(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(顔料組成物)
一実施形態に係る顔料組成物は、キノフタロン化合物と、アルミニウムフタロシアニン化合物とを含有する。
【0013】
キノフタロン化合物は、下記式(1)で表される。
【化4】
式(1)中、X
1〜X
16は各々独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Y
1及びY
2は各々独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Zは炭素数1〜3のアルキレン基である。
【0014】
上記キノフタロン化合物は、キノフタロン骨格の二量化により、選択的な吸収・透過を示す。また、上記キノフタロン化合物は、連結基Zをスペーサーとしてキノフタロン骨格を二量化しており、これにより共役が切断され、過剰な赤味化が抑制されている。更に、上記キノフタロン化合物では、イミド構造の導入により分散性が向上されている。これらのことから、上記キノフタロン化合物によれば、アルミニウムフタロシアニン化合物(顔料)と組み合わせたときに優れた輝度と着色力とを示す顔料が得られる。具体的には、例えば、上記キノフタロン化合物から構成される顔料は、アルミニウムフタロシアニン化合物から構成される顔料と組み合わせたときに、上述した特許文献1に記載されている所定のキノフタロン化合物から構成される顔料より良好な輝度を示し、かつ、これを超える優れた着色力を示す。
【0015】
式(1)中のハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であってよく、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
【0016】
式(1)中の炭素数1〜3のアルキレン基の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基(1,1−エタンジイル基又は1,2−エタンジイル基)、プロピレン基(1,1−プロパンジイル基、2,2−プロパンジイル基、1,2−プロパンジイル基又は1,3−プロパンジイル基)が好ましく、メチレン基、1,1−エタンジイル基、1,1−プロパンジイル基、2,2−プロパンジイル基がより好ましく、メチレン基が更に好ましい。
【0017】
上記キノフタロン化合物では、X
1〜X
16のうち、少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、2つ以上がハロゲン原子であることがより好ましい。X
1〜X
16にハロゲン原子が導入されることで、上記キノフタロン化合物の分散性が一層向上し、上述の効果がより顕著に得られる傾向がある。
【0018】
X
1〜X
4のうち、少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、2つ以上がハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であってもよい。X
2及びX
3のうち少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、X
2及びX
3がいずれもハロゲン原子であることがより好ましい。
【0019】
X
5〜X
8のうち、少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、2つ以上がハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であってもよい。X
6及びX
7のうち少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、X
6及びX
7がいずれもハロゲン原子であることがより好ましい。
【0020】
X
9〜X
12のうち、少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、2つ以上がハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であってもよい。X
10及びX
11のうち少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、X
10及びX
11がいずれもハロゲン原子であることがより好ましい。
【0021】
X
13〜X
16のうち、少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、2つ以上がハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であってもよい。X
14及びX
15のうち少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、X
14及びX
15がいずれもハロゲン原子であることがより好ましい。
【0022】
Y
1及びY
2は、互いに同一であっても異なっていても構わないが、上記キノフタロン化合物の合成が容易となる観点からは、互いに同一であることが好ましい。
【0023】
なお、式(1)の構造には、下記式(1−i)及び式(1−ii)等の構造の互変異性体が存在するが、上記キノフタロン化合物は、これらのいずれの構造であってもよい。
【化5】
式(1−i)及び式(1−ii)中、X
1〜X
16、Y
1、Y
2及びZは上述のとおりである。
【0024】
上記キノフタロン化合物の具体例を以下に挙げるが、上記キノフタロン化合物はこれらに限定されるものではない。
【0030】
上記キノフタロン化合物は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上の化合物を適宜選択して併用してもよい。
【0031】
上記キノフタロン化合物の製造方法は、特に制限されるものではなく従来公知の方法を適宜利用して製造することができる。以下、キノフタロン化合物の製造方法の一態様を記載するが、製造方法はこれに限定されるものではない。
【0032】
上記キノフタロン化合物は、例えば以下の工程I、工程II、工程III及び工程IVを含む方法により得ることができる。
【0033】
<工程I>
まず、J.Heterocyclic,Chem,30,17(1993)に記載の方法などにより、ビスアニリン類を1当量に対し、クロトンアルデヒドを2〜3当量加え、酸化剤存在下、強酸中において反応させ、式(A−1)の化合物を合成する。
【化11】
式(A−1)中、Y
1、Y
2及びZは上述のとおりである。
【0034】
強酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。酸化剤としては、ヨウ化ナトリウム、p−クロラニル、ニトロベンゼンなどが挙げられる。
【0035】
工程Iに関し、反応温度は、80℃〜100℃、好ましくは90℃〜100℃であってよく、反応時間は、1時間〜6時間、好ましくは3時間〜6時間であってよい。
