特許第6706100号(P6706100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6706100熱伝導性接着剤、ディスペンス用接着剤、スクリーン印刷用接着剤、および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706100
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】熱伝導性接着剤、ディスペンス用接着剤、スクリーン印刷用接着剤、および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 167/00 20060101AFI20200525BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20200525BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200525BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20200525BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20200525BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20200525BHJP
   B41M 1/12 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C09J167/00
   C09J11/04
   C09J11/06
   H01L25/04 C
   H01L23/36 M
   B41M1/12
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-46587(P2016-46587)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-160348(P2017-160348A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148219
【弁理士】
【氏名又は名称】渡會 祐介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊文也
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/133767(WO,A1)
【文献】 特表平09−501197(JP,A)
【文献】 特開2008−101145(JP,A)
【文献】 特開2007−251138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B41M 1/12
H01L 23/373
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱硬化性ポリエステル樹脂粉末、
(B)熱伝導性フィラー、
(C)(c1)シランカップリング剤粉末および(c2)液状のスルフィド系シランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種のカップリング剤、ならびに
(D)パラフィン系溶剤
を含み、
(c1)成分が、(D)成分への溶解度が10質量%以下であるシランカップリング剤粉末、または融点が50℃以上の樹脂と液状のシランカップリング剤の混合物で固体になったものを粉末状に粉砕したものあり、
(A)成分、(B)成分、および(c1)成分の平均粒子径が、50μm以下であることを特徴とする、熱伝導性接着剤。
【請求項2】
(c1)成分が、イミダゾールシランを含む、請求項1記載の熱伝導性接着剤。
【請求項3】
さらに、(E)熱可塑性樹脂粉末を含む、請求項1または2記載の熱伝導性接着剤。
【請求項4】
(B)成分が、銀粉である、請求項1〜3のいずれか1項記載の熱伝導性接着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の熱伝導性接着剤を用いる、ディスペンス用接着剤またはスクリーン印刷用接着剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載の熱伝導性接着剤の硬化物、または請求項5記載のディスペンス用接着剤もしくはスクリーン印刷用接着剤の硬化物を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性接着剤、ディスペンス用接着剤、スクリーン印刷用接着剤、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、配線微細化に伴う半導体パッケージの発熱量の増大、MOSFETやIBGTなどのパワーICやパワーモジュールの鉛フリーはんだ化に伴い、半導体素子を基板に接合する材料として、はんだに替わる熱伝導性の接着剤が求められている。
【0003】
