(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤は、金属塩(A)や金属錯体(D)とイミダゾール化合物(B)とを含有することを特徴とする。
【0013】
前記金属塩(A)は、酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤、或いは酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤用金属錯体の中心金属源として用いられている各種の金属塩を広く用いることができる。その一例としては、下記一般式(A−1)
【0014】
【化1】
[式中Mで表される中心金属はマンガン、鉄、コバルト、ビスマス、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、ニッケル、銅、亜鉛、セリウム、バナジウムの何れかであり、XはF
−、Cl
−、Br
−、I
−、PF
6−、SbF
6−、AsF
6−、BF
4−、B(C
6F
5)
4−、ClO
4−、ClO
3−、CO
2−、ClO
−、H
2PO
4−、H
2PO
3−、H
2PO
2−、HCO
3−、NO
3−、NO
2−、(RCO)
2CH
−(Rは炭素原子数1〜22の炭化水素基)、RCOO
−(Rは炭素原子数1〜22の炭化水素基)、O
2−、S
2−、SO
42−、SO
32−、CO
32−の何れかである。nは1以上の整数である]
で表されるもの等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0015】
これらの中でも、硬化促進剤としての性能に優れることから、前記金属塩(A)の中心金属はマンガン又は鉄であることが好ましい。前記金属塩(A)の中心金属の価数は特に限定されず、例えば、中心金属がマンガンの場合には、通常、2価〜7価となる。中心金属が鉄の場合には、通常、2価、もしくは、3価となる。また、前記金属塩(A)は、印刷インキや塗料に対する溶解性に優れることから、前記一般式(A−1)中のXがRCOO
−(Rは炭素原子数1〜22の炭化水素基)である脂肪酸塩が好ましく、オクチル酸塩、ネオデカン酸塩、イソノナン酸塩及びナフテン酸塩のいずれかであることが特に好ましい。
【0016】
本発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤は、前記金属塩(A)と併せて配位子化合物(C)を含有していてもよい。前記配位子化合物(C)は、酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤用金属錯体の配位子として用いられている各種の化合物を広く用いることができる。その一例としては、アミノアルコール化合物、2,2’−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、N,N’−ビスサリチリデン1,2−プロパンジアミン及びその誘導体、8−キノリノール及びその誘導体、ピコリン酸及びその誘導体、ピリジンジカルボン酸及びその誘導体、キノリン−2−カルボン酸及びその誘導体等が挙げられる。前記各化合物の誘導体とは、各化合物の芳香核上に水酸基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭化水素オキシカルボニル基等の置換基を一つ乃至複数有する化合物や、カルボン酸のアルキルエステル等が挙げられる。前記各種置換基について、前記ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素の何れかが挙げられる。前記炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基中の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環構造含有炭化水素基、芳香環含有炭化水素基のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は直鎖型でも分岐構造を有してもよく、構造中に不飽和基を有するものであってもよい。また、前記炭化水素基、炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基上の置換基としては、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0017】
前記金属錯体(D)は、例えば、前記金属塩(A)と、配位子化合物(C)とを配合して生じる金属錯体等が挙げられる。前記金属塩(A)の種類や前記配位子化合物(C)の種類、および前記金属塩(A)と前記配位子化合物(C)との組み合わせは、所望の硬化促進剤性能等に応じて適宜選択されるものであり、特に限定なくどのような設計であってもよい。中でも、硬化促進剤としての性能に優れることから、金属錯体(D)の中心金属は前記金属塩(A)同様マンガン又は鉄であることが好ましい。
【0018】
前記金属塩(A)と前記配位子化合物(C)との配合割合等は、所望の硬化促進剤性能等に応じて適宜選択されるものであり、特に限定なくどのような設計であってもよい。中でも、硬化促進剤としての性能に優れることから、前記金属塩(A)中の金属原子1モルに対し、前記配位子化合物(C)が0.1〜20モルの範囲となる割合であることが好ましく、0.2〜10モルの範囲となる割合であることがより好ましく、0.5〜5モルの範囲となる割合であることが特に好ましい。
