(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)は、基板に堆積させた材料の層を平坦化するまたは研磨するために高密度集積回路の製造において通常使用されるプロセスである。キャリアヘッドは、そこに保持された基板をCMPシステムの研磨ステーションへ供給し、基板を動いている研磨パッドに制御可能に付勢することができる。CMPは、基板のフィーチャ側との間で接触を行い、研磨液の存在している間に基板を研磨パッドに対して移動させることによって効果的に用いられる。材料は、化学的および機械的な作用の組合せによって研磨表面と接触している基板のフィーチャ側から除去される。研磨している間に基板から除去された粒子は、研磨液中に懸濁されるようになる。懸濁粒子は、研磨液によって基板を研磨している間に、除去される。
キャリアヘッドは、基板を取り囲み、キャリアヘッド内で基板の保持を容易にすることができる保持リングを典型的には含む。保持リングの底面は、研磨中に研磨パッドに全体的に接触する犠牲プラスチック材料から典型的には作られている。犠牲プラスチック材料は、連続した作業にわたって次第に磨耗するように設計される。
【0003】
保持リングは、従来のCNC機械加工法を使用して典型的には製造される。しかしながら、従来の機械加工法によって生成された犠牲プラスチック材料の表面は、典型的には、粗すぎ、より滑らかな表面および許容可能な平坦度を生成するように調節されなければならない。新しい保持リングの「ブレークイン」調節のための1つの方法は、保持リングを完全に機能するCMPシステムに据え付けて、多数のダミーウエハによる方策を実行するステップを含む。しかしながら、この手法は、資本費用および人件費が高いため非効率である。
したがって、所望の粗さおよび表面平坦度を有する保持リングを生成する簡略化された方法および装置が必要である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
理解を容易にするために、可能な場合は、各図に共通な同一の要素を指定するために同一の参照数字が使用された。一実施形態において開示される要素は、特に詳しく説明することなく他の実施形態において有益に利用されることがあることが考えられる。
基板を研磨するために利用される保持リングならびに保持リングを調節するおよび/または磨き直すための方法が本明細書に記載される。本方法を実施するための装置は、調節および/または磨き直しを容易にする保持リングに結合された治具組立体を含む。
【0008】
図1は、化学機械研磨(CMP)システム100の部分断面図である。CMPシステム100は、保持リング115の内側に基板110(ファントムで示す)を保持し、処理中に基板110を研磨パッド125の研磨面120に接触して載置するキャリアヘッド105を含む。研磨パッド125は、プラテン130上に配置される。プラテン130は、プラテンシャフト134によってモータ132に結合されてもよい。モータ132は、CMPシステム100が基板110を研磨しているとき、プラテン130、したがって、研磨パッド125の研磨面120をプラテンシャフト134の軸136の回りに回転させる。
CMPシステム100は、化学的な供出システム138およびパッドリンスシステム140を含むことができる。化学的な供出システム138は、スラリまたはイオンが除去された水などの研磨液144を保持する薬液タンク142を含む。研磨液144は、研磨面120上にスプレーノズル146によってスプレーされてもよい。ドレイン148は、研磨パッド125から流れ出すことがある研磨液144を収集することができる。収集された研磨液144は、不純物を除去するためにフィルターされ、再使用するために薬液タンク142に戻されてもよい。
パッドリンスシステム140は、研磨パッド125の研磨面120にイオンが除去された水154を供出するノズル152を含んでもよい。ノズル152は、イオンが除去された水のタンク(図示せず)に結合されている。研磨後、ノズル152からのイオンが除去された水154は、基板110、キャリアヘッド105、ならびに研磨面120からの屑および過剰な研磨液144を洗い流すことができる。パッドリンスシステム140および化学的な供出システム138は、別々の要素として描かれているが、単一の供出管が、イオンが除去された水154の供出および研磨液144の供出の両方の機能を行ってもよいことを理解されたい。
【0009】
