(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0026】
[ポリイミド]
本発明のポリイミドは、下記一般式(1):
【0028】
[式(1)中、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、R
10はフッ素含有置換基を有する炭素数6〜40のアリーレン基を示し、nは0〜12の整数を示す。]
で表される繰り返し単位(A)と、
下記一般式(2):
【0030】
[式(2)中、R
10はフッ素含有置換基を有する炭素数6〜40のアリーレン基を示す。]
で表される繰り返し単位(B)とを含有し、かつ、前記繰り返し単位(A)及び(B)の総量に対する前記繰り返し単位(A)の含有量が5〜35モル%であることを特徴とするものである。
【0031】
前記繰り返し単位(A)に関して、一般式(1)中のR
1、R
2、R
3として選択され得るアルキル基は、炭素数が1〜10のアルキル基である。このような炭素数が10を超えるとガラス転移温度が低下し、各種基板材料等に利用する際に必要となるような十分に高度な水準の耐熱性が達成できなくなる。また、このようなR
1、R
2、R
3として選択され得るアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このようなR
1、R
2、R
3として選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。更に、このようなアルキル基としては精製の容易さの観点から、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0032】
また、前記一般式(1)中のR
1、R
2、R
3としては、ポリイミドを製造した際に、より高度な耐熱性が得られるという観点から、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、中でも、原料の入手が容易であることや精製がより容易であるという観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。また、このような式中の複数のR
1、R
2、R
3は精製の容易さ等の観点から、同一のものであることが特に好ましい。
【0033】
また、前記一般式(1)中のR
10は、フッ素含有置換基を有する炭素数6〜40のアリーレン基(フッ素系アリーレン基)である。ここにいうフッ素含有置換基としては、フッ素を含有するものであればよく、特に制限されず、例えば、フッ素原子自体、又は、少なくとも一部がフッ素原子に置換されたアルキル基(フルオロアルキル基)等が挙げられる。このようなフッ素含有置換基の中でも、より高度な耐熱性が得られるという観点から、炭素数が1〜10のフルオロアルキル基(例えば、フッ化メチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、ノナフルオロ−sec−ブチル基、ノナフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基等のフッ化アルキル基)が好ましく、中でも、炭素数が1〜5(より好ましくは1〜3)のフルオロアルキル基がより好ましい。また、このようなフッ素含有置換基としては、原料の入手性の観点からは、炭素数が1〜5(より好ましくは1〜3)のフルオロアルキル基がより好ましい。このように、前記R
10に関して、前記アリーレン基が有するフッ素含有置換基としては、炭素数が1〜3(より好ましくは1〜2)のフルオロアルキル基(特に好ましくはパーフルオロアルキル基)が更に好ましい。なお、ここにおいて「フルオロアルキル基」とは、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されてなる基をいい(なお、このような基はアルキル基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されていればよく、アルキル基の一部の水素原子が更にフッ素原子以外の置換基(例えばフッ素原子以外のハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基、重水素等)に置換されていてもよい。)、また、「パーフルオロアルキル基」とは、アルキル基の水素原子の全部がフッ素原子に置換されてなる基をいう。
【0034】
前記一般式(1)中のR
10として選択され得る、フッ素含有置換基を有するアリーレン基に関し、前記アリーレン基の炭素数(なお、かかる炭素数はアリーレン基自体の炭素の数をいい、その炭素数からは前記フッ素含有置換基中の炭素の数は除かれる。)は6〜40である。また、このようなアリーレン基の炭素数としては6〜30であることが好ましく、12〜20であることがより好ましい。このような炭素数が前記上限を超えると耐熱性が低下する傾向にある。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、クリセニレン基、インデニレン基、ピレニレン基又はベンゾアントラセニレン基等が挙げられるが、中でも、入手性の観点から、ビフェニレン基、フェニレン基、ナフチレン基が好ましく、ビフェニレン基、フェニレン基がより好ましい。
【0035】
さらに、前記一般式(1)中のR
10として選択され得る、フッ素含有置換基を有するアリーレン基としては、耐熱性や入手性の観点から、下記一般式(3):
【0037】
[式(3)中、R
5は炭素数1〜10のフルオロアルキル基(より好ましくはパーフルオロアルキル基)を示す。]
で表される基であることが好ましく、中でも、下記一般式(3−I)
【0039】
で表される基であることが特に好ましい。
【0040】
なお、本発明のポリイミドにおいては、前記繰り返し単位(A)として、R
10の種類等が異なる複数種の繰り返し単位(A)を組み合わせて利用してもよい。
【0041】
さらに、前記繰り返し単位(B)に関して、前記一般式(2)中のR
10は、上記一般式(1)中のR
10と同義である(その好適なものも上記一般式(1)中のR
10と同様である。)。なお、本発明のポリイミドにおいては、前記繰り返し単位(B)として、R
10の種類等が異なる複数種の繰り返し単位(B)を組み合わせて利用してもよい。
【0042】
なお、本発明のポリイミドにおいては、十分な水準の耐熱性を有するものとしつつ、十分に高度な全光線透過率と十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とをより高度な水準でバランスよく発現させるといった観点からは、前記繰り返し単位(A)及び(B)中の全てのR
10が同一のものであることが好ましい。
【0043】
また、本発明のポリイミドにおいては、上記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)及び上記一般式(2)で表される繰り返し単位(B)の総量に対する前記繰り返し単位(A)の含有量は、モル量を基準として5〜35モル%である。このような一般式(1)で表される繰り返し単位(A)の含有量が前記下限未満では、十分に高度な全光線透過率(より好ましくは83.0%以上の全光線透過率)を有するものとすることが困難となる傾向にあり、更には、十分に低い線膨張係数(好ましくは−20ppm/K〜20ppm/Kの線膨張係数)を有するものとすることが困難となり、十分に高度な全光線透過率と十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とを高度な水準でバランスよく有するものとすることができなくなる。他方、前記繰り返し単位(A)の含有量が前記上限を超えると、この場合にも十分に低い線膨張係数(好ましくは−20ppm/K〜20ppm/Kの線膨張係数)を有するものとすることができなくなり、十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とを高度な水準でバランスよく有するものとすることができなくなる。
【0044】
さらに、本発明のポリイミドにおいては、十分に高度な全光線透過率を有しつつ、十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とを更に高度な水準でバランスよく有するものとするといった観点から、上記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)及び上記一般式(2)で表される繰り返し単位(B)の総量に対する前記繰り返し単位(A)の含有比率は5〜25モル%であることがより好ましく、10〜20モル%であることが更に好ましく、12.5〜17.5モル%であることが特に好ましい。また、同様の観点で、前記繰り返し単位(A)及び前記繰り返し単位(B)の総量に対する前記繰り返し単位(B)の含有量は、モル量を基準として95〜65モル%である必要があり、95〜75モル%であることがより好ましく、90〜80モル%であることが更に好ましく、87.5〜82.5モル%であることが特に好ましい。
【0045】
また、本発明のポリイミドにおいては、本発明の効果を損なわない範囲において、他の繰り返し単位を含有していてもよい。このような他の繰り返し単位としては、特に制限されず、ポリイミドを構成することが可能な公知の繰り返し単位を適宜利用できる。また、本発明のポリイミドにおいては、他の繰り返し単位を含有する場合、上記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)及び上記一般式(2)で表される繰り返し単位(B)の総量が、ポリイミド中の全繰り返し単位に対して50モル%以上(より好ましくは70モル%以上)となるように、前記繰り返し単位(A)及び(B)を含有していることが好ましい。更に、このようなポリイミド中の全繰り返し単位に対する前記繰り返し単位(A)及び前記繰り返し単位(B)の総量の含有割合としては、80〜100モル%であることがより好ましく、90〜100モル%であることが更に好ましい。このようなポリイミド中の全繰り返し単位に対する繰り返し単位(A)及び(B)の総量の含有比率が、前記下限未満では、十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とをバランスよく有するものとすることが困難となる傾向にある。なお、より効率よくポリイミドを形成するといった観点からは、本発明のポリイミドが、実質的に繰り返し単位(A)及び(B)からなること(実質的に他の繰り返し単位を含まないものであること、より好ましくは前記繰り返し単位(A)及び前記繰り返し単位(B)の総量が95モル%以上であること、更に好ましくは98モル%以上であること、特に好ましくは99モル%以上であること)が好ましい。
【0046】
また、このようなポリイミドとしては、線膨張係数が−20ppm/K〜20ppm/Kであることがより好ましく、−10〜10ppm/Kであることがより好ましく、−5〜5ppm/Kであることが更に好ましい。このような線膨張係数が前記上限を超えると、線膨張係数の範囲が5〜20ppm/Kである金属や無機物と組合せて複合化した場合に熱履歴で剥がれが生じ易くなる傾向にあり、マイクロエレクトロニクスの基板として利用した場合に、マイクロエレクトロニクスの最終製品(例えば、有機ELディスプレイ、タッチパネル、半導体用保護膜(バッファーコート)、層間絶縁膜、フォトレジスト、イメージセンサー用マイクロレンズ等)を歩留まりよく製造することが困難となる。他方、前記線膨張係数が前記下限未満となると、無機物を積層した際に、剥がれやカールが発生しやすくなる傾向にある。なお、ポリイミドからなるフィルムの上層または下層にデバイスを製造する場合においてデバイスが無機化合物である場合、フィルムのカールや製造時の歪の発生を抑制するといった観点で、無機化合物と同等程度の十分に低い線膨張係数を有するポリイミドを用いることが好ましい。このような観点からも、本発明のポリイミドは、その線膨張係数を上記範囲とすることが好ましい。
【0047】
