(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィンガー電極の厚さと前記接着剤フィルムの厚さとの比が1:5〜6:5の範囲となっていることを特徴とする請求項1又は3記載の太陽電池モジュールの製造方法。
前記タブ線の配置領域に0.5MPa以下の圧力を付与して前記タブ線を熱圧着することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の太陽電池モジュールの製造方法。
前記複数の熱風供給ノズルは、前記加圧部材の主面の法線方向から前記加圧部材の前記主面に向かって熱風を供給する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、環境保護の観点などから、はんだを使用せず、例えばフィルム状の接着剤を用いて太陽電池セルの電極とタブ線との接続を行う方法が検討されている。接着剤フィルムを用いた接続方法では、はんだによる接続と比べて低温での接続が可能である。このため、接続の際の高温、及びはんだの体積収縮等に起因する太陽電池セルの割れ・反りを抑制できる。
【0006】
一方、従来の接着剤フィルムを用いた接続方法では、接続の際、接着剤フィルムを介してタブ線を配置した太陽電池セルを2.0MPa程度の圧力で加圧ヘッド等を用いて熱圧着している。このような従来の方法では、圧着時のせん断力によって太陽電池セルに割れが生じるおそれがある。低圧で太陽電池セルとタブ線とを接続する方法としては、接着剤の流動性を高め、圧着の際の樹脂の排除性を高める方法も挙げられる。しかしながら、この方法では、接着剤フィルムの表面のタック性が過剰となり、接着剤フィルムをロール状に巻いた状態でブロッキング(接着剤が基材の背面に転写する現象)が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、太陽電池セルとタブ線との接続にあたって太陽電池セルの割れを防止でき、良好な接続を実現できる太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決のため、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、太陽電池セルの受光面に配列されたフィンガー電極とタブ線とを接着剤フィルムを用いて接続する太陽電池モジュールの製造方法であって、太陽電池セルの受光面には、フィンガー電極間を結ぶバスバー電極が設けられておらず、フィンガー電極上のタブ線の配置領域に、接着剤フィルムを介してタブ線を配置し、熱風を供給する熱風供給部にタブ線の線幅よりも広い幅の加圧部材を配置し、熱風供給部による熱風の供給を行いながら、加圧部材によってタブ線の配置領域に1.0MPa以下の圧力を付与してタブ線を熱圧着することを特徴としている。
【0009】
この太陽電池モジュールの製造方法では、いわゆるバスバー電極レスの太陽電池セルにおいて、接着剤フィルムを介してタブ線をフィンガー電極に直接接続する。この方法では、タブ線に加圧部材からの圧力が加わると、接着剤フィルムは、受光面に配列されたフィンガー電極がなす凹凸面に押圧されることとなる。したがって、タブ線の線幅よりも広い幅の加圧部材で均一かつ1.0MPa以下の低圧で押圧を行っても、圧着の際の樹脂の排除性を十分に確保でき、太陽電池セルの割れを防止しつつ、良好な接続を実現できる。また、この太陽電池モジュールの製造方法では、熱風を供給する熱風供給部に加圧部材を配置している。このため、熱風供給部によって加圧部材を均一に加熱できるので、接着剤フィルムの硬化を好適に実施できる。
【0010】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、太陽電池セルの受光面に配列されたフィンガー電極とタブ線とを接着剤フィルムを用いて接続する太陽電池モジュールの製造方法であって、太陽電池セルの受光面には、フィンガー電極間を結ぶバスバー電極が接着剤フィルムの幅よりも狭い幅で設けられており、バスバー電極上のタブ線の配置領域に、接着剤フィルムを介してタブ線を配置し、熱風を供給する熱風供給部にタブ線の線幅よりも広い幅の加圧部材を配置し、熱風供給部による熱風の供給を行いながら、加圧部材によってタブ線の配置領域に1.0MPa以下の圧力を付与してタブ線を熱圧着することを特徴としている。
