(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面処理工程で使用される表面処理組成物中における砥粒の数を前記研磨工程において使用される研磨用組成物における砥粒の数で除した値が0.00001以上0.5以下であることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハの研磨方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事項であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における技術常識に基づいて本発明の範囲内のものとして実施することが可能である。
本発明の一実施態様の研磨方法における研磨工程は、いわゆる多段階研磨または表面処理を含んでもよい。例えば、研磨工程はラッピング工程(粗研磨工程)、予備研磨工程、最終研磨工程を含んでもよい。また、本発明の一実施態様の研磨方法は、研磨工程と前記研磨工程の後に行う表面処理工程を含むものであるが、表面処理工程は、シリコンウェーハのダメージ層を改善するための表面処理で使用してもよいし、シリコンウェーハの研磨処理後のリンスで使用してもよい。
【0011】
本発明の研磨方法の一実施態様による表面処理工程は、通常のシリコンウェーハのリンスで用いられるのと同じ装置および条件で使用することができる。例えば、シリコンウェーハの表面にパッドを接触させた状態でその接触面にリンス用組成物を供給しながら、パッドおよび/またはシリコンウェーハを回転させることで、シリコンウェーハの表面処理工程を行うことができる。
【0012】
本発明の研磨方法の一実施態様において使用されるパッドは、不織布タイプ、スウェードタイプなどのいずれの種類のものであってもよく、またパッド中に砥粒を含むものであっても砥粒を含まないものであってもよい。
本発明の研磨方法の一実施態様における表面処理組成物の使用時の温度は特に限定されないが、5〜60℃であってもよい。
【0013】
本発明の一実施態様の表面処理組成物を用いたシリコンウェーハのリンスは、シリコンウェーハの研磨の直後、研磨に用いた装置に取り付けられたままのシリコンウェーハに対して行うこともできる。この場合、パッド上に残っている研磨用組成物中に塩基性化合物が含まれていても、その塩基性化合物によってシリコンウェーハ表面に荒れが生じるのを抑制することができる。
【0014】
本発明の一実施態様の研磨工程で使用する研磨用組成物と表面処理工程で使用する表面処理組成物は、通常使用されるシリコンウェーハ研磨用の組成物を使用することができるが、研磨用組成物と表面処理組成物では砥粒の数を変えている。すなわち、砥粒の数以外の組成については、シリコンウェーハの研磨工程で使用することができる研磨用組成物であればよく、何ら限定されるものではない。本発明の一実施形態の研磨用組成物は、砥粒に加え、例えば、塩基性化合物、水溶性高分子、キレート剤、界面活性剤、その他成分等を必要に応じて含む。これらの成分組成は、研磨工程と表面処理工程において、同じであってもよいし、変更してもよい。例えば、表面処理工程における成分組成の濃度を研磨工程におけるものより低くしてもよい。以下にこれら成分について説明するが、これは例示であって、これらに限定されるものでない。
【0015】
研磨用組成物及び表面処理組成物
(砥粒)
研磨工程で使用する研磨用組成物および表面処理工程で使用する表面処理組成物は砥粒を含有する。砥粒はシリコンウェーハ基板の表面に対して、物理的な作用を与えて物理的に研磨を行い、または洗浄等の表面処理を行う。
【0016】
本発明の研磨方法における表面処理工程で使用する表面処理組成物中における砥粒の含有量は1.0×10
10個/mL以上1.0×10
13個/mL以下であるが、好ましくは5.0×10
10個/mL以上5.0×10
12個/mL以下であってもよい。砥粒の含有量をこの範囲にすることによって、シリコンウェーハ表面の欠陥をより低減することができる。
本発明の研磨方法における研磨工程で使用する研磨用組成物中における砥粒の含有量は1.0×10
11個/mL以上1.0×10
15個/mL未満であってよく、好ましくは1.0×10
12個/mL以上2.0×10
13個/mL未満であってよい。砥粒の含有量の増大によって、シリコンウェーハ基板を研磨する際に高い研磨速度が得られ、砥粒の含有量の減少によって、研磨用組成物の安定性が向上する。研磨用組成物中の砥粒の含有量をこの範囲にすることによって、研磨速度を高めつつ、その後表面処理工程によってシリコンウェーハ表面の欠陥をより低減することができる。なお砥粒の含有量は、研磨用組成物中の砥粒の濃度と二次粒子径から、8.68×10
18×砥粒の濃度[重量%]/(砥粒の平均二次粒子径[nm])
3により算出される。
【0017】
本発明の研磨方法における前記表面処理工程で使用される表面処理組成物中における砥粒の数を前記研磨工程において使用される研磨用組成物における砥粒の数で除した値を0.00001以上0.5以下、さらに0.001以上0.2以下としてもよい。研磨用組成物中および表面処理組成物中の砥粒の含有量をこの範囲にすることによって、シリコンウェーハ表面の欠陥をより低減することができる。
【0018】
砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子、及び有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子、炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子、ダイヤモンド粒子、炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子が挙げられる。
【0019】
