(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオール(a1)、ポリイソシアネート(a2)及び鎖伸長剤(a3)を含む組成物から形成され末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(A)並びに有機溶剤(B)を含む主剤(i)と、硬化剤(ii)とを含む熱硬化型ウレタン樹脂組成物であって、
前記ポリオール(a1)が、芳香環を含まないポリオール(a1−1)を含むものであり、
前記芳香環を含まないポリオール(a1−1)が、25℃において液状のポリカーボネートポリオールと、25℃において固体状のポリカーボネートポリオールとを含むものであり、
前記ポリイソシアネート(a2)が、芳香環を含まないポリイソシアネート(a2−1)を含むものであり、
前記鎖伸長剤(a3)が、分子量500以下のトリオールを含むものであり、
前記硬化剤(ii)が、トリイソシアネートを含むものであり、
前記熱硬化型ウレタン樹脂組成物中、前記分子量500以下のトリオールと前記トリイソシアネートとの合計の含有率が、10質量%以上35質量%以下であることを特徴とする熱硬化型ウレタン樹脂組成物。
前記熱硬化型ウレタン樹脂組成物中、前記25℃において液状のポリカーボネートポリオールの含有率が、25質量%以上50質量%以下である請求項1記載の熱硬化型ウレタン樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の熱硬化型ウレタン樹脂組成物は、ポリオール(a1)、ポリイソシアネート(a2)及び鎖伸長剤(a3)を含む組成物から形成されるウレタンプレポリマー(A)並びに有機溶剤(B)を含む主剤(i)と、硬化剤(ii)とを含む。なお本発明でいう「主剤」とは、組成物の合計量に対して、50質量%を超える組成を云う。換言すれば、前記硬化剤(ii)の含有率は、本発明の熱硬化型ウレタン樹脂組成物において、50質量%未満である。
【0014】
前記ウレタンプレポリマー(A)は、分子末端に水酸基を有するものであり、特に、芳香環を含まないものであることが好ましい。前記ウレタンプレポリマー(A)は、ポリオール(a1)及び鎖伸長剤(a3)の全部とポリイソシアネート(a2)を一度に混合して得られたものであってもよく、ポリオール(a1)及び鎖伸長剤(a3)の少なくとも一部とポリイソシアネート(a2)とを混合した後、得られた予備プレポリマーとポリオール(a1)及び鎖伸長剤(a3)の残部とを混合して得られたものであってもよい。特に、ポリオール(a1)の少なくとも一部(好ましくは後述する固体状ポリカーボネートポリオール)及び鎖伸長剤(a3)とポリイソシアネート(a2)とを混合した後、得られた予備プレポリマーとポリオール(a1)の残部(好ましくは後述する液状ポリカーボネートポリオール)とを混合して得られたものであることが好ましい。前記ウレタンプレポリマー(A)及び前記予備プレポリマーは、未反応のポリオール(a1)及び/又はポリイソシアネート(a2)を含んでいてもよい。
【0015】
前記ポリオール(a1)は、芳香環を含まないポリオール(a1−1)を含み、前記芳香環を含まないポリオール(a1−1)は、芳香環を含まないポリカーボネートポリオールを含む。
【0016】
前記芳香環を含まないポリカーボネートポリオールとしては、脂肪族ポリカーボネートポリオール、脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(以下、脂環式構造を有するものであることを、単に「脂環式」という場合がある。)が挙げられ、脂肪族ポリカーボネートポリオールが好ましい。前記脂肪族又は脂環式ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸及び脂肪族又は脂環式炭酸エステルと、脂肪族又は脂環式多価アルコールとをエステル化反応させて得られるものが挙げられる。前記脂肪族又は脂環式炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート等が挙げられる。また、前記脂肪族又は脂環式多価アルコールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのポリカーボネートポリオールは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
前記芳香環を含まないポリカーボネートポリオールは、25℃において液状のポリカーボネートポリオール(以下、単に「液状ポリカーボネートポリオール」という場合がある。)及び25℃において固体状のポリカーボネートポリオール(以下、単に「固体状ポリカーボネートポリオール」という場合がある。)の両方を含む。
【0018】
前記液状ポリカーボネートポリオールは、25℃において液状であればよく、非晶性又は結晶性ポリカーボネートポリオールであってもよく、非晶性ポリカーボネートポリオールであることが好ましい。前記液状ポリカーボネートポリオールに含まれる水酸基の数は、2であることが好ましい。
【0019】
前記液状ポリカーボネートポリオールの粘度は、室温(25℃)において、好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは7,000mPa・s以下、さらに好ましくは5,000mPa・s以下であり、例えば100mPa・s以上、好ましくは500mPa・s以上である。
【0020】
