(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705642
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】光学式エンコーダのための照明部
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20200525BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20200525BHJP
【FI】
G01D5/347 110S
G01D5/347 D
H01L33/00 L
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-223688(P2015-223688)
(22)【出願日】2015年11月16日
(65)【公開番号】特開2016-99351(P2016-99351A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2018年10月9日
(31)【優先権主張番号】14/543,739
(32)【優先日】2014年11月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ブリン クリスティン ヒックマン マコーイ
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー エムトマン
【審査官】
吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】
特開平2−128117(JP,A)
【文献】
特開平10−253395(JP,A)
【文献】
特開2006−214791(JP,A)
【文献】
特開2010−256080(JP,A)
【文献】
特開2007−147283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26−5/38
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明部と、測定軸方向に沿って延在し、前記照明部からの光を受光するよう配置されたスケール格子と、前記スケール格子からの光を受光するよう配置された検出器構造とを有する光学式エンコーダのための前記照明部であって、
前記照明部は、アドレス指定可能な光源アレイを有し、
前記アドレス指定可能な光源アレイは、前記測定軸方向に沿って配置された複数の単一光源を有し、
前記アドレス指定可能な光源アレイは、アドレス指定可能な、少なくとも第1及び第2の単一光源の組を提供するよう構成されており、
前記第1の単一光源の組及び前記第2の単一光源の組のうちの少なくとも一組は、前記アドレス指定可能な光源アレイの単一光源のサブセットである
照明部。
【請求項2】
単一光源の前記アドレス指定可能な第1の組は、光源の周期的なアドレス指定可能なアレイの全体であり、単一光源の前記アドレス指定可能な第2の組は、光源の周期的なアドレス指定可能なアレイのサブセットである
請求項1に記載の照明部。
【請求項3】
前記単一光源の前記アドレス指定可能な第1の組は、光源の周期的なアドレス指定可能なアレイのサブセットであり、前記単一光源の前記アドレス指定可能な第2の組は、光源の周期的なアドレス指定可能なアレイのサブセットである
請求項1に記載の照明部。
【請求項4】
少なくとも前記単一光源の前記アドレス指定可能な第1の組における前記単一光源は、第1のピッチP1で前記測定軸方向に沿って周期的に配置されている
請求項1に記載の照明部。
【請求項5】
前記単一光源の前記アドレス指定可能な第2の組における前記単一光源は、第2のピッチP2で前記測定軸方向に沿って周期的に配置されている
請求項4に記載の照明部。
【請求項6】
前記照明部は、前記光学式エンコーダに配置され、
前記照明部は、前記測定軸方向に沿って前記検出器構造に対して略中央に置かれ、前記アドレス指定可能な光源アレイの端部に近接した少なくとも一つの単一光源を除外する、前記単一光源の動作セットを使用するよう構成されている
請求項1に記載の照明部。
【請求項7】
前記単一光源の前記動作セットは、前記アドレス指定可能な光源アレイに対して中心から外れて位置している
請求項6に記載の照明部。
【請求項8】
前記照明部は、前記光学式エンコーダに配置され、
前記照明部は、前記単一光源の動作セットを使用するよう構成されており、
前記動作セットの前記単一光源は、前記測定軸方向に沿って、照明ピッチPMIに従って、周期的に間隔をあけている
請求項1に記載の照明部。
【請求項9】