これらの具体例の中でもシリカが好ましい。シリカの具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、及びゾルゲル法シリカから選ばれるシリカ粒子が挙げられる。これらシリカ粒子の中でも、シリコンウェーハ基板の研磨面に生じるスクラッチを減少させるという観点において、コロイダルシリカ及びフュームドシリカから選ばれるシリカ粒子、特にコロイダルシリカを用いることが好ましい。これらのうち一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
シリカの真比重は、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.6以上であり、更に好ましくは1.7以上である。シリカの真比重の増大によって、シリコンウェーハ基板を研磨する際に高い研磨速度が得られる。シリカの真比重は、好ましくは2.2以下であり、より好ましくは2.0以下であり、更に好ましくは1.9以下である。シリカ真比重の減少によって、研磨後のシリコンウェーハ基板の表面品質が向上する作用がある。具体的にはヘイズの改善効果などがある。シリカの真比重は、シリカの粒子を乾燥させた際の重量とこのシリカの粒子に容量既知のエタノールを満たした際の重量とから算出される。
【0021】
砥粒の平均一次粒子径は5nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上であり、更に好ましくは20nm以上である。砥粒の平均一次粒子径の増大によって、シリコンウェーハ基板を研磨する際に高い研磨速度が得られる。砥粒の平均一次粒子径は100nm以下であることが好ましく、より好ましくは70nm以下であり、更に好ましくは50nm以下である。砥粒の平均一次粒子径の減少によって、研磨用組成物の安定性が向上する。
【0022】
砥粒の平均一次粒子径の値は、例えば、BET法により測定される比表面積から算出される。砥粒の比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の「FlowSorbII 2300」を用いて行うことができる。
砥粒の平均二次粒子径は10nm以上であることが好ましく、より好ましくは20nm以上であり、更に好ましくは30nm以上である。砥粒の平均二次粒子径の増大によって、シリコンウェーハ基板を研磨する際に高い研磨速度が得られる。砥粒の平均二次粒子径は200nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。砥粒の平均二次粒子径の減少によって、研磨用組成物の安定性が向上する。砥粒の平均二次粒子径は、例えば、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いた動的光散乱法により測定することができる。
【0023】
砥粒の長径/短径比の平均値は1.0以上であることが好ましく、より好ましくは1.05以上であり、更に好ましくは1.1以上である。上記長径/短径比の平均値の増大によって、シリコンウェーハ基板を研磨する際に高い研磨速度が得られる。砥粒の長径/短径比の平均値は3.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以下であり、更に好ましくは1.5以下である。上記長径/短径比の平均値の減少によって、シリコンウェーハ基板の研磨面に生じるスクラッチが減少する。
【0024】
上記長径/短径比は、砥粒の粒子形状を示す値であり、例えば、電子顕微鏡を用いた写真観察により求めることができる。具体的には、走査型電子顕微鏡を用いて、所定個数(例えば200個)の砥粒を観察し、各々の粒子画像に外接する最小の長方形を描く。そして、各粒子画像に対して描かれた長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を算出するとともに、その平均値を算出することにより、長径/短径比の平均値を求めることができる。
【0025】
(塩基性化合物)
研磨用組成物中には塩基性化合物を含有させることができる。塩基性化合物は、シリコンウェーハ基板の研磨面に対して、化学的な作用を与えて化学的に研磨する(ケミカルエッチング)。これにより、シリコンウェーハ基板を研磨する際の研磨速度を向上させることが容易となる。
【0026】
塩基性化合物の具体例としては、無機の塩基性化合物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物又は塩、水酸化第四級アンモニウム又はその塩、アンモニア、アミン等が挙げられる。アルカリ金属の具体例としては、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。塩の具体例としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。第四級アンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物又は塩の具体例としては、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム等が挙げられる。水酸化第四級アンモニウム又はその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類等が挙げられる。これらの塩基性化合物は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