【0011】
この太陽電池モジュールの製造方法では、接着剤フィルムの幅よりも狭い幅のバスバー電極を有する太陽電池セルにおいて、接着剤フィルムを介してタブ線をバスバー電極に接続する。この方法では、タブ線に加圧部材からの圧力が加わると、接着剤フィルムは、当該接着剤フィルムよりも狭い幅のバスバー電極によって局所的に押圧されることとなる。したがって、タブ線の線幅よりも広い幅の加圧部材で均一かつ1.0MPa以下の低圧で押圧を行っても、圧着の際の樹脂の排除性を十分に確保でき、太陽電池セルの割れを防止しつつ、良好な接続を実現できる。また、この太陽電池モジュールの製造方法では、熱風を供給する熱風供給部に加圧部材を配置している。このため、熱風供給部によって加圧部材を均一に加熱できるので、接着剤フィルムの硬化を好適に実施できる。
【0012】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、太陽電池セルの受光面に配列されたフィンガー電極とタブ線とを接着剤フィルムを用いて接続する太陽電池モジュールの製造方法であって、太陽電池セルの受光面には、フィンガー電極間を結ぶバスバー電極が接着剤フィルムの幅よりも狭い幅で受光面の端部側のみに設けられており、受光面の中央側に位置するフィンガー電極上のタブ線の配置領域に、バスバー電極に少なくとも一部が重なるように接着剤フィルムを介してタブ線を配置し、熱風を供給する熱風供給部にタブ線の線幅よりも広い幅の加圧部材を配置し、熱風供給部による熱風の供給を行いながら、加圧部材によってタブ線の配置領域に1.0MPa以下の圧力を付与してタブ線を熱圧着することを特徴としている。
【0013】
この太陽電池モジュールの製造方法では、接着剤フィルムを介してタブ線をフィンガー電極に直接接続する。この方法では、タブ線に加圧部材からの圧力が加わると、接着剤フィルムは、受光面に配列されたフィンガー電極がなす凹凸面に押圧されることとなる。したがって、タブ線の線幅よりも広い幅の加圧部材で均一かつ1.0MPa以下の低圧で押圧を行っても、圧着の際の樹脂の排除性を十分に確保でき、太陽電池セルの割れを防止しつつ、良好な接続を実現できる。また、この太陽電池モジュールの製造方法では、熱風を供給する熱風供給部に加圧部材を配置している。このため、熱風供給部によって加圧部材を均一に加熱できるので、接着剤フィルムの硬化を好適に実施できる。さらに、この太陽電池モジュールの製造方法では、フィンガー電極間を結ぶバスバー電極が接着剤フィルムの幅よりも狭い幅で受光面の端部側のみに設けられている。これにより、タブ線を配置する際のアライメントマークとしてバスバー電極を利用できる。また、バスバー電極によって受光面の端部のフィンガー電極から集電できるので、太陽電池モジュールの集電効率が低下することも回避できる。
【0014】
また、タブ線を受光面上の全てのフィンガー電極に跨るように配置することが好ましい。こうすると、全てのフィンガー電極からの集電が可能となり、太陽電池モジュールの集電効率を十分に確保できる。
【0015】
フィンガー電極の厚さが10μm〜30μmであり、幅が5μm〜90μmであることが好ましい。フィンガー電極の厚さ・幅がこの範囲を満たす場合、フィンガー電極のなす凹凸面が十分に形成される。したがって、圧着の際の樹脂の排除性を一層十分に確保できる。
【0016】
また、フィンガー電極の厚さと接着剤フィルムの厚さとの比が1:5〜6:5の範囲となっていることが好ましい。この範囲では、フィンガー電極のなす凹凸面によって、圧着の際の樹脂の排除性を一層十分に確保できる。
【0017】
また、バスバー電極の幅が90μm以下であることが好ましい。このように、バスバー電極の幅を小さくすることにより、接着剤フィルムがバスバー電極によって一層局所的に押圧されるので、圧着の際の樹脂の排除性を一層十分に確保できる。
【0018】
