(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明では、2波長のテラヘルツ波を被写体に照射しなければならないので、手順が煩雑で、画像取得に要する時間が長くなってしまう。しかも、特許文献1に記載の発明では、生成したテラヘルツ波を被写体に照射する計測光と強度参照用の参照光とに分光し、計測光と参照光を同時に強度計測器へ導入する光学系が必要であるため、それだけ装置構造が複雑になるという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、簡素な構造で簡便に被写体のイメージ像を取得できるテラヘルツ波イメージング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、テラヘルツ帯の複数周波数が含まれる送信波を、被写体に照射する送信部と、前記送信波が被写体を経て到達した信号を、周波数成分毎に異なる経路で送信された信号として受信する受信部と、前記受信部が受信した周波数成分毎の送信経路を、被写体を含む空間の検知部位に対応させ、各周波数成分の受信情報を各検知部位の画素情報としてマッピングするイメージ像取得部と、を備える。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載のテラヘルツ波イメージング装置において、前記送信部は、複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる送信側多周波信号生成手段と、前記送信側多周波信号生成手段により生成された各周波数成分と対応付けられる複数の送信アンテナを一次元もしくは二次元に配列して構成される送信手段と、前記送信側多周波信号生成手段により生成された各周波数成分の信号を、各々対応付けられた送信アンテナへ選択的に導く送信波伝送手段と、を含み、前記受信部は、前記被写体を経て到達した全ての周波数成分の信号を受信可能な位置に配置された受信アンテナを有する受信手段と、前記受信アンテナで受信した全ての信号を導く受信波伝送手段と、を含み、前記イメージ像取得部は、前記送信側多周波信号生成手段が発生させた各周波数との差周波数が各々異なる低周波数となる複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる受信側多周波信号生成手段と、前記受信側多周波信号生成手段により発生させた多周波信号を局部発振波として、前記受信部で受信した多周波成分の信号と混合させる混合手段と、前記混合手段から得られる低周波信号に含まれる各周波数成分を、該当する送信アンテナによる検知部位の受信情報として用いることにより、検知部位の画素情報を決定し、前記複数の送信アンテナが配列された一次元もしくは二次元のイメージ像を作成する画像処理手段と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、前記請求項1に記載のテラヘルツ波イメージング装置において、前記送信部は、複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる送信側多周波信号生成手段と、前記送信側多周波信号生成手段により生成された各周波数成分が含まれる信号を送信する送信アンテナを有する送信手段と、前記送信側多周波信号生成手段により生成された各周波数成分の信号の伝送タイミングを合わせて、前記送信アンテナへ導く送信波伝送手段と、を含み、前記受信部は、前記被写体を経て到達した信号を受信可能な位置へ、一次元もしくは二次元に配列された複数の受信アンテナで構成される受信手段と、前記受信手段の各受信アンテナで受信した信号から、各受信アンテナに対応させて設定した周波数成分のみを選択的に導く受信波伝送手段と、を含み、前記イメージ像取得部は、前記送信側多周波信号生成手段が発生させた各周波数との差周波数が各々異なる低周波数となる複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる受信側多周波信号生成手段と、前記受信側多周波信号生成手段により発生させた多周波信号を局部発振波として、前記受信部で受信した多周波成分の信号と混合させる混合手段と、前記混合手段から得られる低周波信号に含まれる各周波数成分を、該当する受信アンテナによる検知部位の受信情報として用いることにより、検知部位の画素情報を決定し、前記複数の受信アンテナが配列された一次元もしくは二次元のイメージ像を作成する画像処理手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、前記請求項1に記載のテラヘルツ波イメージング装置において、前記送信部は、