また、本発明において、ポリイミドの線膨張係数の値としては以下の値を採用する。すなわち、先ず、測定対象としてのポリイミドに関して、そのポリイミドからなる縦:20mm、横:5mm、厚み:13μmの大きさのフィルムを形成する。その後、該フィルムを真空乾燥(120℃で1時間)し、窒素雰囲気下で200℃で1時間熱処理し、乾燥フィルムを得る。そして、このようにして得られた乾燥フィルムを試料として用い、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、50℃〜200℃における前記試料の縦方向の長さの変化を測定して、50℃〜200℃の温度範囲における1℃(1K)あたりの長さの変化の平均値を求める。そして、このようにして求められた前記平均値を、本発明のポリイミドの線膨張係数の値として採用する(厚みが13μmである場合のポリイミドフィルムの線膨張係数の値を、本発明のポリイミドの線膨張係数の値として採用する。)。
【0048】
さらに、このようなポリイミドとしては、5%重量減少温度(Td5%)が400℃以上のものが好ましく、450〜550℃のものがより好ましい。このような5%重量減少温度が前記下限未満では、マイクロエレクトロニクスの製品用の基板として利用するために十分な耐熱性を得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような5%重量減少温度は、窒素ガス雰囲気下、窒素ガスを流しながら、走査温度を30℃〜550℃に設定して、昇温速度:10℃/min.の条件で加熱して、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより求めることができる。また、このような測定には、測定装置として、例えば、熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の「TG/DTA220」)を利用することができる。
【0049】
また、このようなポリイミドとしては、ガラス転移温度(Tg)が300℃以上のものが好ましく、350〜500℃のものがより好ましい。このようなガラス転移温度(Tg)が前記下限未満ではマイクロエレクトロニクスの製品用の基板として利用するために十分な耐熱性を得ることが困難となる(例えば、太陽電池や液晶表示装置や有機EL表示装置の透明電極用の基板としてポリイミドを用いた場合において、その製品の製造過程における加熱工程において、かかるポリイミド(基板)の品質の劣化(割れの発生等)を十分に抑制することが困難となる)傾向にあり、他方、前記上限を超えるとそのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このようなガラス転移温度(Tg)は、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を用いて、軟化温度測定と同一の方法で同時に測定することができる。なお、このようなガラス転移温度の測定に際しては、昇温速度:5℃/分の条件で、窒素雰囲気下、30℃から550℃の範囲を走査することで測定を行うことが好ましい。
【0050】
また、このようなポリイミドとしては、軟化温度(軟化点)が300〜550℃のものが好ましく、320〜550℃のものがより好ましく、340〜510℃のものが更に好ましい。このような軟化温度が前記下限未満では耐熱性が低下し、例えば、太陽電池や液晶表示装置や有機EL表示装置の透明電極用の基板として、かかるポリイミドからなるフィルムを用いた場合において、その製品の製造過程において、かかるフィルム(基板)の品質の劣化(割れの発生等)を十分に抑制することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリイミドを製造する際にポリアミド酸の熱閉環縮合反応と同時に十分な固相重合反応が進行せず、フィルムを形成した場合に脆くなる傾向にある。なお、このようなポリイミドの軟化温度は以下のようにして測定することができる。すなわち、測定試料として縦5mm、横5mm、厚み0.013mm(13μm)の大きさのポリイミドからなるフィルムを準備し、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件を採用して、30℃〜550℃の温度範囲の条件でフィルムに透明石英製ピン(先端の直径:0.5mm)を500mNの圧力で針入れすることによりガラス転移温度(Tg)と同時に測定することができる(いわゆるペネトレーション(針入れ)法により測定できる)。なお、このような測定に際しては、JIS K 7196(1991年)に記載の方法に準拠して、測定データに基づいて軟化温度を計算する。
【0051】
さらに、このようなポリイミドは溶剤に溶解させて分子量を測定することが困難であるため、その前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)の分子量(数平均分子量や重量平均分子量)や分子量分布を指標として、その好適なものを検討することが好ましい。このようなポリイミドの前駆体である前記ポリアミド酸(ポリアミック酸)の数平均分子量(Mn)としては、ポリスチレン換算で1000〜1000000であることが好ましく、10000〜500000であることがより好ましい。このような数平均分子量が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となるばかりか、効率よくポリイミドを得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘性が増大し、ろ過工程に長時間を要したり、粘性調整用の希釈溶剤を大量に必要とするため、加工が困難となる傾向にある。
【0052】
また、このようなポリイミドの前駆体である前記ポリアミド酸(ポリアミック酸)の重量平均分子量(Mw)としては、ポリスチレン換算で1000〜5000000であることが好ましい。また、このような重量平均分子量(Mw)の数値範囲の下限値としては、5000であることがより好ましく、10000であることが更に好ましく、20000であることが特に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)の数値範囲の上限値としては、5000000であることがより好ましく、500000であることが更に好ましく、100000であることが特に好ましい。このような重量平均分子量が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となるばかりか、効率よくポリイミドを得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると粘性が増大し、ろ過工程に長時間を要したり、粘性調整用の希釈溶剤を大量に必要とするため、加工が困難となる傾向にある。
【0053】
さらに、このようなポリイミドの前駆体である前記ポリアミド酸(ポリアミック酸)の分子量分布(Mw/Mn)は1.1〜5.0であることが好ましく、1.5〜3.0であることがより好ましい。このような分子量分布が前記下限未満では製造することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとフィルムを形成した場合に均一なフィルムを得ることが困難となる傾向にある。なお、このようなポリイミドの分子量(Mw又はMn)や分子量の分布(Mw/Mn)は、測定装置としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(TOSOH製 EcoSEC HLC−8320GPC,カラム:TOSOH製GPCカラム TSKgel Super AW2500、3000、4000、カラム温度:40℃、展開溶媒:10mMのLiBrを添加したジメチルアセトアミド溶媒(流速0.5mL/min.))を用いて測定したデータをポリスチレンで換算して求めることができる。
【0054】
また、このようなポリイミドとしては、黄色度(YI)の好適な値(16以下)との関係で、透明ディスプレイ、太陽電池、タッチパネル、フロントフィルム、透明FPC等のガラス代替フレキシブル透明材料の用途に利用した際に要求されるような高度な視認性を確保するといった観点から、全光線透過率が83%以上(更に好ましくは85%以上、特に好ましくは87%以上)のものがより好ましい。このような全光線透過率が前記下限未満では、黄色度が16以下であっても、その黄色度の値によっては各種用途に利用する際に要求される透明性(視認性)を発揮することが困難となる。
【0055】
また、このようなポリイミドとしては、より高度な透明性を得るといった観点から、ヘイズ(濁度)が5以下(更に好ましくは4以下、特に好ましくは3以下)であるものがより好ましい。
【0056】
さらに、このようなポリイミドとしては、より高度な透明性を得るといった観点から、黄色度(YI)が16.0以下(更に好ましくは11.0以下、特に好ましくは10.5以下)であるものがより好ましい。なお、このような黄色度が前記上限を超えると、当該用途に必要な高度な色相、明度、彩度、輝度、トーン、コントラスト、色度、透明性(視認性)を確保することが困難となるため、例え全光線透過率が83%以上であっても各種用途に利用する際に要求される性能を発揮することが困難となる。
【0057】
また、このような全光線透過率、ヘイズ(濁度)及び黄色度(YI)は、測定装置として、日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」又は日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」を用いて(日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」で全光線透過率とヘイズとを測定し、日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」で黄色度を測定する。)、厚みが10〜15μm(好ましくは13μm)のポリイミドからなるフィルムを測定用の試料として用いて測定した値を採用することができる。ただし、黄色度(YI)については、以下に記載のように、13μmの厚みのフィルムの測定値又は13μmの厚みのフィルムの値に換算した換算値を採用する。すなわち、全光線透過率及びヘイズ(濁度)は、厚みが10〜15μmのポリイミドからなるフィルムであれば、厚みが十分に薄く、測定値に影響がでないことから、同一のポリイミドからは同一の値を測定できる。一方、黄色度(YI)については膜厚の影響を受ける傾向にあるため、本発明においては、前記範囲(10〜15μm)の厚みを有するフィルムを測定用の試料として利用した上で、黄色度(YI)の値としては13μmの厚みのフィルムの値に換算した値(なお、13μmの厚みのフィルムを利用して測定した場合にはその測定値)を採用する。このように、本発明においては、黄色度(YI)の値は13μmの厚みのフィルムの測定値又は13μmの厚みを有するフィルムの値に換算した値を採用する。このような観点(黄色度は13μmの厚みのフィルムの値に換算した値を採用できること)から、全光線透過率、ヘイズ(濁度)及び黄色度(YI)の測定には、前記範囲(10〜15μmの範囲)の厚みを有するフィルムを利用することができる(なお、13μm以外の厚みを有するフィルムを測定用の試料として利用してYIを測定した場合には、前述のように13μmの厚みの値に換算する必要がある。そのため、そのような換算が不要となるといった観点からは、厚みが13μmのポリイミドからなるフィルムを測定用の試料として準備して利用することが好ましい。)。また、測定試料の縦、横の大きさは、前記測定装置の測定部位に配置できるサイズであればよく、縦、横の大きさは適宜変更してもよい。なお、このような全光線透過率は、JIS K7361−1(1997年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、ヘイズ(濁度)は、JIS K7136(2000年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、黄色度(YI)はASTM E313−05(2005年発行)に準拠した測定を行うことにより求める。
【0058】
なお、このようなポリイミドを製造するために好適に利用可能な方法については後述する。
【0059】
[ポリアミド酸]
本発明のポリアミド酸は、下記一般式(4):
【0061】
[式(4)中、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、R
10はフッ素含有置換基を有する炭素数6〜40のアリーレン基を示し、nは0〜12の整数を示す。]
で表される繰り返し単位(C)と、
下記一般式(5):
【0063】
[式(5)中、R
10はフッ素含有置換基を有する炭素数6〜40のアリーレン基を示す。]