また、バスバー電極の厚さが10μm〜30μmであり、幅が5μm〜90μmであることが好ましい。この場合、接着剤フィルムがバスバー電極によって一層局所的に押圧されるので、圧着の際の樹脂の排除性を一層十分に確保できる。
【0019】
また、タブ線の配置領域に0.5MPa以下の圧力を付与してタブ線を熱圧着することが好ましい。タブ線の配置領域に付加する圧力を更に低圧化することで、太陽電池セルの割れをより確実に防止できる。
【0020】
また、接着剤フィルムとして、導電性接着剤フィルム又は絶縁性接着剤フィルムを用いることが好ましい。これにより、タブ線の接続を良好に実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法によれば、太陽電池セルとタブ線との接続にあたって太陽電池セルの割れを防止でき、良好な接続を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法を用いて製造される太陽電池モジュールを示す斜視図である。同図に示すように、太陽電池モジュール1は、複数の太陽電池セル2をタブ線3によって互いに電気的に接続することによって構成されている。
【0025】
太陽電池セル2の一面側は、表面電極が形成された受光面2aとなっており、太陽電池セル2の他面側は、裏面電極が形成された裏面2bとなっている。隣接する太陽電池セル2,2間では、受光面2a側の表面電極と裏面2b側の裏面電極とがタブ線3によって接続されており、これにより、太陽電池セル2が直列に接続されたストリングスが形成されている。
【0026】
製品としての太陽電池モジュール1は、例えばストリングスを複数配列したマトリクスを備えている。そして、太陽電池モジュール1は、マトリクスを封止用の接着剤シートで挟んだ状態で、保護用の受光面2a側の表面カバー及び裏面2b側のバックシートと共に一括でラミネートされ、周囲にアルミニウム等の金属フレームを取り付けることで完成する。
【0027】
封止用の接着剤には、例えばエチレンビニルアルコール(EVA)樹脂等の透光性を有する接着剤が用いられる。また、表面カバーには、例えばガラス等の透光性を有する材料が用いられ、バックシートには、例えばガラス又はアルミニウム箔を樹脂フィルムで挟んでなる積層体等が用いられる。
【0028】
次に、太陽電池モジュール1の製造方法について更に詳細に説明する。説明にあたり、まず、太陽電池セル2の構成について説明する。
図2は、太陽電池セルの受光面側を示す概略平面図であり、
図3は、太陽電池セルの裏面側を示す概略平面図である。
図2及び
図3に示すように、太陽電池セル2は、基板11を有している。
【0029】
基板11は、例えばSiの単結晶、多結晶、及び非結晶のうちの少なくとも一つによって略正方形状に形成され、基板11の四隅は、それぞれ円弧状に面取りされている。基板11の一方面は、太陽電池セル2の受光面2aに対応し、基板11の他方面は、太陽電池セル2の裏面2bに対応している。なお、基板11は、受光面2a側がn型半導体であってもよく、p型半導体であってもよい。
【0030】
基板11の受光面2a側には、
図2に示すように、表面電極として、複数のフィンガー電極12が設けられている。フィンガー電極12は、基板11の受光面2aの略全面において、太陽電池モジュール1のストリングスの延在方向と略直交する方向に形成され、ストリングスの延在方向に沿って所定の間隔をもって配列されている。
【0031】
フィンガー電極12は、例えば金属ペーストを塗布及び加熱することによって形成されている。フィンガー電極12の厚さは、例えば10μm〜30μmとなっており、フィンガー電極12の幅は、例えば5μm〜90μmとなっている。また、隣り合うフィンガー電極12,12間の間隔は、例えば2mm程度となっている。
【0032】
フィンガー電極12の形成材料としては、銀を含有したガラスペースト、接着剤樹脂に各種導電性粒子を分散した銀ペースト、金ペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト、アルミニウムペースト、及び焼成・蒸着によって形成されるITOなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、導電性、安定性、及びコストの観点から、銀を含有したガラスペーストを用いることが好ましい。
