特許第6705628号(P6705628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705628
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】形質細胞様樹状細胞誘導剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20200525BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20200525BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20200525BHJP
   A23K 20/00 20160101ALI20200525BHJP
【FI】
   A61K35/747
   A61P37/04
   A61P37/02
   A61P29/00
   A61P31/12
   A23L33/135
   A23K20/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-153961(P2015-153961)
(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公開番号】特開2017-31109(P2017-31109A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年7月20日
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-5445
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】細谷 知広
(72)【発明者】
【氏名】酒井 史彦
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−099628(JP,A)
【文献】 特開2011−121923(JP,A)
【文献】 佐藤克明,pDCsと免疫応答,医学のあゆみ,2015年 8月18日,Vol.242 No.6,7,p.541
【文献】 GOUBIER ANNE, et al.,Plasmacytoid dendritic cells mediate oral tolerance,Immunity,2008年,Vol.29 No.3,pp.464-475
【文献】 DASGUPTA SURYASARATHI, et al.,Plasmacytoid dendritic cells mediate anti-inflammatory responses to a gut commensal molecule via both innate and adaptive mechanisms,Cell host & microbe,2014年,Vol.15 No.4,pp.413-423
【文献】 城内健太ら,ウイルス感染防御を担うプラズマサイトイド樹状細胞を活性化する乳酸菌の発見1,日本農芸化学会大会講演要旨集,2011年,Vol.2011,p.215
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/747
A23L 33/135
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171(FERM BP−5445)の菌体又はその培養物を有効成分とする形質細胞様樹状細胞増加剤。
【請求項2】
請求項1に記載の剤を添加した形質細胞様樹状細胞増加用の栄養組成物、飲食品又は飼料。
【請求項3】
ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171(FERM BP−5445)の菌体又はその培養物をヒト又は動物に接種させることにより形質細胞様樹状細胞を増加する方法(ただし医療行為を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)に属する乳酸菌を有効成分とする、形質細胞様樹状細胞増加剤、飲食品、栄養組成物および飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫は、多くの動物に備わった生体防御機構であり、外部より侵入する細菌やウイルスなどの病原体や生体内で生じた腫瘍細胞を排除する役割を担う。免疫系には、自然免疫系と獲得免疫系の2つのシステムが存在し、生体防御機能を担っている。自然免疫系は,先天的に備わった免疫系であり、獲得免疫系は,後天的に外来異物の刺激に応じて形成される免疫系である。細菌やウイルスなどの異物が体内に進入すると、まず自然免疫系を担うマクロファージ、NK細胞、樹状細胞が異物の除去に向けて働く。引き続いて樹状細胞は、異物の情報をT細胞やB細胞に伝達することで、異物を特異的に攻撃するCD8+T細胞や抗体産生を誘導して獲得免疫系を活性化させる。
