【実施例】
【0069】
以下では、実施例を示しながら、本発明の実施形態に係るボンディングワイヤについて、具体的に説明する。
【0070】
<本発明例1〜59及び比較例1〜16>
(サンプルの作製)
まずサンプルの作製方法について説明する。芯材の原材料となるCuは純度が99.99質量%以上で残部が不可避不純物から構成されるものを用いた。Au、Pd、Ni、Zn、Rh、In、Ir、Ptは純度が99質量%以上で残部が不可避不純物から構成されるものを用いた。ワイヤ又は芯材の組成が目的のものとなるように、芯材への添加元素であるNi、Zn、Rh、In、Ir、Ptを調合する。Ni、Zn、Rh、In、Ir、Ptの添加に関しては、単体での調合も可能であるが、単体で高融点の元素や添加量が極微量である場合には、添加元素を含むCu母合金をあらかじめ作製しておいて目的の添加量となるように調合しても良い。本発明例27〜47では、さらにGa、Ge、As、Te、Sn、Sb、Bi、Se、B、P、Mg、Ca、Laの1種以上を含有させている。
【0071】
芯材のCu合金は、連続鋳造により数mmの線径になるように製造した。得られた数mmの合金に対して、引抜加工を行ってφ0.3〜1.4mmのワイヤを作製した。伸線には市販の潤滑液を用い、伸線速度は20〜150m/分とした。ワイヤ表面の酸化膜を除去するために、塩酸等による酸洗処理を行った後、芯材のCu合金の表面全体を覆うようにPd被覆層を1〜15μm形成した。さらに、一部のワイヤはPd被覆層の上にAuとPdを含む合金表皮層を0.05〜1.5μm形成した。Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の形成には電解めっき法を用いた。めっき液は市販の半導体用めっき液を用いた。その後、減面率10〜21%のダイスを主に使用して伸線加工を行い、更には途中に1乃至3回の熱処理を200〜500℃で行うことによって直径20μmまで加工した。加工後は最終的に破断伸びが約5〜15%になるように熱処理をした。熱処理方法はワイヤを連続的に掃引しながら行い、N
2もしくはArガスを流しながら行った。ワイヤの送り速度は10〜90m/分、熱処理温度は350〜500℃で熱処理時間は1〜10秒とした。
【0072】
(評価方法)
ワイヤ中のNi、Zn、Rh、In、Ir、Pt、Ga、Ge、As、Te、Sn、Sb、Bi、Se、B、P、Mg、Ca、La含有量については、ICP発光分光分析装置を利用して、ボンディングワイヤ全体に含まれる元素の濃度として分析した。
【0073】
Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の濃度分析には、ボンディングワイヤの表面から深さ方向に向かってスパッタ等で削りながらオージェ電子分光分析を実施した。得られた深さ方向の濃度プロファイルから、Pd被覆層厚、AuとPdを含む合金表皮層厚を求めた。
【0074】
ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面におけるワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率については、EBSD法で観察面(すなわち、ワイヤ軸に垂直方向の芯材断面)の結晶方位を観察した上で算出した。EBSD測定データの解析には専用ソフト(TSLソリューションズ製 OIM analisis等)を利用した。ワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径については、EBSD法で観察面の結晶方位を観察した上で算出した。EBSD測定データの解析には専用ソフト(TSLソリューションズ製 OIM analisis等)を利用した。結晶粒径は、測定領域内に含まれる結晶粒の相当直径(結晶粒の面積に相当する円の直径;円相当直径)を算術平均したものである。
【0075】
0.2%耐力と最大耐力については、標点間距離を100mmとして引張試験を行うことにより評価した。引張試験装置としては、インストロン社製万能材料試験機5542型を使用した。0.2%耐力は装置に装備された専用のソフトを用いて算出した。また、破断した時の荷重を最大耐力とした。下記(1)式から耐力比を算出した。
耐力比=最大耐力/0.2%耐力 (1)
【0076】
ワイヤ接合部におけるウェッジ接合性の評価は、BGA基板のウェッジ接合部に1000本のボンディングを行い、接合部の剥離の発生頻度によって判定した。使用したBGA基板はNiおよびAuのめっきを施したものである。本評価では、通常よりも厳しい接合条件を想定して、ステージ温度を一般的な設定温度域よりも低い150℃に設定した。上記の評価において、不良が11個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が6〜10個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜5個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表1〜表4の「ウェッジ接合性」の欄に表記した。