従来の熱伝導性接着剤は、加熱による硬化収縮の応力により、基板等に反りが発生する、という問題があった。この問題を解消するため、熱伝導性接着剤に、柔軟性の高い樹脂を配合する技術が検討されている。
【0004】
一方、熱伝導性接着剤には、耐湿性が要求されており、その試験項目の一つとして、耐PCT(Pressure Cooker Test、プレッシャークッカーテスト)性がある。本発明者らは、この耐PCT性を改善するためには、シランカップリング剤の添加が有効である、と考えている。
【0005】
上記の問題の解決を目的として、以下が提案されている。
【0006】
まず、所定の比率の(A)有機ポリマー樹脂、(B)無機充填剤、(C)易除去性液体からなり、(A)と(B)が特定粒度の粒子で、(A)の(C)への溶解度が20%以下である接着剤ペースト(特許文献1)が提案されているが、この接着剤ペーストは、(A)成分の主成分に、熱可塑性ポリマーを使用しているので、用途が限定されており、かつ、シランカップリング剤について、考慮していない。
【0007】
また、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、所定のシランカップリング剤(液状)、所定量の無機質充填剤を含むエポキシ樹脂組成物(特許文献2)、所定の2個のビニル結合を有する化合物を含む重合体、充填剤、所定の硫黄を含有するシランカップリング剤を含む樹脂組成物(特許文献3)、エポキシ樹脂、フェノール系硬化剤、所定量の銀被覆銅粉、イミダゾール系硬化促進剤、シランカップリング剤、及び希釈剤を必須成分とするダイアタッチペースト(特許文献4)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平9−501197号公報
【特許文献2】特開2013−232527号公報
【特許文献3】特開2011−052043号公報
【特許文献4】特開2000−103940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これら単独、またはこれらを組み合わせて、高接着力の接着剤を作製しようとしても、熱伝導性接着剤中に粗粒が発生してしまい、特にディスペンス、スクリーン印刷等での作業性、品質が低下してしまう、という問題がある。具体的には、熱伝導性接着剤中に粗粒が発生すると、ディスペンスでは、ニードル(内径:400〜500μm程度)が詰まる、ディスペンス後に熱伝導性接着剤が濡れ広がらない、スクリーン印刷では、スクリーンの目詰まり、通常の塗布厚(50〜100μm程度)にできない、塗布量が安定しない、という問題が起きてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、粗粒を発生させず、特にディスペンス用、スクリーン印刷用に好適な熱伝導性接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の構成を有することによって上記問題を解決した熱伝導性接着剤、ディスペンス用接着剤、スクリーン印刷用接着剤、および半導体装置に関する。
〔1〕(A)熱硬化性樹脂粉末、
(B)熱伝導性フィラー、
(C)(c1)シランカップリング剤粉末および(c2)液状のスルフィド系シランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種のカップリング剤、ならびに
(D)パラフィン系溶剤
を含み、(A)成分、(B)成分、および(c1)成分の平均粒子径が、50μm以下であることを特徴とする、熱伝導性接着剤。
〔2〕(c1)成分が、イミダゾールシランを含む、上記〔1〕記載の熱伝導性接着剤。
〔3〕さらに、(E)熱可塑性樹脂粉末を含む、上記〔1〕または〔2〕記載の熱伝導性接着剤。
〔4〕(B)成分が、銀粉である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の熱伝導性接着剤。
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の熱伝導性接着剤を用いる、ディスペンス用接着剤またはスクリーン印刷用接着剤。
〔6〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の熱伝導性接着剤の硬化物、または上記〔5〕記載のディスペンス用接着剤もしくはスクリーン印刷用接着剤の硬化物を有する、半導体装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明〔1〕によれば、粗粒を発生させず、特にディスペンス用、スクリーン印刷用に好適な熱伝導性接着剤を提供することができる。
【0013】
本発明〔5〕によれば、粗粒を発生させない、ディスペンス用接着剤またはスクリーン印刷用接着剤を提供することができる。
【0014】
本発明〔6〕によれば、粗粒を発生させない、熱伝導性接着剤、またはディスペンス用接着剤もしくはスクリーン印刷用接着剤により製造された高信頼性の半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の熱伝導性接着剤(以下、熱伝導性接着剤という)は、
(A)熱硬化性樹脂粉末、
