特許第6706818号(P6706818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706818
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20200601BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20200601BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20200601BHJP
   C08L 101/10 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H01L21/52 B
   C08K3/08
   C08L79/00 B
   C08L101/10
   H01L21/52 D
   H01L21/56 R
【請求項の数】5
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-130300(P2016-130300)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-6521(P2018-6521A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 克昭
(72)【発明者】
【氏名】長尾 至成
(72)【発明者】
【氏名】張 昊
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 卓央
(72)【発明者】
【氏名】田村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】藤林 輝久
【審査官】 小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/165416(WO,A1)
【文献】 特開2014−015603(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/070262(WO,A1)
【文献】 特許第5207281(JP,B2)
【文献】 特開2013−245325(JP,A)
【文献】 特開2002−226824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/56
H01L 23/28
H01L 23/29
C09J 1/00
C09J 103/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と半導体素子とを含んで構成される半導体装置であって、
該半導体装置は、金属粒子、並びに、該金属粒子とは異なる無機成分を含む導電性組成物をダイアタッチ材として用い
シアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物を封止材として用いてなり、
該導電性組成物は、接着成分の含有割合が導電性組成物全体に対して、15質量%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記導電性組成物は、メジアン径で1.0〜9.9μmの平均粒子径を有する金属粒子と、メジアン径で0.1〜0.99μmの平均粒子径を有する金属粒子とを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記樹脂組成物は、下記平均組成式(4);
XaYbZcSiOd (4)
(式中、Xは、同一又は異なって、イミド結合を含む有機骨格を表す。Yは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子及びOR基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。Zは、同一又は異なって、イミド結合を含まない有機基を表す。Rは、同一又は異なって、アルキル基、アシル基、アリール基及び不飽和脂肪族残基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表し、置換基があってもよい。a、b及びcは、0又は3未満の数であり、dは、0でない2未満の数であり、a+b+c+2d=4である。)で表されるシロキサン化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
基板と半導体素子とを含んで構成される半導体装置の製造方法であって、
該製造方法は、金属粒子、並びに、金属粒子とは異なる無機成分を含み、接着成分の含有割合が導電性組成物全体に対して、15質量%以下である導電性組成物を基板上に塗布した後、基板上に半導体素子を設置する工程と、
該半導体素子を設置した基板を大気又は酸素ガス雰囲気下で150℃〜300℃で加熱する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記製造方法は更に、前記加熱工程後の基板が配置された成形型中に、溶融したシアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物を加圧注入して半導体素子が設置された基板の封止を行う工程を含むことを特徴とする請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。より詳しくは、電子機器等を構成する部品として好適に用いることができる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を基板に実装した半導体装置は、電子機器を構成する部品として様々な用途で用いられている。このような半導体装置のダイアタッチ材として、近年鉛半田への代替が顕著になってきている。しかしながらSiパワーデバイスや発光ダイオードなどでは大電流を扱うためにダイから高温を発するという事情があり、高温鉛半田や導電性接着剤が使用されてきた。
SiCやGaNといった次世代パワー半導体はSiパワー半導体よりも高温で動作することが想定されている。車載用途などでは、パワー半導体自体の冷却機構の簡素化を目的に250℃で長期間動作させることが求められているが、200℃を超えると鉛フリー半田自体が溶融したり酸化劣化したりするうえ、導電性接着剤も有機接着性成分が熱分解することから、金属成分の焼結接合がダイアタッチ技術として有望視されている。
【0003】
ダイアタッチに使用できる金属成分を含む材料として、所定の平均粒子径を有する銀粒子と低級アルコールとを含み、接着剤成分を含まない導電性ペーストやダイアタッチが開示されている(特許文献1、非特許文献1、2参照)。また、所定の平均粒子径を有する銀粒子と銀より線膨張係数の小さな無機物と金属酸化物とを含む導電性材料用組成物を所定の温度で焼成して得られる導電性材料が開示され、この材料がダイアタッチに使用できることが記載されている(特許文献2参照)。
一方、半導体の封止材として用いられる樹脂組成物として、シアネートエステル化合物と特定の構造のシラン化合物とを含むシアネートエステル系組成物が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5207281号
【特許文献2】特許第5417861号
【特許文献3】特開2014−15603号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K.Suganuma外5名,Macroelectronics Reliabilitry,52,(2012),375−380
【非特許文献2】Soichi Sakamoto外2名,Journal of Materials Science: Materials in Electronics,(2013),24,1332−1340
