官能性液状シリコーンオイルを成分(A)100質量部に対して10〜500質量部を含有する〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の熱伝導性シリコーン組成物。
〔5〕
25℃における粘度が100〜1,500Pa・sである〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、流動性がありながら、大幅に耐ズレ性の向上が認められる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に記載する。
本発明の熱伝導性シリコーン組成物において、耐ズレ性は損失係数Tanδ値と相関があり、粘弾性測定装置による25℃における周波数0.2ヘルツの損失係数Tanδが2.0より大きいと耐ズレ性が悪くなる。従って、Tanδは2.0以下がよく、好ましくは1.8以下であり、更に好ましくは1.6以下となる。この場合、Tanδの下限値は特に制限されないが、通常0.8以上、特に1.0以上である。なお、便宜的に0.2ヘルツでのTanδを規定するが、0.1〜0.5ヘルツ領域ではそれぞれのTanδは大きく変わらないため、その範囲ならば、どこの周波数のTanδ値で規定しても問題はない。
【0011】
ここで、Tanδは、粘弾性測定装置による測定値であり、特に本発明の場合、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の粘弾性測定装置(モデル名:HAAKE MAS)を用い、ひずみ量0.5%、直径20mmの円形パラレルプレートを使用し、温度25℃、材料厚み1mmにて、各周波数での損失係数Tanδを測定し、周波数0.2ヘルツでのTanδを値としたものである。
【0012】
本発明において、上記の損失係数Tanδを得るための熱伝導性シリコーン組成物は、
(A)シリコーンゲル架橋物、
(B)脂肪族不飽和結合及びSiH基をそれぞれ含有せず、下記成分(C)の表面処理剤としてのシリコーンオイル、
(C)熱伝導性充填剤
を含有する。
【0013】
以下、これらの成分について詳述する。
[成分(A)]
シリコーンゲル架橋物は本発明の熱伝導性シリコーン組成物のマトリックスとして使用される。成分(A)は、下記(D)成分と(E)成分を(F)成分の存在下でハイドロシリル化反応(付加反応)させることによって得られる。
(D)下記平均組成式(2)
3b4cSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R3は、アルケニル基を表し、R4は、脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基を表し、bは0.0001〜0.2の数であり、cは1.7〜2.2の数であり、但しb+cは1.9〜2.4を満たす数である。)
で表されるケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン、
(E)分子鎖非末端にケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも4個以上有し、下記式(3)
0.1<α/β (3)
(式中、αは分子鎖非末端のケイ素原子に結合した水素原子の数を表し、βは(E)成分中の全ケイ素原子数を表す。)
を満たすオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個に対して、(E)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.3〜2.0個となる量、
(F)白金系触媒:有効量。
【0014】
[(D)成分]
(D)成分は、成分(A)の主剤となる成分である。(D)成分は、上記平均組成式(2)で表される1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基(以下、「ケイ素原子結合アルケニル基」という)を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサンである。前記アルケニル基は、1分子中に、少なくとも2個有することが好ましく、2〜50個有することがより好ましく、2〜20個有することが特に好ましい。これらのアルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖非末端(即ち、分子鎖両末端以外)のケイ素原子に結合していても、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。
【0015】
上記式(2)中、R3は、通常、炭素数が2〜6、好ましくは2〜4のアルケニル基を表す。その具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等の低級アルケニル基が挙げられ、ビニル基が好ましい。R4は、通常、炭素数が1〜10、好ましくは1〜6の脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基を表す。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素等のハロゲン原子で置換されたクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられるが、合成の容易さ等の観点から、メチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0016】
上記式(2)中、b、c、b+cの値は上述した通りであるが、bは0.0005〜0.1の数であることが好ましく、cは1.9〜2.0の数であることが好ましく、b+cは1.95〜2.05を満たす数であることが好ましい。