【0019】
前記金属塩(A)と前記配位子化合物(C)との配合は、両者を溶解し得る溶媒中で行うことが好ましい。前記溶媒は特に限定されないが、例えば、印刷インキや塗料用途で広く利用されている各種の有機溶剤等が挙げられる。また、後述するイミダゾール化合物(B)が前記金属塩(A)と前記配位子化合物(C)とを溶解し得るものである場合には、イミダゾール化合物(B)を溶媒として用いてもよい。
【0020】
前記各種の有機溶剤は、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;大豆油、亜麻仁油、菜種油、サフラワー油等の植物油脂;R−COOR’(式中、Rは炭素原子数5〜11のアルキル基であり、R’は炭素原子数1〜3のアルキル基である。)で表される脂肪酸エステル;JX社製「1号スピンドル油」、「3号ソルベント」、「4号ソルベント」、「5号ソルベント」、「6号ソルベント」、「ナフテゾールH」、「アルケン56NT」、三菱化学(株)製「ダイヤドール13」、「ダイヤレン168」;日産化学(株)製「Fオキソコール」、「Fオキソコール180」;JX社製「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」「AFソルベント6号」「AFソルベント7号」、ISU社製DSOL溶剤、「ソルベントH」;ISU(株)製「N−パラフィンC14−C18」;出光興産(株)「スーパーゾルLA35」、「スーパーゾルLA38」;エクソン化学(株)の「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD120」、「エクソールD130」、「エクソールD160」、「エクソールD100K」、「エクソールD120K」、「エクソールD130K」、「エクソールD280」、「エクソールD300」、「エクソールD320」;マギーブラザーズ社製の「マギーソル−40」、「マギーソル−44」、「マギーソル−47」、「マギーソル−52」、「マギーソル−60」等が挙げられる。これらの希釈剤は1種類のみで用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0021】
前述の通り、本発明においては、前記金属塩(A)や前記金属錯体(D)として中心金属がマンガン又は鉄であるものを用いることが好ましい。また、前述の通り、前記金属塩(A)や前記金属錯体(D)は複数種併用してもよい。前記前記金属塩(A)や前記金属錯体(D)として中心金属がマンガン又は鉄であるものを必須の成分とする場合、硬化促進剤としての性能が更に向上することから、更に、中心金属がビスマス、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウムの何れかである金属塩或いは金属錯体を併用することが好ましい。これらのうち、中心金属がビスマス、ジルコニウム、又はバリウムの何れか一種類以上であるものを用いる場合、その添加量は、中心金属がマンガン又は鉄である金属塩或いは金属錯体中の金属1質量部に対して、その他の金属塩或いは金属錯体中の金属量が1〜100質量部となる割合で用いることが好ましく、3〜40質量部となる割合で用いることがより好ましい。また、中心金属がカルシウム又はストロンチウムの何れか一種類以上であるものを用いる場合、その添加量は、中心金属がマンガン又は鉄である金属塩或いは金属錯体中の金属1質量部に対して、その他の金属塩或いは金属錯体中の金属量が1〜100質量部となる割合で用いることが好ましい。
【0022】
前記イミダゾール化合物(B)は、例えば、下記構造式(B−1)で表される化合物等が挙げられる。
【0023】
【化2】
(式中R
1はそれぞれ独立に水素、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭化水素オキシカルボニル基の何れかである。)
【0024】
前記イミダゾール化合物(B)の添加量は、前記金属塩(A)に対し0.5〜100質量部の範囲であることが好ましく、1〜30質量部の範囲であることがより好ましい。前記金属塩(A)と配位子化合物(C)とを併用する場合には、これらの合計に対し0.5〜50質量部の範囲であることが好ましく、1〜20質量部の範囲で用いることがより好ましい。前記金属錯体(D)を用いる場合には、金属錯体(D)に対し0.5〜100質量部の範囲であることが好ましく、1〜30質量部の範囲であることがより好ましい。
【0025】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤と、酸化重合型不飽和樹脂とを必須の成分とし、有機溶媒や各種の添加剤などを含有していても良い。ここで用いる酸化重合型不飽和樹脂は、分子構造中に不飽和結合を有し、空気中の酸素により不飽和結合が酸化重合し得るものであれば、どのような樹脂でも良い。具体的には、印刷インキ用であればロジン変性フェノール樹脂、不飽和基含有ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、石油樹脂、重合油等が挙げられる。また、塗料用であればアルキッド樹脂、不飽和基含有ウレタン樹脂、不飽和基含有エポキシ樹脂、不飽和基含有ポリエステル樹脂、重合油等が挙げられる。これら酸化重合型不飽和樹脂はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0026】