【0033】
基板11の裏面2b側には、
図3に示すように、バスバー電極13と、裏面電極14とが設けられている。バスバー電極13は、受光面2a側のタブ線3の配置領域P,Pに対応する位置に一対の直線状に設けられている。バスバー電極13は、フィンガー電極12と同様に、例えば金属ペーストを塗布及び加熱することによって形成されている。バスバー電極13の幅は、例えば2mm程度となっている。
【0034】
裏面電極14は、裏面電極14は、例えばアルミペーストを焼成することによって形成されている。基板11の裏面2b側のうち、バスバー電極13の形成部分を除く全領域にわたって形成されている。裏面2b側では、バスバー電極13に沿って一対のタブ線3の配置領域P,Pが設定されている。タブ線3は、接着剤フィルム15を介してバスバー電極13及び裏面電極14に接続される。配置領域Pは、例えばバスバー電極13の略全長にわたって直線状に設定されている。
【0035】
次に、タブ線3の接続に用いる接着剤フィルム15(
図4参照)について説明する。
【0036】
接着剤フィルム15に用いられる導電性接着剤は、例えばフィルム形成樹脂を25質量部、熱硬化性樹脂を20質量部、熱硬化性樹脂用の硬化剤を55質量部、シリコーン粒子を10質量部、導電粒子を10質量部、含有している。
【0037】
フィルム形成樹脂としては、良好なフィルム形成を実施できる観点から、例えばフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリアミド樹脂等の熱可塑性高分子が用いられる。これらの樹脂の中でも、フェノキシ樹脂を用いることが好ましい。また、熱可塑性高分子の重量平均分子量は、接着剤フィルム15の流動性を考慮し、10000〜10000000であることが好ましい。
【0038】
熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン−ビスマレイミド樹脂、及びフェノール樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐熱性を考慮すると、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0039】
熱硬化性樹脂用の硬化剤とは、熱硬化性樹脂と共に加熱したときに熱硬化性樹脂の硬化を促進する材料を指す。かかる硬化剤としては、イミダゾール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ポリアミンの塩、アミンイミド、及びジシアンジアミドが用いられる。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が用いられる場合には、イミダゾール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、三フッ化ホウ素アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、及びジシアンジアミドを用いることが好適である。
【0040】
シリコーン粒子としては、シリコーンゴム粒子、シリコーン樹脂粒子、シリコーン複合粒子等が用いられる。シリコーンゴム粒子は、例えば直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造を有するシリコーンゴム粒子である。シリコーン樹脂粒子は、例えばシロキサン結合が(RSiO3/2)nで表される三次元網目状に架橋した構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン硬化物の粒子である。
【0041】
導電粒子としては、例えば金粒子、銀粒子、銅粒子、ニッケル粒子、金めっきニッケル粒子、金/ニッケルめっきプラスチック粒子、銅めっき粒子、ニッケルめっき粒子が用いられる。導電性を確保する点から、導電粒子の平均粒径は、1μm〜20μmであることが好ましく、1μm〜5μmであることがより好ましい。