【0077】
高温高湿環境又は高温環境でのボール接合部の接合信頼性は、接合信頼性評価用のサンプルを作製し、HTS評価を行い、ボール接合部の接合寿命によって判定した。接合信頼性評価用のサンプルは、一般的な金属フレーム上のSi基板に厚さ0.8μmのAl−1.0%Si−0.5%Cuの合金を成膜して形成した電極に、市販のワイヤーボンダーを用いてボール接合を行い、市販のエポキシ樹脂によって封止して作製した。ボールはN
2+5%H
2ガスを流量0.4〜0.6L/minで流しながら形成させ、その大きさはφ33〜34μmの範囲とした。
【0078】
HTS評価については、作製した接合信頼性評価用のサンプルを、高温恒温器を使用し、温度200℃の高温環境に暴露した。ボール接合部の接合寿命は500時間毎にボール接合部のシェア試験を実施し、シェア強度の値が初期に得られたシェア強度の1/2となる時間とした。高温高湿試験後のシェア試験は、酸処理によって樹脂を除去して、ボール接合部を露出させてから行った。
【0079】
HTS評価のシェア試験機はDAGE社製の試験機を用いた。シェア強度の値は無作為に選択したボール接合部の10か所の測定値の平均値を用いた。上記の評価において、接合寿命が500時間以上1000時間未満であれば実用可能であるが改善の要望ありと判断し△印、1000時間以上3000時間未満であれば実用上問題ないと判断し○印、3000時間以上であれば特に優れていると判断し◎印とし、表1〜表4の「HTS」の欄に表記した。
【0080】
ボール形成性(FAB形状)の評価は、接合を行う前のボールを採取して観察し、ボール表面の気泡の有無、本来真球であるボールの変形の有無を判定した。上記のいずれかが発生した場合は不良と判断した。ボールの形成は溶融工程での酸化を抑制するために、N
2ガスを流量0.5L/minで吹き付けながら行った。ボールの大きさは34μmとした。1条件に対して50個のボールを観察した。観察にはSEMを用いた。ボール形成性の評価において、不良が5個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が3〜4個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜2個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表1〜表4の「FAB形状」の欄に表記した。
【0081】
温度が130℃、相対湿度が85%の高温高湿環境下でのボール接合部の接合寿命については、以下のHAST評価で評価することができる。HAST評価については、作製した接合信頼性評価用のサンプルを、不飽和型プレッシャークッカー試験機を使用し、温度130℃、相対湿度85%の高温高湿環境に暴露し、5Vのバイアスをかけた。ボール接合部の接合寿命は48時間毎にボール接合部のシェア試験を実施し、シェア強度の値が初期に得られたシェア強度の1/2となる時間とした。高温高湿試験後のシェア試験は、酸処理によって樹脂を除去して、ボール接合部を露出させてから行った。
【0082】
HAST評価のシェア試験機はDAGE社製の試験機を用いた。シェア強度の値は無作為に選択したボール接合部の10か所の測定値の平均値を用いた。上記の評価において、接合寿命が144時間以上288時間未満であれば実用上問題ないと判断し○印、288時間以上384時間未満であれば優れていると判断し◎印、384時間以上であれば特に優れていると判断し◎◎印とし、表1〜表4の「HAST」の欄に表記した。
【0083】
ボール接合部のつぶれ形状の評価は、ボンディングを行ったボール接合部を直上から観察して、その真円性によって判定した。接合相手はSi基板上に厚さ1.0μmのAl−0.5%Cuの合金を成膜した電極を用いた。観察は光学顕微鏡を用い、1条件に対して200箇所を観察した。真円からのずれが大きい楕円状であるもの、変形に異方性を有するものはボール接合部のつぶれ形状が不良であると判断した。上記の評価において、不良が1〜3個の場合は問題ないと判断し○印、全て良好な真円性が得られた場合は、特に優れていると判断し◎印とし、表1〜表4の「つぶれ形状」の欄に表記した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
(評価結果)