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、どのように製造してもよい。即ち、硬化性樹脂組成物中の各成分を全て一括で配合する方法で製造してもよいし、一部を予め配合しておき、更にその他の成分を配合する方法で製造してもよい。一例として、例えば、前記金属塩(A)や前記金属錯体(D)と前記イミダゾール化合物(B)とを予め配合して酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤を製造し、これを酸化重合型不飽和樹脂及びその他の成分と配合する方法や、前記金属塩(A)又は前記金属錯体(D)、イミダゾール化合物(B)及び酸化重合型不飽和樹脂を一括で配合する方法が挙げられる。前記金属塩(A)と前記配位子化合物(C)及び前記イミダゾール化合物(B)を予め配合して酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤を製造し、これを酸化重合型不飽和樹脂及びその他の成分と配合する方法や、前記金属塩(A)と前記配位子化合物(C)とを予め配合した後に、前記イミダゾール化合物(B)や酸化重合型不飽和樹脂、その他の成分を配合する方法、前記金属塩(A)、前記配位子化合物(C)、前記イミダゾール化合物(B)、酸化重合型不飽和樹脂及びその他の成分を一括で配合する方法等が挙げられる。
【0027】
本発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤を印刷インキ用途に用いる場合について説明する。印刷インキは、前記酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤及び酸化重合型不飽和樹脂の他、顔料又は染料、ゲル化剤、表面改質剤、乾燥抑制剤、植物油や各種の有機溶剤等を含有する。これら各成分の配合割合や、配合物の種類は印刷方式によって適宜調整される。本願発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤は、平版オフセットインキ、平版水なしインキ、凸版インキ等、いずれの方式の印刷インキにも好適に用いることができる。
【0028】
印刷インキ中の前記酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤の配合量は、乾燥時間が短く、かつ、皮張りし難いインキとなることから、印刷インキ100質量部中0.001〜5質量部の範囲が好ましい。
【0029】
前記顔料は、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。本発明においては無機顔料を用いることもでき、例えば、酸化チタン、クラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料の他、炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー(ChinaClay)、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどがあげられる。これら顔料の配合量は、目的とする印刷インキの種類によっても異なるが、通常、印刷インキ100質量部中5〜55質量部の範囲であることが好ましい。
【0030】
前記ゲル化剤は、印刷インキ用の粘弾性を調整する目的で用いるものであり、例えば、有機アルミニウム化合物、有機チタネート化合物、有機亜鉛化合物、有機力ルシウム化合物等が挙げられる。ゲル化剤は一種類を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。なかでも有機アルミニウム化合物が好ましく、有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート化合物が挙げられる。また、前記アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムジイソプロポキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジ−sec−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセトナート)、アルミニウムモノ−アセチルアセトナートビス(エチルアセトアセトナート)等が挙げられる。前記ゲル化剤の添加量は目的とする印刷インキの種類によっても異なるが、通常、印刷インキ100質量部中0.1〜5質部の範囲で用いる。
【0031】
前記表面改質剤は、インキ塗膜の耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性、スリキズ防止性等を向上させる目的で添加されるものであり、例えば、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の天然ワックス;フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、シリコーン化合物等の合成ワックス等が挙げられる。表面改質剤の配合量は目的とする印刷インキの種類によっても異なるが、通常、印刷インキ100質量部中0.1〜7.0質量部の範囲であることが好ましい。