【0042】
また、導電性接着剤には、被着体との接着性及び濡れ性を向上させるためのカップリング剤を含有させてもよい。カップリング剤としては、例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0043】
なお、上述の太陽電池セル2のようなバスバー電極レスタイプの太陽電池セルでは、タブ線3とフィンガー電極12とを直接的に接続するため、フィンガー電極12上に5μm以上の導電粒子が存在すると、タブ線3とフィンガー電極12との間の導通が妨げられることも考えられる。そこで、導電性接着剤に代えて、導電粒子を含まない絶縁性接着剤を用いた接着剤フィルム15を用いてもよい。この場合、上記のようなタブ線3とフィンガー電極12との間の導通不良の発生を抑制できる。
【0044】
接着剤フィルム15の形成にあたっては、上記のフィルム形成樹脂、熱硬化性樹脂、硬化剤、導電粒子等を溶剤に溶解した樹脂組成物を、バーコーター又は塗布装置などを用いて剥離基材に塗布する。そして、剥離基材上の組成物を熱オーブン又は加熱乾燥装置などを用いて乾燥させることにより、所定の寸法を有する接着剤フィルム15が得られる。
【0045】
接着剤フィルム15の厚さは、フィンガー電極12の厚さとの関係を考慮して適宜設定される。接着剤フィルム15の厚さは、例えばフィンガー電極12の厚さと接着剤フィルム15の厚さとの比が1:5〜6:5の範囲となるように設定される。また、接着剤フィルム15の幅は、タブ線3の幅よりも小さい幅となるように設定される。接着剤フィルム15の幅は、例えばタブ線3の幅が1.5mm程度である場合には、1.2mm程度に設定される。
【0046】
続いて、太陽電池セル2とタブ線3との接続方法について説明する。
図4は、太陽電池セルとタブ線との接続の様子を示す概略断面図である。同図では、タブ線3の配置領域Pを長手方向に切断した断面を図示している。
【0047】
図4に示すように、太陽電池セル2とタブ線3との接続にあたっては、まず、受光面2aを上方に向けた状態でステージSにセットする。次に、受光面2a側のタブ線3の配置領域Pに沿って接着剤フィルム15を貼り付け、接着剤フィルム15上にタブ線3を仮固定する。タブ線3としては、例えば銅リボンの表面をはんだで被覆した幅1.5mm程度のものが用いられるが、これに限定されるものではなく、ハンダで表面を被覆しないものであってもよい。
【0048】
タブ線3を仮固定した後、例えば熱圧着機Kを用いてタブ線3と太陽電池セル2とを熱圧着する。熱圧着機Kは、太陽電池セル2に対向する平板状の加圧部材21と、太陽電池セル2に向けて熱風を供給する熱風供給ノズル(熱風供給部)22とを有している。
【0049】
加圧部材21は、加圧部材21の幅は、タブ線3の幅よりも広い幅となっている。加圧部材21の幅をタブ線3の幅よりも広くすることで、タブ線3の配置領域Pに加わる圧力が均一化される。また、熱風供給ノズル22は、接着剤フィルム15の長手方向に沿って所定の間隔で配列されている。加圧部材21は、熱風供給ノズル22の配列方向に沿う向きに配置され、支持部材23によって熱風供給ノズル22の吐出口から所定の間隔をもって支持されている。熱風供給ノズル22の吐出口から吐出した熱風は、加圧部材21及びタブ線3の接続位置を加熱する。
【0050】
圧力の付与により、接着剤フィルム15は、受光面2aに配列されたフィンガー電極12がなす凹凸面に押圧される。このような凹凸面への押圧により、圧着時に接着剤フィルム15の樹脂が十分に排除され、フィンガー電極12とタブ線3との接続が良好に実現される。熱圧着の際、加圧部材21の温度を上下共に80℃〜320℃程度とし、タブ線3の配置領域Pに加わる圧力が1.0MPa以下となるように圧力を付与する。圧力を付与する時間は1秒〜30秒程度であることが好ましい。また、付与する圧力は、0.5MPa以下であることがより好ましい。
【0051】