【0003】
このように樹状細胞は、自身が自然免疫系を担当する細胞であり、かつ獲得免疫系にも関与する細胞であることから、免疫全体の司令塔として機能している。樹状細胞には様々な種類が存在するが、大きく分けて古典的樹状細胞(conventional dendritic cell:cDC)と形質細胞様樹状細胞(plasmacytoiddendritic cell:pDC)に分類される。古典的樹状細胞は強い抗原提示能を有することから、獲得免疫系の誘導に重要な役割を果たす。一方、形質細胞様樹状細胞は抗原提示能は弱いものの、異物の排除に向かう免疫賦活系だけではなく、過剰な免疫応答を抑制する免疫制御系をも調節することから、免疫系の恒常性を保つための要となっている細胞である。
【0004】
異物排除における形質細胞様樹状細胞の特徴として、ウイルス感染時に大量のI型およびIII型インターフェロン(IFN)を産生することがあげられる。I型およびIII型IFNは、ウイルスの増殖を阻止するために生体が本来保有している抗ウイルス因子の産生を誘導するサイトカインであり、ウイルス感染が組織全体へ拡大するのを防ぐ役割がある。この反応では、ウイルス由来のRNAまたはDNAが細胞のTLR7またはTLR9と結合することでI型IFNの産生が強く刺激される。したがって、これまでにも抗ウイルス剤としてTLR7またはTLR9を刺激するようなI型IFN誘導剤が広く研究されてきた。特許文献1に記載されるインターフェロン産生誘導剤は乳酸菌を有効成分とするものであるが、当該特許文献では形質細胞様樹状細胞を活性化してIFN産生を誘導するものであり、本発明が示す形質細胞様樹状細胞数を増加させるものとは本質的に異なるものである。また、当該特許文献で形質細胞様樹状細胞を活性化させる乳酸菌として示されているのはラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)のみであり、ラクトバチルス(Lactobacillus)属の乳酸菌にはその活性化作用は無いことが示されている。また、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)については一切検討されてこなかった。
【0005】
一方、免疫制御系における形質細胞様樹状細胞の特徴は、IL−10産生型T細胞や制御性T細胞を誘導することであり、炎症性疾患の抑制に大きく寄与している。一般的に免疫賦活剤で生体防御機能を高めると、生態防御機能が行き過ぎたことによる炎症の惹起が懸念される。逆に抗炎症剤などを使用すると、行き過ぎた生体防御機能の低下による感染リスクの上昇が懸念されてきた。しかし、形質細胞様樹状細胞は、免疫賦活剤と抗炎症剤の機能を併せ持ち、ウイルス感染からの重要な防御機能でありながら、同時に免疫制御系に働きかける機能を有しており、まさしく免疫機能の恒常性維持に関わる要の細胞である。したがって、生体内で形質細胞様樹状細胞の数が低下すると、ウイルス感染リスクが高まるばかりでなく炎症性疾患のリスクも高まることから、生体内での形質細胞様樹状細胞の数を増やすような薬剤または食品成分が期待されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再公表2012−91081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されるインターフェロン産生誘導材は、ウイルス感染に一定の効果を有する。しかし、全身性エリスマトーデスのように血清中のI型IFN高値が憎悪因子となる疾病も存在することから、特許文献1のようなインターフェロン産生誘導剤を用いると、必要以上に形質細胞様樹状細胞を刺激して過剰なI型IFNの産生を促してしまい好ましくない。ウイルス感染時には形質細胞様樹状細胞から相当量のI型IFNが産生されることから、平時には形質細胞様樹状細胞を活性化させるよりも、ウイルス感染時に対応できるだけの細胞数を保つことが重要と考えられる。そこで、本発明は、形質細胞様樹状細胞を増加させることで、感染症の予防と炎症疾患の予防の両者の効果をもたらすことができる形質細胞様樹状細胞の増加を誘導する医薬品や栄養組成物、飲食品および飼料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、生体内で形質細胞様樹状細胞を増加させる因子を鋭意探索した結果、乳酸菌のLactobacillus helvetivcusを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は以下の構成を有する
