【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度経済産業省 エネルギー使用合理化技術開発等委託費「革新的製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のミニマルファブシステムは、ハーフインチサイズのウェハを単位処理装置で一枚ずつ処理する方法であり、ハーフインチサイズのウェハ上に印刷等された被現像物を現像する装置として、上記特許文献2に記載のスピン現像装置が知られているものの、ハーフインチサイズのウェハ(被処理体)を現像したり、洗浄したりする際に、処理液を供給する処理液供給装置において、例えば0.2ml程度の非常に少ない量の処理液を、ウェハ上に正確に供給することができる装置については、知られていない。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、上記したミニマルファブシステム等に使用することのできる、ハーフインチサイズのようなきわめて小さいウェハへの処理液の供給方式として、非常に少ない量の処理液を正確に供給することができる処理液供給装置を備えたウェット処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、
ミニマルファブシステム用のウェハ
の外周を周方向に亘って保持するための係止片部を有するステージと、
処理液供給装置と
、を備え、前記処理液供給装置は
、処理液を吸入し
て前記ステージに設置されたウェハ上に吐出するためのシリンジと、前記処理液が充填された処理液タンクと、一端が前記処理液タンクに接続され、他端が前記シリンジに接続され、前記処理液タンクに充填された処理液を前記シリンジへ吸入させる充填用配管と、一端が前記充填用配管の中間部に接続され、他端が所定の供給箇所へ配設され、前記シリンジから吐出された処理液を所定の供給箇所へ供給するための供給用配管と、前記供給用配管および前記充填用配管の接続位置に取り付けられ、これら供給用配管および充填用配管それぞれの開閉制御が可能な開閉弁と
、下端面の中心位置に設けられた吐出口を有し、前記吐出口を前記係止片部の同心状に、前記ステージに対向させて設けられ、前記処理液供給装置から処理液が供給されて前記吐出口から吐出する円筒状のノズルと、を具備し、前記ノズルは、前記ウェハの外径寸法以上の外径寸法
を有するように形成されていることを特徴とするウェット処置装置とした。
【0008】
このように構成された本発明によれば、開閉弁にて供給用配管を閉止し充填用配管を開放した状態でシリンジを駆動させて、処理液タンクに充填された処理液のうちの所定量をシリンジに吸入させてから、開閉弁にて充填用配管を閉止し供給用配管を開放した状態とする。この状態で、シリンジを駆動させ、このシリンジに吸入させた所定量の処理液を供給用配管へ吐出させることにより、この所定量の処理液を、供給用配管を介して所定の供給箇所へ供給することができる。よって、シリンジからの処理液の吐出量を適切に制御することによって、非常に少ない量の処理液であっても、所定の供給箇所へ正確に供給することができるから、例えば、ハーフインチサイズのようなきわめて小さいウェハへの処理液の供給方式に適している。また同時に、ノズルの外径寸法をウェハの外径寸法以上にすることによって、ウェハ上に留まる薬液量を一定にできる。さらにこの状態で、ノズルからの処理液の供給速度を一定にしたり、意図して制御した供給速度で処理液をウェハ上に供給したりすることにより、ウェハ上に供給された処理液が、ノズルの中心から外周へと流れていくため、処理液の供給による化学反応速度等を安定化できる。
【0009】
また本発明は、上記発明において、前記シリンジは、軸方向に沿って貫通した注入口を有するピストン部と、このピストン部の基端側の少なくとも一部が軸方向に進退自在に挿入された有底筒状のシリンジ本体とを備え、前記充填用配管の他端は、前記シリンジのピストン部の先端側の前記注入口に接続されていることを特徴とするウェット処置装置とした。
【0010】
このように構成された本発明によれば、例えば、シリンジのピストン部の先端側を上方に向けた状態で、シリンジ本体に対してピストン部を相対的に下方に移動させて、シリンジ本体内に吸入させた処理液をピストン部の注入口から充填用配管へ吐出させる際の初期段階で、このシリンジ本体に吸込んでしまった気体を効率良くピストン部の注入口から充填用配管へ排出することができる。したがって、シリンジ本体内に吸入した処理液を所定の供給箇所へ供給する前に、シリンジ本体に対してピストン部を相対的に下方に移動させ、シリンジ本体内の気体を効率良く排出してから、所定の供給箇所への処理液の供給を開始させることにより、シリンジ本体内に吸込んだ気体に基づく処理液の供給量のばらつきを抑制できるため、所定の供給箇所への処理液の供給をより精度良く行うことが可能となる。