本発明例1〜59のボンディングワイヤは、ワイヤ中にNi、Zn、Rh、In、Ir、Ptを、0.011〜1.2質量%含有するとともに、耐力比(=最大耐力/0.2%耐力)はいずれも1.1〜1.6の範囲内であり、HTS評価によるボール接合部高温信頼性及び、ウェッジ接合性のいずれも良好な結果となった。本発明のボンディングワイヤについては、伸線時の減面率を10%以上とし、伸線後の熱処理における熱処理温度を500℃以下と低い温度としているので、ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面に対して結晶方位を測定した結果において、ワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率を30%以上とし、ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径を0.9〜1.5μmとすることができ、耐力比を上記範囲にすることができたと考えられる。
【0089】
また、本発明例に係るボンディングワイヤは、Cu合金芯材と、Cu合金芯材の表面に形成されたPd被覆層とを有し、Pd被覆層の厚さが好適範囲である0.015〜0.150μmの範囲にあり、FAB形状がいずれも良好であった。
【0090】
一方、耐力比が1.1未満の比較例1、3、10、11については、ウェッジ接合性がいずれも不良であり、耐力比が1.6を超える比較例2、4〜9、12〜16については、ウェッジ接合性が不良か、または問題ありであった。特に、比較例15及び16では、ワイヤ中に高温環境下における接続信頼性を付与する元素が含まれていないため、HTS、HASTの結果も不良であった。比較例1、3,10、11において耐力比が低くなったのは、ダイスの減面率を10%未満としたことから、芯材断面における平均結晶粒径が0.9μm未満となったことが一因であると考えられる。比較例2,4〜9、12〜14で耐力比が増大したのは、熱処理温度を600℃以上と高い温度としたことから、ワイヤ長手方向の<100>方位比率が30%未満となったことが一因であると考えられ、特に比較例2、6、8、9、14では、熱処理温度を620℃以上と高い温度としたことから、芯材断面における平均結晶粒径が1.5μm超となったことも一因であると考えられる。
【0091】
<本発明例2−1〜2−40>
(サンプル)
まずサンプルの作製方法について説明する。芯材の原材料となるCuは純度が99.99質量%以上で残部が不可避不純物から構成されるものを用いた。Ga、Ge、Ni、Ir、Pt、Pd、B、P、Mgは純度が99質量%以上で残部が不可避不純物から構成されるものを用いた。ワイヤ又は芯材の組成が目的のものとなるように、芯材への添加元素であるGa、Ge、Ni、Ir、Pt、Pd、B、P、Mgを調合する。Ga、Ge、Ni、Ir、Pt、Pd、B、P、Mgの添加に関しては、単体での調合も可能であるが、単体で高融点の元素や添加量が極微量である場合には、添加元素を含むCu母合金をあらかじめ作製しておいて目的の添加量となるように調合しても良い。
【0092】
芯材のCu合金は、直径がφ3〜6mmの円柱型に加工したカーボンるつぼに原料を装填し、高周波炉を用いて、真空中もしくはN
2やArガス等の不活性雰囲気で1090〜1300℃まで加熱して溶解させた後、炉冷を行うことで製造した。得られたφ3〜6mmの合金に対して、引抜加工を行ってφ0.9〜1.2mmまで加工した後、ダイスを用いて連続的に伸線加工等を行うことによって、φ300〜600μmのワイヤを作製した。伸線には市販の潤滑液を用い、伸線速度は20〜150m/分とした。ワイヤ表面の酸化膜を除去するために、塩酸による酸洗処理を行った後、芯材のCu合金の表面全体を覆うようにPd被覆層を1〜15μm形成した。さらに、一部のワイヤはPd被覆層の上にAuとPdを含む合金表皮層を0.05〜1.5μm形成した。Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の形成には電解めっき法を用いた。めっき液は市販の半導体用めっき液を用いた。その後、200〜500℃の熱処理と伸線加工を繰返し行うことによって直径20μmまで加工した。加工後は最終的に破断伸びが約5〜15%になるようN
2もしくはArガスを流しながら熱処理をした。熱処理方法はワイヤを連続的に掃引しながら行い、N
2もしくはArガスを流しながら行った。ワイヤの送り速度は20〜200m/分、熱処理温度は200〜600℃で熱処理時間は0.2〜1.0秒とした。
【0093】
Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の濃度分析は、ボンディングワイヤの表面から深さ方向に向かってArイオンでスパッタしながらオージェ電子分光分析装置を用いて分析した。被覆層及び表皮合金層の厚みは、得られた深さ方向の濃度プロファイル(深さの単位はSiO