(1)ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)に属する乳酸菌又はその培養物を有効成分とする形質細胞様樹状細胞誘導剤。
(2)前記ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)に属する乳酸菌がラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP−5445)であることを特徴とする、(1)に記載の形質細胞様樹状細胞誘導剤。
(3)(1)又は(2)に記載の剤を有効成分として含む免疫賦活剤。
(4)(1)又は(2)に記載の剤を有効成分として含むウイルス感染予防または治療剤。
(5)(1)又は(2)に記載の剤を有効成分として含む免疫寛容誘導剤。
(6)(1)又は(2)に記載の剤を有効成分として含む抗炎症剤。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の剤を添加した栄養組成物、飲食品又は飼料。
【発明の効果】
【0009】
Lactobacillus helvetiusを摂取する事で、生体内で形質細胞様樹状細胞の増加が誘導され、ウイルスなどに対する感染予防効果とともに、過剰な免疫応答を予防、改善することができる。また、該乳酸菌を含有するチーズまたは乳酸菌飲料を食することで、形質細胞様樹状細胞を増加させることも可能となる
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】マウスにラクトバチルス・ヘルベティカス SBT2171株の菌体を経口投与し、腸間膜リンパ節における形質細胞様樹状細胞数を比較した図である。
図2】マウスにラクトバチルス・ヘルベティカス SBT2171株の菌体培養物を経口投与し、腸間膜リンパ節における形質細胞様樹状細胞数を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における乳酸菌としては、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)に属する乳酸菌を用いることができる。特に、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株(FERM BP−5445として寄託)、SBT−2161株(NITE BP−01707として寄託)、SBT2195株(FERM P−11538として寄託)、SBT2196株(FERM P−11676として寄託)、SBT0064株(FERM P−21079として寄託)、SBT0402株(FERM P−21559として寄託)等が好ましいが、これらに限定されるものではない。
ラクトバチルス・ヘルベティカスは、乳酸菌培養の常法に従って培養することができる。培養培地には、乳培地又は乳成分を含む培地、これを含まない半合成培地など種々の培地を用いることができる。このような培地としては、還元脱脂乳培地などを例示することができる。
得られた培養物から遠心分離などの集菌手段によって分離された菌体をそのまま本発明の有効成分として用いることができる。濃縮、乾燥、凍結乾燥などした菌体を用いることもできるし、加熱乾燥などにより死菌体にしてもよい。
菌体として純粋に分離されたものだけでなく、培養物、懸濁物、その他の菌体含有物や、菌体を酵素や物理的手段を用いて処理した細胞質や細胞壁画分も用いることができる。
培養物などの形態としては、合成培地であるMRS培地(DIFCO社製)、還元脱脂乳培地など一般的に乳酸菌の培養に用いられる培地を用いた培養物だけでなく、チーズ、発酵乳、乳製品乳酸菌飲料などの乳製品などを例示することができるが特に限定されるものではない。
さらに、得られた培養物から遠心分離、濾過操作などの方法を用いて、乳タンパク質沈殿や菌体成分を除去することによって調製した培養上清なども用いることができる。固形分が少ない上清であるため、飲食品などへの適用範囲が広くなる。例えば、還元脱脂乳培養物を5,000rpm、10分間遠心分離することにより培養上清を調製することができる。
本発明における形質細胞様樹状細胞誘導作用とは、形質細胞様樹状細胞の増加を誘導する作用をいう。形質細胞様樹状細胞数を増加させることで当該細胞が有する免疫賦活剤と抗炎症剤の機能を発揮させることができるからである。
【0012】
