(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705468
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】光導波路素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/065 20060101AFI20200525BHJP
G02B 6/13 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
G02F1/065
G02B6/13
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-87769(P2018-87769)
(22)【出願日】2018年4月27日
(62)【分割の表示】特願2014-74534(P2014-74534)の分割
【原出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-136569(P2018-136569A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年4月27日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/低消費電力高速光スイッチング技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】本谷 将之
(72)【発明者】
【氏名】細川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】石川 佳澄
(72)【発明者】
【氏名】及川 哲
【審査官】
佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/108617(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/154078(WO,A1)
【文献】
特開2009−145475(JP,A)
【文献】
特開2015−129780(JP,A)
【文献】
特開2006−251090(JP,A)
【文献】
特開平06−067232(JP,A)
【文献】
特表平10−504664(JP,A)
【文献】
特開2007−025370(JP,A)
【文献】
特開2007−102023(JP,A)
【文献】
特開平06−059223(JP,A)
【文献】
特開2005−215054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125
G02F 1/21−7/00
G02B 6/12−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された第1のクラッド層を形成する工程と、
前記第1のクラッド層上に電気光学効果を有する樹脂からなるコア層を形成する工程と、
前記第1のクラッド層上において、前記第1のクラッド層の上面の面方向の両側から前記コア層を挟む信号電極および接地電極を形成する工程と、
前記コア層、前記信号電極及び前記接地電極の上面を覆うように、前記樹脂よりも屈折率が低い樹脂材料を用いて第2のクラッド層を形成する工程とを備えた光導波路素子の製造方法であって、
前記第2のクラッド層の厚みを10μm以上に形成することを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項2】
前記コア層に、一部が前記第1のクラッド層と前記第2のクラッド層との積層方向に突出したリブを形成する請求項1に記載の光導波路素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2のクラッド層の厚みを15μm以上に形成することを特徴とする請求項1または2記載の光導波路素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1のクラッド層の厚みを10μm以上に形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光導波路素子の製造方法。
【請求項5】
前記第2のクラッド層の厚みを前記第1のクラッド層の厚みよりも厚く形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の光導波路素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子に関し、更に詳しくは、電気光学効果を有する樹脂(EOポリマー)を光導波路であるコア層に用いた光導波路素子における、光導波路を伝搬する光波と変調電極を伝搬するマイクロ波との相互作用を向上させることが可能であり、変調効率を向上させることが可能な光導波路素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマー材料を基板に用いた光デバイスとしては、変調電極をマイクロストリップ構造としたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、このマイクロストリップ構造とは別に、光導波路を伝搬する光波と変調電極を伝搬するマイクロ波との相互作用を向上させた構造として、変調電極を埋め込みコプレーナ構造(In−plane
CPW)としたものが提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
一般に、ポリマー材料を用いた光デバイスでは、シリコン等の基板上に下部クラッド層、コア層及び上部クラッド層が積層されており、光導波路は、リブ型の構造となっている。コア層は電気光学効果を有する樹脂(EOポリマー)により構成されており、このコア層に電圧を印加することにより配向制御がされた構造になっている。
なお、このようなリブ型構造の場合、下部クラッド層および上部クラッド層の厚みは2〜6μm程度、コア層の厚みは0.1〜2μm程度である。
