(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長尺の樹脂基材上にポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂溶液を塗工して、熱処理を行い、前記樹脂基材上にポリイミド層が形成された長尺ポリイミド積層体を形成し、次いで、前記ポリイミド層上に機能層を形成する領域と機能層を形成しない領域が存在するように機能層を形成した後、樹脂基材を剥離して、機能層付きポリイミドフィルムを製造する方法であって、
長尺の樹脂基材は、厚みが10〜200μm、MD(Machine Direction)側の長さ/TD(Transverse Direction)側の長さが50以上であり、ロール・トゥ・ロールプロセスで搬送され、
長尺ポリイミド積層体に、領域に応じて、樹脂基材とポリイミド層との剥離強度を調整する処理を行い、
前記機能層が形成される機能層形成領域以外の領域の少なくとも一部の領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度よりも高い強接着領域であることを特徴とする、機能層付きポリイミドフィルムの製造方法。
前記強接着領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度に比べて、10N/m以上高いことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂層付きポリイミドフィルムの製造方法。
前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、50N/m以下0.1N/m以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹脂層付きポリイミドフィルムの製造方法。
前記強接着領域が、前記機能層を囲繞する位置の少なくとも一部又は前記長尺の積層体の両端部の少なくとも一部であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の機能層付きポリイミドフィルムの製造方法。
前記強接着領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、20N/m以上であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の機能層付きポリイミドフィルムの製造方法。
長尺の樹脂基材上にポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂溶液を塗工して、熱処理を行い、前記樹脂基材上にポリイミド層が形成された長尺ポリイミド積層体を製造する方法であって、
長尺の樹脂基材は、厚みが10〜200μm、MD(Machine Direction)側の長さ/TD(Transverse Direction)側の長さが50以上であり、ロール・トゥ・ロールプロセスで搬送され、
長尺ポリイミド積層体は、ポリイミド層上に機能層が形成される予定の領域と機能層が形成されない予定の領域が存在しており、
長尺ポリイミド積層体に、領域に応じて、樹脂基材とポリイミド層との剥離強度を調整する処理を行い、
前記機能層が形成される予定の機能層形成予定領域以外の領域の少なくとも一部の領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度よりも高い強接着領域である機能層付きポリイミドフィルム用の長尺ポリイミド積層体の製造方法。
前記強接着領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度に比べて、10N/m以上高いことを特徴とする、請求項8に記載の長尺ポリイミド積層体。
前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、50N/m以下0.1N/m以上であることを特徴とする、請求項8又は9に記載の長尺ポリイミド積層体。
前記強接着領域が、前記機能層を囲繞する位置の少なくとも一部又は前記長尺の積層体の両端部の少なくとも一部であることを特徴とする、請求項8乃至10のいずれかに記載の長尺ポリイミド積層体。
前記強接着領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、20N/m以上であることを特徴とする、請求項8乃至11のいずれかに記載の長尺ポリイミド積層体。
前記強接着領域における、前記長尺の樹脂基材のポリイミド層側の表面における2乗平均粗さ(Rq)が5nm以上であること特徴とする、請求項8乃至12のいずれかに記載の長尺ポリイミド積層体。
前記強接着領域における、ポリイミド層の一方の表面に、第二のポリイミド層を形成されていることを特徴とする、請求項8乃至13のいずれかに記載の長尺ポリイミド積層体。
前記長尺の樹脂基材の両端部に、一定の間隔で、孔径が1mm以上5mm以下である孔が形成していることを特徴とする、請求項8乃至14のいずれかに記載の長尺ポリイミド積層体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、フレキシブルデバイスの薄型化、軽量化、フレキシブル化のために、樹脂基板の厚みを小さくすることは非常に重要である。しかし、その製造工程、特に機能層を形成した樹脂基板の製造工程において、機能層及び樹脂基板が損傷しないことは、残存する重要な課題となっている。
【0012】
本発明は、この課題を鑑みてなされたものであり、フレキシブルデバイスの製造工程において、樹脂基材−ポリイミド層が剥離せず、かつ、機能層を形成した後に、ポリイミド層(つまり、ポリイミドフィルム)及び機能層にダメージを与えることなく樹脂基材を剥離することができる製造方法と、それを可能にする、フレキシブルデバイス用の長尺ポリイミド積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、フレキシブルデバイスの製造工程、特に機能層を形成する工程において、支持材−ポリイミド層の剥離が、主に端部から発生することに着目し、端部の剥離強度を相対的に高くする処理を行うとともに、機能層の積層領域の剥離強度を相対的に低くした長尺ポリイミド積層体を作製し、そのポリイミド層上に機能層を形成した後に、前記端部を切断することで、剥離強度の低い、機能層の積層領域を剥離して使用することによりこの問題を改善することを見出した。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)長尺の樹脂基材上にポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂溶液を塗工して、熱処理を行い、前記樹脂基材上にポリイミド層が形成された長尺ポリイミド積層体を形成し、次いで、前記ポリイミド層上に機能層を形成する領域と機能層を形成しない領域が存在するように機能層を形成した後、樹脂基材を剥離して、機能層付きポリイミドフィルムを製造する方法であって、
長尺ポリイミド積層体に、領域に応じて、樹脂基材とポリイミド層との剥離強度を調整する処理を行い、
前記機能層が形成される機能層形成領域以外の領域の少なくとも一部の領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度よりも高い強接着領域であることを特徴とする、機能層付きポリイミドフィルムの製造方法。
(2)前記強接着領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度に比べて、10N/m以上高いことを特徴とする上記(1)の樹脂層付きポリイミドフィルムの製造方法。