【0036】
<工程II>
さらに、得られた式(A−1)の化合物と硝酸又は発煙硝酸を濃硫酸存在下において反応させることで、式(A−2)の化合物を得ることができる。
【化12】
式(A−2)中、Y
1、Y
2及びZは上述のとおりである。
【0037】
工程IIに関し、反応温度は、−20℃〜70℃、好ましくは0℃〜50℃であってよく、反応時間は、1時間〜4時間、好ましくは1時間〜3時間であってよい。
【0038】
<工程III>
さらに、得られた式(A−2)の化合物を1当量に対し、還元鉄を6〜8当量加え、反応させることで、式(A−3)の化合物を得ることができる。
【化13】
式(A−3)中、Y
1、Y
2及びZは上述のとおりである。
【0039】
工程IIIに関し、反応温度は、60℃〜80℃、好ましくは70℃〜80℃であってよく、反応時間は、1時間〜3時間、好ましくは2時間〜3時間であってよい。
【0040】
<工程IV>
さらに、特開2013−61622号公報に記載の方法などにより、得られた式(A−3)の化合物1当量に対し、無水フタル酸及びハロゲン置換フタル酸無水物からなる群より選択される少なくとも一種を4〜6当量を酸触媒存在下において反応させることで、式(1)の化合物を得ることができる。酸触媒としては、安息香酸、塩化亜鉛などが挙げられる。
【0041】
工程IVに関し、反応温度は、180℃〜250℃、好ましくは210℃〜250℃であってよく、反応時間は、1時間〜8時間、好ましくは3時間〜8時間であってよい。
【0042】
アルミニウムフタロシアニン化合物は、下記式(2A)で表される化合物及び下記式(2B)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【化14】
【化15】
【0043】
式(2A)中、X
51〜X
54は、各々独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、又は置換基を有してもよいアリールチオ基である。これらの各基における「置換基」としては、ハロゲン原子、アミノ基、水酸基、ニトロ基等が挙げられる。
【0044】
置換基を有してもよいアルキル基の「アルキル基」としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−オクチル基、ステアリル基、2−エチルへキシル基等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。「置換基を有するアルキル基」としては、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2−ジブロモエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2−エトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、2−ニトロプロピル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、4−tert−プチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−ニトロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基等が挙げられる。
【0045】
置換基を有してもよいアリール基の「アリール基」としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基等が挙げられる。「置換基を有するアリール基」としては、p−メチルフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−メトキシフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−アミノフェニル基、2−メチル−4−クロロフェニル基、4−ヒドロキシ−1−ナフチル基、6−メチル−2−ナフチル基、4,5,8−トリクロロ−2−ナフチル基、アントラキノニル基、2−アミノアントラキノニル基等が挙げられる。
【0046】
置換基を有してもよいシクロアルキル基の「シクロアルキル基」としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。「置換基を有するシクロアルキル基」としては、2,5−ジメチルシクロペンチル基、4−tert−プチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0047】
置換基を有してもよい複素環基の「複素環基」としては、ピリジル基、ピラジル基、ピペリジノ基、ピラニル基、モルホリノ基、アクリジニル基等が挙げられる。「置換基を有する複素環基」としては、3−メチルピリジル基、N−メチルピペリジル基、N−メチルピロリル基等が挙げられる。
【0048】
置換基を有してもよいアルコキシ基の「アルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3−ジメチル−3−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、ステアリルオキシ基、2−エチルへキシルオキシ基等の直鎖又は分岐アルコキシ基が挙げられる。「置換基を有するアルコキシ基」としては、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、2,2−ジトリフルオロメチルプロポキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−ブトキシエトキシ基、2−ニトロプロポキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0049】
置換基を有してもよいアリールオキシ基の「アリールオキシ基」としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、アンスリルオキシ基等が挙げられる。「置換基を有するアリールオキシ基」としては、p−メチルフェノキシ基、p−ニトロフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、2,4−ジクロロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、2−メチル−4−クロロフェノキシ基等が挙げられる。
【0050】
置換基を有してもよいアルキルチオ基の「アルキルチオ基」としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基等が挙げられる。「置換基を有するアルキルチオ基」としては、メトキシエチルチオ基、アミノエチルチオ基、ベンジルアミノエチルチオ基、メチルカルボニルアミノエチルチオ基、フェニルカルボニルアミノエチルチオ基等が挙げられる。