で表される繰り返し単位(D)とを含有し、かつ、前記繰り返し単位(C)及び(D)の総量に対する前記繰り返し単位(C)の含有量が5〜35モル%であることを特徴とするものである。
【0064】
このようなポリアミド酸は、上記本発明のポリイミドを製造する際に好適に利用することが可能なものである(本発明のポリイミドを製造する際の反応中間体(前駆体)として得ることが可能なものである。)。このような一般式(4)中のR
1、R
2、R
3、R
10及びnは上記一般式(1)中のR
1、R
2、R
3、R
10及びnと同様のものであり、その好適なものも上記一般式(1)中のR
1、R
2、R
3、R
10及びnと同様である。また、このような一般式(5)中のR
10は上記一般式(2)中のR
10と同様のものであり(すなわち、上記一般式(1)中のR
10と同様のものであり)、その好適なものも上記一般式(2)中のR
10と同様である。
【0065】
また、本発明のポリアミド酸においては、上記一般式(4)で表される繰り返し単位(C)及び上記一般式(5)で表される繰り返し単位(D)の総量に対する前記繰り返し単位(C)の含有量がモル量を基準として5〜35モル%である。このような一般式(4)で表される繰り返し単位(C)の含有量が前記下限未満では、かかるポリアミド酸を用いてポリイミドを製造した際に、十分に高度な全光線透過率(好ましくは83.0%以上の全光線透過率)を有するものとすることが困難となる傾向にあるとともに、十分に低い線膨張係数(好ましくは−20ppm/K〜20ppm/Kの線膨張係数)を有するものとすることが困難となり、十分に高度な全光線透過率と十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とを高度な水準でバランスよく有するポリイミドを得ることができなくなる。他方、前記繰り返し単位(C)の含有量が前記上限を超えると、この場合にも、かかるポリアミド酸を用いてポリイミドを製造した際に、十分に低い線膨張係数(好ましくは−20ppm/K〜20ppm/Kの線膨張係数)を有するポリイミドを得ることができなくなり、十分に高度な全光線透過率と十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数といった特性を高度な水準でバランスよく有するポリイミドを製造することができなくなる。
【0066】
さらに、本発明のポリアミド酸においては、かかるポリアミド酸を用いて、十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とをより高度な水準でバランスよく有するポリイミドを得るといった観点から、前記繰り返し単位(C)及び前記繰り返し単位(D)の総量に対する前記繰り返し単位(C)の含有比率は5〜25モル%であることがより好ましく、10〜20モル%であることが更に好ましく、12.5〜17.5モル%であることが特に好ましい。
【0067】
また、本発明のポリアミド酸においては、本発明の効果を損なわない範囲において、他の繰り返し単位を含有していてもよい。このような他の繰り返し単位としては、特に制限されず、ポリアミド酸を構成することが可能な公知の繰り返し単位を適宜利用できる。また、本発明のポリアミド酸においては、他の繰り返し単位を含有する場合、一般式(4)で表される繰り返し単位(C)及び上記一般式(5)で表される繰り返し単位(D)の総量が、ポリアミド酸中の全繰り返し単位に対して50モル%以上(より好ましくは70モル%以上)となるように、繰り返し単位(C)及び(D)を含有していることが好ましい。更に、このようなポリアミド酸中の全繰り返し単位に対する前記繰り返し単位(C)及び前記繰り返し単位(D)の総量の含有割合としては、80〜100モル%であることがより好ましく、90〜100モル%であることが更に好ましい。このような繰り返し単位(C)及び(D)の総量の含有比率が前記下限未満では、十分に高度な全光線透過率と、十分に低い黄色度と、十分に低い線膨張係数とをバランスよく有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、かかるポリアミド酸を用いて、より効率よくポリイミドを形成するといった観点から、本発明のポリアミド酸が、実質的に繰り返し単位(C)及び(D)からなること(実質的に他の繰り返し単位を含まないものであること、より好ましくは前記繰り返し単位(C)及び(D)の総量が95モル%以上であること、更に好ましくは98モル%以上であること、特に好ましくは99モル%以上であること)が好ましい。
【0068】
また、このようなポリアミド酸としては、固有粘度[η]が0.05〜3.0dL/gであることが好ましく、0.1〜2.0dL/gであることがより好ましい。このような固有粘度[η]が0.05dL/gより小さいと、これを用いてフィルム状のポリイミドを製造した際に、得られるフィルムが脆くなる傾向にあり、他方、3.0dL/gを超えると、粘度が高すぎて加工性が低下し、例えばフィルムを製造した場合に均一なフィルムを得ることが困難となる。また、このような固有粘度[η]は、以下のようにして測定することができる。すなわち、先ず、溶媒としてテトラメチルウレア(TMU)を用い、そのテトラメチルウレア(TMU)中に前記ポリアミド酸を濃度が0.5g/dLとなるようにして溶解させて、測定試料(溶液)を得る。次に、前記測定試料を用いて、30℃の温度条件下において動粘度計を用いて、前記測定試料の粘度を測定し、求められた値を固有粘度[η]として採用する。なお、このような動粘度計としては、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC−252」)を用いる。
【0069】
以下、このようなポリアミド酸を製造するために好適に利用することが可能な方法について説明する。
【0070】
(ポリアミド酸を製造するために好適に利用可能な方法)
このようなポリアミド酸を製造するために好適に利用可能な方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、下記一般式(10):
【0072】
[式(10)中、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示す。]
で表される化合物(A)、及び、下記一般式(11):
【0074】
で表される化合物(B)を含有し、かつ、前記化合物(A)及び(B)の総量に対する前記化合物(A)の含有量が5〜35モル%であるテトラカルボン酸二無水物(化合物(I))と、
下記一般式(12):
【0076】
[式(12)中、R
10はフッ素含有置換基を有する炭素数6〜40のアリーレン基を示す。]
で表される化合物を含有するジアミン化合物(化合物(II))とを、有機溶媒の存在下において反応させることにより、
前記繰り返し単位(C)及び前記繰り返し単位(D)を含有し、かつ、前記繰り返し単位(C)及び(D)の総量に対する前記繰り返し単位(C)の含有量が5〜35モル%であるポリアミド酸を得る方法を好適に利用することができる。なお、前記繰り返し単位(C)は前記化合物(A)と前記一般式(12)で表される化合物とに由来して形成され、前記繰り返し単位(D)は前記化合物(B)と前記一般式(12)で表される化合物とに由来して形成される。
【0077】
このようなポリアミド酸の製造方法に用いる、一般式(10)で表される化合物(A)中のR
1、R
2、R
3及びnは、上記一般式(1)中のR
1、R
2、R
3及びnと同義である(その好適なものも上記一般式(1)中のR
1、R
2、R
3及びnと同様である。)また、上記一般式(12)で表される化合物中のR
10は上記一般式(1)及び(2)中のR
10と同義である(その好適なものも上記一般式(1)及び(2)中のR
10と同様である。)
このような一般式(10)で表される化合物(A)を製造する方法としては、特に制限されず、公知の方法(例えば国際公開第2011/099518号に記載されている方法等)を適宜利用することができる。
【0078】
また、上記一般式(11)で表される化合物(B)を製造するための方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができる。また、このような化合物(B)は、ピロメリット酸無水物(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸)であり、かかる化合物としては市販のものを適宜用いてもよい。
【0079】
さらに、前記一般式(12)で表される化合物を製造するための方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このような一般式(12)で表される化合物としては市販のものを適宜用いてもよい。
【0080】
また、前記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))は、該化合物(I)中の前記化合物(A)及び(B)の総量に対する前記化合物(A)の含有量が5〜35モル%のものを利用すること必要がある。このような化合物(A)の含有量が前記下限未満の場合、及び、前記上限を超える場合には、前記繰り返し単位(C)及び(D)の総量に対する前記繰り返し単位(C)の含有量を所望の範囲(5〜35モル%の範囲)とすることができなくなる。また、上記化合物(I)においては、同様の観点から、上記化合物(A)及び(B)の総量に対する前記化合物(A)の含有比率は5〜25モル%であることがより好ましく、10〜20モル%であることが更に好ましく、12.5〜17.5モル%であることが特に好ましい。
【0081】
また、前記化合物(I)としては、本発明のポリアミド酸に他の繰り返し単位を含有させるために、化合物(A)及び(B)以外の他のテトラカルボン酸二無水物を混合して利用してもよい。なお、このような化合物(A)及び(B)以外の他のテトラカルボン酸二無水物としては、ポリイミドの製造に利用することが可能な公知の他のテトラカルボン酸二無水物を適宜利用することができる。この場合においては、化合物(A)及び(B)以外の他のテトラカルボン酸二無水物の使用量は、得られるポリアミド酸における繰り返し単位(C)及び(D)の含有量が所望の範囲(上述の好適な含有量の範囲等)となるように、適宜調整すればよい。なお、前記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))としては、十分な水準の耐熱性を有するものとしつつ、十分に高度な全光線透過率と十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とをより高度な水準でバランスよく発現させるといった観点から、化合物(I)が実質的に前記化合物(A)及び(B)からなるものであること(化合物(I)が実質的に化合物(A)及び(B)以外の他のテトラカルボン酸二無水物を含まないものであること、化合物(I)において、より好ましく前記化合物(A)及び(B)の総量が95モル%以上であること、更に好ましくは98モル%以上であること、特に好ましくは99モル%以上であること、最も好ましくは100モル%であること)が好ましい。
【0082】
さらに、前記化合物(II)としては、本発明のポリアミド酸に他の繰り返し単位を含有させるために、前記一般式(12)で表される化合物以外の他のジアミン化合物(他の芳香族ジアミン及び脂環式ジアミン等)を適宜含有させることが可能である。このような他のジアミン化合物としては、ポリイミドの製造に利用することが可能な公知の他のジアミン化合物を適宜利用することができる。このような他のジアミン化合物としては、例えば、両末端アミノ変性シロキサンなどを好適に使用可能である。そのような両末端アミノ変性シロキサンの具体例としては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、信越化学工業株式会社製アミノ変性シリコーンオイル(例えば、PAM−E、KF−8010、X−22−161A、X−22−161B、KF−8012、KF−8008、X−22−1660B−3、X−22−9409等)、Gelest社製ジメチルシロキサン型ジアミン(例えば、DMS−A11、DMS−A12、DMS−A15、DMS−A21、DMS−A31、DMS−A32、、DMS−A32R、DMS−A35等)等を挙げることができる。なお、このような化合物(II)における前記一般式(12)で表される化合物以外の他のジアミン化合物の使用量は、得られるポリアミド酸における繰り返し単位(C)及び(D)の含有量が所望の範囲(上述の好適な含有量の範囲等)となるように、適宜調整する必要がある。なお、ジアミン化合物(化合物(II))としては、十分な水準の耐熱性を有するものとしつつ、十分に高度な全光線透過率と十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とをより高度な水準でバランスよく発現させるといった観点から、化合物(II)が実質的に前記一般式(12)で表される化合物からなるものであること(化合物(II)が実質的に他のジアミン化合物を含まないものであること、化合物(II)において、より好ましくは前記一般式(12)で表される化合物の総量が95モル%以上であること、更に好ましくは98モル%以上であること、特に好ましくは99モル%以上であること、最も好ましくは100モル%であること)が好ましい。