塩基性化合物の中でも、アンモニア、アンモニウム塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩、及び第四級アンモニウム水酸化物から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。塩基性化合物の中でも、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種がより好ましい。塩基性化合物の中でも、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、及び水酸化テトラエチルアンモニウムから選ばれる少なくとも一種が更に好ましく、一層好ましくはアンモニア及び水酸化テトラメチルアンモニウムの少なくとも一方であり、最も好ましくはアンモニアである。
【0028】
研磨用組成物および表面処理組成物中における塩基性化合物の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.002質量%以上であり、更に好ましくは0.003質量%以上である。研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の増大によって、シリコンウェーハ基板を研磨する際に高い研磨速度が得られる傾向となる。研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量は、1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下であり、更に好ましくは0.2質量%以下であり、最も好ましくは0.1質量%以下である。研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の減少によって、シリコンウェーハ基板の形状が維持され易くなる傾向となる。
【0029】
研磨用組成物のpHは8.0以上であることが好ましく、より好ましくは8.5以上であり、更に好ましくは9.0以上である。研磨用組成物のpHの増大によって、シリコンウェーハ基板を研磨する際に高い研磨速度が得られる傾向となる。研磨用組成物のpHは11.0以下であることが好ましく、より好ましくは10.8以下であり、更に好ましくは10.5以下である。研磨用組成物のpHの減少によって、シリコンウェーハ基板の粗さを低減できる傾向となる。
【0030】
(水)
水は他の成分の分散媒又は溶媒となる。水は研磨用組成物に含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下とされることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂を用いる不純物イオンの除去、フィルターによる粒子の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。具体的にはイオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を用いることが好ましい。
【0031】
(水溶性高分子)
水溶性高分子は、研磨時やリンス処理時等のシリコンウェーハ基板の表面処理時において、シリコンウェーハ基板の研磨面の濡れ性を高める。研磨用組成物は、水溶性高分子として、研磨用組成物の調製時に固体又は固形の状態で水に投入される固体原料の水溶性高分子を含有する。固体原料とは、水に溶解する前の原料の状態において、温度23℃、相対湿度50%、及び1気圧の環境下にて目視で固体又は固形の状態のものを意味する。又、水溶性高分子は水、又は水とアルコール、ケトン等の水系有機溶剤との混合溶剤中において単量体から合成されるものもあるが、その溶液状態のままの水系液形態のもの、あるいは、揮発性溶剤を留去した水溶液形態のものも含む。なお、以下では「固体原料の水溶性高分子」や「水系形態の水溶性高分子」、「水溶液形態の水溶性高分子」を単純に「水溶性高分子」と記載する。
【0032】
水溶性高分子としては、分子中に、カチオン基、アニオン基及びノニオン基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するもの、具体的には、分子中に水酸基、カルボキシル基、アシルオキシ基、スルホ基、アミド基、アミジノ基、イミノ基、イミド基、第四級窒素構造、前記官能基単位を含む複素環構造、ビニル構造、ポリオキシアルキレン構造等を含むもののいずれも使用することができる。具体例としては、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンを構造の一部に含む共重合体、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルカプロラクタムを構造の一部に含む共重合体、ポリアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリルロイルモルホリン、ポリアミジン、ポリエチレンイミン、親水化ポリイミド、各種ポリアミノ酸、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)等のイミン誘導体、ポリビニルアルコールの水酸基部分の一部を第四級窒素構造に置換したポリビニルアルコール誘導体、ポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレン構造を有する重合体、これらのジブロック型やトリブロック型、ランダム型、交互型といった複数種の構造を有する重合体等が挙げられる。なお、ポリ(メタ)アクリル酸の表記は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、他の化合物についても同様である。
【0033】