前記スケール格子は、前記測定軸方向に沿ったスケールピッチPSFを有し、前記検出器構造は、前記測定軸方向に沿った検出器ピッチPdを有する光学式検出器部のセットを有し、
前記照明ピッチPMIは、式 PMI = Pd×PSF/(Pd − PSF) をほぼ満たす
請求項8に記載の照明部。
【請求項10】
前記照明部は、波長λを有する光を出力し、前記照明部は、前記測定軸方向を横断する方向に沿って、前記スケール格子から距離Zsの間隔をあけており、前記距離Zsは、式 Zs = 2×PMI×PSF/λ を満たす
請求項9に記載の照明部。
【請求項11】
前記スケール格子は、前記測定軸方向を横断する方向に沿って、前記検出器構造から距離Ziの間隔をあけており、前記距離Ziは、式 Zi = Zs×PSF/(PMI − PSF) を満たす
請求項9に記載の照明部。
【請求項12】
前記照明部は、前記光学式エンコーダに配置され、前記光学式エンコーダは、前記アドレス指定可能な光源アレイと前記スケール格子との間に、遮光素子を含まない
請求項1に記載の照明部。
【請求項13】
第1及び第2の光学式エンコーダを提供するための方法であって、
測定軸方向に沿って延在する第1のスケール格子と、検出器構造と、前記測定軸方向に沿って配置された単一光源を有しかつ少なくとも前記単一光源のアドレス指定可能な第1の組及びアドレス指定可能な第2の組を提供するよう構成されたアドレス指定可能な光源アレイを有する第1の照明部構造の第1のインスタンスと、を備える第1の光学式エンコーダを提供し、
前記第1のスケール格子とは異なる第2のスケール格子と、検出器構造と、前記第1の照明部構造の第2のインスタンスと、を備えた第2の光学式エンコーダを提供し、
前記第1の光学式エンコーダにおける前記単一光源の前記アドレス指定可能な第1の組を用いて前記第1のスケール格子を照明するよう、前記第1の照明部構造の前記第1のインスタンスを動作させ、前記第2の光学式エンコーダにおける前記単一光源の前記アドレス指定可能な第2の組を用いて前記第2のスケール格子を照明するよう、前記第1の照明部構造の前記第2のインスタンスを動作させる
方法。
【請求項14】
前記第1の光学式エンコーダの前記第1のスケール格子は、前記測定軸方向を横断する方向に沿って、前記検出器構造から第1の距離Z1の間隔をあけており、
前記第2の光学式エンコーダの前記第2のスケール格子は、前記測定軸方向を横断する方向に沿って、前記検出器構造から第2の距離Z2の間隔をあけている
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の光学式エンコーダは、前記アドレス指定可能な光源アレイと前記スケール格子との間に、遮光素子を含まない
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
光学式エンコーダの動作方法であって、
測定軸方向に沿って延在するスケール格子と、検出器構造と、前記測定軸方向に沿って配置された単一光源を有しかつ少なくとも前記単一光源のアドレス指定可能な第1の組及びアドレス指定可能な第2の組を提供するよう構成されたアドレス指定可能な光源アレイを有する照明部と、を備えた光学式エンコーダを提供し、前記第1の組及び前記第2の組のうちの少なくとも一組は、前記アドレス指定可能な光源アレイの単一光源のサブセットであり、
前記アドレス指定可能な光源アレイの全体よりも少ない前記単一光源の動作セットを用いて前記スケール格子を照明するよう、前記照明部を動作させる
方法。
【請求項17】
前記単一光源の前記動作セットを用いて前記照明部を動作させることは、前記測定軸方向に沿って前記検出器構造に対し略中央に置かれるよう、かつ、前記アドレス指定可能な光源アレイの端部に近接した少なくとも一つの単一光源を除外するために、前記単一光源の前記動作セットの調整又は選択を行う
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記単一光源の前記アドレス指定可能な第1の組及び前記アドレス指定可能な第2の組における前記単一光源は、異なる照明ピッチに従って配置され、前記単一光源の前記動作セットを用いて前記照明部を動作させることは、前記単一光源の照明ピッチを選択するために、前記単一光源の前記動作セットの調整又は選択を行う
請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には精密測定機器に関し、特に、光学式変位エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