【0032】
前記乾燥抑制剤は、印刷インキの保存安定性を向上させ、皮張りを抑制する目的で添加されるものであり、例えば、ハイドロキノン、メトキノン、tert−ブチルハイドロキノン等が挙げられる。乾燥抑制剤の配合量は、目的とする印刷インキの種類によっても異なるが、通常、印刷インキ100質量部中0.01〜5質量部の範囲で用いる。
【0033】
前記植物油は、例えば、亜麻仁油、桐油、米油、サフラワー油、大豆油、トール油、菜種油、パーム油、ひまし油、やし油脂等の植物油、および、これら植物油を食品加工用等に使用した後に再生処理した再生植物油の他、アマニ油脂肪酸メチル、大豆油脂肪酸メチル、アマニ油脂肪酸エチル、大豆油脂肪酸エチル、アマニ油脂肪酸プロピル、大豆油脂肪酸プロピル、アマニ油脂肪酸ブチル、大豆油脂肪酸ブチルなどといった前記植物油脂肪酸のモノエステルなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、乾燥性に優れる印刷インキ用となることから亜麻仁油、桐油、大豆油等の分子中に不飽和結合を有する植物油が好ましく、環境に対する負荷が小さいことから大豆油及びその再生油がより好ましい。
【0034】
前記有機溶剤は、例えば、JX社製「1号スピンドル油」、「3号ソルベント」、「4号ソルベント」、「5号ソルベント」、「6号ソルベント」、「ナフテゾールH」、「アルケン56NT」、三菱化学(株)製「ダイヤドール13」、「ダイヤレン168」;日産化学(株)製「Fオキソコール」、「Fオキソコール180」;JX社製「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」「AFソルベント6号」「AFソルベント7号」、ISU社製DSOL溶剤、「ソルベントH」;ISU(株)製「N−パラフィンC14−C18」;出光興産(株)「スーパーゾルLA35」、「スーパーゾルLA38」;エクソン化学(株)の「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD120」、「エクソールD130」、「エクソールD160」、「エクソールD100K」、「エクソールD120K」、「エクソールD130K」、「エクソールD280」、「エクソールD300」、「エクソールD320」;マギーブラザーズ社製の「マギーソル−40」、「マギーソル−44」、「マギーソル−47」、「マギーソル−52」、「マギーソル−60」等が挙げられる。
【0035】
前記植物油や有機溶剤の添加は、目的とする印刷インキの種類によっても異なるが、通常、印刷インキ100質量部中20〜80質量部の範囲で用いる。
【0036】
印刷インキを製造する方法は、例えば、前記酸化重合型不飽和樹脂、顔料、植物油、有機溶剤、各種添加剤等の配合物を三本錬肉ロール等の錬肉機で錬肉する方法が挙げられる。本発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤は、この錬肉時に添加しても良いし、錬肉後に添加しても良い。
【0037】
本発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤を塗料用途に用いる場合について説明する。塗料は、前記酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤及び酸化重合型不飽和樹脂の他、顔料、顔料分散剤、乾燥抑制剤、表面調整剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、植物油や各種の有機溶剤等を含有する。これら各成分の配合割合や、配合物の種類は塗料の用途や所望の性能によって適宜調整される。
【0038】
塗料中の前記酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤の配合量は、乾燥時間が短く、かつ、皮張りし難い塗料となることから、塗料100質量部中0.001〜5質量部の範囲が好ましい。
【0039】
塗料用途に用いる場合の酸化重合型不飽和樹脂は、前述の通り、アルキッド樹脂、不飽和基含有ウレタン樹脂、不飽和基含有エポキシ樹脂等が挙げられる。このうち特に汎用性の高いアルキッド樹脂は、多塩基酸化合物、多価アルコール化合物及び油脂肪酸を主たる原料成分とするポリエステル樹脂の一種である。
【0040】
上記多塩基酸化合物は、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸等の二塩基酸;及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられる。更に必要に応じて、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸等の3価以上の多塩基酸;スルホフタル酸、スルホイソフタル酸及びこれらのアンモニウム塩、ナトリウム塩や低級アルキルエステル化物等を使用することができる。また、酸成分として、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸等の一塩基酸を分子量調整等の目的で併用することができる。
【0041】