【0083】
また、前記有機溶媒としては、上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))と上記ジアミン化合物(化合物(II))の両者を溶解することが可能な有機溶媒であることが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、テトラメチル尿素(テトラメチルウレア(TMU))、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ピリジンなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒;テトラハイドロフラン、ジオキサン、セロソルブ、グライムなどのエーテル系溶媒;シクロペンタノン、シクロヘキサノンやシクロヘプタノンなどのケトン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;などが挙げられる。このような有機溶媒は、1種を単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
また、上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))と上記ジアミン化合物(化合物(II))との使用割合は、上記ジアミン化合物(化合物(II))が有するアミノ基1当量に対して、上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))中の酸無水物基を0.2〜2当量とすることが好ましく、0.8〜1.2当量とすることがより好ましい。このような使用割合が前記下限未満では重合反応が効率よく進行せず、高分子量のポリアミド酸が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると前記と同様に高分子量のポリアミド酸が得られない傾向にある。
【0085】
さらに、前記有機溶媒の使用量としては、上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))と上記ジアミン化合物(化合物(II))の総量が、反応溶液の全量に対して1〜50質量%(より好ましくは10〜30質量%)になるような量であることが好ましい。このような有機溶媒の使用量が前記下限未満では効率よくポリアミド酸を得ることができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると高粘度化により攪拌が困難となる傾向にある。
【0086】
また、上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))と上記ジアミン化合物(化合物(II))とを反応させる際に、反応速度向上と高重合度のポリアミド酸を得るという観点から、前記有機溶媒中に塩基性化合物を更に添加してもよい。このような塩基性化合物としては特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン、テトラブチルアミン、テトラヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7、ピリジン、イソキノリン、α−ピコリン等が挙げられる。また、このような塩基性化合物の使用量は、上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))1当量に対して、0.001〜10当量とすることが好ましく、0.01〜0.1当量とすることがより好ましい。このような塩基化合物の使用量が前記下限未満では添加効果が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、着色等の原因になる傾向にある。
【0087】
また、上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))と上記ジアミン化合物(化合物(II))とを反応させる際の反応温度は、これらの化合物を反応させることが可能な温度に適宜調整すればよく、特に制限されないが、−20℃〜200℃とすることが好ましい。また、上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))と上記ジアミン化合物(化合物(II))とを反応させる方法としては、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の重合反応を行うことが可能な公知の方法を適宜利用でき、特に制限されず、例えば、大気圧中、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性雰囲気下において、ジアミン化合物を溶媒に溶解させた後、前記反応温度において上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))を添加し、その後、10〜48時間反応させる方法を適宜採用してもよい。このような反応温度や反応時間が前記下限未満では十分に反応させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合物を劣化させる物質(酸素等)の混入確率が高まり分子量が低下する傾向にある。
【0088】
このようにして、有機溶媒の存在下、上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))と上記ジアミン化合物(化合物(II))とを反応させることにより、上記本発明のポリアミド酸を得ることができる。このようにしてポリアミド酸を調製した後に、前記有機溶媒中から上記本発明のポリアミド酸を単離する場合、その単離方法は特に制限されず、ポリアミド酸を単離することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、再沈殿物として単離する方法などを採用してもよい。
【0089】
[ポリアミド酸溶液]
本発明のポリアミド酸溶液は、上記本発明のポリアミド酸と有機溶媒とを含むことを特徴とするものである。このようなポリアミド酸溶液に用いる有機溶媒としては、上述のポリアミド酸を製造するために好適に利用可能な方法に用いる有機溶媒と同様のものを好適に利用することができる。そのため、本発明のポリアミド酸溶液は、上述のポリアミド酸を製造するために好適に利用可能な方法を実施して、反応後に得られた反応液をそのままポリアミド酸溶液とすることで調製してもよい。すなわち、本発明のポリアミド酸溶液は、前記有機溶媒の存在下、上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))と、上記ジアミン化合物(化合物(II))とを反応させて、ポリアミド酸を調製し、前記ポリアミド酸と前記有機溶媒とを含有する溶液を得ることにより製造してもよい。
【0090】
このようなポリアミド酸溶液における前記ポリアミド酸の含有量は特に制限されないが、1〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。このような含有量が前記下限未満ではポリアミド酸の分子量が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリイミドの製造が困難となる傾向にある。なお、このようなポリアミド酸溶液は、上記本発明のポリイミドの製造に好適に利用することができる。
【0091】
なお、このようなポリアミド酸溶液は、それをポリイミドの製造に利用する場合、ポリイミドの調製に利用することが可能な各種添加剤(高分子量化やイミド化の促進剤、劣化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、改質剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、造核剤、安定剤、密着向上剤、滑剤、離型剤、染料、発泡剤、消泡剤、表面改質剤、ハードコート剤、レべリング剤、界面活性剤、充填剤(ガラス繊維、フィラー、タルク、マイカ、シリカ等)等)を適宜添加して利用してもよい。また、このような添加剤を用いる場合に関して、ポリアミド酸溶液中の添加剤の含有量は特に制限されないが、0.0001〜80質量%(より好ましくは0.1〜50質量%)程度とすることが好ましい。
【0092】
(ポリイミドを製造するために好適に利用可能な方法)
本発明のポリイミドを製造するために好適に利用可能な方法としては、特に制限されないが、上記本発明のポリアミド酸をイミド化することにより、
前記繰り返し単位(A)と前記繰り返し単位(B)とを含有し、かつ、前記繰り返し単位(A)及び(B)の総量に対する前記繰り返し単位(A)の含有量が5〜35モル%であるポリイミドを得る方法を好適に利用することが可能である。なお、前記繰り返し単位(A)は前記繰り返し単位(C)に由来して形成され、前記繰り返し単位(B)は前記繰り返し単位(D)に由来して形成されるものである。
【0093】
このようなポリアミド酸のイミド化の方法は、ポリアミド酸をイミド化し得る方法であればよく、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、上記本発明のポリアミド酸を60〜450℃(より好ましくは80〜400℃)の温度条件で加熱処理を施すことによりイミド化する方法や、いわゆる「イミド化剤」を用いてイミド化する方法を採用することが好ましい。
【0094】
このような加熱処理を施すことによりイミド化する方法を採用する場合において、前記加熱温度が60℃未満では反応の進行が遅れる傾向にあり、他方、前記上限を超えると着色したり、熱分解による分子量低下などが起きたりする傾向にある。また、加熱処理を施すことによりイミド化する方法を採用する場合の反応時間(加熱時間)は0.5〜5時間とすることが好ましい。このような反応時間が前記下限未満では十分にイミド化することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると着色したり、熱分解による分子量低下などが起きる傾向にある。なお、上記本発明のポリアミド酸は、大気中のような酸素を含有する条件下において加熱してイミド化した場合においても、十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とをバランスよく有するポリイミドを製造することが可能なものであるため、加熱する際の雰囲気条件は特に制限されず、不活性ガス中であっても大気中であってもよい。また、大気中において、加熱して製造する場合には、より簡便な設備等においてポリイミドを製造できるばかりか、雰囲気ガスを制御することなくポリイミドを製造することができるため、最終製品の製造効率をより向上させることも可能となる。また、加熱してイミド化する場合においては、高分子量化やイミド化を促進させるために、いわゆる促進剤(添加剤)を利用してもよい。このような促進剤としては、公知の反応促進剤(例えば、イミダゾール系化合物、ピリジン系化合物、トリエチルアミン等の3級アミン系化合物、アミノ酸系化合物等)を適宜利用してもよい。このような促進剤の使用量としては、特に制限されず、例えば、ポリアミド酸溶液中の固形分(ポリアミド酸)100質量部に対して1〜60質量部であり、好ましくは5〜50質量部である。
【0095】
また、いわゆる「イミド化剤」を利用してポリアミド酸をイミド化する方法を採用する場合、イミド化剤の存在下、溶媒中で上記本発明のポリアミド酸をイミド化することが好ましい。このような溶媒としては上記本発明のポリイミド酸の製造方法に用いる有機溶媒と同様のものを好適に用いることができる。