リードヘッドを用いた種々の光学式変位エンコーダが知られており、このリードヘッドは、スケールパターンをこのリードヘッドのフォトディテクタアレイへ撮像する光学配置を有する。スケールパターンのイメージはスケールメンバと共に変位し、変位したスケールパターンイメージの移動又は位置はフォトディテクタアレイで検出される。光学式エンコーダは、スケール格子を含むスケールメンバの変移を検出するためにセルフイメージアレイを利用してもよい。タルボ・イメージ(Talbot images)としても知られる、セルフイメージの基本原理は、非特許文献1に記載されており、ここでの参照により本明細書に組み込まれるものである。セルフイメージを利用した例示的な光学式エンコーダは、特許文献1に記載されており、ここでの参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである。同様のエンコーダは、2又は3つの格子エンコーダアレイにおけるロー効果原理に従って生成されたセルフイメージを利用してもよい。一つの例は、非特許文献2に記載されている。他の光学式エンコーダは、モアレイメージング技術を利用してもよい。モアレイメージング技術を利用した光学式エンコーダの例は、特許文献2に記載されており、ここでの参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,608,813号
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0161499号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Cowley, J. M., and A. F. Moodie,“Fourier Images: I - The Point Source”,1957年, Proc.Phys.Soc.B, 70, 486
【非特許文献2】Crespo他、“Optical Encoder Based on the Lau Effect”,2000年3月, Opt.Eng.39(3), 817-824
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような典型的なエンコーダ構造は、固定ピッチを有する照明格子に依存しており、従って、照明格子の異なるピッチのための交換可能な照明部コンポーネントを利用することができない。様々なエンコーダ構造において、コスト効率のよい方法で製造することができる、シンプルかつ交換可能なコンポーネントを備えるコンパクトなリードヘッドを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
光学式エンコーダのための照明部が開示される。前記光学式エンコーダは、前記照明部と、測定軸方向に沿って延在し、前記照明部からの光を受光するよう配置されたスケール格子と、前記スケール格子からの光を受光するよう配置された検出器構造とを有する。前記照明部は、アドレス指定可能な光源アレイを有する。前記アドレス指定可能な光源アレイは、前記測定軸方向に沿って配置された複数の単一光源を有する。前記アドレス指定可能な光源アレイは、アドレス指定可能な、少なくとも第1及び第2の単一光源の組を提供するよう構成されている。
【0007】
様々な実施形態において、第1及び第2の光学式位置エンコーダを提供するための方法が提供される。前記方法は、測定軸方向に沿って延在する第1のスケール格子と、検出器構造と、前記測定軸方向に沿って配置された単一光源を有しかつ少なくとも前記単一光源のアドレス指定可能な第1の組及びアドレス指定可能な第2の組を提供するよう構成されたアドレス指定可能な光源アレイを有する第1の照明部構造の第1のインスタンスと、を備える第1の光学式エンコーダを提供し、前記第1のスケール格子とは異なる第2のスケール格子と、検出器構造と、前記第1の照明部構造の第2のインスタンスと、を備えた第2の光学式エンコーダを提供し、前記第1の光学式エンコーダにおける前記単一光源の前記アドレス指定可能な第1の組を用いて前記第1のスケール格子を照明するよう、前記第1の照明部構造の前記第1のインスタンスを動作させ、前記第2の光学式エンコーダにおける前記単一光源の前記アドレス指定可能な第2の組を用いて前記第2のスケール格子を照明するよう、前記第1の照明部構造の前記第2のインスタンスを動作させる。
【0008】
様々な実施形態において、光学式位置エンコーダの動作方法が提供される。前記方法は、測定軸方向に沿って延在するスケール格子と、検出器構造と、前記測定軸方向に沿って配置された単一光源を有しかつ少なくとも前記単一光源のアドレス指定可能な第1の組及びアドレス指定可能な第2の組を提供するよう構成されたアドレス指定可能な光源アレイを有する照明部と、を備えた光学式エンコーダを提供し、前記アドレス指定可能な光源アレイの全体よりも少ない前記単一光源の動作セットを用いて前記スケール格子を照明するよう、前記照明部を動作させる。