【0011】
また本発明は、上記発明において、前記処理液タンクは、前記処理液の吸入に伴い外気を取り込むための開口部と、この開口部に向けて不活性ガスを供給するガス供給部とが設けられていることを特徴とするウェット処置装置とした。
【0012】
このように構成された本発明は、処理液タンクの開口部に向けて不活性ガスを供給することにより、処理液タンク内の処理液を、充填用配管を介してシリンジに吸入させる際に、この処理液とともに取り込んでしまうおそれのある処理液タンク内の気体を不活性ガスにすることができる。この結果、処理液とともに酸素等の気体を取り込み、この取り込んだ気体とともに処理液を所定の供給箇所に供給した場合に生じ得る、ウォーターマーク等の発生を防止することができる。
【0013】
また本発明は、上記発明において、前記開閉弁は、前記供給用配管および前記充填用配管を別個に開閉制御可能な三方弁であることを特徴とするウェット処置装置とした。
【0014】
このように構成された本発明は、供給用配管および充填用配管それぞれの開閉制御が可能な開閉弁を、これら供給用配管および充填用配管を別個に開閉制御可能な三方弁とすることにより、これら供給用配管および充填用配管それぞれの開閉制御をより正確に行うことができる。この結果、処理液タンクに充填された処理液を、より正確にシリンジ内に吸入できるとともに、シリンジに吸入させた処理液を、より正確に所定の供給箇所へ供給することができる。
【0015】
また本発明は、上記発明において、前記処理液供給装置は、前記ウェハ上からこぼれ落ちない程度の量の処理液を前記ウェハ上に供給することを特徴とするウェット処置装置とした。
【0016】
このように構成された本発明は、ウェハ上からこぼれ落ちない程度の量の処理液であっても、処理液供給装置のシリンジにて吸入した処理液を、シリンジの駆動にてシリンジから吐出させることにより、ウェハ上に正確に供給することができる。
【0017】
また本発明は、上記発明において、前記ウェハは、外径12.5mmの円盤状であるウェット処理装置とした。
【0018】
このように構成された本発明は、いわゆるミニマルファブシステムに用いられるきわめて小さな外径12.5mmの円盤状のウェハであっても、処理液供給装置の処理液の吐出量を適切に制御することによって、非常に少ない量の処理液を、ウェハ上に正確に供給することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シリンジからの処理液の吐出量を適切に制御することによって、非常に少ない量の処理液であっても、所定の供給箇所へ正確に供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
<全体構成>
本発明の第1実施形態に係るウェット処理装置1は、
図1に示すように、予め規格された大きさの筐体2内に収容されたミニマルファブ(minimal fabrication)構想に基づく単位処理装置にて構成されている。ウェット処理装置1は、例えば吐出対象物であるウェハW上に所定の処理液である薬液Lを供給して洗浄等する際に用いられる。ここで、ミニマルファブ構想とは、多品種少量という半導体製造市場に最適なもので、省資源・省エネルギー・省投資・高性能な多様なファブに対応でき、例えば特開2012−54414号公報に記載の生産をミニマル化させるミニマル生産システムを実現させるものである。
【0023】
筐体2は、上下方向に長手方向を有する略直方体状に形成された、幅(x)0.30m×奥行(y)0.45m×高さ(z)1.44mの大きさに統一され、内部への微粒子およびガス分子のそれぞれの侵入を遮断する構造とされている。筐体2の上側の装置上部2aには、ウェハWを処理するための種々の処理装置本体3が収容されている。処理装置本体3としては、例えばウェハWの表面を洗浄するための一つの処理工程を行うことが可能な構造となっている。筐体2の下側には、装置上部2a内の処理装置本体3を制御する制御装置等を内蔵するための装置下部2bが設けられている。装置下部2bには、処理装置本体3での処理に用いられる種々のユニットが収容されている。また、装置下部2bには、筐体2を支持するための支持部mが設けられている。
【0024】