キャリアヘッド105は、シャフト156に結合されている。シャフト156は、モータ158に結合され、このモータ158がアーム160に結合されてもよい。モータ158を利用して、キャリアヘッド105をアーム160に対して線形運動で横に(Xおよび/またはY方向に)移動させることができる。また、キャリアヘッド105は、キャリアヘッド105をアーム160および/または研磨パッド125に対してZ方向に移動させるように構成されたアクチュエータ162を含む。また、キャリアヘッド105は、キャリアヘッド105をアーム160に対して中心線166(また、これは回転軸であってもよい)の回りに回転させるロータリアクチュエータまたはモータ164に結合されている。モータ158、164、およびアクチュエータ162は、キャリアヘッド105を研磨パッド125の研磨面120に対して位置決めする、および/または移動させる。一実施形態において、モータ158、164は、キャリアヘッド105を研磨面120に対して回転させ、処理中に基板110を研磨パッド125の研磨面120に付勢するようにダウンフォースを与える。
【0010】
キャリアヘッド105は、可撓性膜170を収納する本体168を含む。可撓性膜170は、基板110と接触するキャリアヘッド105の下側の表面を提供する。本体168および可撓性膜170は、保持リング115によって取り囲まれている。保持リング115は、スラリの輸送を促進する複数の溝172(1つが示されている)を有してもよい。
【0011】
また、キャリアヘッド105は、可撓性膜170に隣接する1つまたは複数のブラダー、例えば、外部ブラダー174および内部ブラダー176を含むことができる。上で論じたように、可撓性膜170は、基板110がキャリアヘッド105内に保持されているとき、基板110の裏側と接触する。ブラダー174、176は、ブラダー174、176に選択的に流体を供出して可撓性膜170に力を印加する第1の可変圧力源178Aに結合されている。一実施形態において、ブラダー174は、可撓性膜170の外部ゾーンに力を印加し、一方ブラダー176は、可撓性膜170の中心ゾーンに力を印加する。ブラダー174、176から可撓性膜170に印加される力は、基板110の部分に伝達され、基板110および研磨パッド125の研磨面120に転写されるエッジと中心間の圧力プロファイルを制御するために使用されてもよい。第1の可変圧力源178Aは、可撓性膜170を介して基板110の個々の領域への力を制御するために、流体をブラダー174、176のそれぞれに独立して供出するように構成される。さらに、キャリアヘッド105内で基板110の裏側に、基板110の保持を容易にする吸引力を印加するために、真空ポート(図示せず)がキャリアヘッド105内に設けられてもよい。本開示から恩恵を得るようになされてもよいキャリアヘッド105の例には、他のメーカーから入手可能なキャリアヘッドの中でもとりわけ、Applied Materials, Inc. of Santa Clara、 Californiaから入手可能なTITAN HEAD(商標)、TITAN CONTOUR(商標)およびTITAN PROFILER(商標)キャリアヘッドが含まれる。
一実施形態において、保持リング115は、アクチュエータ180によって本体168に結合されている。アクチュエータ180は、第2の可変圧力源178Bによって制御される。第2の可変圧力源178Bは、保持リング115をキャリアヘッド105の本体168に対してZ方向に移動させるアクチュエータ180から流体を供給するまたは除去する。第2の可変圧力源178Bは、モータ162によって行われる移動とは無関係に保持リング115をZ方向に移動させるようになされている。第2の可変圧力源178Bは、アクチュエータ180および/もしくは保持リング115に負圧または正圧を印加することによって、保持リング115の移動を行うことができる。一態様において、研磨プロセス中に保持リング115を研磨パッド125の研磨面120に向かって付勢するように、保持リング115に圧力が印加される。
【0012】
上で論じたように、保持リング115は、基板110の研磨中に研磨面120と接触することができる。化学的な供出システム138は、研磨中に研磨面120および基板110に研磨液144を供出することができる。保持リング115内に形成された溝172は、研磨液144および混入した研磨屑を、保持リング115を介しておよび基板110から離れるように輸送するのを促進する。基板110を処理した後、基板110は、キャリアヘッド105から除去されてもよい。
【0013】
図2は、キャリアヘッド105および
図1の保持リング115の一部に対する断面図である。キャリアヘッド105は、第1の支持体構造200Aおよび第2の支持体構造200Bを含むことができる。第2の支持体構造200Bは、基板110を研磨パッド125に付勢するために使用され得るが、第1の支持体構造200Aは、基板をキャリアヘッド105内に保持する。第2の支持体構造200Bは、第2の支持体構造200Bをキャリアヘッド105の本体168に取り付けられた屈曲性ダイアフラム215に固定するための上側クランプ205および下側クランプ210を有することができる。この配置によって、基板110を研磨している間、第2の支持体構造200Bの垂直移動が可能となる。下側クランプ210の底面は、第2の支持体構造200Bの一部として一斉に移動するブラダー174および可撓性膜170に結合されている。