【0051】
置換基を有してもよいアリールチオ基の「アリールチオ基」としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、9−アンスリルチオ基等が挙げられる。「置換基を有するアリールチオ基」としては、クロロフェニルチオ基、トリフルオロメチルフェニルチオ基、シアノフェニルチオ基、ニトロフェニルチオ基、2−アミノフェニルチオ基、2−ヒドロキシフェニルチオ基等が挙げられる。
【0052】
式(2A)中、Y
51〜Y
54は、各々独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基(C
6H
4(CO)
2N−CH
2−)、又は置換基を有してもよいスルファモイル基(H
2NSO
2−)である。置換基を有するフタルイミドメチル基は、フタルイミドメチル基中の水素原子が置換基により置換された基である。置換基を有するスルファモイル基は、スルファモイル基中の水素原子が置換基により置換された基である。これらの各基における「置換基」は、X
51〜X
54について説明した置換基と同じである。
【0053】
Y
51〜Y
54は、好ましくはハロゲン原子である。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれ、好ましくは塩素原子又は臭素原子であり、より好ましくは臭素原子である。
【0054】
式(2A)中、L
1は、水酸基、塩素原子、−OP(=O)R
1R
2、又は−O−SiR
3R
4R
5である。R
1〜R
5は、各々独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、又は置換基を有してもよいアリールオキシ基である。R
1及びR
2は互いに結合して環を形成してもよく、R
3、R
4及びR
5のうち二つは互いに結合して環を形成してもよい。
【0055】
R
1〜R
5におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−オクチル基、ステアリル基、2−エチルへキシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。R
1〜R
5における置換基を有するアルキル基としては、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2−ジブロモエチル基、2−エトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、2−ニトロプロピル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−ニトロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基等が挙げられる。
【0056】
R
1〜R
5におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基等が挙げられる。R
1〜R
5における置換基を有するアリール基としては、p−トリル基、p−ブロモフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−メトキシフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−ジメチルアミノフェニル基、2−メチル−4−クロロフェニル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、6−メチル−2−ナフチル基、4,5,8−トリクロロ−2−ナフチル基、アントラキノニル基等が挙げられる。
【0057】
R
1〜R
5におけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3−ジメチル−3−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、ステアリルオキシ基、2−エチルへキシルオキシ基等の直鎖又は分岐アルコキシ基が挙げられる。R
1及びR
2における置換基を有するアルコキシ基としては、例えば、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、2,2−ジトリフルオロメチルプロポキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−ブトキシエトキシ基、2−ニトロプロポキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0058】
R
1〜R
5におけるアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アンスリルオキシ基等が挙げられる。R
1〜R
5における置換基を有するアリールオキシ基としては、p−メチルフェノキシ基、p−ニトロフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、2,4−ジクロロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、2−メチル−4−クロロフェノキシ基等が挙げられる。
【0059】
L
1は、耐熱性及び耐光性に優れる観点から、好ましくは−OP(=O)R
1R
2である。この場合、R
1及びR
2は、各々独立に、好ましくは、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアリールオキシ基であり、より好ましくはアリール基又はアリールオキシ基であり、更に好ましくはフェニル基又はフェノキシ基である。R
1及びR
2の両方が置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアリールオキシ基であることが好ましく、R
1及びR
2の両方がアリール基又はアリールオキシ基であることがより好ましく、R
1及びR
2の両方がフェニル基又はフェノキシ基であることが更に好ましい。
【0060】
式(2A)中、m1〜m4及びn1〜n4は、各々独立に0〜4の整数であり、m1+n1、m2+n2、m3+n3及びm4+n4は、各々独立に0〜4の整数である。m1〜m4の合計は、一実施形態において、例えば、5以上、7以上、又は9以上であってよく、15以下、13以下、又は11以下であってよい。他の一実施形態において、m1〜m4のすべてが0であってもよい。n1〜n4のすべてが0であることが好ましい。
【0061】
式(2B)中、X
55〜X
62は、各々独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、又は置換基を有してもよいアリールチオ基である。これらの各基における「置換基」は、X
51〜X
54について説明した置換基と同じである。これらの各基の具体例は、X
51〜X
54について説明した各基の具体例と同じである。