【0096】
このようなイミド化剤としては、公知のイミド化剤を適宜利用することができ、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン、N−メチルピペリジンなどの3級アミンなどを挙げることができる。また、イミド化剤を添加してイミド化する場合におけるイミド化の際の反応温度は、0〜200℃であることが好ましく、30〜150℃であることがより好ましい。また、反応時間は0.1〜48時間とすることが好ましい。このような反応温度や時間が前記下限未満では十分にイミド化することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合物を劣化させる物質(酸素等)の混入確率が高まり分子量が低下したり色相が悪化したりする傾向にある。また、このようなイミド化剤の使用量としては、特に制限されず、ポリアミド酸中の上記一般式(5)で表される繰り返し単位1モルに対して数ミリモル〜数モル(好ましくは0.01〜4.0モル程度)とすればよい。
【0097】
また、本発明のポリイミドを製造するために好適に利用可能な方法としては、上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))と、上記ジアミン化合物(化合物(II))とを有機溶媒の存在下において反応させることにより、前記繰り返し単位(C)及び前記繰り返し単位(D)を含有し、かつ、前記繰り返し単位(C)及び(D)の総量に対する前記繰り返し単位(C)の含有量が5〜35モル%であるポリアミド酸(上記本発明のポリアミド酸)を得る工程(I)と;
前記ポリアミド酸をイミド化することにより、前記繰り返し単位(A)と前記繰り返し単位(B)とを含有し、かつ、前記繰り返し単位(A)及び(B)の総量に対する前記繰り返し単位(A)の含有量が5〜35モル%であるポリイミド(上記本発明のポリイミド)を得る工程(II)と;
を含む方法であることが好ましい。このように、本発明のポリイミドを製造する方法として工程(I)及び工程(II)を含む方法を採用した場合には、一連の工程でポリイミドを製造することが可能である。
【0098】
なお、このような工程(I)及び工程(II)を含む方法を利用する場合であって、前記イミド化に際して、加熱処理を施すことによりイミド化する方法を採用する場合には、前記工程(I)を実施した後に、上記本発明のポリアミド酸を単離することなく、有機溶媒中において上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))と上記ジアミン化合物(化合物(II))とを反応させて得られた反応液(上記本発明のポリアミド酸を含有する反応液)を、そのまま用いるかあるいは前記促進剤を添加して用い、その反応液に対して溶媒を蒸発除去する処理(溶媒除去処理)を施して溶媒を除去した後、前記加熱処理を施すことによりイミド化する方法を採用してもよい。このような溶媒を蒸発除去する処理を施すことにより、上記本発明のポリアミド酸を、フィルム状などの形態にして単離し、その後、加熱処理を施すこと等が可能となる。このような溶媒を蒸発除去する処理の方法における温度条件としては0〜180℃であることが好ましく、30〜150℃であることがより好ましい。このような溶媒を蒸発除去する処理における温度条件が前記下限未満では溶媒を十分に蒸発させて除去することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶媒が沸騰し気泡やボイドを含むフィルムになる傾向にある。この場合において、例えばフィルム状のポリイミドを製造する場合においては、得られた反応液をそのまま基材(例えばガラス板)上に塗布し、前記溶媒を蒸発除去する処理及び加熱処理を施せばよく、簡便な方法でフィルム状のポリイミドを製造することが可能となる。なお、このような反応液の塗布方法としては特に制限されず、公知の方法(キャスト法など)を適宜採用することができる。また、前記反応液から上記本発明のポリアミド酸を単離して利用する場合、その単離方法としては特に制限されず、ポリアミド酸を単離することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、再沈殿物として単離する方法などを採用してもよい。
【0099】
また、工程(I)及び工程(II)を含む方法を利用する場合であって、「イミド化剤」を利用してイミド化する方法を採用する場合、より効率よくフィルム状のポリイミドを形成するといった観点からは、有機溶媒中において上記テトラカルボン酸二無水物(化合物(I))と上記ジアミン化合物(化合物(II))とを反応させて得られた反応液をそのまま用い(工程(I)を実施した後に前記反応液から上記本発明のポリアミド酸を単離することなく、前記反応液をそのまま用い)、前記反応液にイミド化剤を添加してイミド化が十分に進行しないうちに、前記反応液をガラス等の基板に塗布し、基板上でイミド化を実施する方法を好適に採用することができる。
【0100】
[ポリイミドフィルム]
本発明のポリイミドフィルムは、上記本発明のポリイミドからなることを特徴とするものである。
【0101】
このようなポリイミドフィルムの形態は、フィルム状であればよく、特に制限されず、各種形状(円盤状、円筒状(フィルムを筒状に加工したもの)等)に適宜設計することができる。
【0102】
さらに、本発明のポリイミドフィルムの厚みは特に制限されないが、1〜500μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。このような厚みが前記下限未満では強度が低下し取扱いが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、複数回の塗工が必要となる場合が生じたり、加工が複雑化する場合が生じる傾向にある。
【0103】
このようなポリイミドフィルムは、上述のポリイミドを製造するために好適に利用可能な方法として説明した方法を採用しつつ、得られるポリイミドの形態が所望の形状(フィルム状)となるように塗工方法等を適宜調整することで製造することが可能である。
【0104】
以上、本発明のポリイミド、ポリアミド酸、ポリアミド酸溶液、及び、ポリイミドフィルムについて説明したが、このような本発明のポリイミド及びポリイミドフィルムは、十分に高度な全光線透過率と十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とを高度な水準でバランスよく有するものとなることから、金属基板等に積層した場合においても熱によりフィルムの剥がれ等が生じることを十分に抑制できるとともに十分な視認性を併せ持つことから、各種用途、例えば、フレキシブル配線基板用フィルム、耐熱絶縁テープ、電線エナメル、半導体の保護コーティング剤、液晶配向膜、有機EL用透明導電性フィルム、ディスプレイの基板材料(TFT基板、透明電極基板(例えば、有機EL用透明電極基板、電子ペーパーの透明電極基板等)等のディスプレイ用基板)、太陽電池用透明電極基板、有機EL照明用フィルム、フレキシブル基板フィルム、フレキシブル有機EL用基板フィルム、フレキシブル透明導電性フィルム、有機薄膜型太陽電池用透明導電性フィルム、色素増感型太陽電池用透明導電性フィルム、フレキシブルガスバリアフィルム、タッチパネル用の基板材料(タッチパネル用フィルム等)、フレキシブルディスプレイ用フロントフィルム、フレキシブルディスプレイ用バックフィルム、複写機用シームレスポリイミドベルト(いわゆる転写ベルト)、層間絶縁膜、センサー基板等の材料として特に有用である。更に、本発明のポリイミドは、その線膨張係数に由来して、上述のような用途の中でも、ディスプレイの基板材料(TFT基板、透明電極基板等のディスプレイ用基板)やタッチパネル用の基板材料(タッチパネル用フィルム等)等の用途に用いた場合に、最終製品(例えば有機EL素子等)の歩留まりをより改善することが可能である。
【0105】
また、このような本発明のポリイミドの特性から、例えば、マイクロエレクトロニクス(有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、タッチパネル、フレキシブルディスプレイパネル、高輝度LEDウエハ、極薄シリコンウエハ、三次元半導体パッケージ、半導体用保護膜(バッファーコート)、層間絶縁膜、フォトレジスト、イメージセンサー用マイクロレンズ等)の製品に利用する基板の材料に本発明のポリイミドを用いた場合には、装置の大型化に対応可能であるばかりか、その線膨張係数に由来して、製造時の加熱工程での割れやカール等を十分に防止して最終製品の高い歩留まりを達成でき、更には、生産効率向上、処理能力向上に貢献できるため低コストで製品を製造することも可能となる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0107】
先ず、各実施例、各比較例において得られたポリイミドフィルム等の特性の評価方法について説明する。
【0108】
<分子構造の同定>
各実施例及び各比較例で得られた化合物の分子構造の同定は、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IR測定することにより行った。
【0109】
<固有粘度[η]の測定>
各実施例及び各比較例において中間体として得られたポリアミド酸の固有粘度[η]の値(単位:dL/g)は、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC−252」)を用い、テトラメチルウレア(TMU)を溶媒とした濃度0.5g/dLの測定試料を用いて30℃の温度条件下において測定した。
【0110】
<ガラス転移温度(Tg)及び軟化温度の測定>
各実施例及び各比較例で得られたポリイミドのガラス転移温度(Tg)及び軟化温度の値(単位:℃)は、各実施例及び各比較例で製造したポリイミドからなるフィルムを用いて、縦5mm、横5mm、厚み0.013mm(13μm)の大きさの測定試料を準備し、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分、30℃〜550℃の温度範囲(走査温度)の条件でフィルムに透明石英製ピン(先端の直径:0.5mm)を500mN圧で針入れすることにより測定した(いわゆるペネトレーション(針入れ)法による測定)。なお、軟化温度の測定に際しては、上記測定試料を利用する以外は、JIS K7196(1991年)に記載の方法に準拠して、測定データに基づいて軟化温度(軟化点)を計算した。
【0111】
<5%重量減少温度(Td5%)の測定>
各実施例及び各比較例で得られたポリイミドの5%重量減少温度(Td5%)の値(単位:℃)は、各実施例及び各比較例で製造したポリイミドフィルムを用いて、熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の「TG/DTA220」)を使用して、走査温度を30℃〜550℃に設定して、窒素雰囲気下、窒素ガスを流しながら10℃/min.の条件で加熱して、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより求めた。
【0112】
<全光線透過率、ヘイズ(濁度)及び黄色度(YI)の測定>
各実施例及び各比較例で得られたポリイミドの全光線透過率の値(単位:%)、ヘイズ(濁度:HAZE)及び黄色度(YI)は、各実施例等で得られたフィルムをそのまま測定用の試料として用い、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」又は日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」を用いて、それぞれ測定を行うことにより求めた。なお、日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」で全光線透過率とヘイズを測定し、日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」で黄色度を測定した。また、全光線透過率は、JIS K7361−1(1997年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、ヘイズ(濁度)は、JIS K7136(2000年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、色度(YI)はASTM E313−05(2005年発行)に準拠した測定を行うことにより求めた。