【0014】
保持リング115は、リング状であってもよく、
図1に示されるキャリアヘッド105の中心線166を共有する中心線を含んでもよい。また、キャリアヘッド105の第1の支持体構造200Aは、底面220、内径側壁225、および外径側壁230を有する保持リング115を含むことができる。保持リング115は、単一の材料の塊から形成することができる本体235から構成されてもよい。あるいは、本体235は、2つ以上の部分から形成されてもよい。本体235の各部分は、本体235のリング形状を形成するために互いに適合する1つまたは複数の部分を含むことができる。一実施形態において、保持リング115の本体235は、単一の一体型の構造である。別の実施形態では、保持リング115の本体235は、2つ以上のリング状部分から形成される。例えば、保持リング115は、下方部分245に取り付けられた上方部分240を有することができる。接着層250を使用して、保持リング115の上方部分240を保持リング115の下方部分245に接合することができる。接着層250は、エポキシ材料、ウレタン材料、またはアクリル材料であってもよい。
【0015】
本体235、または少なくとも上方部分240は、ステンレス鋼、アルミニウム、モリブデンもしくは別の耐プロセス性金属などの金属材料または合金、あるいはセラミックまたはセラミック充填ポリマープラスチック、あるいはこれらまたは他の適切な材料の組合せから形成されてもよい。一例において、本体235の上方部分240は、ステンレス鋼などの金属から形成されてもよい。さらに、本体235、または少なくとも下方部分245は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ERTALYTE(登録商標)TX、PEEK、TORLON(登録商標)、DELRIN(登録商標)、PET、VESPEL(登録商標)、DURATROL(登録商標)、あるいはこれらまたは他の適切な材料の組合せなどのプラスチック材料から作製されてもよい。一例において、本体235の下方部分245は、セラミック材料から作製されてもよい。一実施形態において、上方部分240は、剛性を提供するが、下方部分245は、研磨パッド125の研磨面120と接触する犠牲表面255を提供する。犠牲表面255は、研磨プロセス中に磨耗する傾向があり、多数のサイクルの後に置き換えられなければならない。
【0016】
上記のように、従来の保持リングは、従来のCNC機械加工法を使用して製造されている。これらの方法によって達成される表面仕上がり(平均表面粗さ(Ra))および平坦度は、典型的には、それぞれ約16Raおよび0.001インチである。これらのレベルの機械公差および仕上がりは、機械加工されたままの保持リングが研磨中に許容できない量の粒子を生成するため、生産に値するパーツを生み出さない。さらに、全体的に平坦な(0.001インチ)プロファイルを有する従来の保持リングは、研磨パッド面のトポロジを十分に制御せず、したがって生産での使用に先立って広範囲にわたるブレークインプロセスを必要とすることが示された。
最適な研磨は、犠牲表面255上に負のテーパを有する(すなわち、保持リング115の内径側壁225の厚さが、外径側壁230の厚さよりもわずかに薄い)保持リング115を使用して達成されることが見出された。さらに、保持リング115の犠牲表面255の粗さを約16Raよりもはるかに小さな粗さに変えることによって、粒子が低減するばかりでなく研磨が改良されることが見出された。
【0017】
図3は、本明細書に記載されるような保持リング115の一実施形態の第1の支持体構造200Aの等角投影底面図である。溝172が形成された犠牲表面255は、本体235に結合されている。本体235は、約11インチ〜約12インチの内側寸法300(例えば、直径)および約12インチ〜約13.5インチの外側寸法305(例えば、直径)を含むことができる。また、複数の孔310が、(
図1および
図2に示す)キャリアヘッド105への取り付けを容易にするために本体235を貫いて形成されている。
図4は、
図3の線4−4に沿った保持リング115の側部断面図である。下方部分245は、上方部分240に結合されている。また、下方部分245は、円錐形のテーパ400を含む犠牲表面255を含む。一部の実施形態では、円錐形のテーパ400は、約175度〜約185度である。
【0018】