熱圧着の際、接着剤フィルム15に対して熱風を吹き付け、接着剤の硬化を促進する。熱風供給ノズル22からの熱風は、接着剤フィルム15と共に加圧部材21を加熱する。このため、接着剤フィルム15の硬化を好適に実施できる。熱風の温度は、接着剤フィルム15の硬化温度よりも高い温度であることが好ましく、例えば80℃〜320℃程度に設定される。また、熱風の吹き付け時間は、例えば1秒〜50秒程度とすることが好ましい。熱風供給ノズルを接着剤フィルム15の長手方向に沿って複数配置されているので、接着剤フィルム15の硬化の均一性を高めることができる。同様の工程を太陽電池セル2の裏面2b側にも実施し、裏面2b側のタブ線3の接続を行うことで、
図1に示した太陽電池モジュール1が得られる。
【0052】
以上説明したように、この太陽電池モジュールの製造方法では、いわゆるバスバー電極レスの太陽電池セル2において、接着剤フィルム15を介してタブ線3をフィンガー電極12に直接接続する。この方法では、タブ線3に加圧部材21からの圧力が加わると、接着剤フィルム15は、受光面2aに配列されたフィンガー電極12がなす凹凸面に押圧されることとなる。したがって、タブ線3の線幅よりも広い幅の加圧部材21で均一かつ1.0MPa以下の低圧で押圧を行っても、圧着の際に接着剤フィルム15の樹脂の排除性を十分に確保でき、太陽電池セル2の割れを防止しつつ、良好な接続を実現できる。また、この太陽電池モジュールの製造方法では、熱風を供給する熱風供給ノズル22に加圧部材21を配置している。このため、熱風供給ノズル22によって加圧部材21を均一に加熱できるので、接着剤フィルム15の硬化を好適に実施できる。
【0053】
本実施形態では、フィンガー電極12の厚さが10μm〜30μmとなっており、幅が5μm〜90μmとなっている。また、フィンガー電極12の厚さと接着剤フィルム15の厚さとの比が1:5〜6:5の範囲となっている。このような範囲を満たすことにより、フィンガー電極12のなす凹凸面が接着剤フィルム15に対して十分に形成される。したがって、圧着の際の樹脂の排除性を一層十分に確保できる。
[第2実施形態]
【0054】
図5は、本発明の第2実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法が適用される太陽電池セルの受光面側を示す概略平面図である。同図に示すように、第2実施形態では、太陽電池セル32の受光面32a側に、フィンガー電極12間を結ぶバスバー電極33が設けられている点で第1実施形態と異なっている。
【0055】
バスバー電極33は、タブ線3の配置領域Pに沿って、受光面32a上の全てのフィンガー電極12に跨るように、フィンガー電極12に略直交して直線状に設けられている。バスバー電極33は、裏面2b側のバスバー電極13と同様に、金属ペーストを塗布及び加熱することによって形成されている。バスバー電極33の厚さは、例えば10μm〜30μmとなっている。また、バスバー電極33の幅は、バスバー電極13の幅よりも小さく、例えば90μm以下、好ましくは5μm〜90μmとなっている。
【0056】
第2実施形態においても、タブ線3を仮固定した後、
図6に示すように、例えば熱圧着機Kを用いてタブ線3と太陽電池セル2とを熱圧着する。
図6では、タブ線3の配置領域Pを長手方向に直交する方向に切断した断面を図示している。同図に示すように、タブ線3の幅よりも広い幅の加圧部材21を用いて熱圧着を行うことで、第1実施形態の場合と同様に、タブ線3の配置領域Pに加わる圧力の均一性を高めることができる。
【0057】
また、圧力の付与により、接着剤フィルム15は、当該接着剤フィルム15よりも狭い幅のバスバー電極33によって局所的に押圧される。このような局所的な押圧により、圧着時に接着剤フィルム15の樹脂が十分に排除され、バスバー電極33とタブ線3との接続が良好に実現される。さらに、熱風を供給する熱風供給ノズル22に加圧部材21を配置しているので、熱風供給ノズル22によって加圧部材21を均一に加熱でき、接着剤フィルム15の硬化を好適に実施できる。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、種々の変形を適用できる。例えば、上記実施形態では、接着剤フィルム15を例示しているが、フィルム状の接着剤に限られず、ペースト状の接着剤を用いてもよい。また、上記実施形態では、熱圧着機Kにおいて、太陽電池セル2の厚さ方向に伸びる熱風供給ノズル22の先端側に加圧部材21を設けているが、太陽電池セル2の面方向に伸びる熱風供給ノズル22の先端側に加圧部材21を設けてもよい。