【0009】
前述した態様、及びこれらに付随する効果の多くは、以下の詳細な説明を図面と共に参照することにより良く理解されるものと同等のものとして、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、従来技術の光学式セルフイメージエンコーダ構造の部分的な概略分解図である。
【
図2】
図2は、光学式セルフイメージエンコーダ構造の部分的な概略分解図である。
【
図3A】
図3Aは、光学式エンコーダのための照明部の実施形態の図である。
【
図3B】
図3Bは、光学式エンコーダのための照明部の実施形態の図である。
【
図3C】
図3Cは、光学式エンコーダのための照明部の実施形態の図である。
【
図4】
図4は、光学式エンコーダのための照明部の実施形態の図である。
【
図5】
図5は、光学式エンコーダのための照明部の実施形態の図である。
【
図6A】
図6Aは、光学式エンコーダのための照明部の実施形態の図である。
【
図6B】
図6Bは、光学式エンコーダのための照明部の実施形態の図である。
【
図6C】
図6Cは、光学式エンコーダのための照明部の実施形態の図である。
【
図7】
図7は、光学式エンコーダの動作方法のフロー図である。
【
図8】
図8は、光学式エンコーダの動作方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、従来技術の光学式セルフイメージエンコーダ構造100の部分的な概略分解図である。エンコーダ構造100の特定の態様は、特許文献1に記載されたエンコーダ構造と同様であり、類推によって理解されうる。
図1に示されるように、エンコーダ構造100は、スケール格子110、照明部160、及び検出器構造125を含む。照明部160は、光源130、レンズ140、及び照明格子150を有する。スケール格子110は、ソースギャップ距離Zsだけ、照明部160から離されている。検出器構造125は、距離Ziだけスケール格子110から離されている。いくつかの実施形態において、光源130はLEDである。
【0012】
図1は、本明細書で使用される、直交するX、Y、及びZ方向を示している。X及びY方向は、スケール格子110の平面に平行であり、X方向は、意図する測定軸方向(MA)82と平行(例えば、スケール格子110の長細いパターンエレメントと垂直)である。Z方向は、スケール格子110の平面と垂直である。
【0013】
動作において、光源130から発せられた光131は、レンズ140により、スケール格子110を照らすのに十分なビーム領域で部分的又は全体的にコリメートされる。光131は、周知のセルフイメージ照明原理に従ってスケール格子110を照明するために選択された、格子開口部で部分的にコヒーレントな照明源のアレイを提供するため、照明格子150の格子構造を通過する。スケール格子110は、照明されると、空間変調された光パターン(例えば、いくつかの実施形態においては、回折次数による干渉縞光)をスケール光132として検出器構造125へ出力する。エンコーダ構造100は、周知の方法に従って、複数の回折された光が相互に作用して、検出器構造125の平面にセルフイメージ(例えば、タルボ像又はフレネル像)を作り出すよう構成される。
【0014】
多様な応用例において、検出器構造125及び照明部160は、互いに固定された関係で、例えば読取ヘッダ又はゲージ筐体(図示せず)中に実装され、周知技術に従い、ベアリングシステムによりスケール格子110に関連する測定軸に沿って導かれる。多様な応用例において、スケール格子110は、ムービングステージ又はゲージスピンドル等に取り付けられてもよい。
図1に示される構成は、透過型の構成である。スケール格子110は、空間変調された光パターンを透過によって検出器トラックへ出力する遮光部及び光伝達部(例えば、周知の薄膜パターニング技術を用いて透明基板上に作製される)を備えている。当然のことながら、同様の構成要素が反射型の実施形態において配置され得て、周知技術に従い必要に応じて、照明部160及び検出器構造125は、スケール格子110と同側に配置され、角度のある照明及び反射のために設置される。
【0015】
当然のことながら、エンコーダ構造100は、ロー効果エンコーダ構造で利用されてもよい。ロー効果エンコーダ構造を組み込んだいくつかの実施形態において、精密にコリメートされた光源を必要としない構成として、レンズ140は省略されてもよい。
【0016】