図5は、
図4の保持リング115の拡大部分断面図である。保持リング115の下方部分245の犠牲表面255は、負のテーパ面500を含む。負のテーパ面500は、内径側壁225の厚さT’と外径側壁230の厚さT’’との差によって規定される。厚さT’と厚さT’’間の差は、約0.0003インチ〜約0.00015インチ、例えば、約0.0002インチであってもよいテーパ高さ505によって規定されてもよい。一部の実施形態では、負のテーパ面500は、0.002インチ未満の平坦度および鏡面仕上げ(すなわち、約4マイクロインチ〜約5マイクロインチRMS)を含むことができる。
【0019】
保持リングを形成するための方法および装置
図6は、保持リング115の下方部分245の犠牲表面255上に負のテーパ面500を生成するための治具600の一実施形態の側部断面図である。治具600は、保持リング115が負のテーパ面500を形成するために結合されるときに、研磨モジュール(図示せず)上に載置されてもよい。
図11を参照して以下でより詳細に説明するように、研磨プロセスは、研磨パッドを使用して、負のテーパ面500を形成するために行われる。
図7は、
図6に示す治具600の拡大部分断面図である。治具600は、クランプ装置605、外側クランプリング610、および治具板615を含む。外側クランプリング610は、下方部分245の外径側壁230をぴったりと受ける内側寸法を含むことができる。クランプ装置605および治具板615は、アルミニウムまたはステンレス鋼などの金属材料から作られてもよい。一実施形態において、クランプ装置605は、保持リング115の下方部分245への横方向負荷を制御する外部クランプ装置を備える。外側クランプリング610は、ポリエーテルエーテルケトン材料または等価な耐久性のあるプラスチック材料から作られてもよい。外側クランプリング610は、外径側壁230を支持することによって保持リング115の下方部分245の外径側壁230の研磨速度を低減させることができる。これによって、外径側壁230に対する内径側壁225の研磨速度に関してさらなる制御を行う。さらに、この外側クランプリング610の存在によって、外径側壁230のエッジにおけるフィレットの形成を制御することができる。
【0020】
クランプ装置605は、互いにおよび/または締め具640を使用して外側クランプリング610に固定される2つの環状リング620および625を含むことができる。締め具の一方は、調整締め具であってもよいが、もう一方の締め具は、弛み止め締め具であってもよい。別の複数の締め具645を使用して、治具板615を保持リング115の上方部分240に結合することができる。クランプ装置605、特に環状リング625は、上方部分240の外側表面から放射状に外方向に延在する肩部630に載っていてもよい。締め具640および締め具645をしっかりと締めることによって、治具600が保持リング115と一体化するように、治具板615および外側クランプリング610の結合を促進する。外側クランプリング610を利用することによって、負のテーパ面500を形成している間、保持リング115の下方部分245を研磨パッド(図示せず)の表面に対してまっすぐに維持する。犠牲表面255に対する外側クランプリング610の下部表面650の調整によって、研磨プロセス中の研磨パッドのはね返りを制御し、犠牲表面255のテーパにおよび/または保持リング115の下方部分245の外径側壁230に影響を及ぼす。治具600は、保持リング115の下方部分245の外径側壁230に制御された横方向負荷をかけるために利用される外径治具を備えることができる。外側クランプリング610は、保持リング115の下方部分245の外径側壁230上に固定境界を維持するためにさらに利用されてもよい。下方部分245の外径側壁230上の固定境界がない場合は、内径側壁225に印加された横力は、外側クランプリング610の下部表面650へ向かって材料変形を誘起するというよりはむしろ下方部分245の外径を不都合に変位させ、拡大させる可能性がある。
【0021】
図8は、
図6および
図7の治具600の治具板615の平面図である。治具板615は、
図6および
図7に示す締め具645を受けるための複数の開口部805が形成された円形本体800を含むことができる。開口部805のそれぞれは、
図3に示す保持リング115の上方部分240の孔310と同数でおよび/または同一の場所に設けられてもよい。さらに、円形本体800は、上部表面におもり820(1つだけが示されている)を取り付けるための取り付け機構815を含むことができる。おもり820を使用して、研磨プロセス中に治具600および保持リング115に印加されるダウンフォースを調整することができる。円形本体800は、アルミニウムまたはステンレス鋼などの金属材料から作られてもよい。