前記液状ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、好ましくは500超、より好ましくは600以上、さらに好ましくは700以上であり、好ましくは2,000未満、より好ましくは1,800以下、さらに好ましくは1,500以下である。
【0021】
前記液状ポリカーボネートポリオールのガラス転移温度は、好ましくは−100℃以上、より好ましくは−90℃以上、さらに好ましくは−80℃以上、特に好ましくは−75℃以上であり、好ましくは−5℃以下、より好ましくは−15℃以下、さらに好ましくは−25℃以下、特に好ましくは−35℃以下である。
【0022】
前記液状ポリカーボネートポリオールの含有量は、熱硬化型ウレタン樹脂組成物中(前記熱硬化型ウレタン樹脂組成物を形成する成分中)、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0023】
前記固体状ポリカーボネートポリオールは、25℃において固体状のポリカーボネートポリオールを意味し、結晶化温度が25℃超の結晶性ポリカーボネートポリオールであればよい。前記固体状ポリカーボネートポリオールに含まれる水酸基の数は、2であることが好ましい。
【0024】
前記固体状ポリカーボネートポリオールの結晶化温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、さらに好ましくは40℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。
【0025】
前記芳香環を含まないポリカーボネートポリオールにおいて、液状ポリカーボネートポリオールの含有率は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。液状ポリカーボネートポリオールの含有率が前記範囲にあることで、自己修復性、防汚性及び伸度を良好なものとしやすくなる。
【0026】
前記芳香環を含まないポリカーボネートポリオールの含有率は、前記ポリオール(a1)の合計中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりいっそう好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0027】
また、前記芳香環を含まないポリオール(a1−1)としては、必要に応じて、芳香環を含まないポリエステルポリオール、芳香環を含まないポリエーテルポリオール等の他の芳香環を含まないポリオール(好ましくは脂肪族又は脂環式ポリオール)を併せて用いることができる。
【0028】
前記芳香環を含まないポリエステルポリオールとしては、脂肪族又は脂環式ポリエステルポリオールが挙げられ、脂肪族ポリエステルポリオールが好ましい。前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールと、ポリカルボン酸とを反応して得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;これらを共重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。これらのポリエステルポリオールは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
前記低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ポリオールが挙げられる。
【0030】
前記ポリカルボン酸としては、芳香環を有しないものを用いることができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ポリカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環式ポリカルボン酸などが挙げられる。
【0031】
前記芳香環を含まないポリエーテルポリオールとしては、脂肪族又は脂環式ポリエーテルポリオールが挙げられ、脂肪族ポリエーテルポリオールが好ましい。前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランの開環重合により得られるポリテトラメチレングリコールが挙げられる。また、活性水素原子を2つ以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものが挙げられる。前記活性水素原子を2つ以上有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、水、ヘキサントリオール等が挙げられる。また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
前記ポリオール(a1)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、芳香環を含むポリオール(a1−2)を含んでいてもよい。芳香環を含むポリオール(a1−2)の含有率は、前記ポリオール(a1)中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりいっそう好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下であり、下限は0質量%である。
【0033】