上記水溶性高分子の中でも、シリコンウェーハ基板の研磨面における濡れ性の向上、パーティクルの付着の抑制、及び表面粗さの低減等の観点から、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロイルモルホリン、又はポリオキシアルキレン構造を有する重合体が好適である。セルロース誘導体の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。セルロース誘導体の中でも、シリコンウェーハ基板の研磨面に濡れ性を与える能力が高く、良好な洗浄性を有する点から、ヒドロキシエチルセルロースが特に好ましい。また、水溶性高分子は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
水溶性高分子の重量平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算で、1000以上であることが好ましく、より好ましくは10000以上であり、更に好ましくは50000以上であり、最も好ましくは100000以上である。水溶性高分子の重量平均分子量の増大によって、シリコンウェーハ基板の研磨面の濡れ性が高まる傾向となる。水溶性高分子の重量平均分子量は、2000000以下であることが好ましく、より好ましくは1500000以下であり、更に好ましくは1000000以下である。水溶性高分子の重量平均分子量の減少によって、研磨用組成物の安定性がより保たれる傾向となる。また、更にシリコンウェーハ基板の研磨面のヘイズレベルが低減する傾向となる。
【0035】
研磨用組成物中、および表面処理組成物中における水溶性高分子の含有量は、0.002質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.004質量%以上であり、更に好ましくは0.006質量%以上であり、一層好ましくは、0.008質量%以上、最も好ましくは0.01質量%以上である。研磨用組成物中における水溶性高分子の含有量の増大によって、シリコンウェーハ基板の研磨面の濡れ性がより向上する傾向となる。研磨用組成物中における水溶性高分子の含有量は、0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下であり、一層好ましくは、0.05質量%以下であり、最も好ましくは0.03質量%以下である。研磨用組成物中における水溶性高分子の含有量の減少によって、研磨用組成物の安定性がより保たれる傾向となる。
【0036】
(キレート剤)
研磨用組成物および表面処理組成物中にはキレート剤を含有させることができる。キレート剤は、研磨系中の金属不純物成分を捕捉して錯体を形成することによってシリコンウェーハ基板の金属汚染を抑制する。
キレート剤の具体例としては、アミノカルボン酸系キレート剤、及び有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが挙げられる。有機ホスホン酸系キレート剤の具体例としては、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1,−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸が挙げられる。これらキレート剤の中でも、有機ホスホン酸系キレート剤、特にエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)を用いることが好ましい。キレート剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(界面活性剤)
研磨用組成物および表面処理組成物中には界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤は、シリコンウェーハ基板の研磨面の荒れを抑制する。これにより、シリコンウェーハ基板の研磨面のヘイズレベルを低減することが容易となる。特に、研磨用組成物に塩基性化合物を含有させた場合には、塩基性化合物による化学的研磨(ケミカルエッチング)によってシリコンウェーハ基板の研磨面に荒れが生じ易くなる傾向となる。このため、塩基性化合物と界面活性剤との併用は特に有効である。
【0038】
界面活性剤としては、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の中でも、ノニオン性界面活性剤が好適に用いられる。ノニオン性界面活性剤は、起泡性が低いため、研磨用組成物の調製時や使用時の取り扱いが容易となる。また、例えばイオン性の界面活性剤を用いた場合よりも、pH調整が容易となる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、オキシアルキレンの単独重合体、複数の種類のオキシアルキレンの共重合体、ポリオキシアルキレン付加物が挙げられる。オキシアルキレンの単独重合体の具体例としては、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレン及びポリオキシブチレンが挙げられる。複数の種類のオキシアルキレンの共重合体の具体例としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。
【0039】
ポリオキシアルキレン付加物の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。更に具体的には、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンペンチルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミド、ポリオキシエチレンオレイルアミド、ポリオキシエチレンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルチミン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0040】