2換算)から求めた。Pdの濃度が50原子%以上で、かつ、Auの濃度が10原子%未満であった領域をPd被覆層とし、Pd被覆層の表面にあるAu濃度が10原子%以上の範囲であった領域を合金表皮層とした。被覆層及び合金表皮層の厚み及びPd最大濃度をそれぞれ表5及び表6に記載した。Cu合金芯材におけるPdの濃度は、ワイヤ断面を露出させて、走査型電子顕微鏡に備え付けた電子線マイクロアナライザにより線分析、点分析等を行う方法により測定した。ワイヤ断面を露出させる方法としては、機械研磨、イオンエッチング法等を利用した。ボンディングワイヤ中のGa、Ge、Ni、Ir、Pt、B、P、Mgの濃度は、ボンディングワイヤを強酸で溶解した液をICP発光分光分析装置、ICP質量分析装置を利用して分析し、ボンディングワイヤ全体に含まれる元素の濃度として検出した。
【0094】
上記の手順で作製した各サンプルの構成を下記表5及び表6に示す。
【0095】
【表5】
【0096】
【表6】
【0097】
(評価方法)
ワイヤ表面を観察面として、結晶組織の評価を行った。評価手法として、後方散乱電子線回折法(EBSD、Electron Backscattered Diffraction)を用いた。EBSD法は観察面の結晶方位を観察し、隣り合う測定点間での結晶方位の角度差を図示できるという特徴を有し、ボンディングワイヤのような細線であっても、比較的簡便ながら精度よく結晶方位を観察できる。
【0098】
ワイヤ表面のような曲面を対象として、EBSD法を実施する場合には注意が必要である。曲率の大きい部位を測定すると、精度の高い測定が困難になる。しかしながら、測定に供するボンディングワイヤを平面に直線上に固定し、そのボンディングワイヤの中心近傍の平坦部を測定することで、精度の高い測定をすることが可能である。具体的には、次のような測定領域にすると良い。円周方向のサイズはワイヤ長手方向の中心を軸として線径の50%以下とし、ワイヤ長手方向のサイズは100μm以下とする。好ましくは、円周方向のサイズは線径の40%以下とし、ワイヤ長手方向のサイズは40μm以下とすれば、測定時間の短縮により測定効率を高められる。更に精度を高めるには、3箇所以上測定し、ばらつきを考慮した平均情報を得ることが望ましい。測定場所は近接しないように、1mm以上離すと良い。
【0099】
ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面におけるワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率、及び、ワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径(μm)については本発明例1〜59と同様の方法で求めた。また、0.2%耐力及び最大耐力については本発明例1〜59と同様の方法で評価を行い上記(1)式から耐力比を算出した。
【0100】
高温高湿環境又は高温環境でのボール接合部の接合信頼性は、接合信頼性評価用のサンプルを作製し、HAST及びHTS評価を行い、それぞれの試験におけるボール接合部の接合寿命によって判定した。接合信頼性評価用のサンプルは、一般的な金属フレーム上のSi基板に厚さ0.8μmのAl−1.0%Si−0.5%Cuの合金を成膜して形成した電極に、市販のワイヤーボンダーを用いてボール接合を行い、市販のエポキシ樹脂によって封止して作製した。ボールはN
2+5%H
2ガスを流量0.4〜0.6L/minで流しながら形成させ、その大きさはφ33〜34μmの範囲とした。
【0101】
HAST評価については、作製した接合信頼性評価用のサンプルを、不飽和型プレッシャークッカー試験機を使用し、温度130℃、相対湿度85%の高温高湿環境に暴露し、7Vのバイアスをかけた。ボール接合部の接合寿命は48時間毎にボール接合部のシェア試験を実施し、シェア強度の値が初期に得られたシェア強度の1/2となる時間とした。高温高湿試験後のシェア試験は、酸処理によって樹脂を除去して、ボール接合部を露出させてから行った。
【0102】
HAST評価のシェア試験機はDAGE社製の試験機を用いた。シェア強度の値は無作為に選択したボール接合部の10か所の測定値の平均値を用いた。上記の評価において、接合寿命が96時間未満であれば実用上問題があると判断し×印、96時間以上144時間未満であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、144時間以上288時間未満であれば実用上問題ないと判断し○印、288時間以上であれば特に優れていると判断し◎印とし、表5及び表6の「HAST」の欄に表記した。
【0103】
HTS評価については、作製した接合信頼性評価用のサンプルを、高温恒温器を使用し、温度200℃の高温環境に暴露した。ボール接合部の接合寿命は500時間毎にボール接合部のシェア試験を実施し、シェア強度の値が初期に得られたシェア強度の1/2となる時間とした。高温高湿試験後のシェア試験は、酸処理によって樹脂を除去して、ボール接合部を露出させてから行った。
【0104】