(B)熱伝導性フィラー、
(C)(c1)シランカップリング剤粉末および(c2)液状のスルフィド系シランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種のカップリング剤、ならびに
(D)パラフィン系溶剤
を含み、(A)成分、(B)成分、および(c1)成分の平均粒子径が、50μm以下であることを特徴とする。
【0016】
(A)成分の熱硬化性樹脂粉末は、一般的な作業温度である25℃で固体であり、硬化前に35〜150℃の融点または軟化点を有し、且つ50〜200℃に硬化の反応開始温度を有し、硬化後に接着剤の寸法安定性および耐熱性をもたらす。(D)成分に実質的に溶解しない、具体的には、(D)成分への溶解度が10質量%以下のものが好ましい。(A)成分の熱硬化性樹脂粉末は、少なくとも熱硬化性樹脂と、硬化剤および/または硬化促進剤とを含む。
【0017】
(A)成分の熱硬化性樹脂粉末に使用される熱硬化性樹脂は、融点または軟化点が90〜130℃の反応基を有するポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂等が、挙げられ、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、これらの熱硬化性樹脂は、可とう性や耐熱性の観点から、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂が好ましい。
【0018】
これらの熱硬化性樹脂と併用される硬化剤や硬化促進剤としては、ブロックイソシアネ−ト、ウレトジオン樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、β−ヒドロキシアルキルアミド類、ジシアンジアミド類、芳香族アミン類、ポリアミン類、酸無水物類、二塩基酸類、イミダゾール類、有機錫化合物、第三アミン類、ルイス酸錯体等が、挙げられる。
【0019】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じ、熱硬化性樹脂粉末には、レベルリング剤、消泡剤、ブロッッキング防止剤、酸化防止剤などの添加剤等が、添加される。
【0020】
熱硬化性樹脂粉末は、これらの原料をミキサーで乾式予備混合し、ニーダーや熱ロール等で熱溶融混練して混合、その後、冷却し、この混合物を機械的粉砕機やジェットミルなどで粉砕し、篩い機等の分級機で分級して製造される。
【0021】
このような熱硬化性樹脂粉末としては、粉体塗料やトナーに使用されている熱硬化性樹脂粉末があり、例えば、巴川製紙所社製P01CW06P、P01CW035;Akzo−nobel社製Clear polyester 156C102、Clear polyester156C105−A等が、挙げられる。
【0022】
(B)成分の熱伝導性フィラーとは、熱伝導率が、5W/m・K以上のものをいう。(B)成分としては、(D)成分に実質的に溶解しない、具体的には、(D)成分への溶解度が10質量%以下のものであれば、特に限定する必要はなく、(B)成分としては、銀、銅、金、パラジウム、白金、ビスマス、錫、ビスマス−錫合金、インジウム錫酸化物、銀被覆銅、銀被覆アルミニウム、金属被覆ガラス球、MgO、Al、AlN、BN、ダイヤモンド、ZnO、SiC、およびこれらの混合物のフィラーが挙げられ、熱伝導率が、427W/m・Kである銀が好ましい。
【0023】
さらに、(B)成分として、タップ密度:5〜7g/cm、BET比表面積:0.07〜1.0m/gのものを含むと、熱伝導性接着剤中に(B)成分を高充填しても低粘度のペースト状の接着剤にすることができ、(B)成分の高充填化により熱伝導性接着剤のさらなる高熱伝導化を図ることができる。また、(B)成分の形状は、リン片状であると、低抵抗化の観点から、より好ましい。(B)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0024】
(C)成分であるカップリング剤は、(D)成分に実質的に溶解しない、具体的には、(D)成分への溶解度が10質量%以下のものが好ましい。従来の熱伝導性接着剤では、液状のシランカップリング剤を使用していたが、液状のシランカップリング剤が熱硬化性樹脂粉末を溶かしたり膨潤させたりしていたため、熱伝導性接着剤中の熱硬化性樹脂粉末が反応してゲル化したり、熱硬化性樹脂粉末や熱伝導性フィラーが凝集して粗粒が発生するという問題があった。
【0025】
(c1)成分のシランカップリング剤粉末状とは、(D)成分に溶解しにくい固形のシランカップリング剤、または融点が50℃以上の樹脂と液状のシランカップリング剤の混合物で固体になったものを粉末状に粉砕したものをいう。(c1)成分のシランカップリン剤の市販品としては、JX日鉱日石金属株式会社製N−(2−ヒドロキシプロピル−トリメトキシシリルエーテル)−イミダゾールとノボラック樹脂の混合物(商品名:イミダゾールシランSP−10)や、King Industries社製[3−(2,3−epoxypropoxy)propyl]triethoxysilaneと樹脂の混合物(商品名:Deolink Epoxy TE等が、挙げられる。