【0113】
<線膨張係数(CTE)の測定>
線膨張係数は、各実施例及び各比較例で得られたポリイミド(フィルム形状のポリイミド)から縦:20mm、横:5mm、厚み:13μmの大きさのフィルムを形成した後に、そのフィルムを真空乾燥(120℃、1時間(Hr))し、窒素雰囲気下で200℃で1時間(Hr)熱処理して得られた試料(乾燥フィルム)をそれぞれ用い、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、50℃〜200℃における前記試料の長さの変化を測定して、100℃〜200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求めることにより測定した。
【0114】
(実施例1)
<CpODAの準備工程>
国際公開第2011/099518号の合成例1、実施例1及び実施例2に記載された方法に準拠して、下記一般式(13):
【0115】
【化15】
【0116】
で表される化合物(ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物:CpODA)を準備した。
【0117】
<ポリアミド酸の調製工程>
先ず、30mlの三口フラスコをヒートガンで加熱して十分に乾燥させた。次に、十分に乾燥させた前記三口フラスコ内の雰囲気ガスを窒素で置換し、前記三口フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、前記三口フラスコ内に、芳香族ジアミン(ジアミン化合物)として、下記一般式(14):
【0118】
【化16】
【0119】
で表される2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)4.8035g(15.00mmol:セイカ株式会社製)を添加した後、更に、テトラメチルウレア(TMU)を33.8g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%(質量%)となる量)添加して、撹拌することにより、前記テトラメチルウレア中に芳香族ジアミン(TFMB)を溶解させて溶解液を得た。
【0120】
次に、前記溶解液を含有する三口フラスコ内に、窒素雰囲気下、テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(無水ピロメリット酸:PMDA:東京化成工業株式会社製)2.7810g(12.75mmol)との混合物を添加し、窒素雰囲気下、室温(25℃)で12時間撹拌して反応液を得た。このようにして反応液中にポリアミド酸を形成した。
【0121】
なお、かかる反応液(ポリアミド酸のテトラメチルウレア溶液:ポリアミド酸溶液)の一部を利用して、ポリアミド酸の濃度が0.5g/dLとなるテトラメチルウレア溶液を調製し、上述のようにして、反応中間体であるポリアミド酸の固有粘度[η]を測定したところ、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.76dL/gであった。
【0122】
<ポリイミドからなるフィルムの調製工程:工程(i)〜(iii)>
(工程(i):溶媒除去処理)
ガラス基板として無アルカリガラス(コーニング社製の商品名「イーグルXG」、縦:100mm、横100mm、厚み0.7mm)を準備し、上述のようにして得られた反応液(ポリアミド酸溶液)を、前記ガラス基板の表面上に、加熱硬化後の塗膜の厚みが13μmとなるようにスピンコートして、前記ガラス基板上に塗膜を形成した。その後、前記塗膜の形成されたガラス基板を60℃のホットプレート上に載せて2時間静置して、前記塗膜から溶媒を蒸発させて除去した(溶媒除去処理)。
【0123】
(工程(ii):溶媒除去処理を施した後の加熱工程)
上述のようにして溶媒除去処理を施した後、前記塗膜の形成されたガラス基板を3L/分の流量で窒素が流れているイナートオーブンに投入し、イナートオーブン内で、窒素雰囲気下、25℃の温度条件で0.5時間静置した後、135℃の温度条件で0.5時間加熱し、更に、最終的に350℃の温度条件(以下、場合により「最終加熱温度条件」と称する。)で1時間加熱して、前記塗膜を硬化せしめ、前記ガラス基板上にポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)がコートされたポリイミドコートガラスを得た。
【0124】
(工程(iii):フィルムの回収工程)
次に、このようにして得られたポリイミドコートガラスを、90℃のお湯の中に浸漬して、前記ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離することにより、ポリイミドフィルム(縦:100mm、横100mm、厚み13μmの大きさのフィルム)を回収し、ポリイミドからなるフィルムを得た。
【0125】
なお、このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定した。このような測定の結果としてIRスペクトルを
図1に示す。
図1に示す結果からも明らかなように、実施例1において形成されたフィルムを構成する化合物には、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1715.3cm
−1に観察された。このような結果等に基づいて同定された分子構造から、得られたフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。
【0126】
このようにして得られたポリイミドは、用いたモノマーの種類やその量比から、前記一般式(1)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(A)に相当する繰り返し単位)と、前記一般式(2)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位)とを含有するものとなり、かつ、それらの繰り返し単位の含有比率はモル比([繰り返し単位(A)に相当する繰り返し単位]:[繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位])で15:85となる。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0127】
(実施例2)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)1.1534g(3.00mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.6172g(12.00mmol)との混合物を用い、かつ、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから34.30g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0128】
また、得られたポリイミドは、用いたモノマーの種類やその量比から、前記一般式(1)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(A)に相当する繰り返し単位)と、前記一般式(2)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位)とを含有するものとなり、かつ、それらの繰り返し単位の含有比率はモル比([繰り返し単位(A)に相当する繰り返し単位]:[繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位])で20:80となる。
【0129】
(実施例3)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.5766g(1.50mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.9446g(13.50mmol)との混合物を用い、かつ、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから33.30g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0130】
また、得られたポリイミドは、用いたモノマーの種類やその量比から、前記一般式(1)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(A)に相当する繰り返し単位)と、前記一般式(2)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位)とを含有するものとなり、かつ、それらの繰り返し単位の含有比率はモル比([繰り返し単位(A)に相当する繰り返し単位]:[繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位])で10:90となる。
【0131】
(実施例4)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)1.7297g(4.50mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.2903g(10.50mmol)との混合物を用い反応液中のポリアミド酸濃度が20mass%となる量のTMUを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0132】
また、得られたポリイミドは、用いたモノマーの種類やその量比から、前記一般式(1)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(A)に相当する繰り返し単位)と、前記一般式(2)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位)とを含有するものとなり、かつ、それらの繰り返し単位の含有比率はモル比([繰り返し単位(A)に相当する繰り返し単位]:[繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位])で30:70となる。
【0133】
(実施例5)
ポリイミドからなるフィルムの調製工程の工程(ii)において採用する最終加熱温度条件を350℃から300℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0134】
(実施例6)
ポリイミドからなるフィルムの調製工程の工程(i)に用いる反応液(ポリアミド酸溶液)を、ポリアミド酸の調製工程を実施して得られた反応液42.25g(ポリアミド酸20mass%溶液)に下記一般式(15):
【0135】
【化17】
【0136】
で表されるイミダゾール系化合物からなる促進剤(東京応化工業株式会社製)を0.8450g(ポリアミド酸溶液中の固形分(ポリアミド酸)100質量部に対して10質量部となる量)溶解させて得られる溶解液(前記促進剤を添加した反応液(ポリアミド酸溶液))に変更し、
更に、ポリイミドからなるフィルムの調製工程の工程(ii)において採用する最終加熱温度条件を350℃から300℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0137】
(実施例7)
ポリイミドからなるフィルムの調製工程の工程(i)に用いる反応液(ポリアミド酸溶液)を、ポリアミド酸の調製工程を実施して得られた反応液42.25g(ポリアミド酸20mass%溶液)に上記一般式(15)で表されるイミダゾール系化合物からなる促進剤(東京応化工業株式会社製)を0.8450g(ポリアミド酸溶液中の固形分(ポリアミド酸)100質量部に対して10質量部となる量)溶解させて得られる溶解液(前記促進剤を添加した反応液(ポリアミド酸溶液))に変更し、
ポリイミドからなるフィルムの調製工程の工程(ii)において採用する最終加熱温度条件を焼成温度を350℃から300℃に変更し、
更に、ポリイミドからなるフィルムの調製工程の工程(ii)において採用する雰囲気ガスを窒素から空気に変更した(イナートオーブン内に流すガスを窒素から空気に変更して、空気中において加熱工程を実施した)以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0138】