前記ポリオール(a1)の数平均分子量は、好ましくは500超、より好ましくは600以上、さらに好ましくは700以上であり、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下、さらに好ましくは4,000以下である。
本明細書において、ポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)により、ポリスチレンを標準試料として用いて得られる換算値を表す。
【0034】
前記芳香環を有しないポリイソシアネート(a2)としては、例えば、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。これらの中でも、得られる塗膜の自己修復性、防汚性、伸度の観点からヘキサメチレンジイソシアネートを用いることが好ましい。また、これらのポリイソシアネート(a2)は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
前記鎖伸長剤(a3)は、分子量500以下の低分子量トリオールを含む。前記低分子量トリオールの分子量は、好ましくは300以下、より好ましくは250以下である。前記鎖伸長剤(a3)の分子量は、化学式に基づいて算出することができる。
【0036】
前記低分子量トリオールは、水酸基を3つ有するものであり、例えば、グリセリン;トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等の3つのメチロール基(ヒドロキシメチル基)が炭素原子数1〜4の直鎖状アルカンの末端の炭素原子に結合した化合物;1,2,5−ヘキサントリオール;トリメチロールプロパンのオキシアルキレン付加物(炭素原子数2〜4、好ましくはオキシエチレン付加物)等が挙げられる。これらの低分子量トリオールは、1種又は2種以上を用いることができる。また、前記トリメチロールプロパンのオキシアルキレン付加物(好ましくはオキシエチレン付加物)において、オキシアルキレン(好ましくはオキシエチレン)の付加モル数は、特に限定しないが、トリメチロールプロパン1分子に対して、6モル以下であるのが好ましい。これらの中でも、得られる塗膜の自己修復性、防汚性、伸度の観点から、3つのメチロール基(ヒドロキシメチル基)が炭素原子数1〜4の直鎖状アルカンの末端の炭素原子に結合した化合物が好ましく、トリメチロールプロパンがより好ましい。
【0037】
前記鎖伸長剤(a3)としては、前記低分子量トリオール以外に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂肪族環式構造を有するポリオールを併用することができる。
【0038】
前記鎖伸長剤(a3)の分子量は、好ましくは500以下、より好ましくは300以下、さらに好ましくは250以下である。
【0039】
前記鎖伸長剤(a3)において、前記低分子量トリオールの含有率は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0040】
前記鎖伸長剤(a3)の含有量は、前記ウレタンプレポリマーの全量100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは36質量部以下である。
【0041】
前記ウレタンプレポリマー(A)の水酸基当量は、得られる塗膜の自己修復性、防汚性、伸度の観点から、好ましくは400g/eq.以上、より好ましくは450g/eq.以上であり、好ましくは4000g/eq.以下、より好ましくは3000g/eq.以下である。
【0042】
本発明の熱硬化型ウレタン樹脂組成物は、前記ウレタンプレポリマー(A)以外のウレタンプレポリマーを含んでいてもよい。本発明の熱硬化型ウレタン樹脂組成物において、ウレタンプレポリマー全量中のウレタンプレポリマー(A)の含有率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0043】
前記ウレタンプレポリマー(A)の含有率は、熱硬化型ウレタン樹脂組成物の不揮発分中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは96質量%以下である。前記熱硬化型ウレタン樹脂組成物の不揮発分は、前記熱硬化型ウレタン樹脂組成物の総量から有機溶剤を除いたものを意味するものとする。
【0044】
前記有機溶剤(B)としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0045】
前記有機溶剤(B)の含有率は、熱硬化型ウレタン樹脂組成物中(前記熱硬化型ウレタン樹脂組成物を形成する成分中)、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
【0046】
前記硬化剤(ii)は、トリイソシアネートを含む。前記トリイソシアネートは、主剤(i)中のウレタンプレポリマー(A)が有する水酸基と反応し得る。
【0047】
前記トリイソシアネートは、イソシアネート基を3つ有する化合物であり、例えば、ジイソシアネートのイソシアヌレート体、ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体等が挙げられ、ジイソシアネートのイソシアヌレート体が好ましい。前記ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。これらの中でも、得られる塗膜の自己修復性、防汚性、伸度の観点から、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体がより好ましい。これらのイソシアネート化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0048】