【0017】
本成分のオルガノポリシロキサンの分子構造は、特に限定されず、直鎖状;分子鎖の一部にR3SiO3/2単位、R4SiO3/2単位、SiO2単位(式中、R3及びR4で表される基は、上記で定義した通りである。)等を含む分岐状;環状;三次元網状(樹脂状)等のいずれでもよいが、通常、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
【0018】
本成分のオルガノポリシロキサンの動粘度は、好ましくは25℃において50〜100,000mm2/sであり、より好ましくは100〜10,000mm2/sである。この動粘度が50〜100,000mm2/sである場合には、得られる硬化物は、流動性、作業性により優れたものとなる。なお、この動粘度は、オストワルド粘度計による25℃における値である。
【0019】
以上の要件を満たす本成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(4)
【化2】
(式中、R5は、それぞれ独立に、非置換又は置換の1価炭化水素基を表し、但しR5の少なくとも1個、好ましくは2個以上がアルケニル基であり、dは20〜2,000の整数である。)
で表されるものが挙げられる。この式(4)中、R5で表される非置換又は置換の1価炭化水素基は、前記R3(アルケニル基)及びR4(脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基)で定義したものと同じであり、その炭素数、具体例等も同じである。また、dは好ましくは40〜1,200、より好ましくは50〜600の整数である。
【0020】
上記式(4)で表されるオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
本成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
[(E)成分]
(E)成分は、上記(D)成分と反応して、架橋剤として作用するものである。(E)成分は、分子鎖非末端にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基であり、以下、「ケイ素原子結合水素原子」という)が1分子中に3個以下だと十分な耐ズレ性が発揮できないため、少なくとも4個有していることが必要である。かつ、下記式(3)
0.1<α/β (3)
(式中、αは分子鎖非末端のケイ素原子に結合した水素原子の数を表し、βは(E)成分中の全ケイ素原子数を表す。)
を満たすオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。上記α/βの範囲が0.1以下と小さい場合、本組成物の耐ズレ性が悪くなることから、0.1<α/βであることも同時に必要である。この場合、α/βは好ましくは0.11以上、特に0.12以上であり、その上限は特に制限されないが、0.95以下、特に0.90以下であることが好ましい。
【0022】
本成分の分子構造は、上記要件を満たすものであれば特に限定されず、従来公知の、例えば、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状(樹脂状)等のいずれであってもよい。中でも、取り扱い作業性、及び(D)成分を架橋して得られる硬化物の耐ズレ性の観点から、1分子中のケイ素原子数(又は重合度)が、通常、3〜1,000個、好ましくは5〜400個、より好ましくは10〜300個、更に好ましくは10〜100個、特に好ましくは10〜60個のものが望ましい。
【0023】
本成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの動粘度は、通常、1〜10,000mm2/s、好ましくは3〜5,000mm2/s、より好ましくは5〜3,000mm2/sであり、室温(25℃)で液状のものが望ましい。
【0024】
上記要件を満たすオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(5)で表されるものが好ましい。
6efSiO(4-e-f)/2 (5)
(式中、R6は、脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基を表し、eは0.7〜2.2の数であり、fは0.001〜0.5の数であり、但しe+fは0.8〜2.5を満たす数である。)
【0025】
上記式(5)中、R6は、通常、炭素数が1〜10、好ましくは1〜6の脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基である。
【0026】
上記式(5)中、e、f、e+fは上述した通りであるが、eは0.9〜2.1の数であることが好ましく、fは0.002〜0.2の数、特に0.005〜0.1の数であることが好ましく、e+fは1.0〜2.3、特に1.5〜2.2を満たす数であることが好ましい。
【0027】
上記式(5)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、特に限定されず、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状(樹脂状)等のいずれであってもよい。中でも、1分子中のケイ素原子数及び動粘度が上述した範囲を満たすもので、特には直鎖状のものが好ましい。
【0028】