【0062】
式(2B)中、Y
55〜Y
62は、各々独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基(C
6H
4(CO)
2N−CH
2−)、又は置換基を有してもよいスルファモイル基(H
2NSO
2−)である。これらの各基における「置換基」は、X
51〜X
54について説明した置換基と同じである。これらの各基の具体例は、Y
51〜Y
54について説明した各基の具体例と同じである。
【0063】
式(2B)中、L
2は、−O−SiR
6R
7−O−、−O−SiR
8R
9−O−SiR
10R
11−O−、又は−O−P(=O)R
12−O−である。R
6〜R
12は、各々独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、又は置換基を有してもよいアリールオキシ基である。R
6〜R
12における各基の具体例は、R
1〜R
5について説明した各基の具体例と同じである。
【0064】
式(2B)中、m5〜m12及びn5〜n12は、各々独立に0〜4の整数であり、m5+n5、m6+n6、m7+n7、m8+n8、m9+n9、m10+n10、m11+n11及びm12+n12は、各々独立に0〜4の整数である。m5〜m12の合計は、一実施形態において、例えば、9以上、14以上、又は19以上であってよく、31以下、26以下、又は21以下であってよい。他の一実施形態において、m5〜m12のすべてが0であってもよい。n5〜n12のすべてが0であることが好ましい。
【0065】
上記のキノフタロン化合物は、有機顔料としての性質を示すことができる。キノフタロン化合物は、顔料化されて配合されていてよい。同様に、上記のアルミニウムフタロシアニン化合物は、有機顔料としての性質を示すことができ、顔料化されて配合されてよい。このようなアルミニウムフタロシアニン顔料の一例としては、C.I.ピグメントグリーン63が挙げられる。すなわち、本実施形態に係る顔料組成物は、上記キノフタロン化合物から構成される顔料(キノフタロン顔料)と、上記アルミニウムフタロシアニン化合物から構成される顔料(アルミニウムフタロシアニン顔料)とを含有してよい。
【0066】
キノフタロン化合物及びアルミニウムフタロシアニン化合物のそれぞれの顔料化は、公知慣用の方法で行えばよい。キノフタロン顔料及びアルミニウムフタロシアニン顔料は、それぞれ、例えば、ソルトミリング処理等により微細化されていてもよく、ロジン処理、界面活性剤処理、溶剤処理、樹脂処理等の表面処理がされていてもよい。
【0067】
顔料組成物におけるキノフタロン化合物(キノフタロン顔料)とアルミニウムフタロシアニン化合物(アルミニウムフタロシアニン顔料)との含有量の比は、アルミニウムフタロシアニン化合物の種類や所望する色調(色度)に応じて適宜決定される。キノフタロン化合物(キノフタロン顔料)の含有量は、キノフタロン化合物(キノフタロン顔料)及びアルミニウムフタロシアニン化合物(アルミニウムフタロシアニン顔料)の合計量100質量部に対して、例えば、1質量部以上であってよく、95質量部以下であってもよく、高色再現性を有する緑色カラーフィルタ用途に特に好適に用いることができる観点から、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下である。
【0068】
顔料組成物は、上記以外の成分を更に含有していてもよい。例えば、顔料組成物は、上記以外の有機顔料、有機染料、有機顔料誘導体等を更に含有していてもよい。
【0069】
上記以外の有機顔料としては、例えば、アゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、アゾメチン系顔料、アントラキノン系顔料、上記のキノフタロン顔料以外のキノフタロン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、上記のアルミニウムフタロシアニン顔料以外のフタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリレン系顔料等が挙げられる。当該有機顔料は、好ましくは、アゾ系顔料、アゾメチン系顔料、上記のキノフタロン顔料以外のキノフタロン系顔料、上記のアルミニウムフタロシアニン顔料以外のフタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料等であり、具体的には、C.I.ピグメントイエロー129、同138、同139、同150、同185、同231、C.I.ピグメントグリーン7、同36、同58、同59、同62等である。
【0070】
有機染料としては、例えば、キサンテン系染料、アゾ系染料、ジスアゾ染料、アンラキノン系染料、キノフタロン系染料、トリアリールメタン系染料、メチン系染料、フタロシアニン系染料、ローダミン系染料等が挙げられる。有機染料は、好ましくはフタロシアニン系染料である。
【0071】
有機顔料誘導体は、例えば、公知の有機顔料の一部が、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、フタルイミドメチル基等で修飾(置換)された誘導体であってよい。具体的には、例えば、Solsperse(登録商標名)5000、同12000、同22000(ルーブリゾール株式会社製)等が挙げられる。有機顔料誘導体の含有量は、顔料の合計量100質量部に対して、1質量部以上であってよく、20質量部以下であってよい。
【0072】
顔料組成物は、感光性樹脂、硬化性樹脂等の樹脂、ロジン、界面活性剤、分散剤などを更に含有していてもよい。これらの成分は、顔料表面に処理(いわゆる表面処理)されていてもよいし、されていなくてもよい。顔料表面に処理する方法としては、これらの成分を一旦溶媒に溶解させたのち顔料表面に析出させる方法や、ニーダー内にこれら成分を添加し顔料とともに混練する方法や、溶媒中で顔料表面にこれら成分を吸着させる方法等の公知の方法であってよい。
【0073】
顔料組成物は、粉末状であってよい。顔料組成物を溶剤中に分散させることで、顔料分散体である着色組成物を形成することができる。
【0074】
(着色組成物)
一実施形態に係る着色組成物は、上記のキノフタロン化合物と、上記のアルミニウムフタロシアニン化合物と、溶剤とを含有する。
【0075】
着色組成物におけるキノフタロン化合物及びアルミニウムフタロシアニン化合物の態様やこれらの比は、それぞれ、上述の顔料組成物におけるキノフタロン化合物及びアルミニウムフタロシアニン化合物の態様やこれらの比と同じであってよい。
【0076】
溶剤は、好ましくは有機溶剤である。有機溶剤としては、例えばトルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。有機溶剤は、好ましくは、極性を有し水に可溶な溶剤であり、より好ましくは、プロピオネート系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素化合物系溶剤、又はラクトン系溶剤である。