【0059】
また、
図7に示すように、熱圧着機Kにおいて、所定の間隔をもって配置された複数の荷重ピン25の先端で加圧部材21を支持すると共に、荷重ピン25,25間に熱風供給ノズル(熱風供給部)26を配置してもよい。さらに、加圧部材21におけるタブ線3への加圧面には、ゴム等によって形成された弾性体シート27が設けられていてもよい。このような弾性体シート27を設けることにより、熱圧着の際のタブ線3の保護が図られる。弾性体シート27は、
図4に示した形態及び上述した変形例に係る形態において適用してもよい。
【0060】
また、
図8に示す太陽電池セル42のように、受光面42aにおいて、一部のフィンガー電極12のみがバスバー電極43によって接続された形態のものであってもよい。
図8に示す例では、受光面42aの端部側に位置する数本のフィンガー電極12のみが、第2実施形態と同様の幅のバスバー電極43によって接続されている。また、受光面42aの中央側に位置するフィンガー電極12には、バスバー電極43に少なくとも一部が重なるようにタブ線3の配置領域Pが設定されている。
【0061】
このような形態であっても、接着剤フィルム15は、受光面42aに配列されたフィンガー電極12がなす凹凸面に押圧される。したがって、タブ線3の線幅よりも広い幅の加圧部材21で均一かつ1.0MPa以下の低圧で押圧を行っても、圧着の際に接着剤フィルム15の樹脂の排除性を十分に確保でき、太陽電池セル42の割れを防止しつつ、良好な接続を実現できる。また、熱風を供給する熱風供給ノズル22に加圧部材21を配置しているので、熱風供給ノズル22によって加圧部材21を均一に加熱でき、接着剤フィルム15の硬化を好適に実施できる。
【0062】
さらに、この形態では、受光面42aの端部のバスバー電極43は、タブ線3を配置する際のアライメントマークとして利用できる一方で、バスバー電極43によって受光面42aの端部のフィンガー電極12から集電できる。したがって、太陽電池モジュール1の集電効率が低下することも回避できる。
[実施例]
【0063】
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、実施例1〜5及び比較例1〜3に係る太陽電池モジュールの製造方法によって太陽電池セルとタブ線との接続を行い、太陽電池モジュールのセル割れの発生の有無及び接続信頼性を評価した。
【0064】
セル割れの発生の有無の確認には、赤外線カメラを用いた。太陽電池セルにタブ線を接続した後、5Aの電流を流し、太陽電池セルを発光させて画像の取得を行った。タブ線の両端部から10mm以内の範囲で、長さ50μm以上かつ幅0.1μm以上のセル割れが確認されないものをA、確認されたものをBとした。
【0065】
接続信頼性の評価には、ソーラシミュレータ(株式会社ワコム電創製WXS−2000S−20CH、AM1.5G)を用いた。太陽電池セルにタブ線を接続した後、接続初期の太陽電池モジュールの曲線因子をソーラシミュレータで測定し、曲線因子が70以上のものをA、70未満のものをBとした。
[実施例1]
【0066】
実施例1では、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製PKHC)を25質量部、アクリルゴム微粒子をビスフェノールA型エポキシ樹脂に分散させた樹脂(アクリル微粒子を17質量%含有、エポキシ当量220〜240)を10質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量163〜175)を10質量部、シリカ微粒子KMP-605(信越化学工業株式会社製 平均粒径2μm)10質量部、ニッケルの導電粒子(福田金属箔粉工業株式会社製NiPF−BQ 平均粒径5μm)10質量部、硬化剤(旭化成化成工業株式会社製:イミダゾール変性体を核とし、その表面をポリウレタンで被覆してなる平均粒径5μmのマイクロカプセル型硬化剤を液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂中に分散してなるマスターバッチ型硬化剤)を55質量部配合し、接着剤フィルムを調整した。