図2は、光学式のセルフイメージエンコーダ構造200の部分的な概略分解図である。2XXと番号付けられたエンコーダ構造200の素子は、
図1において1XXと番号付けられた素子と同様又は同一であり、類推によって理解されうる。
図2に示されるように、エンコーダ構造200は、スケール格子210、照明部260、及び検出器構造225を含む。照明部260は、アドレス指定可能な光源アレイ265を有する。アドレス指定可能な光源アレイ265は、測定軸方向82に沿って配置された複数の単一光源265nを有する。いくつかの実施形態において、単一光源265nは、LED光源であってもよい。スケール格子210は、測定軸方向82に沿って延在し、照明部260からの光231を受光するよう配置されている。スケール格子は、スケールピッチP
SFを有する。スケール格子210は、ソースギャップ距離Zsだけ、照明部260から離されている。検出器構造225は、距離Ziだけスケール格子210から離されており、スケール格子210からの光232を受光するよう配置されている。検出器構造225は、空間変調された光232のピッチに対応する検出器ピッチP
dに従って配置された検出器部226nを有する。光学式エンコーダ200は、アドレス指定可能な光源アレイ265とスケール格子210との間に、遮光素子を含まない。
【0017】
図3A〜3C、4、5、及び6A〜6Cに示すように、様々な実施形態において、アドレス指定可能な光源アレイ265は、少なくとも、単一光源265nのアドレス指定可能な第1の組及びアドレス指定可能な第2の組を備えている。
【0018】
いくつかの実施形態において、単一光源265nは、測定軸方向を横断する方向に沿った長細いストリップ形状で構成され、測定軸方向に沿って細い寸法を有するLEDと、LEDの基板に近接する反射素子とを含んでもよい。照明部260に適した例示的な単一光源は、アイルランドのコークのInfiniLED社によって製造される。当然のことながら、単一光源265nのそれぞれは、連続したストリップ状の光源であってもよいし、ストリップ形状のゾーンに配置された点光源(例えば、マイクロLED)で構成されてもよい。
【0019】
光学式セルフイメージエンコーダ構造200は透過型エンコーダ構造であるが、当然のことながら、照明部260は反射型のエンコーダ構造に適切に適用することができる。また、照明部260は、特許文献2に記載されているような、モアレイメージング型エンコーダ構造にも適切に適用することができる。
【0020】
図3A〜3Cは、光学式エンコーダのための照明部360の実施形態の図であり、3つの例示的な状態を示す。照明部360は、照明部260と同様であり、エンコーダ構造200に組み込むことができる。照明部360は、アドレス指定可能な光源アレイ365を有する。アドレス指定可能な光源アレイ365は、測定軸方向(MA)82に沿って配置された単一光源365nを有する。
【0021】
図3Aに示される実施形態では、単一光源365nのそれぞれが、塗りつぶしパターンによって示されるように、アドレス指定可能な第1の組366aとして作動する。この状態において、作動した単一光源は、照明ピッチP
1に従って位置している。
【0022】
図3Bに示される実施形態では、塗りつぶしパターンにより示されるように、単一光源365nのアドレス指定可能な第2の組366bが作動する。この状態において、アドレス指定可能な第2の組366bは、アドレス指定可能な光源アレイ365の単一光源のサブセットであり、照明ピッチ2×P
1に従って位置している。
【0023】
図3Cに示される実施形態では、塗りつぶしパターンにより示されるように、単一光源365nのアドレス指定可能な第3の組366cが作動する。この状態において、アドレス指定可能な第3の組366cは、アドレス指定可能な光源アレイ365の単一光源のサブセットであり、照明ピッチ3×P
1に従って位置している。
【0024】
図3A〜3Cに示される実施形態では、照明部360は、図示されていない光学式エンコーダ(例えば、エンコーダ構造200)に配置されてもよい。照明部360は、単一光源365nの動作セット(例えば、第1、第2、及びアドレス指定可能な第3の組336a、336b、又は336cのうちの1つ)を使用するように構成することができる。動作セットの単一光源は、測定軸方向に沿って、照明ピッチP
MIに従って、周期的に間隔をあけてもよい。スケール格子210は、測定軸方向に沿ってスケールピッチP
SFを有してもよい。検出器構造(例えば、
図2の検出器構造225)は、検出器構造に近接した面に位置するセルフイメージ縞のピッチに一致する測定軸方向82に沿った検出器ピッチP
dを有する光学式検出器部のセットを備えてもよい。単一光源の組336a、336b、及び336cのそれぞれに対し、照明ピッチP