【0077】
溶剤の含有量は、上記のキノフタロン化合物(キノフタロン顔料)及びアルミニウムフタロシアニン化合物(アルミニウムフタロシアニン顔料)の合計量(以下「顔料の合計量」という)100質量部に対して、300質量部以上であってよく、2000質量部以下であってよい。
【0078】
着色組成物は、キノフタロン顔料及びアルミニウムフタロシアニン顔料を溶剤に好適に分散させる観点から、分散剤及び/又は有機顔料誘導体を更に含有してもよい。
【0079】
分散剤としては、例えばANTI−TERRA(登録商標名)U/U100、同204、DISPERBYK(登録商標名)106、同108、同109、同112、同130、同140、同142、同145、同161、同162、同163、同164、同167、同168、同180、同182、同183、同184、同185、同2000、同2001、同2008、同2009、同2013、同2022、同2025、同2026、同2050、同2055、同2150、同2155、同2163、同2164、同9076、同9077、BYK LPN−6919、同21116、同21324、同22102(ビックケミー株式会社製)、EFKA(登録商標名)46、同47、同4010、同4020、同4320、同4300、同4330、同4401、同4570、同5054、同7461、同7462、同7476、同7477(BASF株式会社製)、アジスパー(登録商標名)PB814、同821、同822、同881(味の素ファインテクノ株式会社製)、Solsperse(登録商標名)24000、同28000、同37500、同76500(ルーブリゾール株式会社製)などが挙げられる。分散剤の含有量は、顔料の合計量100質量部に対して、10質量部以上であってよく、120質量部以下であってよい。
【0080】
着色組成物は、感光性樹脂を更に含有してもよい。感光性樹脂を含有する着色組成物は、感光性着色組成物ということもできる。感光性樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等の熱可塑性樹脂や、例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス-(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のような多官能モノマー等の光重合性モノマーなどが挙げられる。
【0081】
感光性着色組成物は、光重合開始剤を更に含有してもよい。光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン−2'−スルホン酸、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸等が挙げられる。
【0082】
着色組成物が感光性樹脂(更には光重合開始剤)を含有する場合、着色組成物は、例えば以下の方法により得られる。まず、キノフタロン顔料及びアルミニウムフタロシアニン顔料を、必要に応じて分散剤及び/又は有機顔料誘導体と共に、溶剤に分散させて分散液が得られる。次いで、この分散液に、感光性樹脂(更には光重合開始剤)を加え、必要に応じて溶剤を更に加えた後に、均一に撹拌することにより着色組成物が得られる。
【0083】
この場合、感光性樹脂の含有量は、上記の分散液100質量部に対して、3質量部以上であってよく、25質量部以下であってよい。光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂1質量部に対して、0.05質量部以上であってよく、3質量部以下であってよい。
【0084】
以上説明した顔料組成物又は着色組成物を用いることにより、高輝度であり、かつ薄膜でも高色再現性を有する緑色カラーフィルタ(カラーフィルタの緑色画素部)が得られる。本発明者らは、その理由を以下のように推察している。
【0085】
高色再現性を有する緑色カラーフィルタを得るためには、黄色顔料が、併用する青色顔料又は緑色顔料によって光が吸収されない(透過される)青色領域において、より広い波長範囲で光を好適に吸収する必要があるところ、従来は、黄色顔料の含有量を増やすことにより、黄色顔料による青色領域での吸光量を増やしていた。しかし、この場合、輝度が低下する、膜厚が厚くなってしまうといった問題が生じていた。
これに対し、式(1)で表される化合物はキノフタロン骨格を二量化させた構造を有するため、上記のキノフタロン顔料は、従来の黄色顔料に比べ、青色領域においてより長波長側にまで広がった吸収スペクトルを有している。このため、キノフタロン顔料の含有量を増やさなくても、高色再現用緑色度に調色できる。よって、この緑色カラーフィルタでは、薄膜でも高色再現性を実現しつつ、高い輝度も達成できる。
【0086】
したがって、着色組成物は、カラーフィルタ用(カラーフィルタの形成に用いられる)着色組成物として好適であり、緑色カラーフィルタ(カラーフィルタの緑色画素部)の形成に用いられる着色組成物として特に好適である。
【0087】
(カラーフィルタ)
本発明の一実施形態は、上記の着色組成物から形成された画素部を有するカラーフィルタである。換言すると、一実施形態に係るカラーフィルタは、上記のキノフタロン化合物と、上記のアルミニウムフタロシアニン化合物とを含有する画素部を有する。当該画素部は、好ましくは緑色画素部である。
【0088】
上記画素部は、上述の着色組成物(感光性着色組成物)から容易に形成することができる。具体的な方法としては、例えば、着色組成物(感光性着色組成物)を、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等でガラス等の透明基板上に塗布し、ついでこの塗布膜に対して、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を溶剤等で洗浄して着色パターンを得る、フォトリソグラフィーと呼ばれる方法が挙げられる。
【0089】
画素部の形成方法は特に限定されず、例えば、電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法の方法で画素部のパターンを形成して、カラーフィルタを製造してもよい。
【0090】
上記の実施形態(顔料組成物及び着色組成物)では、上記のキノフタロン化合物及びアルミニウムフタロシアニン化合物が一組成物中に含まれているが、他の一実施形態では、上記のキノフタロン化合物及びアルミニウムフタロシアニン化合物は、それぞれ別個の組成物に含まれていてもよい。すなわち、本発明の他の一実施形態は、上記のキノフタロン化合物を含有する第1の顔料組成物(着色組成物)と、上記のアルミニウムフタロシアニン化合物を含有する第2の顔料組成物(着色組成物)と、を備える顔料組成物セット(着色組成物セット)である。この顔料組成物セット(着色組成物セット)も、カラーフィルタの形成に好適に用いられ、緑色カラーフィルタ(カラーフィルタの緑色画素部)の形成に特に好適に用いられる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