複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる送信側多周波信号生成手段と、前記送信側多周波信号生成手段により生成された各周波数成分と対応付けられる複数の送信アンテナを一次元もしくは二次元に配列して構成される送信手段と、前記送信側多周波信号生成手段により生成された各周波数成分の信号を、各々対応付けられた送信アンテナへ選択的に導く送信波伝送手段と、を含み、前記受信部は、前記送信手段の各送信アンテナと対向状に配置された複数の受信アンテナを有する受信手段と、前記受信手段の各受信アンテナで受信した信号から、各受信アンテナが対向する送信アンテナの送信した周波数成分のみを選択的に導く受信波伝送手段と、を含み、前記イメージ像取得部は、前記送信側多周波信号生成手段が発生させた各周波数との差周波数が各々異なる低周波数となる複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる受信側多周波信号生成手段と、前記受信側多周波信号生成手段により発生させた多周波信号を局部発振波として、前記受信部で受信した多周波成分の信号と混合させる混合手段と、前記混合手段から得られる低周波信号に含まれる各周波数成分を、該当する受信アンテナによる検知部位の受信情報として用いることにより、検知部位の画素情報を決定し、前記複数の送信アンテナが配列された一次元もしくは二次元のイメージ像を作成する画像処理手段と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、前記請求項1に記載のテラヘルツ波イメージング装置において、前記送信部は、複数の周波数の光波を含む光信号を発生させる多周波光生成手段と、ポンプ光で励起させた非線形光学結晶に角度位相整合条件が満たされる角度でシード光を注入することで、ノンコリニア位相整合条件を満たす方向にアイドラー光が発生し、各シード光に対応した周波数のテラヘルツ光が出射面より照射される光パラメトリック発生器と、前記多周波光生成手段にて生成した複数の周波数の光信号をシード光とし、それぞれの角度位相整合条件を満たす角度で同時に前記光パラメトリック発生器へ注入するアクロマティック光注入光学系と、前記光パラメトリック発生器の光出射面に形成され、各周波数のテラヘルツ光を夫々異なる角度へ放射させるモノリシックグレーティングカプラーと、前記モノ
リシックグレーティングカプラーより異なる角度で放射された全てのテラヘルツ光を受け、被写体の配置空部を介して受信部に結像させる結像光学系と、を含み、前記受信部および前記イメージ像取得部は、前記送信部からのテラヘルツ光を非線形光学結晶の入射面で受け、ポンプ光で励起された非線形光学結晶に各周波数のテラヘルツ光が入射することで、各テラヘルツ光の周波数に対応する波長のアイドラー光が、角度位相整合条件を満たす方向にそれぞれ発生する光パラメトリック検出器と、前記光パラメトリック検出器のアイドラー光出射面に配置され、各アイドラー光の輝点を画素情報とするイメージ像を取得する撮像手段と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るテラヘルツ波イメージング装置によれば、テラヘルツ帯の複数の周波数が、被写体を含む空間の検知部位に対応するので、各周波数成分の受信情報を各検知部位の画素情報としてマッピングすれば被写体のイメージ像を得ることができる。従って、簡素な構造で簡便に被写体のイメージ像を取得することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付図面に基づいて、本発明に係るテラヘルツ波イメージング装置の実施形態につき説明する。
【0015】
図1に示すのは、第1実施形態に係るテラヘルツ波イメージング装置10の概略構成である。第1コム発生器11、送信波伝送手段12、一次元若しくは二次元に配列したn個の受信アンテナ(第1受信アンテナ13a、第2受信アンテナ13b、第3受信アンテナ13c、第4受信アンテナ13d、…、第n−2受信アンテナ13n−2、第n−1受信13n−1、第n受信アンテナ13n)によって、「テラヘルツ帯の複数周波数が含まれる送信波を、被写体に照射する送信部」を構成する。
【0016】
また、受信アンテナ14、受信信号処理部15によって、「送信波が被写体を経て到達した信号を、周波数成分毎に異なる経路で送信された信号として受信する受信部」を構成する。また、受信信号処理部15内の混合手段15a、第2コム発生器16、アンプ17を介して混合手段15aからの低周波信号(後に詳述)を受ける画像処理手段18によって、「受信部が受信した周波数成分毎の送信経路を、被写体を含む空間の検知部位に対応させ、各周波数成分の受信情報を各検知部位の画素情報としてマッピングするイメージ像取得部」を構成する。