製剤化に際しては製剤上許可されている賦型剤、安定剤、矯味剤などを適宜混合して濃縮、凍結乾燥するほか、加熱乾燥して死菌体にしてもよい。これらの乾燥物、濃縮物、ペースト状物も含有される。また、ラクトバチルス・ヘルベティカスの形質細胞様樹状細胞誘導作用を妨げない範囲で、賦型剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、懸濁剤、コーティング剤、その他の任意の薬剤を混合して製剤化することもできる。剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤などが可能であり、これらを経口的に投与することが望ましい。
【0013】
本発明の形質細胞様樹状細胞誘導剤はどのような飲食品に配合しても良く、飲食品の製造工程中に原料に添加しても良い。飲食品の例としては、チーズ、発酵乳、乳製品乳酸菌飲料、乳酸菌飲料、バター、マーガリンなどの乳製品、乳飲料、果汁飲料、清涼飲料などの飲料、ゼリー、キャンディー、プリン、マヨネーズなどの卵加工品、バターケーキなどの菓子・パン類、さらには、各種粉乳の他、乳幼児食品、栄養組成物などを挙げることができるが特に限定されるものではない。
【0014】
本発明の形質細胞様樹状細胞誘導剤は、これを有効成分とする免疫賦活剤、ウイルス感染予防または治療剤、免疫寛容誘導剤、または抗炎症剤として利用することができる。
さらに、本発明の形質細胞様樹状細胞誘導剤を飼料に配合することができる。前記飲食品と同様にどのような飼料に配合しても良く、飼料の製造工程中に原料に添加しても良い。
【0015】
ラクトバチルス・ヘルベティカスの菌体又は培養物を配合して、形質細胞様樹状細胞誘導剤あるいは、形質細胞様樹状細胞誘導用飲食品、栄養組成物、飼料などの素材又はそれら素材の加工品に配合させて使用する場合、ラクトバチルス・ヘルベティカスの配合割合は特に限定されず、製造の容易性や好ましい一日投与量にあわせて適宜調節すればよい。投与対象者の症状、年齢などを考慮してそれぞれ個別に決定されるが、通常成人の場合、ラクトバチルス・ヘルベティカスの培養物などを10〜200g、あるいはその菌体自体を0.1〜5,000mg摂取できるように配合量などを調整すればよい。このようにして摂取することにより所望の効果を発揮することができる。
【0016】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
[試験例1]マウスへのラクトバチルス・ヘルベティカス生菌体の経口投与試験
1.試験方法
20匹のBalb/cマウス(7週齢、雄)を対照群(control群)とLH2171群の2群(n=10)に分け、対照群には標準食(AIN93G)を、LH2171群には標準食(AIN93G)にラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171株の凍結乾燥粉末を1%添加した食餌を自由に摂取させた。摂取開始から5週間後に解剖し、腸間膜リンパ節を摘出し細胞懸濁液を調製した。細胞を蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)解析するために、APC標識抗マウスCD11c抗体、PE標識抗マウスPDCA−1抗体、FITC標識抗マウスMHC抗体、PB標識抗マウスB220抗体で細胞表面を染色した。FACSで検出されたPDCA−1+,CD11cint,B220+,MHC+である細胞群を形質細胞様樹状細胞としてカウントし、全細胞数に対する割合を測定し図1に示した。
【0018】
2.試験結果
図1より、ラクトバチルス・ヘルベティカスを添加した食餌を摂取した群(LH2171群)の方が、添加しない食餌を摂取した群(control群)よりも腸間膜リンパ節における形質細胞様樹状細胞の割合が高いことが分かった。すなわち、ラクトバチルス・ヘルベティカス菌体の摂取によって、形質細胞様樹状細胞が増加することが示された。
【0019】
[実施例1]ラクトバチルス・ヘルベティカスの培養物の製造
原料乳を加熱殺菌(75℃、15秒間)した後、30℃まで冷却し、0.01%塩化カルシウムを添加した。さらに、市販乳酸菌スターター(LDスターター、クリスチャン・ハンセン社)0.7%及びラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171株(FERM BP−5445)1%を添加し、さらにレンネット0.003%を添加して、乳を凝固させた。このようにして得られた凝乳をカッティングし、pHが6.2〜6.1となるまで撹拌してホエーを排出して、カード粒を得た。そして、このカード粒を型詰めして圧搾し、さらに加塩して、10℃で熟成させ、ゴーダチーズタイプの硬質ナチュラルチーズを調製した。この硬質ナチュラルチーズ(6ヶ月熟成)をミンチ器(GM‐DX、日本キャリア社製)を用いてミンチし、凍結乾燥を行った。その後、コーヒーミルにより微細化し、ラクトバチルス・ヘルベティカスの培養物であるチーズ粉を得た。
【0020】