また、前記硬化剤(ii)としては、必要に応じて、前記トリイソシアネート以外のその他のイソシアネート化合物を併用することができる。
【0049】
前記その他のイソシアネート化合物としては、例えば、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式構造を有するポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
前記硬化剤(ii)において、前記トリイソシアネートの含有率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0051】
前記硬化剤(ii)の含有率は、熱硬化型ウレタン樹脂組成物中(前記熱硬化型ウレタン樹脂組成物を形成する成分中)、50質量%未満であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下であり、下限は、例えば0.1質量%である。
【0052】
本発明の熱硬化型ウレタン樹脂組成物は、例えば、前記主剤(i)と、前記硬化剤(ii)とを、二液混合注型機の別々のタンクに仕込み、前記主剤(i)と前記硬化剤(ii)を常温でそれぞれを混合注型機で混合することで製造することができる。
【0053】
前記主剤(i)の水酸基(OH)に対する前記硬化剤(ii)のイソシアネート基(NCO)の当量比(NCO/OH)は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。前記当量比が前記範囲にあることで、得られる塗膜の伸度を良好なものとしやすくなる。
【0054】
前記低分子量トリオールと前記トリイソシアネートとの合計の含有率は、熱硬化型ウレタン樹脂組成物中(前記熱硬化型ウレタン樹脂組成物を形成する成分中)、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。前記範囲にあることで、得られる塗膜の自己修復性、防汚性及び伸度を良好なものとしやすくなる。
【0055】
また、本発明の熱硬化型ウレタン樹脂組成物は、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じて添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、粘着付与剤、レベリング剤、触媒、可塑剤、安定剤、充填材、顔料、染料、難燃剤等が挙げられる。
【0056】
前記粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、水添ロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、水添テルペン系樹脂や、石油樹脂としてC5系の脂肪族樹脂、C9系の芳香族樹脂、およびC5系とC9系の共重合樹脂等を使用することができる。
【0057】
前記レベリング剤としては、シリコーン系化合物、アセチレンジオール系化合物、フッ素系化合物などが挙げられる。
【0058】
前記触媒としては、例えば、三級アミン触媒、有機金属系触媒等が挙げられる。
【0059】
前記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、トリオクチルホスフェート、エポキシ系可塑剤、トルエン−スルホアミド、クロロパラフィン、アジピン酸エステル、ヒマシ油等を使用することができる。メチルアシッドホスフェート(AP−1)、アクリル系表面調整剤(BYK−361N)などが挙げられる。
【0060】
前記安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0061】
前記充填材としては、例えば、ケイ酸誘導体、タルク、金属粉、炭酸カルシウム、クレー、カーボンブラック等が挙げられる。
【0062】
本発明のフィルムは、基材上に前記熱硬化型ウレタン樹脂組成物の硬化塗膜を有する。
【0063】
前記基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ウレタン(TPU)、熱硬化性ウレタン(TSU)等が挙げられる。
【0064】
本発明のフィルムを製造する方法としては、例えば、基材表面に前記熱硬化型ウレタン樹脂組成物を、カーテンフローコーター法やダイコーター法等のスリットコーター法、ナイフコーター法、ロールコーター法などによって塗工し、必要に応じて乾燥させた後、加熱し硬化させる方法が挙げられる。前記乾燥は、常温下で自然乾燥でもよいが、加熱乾燥させることもできる。前記加熱乾燥は、通常、40〜250℃で、1〜1000秒程度の時間で行うことが好ましい。また、二次硬化工程として、40〜100℃で1〜24時間程度の加熱乾燥をしてもよい。
【0065】
本発明の熱硬化型ウレタン樹脂組成物は、例えば、自動車、家電製品、携帯電話、OA機器や、自動車の部品等に使用される亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金鋼板等のめっき鋼板、アルミ板、アルミ合金板、電磁鋼板、銅板、ステンレス鋼板等の金属基材などの用途に好適に使用できる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