MIは、次の式を満たす。
P
MI = P
d×P
SF/(P
d − P
SF) 式1
【0025】
照明部360は、
図1に示される照明部160の光源130、レンズ140、及び照明格子150といった、光源、レンズ及び照明格子ではなく、照明部のためのよりコンパクトな単一の素子を提供し、エンコーダリードヘッド内の素子の数が減少するという利点を提供する。これは、スケールピッチなどの様々なパラメータを伴うエンコーダを製造する際の製造コストを低減する。様々なエンコーダ構造において、単一光源のアドレス指定可能な組の照明ピッチP
MIは、式1に表されるように、検出器ピッチP
d及びスケールピッチP
SFの値の組み合わせに応じて選択することができる。
【0026】
図2に示されるソースギャップ距離Zs及び距離Ziもまた、式1における値に依存する。いくつかの実施形態において、照明部260は、波長λを有する光を出力し、Zsは、以下の式を満たす。
Zs = 2×P
MI×P
SF/λ 式2
【0027】
いくつかの実施形態において、距離Ziは、以下の式を満たす。
Zi = Zs×P
SF/(P
MI−P
SF) 式3
【0028】
照明部360の状態に対する例示的な実施形態において、アドレス指定可能な第1の組366aの単一光源は、24μmである照明ピッチP
1の値に従って位置してもよい。スケールピッチP
SFは8μmであってもよく、検出器ピッチP
dは12μmであってもよく、ソースギャップは948μmであってもよく、距離Ziは474μmであってもよい。照明部360の状態に対する他の例示的な実施形態において、アドレス指定可能な第3の組366bの単一光源は、48μmである照明ピッチ2×P
1の値に従って位置してもよい。スケールピッチP
SFは20μmであってもよく、検出器ピッチP
dは34.3μmであってもよく、ソースギャップは4.74mmであってもよく、距離Ziは3.39mmであってもよい。
【0029】
当然のことながら、いくつかの実施形態において、単一光源の組366a、366b、及び366cは、個々にアドレス指定可能である単一光源を備えてもよい。しかしながら、他の実施形態において、単一光源366a、366b、及び366cの組は、グループとしてアドレス指定可能であるだけであってもよい。すなわち、それらは、導体、又はプログラマブルスイッチによって相互に接続され、簡単にするために、同じ入力を介して一緒にアドレス指定されてもよい。
【0030】
当然のことながら、代替の実施形態において、照明部は、2つの組を交互配置することにより種々のピッチで配置されたアドレス指定可能な単一光源の2つの組を備えるよう構築されてもよい。これは、単一光源の組366a、366b、及び366cのピッチとは対照的に、単一の値の整数倍ではない2つのピッチを可能にするという点で、利点があり得る。
【0031】
図4は、光学式エンコーダのための照明部460の実施形態の図である。照明部460は、照明部260と同様である。照明部460は、アドレス指定可能な光源アレイ465を有する。アドレス指定可能な光源アレイ465は、測定軸方向82に沿って配置された単一光源465nを有する。アドレス指定可能な光源アレイは、単一光源465nのアドレス指定可能な第1の組466a及び単一光源465nのアドレス指定可能な第2の組466bを提供するよう構成されている。アドレス指定可能な第1の組466aは、照明ピッチP
1に従って位置する単一光源を有する。アドレス指定可能な第2の組466aは、照明ピッチP
2に従って位置する単一光源を有する。
【0032】
図4に示される状態において、アドレス指定可能な第1の組466aは、塗りつぶしパターンで示されるように、作動した単一光源で示され、アドレス指定可能な第2の組466bは、塗りつぶしパターンがないことにより示されるように、作動していない単一光源で示される。この状態において、照明部460は、第1のエンコーダ構造で使用するよう構成されている。代わりに、もう一つの状態において、異なるピッチでの照明を必要とする第2のエンコーダ構造で使用するよう照明部460を構成するために、アドレス指定可能な第1の組466aは作動していない間、アドレス指定可能な第2の組466bは作動してもよい。当然のことながら、エンコーダ構造において使用されるアドレス指定可能な単一光源の組がどちらであっても、検出器構造に対して中央に配置されるよう、照明部460は検出器構造と一列に並べられるべきである。
【0033】