上記式(5)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基・片末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖片末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基・片末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位と(CH3)HSiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位と(CH3)HSiO2/2単位と(CH32SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH3)HSiO2/2単位と(CH32SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CH3)HSiO2/2単位と(CH32SiO2/2単位と(C653SiO1/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位と(C652SiO2/2単位と(CH3)HSiO2/2単位と(CH32SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0029】
(E)成分の配合量は、(D)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、(E)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.3〜2.0個となる量であり、好ましくは0.4〜1.5個となる量であり、更に好ましくは0.5〜1.0個となる量である。このケイ素原子結合水素原子が0.3個より少ない場合には、架橋密度が低くなりすぎ、得られる熱伝導性シリコーン組成物の耐ズレ性が悪くなるし、2.0個より多いと得られる熱伝導性シリコーン組成物の粘度が高くなりすぎ、取り扱い性が悪くなるためである。
本成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
[(F)白金系触媒]
(F)成分は、前記(D)成分中のケイ素原子結合アルケニル基と前記(E)成分中のケイ素原子結合水素原子との付加反応を促進させるための成分である。(F)成分は白金系触媒であり、具体的には白金及び/又は白金系化合物である。
この白金及び白金系化合物としては従来公知のものを使用することができ、具体的には、例えば、白金ブラック;塩化白金酸;塩化白金酸のアルコール変性物;塩化白金酸とオレフィンアルデヒド、ビニルシロキサン、アセチレンアルコール類等の錯体等が挙げられる。
【0031】
(F)成分の配合量は、有効量であればよく、所望の硬化速度により適宜増減すればよいが、(D)成分に対して、白金原子の質量換算で、通常、0.1〜1,000ppmであり、好ましくは1〜300ppmである。この配合量が少なすぎると、付加反応が著しく遅くなったり、架橋しなくなったりする場合がある。この配合量が多すぎると、硬化物の耐熱性が低下するだけでなく、白金は高価であることからコスト面でも不利となる。
本成分の白金系触媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
[その他の任意成分]
本発明の成分(A)を得る場合には、上記(D)〜(F)成分以外にも、反応制御剤を使用してもよい。該反応制御剤は、付加硬化型シリコーン組成物に使用される従来公知の反応制御剤を使用することができる。例えば、アセチレンアルコール類(例えば、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール)等のアセチレン化合物、トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の各種窒素化合物、トリフェニルホスフィン等の有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。
【0033】
成分(A)のシリコーンゲル架橋物は、(F)成分の白金系触媒存在下において、(D)成分と(E)成分を加熱混合することで、架橋、即ちハイドロシリル化反応(付加反応)が進むことで得られる。反応温度は、通常、50〜180℃程度であるが、それに制限されるものではない。反応時間は加熱する温度にも影響されるが、通常、0.5〜12時間で十分に反応は進む。このような処理が行われたものを「架橋物」と定義している。
【0034】
成分(B)と成分(C)の詳細は後述するが、(D)成分と(E)成分を架橋させ、成分(A)を得てから、成分(B)と成分(C)を混合してもよいし、成分(A)を得るために、加熱前に予め成分(B)を投入してから(D)、(E)成分を加熱混合させ、その後成分(C)を混合してもよいし、更に、成分(A)を得るために、加熱前に成分(B)及び成分(C)の全てを予め投入してから(D)、(E)成分を加熱混合するのでもよいが、効率を考慮した場合、この最後の方法が最も好ましい。
【0035】
[成分(B)]
成分(B)は、上記(D)、(E)成分の架橋に関与しない成分であり、従って脂肪族不飽和結合及びSiH基を含まないシリコーンオイルで、特に、下記一般式(1)で表される片末端3官能の加水分解性オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【化3】
(式中、R1は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、R2は、炭素数1〜18の脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基の群の中から選択される1種もしくは2種以上の基、aは5〜120の整数である。)
【0036】