【0003】
図5は、従来の変調電極をマイクロストリップ構造とした光導波路素子の一例を示す断面図であり、説明を分かり易くするために、それぞれの構成要素の寸法を実際と異ならせている。
図において、符号1は光導波路素子であり、シリコン等からなる基板2上に、金属メッキ等で形成された導電性材料からなる接地電極3が形成され、この接地電極3上にはドライエッチング等により加工された絶縁性材料からなる下部クラッド層(第1のクラッド層)4が形成され、この下部クラッド層4上にスピンコータ等により電気光学効果を有する樹脂(EOポリマー)からなるコア層5が形成され、このコア層5の一部(図では2箇所)には下に向けて突出するリブ型の光導波路6が形成されている。
【0004】
そして、このコア層5上にはドライエッチング等によりエッチング加工された絶縁性材料からなる上部クラッド層(第2のクラッド層)7が設けられ、この上部クラッド層7上かつ光導波路6の直上には金属メッキ等で形成された導電性材料からなる信号電極(電極層)8が設けられている。
このコア層5を構成しているEOポリマーは、ポーリングにより配向制御がなされている。
【0005】
図6は、従来の変調電極を埋め込みコプレーナ構造とした光導波路素子の一例を示す断面図であり、上記の光導波路素子1と同様、説明を分かり易くするために、それぞれの構成要素の寸法を実際と異ならせている。
この光導波路素子11は、上記の光導波路素子1とは、シリコン等からなる基板2上に直接下部クラッド層4が形成され、この下部クラッド層4上に、この下部クラッド層4の長手方向に沿ってスピンコータ等により電気光学効果を有する樹脂(EOポリマー)からなるコア層12、12が形成され、これらのコア層12の一部には、下に向けて突出するリブ型の光導波路13が形成され、下部クラッド層4上かつコア層12を両側から挟むように金属メッキ等で形成された導電性材料からなる信号電極(電極層)14及び接地電極(電極層)15が設けられている点が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−145475号公報
【特許文献2】特開2007−25370号公報
【特許文献3】特表平10−504664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、変調電極をマイクロストリップ構造とした光導波路素子の場合、クラッド層の厚みを厚くすると、光導波路を伝搬する光波に実効的に掛る電界値が小さくなり、その結果、駆動電圧が増大するという問題点があった。
そこで、この問題点を解決するために、変調電極を上下のクラッド層の間に埋め込んだ埋め込みコプレーナ構造(In−plane CPW)を有する光導波路素子が提案されている。
このような光導波路素子は、変調電極がマイクロストリップ構造の場合と比べて、光波が伝搬する光導波路に直接的に電界を掛けることが可能であることから、マクロストリップ構造の変調電極よりも高効率な変調が可能であるという優れた点がある。
【0008】
しかしながら、このような構成の光導波路素子においても、製品間での駆動電圧のバラツキが大きいという問題点があった。また、製品間での駆動電圧のバラツキを抑制するためには、クラッド層の厚みをサブミクロンの単位で制御する必要があるが、クラッド層の厚みをサブミクロンの単位で制御することは困難であるという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、コア層を上下方向から挟む一対のクラッド層それぞれの厚みをサブミクロンで制御することなく、光導波路素子間での駆動電圧のバラツキを抑制する光導波路素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、基板上に形成された第1のクラッド層と、この第1のクラッド層上に形成された電気光学効果を有する材料からなるコア層と、この第1のクラッド層上かつコア層を挟むように形成された電極層と、このコア層及び電極層を覆うように形成された第2のクラッド層とを備えた光導波路素子において、第2のクラッド層の厚みを10μm以上とすれば、クラッド層を作製する際に、クラッド層の厚みをサブミクロンの単位で制御する必要がなく、光導波路素子間での駆動電圧のバラツキを抑制することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の光導波路素子は、基板上に形成された第1のクラッド層と、前記第1のクラッド層上に形成された電気光学効果を有する材料からなるコア層と、前記第1のクラッド層上かつ前記コア層を挟むように形成された電極層と、前記コア層及び前記電極層を覆うように形成された第2のクラッド層とを備えた光導波路素子において、前記第2のクラッド層の厚みは10μm以上であることを特徴とする。
【0012】
前記第2のクラッド層の厚みは15μm以上であることが好ましい。
前記第1のクラッド層の厚みは10μm以上であることが好ましい。
前記第2のクラッド層の厚みは前記第1のクラッド層の厚みよりも厚いことが好ましい。
前記材料は、樹脂からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光導波路素子によれば、第2のクラッド層の厚みを10μm以上に制御することで、クラッド層の厚みをサブミクロンの単位で制御する必要がなく、光導波路素子間での駆動電圧のバラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態の光導波路素子を示す断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態の光導波路素子を示す断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の光導波路素子の下部クラッド層の厚みと規格化電圧との関係を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の光導波路素子の上部クラッド層の厚みと規格化電圧との関係を示す図である。