筐体2の装置上部2aの上下方向の中間部には、この装置上部2aの正面側が上方に凹状に切り欠かれた形状とされている。装置上部2aの上側の正面側には、操作パネル2cが取り付けられている。装置上部2aの下側の部分は、ウェハWを筐体2内に搬入させる前室2dとされている。前室2dの上面の略中央部には、搬送容器としてのシャトル(図示せず)を設置するためのシャトル収容部としての略円形状のドッキングポート2eが設けられている。前室2dは、筐体2内への微粒子およびガス分子のそれぞれを遮断する構成となっている。前室2dには、シャトル内に収容されているウェハWを外気に曝す等することなく筐体2内へ出し入れできるようにするPLAD(Particle Lock Air-tight Docking)システム(図示せず)が取り付けられている。
【0025】
<処理装置本体>
処理装置本体3は、所定の大きさに成形された略円盤状または矩形状のウェハWの表面を洗浄処理するウェット処理装置としてのウェハ洗浄機を構成する洗浄ユニットである。処理装置本体3による洗浄としては、ウェハW上のレジスト除去、エッチング、付着している残渣等を取り除く等を目的としたものを含む。処理装置本体3にて洗浄するウェハWは、所定の大きさ、例えば直径12.5mm(ハーフインチサイズ)の円形状の表面を有する円盤状に形成されている。ウェハWには、予め所定のパターンが形成され洗浄前の状態とされている。なお、ウェハWとしては、フォトレジスト膜が除去されたベアシリコンウェハ等であっても用いることができる。
【0026】
処理装置本体3は、
図2および
図3に示すように、洗浄チャンバ31を備えている。洗浄チャンバ31の中心位置には、上面にウェハWを保持するための係止片部32aを設けたステージ32が設けられている。ステージ32は、例えばモータ等の駆動源(図示せず)にて水平方向に回転可能に構成され、ステージ32の上面に対向して、処理液保持材としての円柱状の液保持材33が同心状に取り付けられている。液保持材33の内部には、ステージ32の係止片部32aに係止させて保持したウェハWの表面状態を撮影するための撮影装置としてのCCDカメラ(図示せず)と、この液保持材33を介してウェハW上に供給された薬液を超音波振動させるための超音波振動子(図示せず)が取り付けられている。
【0027】
洗浄チャンバ31内には、ステージ32の係止片部32aに係止させて保持したウェハWの表面に、例えば過酸化水素水(H
2O
2・H
2O)や、水酸化アンモニウム水溶液(NH
4OH・H
2O)等の薬液Lを供給するための薬液吐出用のノズル34,35が複数、例えば2本ほど取り付けられている。各ノズル34,35は、それぞれの先端部を、ステージ32の係止片部32aと、液保持材33の下端面との間に近接させた状態、すなわちステージ32の脇からウェハW上に薬液Lを供給する構成となっている。ノズル34,35にて供給される薬液Lは、予め所定の濃度に純水にて希釈されて処理液タンクとしての薬液ボトル42に充填されている。
【0028】
洗浄チャンバ31に隣接した位置には、洗浄チャンバ31のステージ32の係止片部32aに係止させてステージ32上に保持したウェハW上に、所定の薬液Lを供給するための処理液供給装置としての薬液供給装置41が取り付けられている。薬液供給装置41は、ノズル34,35の本数に応じた台数、具体的にはノズル1本に対して1台の薬液供給装置41となるように取り付けられている。各薬液供給装置41は、所定の薬液Lを充填するための薬液ボトル42を備えている。薬液ボトル42は、例えば有底円筒状に形成され、例えば100cc程度の所定量の薬液Lが充填されて貯留されている。薬液ボトル42には、薬液ボトル42内の薬液Lの吸入による容量減少に伴い外気を吸込んで薬液ボトル42内に取り込むための開口部42aが設けられ、この開口部42aに対向させてガス供給部としての窒素ガス供給装置43が取り付けられている。窒素ガス供給装置43は、不活性ガスである窒素(N2)ガスGを開口部42aへ吹き付けて、薬液ボトル42内へ吸い込ませて供給させるための吹付用ノズル43aを有している。吹付用ノズル43aは、先端部が段状に拡径されており、この拡径した先端側を、薬液ボトル42の開口部42aの先端部に同心状に対向させつつ、この開口部42aの先端部を覆うように取り付けられている。
【0029】