(3)前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、50N/m以下0.1N/m以上であることを特徴とする、上記(1)又は(2)の樹脂層付きポリイミドフィルムの製造方法。
(4)前記強接着領域が、前記機能層を囲繞する位置の少なくとも一部又は前記長尺の積層体の両端部の少なくとも一部であることを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれかの機能層付きポリイミドフィルムの製造方法。
(5)前記強接着領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、20N/m以上であることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかの機能層付きポリイミドフィルムの製造方法。
(6)下記処理(A)又は処理(B) 処理(A):前記強接着領域おける、樹脂基材とポリイミド層との剥離強度を上げる処理、
処理(B):前記機能層形成領域における、樹脂基材とポリイミド層との剥離強度を下げる処理、
のいずれかを行うことを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれかの機能層付きポリイミドフィルムの製造方法。
(7)長尺の樹脂基材上にポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂溶液を塗工して、熱処理を行い、前記樹脂基材上にポリイミド層が形成された長尺ポリイミド積層体を製造する方法であって、
長尺ポリイミド積層体は、ポリイミド層上に機能層が形成される予定の領域と機能層が形成されない予定の領域が存在しており、
長尺ポリイミド積層体に、領域に応じて、樹脂基材とポリイミド層との剥離強度を調整する処理を行い、
前記機能層が形成される予定の機能層形成予定領域以外の領域の少なくとも一部の領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度よりも高い強接着領域である機能層付きポリイミドフィルム用の長尺ポリイミド積層体の製造方法。
(8)長尺の樹脂基材の表面にポリイミド層が積層された長尺ポリイミド積層体であって、
前記長尺ポリイミド積層体が、ポリイミドフィルム上に機能層が形成された機能層付きポリイミドフィルム用であり、
長尺ポリイミド積層体は、ポリイミド層上に機能層が形成される予定の領域と機能層が形成されない予定の領域が存在しており、
前記機能層が形成される予定の機能層形成予定領域以外の領域の少なくとも一部の領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度よりも高い強接着領域を有
することを特徴とする、長尺ポリイミド積層体。
(9)前記強接着領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度に比べて、10N/m以上高いことを特徴とする、上記(8)の長尺ポリイミド積層体。
(10)前記機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、50N/m以下0.1N/m以上であることを特徴とする、上記(8)又は(9)の長尺ポリイミド積層体。
(11)前記強接着領域が、前記機能層を囲繞する位置の少なくとも一部又は前記長尺の積層体の両端部の少なくとも一部であることを特徴とする、請求項上記(8)乃至(10)のいずれかの長尺ポリイミド積層体。
(12)前記強接着領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、20N/m以上であることを特徴とする、上記(8)乃至(11)のいずれかの長尺ポリイミド積層体。
(13)前記強接着領域における、前記長尺の樹脂基材のポリイミド層側の表面における2乗平均粗さ(Rq)が5nm以上であること特徴とする、上記(8)乃至(12)のいずれかの長尺ポリイミド積層体。
(14)前記強接着領域における、ポリイミド層の一方の表面に、第二のポリイミド層を形成されていることを特徴とする、上記(8)乃至(13)のいずれかの長尺ポリイミド積層体。
(15)前記長尺の樹脂基材の両端部に、一定の間隔で、孔径が1mm以上5mm以下である孔が形成していることを特徴とする、上記(8)乃至(14)のいずれかの長尺ポリイミド積層体。
【発明の効果】
【0015】
本発明の長尺ポリイミド積層体、及び機能層付きポリイミドフィルムの製造方法によれば、液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置、タッチパネル、バリアフィルム、有機EL照明、電子ペーパー、カラーフィルター、回路基板、カバーレイ等のフレキシブルデバイスの製造工程において、樹脂基材−ポリイミド層が剥離せず、かつ、機能層を形成した後に、ポリイミド層及び機能層に損傷を与えることなく樹脂基材を剥離することができる。そのため、ロール・トゥ・ロールプロセス方式の連続製造においても、薄肉化したポリイミドフィルムでありながら、生産性、バリア性、導電性に優れ、製品ロットごとの性能のばらつきが少ない機能層付きポリイミドフィルムを提供することができる。
さらに、デバイスとして性能に優れ、耐久性の良く、製品ごとの性能のばらつきが少ない前記フレキシブルデバイスを、歩留まり良く提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の機能層付きポリイミドフィルムの製造方法は、長尺の樹脂基材上にポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂溶液を塗工して、熱処理を行い、前記樹脂基材上にポリイミド層が形成された長尺ポリイミド積層体を形成し、次いで、前記ポリイミド層上に機能層を形成したうえで、樹脂基材を剥離して、機能層を備えたポリイミドフィルムを形成する機能層付きポリイミドフィルムを形成する。
機能層が形成される領域(以下、「機能層形成領域」ともいう。)以外の領域の少なくとも一部分における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度よりも高い領域(以下、「強接着領域」ともいう。)であり、ポリイミド層上に機能層を形成するまでの工程において、機能層形成領域以外の領域において、樹脂基材とポリイミド層が剥離せず、樹脂基材を剥離する工程において、機能層が損傷しない。
【0018】
先ず、長尺の樹脂基材(以下、単に「樹脂基材」ともいう。)上にポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂溶液を塗工して、熱処理を行い、前記樹脂基材上にポリイミド層が形成された長尺ポリイミド積層体を形成する。この工程を、以下、「積層体形成工程」という。
【0019】
ここで、長尺の樹脂基材とは、TD(Transverse Direction)側に対してMD(Machine Direction)側が長い樹脂基材である、このような長尺の基材であれば、後の工程においてロール・トゥ・ロールプロセスで搬送させることが可能となり、例えば、巻取りロールに一旦巻き取った上で、その樹脂基材を巻き出しながらポリイミド層を連続的に形成することができる。そのため、例えば、シート状の樹脂基材に対して、バッチ処理によりポリイミド層を形成する場合に比べて、工程数が少なくなることから、機能層付きポリイミドフィルム及びこれを使用したフレキシブルデバイスを効率良く製造することができる。
【0020】