図5は、光学式エンコーダのための照明部560の実施形態の図である。アドレス指定可能な光源アレイ565は、測定軸方向82に沿って配置された単一光源565nを有する。照明部560は、照明部260に類似しているが、異なるスケール格子ピッチを有する第1のスケール格子及び第2のスケール格子を備えたマルチトラックエンコーダシステムで使用するように構成されている。照明部560は、アドレス指定可能な光源アレイ565を有する。アドレス指定可能な光源アレイ565は、測定軸方向82に沿って配置された単一光源565nを有する。アドレス指定可能な光源アレイは、単一光源565nのアドレス指定可能な第1の組566a及び単一光源565nのアドレス指定可能な第2の組566bを提供するよう構成されている。アドレス指定可能な第1の組566aは、照明ピッチP
1に従って位置する単一光源を有する。アドレス指定可能な第2の組566aは、照明ピッチP
2に従って位置する単一光源を有する。
【0034】
図5に示される状態において、アドレス指定可能な第1の組566aは、塗りつぶしパターンで示されるように、作動した単一光源で示され、アドレス指定可能な第2の組566bは、塗りつぶしパターンがないことにより示されるように、作動していない単一光源で示される。この状態において、照明部560は、第1のスケール格子で使用するよう構成されている。もう一つの状態において、アドレス指定可能な第2の組566bは、第2のスケール格子での使用のため、作動してもよい。照明部560は、例えば、エンコーダ構造の光学的なレイアウトに依存して、時間変調又は連続的に、第1及び第2のスケール格子のための照明を提供するよう動作してもよい。
【0035】
図6A〜6Cは、光学式エンコーダのための照明部660の実施形態の図であり、3つの例示的な状態を示す。照明部660は、図示されていない光学式エンコーダに配置される。照明部660は、照明部260と同様である。照明部660は、アドレス指定可能な光源アレイ665を有する。アドレス指定可能な光源アレイ665は、測定軸方向82に沿って配置された単一光源665nを有する。照明部660は、単一光源665nの全体を使用する状態と、測定軸方向に沿って検出器構造に対して略中央に置かれ、アドレス指定可能な光源アレイの端部に近接した少なくとも一つの単一光源を除外した、単一光源665nの動作セットを使用する他の状態で構成される。
【0036】
図6Aに示される実施形態では、単一光源665nのそれぞれが、塗りつぶしパターンによって示されるように、第1の動作セット666aとして作動する。この状態において、第1の動作セット666aの作動した単一光源は、測定軸方向82に沿った検出器構造の視野の寸法に対応する寸法W
1内に位置している。
【0037】
図6Bに示される実施形態では、塗りつぶしパターンにより示されるように、単一光源665nの第2の動作セット666bが作動する。この状態において、第2の動作セット666bは、アドレス指定可能な光源アレイ665の単一光源のサブセットであり、測定軸方向82に沿った検出器構造の視野の寸法に対応する寸法W
2内に位置している。寸法W
2は、
図6Aに示される寸法W
1よりも小さい。したがって、以下でさらに詳細に説明されるように、照明部660のこの状態を利用するエンコーダ構造によって提供されるセルフイメージは、検出器構造の外にあるセルフイメージの一部からの迷光を除去又は低減しながらより効率的に検出器構造をカバーする、測定軸方向に沿ったより小さな寸法を有するであろうことから、
図6Bに示される状態は、
図6Aの視野よりも小さい視野を有する検出器構造により適している。これは、そのようなエンコーダ構造で低消費電力の利点を提供する。照明部660は、したがって、測定軸方向82に沿った視野の異なるサイズを有する検出器構造を備える様々なエンコーダ構造で使用することができ、様々な構成を製造する際の製造コストの低減もできる。モアレイメージング技術を利用した従来のエンコーダ構造は、検出器構造のより大きな視野を満たすため、より大きなソースギャップ距離を必要とする。照明部660は、より小さなソースギャップ距離を有する検出器構造のより大きな視野を満たす性能を可能にする。
【0038】
図6Cに示される実施形態では、塗りつぶしパターンにより示されるように、単一光源665nの第3の動作セット666cが作動する。この状態において、第3の動作セット666cは、アドレス指定可能な光源アレイ665の単一光源のサブセットであり、寸法W
2内に位置し、
図6Bに示される動作セット666bと同じサイズである。単一光源の動作セット666cは、アドレス指定可能な光源アレイに対して中心から外れて位置している。具体的には、
図6Cにおける作動した単一光源は、