薬液ボトル42の上端部には、薬液ボトル42内の薬液Lを吸入するための管状の吸入用ホース44が取り付けられている。吸入用ホース44は、薬液ボトル42内に貯留された薬液Lを、薬液ボトル42内からシリンジ45へ吸入させるための充填用配管である。吸入用ホース44の一端部は、薬液ボトル42の上端部から挿入され、この薬液ボトル42内の薬液L中に挿入されている。吸入用ホース44の他端部は、この吸入用ホース44を介して薬液ボトル42内の薬液Lを吸入するためのシリンジ45が取り付けられている。シリンジ45は、有底略円筒状のシリンジ本体46と、このシリンジ本体46に進退可能に挿入されたピストン部47とを備えている。シリンジ45は、フッ素樹脂等の耐性に優れた素材にて形成され、例えば1.5mlの薬液Lを吸入できる構成となっている。
【0030】
シリンジ本体46は、開口部46aを上方に向けた状態とされ、このシリンジ本体46の円筒状の周面部46bに、このシリンジ本体46を上下方向、すなわち軸方向に沿って駆動させる駆動装置46cが取り付けられている。駆動装置46cは、その駆動源としてパルス制御可能な精密モータであるパルスモータ(図示せず)を備えている。そして、駆動装置46cは、パルスモータをパルス制御して駆動することにより、シリンジ本体46を軸方向に沿って上下動させる直線移動機である。
【0031】
ピストン部47は、シリンジ本体46の周面部46bの内径寸法に等しい外径寸法を有する円筒状のピストン本体47aを備えている。ピストン本体47aは、シリンジ本体46の開口部46aから、このピストン本体47aの基端側の少なくとも一部をシリンジ本体46の周面部46b内に進退自在に挿入されて取り付けられている。ここで、シリンジ本体46の底部からピストン本体47aの下端部までの間の内部空間Sは、その最大容量を、ノズル35からウェハWへ供給する一度の供給量より大きくなるように設けられている。ピストン本体47aの中心位置には、このピストン本体47aの軸方向に沿った注入口47bが設けられている。注入口47bは、ピストン本体47aの軸方向の先端面から基端面までに亘って貫通している。ピストン本体47aの基端側には、このピストン本体47aの周方向に亘って形成された円環状のフランジ47cが設けられている。そして、ピストン部47は、ピストン本体47aの基端側の一部をシリンジ本体46の開口部46aに挿入したとされて、例えば洗浄チャンバ31の外側面等にねじ止め等にて固定されている。
【0032】
ピストン部47の先端側の注入口47bには、吸入用ホース44の他端側が接続されている。吸入用ホース44の中間部には、ピストン部47から吐出された薬液Lを所定の供給箇所、すなわちウェハW上に供給するための供給用ホース48の一端側が接続されている。供給用ホース48の他端側は、薬液Lの供給箇所となる、ノズル35の基端部に接続されている。すなわち、供給用ホース48は、シリンジ45のシリンジ本体46を上方に移動させることによってピストン部47にて押され注入口47bから吐出された薬液Lを吸入用ホース44の中間部からノズル35へ供給するための供給用配管である。
【0033】
吸入用ホース44と供給用ホース48との接続位置には、これら吸入用ホース44および供給用ホース48それぞれの開閉制御が可能な開閉弁としての三方電磁弁49が取り付けられている。三方電磁弁49は、吸入用ホース44および供給用ホース48を別個に開閉制御可能に構成された三方弁である。三方電磁弁49は、シリンジ45のシリンジ本体46を下方に移動させて薬液ボトル42内の薬液Lをシリンジ本体46内に吸入する場合に供給用ホース48を閉制御しつつ吸入用ホース44を開制御し、シリンジ本体46を上方に移動させてシリンジ本体46内に吸入した薬液Lをノズル35へ供給する場合に吸入用ホース44を閉制御しつつ供給用ホース48を開制御する。
【0034】
次に、上記第1実施形態に係る薬液供給装置41による薬液吐出方法について、
図2および
図3を参照して説明する。
【0035】
<充填工程>
窒素ガス供給装置43の吹付用ノズル43aから薬液ボトル42の開口部42aに窒素ガスGを吹き付け続ける状態とし、薬液ボトル42の開口部42aの周囲を窒素ガスGの濃度を高めた状態とする。そして、
図2に示すように、三方電磁弁49を駆動させ供給用ホース48の一端側を閉塞するとともに吸入用ホース44の中間部を開放し、薬液ボトル42内の薬液Lをシリンジ45にて吸入可能な状態とする。この状態で、駆動装置46cを駆動させてシリンジ45のシリンジ本体46を下方に移動し、ピストン部47の底部とシリンジ本体46との間の内部空間Sを広げていくことにより、吸入用ホース44内を満たす薬液Lがシリンジ本体46内へと流れ、薬液ボトル42内の薬液Lが吸入用ホース44内へ吸入されていく。このとき、薬液ボトル42内の薬液Lの吸入用ホース44内への吸入に伴う、薬液ボトル42内の薬液Lの充填量の減少により、薬液ボトル42の開口部42aから、高濃度の窒素ガスGが薬液ボトル42内へ吸引される。