このような長尺の樹脂基材としては、例えば、ロール状に巻かれた長尺基材等を挙げることができる。ロール状に巻かれた長尺基材の場合、MD側に長いほど、より長尺ポリイミド積層体が得られるため望ましいが、生産性等の観点から、好ましくは、(MD側の長さ)/(TD側の長さ)が50以上であるのがよく、より好ましくは、2000以上であるのがよい。
【0021】
長尺の樹脂基材の材質は、本工程における熱処理、及び、後述するフィルム形成工程における機能層形成に耐え得る耐熱性を有する樹脂であれば限定しない。例えば、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン系樹脂、オレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。好ましくは、価格の低さ、特性やサイズ等の製品バリエーションの豊富さという点から、ポリエチレンテレフタレートであり、耐熱性、寸法安定性という点から、ポリイミドである。
【0022】
一方、樹脂基材の厚みについては、樹脂基材上に形成されるポリイミド層を含めて基材フィルムとして必要な厚さを保つことができればよく、任意に設定することができる。すなわち、樹脂材としての役割や巻取り性等を考慮すれば、10〜200μmの厚みが好ましい。但し、ポリイミド層の方が樹脂基材よりも薄くなるようにするのが望ましい。25μm〜200μmであれば、ロール・トゥ・ロールプロセスにおいて、ロール状に巻き取りやすい等、機能層付きポリイミドフィルムの生産性に優れるだけでなく、強度が十分であり、しわや破れが起きにくいので、より好ましい。
【0023】
この長尺の樹脂基材上にポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂溶液を塗工して、熱処理を行い、樹脂基材上にポリイミド層が形成された長尺ポリイミド積層体を形成する。
【0024】
ここで、ポリイミド層を構成するポリイミドは、原料である酸無水物とジアミンとを重合して得られ、下記一般式(1)で表すことができる。
【化1】
式中、Ar
1は酸無水物残基である4価の有機基を表し、Ar
2はジアミン残基である2価の有機基であり、耐熱性の観点から、Ar
1、Ar
2の少なくとも一方は、芳香族残基であるのが望ましい。
【0025】
ポリイミドの好ましい第一の例として、下記繰り返し構造単位(a)を有するポリイミドが挙げられる。より好ましくは、下記繰り返し単位を80モル%以上の割合で含有するものである。
【化2】
【0026】
このような繰返し構造単位のうち、更に好ましくは、下記繰り返し構造単位(b)を有するポリイミドである。
【化3】
【0027】
この好ましい第1の例のような繰返し構造単位(a)又は(b)を有するポリイミドであれば、ガラス転移温度(Tg)が300℃以上のポリイミド層を形成することができるため、ポリイミド層と長尺の樹脂持材との界面での分離を容易にすることができる。
【0028】
ここで、好ましい第1の例として示したポリイミドを利用する場合、そのポリイミド以外に最大20モル%未満の割合で添加されてもよいその他のポリイミドについては、特に制限されるものではなく、後述するような一般的な酸無水物とジアミンを使用することができる。
【0029】
また、ポリイミドの好ましい第二の例としては、含フッ素ポリイミドが挙げられる。すなわち、ポリイミド層がこのようなポリイミドにより形成されるようにするか、或いは、樹脂基材の表面がこのようなポリイミドからなる耐熱性ポリイミド面を有するようにすることで、ポリイミド層と樹脂基材との界面での分離を容易にすることができる。ここで、含フッ素ポリイミドとは、ポリイミド構造中にフッ素原子を有するものを指し、ポリイミド原料である酸無水物、及びジアミンの少なくとも一方の成分において、フッ素含有基を有するものである。このような含フッ素ポリイミドとしては、例えば、上記一般式(1)で表されるもののうち、式中のAr
1が4価の有機基であり、Ar
2が下記一般式(2)又は(3)で表される2価の有機基で表されるものが例示される。
【化4】
【0030】
上記一般式(2)又は一般式(3)におけるR
1〜R
8は、互いに独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜5のアルキル基若しくはアルコキシ基、又はフッ素置換炭化水素基であり、一般式(2)にあっては、R
1〜R
4のうち少なくとも一つはフッ素原子又はフッ素置換炭化水素基であり、また、一般式(3)にあっては、R
1〜R
8のうち少なくとも一つはフッ素原子又はフッ素置換炭化水素基である。このうち、R
1〜R
8の好適な具体的としては、−H、−CH
3、−OCH
3、−F、−CF
3などが挙げられるが、式(2)又は式(3)において少なくとも一つの置換基が、−F又は−CF
3の何れかであるのが好ましい。
【0031】
含フッ素ポリイミドを形成する際の一般式(1)中のAr
1の具体例としては、例えば、以下のような4価の酸無水物残基が挙げられる。
【化5】
【0032】
上記のような含フッ素ポリイミドには透明性に優れることから、例えば液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置のような透明性が要求されるフレキシブルデバイスに適用する場合には、特に好ましい。
また、さらに透明性を向上させること、ポリイミド層と樹脂基材との界面での剥離性をより向上させることを考慮すれば、一般式(1)におけるAr
2を与える具体的なジアミン残基として、好ましくは、以下のものを使用するのが好ましい。
【化6】
【0033】
また、このような含フッ素ポリイミドにおいて、次に挙げる一般式(4)又は(5)で表される構造単位のどちらか一方を80モル%以上の割合で有する場合には、透明性と剥離性が優れる他、熱膨張性が低く寸法安定性に優れるため、より好ましい。すなわち、下記一般式(4)又は(5)で表される構造単位を有するポリイミドであれば、JIS K 7375:2008に定める全光透過率を80%以上にすることができる。この光透過率であれば、表示装置やタッチパネルのように透明性が要求されるフレキシブルデバイスを製造する場合に有利である。より好ましくは全光透過率が85%以上である。また、300℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するようになると共に、熱膨張係数は25ppm/K以下、好適には10ppm/K以下にすることができる。そのため、このようなポリイミドをポリイミド層と樹脂基材との両方で使用することで、プロセス中に温度変化を受けても両者の熱膨係数が近いため、反りや皺の発生を防止できる。
【化7】
【0034】
また、ポリイミドフィルムの分子量は、原料のジアミンと酸無水物のモル比を変化させることで主に制御可能であるが、通常、そのモル比は1:1である。必要に応じて、0.985〜1.015まで調整することができる。
【0035】
また、ポリイミド前駆体の溶液は、ポリイミド前駆体を公知の溶媒に溶解させたものである。先ず、ジアミンを有機溶媒に溶解させた後、その溶液に酸二無水物を加え、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を製造することができる。有機溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、n-メチルピロリジノン、2−ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、これらを1種若しくは2種以上併用して使用することもできる。
【0036】