図6Bに示される第2の動作セット666bの“中心”位置に対して、測定軸方向に沿って値Δxだけオフセットされている。組み立ての際に照明部660全体を機械的に整列する代わりに、検出器構造に対する配列を補正するための必要性に応じて測定軸方向に沿って単一光源の組を作動させ又は作動させないことができるので、組み立てコストを低減することができる。
【0039】
図7は、光学式エンコーダの動作方法のフロー
図700である。ブロック710で、測定軸方向に沿って延在する第1のスケール格子と、検出器構造と、測定軸方向に沿って配置された単一光源を有しかつ少なくとも単一光源のアドレス指定可能な第1の組及びアドレス指定可能な第2の組を提供するよう構成されたアドレス指定可能な光源アレイを有する第1の照明部構造の第1のインスタンスと、を備えた第1の光学式エンコーダが提供される。ブロック720で、第1のスケール格子とは異なる第2のスケール格子と、検出器構造と、第1の照明部構造の第2のインスタンスと、を備えた第2の光学式エンコーダが提供される。ブロック730で、第1の照明部構造の第1のインスタンスは、第1の光学式エンコーダにおける単一光源のアドレス指定可能な第1の組を用いて第1のスケール格子を照明するよう動作し、第1の照明部構造の第2のインスタンスは、第2の光学式エンコーダにおける単一光源のアドレス指定可能な第2の組を用いて第2のスケール格子を照明するよう動作する。例えば、照明部360は、照明ピッチP
1を必要とする第1のエンコーダにおいて、アクセス指定可能な単一光源の第1の組366aを用いて動作してもよく、照明ピッチ2×P
1を必要とする第2のエンコーダにおいて、アクセス指定可能な単一光源の第2の組366bを用いて動作してもよい。もう一つの例として、照明部660は、単一光源のアドレス指定可能な第1の組666aにより提供される幅W
1を有する照明に対応する視野を必要とする第1のエンコーダにおいて動作してもよく、単一光源のアドレス指定可能な第2の組666bにより提供される幅W
2を有する照明に対応する視野を必要とする第2のエンコーダにおいて動作してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、第1の光学式エンコーダの第1のスケール格子は、測定軸方向を横断する方向に沿って、検出器構造から第1の距離Z
1の間隔をあけてもよく、第2の光学式エンコーダの第2のスケール格子は、測定軸方向を横断する方向に沿って、検出器構造から第2の距離Z
2の間隔をあけてもよい。いくつかの実施形態において、ソースギャップ距離も同様に、第1と第2の光学式エンコーダの間で、変化してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の光学式エンコーダは、アドレス指定可能な光源アレイとスケール格子との間に、遮光素子を含まなくてもよい。
【0042】
図8は、光学式エンコーダの動作方法のフロー
図800である。ブロック810で、測定軸方向に沿って延在するスケール格子と、検出器構造と、測定軸方向に沿って配置された単一光源を有しかつ少なくとも単一光源のアドレス指定可能な第1の組及びアドレス指定可能な第2の組を提供するよう構成されたアドレス指定可能な光源アレイを有する照明部と、を備えた光学式エンコーダが提供される。ブロック820で、照明部は、アドレス指定可能な光源アレイの全体よりも少ない単一光源の動作セットを用いて、スケール格子を照明するよう動作する。
【0043】
いくつかの実施形態において、ブロック820で、単一光源の動作セットを用いた照明部の動作は、測定軸方向に沿って検出器構造に対し略中央に置かれるよう、かつ、アドレス指定可能な光源アレイの端部に近接した少なくとも一つの単一光源を除外するために、単一光源の動作セットの調整又は選択を有してもよい。例えば、
図6Cに関連して説明したように、単一光源の動作セット(例えばアドレス指定可能な第3の組366c)は、組み立ての際に照明部全体を機械的に整列する代わりに、検出器構造に対する配列を補正するための必要性に応じて測定軸方向に沿って、作動させられ又は作動させられなくてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、ブロック820で、単一光源のアドレス指定可能な第1の組及びアドレス指定可能な第2の組における単一光源は、異なる照明ピッチに従って配置されてもよく、単一光源の動作セットを用いた照明部の動作は、単一光源の照明ピッチを選択するために、単一光源の動作セットの調整又は選択を有してもよい。
【0045】
種々の実施形態を示して説明したが、示し且つ説明した特徴の構成及び動作のシーケンスにおける非常に多くのバリエーションは、本開示に基づき当業者にとって明らかであろう。よって、当然のことながら、本発明の精神と範囲から逸脱すること無く種々の変更が成され得る。