【0036】
<供給工程>
図3に示すように、シリンジ45のシリンジ本体46内に所定量の薬液Lを充填した状態で、三方電磁弁49を駆動させ吸入用ホース44の中間部を閉塞するとともに供給用ホース48の一端側を開放し、シリンジ45内の薬液LをウェハW上に供給可能な状態とする。この状態で、駆動装置46cを駆動させてシリンジ45のシリンジ本体46を上方に移動し、シリンジ本体46内の内部空間Sを狭くしていくことにより、シリンジ本体46内の薬液Lがピストン部47の注入口47bを通過して吐出され、供給用ホース48内を満たす薬液Lがノズル35へ供給されてウェハW上に供給される。このとき、駆動装置46cによりシリンジ本体46の上方への移動距離を正確に制御することにより、液保持材33の底面部とウェハWの表面との間の空間を満たし、かつウェハWの表面からこぼれ落ちない程度の所定量の薬液Lを正確にウェハW上に供給することができる。
【0037】
<連続工程>
さらに、シリンジ本体46の上方への移動距離を所定距離としウェハWを処理する毎に段階的に移動させることにより、その都度、ピストン部47の注入口47bから所定量の薬液Lが吐出される。よって、シリンジ本体46に吸入した所定量の薬液Lを用い、複数のウェハWの薬液処理が可能となる。
【0038】
<作用効果>
一般に、シリンジは、薬液を貯留するための一種のタンクであるから、通常は、シリンジ内に充填した所定量の数分の1から全量の薬液を一挙に使用するために用いられる。その典型例は、注射器である。このように、一般的なシリンジは、事実上、一回で薬液を使用する用途に用いられる。このため、シリンジは、通常、精密な液体供給に使われるものでない。また、シリンジの別の用途としては、一滴から数滴の薬液等の滴下に用いられる場合もある。この場合は、わずかな量の薬液を、対象物に滴下および添加する場合であり、シリンジのピストン部を人が押す等して、薬液の滴下を行う場合がほとんどである。
【0039】
これに対し、マイクロビュレットと呼ばれる精密な量の薬液を滴下できるシリンジも存在する。しかしながら、このシリンジは、その薬液供給方法がスポイトと同じであり、人が別の原料タンクから吸い取ってシリンジタンクに充填する方法であるため、薬液の連続供給ができない。人の代わりにロボットが薬液をシリンジに充填する装置も存在するが、この場合においても、薬液の充填時に原料タンクへ薬液を取りに行くため、薬液の連続供給ができず、またシリンジ自体を空間的に移動しなければならないという問題、およびシリンジのノズル部が薬液で汚れたり汚染されたりしてしまうおそれがある。
【0040】
また、プランジャーポンプと呼ばれるピストンポンプも存在するが、このピストンポンプは、弁を有し、この弁の一回の開閉による薬液の吐出量が一定になるように構成されている。しかしながら、ピストンポンプは、弁の開閉に伴う薬液の脈動が発生してしまうおそれがある。このように、シリンジやピストンポンプは、微小流量の薬液を、精密かつ自由に制御しつつ連続供給することが容易ではない。
【0041】
一方、小流量の薬液を供給するポンプとしては、原理的にはその大きさを小さくすれば良いと考えられるが、大きさを小さくするほど、微小なマイクロ加工が必要となり、ポンプ寿命を長くしたり、製造コストを抑えたりすることが容易ではない。また、ほとんどのポンプは、一定量の薬液を区切って供給するものであるため、はやり薬液の脈動が発生してしまうおそれがある。
【0042】
さらに、薬液を精密に制御する際の問題は、ノズルなどの薬液吐出口において、出口先端部分での表面張力によって微小量の薬液が溜まり、ポンプ等で圧送して押し出しても、薬液の吐出が実際に行われず、出口先端部分に薬液が溜まるおそれがある。また同時に、表面張力によって、薬液吐出口から吐出されて離脱する薬液が少量の場合には、液滴となって断続的に供給されるという問題もある。
【0043】
そこで、上記第1実施形態に係る薬液供給装置41においては、微小流量の薬液Lを、その供給速度と供給量とのそれぞれを精密に制御することによって、薬液Lを脈動なく連続的に供給できるようにしている。具体的には、シリンジ45と三方電磁弁49とを用い、駆動装置46cにてシリンジ45のシリンジ本体46を上下動する際の、シリンジ本体46の駆動距離を正確に制御することにより、薬液ボトル42内の薬液Lをシリンジ本体46内に正確に充填できるとともに、シリンジ本体46からウェハW上に正確に供給できる。