また、ポリイミド樹脂の溶液は、ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂を公知の溶媒に溶解させたものである。例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、アセトン メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0037】
また、ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂の溶液を長尺の樹脂基材上に塗布する際、ポリイミド前駆体の濃度や分子量の調整により、当該溶液の粘度は500〜70000cpsの範囲とすることが好ましい。塗布の方法は、特に限定されず、所定の厚み精度が得られるのであれば、公知の方法、例えば、スピンコーター、スプレーコーター、バーコーターや、スリット状ノズルから押し出す方法が適用できる。
【0038】
長尺の樹脂基材上にポリイミド前駆体を塗工してポリイミド層を形成し、長尺ポリイミド積層体を得るには、長尺の樹脂基材上にポリアミド酸溶液を塗布した後、例えば、150〜160℃程度で加熱処理して樹脂溶液中に含まれる溶剤を除去し、更に高温で加熱処理してポリアミド酸をイミド化させる。イミド化に際して行う加熱処理は、例えば、160℃程度の温度から350℃程度の温度まで連続的又は段階的に昇温を行うようにすればよい。この際、長尺の樹脂基材を用意しておき、これをロール・トゥ・ロール方式で搬送しながら、ポリイミド層を形成するポリアミド酸の樹脂溶液を塗布するキャスト法を採用するのが好適である。なお、ポリイミド前駆体溶液には、ピリジン、無水酢酸、Nメチルイミダゾール等のいわゆる「イミド化触媒」を加えてイミド化してもよい。イミド化触媒を加えることで、比較的低温でもイミド化が進行し易くなる。
【0039】
一方、ポリイミド樹脂溶液を塗工する場合は、樹脂基材上にポリイミド酸溶液を塗布した後、例えば、150〜160℃程度で加熱処理して樹脂溶液中に含まれる溶剤を除去する。
【0040】
また、ポリアミド前駆体溶液又はポリイミド溶液には、必要に応じて離型剤が含まれていてもよい。また、触媒、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、滑剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0041】
また、長尺ポリイミド積層体におけるポリイミド層は、その厚みは制限されないが、厚みの下限は0.1μmが好ましく、0.3μmがさらに好ましい。厚みが0.3μmより薄いと、製造工程中に混入した異物によりポリイミド層にピンホールが発生する可能性があり、0.1μmより薄いと樹脂基板表面の異常突起によりピンホールが発生する可能性がある。厚みの上限は30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。表示装置の厚みを十分に薄くするためには、ポリイミド層の厚みは30μm以下にするのがよく、良好なフレキシブル性を得るためには10μm以下にするのがよい。さらに、5μm以下とすることにより、表示装置、タッチパネル等の用途において必要となる、高い全光線透過率(80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上)を得ることができる。
【0042】
また、フィルム形成工程において、ポリイミド層と樹脂基材との界面での分離を容易にできる観点から、好ましくは、ポリイミド層と樹脂基材との界面における樹脂基材の表面は、表面粗さRqが5nm以下であるのがよい。
【0043】
ポリイミド層の熱膨張係数は特に限定されないが、機能層形成後の応力低減、カールの防止のためには、15×10
−6/K以下であることが好ましい。また、長尺ポリイミド積層体のカールを防止するためには、ポリイミド層、樹脂基材の熱膨張係数の差は小さいことが好ましい。それぞれの厚み、弾性率などによって長尺ポリイミド積層体がフラットとなる熱膨張係数差は異なるが、ポリイミド層と樹脂基材の熱膨張係数の差は10×10
−6/K以下であることが好ましい。
【0044】
本発明においては、上記で例示したポリイミドを用いることにより、好適には、ポリイミド層と樹脂基材との界面における剥離強度が0.1N/m以上50N/m以下にすることができて、例えば人の手で容易に剥離することができるようになる。ポリイミド層から樹脂基材を除去する際のポリイミド層と樹脂基材の剥離強度の上限は、ポリイミド層の厚み、機能層の種類、剥離方法などにより異なり、特に限定されないが、ロール・トゥ・ロール方式で搬送しながら、ポリイミド層から樹脂基材の除去を容易とするためには、50N/m以下にすることが好ましい。剥離強度が0.1N/m以下であると搬送中にポリイミド層と樹脂基材の界面で剥離が起こり、安定走行が困難となる。より好ましくは、0.1N/m以上10N/m以下である。
【0045】
また、得られた長尺ポリイミド積層体は、後述するフィルム形成工程において形成される機能層形成領域以外の領域の少なくとも一部分における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度が、機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度よりも高い強接着領域である。
この特徴を有するため、本発明の長尺ポリイミド積層体は、ポリイミド層上に機能層を形成するまでの工程において、機能層形成領域以外の領域において、樹脂基材と前記ポリイミド層が剥離せず、樹脂基材を剥離する工程において、機能層が損傷しない。
また、本発明の長尺ポリイミド積層体は、ガラス等の硬質支持体上にポリイミド層を形成したものとは異なり、それ自体をロール状にすることができ、保管性、搬送性に優れる。さらに、長尺ポリイミド積層体を構成する樹脂基材が、ポリイミド層の保護フィルムとして作用する。そのため、ポリイミド層の汚染、損傷、光劣化、吸湿等を防ぐことができる。さらに、後述するフィルム形成工程において、機能層形成後に、フレキシブルデバイスの形状に合わせて、樹脂基材ごと加工(打ち抜き加工等)することができる。そのため、機能層付きポリイミドフィルムが損傷しにくい。一方で、ガラス等の硬質支持体上にポリイミド層を形成したものでは、機能層形成後に、支持体を剥離してから加工する必要がある。ポリイミド層は非常に薄いため、支持体を剥離することで、皺が発生しやすく、加工が難しくなる。その結果、特性ばらつきや歩留まり低下の原因となる。
【0046】
この特徴を有するためには、長尺ポリイミド積層体は、以下に示す処理(A)又は処理(B)のいずれかを行うことが好ましい。
処理(A):強接着領域おける、樹脂基材とポリイミド層との剥離強度を上げる処理を行う。
処理(B):機能層形成領域における、樹脂基材とポリイミド層との剥離強度を下げる処理を行う。
【0047】
処理(A)の例としては、以下の、処理(A)−1乃至処理(A)−5が挙げられる。
処理(A)−1:強接着領域における、長尺の樹脂基材のポリイミド層側の表面を、粗化する。
処理(A)−2:強接着領域における、長尺の樹脂基材のポリイミド層側の表面を、コロナ処理又はプラズマ処理する。
処理(A)−3:強接着領域における、ポリイミド層の一方の表面に、第二のポリイミド層を形成する。
処理(A)−4:強接着領域において、樹脂基板及びポリイミド層のとの両方に接着している剥離防止層を形成する。
処理(A)−5:強接着領域において、樹脂基材をパーフォレーション処理する。
この中で、処理の容易性、生産性の観点から、処理(A)−1乃至処理(A)−3のいずれかが好ましい。
【0048】
処理(A)−1では、例えば、