【
図5】従来の変調電極をマイクロストリップ構造とした光導波路素子の一例を示す断面図である。
【
図6】従来の変調電極を埋め込みコプレーナ構造とした光導波路素子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の光導波路素子を実施するための形態について説明する。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の変調電極を埋め込みコプレーナ構造とした光導波路素子21を示す断面図であり、上記の光導波路素子1、11と同様、説明を分かり易くするために、それぞれの構成要素の寸法を実際と異ならせている。2つの光導波路6はマッハツェンダー型光導波路において2分岐した光導波路を示している。
また、上記の光導波路素子1、11と同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0017】
この光導波路素子21は、矩形板状のシリコン等からなる基板2の表面(一主面)上に下部クラッド層(第1のクラッド層)22が形成され、この下部クラッド層22上に、この下部クラッド層22の長手方向に沿ってスピンコータ等により電気光学効果を有する樹脂(EOポリマー)からなるコア層12、12が形成され、これらのコア層12の一部には、下に向けて突出するリブ13が形成され、下部クラッド層22上かつコア層12を両側から挟むように金属メッキ等で形成された導電性材料からなる信号電極(電極層)14及び接地電極(電極層)15が形成され、これらコア層12、12、信号電極14及び接地電極15を覆うように上部クラッド層(第2のクラッド層)23が形成されている。
【0018】
ここで、コア層12を構成する電気光学効果を有する樹脂(EOポリマー)としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリキノリン系樹脂、ポリキノキサリン系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂等が挙げられる。
また、上記ポリマーには、必要に応じて無機微粒子や他の成分などを添加して、ポリマーの屈折率や機械特性等を調整することが可能である。
【0019】
信号電極14及び接地電極15を構成する導電性材料としては、金またはその合金、白金またはその合金、銀またはその合金、銅またはその合金、アルミニウムまたはその合金等が挙げられる。これらの金属またはその合金を信号電極14及び接地電極15に適用する場合、信号電極14と接地電極15とを同一の導電性材料で構成してもよく、異なる導電性材料で構成してもよい。
【0020】
下部クラッド層22及び上部クラッド層23を構成する材料としては、光導波路素子21の高周波特性を確保し、かつ光導波路13に光波を良好に閉じ込めることができる点から、誘電率が低く、コア層に用いられる材料より屈折率が低い材料、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が好ましい。
【0021】
この上部クラッド層23の厚みt1は、光導波路素子21の機械的特性や光導波路としての機能を満足する範囲内であればよく、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。
ここで、上部クラッド層23の厚みt1を10μm以上と限定したのは、厚みt1が10μm未満であると、上部クラッド層23の厚みをサブミクロンの単位で制御することが難しくなり、よって、上部クラッド層23の厚みの精度が低下するので好ましくないからである。
【0022】
また、下部クラッド層22の厚みt2は、光導波路素子21の機械的特性や光導波路としての機能を満足する範囲内であればよいが、10μm以上とすることで下部クラッド層22の厚みt2のバラツキによって発生する駆動電圧のバラツキを抑制することができる。これは、下部クラッド層22の厚みt2を10μm以上とすることで下部クラッド層22の厚みt2の変化に対する駆動電圧の変化が緩やかになるからである。
このようにすることで、サブミクロンの高精度な膜厚制御をすることなく駆動電圧性のバラツキが少ない光導波路素子21を作製することが可能となる。
【0023】
また、これら上部クラッド層23及び下部クラッド層22では、上部クラッド層23の厚みは、下部クラッド層22の厚みよりも厚いことが好ましい。
一般に、上部クラッド層23及び下部クラッド層22の厚みは、設計や製造の容易性から同程度の厚みとすることがある。しかしながら、上部クラッド層23の厚みを、下部クラッド層22の厚みより厚くすることで、より駆動電圧を低減することができる。
ここで、より大きな駆動電圧の低減を実現するためには、上部クラッド層23の厚みを10〜20μmとすることが好ましい。
【0024】
このように、上部クラッド層23の厚みを10μm以上、好ましくは15μm以上、下部クラッド層22の厚みを10μm以上とし、さらに、上部クラッド層23の厚みを下部クラッド層22の厚みよりも厚くすることで、従来の変調電極を埋め込みコプレーナ構造とした光導波路素子と比べて、駆動電圧を低減することができる。
また、上部クラッド層23及び下部クラッド層22それぞれの厚みをサブミクロン程度の厚みで制御する必要がないので、これら上部クラッド層23及び下部クラッド層22を再現性良く作製することが可能である。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の光導波路素子21によれば、コア層12、信号電極14及び接地電極15を覆うように形成された上部クラッド層23の厚みを10μm以上としたので、上部クラッド層23の厚みを制御することで、従来の変調電極を埋め込みコプレーナ構造とした光導波路素子と比べて、駆動電圧を低減することができる。
また、上部クラッド層23の厚みt1を10μm以上に制御することで、下部クラッド層22の厚みt2のバラツキによって発生する駆動電圧のバラツキを抑制することができる。