【0026】
(c2)成分である液状のスルフィド系シランカップリング剤は、液体であるが、S原子が、(B)熱伝導性フィラー表面に作用するので、熱硬化性樹脂粉末を溶かしにくく、粗粒を発生させにくい、と考えられる。このスルフィド系シランカップリング剤は、式(2)で表される3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランであると、より好ましい。(C)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0027】
【化1】
【0028】
(D)成分であるパラフィン系溶剤は、(A)、(B)、(c1)成分を実質的に溶解せずに、熱伝導性接着剤に適度な粘性を付与することができる。パラフィン系溶剤は、ノルマルパラフィンであると好ましく、炭素数14〜16のノルマルパラフィンの混合物であると、より好ましい。(D)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0029】
また、熱伝導性接着剤は、(A)成分、(B)成分、および(c1)成分の平均粒子径が、50μm以下であり、50μm以下であれば、ディスペンス用接着剤またはスクリーン印刷用接着剤として、好適である。ここで、平均子粒径は、レーザー回折法によって測定した体積基準のメジアン径である。
【0030】
(A)成分は、熱伝導性接着剤100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。1質量部未満では、熱伝導性接着剤の接着性が悪くなり易くなり、10質量部を超えると、粘度が高くなり作業性が悪くなり易くなる。
【0031】
(B)成分は、熱伝導性接着剤100質量部に対して、75〜90質量部が好ましい。75質量部未満では、熱伝導性接着剤の熱伝導率が低くなり易くなり、90質量部を超えると、熱伝導性接着剤の粘度が高くなり、作業性が悪くなり易くなる。
【0032】
(C)成分は、熱伝導性接着剤の耐PCT特性、接着性の観点から、熱伝導性接着剤100質量部に対して、0.05〜2質量部が好ましい。0.05質量部未満では、熱伝導性接着剤の接着性、硬化後の熱伝導性接着剤の耐PCT特性が悪くなり易くなり、2質量部を超えると、熱伝導率が低くなり易く、また、体積抵抗率が高くなり易くなる。
【0033】
(D)成分は、熱伝導性接着剤の粘性の観点から、熱伝導性接着剤100質量部に対して、5〜15質量部が好ましい。
【0034】
熱伝導性接着剤は、さらに、(E)熱可塑性樹脂粉末を含むと、熱伝導性接着剤を低弾性にしてチップ反りを低減する観点から、好ましい。(E)成分としては、ポリエステル粉末、ポリアミド粉末、ポリウレタン粉末、シリコーン粉末が挙げられる。市販品のポリエステル粉末としては、Schaetti (Shanghai) Hotmelt Adhesive社ポリエステルパウダー(品名:Schaetti Fix 376/0−80)等が挙げられる。
【0035】
(E)成分は、硬化後の熱伝導性接着剤を低弾性にする観点から、熱伝導性接着剤100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。
【0036】
熱伝導性接着剤には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に必要に応じ、銀レジネート、酸化防止剤、レベリング剤、イオントラップ剤、その他の添加剤等を配合することができる。
【0037】
熱伝導性接着剤は、例えば、(A)成分〜(D)成分およびその他添加剤等を同時にまたは別々に、撹拌、溶融、混合、分散させることにより得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、撹拌、3本ロールミル、プラネタリーミキサー、遊星式ミキサー等を使用することができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0038】
熱伝導性接着剤は、温度:25℃での粘度が7〜30Pa・sであると、ディスペンス作業性、スクリーン印刷性の観点から好ましい。ここで、粘度は、E型粘度計(3°コーン)を用い、5rpm、25℃で測定する。また、熱伝導性接着剤を室温で24時間保管した後の粘度は、7〜30Pa・sであると、ディスペンス作業性、スクリーン印刷性の観点から好ましい。
【0039】
熱伝導性接着剤は、ディスペンサー、スクリーン印刷等で、基板の導電部やダイアタッチ部(ダイ取り付け部)、半導体素子の電極部等の電子部品の所望の位置に形成・塗布される。熱伝導性接着剤の硬化は、150〜200℃が好ましい。
【0040】
本発明のディスペンス用接着剤またはスクリーン印刷用接着剤は、上述の熱伝導性接着剤を用いる。
【0041】
また、本発明の半導体装置は、上述の熱伝導性接着剤の硬化物、または上述のディスペンス用接着剤もしくはスクリーン印刷用接着剤の硬化物を有する。
【0042】
本発明の半導体装置は、粗粒を発生させない、熱伝導性接着剤、またはディスペンス用接着剤もしくはスクリーン印刷用接着剤により、表面実装部品、金属板、半導体チップ等が接合されているので、高信頼性である。