図2、3に示すように、強接着領域における、長尺の樹脂基材のポリイミド層側の表面を粗化する。すなわち、機能層形成領域の外周側のポリイミド層と接する位置に樹脂基材が部分粗化面を有しており、部分粗化面に対応して積層されたポリイミド層の部分を剥離し難くする。ここで、粗化とは、樹脂基材表面に凹部を形成することも含む。また、粗化の方法は、公知の方法を用いることができるが、好ましくはサンドブラスト、エッチングである。サンドブラストにより粗化する場合、長尺の樹脂基材のポリイミド層側の表面における十点平均粗さ(Rq)が5nm以上であれば、接着性を十分担保できるので好ましい。
【0049】
また、処理(A)−2では、例えば、
図4に示すように、強接着領域における、長尺の樹脂基材のポリイミド層側の表面に、コロナ処理又はプラズマ処理をする。これにより、処理面に対応して積層されたポリイミド層の部分を剥離し難くする。
一方、プラズマ処理により、樹脂基材上には、凹凸が形成されかつ表面に活性基が付与されるため、剥離強度が上がる。公知の手法が用いられ、真空プラズマでも大気圧プラズマでも良い。また、動作ガスは、アルゴン、ヘリウム、酸素が挙げられる。好ましくは、コストの観点から、大気プラズマであり、動作ガスはアルゴン、ヘリウムである。
【0050】
また、処理(A)−3では、強接着領域におけるポリイミド層を、複数の樹脂層とする。例えば、
図5に示すように、ポリイミド層が少なくとも第一ポリイミド層と第二ポリイミド層とを有するようにして、樹脂基板上に形成した第一ポリイミド層の、強接着領域における表面を第二ポリイミド層で被覆すると共に、第二ポリイミド層の外周部が樹脂基材と接着されるようにして、この第二ポリイミド層の外周部が係止部材の役割をして強接着領域を構成し、樹脂基板からポリイミド層が剥離するのを防止する。第二ポリイミド層は、第一ポリイミド層の、強接着領域のみを被覆しても良いし、全面を被覆しても良い。前者の場合は、積層体形成工程において、第一ポリイミド層上に機能層が形成される。後者の場合は、積層体形成工程において、第二ポリイミド層上に機能層が形成される。第二ポリイミド層の膜厚は、第一樹脂層の膜厚と同程度でも良く、小さくても良い。第一ポリイミド層は、前述したポリイミド層と同じ構造のポリイミドである。一方、第二ポリイミド層は、前述したポリイミド層と同じ構造のポリイミドでも良く、異なる構造でも良いが、第一ポリイミド層及び第二ポリイミド層の剥離強度を担保する観点で、同じ構造のポリイミドであることが好ましい。
【0051】
また、処理(A)−4では、強接着領域において、樹脂基材及びポリイミド層のとの両方に接着している剥離防止層を形成する。具体的には、
図6に示すように強接着領域で樹脂基材とポリイミド層との間に剥離防止層を介在させる。または、樹脂基材上に形成したポリイミド層の、強接着領域における表面を剥離防止層で被覆すると共に、剥離防止層の外周部が樹脂基材と接着されるようにして、剥離防止層の外周部が係止部材の役割をして強接着領域を構成し、樹脂基材からポリイミド層が剥離するのを防止する。
ここで、剥離防止層は、テープ、両面テープ、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、金属などが挙げられる。耐熱性、ハンドリング性の観点から、ポリイミドを用いることが好ましい。テープ、両面テープを用いる場合、テープのフィルムがポリイミドからなることが好ましい。金属の場合は、樹脂基材表面に銀ペースト、アルミニウムペースト、銅ペーストなどを塗布した後、加熱し焼結し形成してもよい。剥離防止層は強接着領域において樹脂基材とポリイミド層の両方に接着していれば、ポリイミド層の形成前に剥離防止層を形成してもよく、ポリイミド層の形成後に剥離防止層を形成してもよい。
【0052】
また、処理(A)−5では、強接着領域において、樹脂基材をパーフォレーション処理する。具体的には、前記長尺の樹脂基材の両端部に、孔を形成する。次に、この孔を形成した樹脂基材(孔を形成した部分も含む)上にポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂溶液を塗工して、熱処理を行い、前記樹脂基材上にポリイミド層が形成された長尺ポリイミド積層体を形成する。ここで、ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂溶液は、前記孔を形成した樹脂基材の孔に侵入するため、孔においてもポリイミド層が形成される。孔の大きさ及び間隔は限定しないが、フレキシブルデバイスを、製品ごとの性能のばらつきが少なく、歩留まり良く提供する観点から、一定の間隔で、孔径が1mm以上5mm以下である孔が形成していることが好ましい。
【0053】
また、処理(B)の例としては、機能層形成領域における、長尺の樹脂基材とポリイミド層との間に、離型剤を塗布する。一例としては、積層体形成工程において、樹脂基材における機能層形成領域に、公知の方法で離型剤を塗布した後、ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂溶液を塗工して、熱処理を行い、樹脂基材上にポリイミド層が形成された長尺ポリイミド積層体を形成する。また、液体の離型剤を塗布しても良く、フィルム状の離型剤を積層しても良い。
ここで、離型剤は、公知の物を使用できるが、種類の豊富さの観点から、フッ素系、シリコン系が好ましい。離型剤の厚みは処理(B)の目的に適合する範囲であれば限定しない。
【0054】
また、処理(A)及び(B)において、強接着領域は、本発明の効果が担保できれば、その範囲や位置は限定しない。つまり、積層体形成領域以外の全面であっても良く、その一部であっても良い。特に、前記強接着領域を形成するための処理速度及び処理費用の観点から、機能層を囲繞する位置の少なくとも一部又は長尺ポリイミド積層体の両端部の少なくとも一部であることが好ましい。 積層体形成工程において、長尺ポリイミド積層体上に複数の独立した機能層を形成する場合は、例えば、
図3に示すように、機能層を囲繞する位置の少なくとも一部に処理(A)を行う。または、機能層形成領域に処理(B)を行う。もしくは、
図2に示すように、長尺ポリイミド積層体の両端部の少なくとも一部機能層を囲繞する位置の少なくとも一部に処理(A)を行う。これにより、長尺ポリイミド積層体から、機能層毎にそれぞれ独立した複数の機能層付きポリイミドフィルムを製造することができる。
また、積層体形成工程において、長尺ポリイミド積層体上のほぼ全面にわたり連続的に機能層を形成する場合は、
図2に示すように、長尺ポリイミド積層体の両端部の少なくとも一部に処理(A)を行う。または、機能層形成領域に処理(B)を行う。これにより、長尺ポリイミド積層体から、機能層がほぼ全面に形成された機能層付きポリイミドフィルムを製造することができる。
【0055】
好ましくは、生産性、強接着領域における剥離強度の均一性、強接着領域の範囲のばらつきの観点から、巻取り部でロール状に巻き取られた樹脂基材を、巻出し部及び巻取り部を備えたロール・トゥ・ロール(RTR)方式の装置を使用して、これを巻き出し、送出機構によって長手方向に繰り出され、ロール搬送されながら、強接着領域において、処理(A)−1乃至(A)−4の処理方法で、連続的に処理することが好ましい。特に好ましい強接着部を作る方法としては、(A)−2が生産性と汚染が少ないことから望ましい。またフィルムで行うと貼りあわせ前に小片に打ち抜きまたは切断を行い、他の機能部材に貼りつけるまでの保護材としてキャリアをつかえ、また貼りつけた後にキャリア側を剥がすことで機能層にダメージを与えずに生産を行える。
【0056】