これらのノニオン性界面活性剤の中でも、オキシアルキレンの単独重合体又は複数の種類のオキシアルキレンの共重合体を用いることが好ましい。この場合には、研磨後のシリコンウェーハ基板の研磨面のヘイズを実用上特に好適なレベルにまで低減することが容易である。それは、僅かな親水性を有するエーテル結合と僅かな疎水性を有するアルキレン基がこれらの重合体の分子鎖中に交互に存在することが理由と考えられる。
【0041】
また、オキシアルキレンの単独重合体又は複数の種類のオキシアルキレンの共重合体におけるオキシエチレン単位の比率は、85質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上である。重合体中のオキシエチレン単位の比率の増大によって、研磨後のシリコンウェーハ基板の研磨面に対するパーティクルの付着が抑制される傾向がある。
【0042】
界面活性剤の分子量は、典型的には10000未満であり、研磨用組成物の濾過性や被研磨物の洗浄性等の観点から9500以下が好ましい。また、界面活性剤の分子量は、典型的には200以上であり、ヘイズ低減効果等の観点から250以上が好ましく、300以上がより好ましい。なお、界面活性剤の分子量としては、GPCにより求められる重量平均分子量(Mw)(水系、ポリエチレングリコール換算)または化学式から算出される分子量を採用することができる。
【0043】
界面活性剤の分子量のより好ましい範囲は、界面活性剤の種類によっても異なり得る。例えば、界面活性剤としてポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック共重合体を用いる場合には、Mwが1000以上のものが好ましく、2000以上のものがより好ましく、5000以上のものがさらに好ましい。
また、ノニオン性界面活性剤のHLB(hydrophile-lipophile Balance)値は、8以上であることが好ましく、より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上である。ノニオン性界面活性剤のHLB値の増大によって、研磨後のシリコンウェーハ基板の研磨面に対するパーティクルの付着が抑制される傾向がある。
【0044】
なお、界面活性剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。研磨用組成物中における界面活性剤の含有量は、0.0001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.001質量%以上である。界面活性剤の含有量の増大によって、研磨後の半導体基板表面のヘイズがより減少される傾向がある。研磨用組成物中の界面活性剤の含有量は0.05質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%以下である。界面活性剤の含有量の減少によって、研磨後のシリコンウェーハ基板の研磨面に対するパーティクルの付着が抑制される傾向がある。
【0045】
(その他成分)
研磨用組成物は、必要に応じて研磨用組成物に一般に含有されている公知の添加剤、例えば有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等を更に含有してもよい。例えば、有機酸、有機酸塩、無機酸及び無機酸塩のいずれかを添加した場合には、水溶性高分子との相互作用により、研磨後のシリコンウェーハ基板の研磨面の親水性を向上させることができる。
【0046】
有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。有機酸塩の具体例としては、有機酸の具体例で記載した有機酸のナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、又はアンモニウム塩が挙げられる。
【0047】
無機酸の具体例としては、硫酸、硝酸、塩酸、炭酸等が挙げられる。無機酸塩の具体例としては、無機酸の具体例で記載した無機酸のナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、又はアンモニウム塩が挙げられる。
有機酸塩及び無機酸塩の中でも、シリコンウェーハ基板の金属汚染を抑制するという点から、アンモニウム塩が好ましい。
有機酸及びその塩、並びに無機酸及びその塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
次に、本実施形態の表面処理組成物の作用を記載する。
従来、水溶性高分子の水溶液がリンス工程などの表面処理組成物として有用であることが知られている。これは、シリコンウェーハ基板の表面を水溶性高分子で保護することにより、シリコンウェーハ表面を保護するためであると考えられる。本発明者らは、鋭意研究の結果、表面処理工程において適量の砥粒を含有することで、シリコンウェーハ基板表面の保護性を飛躍的に向上することができることを見出した。
【0049】
水溶性高分子による基板表面への親水性の付与作用は、基板表面に水溶性高分子が吸着することによって発現するが、基板表面に水溶性高分子を吸着させるためには、二酸化ケイ素をキャリアとして機能させることが重要になる。すなわち、研磨用組成物中において、二酸化ケイ素の表面に水溶性高分子を吸着させた状態としておくことにより、研磨時において、二酸化ケイ素と基板表面とが擦れ合う際に二酸化ケイ素の表面に吸着した水溶性高分子が基板表面へ移行する。これにより、基板表面に水溶性高分子を効率的に吸着させることができる。その結果、基板表面に付与される親水性を効果的に高めることができ、基板に生じる微小な表面欠陥を抑制することが容易となる。なお、基板表面に水溶性高分子が吸着する際は、基板と水溶性高分子の炭素との間に疎水結合が生じていると考えられる。
【0050】
研磨装置
次に、研磨装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による片面研磨装置を示す斜視図である。