前記多価アルコール化合物は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の二価アルコールが挙げられる。更に必要に応じて、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール;ポリオキシエチレン基を有する多価アルコール等を併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。また、前記酸成分、アルコール成分の一部をジメチロールプロピオン酸、オキシピバリン酸、パラオキシ安息香酸等;これらの酸の低級アルキルエステル;ε−カプロラクトン等のラクトン類等のオキシ酸成分に置き換えることもできる。
【0042】
前記油脂肪酸は、例えば、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸等を挙げることができる。
【0043】
これらのほか、原料の一部にエポキシ化合物を用いたエポキシ変性アルキッド樹脂、スチレンや(メタ)アクリル酸エステル等のビニルモノマーをグラフト重合させたビニル変性アルキッド樹脂等も使用することができる。更に、資源のリサイクルのために回収されたポリエチレンテレフタレート(例えば、PETボトル)、産業廃棄物ポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸を主原料とするポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル製品(フィルム、繊維、自動車部品、電子部品等)の製造に際して発生する屑等から再生されたテレフタル酸を主原料とするポリエステル樹脂(以下、「再生PES」と略す。)を利用して、上述のアルコール成分と多塩基酸成分との混合物中に、この再生PESを溶解させ、解重合するとともに、エステル化反応させることにより得られる再生PES変性アルキッド樹脂も使用することができる。
【0044】
前記顔料は、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダンスロン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾロン系、ペリレン系、ペリノン系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラピリジン系、ジオキサジン系などの有機顔料等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。これら顔料の配合量は、塗料の用途や所望の性能によって異なるが、通常、塗料100質量部中20〜70質量部の範囲であることが好ましい。
【0045】
前記乾燥抑制剤は、塗料の保存安定性を向上させ、皮張りを抑制する目的で添加されるものであり、例えば、ハイドロキノン、メトキノン、tert−ブチルハイドロキノン等が挙げられる。乾燥抑制剤の配合量は、塗料の用途や所望の性能によって異なるが、通常、塗料100質量部中0.01〜5質量部の範囲で用いる。
【0046】
前記有機溶剤は、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、プロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール等のエーテル系溶媒の他、JX社製「1号スピンドル油」、「3号ソルベント」、「4号ソルベント」、「5号ソルベント」、「6号ソルベント」、「ナフテゾールH」、「アルケン56NT」、三菱化学(株)製「ダイヤドール13」、「ダイヤレン168」;日産化学(株)製「Fオキソコール」、「Fオキソコール180」;JX社製「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」「AFソルベント6号」「AFソルベント7号」、ISU社製DSOL溶剤、「ソルベントH」;ISU(株)製「N−パラフィンC14−C18」;出光興産(株)「スーパーゾルLA35」、「スーパーゾルLA38」;エクソン化学(株)の「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD120」、「エクソールD130」、「エクソールD160」、「エクソールD100K」、「エクソールD120K」、「エクソールD130K」、「エクソールD280」、「エクソールD300」、「エクソールD320」;マギーブラザーズ社製の「マギーソル−40」、「マギーソル−44」、「マギーソル−47」、「マギーソル−52」、「マギーソル−60」等が挙げられる。有機溶剤の添加は、塗料の用途や所望の性能によって異なるが、通常、塗料100質量部中20〜80質量部の範囲で用いる。
【0047】
塗料を製造する方法は、例えば、前記酸化重合型不飽和樹脂、顔料、有機溶剤、各種添加剤等の配合物をペイントシェーカー等の各種のミキサーで混合する方法が挙げられる。本発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤は、この混合時に添加しても良いし、混合後に添加しても良い。
【0048】