[合成例1]
フラスコ中に4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)5.0g(56.1mmol)、p−クロラニル27.6g(112mmol)、水150ml、濃塩酸150ml、n−ブタノール100mlを添加して95℃で30分間攪拌した。この混合物に、n−ブタノール12mlに溶解したクロトンアルデヒド11.8g(168mmol)を滴下して、さらに1時間攪拌した。温度を80℃に下げ、塩化亜鉛15.3g(112mmol)を少量ずつ加えた後、THF200mlを添加して80℃を保ったまま1時間攪拌した。室温まで放冷した後、減圧ろ過にて黄土色粉末を回収した。得られた黄土色粉末をTHF200mlで洗浄し、再び減圧ろ過にて黄土色粉末を回収した。さらに、得られた黄土色粉末をフラスコに移し、水200mlと28%アンモニア水40mlを加え、室温で2時間攪拌した。減圧ろ過にて粉末を回収し、20.3gの粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエンに溶解し不溶物をろ過により除いた後に再結晶して中間体(4)12.6gを得た(収率:61%)。
【化16】
1H−NMR(CDCl
3)δppm:2.81(s,6H),4.24(s,2H),7.34(d,J=8.0Hz,2H),7.49(s,2H),7.67(s,2H),7.99(d,J=8.8Hz,2H)
13C−NMR(CDCl
3)δppm:25.8,41.1,123.2,126.2,127.8,130.9,133.1,136.3,137.6,143.1,160.0
FT−IR cm
−1:3435,3054,3030,2915,1603,1487,1206
FD−MS:366M+
【0093】
続いて、フラスコ中に中間体(4)4.15g(11.3mmol)と濃硫酸7.55mLを加え、45℃で20分間攪拌した。その後、発煙硝酸1.62mLを滴下し、温度を保持し1時間攪拌を続けた。放冷後、氷水250mLを系中にゆっくりと注いだ。さらに、10wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを8〜9に調整した。析出した粉末を減圧ろ過で回収し、蒸留水200mL、エタノール100mLで洗浄することで、中間体(5)4.86g(10.6mmol)を得た(収率:94%)。
【化17】
1H−NMR(CDCl
3)δppm:2.86(s,6H),4.27(s,2H),7.56(d,J=8.8Hz,2H),7.62(s,2H),8.08(d,J=8.8Hz,2H)
13C−NMR(CDCl
3)δppm:25.7,32.4,119.9,125.6,127.5,130.1,131.1,137.3,143.1,145.9,162.2
FT−IR cm
−1:3465,1604,1530,1487,1362
【0094】
続いて、フラスコ中に中間体(5)5.00g(10.9mmol)とエタノール23.3mLを加え、室温で10分間攪拌した。その後、還元鉄4.88g(87.4mmol)を系中に加え、室温でさらに10分間攪拌した。続いて、濃塩酸6.33mLを滴下し、温度を80℃に昇温し、6時間攪拌を続けた。放冷後、蒸留水150mLに注ぎ、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを9に調整した。析出した粉末を減圧ろ過で回収した。さらに、回収した粉末を酢酸エチル700mL中で十分攪拌させ、減圧ろ過を行った。そこで得られたろ液の溶媒を減圧留去することで、黄土色粉末である中間体(6)3.64g(9.16mmol)を得た(収率:84%)。
【化18】
1H−NMR(CDCl
3)δppm:2.65(s,6H),3.97(s,2H),5.92(s,4H),7.32(s,2H),7.38(d,J=8.8Hz,2H),8.59(d,J=8.8Hz,2H)
13C−NMR(CDCl
3)δppm:25.4,31.9,116.8,117.7,117.9,121.0,131.8,132.2,142.0,143.1,158.9
FT−IR cm
−1:3476,3373,1627,1605,1409,1359,1250
【0095】
続いて、窒素雰囲気下、フラスコ中に安息香酸14.1g(116mmol)を量りとり、140℃にて溶融させた。そこに、中間体(6)1.44g(3.62mmol)とテトラクロロフタル酸無水物5.53g(19.3mmol)を加え、220℃にて4時間攪拌した。放冷後、反応溶液にアセトン300mLを加え、1時間攪拌した後、減圧ろ過にて黄色粉末である目的物(7)を4.52g(3.08mmol)得た(収率:85%)。
【化19】
FT−IR cm
−1:3449,1727,1622,1536,1410,1363,1308,1192,1112,737
FD−MS:1467M+
【0096】
[合成例2]
フラスコ中に濃硫酸55gを仕込み、氷冷下に攪拌しながら文献(Polymer, volume39, No.20(1998), p4949)記載の方法で得られる6,6’−メチレンジキナルジン7.0g(23.5mmol)を添加した。10℃以下を保ちながら60%硝酸6.1gを滴下し、10℃から20℃で1時間攪拌を続けた。反応液を氷水150mlに注ぎ、20wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3に調整した。析出した粉末を減圧ろ過で回収し、水で中性まで洗浄した。得られた固体を70℃で送風乾燥した後、粗生成物を熱酢酸エチル100ml、次いで熱トルエン60mlで洗浄ろ過し、中間体(8)6.52g(16.8mmol)を得た(収率:72%)。
【化20】
1H−NMR(DMSO−d6)δppm:2.70(s,6H),4.42(s,2H),7.58(d,J=8.8Hz,2H),7.63(d,J=8.8Hz,2H),8.09(d,J=8.8Hz,2H),8.13(d,J=8.8Hz,2H)
13C−NMR(DMSO−d6)δppm:24.5,32.0,117.7,124.8,127.5,129.8,130.5,131.9,145.8,146.2,160.7
FT−IR(KBr disk)cm
−1:3048,1602,1520,1494,1363
【0097】
続いて、フラスコ中に還元鉄5.30g、酢酸135mlを仕込み攪拌しながら50℃に加熱した。次いで中間体(8)4.50g(11.6mmol)を70℃以下に保つように添加した。添加終了後60℃で1hr攪拌を続けた後、反応液を35℃以下に冷却し、氷水500mlに注ぎ、20%NaOH水でpH9に調製した。生成した沈殿物をセライト上で減圧ろ過した。固形物を回収し、70℃で送風乾燥後、ジメチルスルホキシド(DMSO)100mlとN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlの混合溶媒に加え、90℃で1hr攪拌した。混合物をセライト上で減圧ろ過し、得られたろ液を水1Lに攪拌しながら加えた。生成した沈殿を減圧濾過で回収し、水洗して中間体(9)3.80g(11.6mmol)を得た(収率:>99%)。