研磨装置11は、上面に研磨パッド14が貼り付けられた円板状の回転定盤12を備えている。回転定盤12は、
図1の矢印13a方向に回転する第1シャフト13に対して一体回転可能に設けられている。回転定盤12の上方には少なくとも一つのウェーハホルダ15が設けられている。ウェーハホルダ15は、
図1の矢印16a方向に回転する第2シャフト16に対して一体回転可能に設けられている。ウェーハホルダ15の底面には、セラミックプレート17及び図示しないウレタンシートを介して、ウェーハ保持孔18を有するウェーハ保持プレート19が取り外し可能に取り付けられている。研磨装置11は、研磨用組成物供給機21及び図示しないリンス用組成物供給機をさらに備えている。研磨用組成物供給機21は、ノズル21aを通じて研磨用組成物を吐出し、リンス用組成物供給機は図示しないノズルを通じてリンス用組成物を吐出する。研磨用組成物供給機21及びリンス用組成物供給機のいずれか一方が回転定盤12の上方に配置される。回転定盤12の上方に配置された一方の供給機と回転定盤12の上方に配置されない他方の供給機とは互いに取り替え可能である。
【0051】
研磨、表面処理および洗浄方法
シリコンウェーハを研磨するときには、
図1に示すように研磨用組成物供給機21が回転定盤12の上方に配置される。研磨すべきシリコンウェーハはウェーハ保持孔18内に吸引されてウェーハホルダ15に保持される。まず、ウェーハホルダ15及び回転定盤12の回転が開始され、研磨用組成物供給機21からは研磨用組成物が吐出されて研磨パッド14上に研磨用組成物が供給される。そして、シリコンウェーハを研磨パッド14に押し付けるべく、ウェーハホルダ15が回転定盤12に向かって移動させられる。これにより、研磨パッド14と接するシリコンウェーハの面が研磨される。
【0052】
続いて、研磨されたシリコンウェーハを表面処理するときには、研磨用組成物供給機21に代わって表面処理用組成物供給機が回転定盤12の上方に配置される。研磨装置11の稼働条件を研磨用の設定から表面処理用の設定に切り替えた後、表面処理用組成物供給機から表面処理用組成物が吐出されて研磨パッド14上に表面処理用組成物が供給される。これにより、研磨パッド14と接するシリコンウェーハの面が表面処理される。
シリコンウェーハ表面の研磨は複数の段階に分けて行なわれることが好ましい。例えば、粗研磨の第1段階、精密研磨の第2段階を経て、表面処理を行ってもよいし、精密研磨後に仕上げ研磨を行った後表面処理を行ってもよい。その後、必要に応じて、洗浄を行ってもよい。
【実施例】
【0053】
それぞれ表1に示される種類と含有量の砥粒(コロイダルシリカ)、水溶性高分子(ヒドロキシエチルセルロース:HEC、ポリビニルアルコール:PVA、ポリアクリロイルモルホリン:PACMO)、界面活性剤(実施例8のみ、ポリオキシエチレンデシルエーテル:C10PEO5、実施例9のみ、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド:PEO−PPO−PEO)、塩基性化合物(アンモニア)を含む研磨用組成物および表面処理組成物を使用して、直径300mmのシリコンウェーハを以下の条件により、研磨処理、これに続いて表面処理、洗浄を行った。なお、比較例3では純水のみで表面処理を行い、比較例4では実質的に研磨工程のみ行い終了した。
なお、表中のコロイダルシリカの光散乱粒子径は、上記コロイダルシリカ分散液を測定サンプルとして、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いて測定された体積平均粒子径である。
【0054】
【表1】
【0055】
(研磨工程の条件)
研磨機として株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨機、型式「PNX−332B」を使用して、荷重を15kPaに設定した。定盤回転数を30rpm、ヘッド回転数を30rpm、組成物の供給速度を2.0リットル/分(掛け流し使用)、研磨用組成物の温度を20℃とし、120秒間研磨処理を行った。
【0056】
(表面処理工程の条件)
研磨機として研磨工程と同じ岡本工作機械製作所製「PNX−332B」を使用して、同一定盤上で研磨工程に引き続き、荷重を8kPaに変更し、定盤回転数を30rpm、ヘッド回転数を30rpm、組成物の供給速度を2.0リットル/分(掛け流し使用)、表面処理組成物の温度を20℃とし、20秒間表面処理を行った。
【0057】
(洗浄条件)
表面処理後のシリコンウェーハを、NH
4OH(29%):H
2O
2(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC−1洗浄)。その際、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、表面処理後のシリコンウェーハを第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て、第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
【0058】
(評価方法)
上記の条件により研磨処理、表面処理、洗浄を行った後、シリコンウェーハ表面が親水となっている面積を目視で評価した。欠陥数は、ケーエルエー・テンコール社製のウェーハ検査装置、商品名「SurfscanSP2」を用いて、洗浄後の直径300mmのシリコンウェーハ表面に存在する37nm以上の大きさのパーティクルの個数(LPD数)をカウントした。結果を表1に示した。
表1に示されるように、表面処理工程における表面処理組成物中の砥粒数が7.6×10
11〜1.5×10
12/cm
3とした実施例1〜9では、表面処理組成物中に砥粒を含まない比較例1〜3および表面処理組成物中に砥粒を1.4×10
13含む比較例4に比較して欠陥数が大きく低下したことが確認できた。