【0044】
特に、駆動装置46cをパルスモータとし、この駆動装置46cをパルス制御してシリンジ本体46の上下動を正確に制御することにより、シリンジ45への薬液Lの充填量および吐出量を、例えば0.001mlオーダで正確にコントロールできる。したがって、例えば0.2ml等の非常に少ない量の薬液Lであっても、ウェハWの表面へ正確に供給できるから、ミニマルファブ構想に適合させたハーフインチサイズのきわめて小さなウェハW上への薬液の供給方式として最適であり、薬液Lの表面張力により、ステージ32の係止片部32aに係止させて保持したウェハWの表面と液保持材33の底面部との間からこぼれ落ちない程度の非常に少量の薬液Lであっても、ウェハWと液保持材33との間に正確に供給することができる。
【0045】
また、駆動装置46cにてシリンジ本体46を直線上に移動させる構成としているため、シリンジ45のピストン部47を連続的に押すことができる。よって、シリンジ45のピストン部47から吐出される薬液Lに脈動を発生させることはない。また、シリンジ本体46を駆動させる速度は、駆動装置46cの移動速度で制御できるため、シリンジ本体46の移動を非常に精密な制御で行うことができる。このため、シリンジ45のピストン部47からの薬液Lの吐出圧力についても、駆動装置46cの移動速度で制御することができる。
【0046】
さらに、シリンジ45のシリンジ本体46を下方に移動させることにより、ノズル34,35のザックバックを行うことができる。ここで、「ザックバック」とは、ノズル34,35からは出ているが、ノズル先端部分の表面張力によって、薬液Lの液滴がノズル先端部分に溜まり、この液滴が追って意図せずに滴下したりして、シリンジ45から供給すべき薬液Lの吐出量と、実際に供給される薬液Lの供給量とが相違することを防止するために、薬液Lを僅かに逆流させ、ノズル先端部分に薬液Lが液滴として付かないようにすることである。通常、ザックバックを実現するためには、複雑な機構が必要になるものの、上記第1実施形態においては、シリンジ本体46を下方に移動させるだけでザックバックを実現することができる。
【0047】
また、ノズル34,35をウェハWに対し、ノズル34,35から吐出する薬液Lの液滴サイズと同等もしくはそれ以上に近づけることにより、ノズル34,35から吐出される薬液Lを、液滴とせずに一定量をウェハW上に供給できる。特に、シリンジ本体46を機械的に移動させる機械的ピストン移動を用いたシリンジ45によって、脈動なく一定量の薬液LをウェハW上に供給できる。したがって、薬液Lの液滴以下の距離となるようにノズル34,35の出口をウェハWに近づけることにより、一定速度の薬液供給が可能となる。
【0048】
特に、上記第1実施形態においては、シリンジ45の内部空間Sの最大容量を、ノズル34,35からウェハWへ供給する一度の供給量より大きくしているため、ノズル34,35からの薬液供給の速度を、供給開始から供給完了までに亘って完全に一定にできる。なお、例えばノズル34,35を外径1.2mm、内径0.8mmとした場合、その液滴が0.013cc程度となる。この液滴が球体とすると、外径1.5mm程度の液滴となる。このため、1.5mmよりも、ノズル34,35をウェハWに近づけることによって、液滴が形成されなくなるため、薬液Lの連続供給が可能となる。
【0049】
特に、水酸化アンモニウム(NH4OH)14mlを純水(H20)35mlで希釈した第1薬液(水酸化アンモニウム水溶液)約49mlを充填した薬液ボトル42と、過酸化水素(H202)28mlを純水70mlで希釈した第2薬液(過酸化水素水溶液)98mlを充填した薬液ボトル42とを用意し、これら第1および第2薬液を各シリンジ45にて0.1mlずつ(計0.2ml)各ノズル34,35からウェハWの表面へ供給することにより、ウェハWの表面へ供給する際の直前の位置で、これら第1および第2薬液を混合でき、(水酸化アンモニウム):(過酸化水素):(純水)を1:1:5の混合比とした薬液LをウェハWの表面に供給することができる。
【0050】