【化21】
1H−NMR(DMSO−d6)δppm:2.57(s,6H),3.45(s,2H),5.66(s,4H),7.06(d,J=8.2Hz,2H),7.16(d,J=8.2Hz,2H),7.23(d,J=8.2Hz,2H),8.49(d,J=8.2Hz,2H)
13C−NMR(DMSO−d6)δppm:24.6,32.1,115.8,116.2,119.5,130.9,131.8,141.5,147.4,157.0
FT−IR(KBr disk)cm
−1:3464,3363,3315,3192,1640,1591,1573,1415,1365,801
【0098】
続いて、窒素雰囲気下、フラスコ中に安息香酸135gを量りとり、140℃にて溶融させた。そこに、中間体(9)3.80g(11.6mmol)とテトラクロロフタル酸無水物17.99g(62.9mmol)、無水塩化亜鉛0.49g(3.6mmol)を加え、220℃にて6時間攪拌した。反応混合物を120℃に冷却後、クロロベンゼン300mLを加えて1時間攪拌し、減圧ろ過にて黄色粉末である目的物(10)を10.5g(7.5mmol)得た(収率:65%)。
【化22】
FT−IR cm
−1:1788,1729,1688,1638,1607,1537,1420,1310,732
FD−MS:1400M+
【0099】
[合成例3]
フラスコ中に濃硫酸130mLを入れ攪拌しながら10℃以下に冷却した。特開2012−247587号公報に記載の方法にならって得られたヒドロキシアルミニウムフタロシアニン8.00g(14.4mmol)を、10℃以下を保つように添加した。続けてジブロモイソシアヌル酸21.4g(74.7mmol)を、10℃以下を保つように添加した。その後、室温で7時間攪拌した。反応液を水にあけ、析出した固体を減圧濾過にて回収した。得られた固体を2.5%水酸化ナトリウム水溶液に分散し、70℃で1時間攪拌した。固体を減圧濾過にて回収し、90℃17時間の乾燥を経て中間体(11)を9.20g得た(収率:47%)。平均臭素置換基数は10.0、ハロゲン分布幅は9であった(FD−MSの結果から算出)。
【化23】
【0100】
続いて、フラスコ中に中間体(11)6.00g、リン酸ジフェニル2.20g(8.7mmol)、N−メチル−2−ピロリドン85mLを入れ、90℃で6時間攪拌した。反応液をメタノールにあけ、析出した固体を減圧濾過にて回収した。得られた固体を水/メタノール=1/1に分散し、室温で2時間攪拌した。固体を減圧濾過にて回収し、90℃で17時間の乾燥を経て目的物(12)を4.60g得た(収率:65%)。平均臭素置換基数は10.0、ハロゲン分布幅は9であった(FD−MSの結果から算出)。
【化24】
【0101】
[合成例4]
窒素雰囲気下、フラスコ中に安息香酸24.4g(200mmol)を量りとり、130℃にて溶融させた。そこに、8−アミノキナルジン1.59g(10.0mmol)と2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物1.98g(10.0mmol)を加え、180℃にて3時間攪拌した。その後、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物3.31gと塩化亜鉛1.36gを添加し、温度を230℃まで昇温させ、さらに4時間攪拌した。放冷後、反応溶液にアセトン700mLを加え、1時間攪拌した後、減圧ろ過にて黄色粉末を回収した。続いて、得られた粉末をメタノール300mLで洗浄し、減圧ろ過にて黄色粉末である中間体(13)を5.00g(9.64mmol)得た(収率:96%)。
【化25】
1H−NMR(CDCl
3)δppm:7.48−7.55(1H),7.61(1H),7.74(1H),7.81−7.95(7H),8.12(1H),8.19−8.23(3H),8.66(2H),8.81(1H),14.9(1H)
FD−MS:519M+
【0102】
続いて、フラスコ中に中間体(13)1.03g(1.99mmol)、エタノール39mLを入れ、室温にて3分間攪拌した。その後、系中にヒドラジン一水和物1.03g(39.7mmol)を加え、23時間加熱還流させながら攪拌した。放冷後、減圧ろ過で粉末を回収し、ろ物をアセトン250mLで洗浄した。さらに、10%水酸化ナトリウム水溶液50mL中において、加熱還流させながら1時間攪拌した。その後、40−50℃付近まで温度を下げた段階で熱時ろ過を行い、黄色粉末である中間体(14)を0.633g(1.87mmol)得た(収率:94%)。
【化26】
FD−MS:338M+
【0103】
続いて、フラスコ中に中間体(14)4.13g(12.2mmol)、テトラクロロフタル酸無水物3.80g(13.3mmol)、トリクロロベンゼン37.4mLを加え、200℃で5時間加熱攪拌した。放冷後、アセトン300mLで洗浄し、減圧ろ過にて黄色粉末である目的物(15)を5.92g(9.76mmol)得た(収率:80%)。
FD−MS:604M+
【化27】
【0104】
[顔料化例1]
合成例1で得られたキノフタロン二量体(7)5質量部、粉砕した塩化ナトリウム50質量部、ジエチレングリコール8質量部を双腕型ニーダーに仕込み、80℃で8時間混練した。混練後、混合物を80℃の水6000質量部に取り出し、1時間攪拌後、ろ過、湯洗、乾燥、粉砕することにより、黄色顔料であるキノフタロン顔料を得た。日本電子社製透過電子顕微鏡JEM−2010で得られたキノフタロン顔料を撮影した。二次画像上の凝集体を構成する一次粒子40個につき長い方の径(長径)と短い方の径(短径)の平均値から平均アスペクト比を算出し、長径の平均値を平均一次粒子径とした。平均アスペクト比は3.00未満であった。平均一次粒子径は100nm以下であった。
【0105】
[顔料化例2]
合成例1で得られたキノフタロン二量体(7)に代えて、合成例2で得られたキノフタロン二量体(10)を用いた以外は顔料化例1と同様の方法で顔料化を行い、キノフタロン顔料を得た。得られた顔料粒子の平均アスペクト比は3.00未満であり、平均一次粒子径は100nm以下であった。
【0106】
[顔料化例3]
合成例1で得られたキノフタロン二量体(7)に代えて、合成例4で得られたキノフタロン単量体(15)を用いた以外は、顔料化例1と同様の方法で顔料化を行い、キノフタロン顔料を得た。得られた顔料粒子の平均アスペクト比は3.00未満であり、平均一次粒子径は100nm以下であった。
【0107】
[製造例1]