(実施例8)
芳香族ジアミンとして、上記一般式(14)で表される2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)4.8035g(15.00mmol:セイカ株式会社製)を単独で用いる代わりに、上記一般式(14)で表される化合物(TFMB)4.7074g(14.7mmol)とアミノ変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製の商品名「X−22−9409」)0.4020g(0.3mmol相当)との混合物を用い、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから35.02g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0139】
また、得られたポリイミドは、用いたモノマーの種類やその量比から、前記一般式(1)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(A)に相当する繰り返し単位)と、前記一般式(2)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位)とを含有するものとなり、かつ、それらの繰り返し単位の含有比率はモル比([繰り返し単位(A)に相当する繰り返し単位]:[繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位])で15:85となる。
【0140】
(比較例1)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)2.3063g(6.00mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)1.9631g(9.00mmol)との混合物を用い、かつ、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから36.3g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0141】
また、得られたポリイミドは、用いたモノマーの種類やその量比から、前記一般式(1)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(A)に相当する繰り返し単位)と、前記一般式(2)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位)とを含有するものとなり、かつ、それらの繰り返し単位の含有比率はモル比([繰り返し単位(A)に相当する繰り返し単位]:[繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位])で40:60となる。
【0142】
(比較例2)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに、上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)3.2718g(15.00mmol)を単独で用い、かつ、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから32.3g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。また、得られたポリイミドは、用いたモノマーの種類やその量比から、前記一般式(2)で表される繰り返し単位に相当する繰り返し単位(繰り返し単位(B)に相当する繰り返し単位)の含有比率が100モル%のものとなる。
【0143】
(比較例3)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに、下記一般式(16):
【0144】
【化18】
【0145】
で表される化合物(4,4’−ビフタル酸無水物:BPDA:東京化成工業株式会製)4.4133g(15.00mmol)を単独で用い、かつ、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから36.9g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0146】
(比較例4)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と、上記一般式(16)で表される化合物(4,4’−ビフタル酸無水物:BPDA:東京化成工業株式会社製)3.7513g(12.75mmol)との混合物(CpODAとBPDAとのモル比(CpODA:BPDA)は15:85)を用い、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから37.7g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0147】
(比較例5)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに、上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)3.2718g(15.00mmol)を単独で用い、 芳香族ジアミンとして、上記一般式(14)で表される2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)4.8035g(15.00mmol:セイカ株式会社製)を用いる代わりに、下記一般式(17):
【0148】
【化19】
【0149】
で表される化合物(m−トリジン:m−Tol:東京化成工業株式会社製)3.1844g(15.00mmol)を用い、かつ、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから25.8g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0150】
(比較例6)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに上記一般式(16)で表される化合物(4,4’−ビフタル酸無水物:BPDA:東京化成工業株式会社製)4.4133g(15.00mmol)を単独で用い、
芳香族ジアミンとして、上記一般式(14)で表される2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)4.8035g(15.00mmol:セイカ株式会社製)を用いる代わりに、上記一般式(17)で表される化合物(m−Tol)3.1844g(15.00mmol)を用い、かつ、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから30.4g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0151】
(比較例7)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに、下記一般式(18):
【0152】
【化20】
【0153】
で表される化合物(1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物:CHDA)0.5044g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用い、かつ、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから32.4g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0154】
(比較例8)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに、下記一般式(19):
【0155】
【化21】
【0156】
で表される化合物(1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物:CPDA)0.4728g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用い、かつ、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから32.2g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0157】
(比較例9)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに、下記一般式(20):
【0158】
【化22】
【0159】
で表される化合物(1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物:CBDA)0.4412g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用い、かつ、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから32.1g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0160】
(比較例10)
芳香族ジアミンとして、上記一般式(14)で表される2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)4.8035g(15.00mmol:セイカ株式会社製)を用いる代わりに、上記一般式(17)で表される化合物(m−Tol)3.1844g(15.00mmol)を用い、かつ、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから27.3g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0161】
(比較例11)
テトラカルボン酸二無水物として、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と上記一般式(11)で表されるピロメリット酸無水物(PMDA)2.7810g(12.75mmol)との混合物を用いる代わりに、上記一般式(13)で表される化合物(CpODA)0.8650g(2.25mmol)と、上記一般式(16)で表される化合物(4,4’−ビフタル酸無水物:BPDA:東京化成工業株式会社製)3.7513g(12.75mmol)との混合物(CpODAとBPDAとのモル比(CpODA:BPDA)は15:85)を用い、
芳香族ジアミンとして、上記一般式(14)で表される2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)4.8035g(15.00mmol:セイカ株式会社製)を用いる代わりに、上記一般式(17)で表される化合物(m−Tol)3.1844g(15.00mmol)を用い、かつ、
テトラメチルウレア(TMU)の使用量を33.8gから31.2g(反応液中のポリアミド酸の濃度が20mass%となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドからなる薄膜(ポリイミドフィルム)を得た。なお、得られたフィルムに関してIRスペクトルを測定したところ、かかるフィルムはポリイミドからなるものであることが確認された。また、得られたポリイミドに関し、特性の評価結果(上述の特性の評価方法により求めたTgや軟化温度等)を表1に示す。
【0162】
【表1】