【0017】
第1コム発生器11は、複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる送信側多周波信号生成手段であり、発生する周波数の間隔はf1で一定である。第1コム発生器11は、周波数既知のレーザ光を離散的な多数のスペクトルに変換するものであり、
図2(a)に示すように、周波数間隔f1で離散的な周波数を得ることができる。なお、既存のコム発生器の各波長の出力は、中心波長から離れるにしたがって減衰してしまうので、各波長出力を均一化した信号を用いるようにしても良い。また、送信側多周波信号生成手段として、周波数逓倍器を用いても良い。
【0018】
送信信号伝送手段12は、フィルターバンク構造の伝送路で構成することにより、各周波数の信号を第1〜第n送信アンテナ13a〜13nへ選択的に導くことができる。例えば、基準周波数f0よりもf1だけ高い周波数成分(f0+f1)のテラヘルツ波は第1アンテナ13aへ、f0+2f1のテラヘルツ波は第2アンテナ13bへ、f0+3f1のテラヘルツ波は第3アンテナ13cへ、f0+4f1のテラヘルツ波は第4アンテナ13dへ、…、f0+(n−2)f1のテラヘルツ波は第n−2アンテナ13n−2へ、f0+(n−1)f1のテラヘルツ波は第n−1アンテナ13n−1へ、f0+nf1のテラヘルツ波は第nアンテナ13nへ、それぞれ選択的に導かれる。
【0019】
第1〜第nアンテナ13a〜13nは、一次元もしくは二次元に配列した高指向性のアンテナであり、少なくとも、被写体100の配置領域を通過するまで、第1〜第nアンテナ13a〜13nから放射された各周波数のテラヘルツ波は、隣接する周波数のテラヘルツ波と混信することがないようにする。斯くすれば、第1〜第nアンテナ13a〜13nより被写体100へ向けて放射された各周波数のテラヘルツ波は、何れも被写体100の異なる部位へ照射されることとなり、被写体100を経て受信部の受信アンテナ14へ到達した各周波数のテラヘルツ波には、被写体100の各部におけるテラヘルツ波の吸収・反射・透過率を反映した情報(振幅や位相の変化)が含まれる。
【0020】
例えば、テラヘルツ帯の電磁波に対して透明(透過率が高い)素材の被写体100にf0+(n−1)f1のテラヘルツ波が照射される部位に不透過領域100aが存在している場合、f0+(n−1)f1のテラヘルツ波は不透過領域100aで反射させられて受信部へ到達できないか、減衰させられて極端な強度低下が生じた状態となる。しかしながら、他の周波数のテラヘルツ波は、被写体100を透過しても極端な減衰は無く、適度な強度を保持したまま受信部へ到達できる。従って、各周波数のテラヘルツ波が透過した被写体100の各部位が透明か不透明かを、受信強度から推定できるのである。実際には、透明な被写体100であっても透過減衰が生じるので、透明な被写体100もイメージ像として得ることは可能であるが、説明を簡単にするため、以下では、異物混入などで生じた不透明領域100aの有無を判定できる二値化イメージ像を得るものとする。
【0021】
なお、第1〜第nアンテナ13a〜13nが二次元に配列されている場合は、一回のテラヘルツ波照射で被写体100の全体像を得られるものの、全体の画素数はn個に制限されるため、十分な解像度が得られない場合もある。一方、第1〜第nアンテナ13a〜13nが一次元に配列されている場合は、一列にn個の画素を割り当てられるので、イメージ像を高解像度化できる反面、第1〜第nアンテナ13a〜13nより照射されるテラヘルツ波の照射列を少しずつ移動させて被写体100を満遍なく走査しなければならないため、走査機構が複雑になる上にイメージングにかかる時間も長くなってしまう。よって、第1〜第nアンテナ13a〜13nを一次元に配列するか、二次元に配列するかは、被写体のサイズや目的に応じて適宜に選択すれば良い。また、第1〜第nアンテナ13a〜13nから照射したテラヘルツ波が、被写体100の各検知部をシャープに透過できない場合は、適宜な光学系を用いて各周波数のテラヘルツ波を収束させ、被写体100へ照射するようにしても良い。
【0022】
上記のようにして、被写体100を経て受信部へ到達した各周波数のテラヘルツ波は、受信アンテナ14によって一括受信される。受信信号処理部15では、f0+f1、f0+2f1、f0+3f1、f0+4f1、…、f0+(n−2)f1、f0+(n−1)f1、f0+nfの周波数成分を含む受信信号を、受信波伝送手段15bを介して混合手段15aへ導く。この混合手段15aには、第2コム発生器16から周波数間隔f2である複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号が入力される。