HTS評価のシェア試験機はDAGE社製の試験機を用いた。シェア強度の値は無作為に選択したボール接合部の10か所の測定値の平均値を用いた。上記の評価において、接合寿命が500時間以上1000時間未満であれば実用可能であるが改善の要望ありと判断し△印、1000時間以上3000時間未満であれば実用上問題ないと判断し○印、3000時間以上であれば特に優れていると判断し◎印とした。
【0105】
ボール形成性(FAB形状)の評価は、接合を行う前のボールを採取して観察し、ボール表面の気泡の有無、本来真球であるボールの変形の有無を判定した。上記のいずれかが発生した場合は不良と判断した。ボールの形成は溶融工程での酸化を抑制するために、N
2ガスを流量0.5L/minで吹き付けながら行った。ボールの大きさは34μmとした。1条件に対して50個のボールを観察した。観察にはSEMを用いた。ボール形成性の評価において、不良が5個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が3〜4個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜2個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表5及び表6の「FAB形状」の欄に表記した。
【0106】
ワイヤ接合部におけるウェッジ接合性の評価は、リードフレームのリード部分に1000本のボンディングを行い、接合部の剥離の発生頻度によって判定した。リードフレームは1〜3μmのAgめっきを施したFe−42原子%Ni合金リードフレームを用いた。本評価では、通常よりも厳しい接合条件を想定して、ステージ温度を一般的な設定温度域よりも低い150℃に設定した。上記の評価において、不良が11個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が6〜10個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜5個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表5及び表6の「ウェッジ接合性」の欄に表記した。
【0107】
ボール接合部のつぶれ形状の評価は、ボンディングを行ったボール接合部を直上から観察して、その真円性によって判定した。接合相手はSi基板上に厚さ1.0μmのAl−0.5%Cuの合金を成膜した電極を用いた。観察は光学顕微鏡を用い、1条件に対して200箇所を観察した。真円からのずれが大きい楕円状であるもの、変形に異方性を有するものはボール接合部のつぶれ形状が不良であると判断した。上記の評価において、不良が6個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が4〜5個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、1〜3個の場合は問題ないと判断し○印、全て良好な真円性が得られた場合は、特に優れていると判断し◎印とし、表5及び表6の「つぶれ形状」の欄に表記した。
【0108】
[リーニング]
評価用のリードフレームに、ループ長5mm、ループ高さ0.5mmで100本ボンディングした。評価方法として、チップ水平方向からワイヤ直立部を観察し、ボール接合部の中心を通る垂線とワイヤ直立部との間隔が最大であるときの間隔(リーニング間隔)で評価した。リーニング間隔がワイヤ径よりも小さい場合にはリーニングは良好、大きい場合には直立部が傾斜しているためリーニングは不良であると判断した。100本のボンディングしたワイヤを光学顕微鏡で観察し、リーニング不良の本数を数えた。不良が7個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が4〜6個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜3個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表5及び表6の「リーニング」の欄に表記した。
【0109】
(評価結果)
表5及び表6に示すように、本発明例2−1〜2−40に係るボンディングワイヤは、Cu合金芯材と、Cu合金芯材の表面に形成されたPd被覆層とを有し、ボンディングワイヤがGa、Geから選ばれる1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.011〜1.5質量%である。これにより本発明例2−1〜2−40に係るボンディングワイヤは、温度が130℃、相対湿度が85%の高温高湿環境下でのHAST試験でボール接合部信頼性が得られることを確認した。
【0110】
さらに本発明例2−1〜2−40に係るボンディングワイヤは耐力比が1.1〜1.6であることにより優れたウェッジ接合性が得られることを確認した。
【0111】