なお、長尺ポリイミド積層体において、強接着領域おける、樹脂基材とポリイミド層との剥離強度は、機能層形成領域における、樹脂基材とポリイミド層との剥離強度よりも高ければ、それぞれの剥離強度は限定しないが、機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度は、50N/m以下0.1N/m以上であることが好ましく、より好ましくは10N/m以下、さらに好ましくは5N/m以下である。50N/mを超えると、RTR方式で搬送しながらポリイミド層から樹脂基材を容易に除去できないおそれがある。一方、前記強接着領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度は、20N/m以上であることが好ましく、より好ましくは、○○N/m以下○○N/m以上である。20N/m未満であると、ポリイミド層上に機能層を形成するまでの工程において、樹脂基材とポリイミド層が剥離してしまうおそれがある。
強接着領域おける樹脂基材とポリイミド層との剥離強度は、機能層形成領域における樹脂基材とポリイミド層との剥離強度に比べて、10N/m以上高いことが好ましい。より好ましくは20N/m以上である。剥離強度差が10N/m未満であると、ポリイミド層上に機能層を形成するまでの工程において、樹脂基材とポリイミド層が剥離してしまったり、樹脂基材を機能層付きポリイミド層から剥離する工程において、機能層が損傷してしまうおそれがある。
【0057】
次に、長尺ポリイミド積層体のポリイミド層上に機能層を形成したうえで、樹脂基材を剥離して、機能層を備えたポリイミドフィルム(機能層付きポリイミドフィルム)を形成する。この工程を、以下、「フィルム形成工程」という。
【0058】
機能層としては、公知のフレキシブルデバイスの機能を担保する素子を適用することができ、例えば、有機EL・TFT、光電変換素子、電子ペーパー駆動素子、カラーフィルター、タッチパネル、光電変換装置等を挙げることができる。一例として、フレキシブルデバイスとして有機ELディスプレイを製造する場合、機能層としては、画像駆動のためのTFTが挙げられる。TFTの材質としては、シリコン半導体又は酸化物半導体である。従来技術であるポリイミドフィルムを用いない場合は、板ガラス等の硬質支持体上に無機系成分によるバリア層を設け、その上にTFTを形成する。この形成時に、高温処理(300℃台〜400℃台)が必要となるが、ポリイミドであればこの高温処理に耐えることができる。また、フレキシブルデバイスとしてタッチパネルを製造する場合、機能層としては、透明導電膜、メタルメッシュ等の電極層が挙げられる。透明導電膜の一例としては、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO、ZnO、IZO(Indium Zinc Oxide)が挙げられる。これらの電極層の形成時に、200℃以上で熱処理を行うことで抵抗値の小さな導電層とすることができるが、ポリイミドであればこの高温処理に耐えることができる。なお、タッチパネルに限らず、機能層として透明導電膜を使用する場合、「透明導電層」ともいう。
【0059】
長尺ポリイミド積層体上に機能層を形成するにあたって好ましい形態としては、前述したように、長尺ポリイミド積層体を巻取りロールに一旦巻き取った上で、この長尺ポリイミド積層体を巻き出しながら長尺ポリイミド積層体のポリイミド層上に機能層を連続的に形成するのがよい。また、巻き取った長尺ポリイミド積層体を巻き出しながら所定の長さでシート状に切り出して、シート状のポリイミド積層体ごとにポリイミドフィルム上に機能層を形成するようにしてもよい。
【0060】
長尺ポリイミド積層体上に機能層を形成した後には、長尺ポリイミド積層体の樹脂基材を分離して、機能層付きポリイミドフィルムを得るようにする。ここで、樹脂基材を分離する方法としては特に制限はなく、公知の方法を使用することができる。その際、例えば、剥離端緒部を形成するためのピンセット等の端緒摘まみ道具や吸引プレート、剥離端緒部形成後の剥離部にあてがうエア吹付け等の機械的手段により樹脂基材を剥離するようにしてもよい。例えば、樹脂基材の端部をピンセットで摘まんで樹脂基材を剥離し、この剥離部分を起点にして、他の道具(ピンセット、スティック、ブレード、シート等)を用いて、機能層付きポリイミドフィルムを完全に分離させるようにする。或いは、上記ピンセットの代わりに、針状、カギヅメ状、昆虫足状の道具を用いて、樹脂基材−機能層付きポリイミドフィルムの界面にこれらの道具を差し込んで、樹脂基材の端部を剥離したり、機能層付きポリイミドフィルムを吸引プレートで吸引して樹脂基材を剥離するようにしたりしてもよい。このように吸引プレートを用いる方法は、剥離と同時に機能層付きポリイミドフィルムを安定的に把持・搬送できる点で、好ましい方法であると言える。この吸引プレートは、平面状であってもよく、半円等のような曲面形状をしていてもよい。更には、上記のようないずれかの方法で樹脂基材の端部を剥離した後に、吸引プレート又は圧縮エアを吹き付けて樹脂基材を剥離するようにしてもよい。
【0061】
ここで、本発明における長尺ポリイミド積層体を用いて、タッチパネルを製造する場合を例にして説明する。この例では、
図9に示したようなRTR方式の連続製造装置を使用し、この連続製造装置は、ロール状に巻き取られた長尺ポリイミド積層体8を巻き出すための巻出しロール(巻出し部)13、搬送ロール(ガイドロール)14、プロセス処理部15、巻取りロール(巻取り部)17を備えている。巻き出しロール13から巻き出された長尺ポリイミド積層体8は、シワや巻きズレを防止するための搬送ロール14を経て、プロセス処理部15において、長尺ポリイミド積層体のポリイミド層側の表面に、機能層としてITOを100℃〜400℃で蒸着して、長尺ポリイミド積層体上に機能層(ITO)を形成する。その後、搬送ロール14を経て、機能層付きポリイミドフィルム16を巻取りロール17でロール状に巻き取るようにする。
【0062】
プロセス処理部15によりITOを蒸着するかわりに、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等の支持材上にITOを設けて、このITO面を長尺ポリイミド積層体のポリイミド層側の表面に密着させ、その後支持材を剥離して、長尺ポリイミド積層体上にITOを形成するようにしてもよい。
【0063】
次に、ロール状に巻き取られた機能層付きポリイミドフィルム16を巻き出しながら、所定の長さでシート状に切り出す。シートの大きさは、製造するタッチパネルの大きさに合わせて任意に決定することができる。切り出されたシート状の機能層付きポリイミド積層体におけるITO(機能層)をエッチングにより、タッチパネルとして使用する回路の形状に加工する。エッチングは、公知の方法を使用できる。例えば、ITOの表面に液状又はフィルム状のフォトレジスト(ネガ型でもポジ型でもよい)を積層する。液状のフォトレジストの場合、積層後、熱処理により溶剤を揮発させ、乾燥させてもよい。そして、フォトレジスト上に回路状にパターニングされた公知のフォトマスクを積層し、公知の露光機で露光し、公知の現像液で現像する。現像液は、使用するフォトレジストによりアルカリ水溶液、有機溶剤等から適宜選択できる。現像により、ITOの表面にはタッチパネルとして使用する回路の形状に合ったフォトレジストが残る。そして、エッチング液を接触させて、フォトレジストが積層されていない部分のITOを除去する。エッチング液は公知のものを使用することができ、例えば塩化鉄系や塩化銅系のものが挙げられる。そして、残存するフォトレジストを剥離して水洗する。更には、ピンセット等を使用して樹脂基材を剥離し、タッチパネルとして使用されるITO付きポリイミドフィルムを得るようにする。
【0064】
また、