[試験例2]マウスへのラクトバチルス・ヘルベティカス培養物の経口投与試験
1.試験方法
実施例1で得られたラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171の培養物を用いて経口投与試験を行った。試験方法は試験例1に準じて行った。解剖後の腸間膜リンパ節における形質細胞様樹状細胞の全細胞数に対する割合を測定し、その結果を図2に示した。
2.試験結果
図2より、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171の培養物を添加した食餌を摂取した群(LH2171群)の方が、添加しない食餌を摂取した群(control群)よりも腸間膜リンパ節における形質細胞様樹状細胞の割合が高いことが分かった。すなわち、ラクトバチルス・ヘルベティカス培養物の摂取によって、形質細胞様樹状細胞が増加することが示された。
【0021】
[実施例2] 形質細胞様樹状細胞誘導剤(顆粒)の製造
ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171株を食用可能な合成培地(0.5%酵母エキス、0.1%トリプチケースペプトン添加)に5重量%接種し、38℃で15時間培養後、遠心分離で菌体を回収した。回収した菌体を凍結乾燥し、前記菌体の凍結乾燥粉末を得た。この凍結乾燥粉末1gを乳糖5gと混合し、顆粒状に成形して本発明の形質細胞様樹状細胞誘導剤を得た。
【0022】
[実施例3] 形質細胞様樹状細胞誘導剤(顆粒)の製造
ラクトバチルス・ヘルベティカスJCM−1120株を食用可能な合成培地(0.5%酵母エキス、0.1%トリプチケースペプトン添加)に5重量%接種し、38℃で15時間培養後、遠心分離で菌体を回収した。回収した菌体を凍結乾燥し、前記菌体の凍結乾燥粉末を得た。この凍結乾燥粉末1gを乳糖5gと混合し、顆粒状に成形して本発明の形質細胞様樹状細胞誘導剤を得た。
【0023】
[実施例4]形質細胞様樹状細胞誘導剤(散剤)の製造
第13改正日本薬局方解説書製剤総則「散剤」の規定に準拠し、上記実施例2で得られたラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171株の凍結乾燥粉末10gに乳糖(日局)400g、バレイショデンプン(日局)600gを加えて均一に混合し、本発明の形質細胞様樹状細胞誘導剤を製造した。
【0024】
[実施例5]形質細胞様樹状細胞誘導剤(散剤)の製造
第13改正日本薬局方解説書製剤総則「散剤」の規定に準拠し、上記実施例3で得られたラクトバチルス・ヘルベティカスJCM−1120株の凍結乾燥粉末10gに乳糖(日局)400g、バレイショデンプン(日局)600gを加えて均一に混合し、本発明の形質細胞様樹状細胞誘導剤を製造した。
【0025】
[実施例6]スティック状栄養健康食品の製造
ビタミンC40gまたはビタミンCとクエン酸の等量混合物40g、グラニュー糖100g、コーンスターチと乳糖の等量混合物60gに、上記実施例2で得られたラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171株の凍結乾燥粉末40gを加えて混合した。混合物を袋に詰め、本発明のスティック状栄養健康食品を150袋製造した。
【0026】
[実施例7]飼料の製造
大豆粕12kg、脱脂粉乳14kg、大豆油4kg、コーン油2kg、パーム油23.2kg、トウモロコシ澱粉14kg、小麦粉9kg、ふすま2kg、ビタミン混合物5kg、セルロース2.8kg、ミネラル混合物2kgを配合し、120℃、4分間殺菌して、実施例2で得られたラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171株10kgを配合して、飼料を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0027】
ラクトバチルス・ヘルベティカスの菌体、該乳酸菌を含有するチーズまたは乳酸菌飲料を摂取する事で、形質細胞様樹状細胞を増加させ、ウイルスなどに対する感染予防効果とともに、過剰な免疫応答を予防、改善することができ、免疫疾患に有効な医薬品となる。
【受託番号】
【0028】
[寄託生物材料への言及]
(1)ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)SBT2171
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成6年6月22日(1994年6月22日)(原寄託日)
平成8年3月6日(1996年3月6日)(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP−5445
図1
図2