ボンディングワイヤがさらにNi、Ir、Pt、Pdから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含む本発明例では、HTS評価によるボール接合部高温信頼性がより良好であることを確認した。
【0112】
ボンディングワイヤがさらにB、P、Mgから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含む本発明例は、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度がそれぞれ1〜200質量ppmであることにより、ボール接合部のつぶれ形状が良好であった。
【0113】
<本発明例3−1〜3−56>
(サンプル)
まずサンプルの作製方法について説明する。芯材の原材料となるCuは純度が99.99質量%以上で残部が不可避不純物から構成されるものを用いた。As、Te、Sn、Sb、Bi、Se、Ni、Zn、Rh、In、Ir、Pt、Ga、Ge、Pd、B、P、Mg、Ca、Laは純度が99質量%以上で残部が不可避不純物から構成されるものを用いた。ワイヤ又は芯材の組成が目的のものとなるように、芯材への添加元素であるAs、Te、Sn、Sb、Bi、Se、Ni、Zn、Rh、In、Ir、Pt、Ga、Ge、Pd、B、P、Mg、Ca、Laを調合する。As、Te、Sn、Sb、Bi、Se、Ni、Zn、Rh、In、Ir、Pt、Ga、Ge、Pd、B、P、Mg、Ca、Laの添加に関しては、単体での調合も可能であるが、単体で高融点の元素や添加量が極微量である場合には、添加元素を含むCu母合金をあらかじめ作製しておいて目的の添加量となるように調合しても良い。
【0114】
芯材のCu合金は、直径がφ3〜6mmの円柱型に加工したカーボンるつぼに原料を装填し、高周波炉を用いて、真空中もしくはN
2やArガス等の不活性雰囲気で1090〜1300℃まで加熱して溶解させた後、炉冷を行うことで製造した。得られたφ3〜6mmの合金に対して、引抜加工を行ってφ0.9〜1.2mmまで加工した後、ダイスを用いて連続的に伸線加工等を行うことによって、φ300〜600μmのワイヤを作製した。伸線には市販の潤滑液を用い、伸線速度は20〜150m/分とした。ワイヤ表面の酸化膜を除去するために、塩酸による酸洗処理を行った後、芯材のCu合金の表面全体を覆うようにPd被覆層を1〜15μm形成した。さらに、一部のワイヤはPd被覆層の上にAuとPdを含む合金表皮層を0.05〜1.5μm形成した。Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の形成には電解めっき法を用いた。めっき液は市販の半導体用めっき液を用いた。その後、200〜500℃の熱処理と伸線加工を繰返し行うことによって直径20μmまで加工した。加工後は最終的に破断伸びが約5〜15%になるようN
2もしくはArガスを流しながら熱処理をした。熱処理方法はワイヤを連続的に掃引しながら行い、N
2もしくはArガスを流しながら行った。ワイヤの送り速度は20〜200m/分、熱処理温度は200〜600℃で熱処理時間は0.2〜1.0秒とした。
【0115】
Pd被覆層、AuとPdを含む合金表皮層の濃度分析には、ボンディングワイヤの表面から深さ方向に向かってスパッタ等で削りながらオージェ電子分光分析を実施した。得られた深さ方向の濃度プロファイルから、Pd被覆層の厚み、AuとPdを含む合金表皮層の厚み及びPd最大濃度を求めた。
【0116】
本発明例3−1〜3−50については、As、Te、Sn、Sb、Bi、Seから選ばれる元素を芯材中に含有させている。本発明例3−51〜3−56については、芯材に純度が99.99質量%以上のCuを使用し、ワイヤ製造工程の途中で、電気めっき法により、ワイヤ表面(被覆層)にAs、Te、Sn、Sb、Bi、Seを被着させることによって含有させた。
【0117】
本発明例3−34〜3−44については、ボンディングワイヤの最表面にCuを存在させている。そこで表8には「ワイヤ表面Cu濃度」の欄を設け、ボンディングワイヤの表面をオージェ電子分光装置によって測定した結果を記載した。ボンディングワイヤの熱処理温度と時間を選択することにより最表面に所定濃度のCuを含有させた。本発明例3−1〜3−33、3−45〜3−56については、最表面にCuを存在させない熱処理条件とし、オージェ電子分光装置でもCuが検出されなかった。
【0118】
上記の手順で作製した各サンプルの構成を表7及び表8に示す。
【0119】
【表7】
【0120】
【表8】
【0121】
(評価方法)
ワイヤ表面を観察面として、結晶組織の評価を行った。評価手法として、後方散乱電子線回折法(EBSD、Electron Backscattered Diffraction)を用いた。EBSD法は観察面の結晶方位を観察し、隣り合う測定点間での結晶方位の角度差を図示できるという特徴を有し、ボンディングワイヤのような細線であっても、比較的簡便ながら精度よく結晶方位を観察できる。