図9に示したような連続製造装置のプロセス処理部14において、ポリイミド積層体上にITOを形成した後、エッチングによりタッチパネルとして使用する回路の形状に加工してから、機能層付きポリイミドフィルムを巻取りロール17で巻き取るようにし、その後、上記と同様に、製造するタッチパネルの大きさに合わせて任意の大きさでシート状に切り出し、更に樹脂基材を剥離して、タッチパネルとして使用するITO付きポリイミドフィルムを得るようにしてもよい。
【0065】
また、本発明における長尺ポリイミド積層体を用いて、タッチパネルを製造する別の形態として、ITOのかわりに、銀又は銅のナノワイヤー(以下、「ナノワイヤー」という。)を公知の紫外光硬化型接着剤を用いて積層して、機能層を形成することもできる。その場合、上記RTR方式の連続製造装置のプロセス処理部15において、長尺ポリイミド積層体のポリイミドフィルム側の表面に紫外光硬化型樹脂を塗布し、乾燥させ、ナノワイヤーを回路の形状に積層する。積層する際、回路の形状に溝を設け、その溝にナノワイヤーを設けるようにしてもよい。そして、紫外光を照射して紫外光硬化型樹脂を硬化させてナノワイヤーをポリイミド積層体に接着して、機能層を備えたポリイミド積層体16を巻取りロール17でロール状に巻き取るようにする。次いで、この機能層付きポリイミドフィルム16を巻き出しながら、先の製造例の場合と同様に任意の長さでシート状に切り出し、樹脂基材を剥離して、タッチパネルとして使用されるナノワイヤー付きポリイミドフィルムを得るようにする。その際、ナノワイヤーの端面を研磨等で平滑に処理するようにしてもよい。
【0066】
また、本発明においては、長尺ポリイミド積層体について、製造するタッチパネル等のフレキシブルデバイスの大きさに合せて予めシート状に切り出しておき、このシート状のポリイミド積層体上にITOを形成した後、エッチングによりタッチパネルとして使用する回路の形状に加工し、更に、樹脂基材を剥離して、タッチパネル等として使用するITO付ポリイミドフィルムを得るようにしてもよい。
【0067】
一方、本発明における長尺ポリイミド積層体を用いて、カバーレイフィルムを製造する場合を例として説明すると、以下のとおりである。タッチパネルを製造する場合と同様に、
図9に示したようなRTR方式の連続製造装置を使用して、ポリイミド積層体8を巻き出しロール13から巻き出し、搬送ロール14を経て、プロセス処理部15においてポリイミド積層体のポリイミドフィルム側の表面に、機能層としてカバーレイフィルム用の接着層を形成する。接着層の形成方法としては、例えば、リップコーター等の塗工装置を用いて、接着層の原料となる、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂等の公知の樹脂材料、又は、溶剤系粘着剤、エマルジョン系粘着剤、 ホットメルト系粘着剤、ゴム系粘着剤等の公知の粘着剤(感圧接着剤)を塗布し、乾燥させる。そして、巻取りロール17で接着層付きのポリイミド積層体をロール状に巻き取った後、製造するカバーレイフィルムの大きさに合わせて任意の大きさでシート状に切り出し、樹脂基材を剥離して、カバーレイフィルムとして使用する接着層付きのポリイミドフィルムを得るようにする。なお、上記の接着層として、粘着剤を用いた場合、接着層を「粘着層」ともいう。本発明の機能層として粘着層を用いた場合は、上述のタッチパネルを製造する場合において、ポリイミド積層体上にITOを形成した後、さらにその上にカバー層を積層する際に、カバー層を接着させるためにも使用できる。
【0068】
本発明では、この接着層を備えたポリイミドフィルムのような機能層付きポリイミドフィルムを得るにあたり、上記のようなRTR方式の連続製造装置において、樹脂基材を巻き取るための巻取りロールを別途設けて、長尺の機能層付きポリイミドフィルムを巻き取るようにしてもよい。すなわち、プロセス処理部においてポリイミド積層体上に機能層を形成した後、このRTR方式の連続製造装置内で樹脂基材を剥離して、樹脂基材用の巻取りロール(図示外)で巻き取り、また、巻取りロール17では機能層付きポリイミドフィルムを巻き取るようにする。巻き取った機能層付きポリイミドフィルムは、必要に応じてフレキシブルデバイスの大きさに合せてシート状に切り出して使用してもよい。
【0069】
更に、本発明における長尺ポリイミド積層体を用いて、有機ELディスプレイを製造するような場合には、例えば、予めポリイミド積層体を、製造する有機ELディスプレイの大きさに合わせてシート状に切り出して、このシート状のポリイミド積層体の樹脂基材側の面にガラスシートを積層する。そして、ポリイミドフィルム側の面に、機能層としてTFT、電極層、発光層、電極層を順次形成し、これらの機能層をガラス基板や多層薄膜等で気密封止し、ガラスシート及び樹脂基材を剥離して、有機ELディスプレイとして使用できる機能層付きポリイミドフィルムを得るようにする。ちなみに、TFTを形成する際の形成温度は300〜500℃である。
【0070】
また、本発明における長尺ポリイミド積層体を用いて、液晶表示装置を製造する場合は、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等をベース樹脂とした、公知のカラーフィルター用レジストインキを、カラーフィルターレジスト層として搭載してもよい。
【0071】
また、本発明の長尺ポリイミド積層体を用いて上記の各種フレキシブルデバイスを製造する場合、各特性を向上させるために、以下の機能層を搭載してもよい。すなわち、ポリイミドフィルムの耐摩擦性を向上するために、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、シラン化合物、金属酸化物等の公知の化合物をハードコート層として搭載してもよい。また、ポリイミドフィルムの酸素や水蒸気の透過を抑制するために、アルミナ、シリカ等の公知のガスバリア層を搭載してもよい。また、ポリイミドフィルムの光学特性、寸法安定性等を制御するために、環状オレフィン樹脂、エステル樹脂等の公知の透明樹脂を透明樹脂層として搭載してもよい。
【0072】
また、上述の各機能層に加え、フレキシブルデバイス間、フレキシブルデバイス−出力装置間又はフレキシブルデバイス−入力装置間における、電子信号の授受等のため、銅、銀、金、チタン、タングステン、ITO等の公知の配線材料を、配線層として搭載してもよい。
【0073】
本発明の長尺ポリイミド積層体や機能層付きポリイミドフィルムが適用されるフレキシブルデバイスとは、人手で曲げられる程度の屈曲性を有する電子機器用素子または電子機器用部材である。フレキシブルデバイスが電子機器に搭載される形態は、曲率が使用時に変化する屈曲用途でもよく、曲率が変化しない固定曲面でもよく、また、平面でもよい。
【0074】
一般に、ロール・トゥ・ロールで積層体を製造する場合には、送り出し側のロール巻機構に巻き取られている長尺の樹脂フィルムは、送出機構によって長手方向に繰り出されながらロール搬送されて、塗工、乾燥、硬化等のプロセス処理がなされ、巻取機構を介して、巻き取り側のロール巻機構で巻き取られていく。
【0075】
本発明長尺ポリイミド積層体や機能層付きポリイミドフィルムは、液晶表示装置や有機EL表示装置をはじめ、電子ペーパー、タッチパネル等の表示装置又はその構成部品として用いることができるほか、有機EL照明装置で用いたり、ITO等が積層された導電性フィルム、水分や酸素等の浸透を防止するガスバリアフィルム、フレキシブル回路基板の構成部品などの各種機能を有した機能性材料として用いられるものである。すなわち、本発明で言う機能層とは、これら表示装置、照明装置、又はその構成部品をはじめ、各種機能性材料を構成するものであって、具体的には、電極層、発光層、ガスバリア層、接着層、薄膜トランジスタ、配線層、透明導電層等の1種又は2種以上を組み合わせたようなものを総称するものである。