【0022】
図9Aは、
図8の治具板615の側部断面図である。円形本体800は、
図3に示す保持リング115の本体235の外形寸法305と実質的に同一(例えば、+/−.03インチ以下)の外径900を含むことができる。一部の実施形態では、治具板615は、(
図6および
図7に示す)保持リング115の上方部分240と接触するプロファイルド面905を含む。プロファイルド面905は、(
図5に示す)保持リング115の下方部分245の負のテーパ面500を生み出すために、調節中に下方部分245を変形させる正のテーパを含むことができる。
図9Bは、
図9Aの治具板615の拡大部分断面図である。一部の実施形態では、プロファイルド面905は、円形本体800の内径表面915に隣接する平坦部分910を含むことができる。正のテーパ920の形態をしたテーパ部分は、円形本体800の外径表面925と隣接することができる。治具板615の正のテーパ920は、IDがODよりも厚くなるように規定されてもよい。正のテーパ920は、一実施形態において約0.007インチ〜約0.003インチのオフセット寸法930によって規定されてもよい。一例において、オフセット寸法930は、約0.005インチである。
【0023】
図9Cおよび
図9Dは、保持リング115上に負のテーパ面500を形成するプロセスを示す概略図である。
図9Cに示すように、保持リング115は、(治具板615に取り付けられたときに)変形リング935として処理される。言いかえれば、保持リング115は、変形させた状態で処理される(犠牲表面255が正のテーパ角938を有するようにさせる)。治具板615に取り付けられたときに変形リング935を処理することによって、犠牲材料940を、研磨パッド(図示せず)の研磨面に接触する変形リング935の部分から除去する。研磨プロセスによって、変形リング935を治具板615から除去する前に、正のテーパ角938を平坦面または平面945に変形させる。平面945は、プロファイルド面905と向かい合う治具板615の表面950と実質的に平行であってもよい。別の態様では、治具板615のテーパ角955は、変形リング935の正のテーパ角938と実質的に等しくてもよい。
【0024】
変形リング935の処理および治具板615からの除去の後、
図9Dに示すように、保持リング115は、(犠牲表面255が負のテーパ面500を有する)中立状態に弛緩する。一実施形態において、治具板615のテーパ角955は、保持リング115の所望の負のテーパ面500と正反対である。一態様では、治具板615上の正のテーパ角955は、保持リング115上に負のテーパ面500を生成する。
【0025】
1つの動作原理は、保持リング115を剛性の治具板615に取り付け、締め具645を使用して、ダウンフォース(例えば、約36インチ/ポンド)を印加することによって、治具板615の正のテーパ920に比例した正のテーパ角938を保持リング115の下方部分245の犠牲表面255に誘起するということである。誘起された正のテーパ角938は、保持リング115の下方部分245の外径側壁230によって規定された面に対する内径側壁225の均一な変位(例えば、およそ0.001インチの変位)によって特徴付けられる。正のテーパ920は、正のテーパ角938の大きさに影響を及ぼすために、修正されてもよいことに留意されたい。例えば、治具板615の正のテーパ920が大きくなるほど、調節に先立って保持リング115により大きな正のテーパ角938が生み出される。内径側壁225の変位は、底面220から材料が非対称に除去されるため調節中におよそゼロに低減する。保持リング115は、締め具645を除去した後、中立状態に弛緩し、こうして負のテーパ面500を有する仕上がり状態が達成される。
【0026】
図10は、保持リング115の下方部分245の犠牲表面255上に負のテーパ面500を生成するための治具1000の別の実施形態の部分側部断面図である。治具1000は、以下の例外を除いて
図6および
図7の治具600と実質的に同じであってもよい。治具600は、保持リング115の下方部分245の外径側壁230に結合するために利用されるが、治具1000は、保持リング115の下方部分245の内径側壁225に結合するために利用される。
治具1000は、保持リング115の下方部分245の内径側壁225に制御された横方向負荷をかけるために利用される内部締りばめスエージ治具を備えてもよい。また、治具600に利用される治具板615は、治具1000と共に使用されてもよい。しかしながら、クランプ装置1005は、本実施形態においては内部クランプ装置である。クランプ装置1005は、複数の締め具1007(