【0026】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態の変調電極を埋め込みコプレーナ構造とした光導波路素子31を示す断面図であり、上記の光導波路素子21と同様、説明を分かり易くするために、それぞれの構成要素の寸法を実際と異ならせている。2つの光導波路32はマッハツェンダー型光導波路において2分岐した光導波路を示している。
また、上記の光導波路素子21と同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0027】
本実施形態の光導波路素子31が、第1の実施形態の光導波路素子21と異なる点は、第1の実施形態の光導波路素子21では、コア層12の一部に下に向けて突出するリブ13を形成したのに対し、本実施形態の光導波路素子31では、コア層12の一部に上に向けて突出するリブ32を形成した点であり、これ以外の構成要素については、第1の実施形態の光導波路素子21と全く同様である。
【0028】
本実施形態の光導波路素子31においても、第1の実施形態の光導波路素子21と同様の作用・効果を奏することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
図3は、上部クラッド層23と下部クラッド層22の厚みがそれぞれ4μmの場合の駆動電圧Vπを基準にして規格化(規格化駆動電圧Vπ)した場合の下部クラッド層22の厚みと規格化駆動電圧Vπとの関係を示す図である。
ここでは、光導波路素子21について、上部クラッド層23の厚みを2μm、4μm、5μm、7.5μm、10μm、15μm、20μmの7通りに変化させた場合に、それぞれの厚みの上部クラッド層23に対して下部クラッド層22の厚みを2μm、4μm、5μm、7.5μm、10μm、15μm、20μmの7通りに変化させた場合の、下部クラッド層22の厚みと規格化駆動電圧Vπとの関係を示している。
【0031】
図4は、上部クラッド層23と下部クラッド層22の厚みがそれぞれ4μmの場合の駆動電圧Vπを基準にして規格化(規格化駆動電圧Vπ)した場合の上部クラッド層23の厚みと規格化駆動電圧Vπとの関係を示す図である。
ここでは、光導波路素子21について、下部クラッド層22の厚みを2μm、4μm、5μm、7.5μm、10μm、15μm、20μmの7通りに変化させた場合に、それぞれの厚みの下部クラッド層22に対して上部クラッド層23の厚みを2μm、4μm、5μm、7.5μm、10μm、15μm、20μmの7通りに変化させた場合の、上部クラッド層23の厚みと規格化駆動電圧Vπとの関係を示している。
【0032】
図3によれば、上部クラッド層23の厚みを一定にした場合には、下部クラッド層22の厚みが増加するにしたがって、規格化駆動電圧Vπが上昇するものの、下部クラッド層22の厚みの変化に対する規格化駆動電圧Vπの変動が小さくなることが分かる。
特に、下部クラッド層22の厚みが10μm以上では、下部クラッド層22の厚みの変化に対する規格化駆動電圧Vπの変動が非常に小さく、下部クラッド層22の厚みをサブミクロンで制御する必要がなくなり、よって、光導波路素子の作製が容易となることが分かる。
【0033】
図4によれば、下部クラッド層22の厚みを一定にした場合には、上部クラッド層23の厚みが増加するにしたがって、規格化駆動電圧Vπが低減し、さらに、上部クラッド層23の厚みの変化に対する規格化駆動電圧Vπの変動も小さくなることが分かる。
特に、上部クラッド層23の厚みが10μm以上では、上部クラッド層23の厚みの変化に対する規格化駆動電圧Vπの変動が非常に小さく、上部クラッド層23の厚みをサブミクロンで制御する必要がなくなり、よって、光導波路素子の作製が容易となることが分かる。
【0034】
また、上部クラッド層の厚みが15μm以上の場合には、上部クラッド層23の厚みの変化に対する規格化駆動電圧Vπの変動が更に小さくなるので、上部クラッド層23の厚みの制御が更に容易となることが分かる。
【0035】
さらに、
図4には、簡易な構成である上部クラッド層23の厚みと下部クラッド層22の厚みが同一の場合の特性曲線も示してある。この
図4から分かるように、上部クラッド層23の厚みが下部クラッド層22の厚みより厚い方が、より規格化駆動電圧Vπを低減することができることが分かる。この場合、上部クラッド層23の厚みを10〜20μmの範囲に制御することで、一般的な構成である上部クラッド層23の厚みと下部クラッド層22の厚みが同じ場合の光導波路素子と比較して、より大きな規格化駆動電圧Vπの低減を実現することができることが分かる。
【0036】
尚、ここでは光導波路の構成をマッハツェンダー型光導波路として説明してきたが、本発明はこれに限定されることはない。光導波路を両側から挟むように信号電極及び接地電極を形成した構成であれば、光導波路が1つもしくは、3つ以上の構成においても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の光導波路素子は、基板上に形成された第1のクラッド層と、前記第1のクラッド層上に形成された電気光学効果を有する樹脂からなるコア層と、前記第1のクラッド層上かつ前記コア層を挟むように形成された電極層と、前記コア層及び前記電極層を覆うように形成された第2のクラッド層とを備えた光導波路素子において、前記第2のクラッド層の厚みを10μm以上としたことにより、クラッド層の厚みをサブミクロンの単位で制御する必要がなく、光導波路素子間での駆動電圧のバラツキを抑制することができるものであるから、光伝送技術に用いられる光導波路素子に対してはもちろんのこと、高周波化、高集積化が求められる光デバイスにおいても、設計の自由度を高めることができ、その工業的価値は大きい。
【符号の説明】
【0038】
21 光導波路素子
2 基板
12 コア層
13 下に向けて突出するリブ
14 信号電極(電極層)
15 接地電極(電極層)
22 下部クラッド層(第1のクラッド層)
23 上部クラッド層(第2のクラッド層)
31 光導波路素子
32 上に向けて突出するリブ