【0023】
第2コム発生器16は、周波数間隔f1とは僅かに異なる周波数間隔f2である複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる受信側多周波信号生成手段であり、発生する周波数の間隔はf2で一定である。第2コム発生器16は、前述した第1コム発生器11と同様に、周波数既知のレーザ光を離散的な多数のスペクトルに変換するものであり、
図2(b)に示すように、周波数間隔f2で離散的な周波数を得ることができる。なお、周波数間隔f1とf2を僅かに異ならせるのは、周波数差に応じた低い周波数にダウンコンバートするためである。よって、f1とf2の差周波数からnf1とnf2の差周波数までが低周波数帯(テラヘルツ帯に比べて低い周波数帯であり、例えばRF帯、IF帯、AF帯など任意の周波数帯)になるよう、周波数間隔f2を設定しておく。
【0024】
混合手段15aには、テラヘルツ帯の受信信号と、第2コム発生器16で生成したテラヘルツ帯の複数周波数信号が入力され(
図2(c)を参照)、高感度なスーパーヘテロダイン方式による周波数変換で、低周波数帯(例えば、IF帯)の信号として出力される(
図2(d)を参照)。ここで、|f2−f1|=Δfとすると、Δfの周波数にはテラヘルツ波f0+f1の被写体検知情報が、2Δfの周波数にはテラヘルツ波f0+2f1の被写体検知情報が、3Δfの周波数にはテラヘルツ波f0+3f1の検知情報が、4Δfの周波数にはテラヘルツ波f0+4f1の被写体検知情報が、…、(n−2)Δfの周波数にはテラヘルツ波f0+(n−2)f1の被写体検知情報が、(n−1)Δfの周波数にはテラヘルツ波f0+(n−1)f1の被写体検知情報が、nΔfの周波数にはテラヘルツ波f0+nfの被写体検知情報がそれぞれ反映されている。例えば、不透過領域100aが透過経路となっているテラヘルツ波f0+(n−1)f1に対応する(n−1)Δfの周波数では、強度がほぼゼロである。
【0025】
上記のようにして混合手段15aで得られた低周波数帯の信号(低周波信号)は、アンプ17で適宜増幅され、画像処理手段18へ供給される。この画像処理手段18は、低周波信号に含まれる各周波数成分を、該当する送信アンテナ13による検知部位の受信情報として用いることにより、検知部位の画素情報を決定する。
【0026】
例えば、
図1中、受信アンテナ14から被写体100に向かって一番左側の検知部位が第1画素で、第1送信アンテナ13aのテラヘルツ波f0+f1の被写体検知情報に対応し、その右側の検知部位が第2画素で、第2送信アンテナ13bのテラヘルツ波f0+2f1の被写体検知情報に対応し、その右側の検知部位が第3画素で、第3送信アンテナ13cのテラヘルツ波f0+3f1の被写体検知情報に対応し、…、その右側の検知部位が第n−1画素で、第n−1送信アンテナ13n−1のテラヘルツ波f0+(n−1)f1の被写体検知情報に対応し、その右側の検知部位が第n画素で、第n送信アンテナ13nのテラヘルツ波f0+nf1の被写体検知情報に対応する場合、画像処理手段18は、第n−1画素のみ非透過領域で黒、ほかの画素は全て透過領域で白とした一次元のイメージ像を作成できる。無論、前述したように、各周波数の検知情報から得られる透過減衰を考慮して、白と黒の間を多段階調で表したグレースケール像を作成するようにしても良い。
【0027】
なお、上述した第1実施形態のテラヘルツ波イメージング装置10においては、送信部に複数の周波数を等間隔で発生させる第1コム発生器11を用いたが、送信部より放射する複数のテラヘルツ波は等間隔で発生させなくても良く、各周波数成分が分離可能な程度に離れていれば良い。例えば、周波数間隔が規則性をもって変化してゆくような複数周波数を使っても良いし、周波数間隔がランダムに変化する複数周波数を用いても良い。但し、受信部では、受信したテラヘルツ波の各周波数をそれぞれ異なる低周波数に変換できる周波数をそれぞれ発生させる機能が必要になるため、送信部で発生させる周波数と受信部で発生させる周波数とを高精度に対応付けるような調整が必要となり、煩雑である。これに対して、第1実施形態のように、第1コム発生器11と第2コム発生器16とを用いて、送信部および受信部で発生させる複数周波数の間隔をf1とf2に定める手法によれば、簡便で高精度なダウンコンバートを実現できるという利点がある。
【0028】
図3に示すのは、第2実施形態に係るテラヘルツ波イメージング装置20の概略構成である。第1コム発生器21、送信波伝送手段22、受信アンテナ23によって、「テラヘルツ帯の複数周波数が含まれる送信波を、被写体に照射する送信部」を構成する。