【実施例】
【0043】
本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
【0044】
〔実施例1〜5、比較例1〜4〕
〔評価用サンプルの作製〕
熱硬化性樹脂粉末は、ジェットミルで粉砕した後、#325サイズのメッシュのふるいを通過したものを使用した。シランカップリング剤粉末は、乳鉢と乳棒で粉砕後、#500サイズのメッシュのふるいを通過したものを使用した。同様に、熱可塑性樹脂粉末や、液状エポキシ樹脂の硬化促進剤イミダゾール2P4MZは、#325サイズのメッシュのふるいを通過したものを使用した。
【0045】
実施例・比較例では、表1に示す配合量で、銀粉以外の各成分を、自転・公転式の攪拌機(シンキー社製あわとり練太郎)で1分間攪拌混合し、更にこの溶液に銀粉を添加して自公転式攪拌機で30秒分散させて、その後、減圧脱泡してペースト状の熱伝導性接着剤を作製した。各剤について特性を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
〔評価方法〕
《粘度》
作製して1時間以内の熱伝導性接着剤の初期粘度を、トキメック社製E型粘度計(3°コーン)を用い、25℃での5rpmで測定した。また、室温で24時間保管した後の粘度(24時間室温保管後粘度)を、同様にして測定した。粘度上昇率を、〔(24時間室温保管後粘度)/(初期粘度)×100〕から求めた。表1に、これらの結果を示す。粘度は、5〜30Pa・sが好ましい。粘度上昇率は、25%以下が好ましい。結果を表1に示す。
【0047】
《最大粒度》
JIS K5600−2−5に規定される0から100μmのゲージとスクレーパーとからなるグラインドゲージ((株)安田精機製作所社製グラインドゲージ)のゲージの溝に、作製したペーストを置き、スクレーパーで溝を押し付けながら深さ100μmから0μmに向かってひき動かして溝のペースト面に現れた線の開始位置のゲージの深さの値を測定した。最大粒度は、50μm以下が好ましい。結果を表1に示す。
【0048】
《熱伝導率》
熱伝導性接着剤を、室温から200℃まで30分で昇温し、200℃のオーブン中に15分間保持して、硬化させて、フィルム状の硬化物を作製し、NETZSCH社製LFA447 Nanoflash装置を用い、レーザフラッシュ法で熱伝導率(W/m・K)を測定した。表1に、結果を示す。熱伝導率は、25W/m・K以上が好ましい。結果を表1に示す。
【0049】
《体積抵抗率》
スライドガラス上に、作製した熱伝導性接着剤を、長さ:75mm、幅:5mm、厚さ:100μmで塗布し、室温から200℃まで30分で昇温し、200℃のオーブン中に15分間保持して硬化させた後、硬化物の体積抵抗率を4端子法で測定した。表1に、結果を示す。体積抵抗率は、40μΩ・cm以下が好ましい。結果を表1に示す。
【0050】
《ダイシェア強度》
5mm×5mmのシリコンチップを、作製した熱伝導性接着剤を用いて、銀メッキ銅リードフレーム上にマウントし、室温(25℃)から200℃まで30分で昇温し、200℃のオーブン中に15分間保持して硬化させて、試験片を作製した(n=12)。その後、この試験片を2つのグループ(n=6)に分けた。第1グループである初期のダイシェア強度グループは、硬化直後にダイシェア強度を測定した。第2グループであるPCT後のダイシェア強度グループは、硬化後、121℃、2atmの条件のPCTオーブンに20時間曝した後、ダイシェア強度を測定した。両グループともダイシェア強度は、Dage社製のダイシェアテスターを用いて、室温(25℃)で測定した値である。また、ダイシェア強度の保持率は、次のように計算した。
ダイシェア強度の保持率(%)={〔(PCT後のダイシェア強度)/(初期のダイシェア強度)〕×100}
結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1からわかるように、実施例1〜5の全てで、粘度が適性範囲で、粘度上昇率が低く、最大粒度が小さく、硬化後の熱伝導率が高く、体積抵抗率が低かった。また、ダイシェア強度の保持率(硬化物のPCT試験(121℃、2atm、20時間)後のダイシェア強度/硬化物の初期のダイシェア強度)も良好であった。さらに、(C)成分が(c1)成分のシランカップリング剤粉末状の場合、(c2)液状のスルフィド系シランカップリング剤よりダイシェア強度が高かった。これに対して、(A)成分の代わりに、液状熱硬化性樹脂を用いた比較例1は、最大粒度が大き過ぎた。(C)成分の代わりに、スルフィド系ではない液状のシランカップリング剤を用いた比較例2は、最大粒度が大き過ぎた。(D)成分の代わりに、パラフィン系ではない溶剤を用いた比較例3は、ゲル化してしまい、粘度が高すぎたため、粘度測定ができず、硬化しなかったため、熱伝導率、体積抵抗率の測定ができなかった。(C)成分を含まない比較例4は、ダイシェア強度の保持率が低かった。
【0053】
上記のように、本発明の熱伝導性接着剤は、粗粒を発生させず、特にディスペンス用、スクリーン印刷用に好適な熱伝導性接着剤を提供することができる。