【0163】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のポリイミド(実施例1〜8)からなるフィルムはいずれも、全光線透過率が85%以上となっており、透明性が十分に高いものであることが分かった。また、本発明のポリイミド(実施例1〜8)からなるフィルムはいずれも、黄色度(YI)が16以下(窒素雰囲気下において加熱して得られたポリイミド(実施例1〜6及び8)からなるフィルムに至っては11以下)となっているとともに、CTEが−20ppm/K〜20ppm/Kとなっていた。このように、本発明のポリイミド(実施例1〜8)からなるフィルムはいずれも、視認性が要求される用途に利用可能な程度の十分に高度な全光線透過率と十分に低い黄色度とを有するとともに、ガラスや銅などの無機物と同等程度の線膨張係数を有していることが確認された。すなわち、本発明のポリイミド(実施例1〜8)からなるフィルムはいずれも十分に高度な全光線透過率と十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とをより高度な水準でバランスよく有するものであることが確認された。なお、表1に示す結果からも明らかなように、本発明のポリイミド(実施例1〜8)は、300℃以上のTg、300℃以上の軟化温度(軟化点)、400℃以上(好ましくは450℃以上)のTd5%を有しており、十分に高い水準の耐熱性を有するものであることも分かった。また、本発明のポリイミド(実施例1〜8)は、ヘイズ(濁度:HAZE)がいずれも5以下の値(1.1以下の値)であり、ヘイズが十分に低いものであることも分かった。
【0164】
これに対して、比較例1〜2で得られたポリイミドは、線膨張係数が20ppm/Kを超える高い値となっており、十分に低い線膨張係数を有するものとはならなかった。また、比較例2で得られたポリイミドは全光線透過率も83.0よりも小さな値となっており、本発明のポリイミドで達成されているような非常に高度な水準の光の透過性(全光線透過率が好ましくは83.0以上、より好ましくは85.0以上となるような透過性)までは有していないことも分かった。
【0165】
このような結果と、実施例1〜8及び比較例1〜2で得られたポリイミドの構造(比較例1で得られたポリイミドが前記繰り返し単位(A)及び(B)の総量に対する前記繰り返し単位(A)の含有量が40モル%であり、比較例2で得られたポリイミドが前記繰り返し単位(B)の含有量が100モル%である(前記繰り返し単位(A)の含有量が0モル%である)。)とを併せ勘案すれば、前記繰り返し単位(A)及び(B)を含有しかつ前記繰り返し単位(A)及び(B)の総量に対する前記繰り返し単位(A)の比率が5〜35モル%となるポリイミドによって、十分に高度な全光線透過率(好ましくは83.0以上、より好ましくは85.0以上の全光線透過率)と十分に低い黄色度(好ましくは16以下のYI)と十分に低い線膨張係数(好ましくは−20ppm/K〜20ppm/Kの範囲のCTE)とをより高度な水準でバランスよく有するものとなることが分かった。
【0166】
また、実施例1と対比して、テトラカルボン酸二無水物の混合物において、PMDA(芳香族系テトラカルボン酸二無水物)の代わりにBPDA(芳香族系テトラカルボン酸二無水物)を用いた場合(比較例4)には、全光線透過率を十分に高度なものとすることができないばかりか、YIの値が18.2になっており、黄色度を十分に低い値とすることもできなかった。更に、BPDA(芳香族系テトラカルボン酸二無水物)を用いた場合(比較例4)には、線膨張係数も60.7ppm/Kになっており、線膨張係数を十分に低い値とすることもできなかった。このように、テトラカルボン酸二無水物の混合物において、PMDA(芳香族系テトラカルボン酸二無水物)の代わりにBPDA(芳香族系テトラカルボン酸二無水物)を用いた場合(比較例4)には、十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とを達成することができないことが分かった。なお、テトラカルボン酸二無水物をBPDAのみとした場合(比較例3)と対比しても、テトラカルボン酸二無水物をBPDAとCpODAの混合物とした場合(比較例4)とした場合には、黄色度(YI)の値が上昇していることから、CpODAと組み合わせる芳香族系のテトラカルボン酸二無水物の種類がPMDA以外の場合には、必ずしも十分に高度な全光線透過率と十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とをより高度な水準でバランスよく有するものとすることができないことが分かった。
【0167】
また、実施例1と対比して、テトラカルボン酸二無水物の混合物において、CpODA(脂肪族系のテトラカルボン酸二無水物)の代わりに、CHDA、CPDA又はCBDA(脂肪族系のテトラカルボン酸二無水物)を用いた場合(CHDA:比較例7、CPDA:比較例8、CBDA:比較例9)においては、全光線透過率が83%未満となり、83%以上の十分に高度な水準の全光線透過率を得ることができないことが分かった。
【0168】
また、実施例1と対比して、芳香族ジアミンとして、フッ素系の置換基を有するTFMBを用いる代わりにフッ素系の置換基を有していないm−Tolを利用した場合(比較例10)には、YIの値が44.6になっており、黄色度を十分に低い値(16以下のYI)とすることができなかった。さらに全光線透過率の値が75.4%になっており、83%以上の十分に高度な水準の全光線透過率を得ることができないことが分かった。同様に、芳香族酸二無水物として、PMDAを用いる代わりにBPDAを利用し、芳香族ジアミンとして、フッ素系の置換基を有するTFMBを用いる代わりにフッ素系の置換基を有していないm−Tolを利用した場合(比較例11)には、YIの値が23.2になっており、黄色度を十分に低い値(16以下のYI)とすることができなかった。さらに全光線透過率の値が79.6%になっており、83%以上の十分に高度な水準の全光線透過率を得ることができないことが分かった。
【0169】
さらに、比較例2と比較例5とを対比すると、ポリイミドの製造時に利用した芳香族ジアミンの種類が異なるものとなっているが、その芳香族ジアミンの種類からフッ素含有置換基(テトラフルオロメチル基)を有するアリーレン基が繰り返し単位に導入されている場合(比較例2)に、ポリイミドの黄色度(YI)の値がより低い値になっていることが確認できた。同様に、比較例3と比較例6とを対比すると、ポリイミドの製造時に利用した芳香族ジアミンの種類が異なるものとなっているが、その芳香族ジアミンの種類から、フッ素含有置換基(テトラフルオロメチル基)を有するアリーレン基が繰り返し単位に導入されている場合(比較例3)に、ポリイミドの黄色度(YI)の値がより低い値になっていることが確認できた。また、比較例4と比較例11とを対比すると、ポリイミドの製造時に利用した芳香族ジアミンの種類が異なるものとなっているが、その芳香族ジアミンの種類からフッ素含有置換基(テトラフルオロメチル基)を有するアリーレン基が繰り返し単位に導入されている場合(比較例4)に、ポリイミドの黄色度(YI)の値がより低い値になっていることが確認できた。
【0170】
このような芳香族ジアミンの種類による効果の違い(傾向)と、実施例1〜4の結果とを併せ考慮すれば、本願のように、前記繰り返し単位(A)及び(B)を含有し、かつ前記繰り返し単位(A)及び(B)の総量に対する前記繰り返し単位(A)の比率を5〜35モル%としたポリイミドによって、十分に高度な全光線透過率と十分に低い黄色度と十分に低い線膨張係数とをより高度な水準でバランスよく有するものとなることが分かった。
【0171】
なお、実施例7で得られたポリイミドは、加熱工程における雰囲気ガスに空気を利用した以外は実施例6と同様にして得られたものである(本発明のポリアミド酸を利用して得られたものである)。ここにおいて、一般に、脂肪族系の酸二無水物を利用してポリイミドを製造する場合であって300℃程度の高温での加熱(焼成)が必要な場合、空気中や少なくとも500ppm以上(場合により1000ppm以上)の酸素を含有するような活性ガス雰囲気下でポリアミド酸を焼成してポリイミドを製造すると、酸素酸化により、ポリイミドが黄色く変色したり、酸素酸化によるポリマー主鎖切断に伴う分子量低下によって脆化する傾向にあることが知られている。そのため、通常、脂肪族系の酸二無水物を利用して透明性の高いポリイミドを製造する場合には、より高度な視認性等を担保するために不活性ガス雰囲気下(例えば不活性ガスを含有しかつ酸素濃度が100ppm以下の雰囲気下)においてポリアミド酸を焼成してポリイミドを得ることが一般的である。これに対して、実施例7で得られた本発明のポリイミドは、空気中でポリアミド酸を加熱(焼成)して得られたものであるにも拘わらず、全光線透過率が86%以上となって非常に高度な透明性を有するばかりか、ポリイミドの黄色度(YI)が16以下となっていることが分かった。このような結果から、本発明のポリアミド酸(実施例1〜8)は、製造プロセス上、空気焼成が必要不可欠な分野や、製造時や使用時に高酸素濃度条件(例えば酸素濃度が500ppm以上となるような条件)および酸素が発生するような条件を採用する必要がある分野、等の製品に利用するポリイミドを製造した場合においても、製造後や使用時においてもポリイミドを十分な視認性を有するものとすることが可能であり、上述のような分野の製品に利用するポリイミドの調製に特に有用であることが明らかとなった。また、実施例7で得られた本発明のポリイミドは、線膨張係数が窒素中で焼成を行った実施例6や実施例1と同等程度となっており(CTE:1.2ppm/K)、窒素中で焼成を行ったものと同様に十分に低い線膨張係数を有するものであることも分かった。なお、表1に示す結果から、実施例7で得られた本発明のポリイミドは、空気中でポリアミド酸を加熱(焼成)して得られたものであるにも拘わらず、前述の通り、300℃以上のTg、300℃以上の軟化温度(軟化点)、400℃以上(好ましくは450℃以上)のTd5%を有しており、十分に高い水準の耐熱性を有するものであることも分かった。
【0172】
このような結果から、本発明のポリアミド酸(実施例1〜8)は、加熱(焼成)時の雰囲気に関係なく、例えば、窒素雰囲気下で焼成した場合(実施例1〜6及び8)であっても、あるいは、空気中で焼成した場合(実施例7)であっても、得られるポリイミドの着色を十分に抑制でき、黄色度の上昇を十分に抑制しながら、透明性が高く、かつ、線膨張係数が十分に低いポリイミドを得ることが可能であることも分かった。
【0173】
<実施例1〜8で得られるポリイミドフィルムのレーザ剥離性について>
ポリイミドからなるフィルムの調製工程において、工程(iii)(フィルムの回収工程:ポリイミドコートガラスを、90℃のお湯の中に浸漬して、前記ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離することにより、ポリイミドフィルムを得る工程)を実施しなかった以外は、それぞれ実施例1〜8に記載の工程と同様の工程を採用して、ポリイミドコートガラスをそれぞれ調製した。次に、各ポリイミドコートガラスにレーザを照射して、その剥離の可否等についての測定を行った。すなわち、レーザー発振装置としてLight Machinery社製の商品「pm848(エキシマレーザXeCl、308nm、最大パルスエネルギー320mJ/cm
2)」を用い、レーザの照射エネルギー密度を50〜320mJ/cm
2(低いエネルギー密度(50mJ/cm
2)から、剥離が確認されるまでエネルギー密度を10mJ/cm
2ごとに順次上げていき、剥離が確認される照射エネルギー密度を利用した。)とし、パルス幅を20〜30nsとし、オーバーラップ率(重なり率)を50%とし、レーザ繰り返し周波数(繰り返し率)を30Hzとし、レーザ光の照射面形状を縦14mm、横30mmの長方形とする条件で、各ポリイミドコートガラスに対して、ガラス基板側からレーザ光を照射し、ポリイミドからなるフィルムの剥離の可否(ニュートンリングが見られた場合に剥離可と判断する。)と、着色の有無、ショットムラの有無を目視で判断した。
【0174】
その結果、実施例1〜8に記載の工程と同様の工程を採用して得られたポリイミドコートガラスはいずれも、140mJ/cm
2の照射エネルギー密度でオーバーラップ率(重なり率)50%で、ポリイミドフィルムに着色やショットムラなく剥離できること(ニュートンリング確認できること)が分かった。このような結果から、本発明のポリイミドからなるフィルムは、ガラス上に積層した状態とした場合(ガラス基板上の積層物とした場合)に、レーザを照射することで品質の変化を十分に抑制しながら剥離することが可能であることも分かった。また、かかる結果から、ガラス基板(いわゆるキャリア基板等)上に、本発明のポリイミドからなるフィルムを積層した後に、そのフィルム上に薄膜トランジスタ等を直接実装し、いわゆるレーザリフトオフ加工により前記ガラス基板からポリイミドからなるフィルムを剥離することが可能であることは明らかであり、本発明のポリイミドからなるフィルムは、薄膜トランジスタ等が実装されたディスプレイ等を製造する方法等に好適に応用可能であることも分かった。