【0067】
(調製例1:主剤(1)の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた1リットル4つ口丸底フラスコに、メチルエチルケトン100重量部、酢酸エチル100重量部、あらかじめ50℃に加温して融解しておいた固体状ポリカーボネートジオール(エタナコール UH−200、宇部興産製)50重量部、トリメチロールプロパン5重量部を入れ攪拌した。ついで、ヘキサメチレンジイソシアネートを13質量部、ジブチル錫ジラウレート0.02重量部加えた。発熱に注意しながら内温を70℃に上昇させた後、温度を保ちながら攪拌し、さらに、液状ポリカーボネートジオール(デュラノールG3452、旭化成株式会社製)50質量部を加えて、撹拌を継続した。70℃に昇温後の撹拌継続時間は4時間であった。水酸基当量が2205であり、分子末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーを含む主剤(i)を得た。
【0068】
(調整例2〜12:主剤(ii)〜(xii)の調製)
使用するポリオールとポリイソシアネート、架橋剤の種類及び量、得られるプレポリマーの水酸基の当量重量を表1〜2に示すように変更した以外は調製例1と同様にして分子末端に水酸基を有する主剤(ii)〜(xii)を得た。
表中、エタナコール UM−90は、液状ポリカーボネートジオール(エタナコール UM−90、宇部興産製)を表し、水添MDIは水添ジフェニルメタンジイソシアネートを表す。
【0069】
[主剤の低温溶液安定性]
得られた主剤を0℃に温調した部屋に3日間静置し、外観を目視で確認し、樹脂の白濁、沈降がなく溶液がクリアな状態であるものを優れると評価した。
【0070】
(実施例1:硬化剤の製造)
調製例1で得られた主剤(i)100重量部と、ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートヌレート体、バーノック 902S、DIC製)2.9重量部、レベリング剤(シルクリーン3700、ビックケミージャパン製)0.3重量部を混合してウレタン樹脂塗工液としての熱硬化型ウレタン樹脂組成物を得た。前記塗工液を離型処理の施されたポリエチレンテレフタラートフィルムへナイフコーターにより厚さ30μmで塗工し、更にオーブン中で110℃×2分間加熱し一次硬化させ、所定のフィルムを得た。
【0071】
(実施例2〜6、比較例1〜6)
使用する主剤とポリイソシアネートの種類及び量、表1〜2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして所定のフィルムを得た。
表中、デズモジュールWは、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを表す。
【0072】
表1〜2に、主剤(i)〜(xii)に含まれるウレタンプレポリマーの水酸基当量、熱硬化型ウレタン樹脂組成物(前記熱硬化型ウレタン樹脂組成物を形成する成分)における液状ポリカーボネートポリオールの含有率、分子量500以下のトリオールと前記トリイソシアネートとの合計の含有率を示す。
【0073】
上記の実施例及び比較例で得られたフィルムを用いて、下記の評価を行った。
【0074】
[塗工性の評価方法]
加熱硬化させて作製したフィルム表面を目視で観察し、ハジキや凹凸などがなく平坦であるものを○、ハジキや凹凸がありコーティング材として実用上使用できないものを×と評価した。
【0075】
[タックの評価方法]
ベタツキがないものを○、ベタツキがないものを×と評価した ×:ベタツキがある。。
【0076】
[防汚性の評価方法]
前記フィルムにマジック(PENTEL PEN、黒、中字)で線を書き込み、ティッシュペーパーで拭き取った際の拭き取りやすさを以下のように評価した
◎:5回の拭き取りでマジックが完全に除去される
〇:10回の拭き取りでマジックが完全に除去される
△:10回の拭き取りでマジックは一部除去されない。
×:10回の拭き取りでマジックはほとんど除去されない
【0077】
[自己修復性の評価方法]
前記フィルムに真鍮ブラシを500g荷重で塗膜に押し当て、10往復移動させた後、目視で傷の有無を確認し、以下のように評価した。
◎:1分以内で傷が回復
〇:10分以内で傷が回復
△:1時間以内で傷が回復
×:1時間を経過しても傷が回復しない
【0078】
[伸度の評価方法]
前記フィルムを幅1cm長さ5cmの短冊状に切り取り、株式会社島津製作所製「オートグラフAG−I」を用いてフィルムを引っ張り、伸び率(伸度)を測定した。
◎:200%以上
〇:100%以上200%未満
△:150%以上180%未満
×:100%未満
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
実施例1〜6は、本願発明の熱硬化型ウレタン樹脂組成物から形成されたフィルムであり、自己修復性、防汚性を有し、かつ、伸度が良好であった。
【0082】
比較例1、4は、低分子量トリオールとトリイソシアネートとの合計の含有率が低く、比較例2は、低分子量トリオールとトリイソシアネートとの合計の含有率が高く、比較例3は、液状ポリカーボネートポリオールを含まず、比較例4は、架橋剤としてのトリイソシアネートを含まず、比較例5は、鎖伸長剤としてトリオールを含まず、比較例6は、固体状ポリカーボネートポリオールを含まず、いずれも自己修復性、防汚性及び伸度を両立し得ないものであった。