一般式(1)のオルガノポリシロキサンは、成分(C)の熱伝導性充填剤の表面を処理するために用いるものであるが、粉末の高充填化を補助するばかりでなく、粉末表面を覆うことにより粉末同士の凝集を起こり難くし、高温下でもその効果は持続するため、本発明の熱伝導性シリコーン組成物の耐熱性を向上させる働きがある。
【0037】
上記式(1)中、R1は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられるが、特にメチル基、エチル基が好ましい。R2は、互いに独立に、炭素数1〜18、好ましくは1〜14の脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基である。
aは5〜120の整数であり、好ましくは10〜90の整数である。
【0038】
成分(B)の25℃における動粘度は5〜500mm2/sが好ましく、10〜300mm2/sがより好ましい。
【0039】
成分(B)のシリコーンオイルを配合する場合の配合量は、成分(A)100質量部に対して201〜500質量部の範囲が好ましく、より好ましくは210〜450質量部であり、更に好ましくは220〜400質量部である。201質量部より少ないと、得られる組成物の粘度が高くなり取り扱い性の悪いものになるし、500質量部より多いと組成物の耐ズレ性が悪くなる。
上記架橋に関与しないシリコーンオイルとしては、前述した片末端3官能の加水分解性オルガノポリシロキサンに加え、反応性基のない成分(G)を添加してもよい。
【0040】
[成分(G)]
成分(G)の無官能性液状シリコーンオイルは、25℃における動粘度が10〜500,000mm2/s、好ましくは30〜10,000mm2/sを有するオルガノポリシロキサンである。該オルガノポリシロキサンの動粘度が上記下限値より低いと得られる熱伝導性シリコーン組成物のオイルブリードがで易くなる。また、上記上限値より大きいと、得られる組成物の粘度が高くなりすぎて取り扱い性の悪いものになる。
【0041】
上記シリコーンオイル(G)は、上記動粘度を有するものであればよく、従来公知のオルガノポリシロキサンを使用することができる。オルガノポリシロキサン(シリコーンオイル)の分子構造は特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状等のいずれであってもよい。特には、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状構造を有するのがよい。該オルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
この無官能性液状シリコーンオイルとしてのオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(6)で表すことができる。
7gSiO(4-g)/2 (6)
上記式(6)において、R7は、炭素数1〜18、好ましくは1〜14の脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基である。
【0043】
上記式(6)において、gは1.8〜2.2の範囲、特には1.9〜2.1の範囲にある数である。gが上記範囲内にあることにより、得られる熱伝導性シリコーン組成物は要求される良好な動粘度を有することができる。
【0044】
上記平均組成式(6)で表されるオルガノポリシロキサンとしては、下記式(7)で表される直鎖状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【化4】
上記式(7)において、R8は、互いに独立に、炭素数1〜18、好ましくは1〜14の脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基である。該1価炭化水素基としては、上述した基が挙げられる。中でも、R8は全てメチル基であることが好ましい。hは該オルガノポリシロキサンの25℃における動粘度が10〜500,000mm2/s、好ましくは30〜10,000mm2/s、更に好ましくは100〜8,000mm2/sとなる数である。また成分(G)を配合する場合、その含有量は、成分(A)100質量部に対して10〜500質量部が好ましく、より好ましくは50〜400質量部であり、更に好ましくは100〜300質量部である。
【0045】
[成分(C)]
成分(C)の熱伝導性充填剤は、本発明の熱伝導性シリコーン組成物に熱伝導性を付与するためのものである。熱伝導性充填剤としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ダイヤモンド、グラファイトが挙げられ、これらは1種でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら熱伝導性充填剤の平均粒径は、0.1〜150μmが好ましい。平均粒径が小さすぎると組成物の粘度が高くなりすぎて取り扱い性の悪いものになるし、大きすぎると得られる組成物が不均一となり易い。また、これら熱伝導性充填剤の形状は球状、不定形状どちらでもよい。
【0046】
本発明において「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。レーザー回折・散乱法による測定は、例えば、マイクロトラック粒度分析計MT3300EX(日機装(株)製)により行えばよい。
【0047】
成分(C)の配合量は、成分(A)100質量部に対して2,001質量部より少ないと、得られる熱伝導率が低いものとなるし、10,000質量部より多いと粘度が高くなりすぎるため取り扱い性が悪くなるため、2,001〜10,000質量部の範囲が好ましい。より好ましくは2,100〜9,000質量部であり、更に好ましくは2,200〜8,000質量部であり、特に好ましくは2,200〜6,000質量部である。