【0076】
そして、これらの機能層は、金属等を成膜した後、必要に応じて所定の形状にパターニングしたり、熱処理するなど、公知の方法を用いて得ることができる。すなわち、これら機能層を形成するための手段については特に制限されず、例えば、スパッタリング、蒸着、CVD、印刷、露光、浸漬など、適宜選択されたものであり、必要な場合には真空チャンバー内などでこれらのプロセス処理を行うようにしてもよい。そして、樹脂基材を分離して取り除くのは、各種プロセス処理を経て機能層を形成した直後であってもよく、ある程度の期間で支持材と一体にしておき、例えば表示装置や機能性材料として利用する直前に分離して取り除くようにしてもよい。
【実施例】
【0077】
以下、試験例に基づきながら、本発明について説明する。
先ず、下記においてポリイミドを合成する際の原料モノマーや溶媒の略語、及び、実施例中の各種物性の測定方法とその条件について以下に示す。
【0078】
〔略語について〕
・DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
・PDA:1,4−フェニレンジアミン
・TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル
・DADMB:4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル
・1,3−BAB:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
・BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・6FDA:2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物・PMDA:ピロメリット酸二無水物
・TPE−R:1,3−ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
・DSDA:3,3',4,4'‐ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物
【0079】
〔剥離強度〕
東洋精機製作所社製ストログラフR−1を用いて、ポリイミド積層体を幅10mmの短冊状に切断したサンプルにおける(樹脂)基材とポリイミド層との界面について、T字剥離試験法によるピール強度を測定することにより評価した。
【0080】
合成例1 窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながらPDA8.00gを溶剤DMAcに溶解させた。次いで、この溶液BPDA22.00gを加えた。その後、溶液を室温で5時間攪拌を続けて重合反応を行い、一昼夜保持した。粘稠なポリアミド酸溶液が得られ、高重合度のポリアミド酸Aが生成されていることが確認された。
【0081】
合成例2
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながらTFMB12.08gを溶剤DMAcに溶解させた。次いで、この溶液にPMDA6.20gと6FDA4.21gを加えた。その後、溶液を室温で5時間攪拌を続けて重合反応を行い、一昼夜保持した。粘稠なポリアミド酸溶液が得られ、高重合度のポリアミド酸Bが生成されていることが確認された。
【0082】
合成例3
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながらTFMB12.53gを溶剤DMAcに溶解させた。次いで、この溶液に6FDA17.46gを加えた。その後、溶液を室温で5時間攪拌を続けて重合反応を行い、一昼夜保持した。粘稠なポリアミド酸溶液が得られ、高重合度のポリアミド酸Cが生成されていることが確認された。
ポリアミド酸Cの内50gをとり無水酢酸10.2gとピリジン2gを加えて3時間撹拌して化学イミド化しポリイミドCとした。
【0083】
合成例4
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながらTPE−R18.45gを溶剤DMAcに溶解させた。次いで、この溶液にPMDA5.5gとDSDA13.55gを加えた。その後、溶液を室温で5時間攪拌を続けて重合反応を行い、一昼夜保持した。粘稠なポリアミド酸溶液が得られ、高重合度のポリアミド酸Dが生成されていることが確認された。
【0084】
実施例1
厚み75μmの長尺状のポリイミドフィルム(宇部興産”ユーピレックス-S” 表面粗さRq2nm、熱膨張係数20ppm/K)の両端部3cmをやすりで表面粗度を10nm以上にした。この長尺ポリイミドフィルム上に、合成例1で得たポリアミド酸Aの樹脂溶液を塗布した後、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。次に、160℃から360℃まで約4℃/分の昇温速度で熱処理することでイミド化し、厚み25μmのポリイミド層が形成されたポリイミド/ポリイミド積層体を得た。
【0085】
実施例2
ポリアミド酸Aの代わりにポリアミド酸Bの樹脂溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミド/ポリイミド積層体を得た。
【0086】
実施例3
ポリアミド酸Aの代わりにポリアミド酸Cの樹脂溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミド/ポリイミド積層体を得た。
【0087】
実施例4
厚み100μmの長尺状のPETフィルム(東洋紡”A4100” 表面粗さRq1.8nm、Tg75℃、熱膨張係数45ppm/K)の非易接着面の両端部3cmをやすりによる粗化処理で表面粗度を10nm以上にした。この長尺PETフィルム上に、合成例3で得たポリイミドCの樹脂溶液を塗布した後、130℃〜180℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。次に、180℃で10分乾燥させ、厚み25μmのポリイミド層が形成されたポリイミド/PET積層体を得た。
【0088】
実施例5
やすりによる粗化処理の代わりに両端部にコロナ処理を行った以外は実施例3と同様にしてポリイミド/ポリイミド積層体を得た。
この基材の両端部の表面粗さはRq8nmであった。
【0089】
実施例6
2層ダイを用いて基材ポリイミドフィルム(宇部興産”ユーピレックス-S”)に接する層の両端部にポリアミド酸Dを50mm塗工し中央部はポリアミド酸Cを塗布した以外は、実施例1と同様に行い
図5に示す構造の積層体を得た。
【0090】
実施例7
2層ダイを用いて基材ポリイミドフィルム(宇部興産”ユーピレックス-S”)に接する層全面にポリアミド酸Cを塗布し両端部に覆い被せるようにポリアミド酸Dを50mm塗工した以外は、実施例1と同様に行い
図5に示す構造の積層体を得た。
【0091】
実施例8
基材ポリイミドフィルム(宇部興産”ユーピレックス-S”)の両端から10mmの位置に中心が来るように5mm角の孔を打ち抜いたポリイミド基材を用いた以外は、実施例1と同様に処理を行い
図7に示す構造の積層体を得た
【0092】
実施例9
基材としてポリイミドフィルム(東レ・デュポン” カプトン-H” :表面粗さRq6nm、熱膨張係数27ppm/K)を用い、ポリイミドフィルムに接する面にポリアミド酸Aを塗布乾燥後、250℃まで熱処理することで表面をイミド化した後、ポリアミド酸Cを覆い被さるように塗工・乾燥硬化させ、
図8に断面を示すような積層体を得た
【0093】
【表1】