本発明の塗料は常法により被塗物に塗布、乾燥・硬化させることにより塗膜を得ることができる。ここで、本発明の塗料を塗工することが可能な基材(被塗物)としては、例えば、鉄鋼等が挙げられる。また、塗布後の乾燥条件(硬化条件)としては常乾が挙げられる。更に、本発明の塗料は塗膜を厚くしても優れた硬化性を発現させることができることから、厚塗り用塗料としてとりわけ有用であり、具体的には、硬化塗膜の膜厚を1〜500μmの範囲とすることができる。従って、本発明の塗料は建築用塗料として有用である。
【実施例】
【0049】
以下に具体的な例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。例中、特に断りのない限り「部」、「%」は質量基準である。
【0050】
製造例1〜3 金属塩(A)と配位子化合物(C)とを含有する組成物の製造
表1に示す割合で、各種金属塩と配位子化合物とを配合し、組成物(1)〜(4)を製造した。
表1中で用いた各成分の詳細は以下の通り。
・ネオデカン酸マンガン溶液:DIC株式会社製「Mn−NEODECANOATE 6.5%」、マンガン含有量6.5質量%のベンジルアルコール溶液
・オクチル酸鉄溶液:DIC株式会社製「Fe−OCTOATE6%」、鉄含有量6質量%のベンジルアルコール溶液
・8−キノリノール:東京化成工業株式会社製「8−Quinolinol」
・N,N’−ビスサリチリデン−1,2−プロパンジアミン:東京化成工業株式会社製「N,N’−Bis(2−hydroxybenzylidene)−1,2−propanediamine」
・2−[[(2−ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール:東京化成工業株式会社製「2−[[(2−Dimethylamino)ethyl]methylamino]ethanol」
・1−メチルイミダゾール:東京化成工業株式会社製「1−Methylimidazole」
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1〜5及び比較例1、2 塗料の製造及び評価
下記表2に示す割合で各成分を配合し、塗料(1)〜(5)、(1’)、(2’)を製造した。得られた塗料について下記要領で硬化性の評価を行った。結果を表2に示す。なお、ベース塗料は以下の要領で製造した。
表2中で用いた各成分の詳細は以下の通り。
・皮張防止剤:宇部興産株式会社製「メチルエチルケトオキシム」
・ネオデカン酸マンガン溶液:DIC株式会社製「Mn−NEODECANOATE 6.5%」、マンガン含有量6.5質量%のベンジルアルコール溶液
・オクチル酸コバルト溶液:DIC株式会社製「DICNATE210SB」、コバルト含有量10質量%の大豆油溶液
・1−メチルイミダゾール:東京化成工業株式会社製「1−Methylimidazole」
・ジルコニウム石鹸:DIC株式会社製「12% Zr−OCTOATE」、ジルコニウム含有量12質量%のミネラルスピリット溶液
【0053】
製造例4 ベース塗料の製造
チタンホワイト顔料(ケマーズ株式会社製「Ti−Pure R−960」)100質量部、炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社製「NS#100」)40質量部、アルキッド樹脂(DIC株式会社製「アルキディアP−470−70」)240質量部、ミネラルスピリット(JX日鉱日石エネルギー株式会社製「ミネラルスピリットA」)20質量部をペイントシェーカーにて混練し、ベース塗料を得た。
【0054】
塗料の硬化性評価
恒温恒湿室(23±2℃、50±5%RH)内で試験を行った。先で得た塗料をガラス板上に76μmのアプリケーターで塗布した。塗布後、塗料が完全に乾燥し、ドライングタイムレコーダー(太佑機材株式会社製「型式No.404」)の針によりつけられるキズが見られなくなるまでの時間を測定した。
【0055】
【表2】
【0056】
実施例6〜8 印刷インキの製造及び評価
下記表3に示す割合で各成分を配合し、印刷インキ(1)〜(3)を製造した。得られた印刷インキについて下記要領で硬化性の評価を行った。結果を表3に示す。なお、ベースインキは以下の要領で製造した。
【0057】
製造例4 ベースインキの製造
ロジン変性フェノール樹脂(DIC株式会社製「BECKACITE F−7310」)100質量部、大豆油(日清オイリオグループ株式会社製「大豆サラダ油(S)」)100質量部を210℃で1時間加熱した後、有機溶剤(JX日鉱日石エネルギー株式会社製「AFソルベント6号」)47.5質量部、アルミニウムキレート(ホープ製薬株式会社製「ケロープ(S)」)2.5質量部を加え、150℃で1時間加熱し、印刷インキ用ワニスを調製した。
先で得た印刷インキ用ワニス100質量部、フタロシアニンブルー顔料(DIC株式会社製「FASTOGEN BLUE TGR−L」)20質量部、大豆油(日清オイリオグループ株式会社製「大豆サラダ油(S)」)25質量部、有機溶剤(JX日鉱日石エネルギー株式会社製「AFソルベント6号」)25質量部を三本ロールミルで混練し、ベースインキを得た。
【0058】
印刷インキの硬化性評価
恒温恒湿室(23±2℃、50±5%RH)内で試験を行った。先で得た印刷インキをガラス板上に38μmのアプリケーターで塗布した。塗布後、インキが完全に乾燥し、ドライングタイムレコーダー(太佑機材株式会社製「型式No.404」)の針によりつけられるキズが見られなくなるまでの時間を測定した。
【0059】
【表3】