また、シリンジ本体46の開口部46aを上方に向けた状態とし、ピストン部47側に薬液Lを吸入および吐出するための注入口47bを貫通させたシリンジ45としている。このため、例えば、シリンジ本体46内に薬液Lを充填していない状態で、シリンジ本体46を下方に移動して、シリンジ本体46内に薬液Lを吸入する際に窒素ガスG等の気体(外気)を吸込んでしまった場合に、この気体が薬液Lとの比重差により上方に移動し、ピストン部47の下方の注入口47b周囲に溜まる。したがって、この状態でシリンジ本体46を上方に移動し、シリンジ本体46内に吸入した薬液Lをピストン部47の注入口47bから吐出させる際の初期段階、すなわちイニシャライズ段階で、シリンジ本体46に吸込んでしまった気体を効率良くピストン部47の注入口47bから排出、すなわち抜くことができる。よって、シリンジ本体46内に吸入した薬液LをウェハWの表面へ供給する前の状態で、シリンジ本体46を上方に移動させ、シリンジ本体46内に吸込んだ気体を効率良く薬液ボトル42へ戻してから、さらにシリンジ本体46を上方に移動し、ウェハWの表面への薬液Lの供給を開始することにより、シリンジ本体46内に吸込んだ気体に基づく薬液Lの供給量のばらつきを抑制することができる。この結果、シリンジ45からウェハWの表面への薬液Lの供給をより精度良くできる。
【0051】
また、薬液ボトル42の開口部42aに向けて窒素ガス供給装置43にて窒素ガスGを吹き付け、薬液ボトル42の開口部42aの周囲を窒素ガスGが高濃度の雰囲気とし、この状態でシリンジ本体46を下方に移動し薬液ボトル42内の薬液Lをシリンジ本体46へ吸入させている。この結果、薬液ボトル42内の薬液Lをシリンジ本体46に吸入する際に、この薬液Lとともに取り込んでしまうおそれのある薬液ボトル42中の気体を、高濃度の不活性ガス、すなわち窒素ガスGにできる。したがって、薬液Lとともに酸素等の気体を取り込み、この取り込んだ気体とともに薬液LをウェハWの表面に供給して、このウェハWを薬液処理した場合等に生じ得る、ウォーターマーク等の発生を防止することができる。
【0052】
また、薬液ボトル42からシリンジ45までの吸入用ホース44および、吸入用ホース44の中間部からノズル34,35までの供給用ホース48のそれぞれの開閉を1つの三方電磁弁49で行う構成としている。したがって、この1つの三方電磁弁49の開閉動作を制御することによって、薬液ボトル42から薬液Lをシリンジ45へ吸入する際の流路と、シリンジ45から薬液LをウェハWの表面へ供給する際の流路とを、正確に切り分けることができる。よって、薬液ボトル42に充填された薬液Lを、より正確にシリンジ本体46内へ吸入できるとともに、シリンジ本体46に吸入した薬液Lを、より精度良く正確にウェハWの表面へ供給することが可能となる。また同時に、薬液Lを使用する際に薬液ボトル42からシリンジ本体46内へ吸入するようにし、シリンジ本体46内に吸入した薬液LをウェハW上に供給するようにしているため、薬液Lの劣化等を防止でき、薬液ボトル42の交換頻度を少なくできるから、ユーザーの負担を削減できる。
【0053】
さらに、ウェハW上の薬液Lを一定量に保持しつつ、未反応薬液を追加し、反応薬液を速やかに排出する方法として、上記第1実施形態のように、ウェハW上に、それと同等の直径を有する円柱状の液保持材33を近づけて配置する。この構成により、ウェハW上に供給した薬液量を一定量に保持できる。この場合に、薬液供給は、ウェハWと液保持材33との間の隙間に対して、外部から薬液Lを吐出して流入させることが必要となる。特に、ウェハW上への薬液Lの吐出を促進させることを目的とし、液保持材33の外径をウェハWの外径よりもわずかに小さくするとよい。
【0054】
[第2実施形態]
<構成>
本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態は、ステージ32の脇にノズル34,35を設置し、このノズル34,35からステージ32上のウェハWと液保持材33との間に薬液Lを供給する構成であるのに対し、第2実施形態は、ステージ32上に設置されたウェハW上のノズル35から薬液Lを供給する構成としている。すなわち、第2実施形態に係るウェット処理装置1においては、
図4に示すように、ノズル35および液保持材33を除く構成が第1実施形態と同様に構成されており、ノズル35の構造が第1実施形態と相違する。
【0055】
具体的に、ノズル35は、
図4に示すように、下方に薬液吐出口35aを有する円筒状に形成され、ステージ32の係止片部32aに係止させて保持したウェハWに対し鉛直方向において同心状に取り付けられている。ノズル35は、その先端外径を、ステージ32上に設置されるウェハWの外径寸法に略等しい大きさとされ、ウェハWの表面とノズル35の下端面との間に所定の間隔Aが形成されるように取り付けられている。
【0056】
<作用効果>