【0048】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物の25℃の粘度は、100〜1,500Pa・sであることが好ましい。より好ましくは200〜1,000Pa・sであり、更に好ましくは200〜900Pa・sである。100Pa・sより小さいと耐ズレ性が悪くなるし、1,500Pa・sより大きいと取り扱い性が悪くなるためである。なお、この粘度値は、回転粘度計(後述するマルコム粘度計)による値である。
また、本発明の熱伝導性シリコーン組成物の熱伝導率は、1.0W/mKより小さいと十分な放熱効果がないため1.0W/mK以上、好ましくは1.5W/mK以上である。
【0049】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物を製造するには、上記各成分をトリミックス、ツウィンミックス、プラネタリーミキサー(いずれも井上製作所(株)製混合機の登録商標)、ウルトラミキサー(みずほ工業(株)製混合機の登録商標)、ハイビスディスパーミックス(特殊機化工業(株)製混合機の登録商標)等の混合機にて前述したような手順・条件で撹拌混合することで得ることができる。
この場合、上記した本発明のTanδ値を有する熱伝導性シリコーン組成物は、上述した成分(A)〜(C)を選定し、またその配合量を上述した範囲で適宜選定することによって得ることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
本発明に関する試験は、次のように行った。
【0051】
〔Tanδ〕
サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の粘弾性測定装置(モデル名:HAAKE MAS)を用い、ひずみ量0.5%、直径20mmの円形パラレルプレートを使用し、温度25℃、材料厚み1mmにて、各周波数での損失係数Tanδを測定し、周波数0.2ヘルツでのTanδを値とした。
【0052】
〔熱伝導率〕
熱伝導率は、京都電子工業(株)製のTPS−2500Sにより、いずれも25℃において測定した。
【0053】
〔平均粒径測定〕
平均粒径測定は、日機装(株)製の粒度分析計であるマイクロトラックMT3300EXにより測定した体積基準の累積平均径である。
【0054】
〔ズレ性〕
2mmのスペーサーを設け、2枚のスライドガラス板の間に、直径1.5cmの円状になるように熱伝導性シリコーン組成物を挟みこみ、この試験片を地面に対し90度傾くように、−40℃と125℃(各30分)を交互に繰り返すようにセットされたエスペック(株)製の熱衝撃試験機(型番:TSE−11−A)の中に配置し、500サイクル試験を行った。500サイクル後、熱伝導性シリコーン組成物が元の場所からどのくらいズレたかを測定した。
<基準>
1mm以下であれば耐ズレ性は優れていると言える。
【0055】
〔ズレ試験後外観〕
上記500サイクル後の熱伝導性シリコーン組成物の状態を観察した。
組成物中、ボイド、ひび割れがない状態を○、ボイドやひび割れがあった状態を×と評価した。
【0056】
〔熱伝導性シリコーン組成物の粘度〕
熱伝導性シリコーン組成物の粘度は、25℃にて(株)マルコムのマルコム粘度計(タイプPC−10AA)にて測定を行った。
【0057】
[実施例1〜6、比較例1〜4]
表1,2に示すように各成分をプラネタリーミキサーに仕込み、以下の手順にて熱伝導性シリコーン組成物を調製した。
即ち、成分(B)、成分(C)、(D)成分、及び必要に応じて成分(G)をプラネタリーミキサーに投入し、まず室温にて10分間撹拌した。その後、(E)成分、(F)成分を投入してから、170℃に温度を上げ、そのまま2時間加熱混合して、(D)、(E)成分によるハイドロシリル化反応を行わせて成分(A)のシリコーンゲル架橋物を調製し、組成物を得た。得られた組成物を用いて上述した各種試験を行った。結果を表1,2に併記する。
【0058】
[成分(B)]
(B−1)
【化5】

動粘度35mm2/s
【0059】
[成分(C)]
(C−1)アルミナ粉末(平均粒径:140μm)
(C−2)アルミナ粉末(平均粒径:110μm)
(C−3)アルミナ粉末(平均粒径:45μm)
(C−4)アルミナ粉末(平均粒径:10μm)
(C−5)アルミナ粉末(平均粒径:1.5μm)
(C−6)酸化亜鉛粉末(平均粒径:1.0μm)
【0060】
[(D)成分]
(D−1)
両末端にビニル基を有する直鎖状の動粘度600mm2/sのジメチルポリシロキサン。
(D−2)
両末端にビニル基を有する直鎖状の動粘度30,000mm2/sのジメチルポリシロキサン。
【0061】
[(E)成分]
(E−1)
【化6】

α/β=0.35、動粘度113mm2/s
(E−2)
【化7】

α/β=0.13、動粘度25mm2/s
(E−3)<比較例用>
【化8】
α/β=0.09、動粘度28mm2/s
(E−4)<比較例用>
【化9】
α/β=0.06、動粘度72mm2/s
【0062】
[(F)成分]
(F−1)
白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を上記(D−1)と同じジメチルポリシロキサンに溶解した溶液(白金原子含有量:1質量%)。
【0063】
[成分(G)]
(G−1)
両末端がトリメチルシリル基を有する直鎖状の1,000mm2/sのジメチルポリシロキサン。
【0064】
【表1】
*(D)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対する(E)成分のケイ素原子結合水素原子の個数を便宜的にH/Viと標記する(以下、同じ)。
【0065】
【表2】