顔料化例1で得られたキノフタロン顔料0.660質量部をガラス瓶に入れ、特開2013−54200号公報に記載の方法で合成したC.I.ピグメントイエロー138のスルホン酸誘導体(16)0.040質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.60質量部、BYK LPN−21116(ビックケミー株式会社製)1.400質量部、0.3〜0.4mmφセプルビーズ22.0質量部を加え、ペイントシェーカー(東洋精機株式会社製)で2時間半分散し、顔料分散体を得た。
【化28】
【0108】
さらに、得られた顔料分散体4.00質量部、アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標)ZL−295(DIC株式会社製)0.600質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.220質量部をガラス瓶に入れ、振とうさせることで黄色調色用組成物を作製した。
【0109】
[製造例2]
顔料化例1で得られたキノフタロン顔料に代えて、顔料化例2で得られたキノフタロン顔料を用いた以外は、製造例1と同様の方法で黄色調色用組成物を得た。
【0110】
[製造例3]
特開2013−87251号公報に記載の方法にならって、無置換アルミニウムフタロシアニン(17)を含むアルミニウムフタロシアニン顔料を含有する青色調色用組成物を作製した。
【化29】
【0111】
[製造例4]
無置換アルミニウムフタロシアニン(17)に代えて、合成例3で得られた臭素化アルミニウムフタロシアニン(12)を用いた以外は、製造例3と同様に、特開2013−87251号公報に記載の方法にならって緑色調色用組成物を得た。
【0112】
[製造例5]
顔料化例3で得られたキノフタロン顔料0.700質量部をガラス瓶に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.42質量部、BYK LPN−6919(ビックケミー株式会社製)0.467質量部、アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標)ZL−295(DIC株式会社製)0.700質量部、0.3〜0.4mmφセプルビーズ22.0質量部を加え、ペイントシェーカー(東洋精機株式会社製)で2時間半分散し、顔料分散体を得た。さらに、得られた顔料分散体2.00質量部、ZL−295 0.490質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.110質量部をガラス瓶に入れ、振とうさせることで黄色調色用組成物を作製した。
【0113】
[実施例1]
製造例1で得られた黄色調色用組成物と製造例3で得られた青色調色用組成物とを、キノフタロン顔料:アルミニウムフタロシアニン顔料(質量比)=49:51となるように混合して、着色組成物を得た。
【0114】
[実施例2]
製造例1で得られた黄色調色用組成物に代えて、製造例2で得られた黄色調色用組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で着色組成物を得た。
【0115】
[比較例1]
製造例1で得られた黄色調色用組成物に代えて、製造例5で得られた黄色調色用組成物を用い、キノフタロン顔料:アルミニウムフタロシアニン顔料(質量比)=63:37となるように黄色調色用組成物と青色調色用組成物とを混合した以外は、実施例1と同様の方法で着色組成物を得た。
【0116】
<カラーフィルタ特性の評価>
得られた各着色組成物をスピンコーターによりガラス基板上に塗布した後、乾燥させ、230℃で1時間加熱して、C光源を用いたときに所定の緑色色度を示す評価用サンプルを作製した。なお、緑色色度としては、特開2010−2550号公報で使用されている高色再現用色規格における緑色色度(0.260,0.650)を用いた。色度は、分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製 U3900/3900H形)によって測定された値である。得られた評価用サンプルにおける輝度Yを、分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製 U3900/3900H形)によって測定した。また、得られた評価用サンプルについて、ガラス基板上に形成された着色膜の厚さを、膜厚計(株式会社日立ハイテクサイエンス製 VS1330 走査型白色干渉顕微鏡)によって測定した。なお、膜厚が薄いほど高着色力であるといえる。結果を表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
式(1)で表されるキノフタロン化合物(キノフタロン二量体(7)又は(10))とアルミニウムフタロシアニン化合物(無置換アルミニウムフタロシアニン(17))との組合せを用いた実施例1及び2は、式(1)で表されるキノフタロン化合物に代えて従来のキノフタロン化合物(キノフタロン単量体(15))を用いた比較例1に比べ、高輝度かつ高着色力(薄い膜厚で高色再現緑色度に調色できる)ことがわかった。
【0119】
[実施例3]
製造例3で得られた青色調色用組成物に代えて、製造例4で得られた緑色調色用組成物を用い、キノフタロン顔料:アルミニウムフタロシアニン顔料(質量比)=27:73となるように黄色調色用組成物と青色調色用組成物とを混合した以外は、実施例1と同様の方法で着色組成物を得た。
【0120】
[実施例4]
製造例1で得られた黄色調色用組成物に代えて、製造例2で得られた黄色調色用組成物を用いた以外は、実施例3と同様の方法で着色組成物を得た。
【0121】
[比較例2]
製造例1で得られた黄色調色用組成物に代えて、製造例5で得られた黄色調色用組成物を用い、キノフタロン顔料:アルミニウムフタロシアニン顔料(質量比)=39:61となるように黄色調色用組成物と青色調色用組成物とを混合した以外は、実施例3と同様の方法で着色組成物を得た。
【0122】
<カラーフィルタ特性の評価>
得られた各着色組成物について、実施例1〜2及び比較例1と同様に、カラーフィルタ特性を評価した。結果を表2に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
式(1)で表されるキノフタロン化合物(キノフタロン二量体(7)又は(10))とアルミニウムフタロシアニン化合物(臭素化アルミニウムフタロシアニン(12))との組合せを用いた実施例3及び4は、式(1)で表されるキノフタロン化合物に代えて従来のキノフタロン化合物(キノフタロン単量体(15))を用いた比較例2に比べ、高輝度かつ高着色力である(薄い膜厚で高色再現緑色度に調色できる)ことがわかった。
本発明の一側面は、式(1)で表されるキノフタロン化合物と、式(2A)等で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアルミニウムフタロシアニン化合物と、を含有する顔料組成物である。