【0067】
次に、剥離処理されたPETにバーコーターを用いて接着剤フィルムを塗布し、80℃のオーブンで5分間乾燥させ、厚み25μmの接着剤フィルムを作製した。その後、得られた接着剤フィルムを幅1.2mmに裁断した。
【0068】
接着剤フィルムの作製後、受光面に57本のフィンガー電極(厚さ20μm、幅0.1mm)が形成され、裏面に2本のバスバー電極(幅2mm)が形成された5インチ太陽電池セル(125mm×125mm 厚み200μm)を用意した。次に、受光面のフィンガー電極と裏面のバスバー電極に接着剤フィルムを貼り付け、幅1.5mmのタブ線を仮固定した。そして、太陽電池用熱圧着機(芝浦メカトロニクス株式会社製HBS02608)を用い、温度180℃、圧力1.0MPa、圧着時間10秒で熱圧着することにより、太陽電池セルとタブ線との接続を行い、実施例1に係る太陽電池モジュールを得た。
[実施例2]
【0069】
実施例1と同様に接着剤フィルムを作製した。タブ線の熱圧着には、タブ線接続用に改良を施したはんだ付け装置(株式会社エヌ・ピー・シー製簡易タブ付け装置NTS−150−Ms)を用いた。この装置では、タブ線の長手方向に沿って配列された熱風供給ノズルの先端側にタブ線の線幅よりも広い幅の加圧部材によって連結されており、熱風供給ノズルから熱風を供給しながら加圧部材によってタブ線の配置領域への加圧を行うようになっている。この装置を用い、ステージ温度170℃、熱風温度200℃、圧力0.3MPa、接続時間3秒の条件で、実施例2に係る太陽電池モジュールを得た。
[実施例3]
【0070】
接着剤フィルムの作製にはんだの導電粒子(三井金属鉱業株式会社製Sn96.5−Ag3.5 平均粒径10μm)を30質量部用いたこと以外は実施例2と同様として実施例3に係る太陽電池モジュールを得た。
[実施例4]
【0071】
接着剤フィルムの作製にニッケルの導電粒子(日本化学工業株式会社製ブライト25NR20−MX 平均粒径20μm)を30質量部用いたこと以外は実施例2と同様として実施例4に係る太陽電池モジュールを得た。
[実施例5]
【0072】
接着剤フィルムの作製に導電粒子を用いないこと以外は実施例2と同様にして実施例5に係る太陽電池モジュールを得た。
[比較例1]
【0073】
実施例1と同様に接着剤フィルムを作製した。接着剤フィルムの作製後、受光面に57本のフィンガー電極(幅0.1mm)と2本のバスバー電極(幅2.0mm)が形成され、裏面に2本のバスバー電極(幅2mm)が形成された5インチ太陽電池セル(125mm×125mm 厚み200μm)を用意した。そして、実施例2と同様にして太陽電池セルとタブ線との接続を行い、比較例1に係る太陽電池モジュールを得た。
[比較例2]
【0074】
接着剤フィルムの作製に導電粒子を用いないこと以外は比較例1と同様にして比較例2に係る太陽電池モジュールを得た。
[比較例3]
【0075】
太陽電池用熱圧着機による熱圧着時の圧力を2.0MPaとしたこと以外は比較例1と同様にして比較例3に係る太陽電池モジュールを得た。
[効果確認試験結果]
【0076】
図9は、実施例に係る効果確認試験の結果を示す図である。また、
図10は、比較例に係る効果確認試験の結果を示す図である。
図9に示すように、実施例1〜5では、いずれも太陽電池セルのセル割れは発生せず、初期接続においても優れた性能を持つことが確認された。一方、
図10に示すように、比較例1,2では、1.0MPa以下の低圧で熱圧着を行っていることで太陽電池セルのセル割れは発生していないが、曲線因子の値が低く、実施例1〜5と比較して初期接続の性能が劣っていることが確認された。また、2.0MPaの高圧で熱圧着を行った比較例3では、太陽電池セルのセル割れが生じていることが確認された。