【0122】
ワイヤ表面のような曲面を対象として、EBSD法を実施する場合には注意が必要である。曲率の大きい部位を測定すると、精度の高い測定が困難になる。しかしながら、測定に供するボンディングワイヤを平面に直線上に固定し、そのボンディングワイヤの中心近傍の平坦部を測定することで、精度の高い測定をすることが可能である。具体的には、次のような測定領域にすると良い。円周方向のサイズはワイヤ長手方向の中心を軸として線径の50%以下とし、ワイヤ長手方向のサイズは100μm以下とする。好ましくは、円周方向のサイズは線径の40%以下とし、ワイヤ長手方向のサイズは40μm以下とすれば、測定時間の短縮により測定効率を高められる。更に精度を高めるには、3箇所以上測定し、ばらつきを考慮した平均情報を得ることが望ましい。測定場所は近接しないように、1mm以上離すと良い。
【0123】
ボンディングワイヤのワイヤ軸に垂直方向の芯材断面におけるワイヤ長手方向の結晶方位のうち、ワイヤ長手方向に対して角度差が15度以下である結晶方位<100>の方位比率、及び、ワイヤ軸に垂直方向の芯材断面における平均結晶粒径(μm)については本発明例1〜59と同様の方法で求めた。また、0.2%耐力及び最大耐力については本発明例1〜59と同様の方法で評価を行い上記(1)式から耐力比を算出した。
【0124】
高温高湿環境又は高温環境でのボール接合部の接合信頼性は、接合信頼性評価用のサンプルを作製し、HAST及びHTS評価を行い、それぞれの試験におけるボール接合部の接合寿命によって判定した。接合信頼性評価用のサンプルは、一般的な金属フレーム上のSi基板に厚さ0.8μmのAl−1.0%Si−0.5%Cuの合金を成膜して形成した電極に、市販のワイヤーボンダーを用いてボール接合を行い、市販のエポキシ樹脂によって封止して作製した。ボールはN
2+5%H
2ガスを流量0.4〜0.6L/minで流しながら形成させ、その大きさはφ33〜34μmの範囲とした。
【0125】
HAST評価については、作製した接合信頼性評価用のサンプルを、不飽和型プレッシャークッカー試験機を使用し、温度130℃、相対湿度85%の高温高湿環境に暴露し、5Vのバイアスをかけた。ボール接合部の接合寿命は48時間毎にボール接合部のシェア試験を実施し、シェア強度の値が初期に得られたシェア強度の1/2となる時間とした。高温高湿試験後のシェア試験は、酸処理によって樹脂を除去して、ボール接合部を露出させてから行った。
【0126】
HAST評価のシェア試験機はDAGE社製の試験機を用いた。シェア強度の値は無作為に選択したボール接合部の10か所の測定値の平均値を用いた。上記の評価において、接合寿命が96時間未満であれば実用上問題があると判断し×印、96時間以上144時間未満であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、144時間以上288時間未満であれば実用上問題ないと判断し○印、288時間以上384時間未満であれば優れていると判断し◎印、384時間以上であれば特に優れていると判断し◎◎印とし、表7及び表8の「HAST」の欄に表記した。
【0127】
HTS評価については、作製した接合信頼性評価用のサンプルを、高温恒温器を使用し、温度200℃の高温環境に暴露した。ボール接合部の接合寿命は500時間毎にボール接合部のシェア試験を実施し、シェア強度の値が初期に得られたシェア強度の1/2となる時間とした。高温高湿試験後のシェア試験は、酸処理によって樹脂を除去して、ボール接合部を露出させてから行った。
【0128】
HTS評価のシェア試験機はDAGE社製の試験機を用いた。シェア強度の値は無作為に選択したボール接合部の10か所の測定値の平均値を用いた。上記の評価において、接合寿命が500時間以上1000時間未満であれば実用可能であるが改善の要望ありと判断し△印、1000時間以上3000時間未満であれば実用上問題ないと判断し○印、3000時間以上であれば特に優れていると判断し◎印とし、表7及び表8の「HTS」の欄に表記した。
【0129】
ボール形成性(FAB形状)の評価は、接合を行う前のボールを採取して観察し、ボール表面の気泡の有無、本来真球であるボールの変形の有無を判定した。上記のいずれかが発生した場合は不良と判断した。ボールの形成は溶融工程での酸化を抑制するために、N
2ガスを流量0.5L/minで吹き付けながら行った。ボールの大きさは34μmとした。1条件に対して50個のボールを観察した。観察にはSEMを用いた。ボール形成性の評価において、不良が5個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が3〜4個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜2個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表7及び表8の「FAB形状」の欄に表記した。