図10の部分断面図では1つだけが示されている)を含む。各締め具1007は、保持リング115の下方部分245の内径側壁225内部にぴったりと適合するマンドレル1010を貫いて形成された孔に配置される。スエージアダプタ1015は、マンドレル1010に隣接して配置され、締め具1007がマンドレル1010をスエージアダプタ1015に結合する。スエージアダプタ1015は、保持リング115の上方部分240の内面に形成された肩部1020とインターフェースすることができる。締め具645を使用して、治具板615およびスエージアダプタ1015を保持リング115に取り付けることができる。一部の実施形態では、マンドレル1010の外周面1025は、約90度未満の角度αを含むことができる。一実施形態において、角度αは、約89度〜約85度以下である。マンドレル1010の周辺の下部表面1030は、保持リング115の下方部分245の内径側壁225間で測定された直径よりも約0.002インチ〜約0.004インチ大きくてもよい。より大きな寸法によって、締りばめが得られ、保持リング115の下方部分245を放射状に外方向に扇形に開く働きをさせることができる。マンドレル1010は、内径側壁225内に圧入され、それによって内径側壁225を広げ、内径側壁225の均一な変位が達成されるように、保持リング115の下方部分245を扇形に開く(例えば、およそ0.001インチ)。
【0027】
図11は、本明細書に記載されるような保持リング上に負のテーパ面500を生成するための調節システム1100の一実施形態の概略斜視図である。調節システム1100は、研磨パッド1110が回転自在に配置されたプラテン1105を含む。研磨パッド1110は、半導体基板を研磨する際に典型的に利用される高分子材料を含む研磨パッドであってもよい。本明細書に記載されるような(保持リング(図示せず)に結合された)治具600または治具1000などの治具1115は、研磨パッド1110に面する(
図6、
図7および
図10に示す)犠牲表面255を有する研磨パッド1110上に載置される。ホイール1120および/またはヨーク1125などの保持部材を利用して、プラテン1105の回転中に治具1115を研磨パッド1110上に保持することができる。治具1115の中心線は、プラテン1105の(
図1に示す軸136と同じ)回転軸からオフセットされている。治具1115の回転は、調節中にプラテン1105の回転によって誘起される。治具1115の回動速度は、プラテン1115の回動速度に比例してもよい。
【0028】
調節方法
負のテーパ面500を有する保持リング115を生成するための調節方法について説明する。生産基板を研磨するためのCMPツールが稼働状態のままであってもよいように、調節方法は、スタンドアロンの調節システム1100を利用する。調節システム1100は、本格的なCMPシステムによく似ているが、劇的に低コストである。一旦犠牲表面255が研磨パッド1110に面するように、治具1115が位置決めされると、約15〜30分間約65rpmで、または鏡面仕上げが犠牲表面255上で達成されるまで、プラテン1105を回転さることができる。市販のCMPスラリなどのスラリを、保持リング115の調節中に毎分約65ミリリットルの割合で研磨パッド1110の中心に分散させてもよい。調節後、保持リング115は、治具1115から取り外されてもよく、次いで、負のテーパ面500のプロファイルを、例えば、レーザおよび座標測定方法によって検証することができる。犠牲表面の消耗のためにもはやテーパ仕様に合わない使用済み保持リング115を磨き直すために、保持リング115の下方部分245全体が除去されるように、磨耗した犠牲表面255は、旋盤によって除去されてもよい。保持リング115の上方部分240は、上方部分240のバージン材料を露出させるためにさらに機械加工されてもよい。次いで、新しい下方部分245を上方部分240に付着させることができ、新しい下方部分245を有する保持リング115を、上記のような治具1115に結合することができる。次いで、前述したように負のテーパ面500を生成するために、上記の調節レジームを調節システム1100に対して行うことができる。あるいは、下方部分245全体を置き換えることなく保持リング115を磨き直すために、磨耗した犠牲表面255は、底面220から0.01インチ〜0.08インチを旋盤除去することによって再調節されてもよい。次いで平坦な底面(例えば、犠牲表面255)を有する保持リング115を治具1115に結合することができ、次いで上記の調節レジームが、前述したように負のテーパ面500を生成するように調節システム1100に対して行われてもよい。
【0029】
前述したことは、本開示の実施形態を対象としているが、本開示の他のおよびさらなる実施形態が本開示の基本的な範囲から逸脱せずに考案されてもよい。