【0029】
また、被写体100を経て到達したテラヘルツ帯の信号を受信可能な位置へ、一次元もしくは二次元に配列された複数の受信アンテナ(例えば、第1受信アンテナ24a、第2受信アンテナ24b、第3受信アンテナ24c、…、第n−1受信アンテナ24n−1、第n受信アンテナ24n)、受信信号処理部25によって、「送信波が被写体を経て到達した信号を、周波数成分毎に異なる経路で送信された信号として受信する受信部」を構成する。また、受信信号処理部25内の混合手段25a、第2コム発生器26、アンプ27を介して混合手段25aからの低周波信号を受ける画像処理手段28によって、「受信部が受信した周波数成分毎の送信経路を、被写体を含む空間の検知部位に対応させ、各周波数成分の受信情報を各検知部位の画素情報としてマッピングするイメージ像取得部」を構成する。
【0030】
第1コム発生器21は、第1実施形態の第1コム発生器11と同じで、複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる送信側多周波信号生成手段であり、発生する周波数の間隔はf1で一定である。
【0031】
送信信号伝送手段22は、第1コム発生器21で生成した全ての周波数信号(f0+f1、f0+2f1、f0+3f1、…、f0+(n−1)f1、f0+nf1のテラヘルツ波)を送信アンテナ23へ導く。
【0032】
一方、受信部にて、一次元もしくは二次元に配列された第1〜第n受信アンテナ24a〜24nは、いずれも被写体100の各検知部位を経て到達した信号を受信できる。ただし、これら第1〜第n受信アンテナ24a〜24nでは、送信アンテナ23から放射された全ての周波数を含んだ信号を受信することとなる。そこで、受信信号処理部25の受信波伝送手段25bには、第1〜第n受信アンテナ24a〜24nに対応するフィルターバンクを設けて、第1〜第n受信アンテナ24a〜24nに対応させて設定した周波数成分のみを選択的に混合手段25aへ導くものとした。
【0033】
例えば、第1受信アンテナ24aからはf0+f1のテラヘルツ信号のみが、第2受信アンテナ24bからはf0+2f1のテラヘルツ信号のみが、第3受信アンテナ24cからはf0+3f1のテラヘルツ信号のみが、…、第n−1受信アンテナ24n−1からはf0+(n−1)f1のテラヘルツ信号のみが、第n受信アンテナ24nからはf0+nf1のテラヘルツ信号のみが、それぞれ混合手段25aに供給される。
【0034】
第2コム発生器26は、周波数間隔f1とは僅かに異なる周波数間隔f2である複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる受信側多周波信号生成手段であり、発生する周波数の間隔はf2で一定である。なお、送信部からの複数周波数が等間隔で無い場合には、各送信周波数との差周波数が各々異なる低周波数となる複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる機能を、受信側多周波信号生成手段に持たせればよい。
【0035】
混合手段25aには、テラヘルツ帯の受信信号と、第2コム発生器26で生成したテラヘルツ帯の複数周波数信号が入力され、高感度なスーパーヘテロダイン方式による周波数変換で、低周波数帯(例えば、IF帯)の信号として出力される。
【0036】
上記のようにして混合手段25aで得られた低周波数帯の信号(低周波信号)は、アンプ27で適宜増幅され、画像処理手段28へ供給される。この画像処理手段28は、低周波信号に含まれる各周波数成分を、該当する受信アンテナ24による検知部位の受信情報として用いることにより、検知部位の画素情報を決定する。
【0037】
例えば、
図3中、第1受信アンテナ24aが被写体100に臨む一番左側の第1検知部位が第1画素で、テラヘルツ波f0+f1の被写体検知情報に対応し、第2受信アンテナ24bが被写体100に臨む第2検知部位が第2画素で、テラヘルツ波f0+2f1の被写体検知情報に対応し、…、第n−1受信アンテナ24n−1が被写体100に臨む第n−1検知部位が第n−1画素で、テラヘルツ波f0+(n−1)f1の被写体検知情報に対応し、第n受信アンテナ24nが被写体100に臨む第n検知部位が第n画素で、第n受信アンテナ23nの被写体検知情報に対応する場合、画像処理手段28は、第n−1画素のみ非透過領域で黒、ほかの画素は全て透過領域で白とした一次元のイメージ像を作成できる。
【0038】