【0130】
ワイヤ接合部におけるウェッジ接合性の評価は、リードフレームのリード部分に1000本のボンディングを行い、接合部の剥離の発生頻度によって判定した。リードフレームは1〜3μmのAgめっきを施したFe−42原子%Ni合金リードフレームを用いた。本評価では、通常よりも厳しい接合条件を想定して、ステージ温度を一般的な設定温度域よりも低い150℃に設定した。上記の評価において、不良が11個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が6〜10個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜5個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表7及び表8の「ウェッジ接合性」の欄に表記した。
【0131】
ボール接合部のつぶれ形状の評価は、ボンディングを行ったボール接合部を直上から観察して、その真円性によって判定した。接合相手はSi基板上に厚さ1.0μmのAl−0.5%Cuの合金を成膜した電極を用いた。観察は光学顕微鏡を用い、1条件に対して200箇所を観察した。真円からのずれが大きい楕円状であるもの、変形に異方性を有するものはボール接合部のつぶれ形状が不良であると判断した。上記の評価において、不良が6個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が4〜5個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、1〜3個の場合は問題ないと判断し○印、全て良好な真円性が得られた場合は、特に優れていると判断し◎印とし、表7及び表8の「つぶれ形状」の欄に表記した。
【0132】
[リーニング]
評価用のリードフレームに、ループ長5mm、ループ高さ0.5mmで100本ボンディングした。評価方法として、チップ水平方向からワイヤ直立部を観察し、ボール接合部の中心を通る垂線とワイヤ直立部との間隔が最大であるときの間隔(リーニング間隔)で評価した。リーニング間隔がワイヤ径よりも小さい場合にはリーニングは良好、大きい場合には直立部が傾斜しているためリーニングは不良であると判断した。100本のボンディングしたワイヤを光学顕微鏡で観察し、リーニング不良の本数を数えた。不良が7個以上発生した場合には問題があると判断し×印、不良が4〜6個であれば実用可能であるがやや問題有りとして△印、不良が1〜3個の場合は問題ないと判断し○印、不良が発生しなかった場合には優れていると判断し◎印とし、表7及び表8の「リーニング」の欄に表記した。
【0133】
(評価結果)
本発明例3−1〜3−56に係るボンディングワイヤは、Cu合金芯材と、Cu合金芯材の表面に形成されたPd被覆層とを有し、ボンディングワイヤがAs、Te、Sn、Sb、Bi、Seから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度が合計で0.1〜100質量ppmである。これにより本発明例3−1〜3−50に係るボンディングワイヤは、温度が130℃、相対湿度が85%の高温高湿環境下でのHAST試験でボール接合部信頼性が得られることを確認した。
【0134】
Pd被覆層上にさらにAuとPdを含む合金表皮層を有する本発明例については、AuとPdを含む合金表皮層の層厚が0.0005〜0.050μmであることにより、優れたウェッジ接合性が得られることを確認した。
【0135】
本発明例3−21〜3−33、3−35、3−37、3−39〜3−44は、ボンディングワイヤがさらにNi、Zn、Rh、In、Ir、Pt、Ga、Geから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度がそれぞれ0.011〜1.2質量%、Cu合金芯材に含まれるPdの濃度が0.05〜1.2質量%であることにより、HTS評価によるボール接合部高温信頼性が良好であることを確認した。
【0136】
本発明例3−22〜3−26、3−29〜3−32はボンディングワイヤがさらにB、P、Mg、Ca、Laから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含み、ワイヤ全体に対する前記元素の濃度がそれぞれ1〜100質量ppmであることにより、FAB形状が良好であると共に、ウェッジ接合性が良好であった。
【0137】
本発明例3−34〜3−44は、ワイヤがAs、Te、Sn、Sb、Bi、Seを含有するとともに、ワイヤの最表面にCuが存在している。これにより本発明例3−34〜3−44は、HAST評価結果が◎◎又は◎であって、最表面にCuを存在させる効果が見られた。