一般に、吐出対象物であるウェハWの表面が平面である場合、その平面には無限の大きさが存在しないため、平面の端部が存在する。典型的な例としては、所定の大きさの円盤状のウェハWである。このような場合には、端部で表面張力が働き、薬液Lの供給が極めて安定した意図した供給速度で供給されたとしても、ノズル35から吐出される薬液Lは、ウェハWの端部で生じる表面張力によって、ウェハW上に次第に溜まっていき、予め設定した供給速度で供給したとしても、ウェハW上の薬液量が経時変化するため、ウェハW上に供給した薬液Lによる化学反応速度も経時変化してしまうおそれがある。
【0057】
そこで、上記第2実施形態に係るウェット処理装置1においては、ノズル35の先端外径を、ウェハWの外径に等しい大きさにしている。この結果、薬液Lに生じる表面張力は、ウェハWそのものではなく、ウェハWの端部とノズル35の下端部とで決定される。ウェハW上に供給することができる薬液Lの流量は、外径20mmより大きなウェハWの場合、ほんの1mm程度の高さまでであるが、外径15mm以下の小さなウェハWの場合には、端部の表面張力が次第に大きくなる。例えば、シリコンウェハの表面においては、表面からこぼれることなく4mmの高さまで水を保持することができる。すなわち、超微量ずつ薬液Lを供給し、その薬液Lを常にウェハWの表面に一定量供給し、薬液Lによる化学反応の結果として発生した反応物質や汚染物質をウェハWの表面から速やかに排出するためには、ウェハWの端部に生じる表面張力は不都合である。
【0058】
これに対し、上記第2実施形態に係るウェット処理装置1においては、ノズル35の先端外径とウェハWの外径とをほぼ等しい大きさとし、これらノズル35とウェハWとの間の隙間Aに薬液Lを溜めるようにしている。この結果、隙間Aが薬液Lを保持する一種の密閉空間となり、これらノズル35とウェハWとの間の距離で決まる一定量の薬液を保持できる。そして、僅かな流量の薬液Lがノズル35から追加供給された場合には、その追加供給された分の薬液Lが、ノズル35とウェハWとの間の隙間Aからはみ出して排出される。この結果、ノズル35およびウェハWの直径が等しい場合には、ウェハWの端部における表面張力を働かせないようにできる。
【0059】
例えば、ウェハWの外径よりもノズル35の外径が小さい場合は、ノズル35の外径より外側に突出したウェハWの表面に薬液Lが溜まりやすい。これに対し、ノズル35の外径がウェハWの外径より小さい場合は、ウェハWの表面からはみ出した部分の薬液Lが自重により落下してしまう。ただし、ノズル35の外周部付近に対向するウェハW上は、端部ではなく平坦であるため、ノズル35の外周部によって表面張力が働きやすくなり、薬液Lがノズル35の外周部に付着してしまうおそれがある。この場合においても、ウェハW上の薬液量は、基本的にはウェハWとノズル35との間の距離、すなわち隙間Aで決まる流量に規定することができる。
【0060】
以上の結果、ウェハWおよびノズル35の外径を等しくし、またはノズル35の外径をウェハWの外径より大きくすることによって、ウェハW上に留まる薬液量を一定にできる。さらに、ノズル35の外径をウェハWの外径と略等しく、またはウェハWの外径より大きくした上で、ノズル35からの薬液Lの供給速度を一定の速度としたり、意図して制御した供給速度で薬液Lを供給することによって、ウェハW上に供給された薬液Lは、ノズル35の中心からウェハWの外周へと流れていき、これらノズル35とウェハWとの間の隙間Aを、ウェハWの中心から外周へ向かう一方向に流れていくことになるから、薬液LとウェハWとの間で発生した化学反応速度を安定化できる。
【0061】
<その他>
なお、上記各実施形態においては、ミニマルファブ構想に適合させたハーフインチサイズのウェハWの表面へ薬液を供給するウェット処理装置1について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、レジストマスク等のウェハW以外の被処理物へ処理液を供給する装置でもよい。また、薬液Lとしては、過酸化水素水溶液、水酸化ナトリウム水溶液のほか、フッ酸、オゾン、硫酸と過酸化水素水との混合液、あるいは水酸化カリウム水溶液等であっても、対応させて用いることができる。
【0062】
さらに、薬液供給装置41は、供給する薬液Lに応じ、供給する薬液Lの種類に応じて複数台の薬液供給装置41を用いたり、予め所定の混合比で混合した薬液Lを充填した薬液ボトル42を用いた1台の薬液供給装置41とすることもできる。処理装置本体3のノズル34,35についても、薬液供給装置41ごとに異なるノズル34,35を用いたり、一つのノズル35の基端側で複数の薬液Lを混合するようにしてもよい。