図4に示すのは、第3実施形態に係るテラヘルツ波イメージング装置30の概略構成である。第1コム発生器31、送信波伝送手段32、一次元若しくは二次元に配列したn個の受信アンテナ(第1受信アンテナ33a、第2受信アンテナ33b、第3受信アンテナ33c、…、第n−1受信33n−1、第n受信アンテナ33n)によって、「テラヘルツ帯の複数周波数が含まれる送信波を、被写体に照射する送信部」を構成する。
【0039】
また、第1〜第n送信アンテナ33a〜33nと対向状に配置された複数の受信アンテナ(第1受信アンテナ34a、第2受信アンテナ34b、第3受信アンテナ34c、…、第n−1受信アンテナ34n−1、第n受信アンテナ34n)、受信信号処理部35によって、「送信波が被写体を経て到達した信号を、周波数成分毎に異なる経路で送信された信号として受信する受信部」を構成する。また、受信信号処理部35内の混合手段35a、第2コム発生器36、アンプ37を介して混合手段35aからの低周波信号を受ける画像処理手段38によって、「受信部が受信した周波数成分毎の送信経路を、被写体を含む空間の検知部位に対応させ、各周波数成分の受信情報を各検知部位の画素情報としてマッピングするイメージ像取得部」を構成する。
【0040】
第1コム発生器31は、第1,第2実施形態の第1コム発生器11,21と同様に、複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる送信側多周波信号生成手段であり、発生する周波数の間隔はf1で一定である。
【0041】
送信信号伝送手段32は、フィルターバンク構造の伝送路で構成することにより、各周波数の信号を第1〜第n送信アンテナ33a〜33nへ選択的に導くことができる。例えば、基準周波数f0よりもf1だけ高い周波数成分(f0+f1)のテラヘルツ波は第1アンテナ33aへ、f0+2f1のテラヘルツ波は第2アンテナ33bへ、f0+3f1のテラヘルツ波は第3アンテナ33cへ、…、f0+(n−1)f1のテラヘルツ波は第n−1アンテナ33n−1へ、f0+nf1のテラヘルツ波は第nアンテナ33nへ、それぞれ選択的に導かれる。
【0042】
第1〜第nアンテナ33a〜33nは、一次元もしくは二次元に配列した高指向性のアンテナであり、少なくとも、被写体100の配置領域を通過するまで、第1〜第nアンテナ33a〜33nから放射された各周波数のテラヘルツ波は、隣接する周波数のテラヘルツ波と混信することがないようにする。斯くすれば、第1〜第nアンテナ33a〜33nより被写体100へ向けて放射された各周波数のテラヘルツ波は、何れも被写体100の異なる部位へ照射されることとなり、被写体100を経て受信部の第1〜第n受信アンテナ34a〜34nへそれぞれ到達した各周波数のテラヘルツ波には、被写体100の各部におけるテラヘルツ波の吸収・反射・透過率を反映した情報(振幅や位相の変化)が含まれる。
【0043】
一方、受信部にて、第1〜第n送信アンテナ33a〜33nと対向状に配置された第1〜第n受信アンテナ34a〜34nは、いずれも被写体100の各検知部位を経て到達した信号を受信できる。しかも、これら第1〜第n受信アンテナ34a〜34nでは、対応する第1〜第n送信アンテナ33a〜33nから放射された周波数のテラヘルツ波のみを受信することができる。とはいえ、被写体100を透過した後に、各周波数のテラヘルツ波が拡散してしまい、対応する第1〜第n受信アンテナ34a〜34nとは異なるアンテナで受信されてしまう可能性もある。そこで、受信信号処理部35の受信波伝送手段35bには、第1〜第n受信アンテナ34a〜34nに対応するフィルターバンクを設けて、第1〜第n受信アンテナ34a〜34nに対応させて設定した周波数成分のみを選択的に混合手段25aへ導くものとした。
【0044】
例えば、第1受信アンテナ34aからはf0+f1のテラヘルツ信号のみが、第2受信アンテナ34bからはf0+2f1のテラヘルツ信号のみが、第3受信アンテナ34cからはf0+3f1のテラヘルツ信号のみが、…、第n−1受信アンテナ34n−1からはf0+(n−1)f1のテラヘルツ信号のみが、第n受信アンテナ34nからはf0+nf1のテラヘルツ信号のみが、それぞれ混合手段35aに供給される。
【0045】
第2コム発生器36は、周波数間隔f1とは僅かに異なる周波数間隔f2である複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる受信側多周波信号生成手段であり、発生する周波数の間隔はf2で一定である。なお、送信部からの複数周波数が等間隔で無い場合には、各送信周波数との差周波数が各々異なる低周波数となる複数の周波数成分を含むテラヘルツ帯の信号を発生させる機能を、受信側多周波信号生成手段に持たせればよい。
【0046】
混合手段35aには、テラヘルツ帯の受信信号と、第2コム発生器36で生成したテラヘルツ帯の複数周波数信号が入力され、高感度なスーパーヘテロダイン方式による周波数変換で、低周波数帯(例えば、IF帯)の信号として出力される。
【0047】
上記のようにして混合手段35aで得られた低周波数帯の信号(低周波信号)は、アンプ37で適宜増幅され、画像処理手段38へ供給される。この画像処理手段38は、低周波信号に含まれる各周波数成分を、該当する受信アンテナ34a〜34bによる検知部位の受信情報として用いることにより、検知部位の画素情報を決定する。
【0048】
例えば、
図4中、第1受信アンテナ34aが被写体100に臨む一番左側の第1検知部位が第1画素で、テラヘルツ波f0+f1の被写体検知情報に対応し、第2受信アンテナ34bが被写体100に臨む第2検知部位が第2画素で、テラヘルツ波f0+2f1の被写体検知情報に対応し、…、第n−1受信アンテナ34n−1が被写体100に臨む第n−1検知部位が第n−1画素で、テラヘルツ波f0+(n−1)f1の被写体検知情報に対応し、第n受信アンテナ34nが被写体100に臨む第n検知部位が第n画素で、第n受信アンテナ34nの被写体検知情報に対応する場合、画像処理手段38は、第n−1画素のみ非透過領域で黒、ほかの画素は全て透過領域で白とした一次元のイメージ像を作成できる。
【0049】
上述した第1〜第3実施形態に係るテラヘルツ波イメージング装置10〜30は、何れの送信部も、第1コム発生器11〜31で発生させた複数周波数のテラヘルツ波を各送信アンテナ13〜33へ導くものであったが、送信部の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、複数の周波数を異なった角度へ向けて放射できる周波数走査型アンテナを送信部として用いることもできる。なお、第1,第3実施形態に係るテラヘルツ波イメージング装置10,30は、送信部より照射した複数の周波数が被写体100の異なる部位を透過することで、各部位の検知情報を得るものであったが、適宜な光学系を用いて複数の周波数のテラヘルツ波を被写体100の一点に照射すれば、被写体100における検知部位(照射部位)の分光情報を得ることができるので、スペクトロスコピー装置へ転用できるという利点もある。
【0050】
また、上述した第1〜第3実施形態に係るテラヘルツ波イメージング装置10〜30は、何れもテラヘルツ波の電波的性質を利用して被写体のイメージ像を取得するものであったが、テラヘルツ波(例えば、1THz以上の帯域)の光波的性質を利用して被写体のイメージ像を取得することも可能である。以下の説明では、便宜上、テラヘルツ波を光と呼ぶ場合もある。
【0051】
図5に示すのは、第4実施形態に係るテラヘルツ波イメージング装置40の概略構成である。図示を省略した光波源(複数の周波数の光波を含む光信号を発生させる多周波光生成手段)、光注入型テラヘルツ波パラメトリック発生器41、結像光学系42によって、「テラヘルツ帯の複数周波数が含まれる送信波を、被写体に照射する送信部」を構成する。
【0052】
また、送信部の結像光学系からの照射光が被写体100の配置空部を経て到達する部位に配置される光注入型テラヘルツ波パラメトリック検出器43は、「送信波が被写体を経て到達した信号を、周波数成分毎に異なる経路で送信された信号として受信する受信部」としての機能を備え、また、この光注入型テラヘルツ波パラメトリック検出器43とCCDカメラ等の撮像手段44とが協働することで、「受信部が受信した周波数成分毎の送信経路を、被写体を含む空間の検知部位に対応させ、各周波数成分の受信情報を各検知部位の画素情報としてマッピングするイメージ像取得部」を構成する。
【0053】
光注入型テラヘルツ波パラメトリック発生器41は、ポンプ光によって励起される非線形光学結晶(例えば、ニオブ酸リチウム結晶)を用いた光パラメトリック発生器と、この光パラメトリック発生器へシード光を注入する角度を調整するアクロマティック光注入光学系と、光パラメトリック発生器の光出射面に形成されたモノリシックグレーティングカプラーよりなる。すなわち、光注入型テラヘルツ波パラメトリック発生器41によって、複数の周波数のテラヘルツ波を発生させると共に、周波数毎の異なる角度で放射することができるのである。なお、光注入型テラヘルツ波パラメトリック発生器41へ入射するシード光となる多周波の光信号は、光コム発生器等を用いることができる。
【0054】
光パラメトリック発生器は、ポンプ光で励起させた非線形光学結晶に角度位相整合条件が満たされる角度でシード光を注入することで、ノンコリニア位相整合条件を満たす方向にアイドラー光が発生し、シード光に対応した周波数のテラヘルツ光が出射面より照射される。この光パラメトリック発生器へ多波長のシード光を入射させるとき、各周波数の光がそれぞれの角度位相整合条件を満たす角度で同時に入射させるために必要となるのが、アクロマティック光注入光学系である。このアクロマティック光注入光学系とは、シード光の周波数(波長)が変わると回折角も変わることから、その回折角の変化をレンズ系でさらに調整し、必要な角度位相整合条件を満たすように、非線形光学結晶への入射角度をシード光の周波数毎に制御する光学系である。
【0055】
例えば、多周波光生成手段によって異なる50波長のシード光(例えば、1068.0nm,1068.1nm,1068.2nm,…,1072.7nm,1072.8nm,1072.9nm)を、アクロマティック光注入光学系を介してそれぞれの角度位相整合条件が満たされる角度で同時に非線形光学結晶に注入すると、異なる50周波数(1.056THz,1.082THz,1.109THz,…,2.287THz,2.313THz,2.339THz)のテラヘルツ波が同時に発生する。
【0056】
モノリシックグレーティングカプラーは、上記のように非線形光学結晶内で発生させた各周波数のテラヘルツ波を夫々異なる角度へ放射させるように、非線形光学結晶の光出射面に直接溝を彫って形成するものである。このモノリシックグレーティングカプラーを備えることで、複数の異なる周波数のテラヘルツ波は、周波数毎に異なる角度へ放射されることとなる。
【0057】
上記のようにして周波数毎に異なる角度へ放射されたテラヘルツ波は、結像光学系42によって集光され、被写体100の配置空部を介して受信部に結像する。すなわち、放射角度の異なる各周波数のテラヘルツ波は、それぞれ被写体100の異なる位置を通って受信部へ到達するので、被写体100を経て受信部へそれぞれ到達した各周波数のテラヘルツ波には、被写体100の各部におけるテラヘルツ波の吸収・反射・透過率を反映した情報(振幅や位相の変化)が含まれる。
【0058】
例えば、
図5中、角度θ1で放射されたテラヘルツ波f0+f1の被写体検知情報を第1画素に対応させ、角度θ2で放射されたテラヘルツ波f0+2f1の被写体検知情報を第2画素に対応させ、角度θ3で放射されたテラヘルツ波f0+3f1の被写体検知情報を第3画素に対応させ、…、角度θn−1で放射されたテラヘルツ波f0+(n−1)f1の被写体検知情報を第n−1画素に対応させ、角度θnで放射されたテラヘルツ波f0+nf1の被写体検知情報を第n画素に対応させるのである。
【0059】
上記のようにして被写体100の配置部位を経た各テラヘルツ波は、受信部の光注入型テラヘルツ波パラメトリック検出器43へ至る。この光注入型テラヘルツ波パラメトリック検出器43は、前述した光注入型テラヘルツ波パラメトリック発生器41の光パラメトリック発生器と同様な構成の光パラメトリック検出器(非線形光学結晶を含む)を備え、この光パラメトリック検出器によって、被写体検知情報を持った各周波数のテラヘルツ波からアイドラー光を発生させ、これらのアイドラー光を各検知部位の画素情報として使うのである。
【0060】
すなわち、ポンプ光で励起された非線形光学結晶の入射面(ポンプ光の入射面に直交する何れかの面)より複数の周波数のテラヘルツ波が入射すると、非線形光学結晶内で、各周波数に対応したアイドラー光(例えば、近赤外光)がそれぞれ角度位相整合条件を満たす方向に発生し、ポンプ光入射面と対向する面(アイドラー光出射面)よりアイドラー光が出射され、各アイドラー光は被写体100の検知部位に対応して整列し、各アイドラー光の輝度が被写体100の各検知部位における透過強度として反映される。
【0061】
よって、光注入型テラヘルツ波パラメトリック検出器43より射出された赤外領域のアイドラー光を、赤外線カメラ等の撮像手段44で撮れば、被写体100のイメージ像を得ることができる。なお、可視光領域のアイドラー光を発生させれば、光注入型テラヘルツ波パラメトリック検出器43より出射されたアイドラー光をスクリーン等に投影することで可視化できる。また、結像光学系42から被写体100に照射される多周波のテラヘルツ光が一次元に配列されている場合は、光注入型テラヘルツ波パラメトリック検出器43より一列分のイメージ像しか出力されないが、例えば結像光学系42によって被写体100に対する照射位置を変えながら順次走査してゆき、光注入型テラヘルツ波パラメトリック検出器43より時系列に出力されるイメージ像を一括して同一平面上に投影すれば、二次元のイメージ像を得ることができる。
【0062】
以上、本発明に係るテラヘルツ波イメージング装置をいくつかの実施形態に基づき説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全てのテラヘルツ波イメージング装置を権利範囲として包摂するものである。