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、200℃を超える高温での使用が想定される半導体のダイアタッチ材として銀の焼結接合を利用することが検討されているが、銀は200℃を超える高温環境下に長時間置かれると焼結が進行して形態が変化し、基板と半導体素子との間のダイアタッチ材の層部分の高弾性化や、応力の増大が生じたり、接着力が低下したりするおそれがあり、また半導体として機能しなくなるおそれがある。また、銀等の金属は元来有機樹脂との親和性が乏しいために、金属成分をダイアタッチとして用いた半導体の封止を公知のエポキシ樹脂で行った場合、封止材と金属界面で剥離が発生しやすくなるという課題がある。このため、パワーデバイス自体の環境信頼性を長期にわたって保証するのは非常に困難とされていた。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、長期間にわたって200℃を超える高温で使用しても、半導体装置内での剥離の発生が充分に抑制され、半導体として機能することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、長期間200℃を超える高温で使用しても剥離の発生が充分に抑制され、半導体として機能することができる半導体装置について種々検討したところ、金属粒子に、金属粒子とは異なる無機成分を加えた導電性組成物をダイアタッチ材として用いることで、長期間にわたって200℃を超える高温で使用しても基板と半導体素子との間のダイアタッチ材の層部分の高弾性化や、応力の増大、及び、剥離が抑制され、更にこのようなダイアタッチ材を用いた半導体素子の封止をシアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物で行うと、200℃を超える高温での使用でも金属粒子と封止材との間の剥離の発生も抑制され、半導体として機能することができる半導体装置が得られることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち本発明は、基板と半導体素子とを含んで構成される半導体装置であって、上記半導体装置は、金属粒子、並びに、上記金属粒子とは異なる無機成分を含む導電性組成物由来の成分と、シアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物由来の成分とを含むことを特徴とする半導体装置である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0010】
1.半導体装置
本発明の半導体装置は、基板及び半導体素子と、金属粒子、並びに、該金属粒子とは異なる無機成分を含む導電性組成物由来の成分と、シアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物由来の成分とを含む点を特徴とする。導電性組成物由来の成分とは、導電性組成物から形成される成分を意味し、導電性組成物と同一の成分であってもよく、導電性組成物から変質した成分であってもよい。シアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物由来の成分についても同様である。本発明の半導体装置では、金属粒子、並びに、該金属粒子とは異なる無機成分を含む導電性組成物がダイアタッチ材として用いられ、シアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物が半導体素子の封止に用いられることから、該導電性組成物由来の成分は半導体装置の基板と半導体素子との間に存在し、該樹脂組成物由来の成分は、導電性組成物由来の成分を間に挟んだ基板と半導体素子とを覆って存在することになる。
本発明の半導体装置は、基板及び半導体素子と、金属粒子、並びに、該金属粒子とは異なる無機成分を含む導電性組成物と、シアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物とを用いて作製されたものであるが、これらを用いて作製されたものである限り、これら以外の材料が用いられていてもよい。また、基板、半導体素子、導電性組成物及び樹脂組成物は、それぞれ1種が用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。
以下において、本発明の半導体装置に使用される導電性組成物、樹脂組成物、半導体素子及び基板について順に説明する。
【0011】
<導電性組成物>
本発明における導電性組成物は、金属粒子、並びに、該金属粒子とは異なる無機成分を含むことを特徴とし、このような導電性組成物もまた、本発明の1つである。
基板と半導体素子とを接着するダイアタッチ材として金属粒子の焼結接合を用いた場合、200℃以上の温度で放置すると、銀粒子同士の融着が進んで結合部分が大きくなってゆく。それによりダイアタッチ材が形態変化して高弾性化したり、半導体装置内に応力が発生したりする。これに対し、金属粒子に加え、該金属粒子とは異なる無機成分を含む導電性組成物を用いると、該金属粒子とは異なる無機成分の作用により、金属粒子同士の融着の進行が妨げられて、金属粒子同士の焼結接合の緻密な組織が維持されやすくなり、ダイアタッチ材が形態変化が抑制される。また、金属ダイアタッチ材を用いた半導体装置を200℃以上の高温状態に長時間置いた場合に基板と半導体素子との接着力の低下が生じる場合がある。このような接着力の低下の原因は、金属粒子同士の融着が進んで結合部分が大きくなってゆくこと、及び、それに伴って当初基板上に存在していた銅等の成分が金属粒子同士の結合部分に沿って半導体素子側に移動しやすくなることにあると考えられる。金属粒子とは異なる無機成分の作用により、金属粒子同士の融着の進行が妨げられて、金属粒子同士の焼結接合の緻密な組織が維持されやすくなると、それにより銅等の移動も少なくなり、基板と半導体素子との接着力の低下も抑制することができる。
【0012】
本発明の導電性組成物が含む金属粒子としては、銀、銅、ニッケル、亜鉛等の粒子の1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、導電性、放熱性の点から銀又は銅が好ましい。より好ましくは、銀である。銀原子は、250〜300℃の環境下で酸素と反応しながら表面上を移動する表面反応が発生する特性を有しているため、無機成分を添加することで焼結反応の進行を抑制する作用は、金属原子が銀原子である場合により効果的に発揮されることになる。
また金属粒子は、金属の化合物であってもよく、金属の単体であってもよいが、金属の単体の粒子であることが好ましい。
【0013】
本発明の導電性組成物が含む金属粒子は、平均粒子径(メジアン径)が0.1〜15μmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜10μmであり、更に好ましくは、0.3〜6μmである。このような平均粒子径の金属粒子を含むことで、導電性組成物がダイアタッチ材としてより好適なものとなる。
本発明において、金属粒子の平均粒子径(メジアン径)は、レーザー回折法により測定することができる。
【0014】
本発明の導電性組成物は、金属粒子を1種含むものであっても、2種以上含むものであってもよいが、平均粒子径(メジアン径)の異なる2種以上の金属粒子を含むものであることが好ましい。
平均粒子径の異なる2種以上の金属粒子を含む場合、金属粒子全体のうち、平均粒子径が0.1〜15μmであるものの割合が70質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、80質量%以上であり、更に好ましくは、90質量%以上であり、特に好ましくは、100質量%、すなわち、平均粒子径(メジアン径)の異なる2種以上の金属粒子を含む場合、平均粒子径(メジアン径)がいずれも0.1〜15μmの範囲にある金属粒子を組み合わせて用いることである。
このような平均粒子径(メジアン径)の異なる2種以上の金属粒子は、同一の金属種の粒子であってもよく、異なる金属種の粒子であってもよいが、導電性組成物が同一の金属種の粒子であって、平均粒子径(メジアン径)の異なる2種以上の金属粒子を含むことは本発明の好適な形態の1つである。
【0015】
本発明の導電性組成物が、平均粒子径(メジアン径)がいずれも0.1〜15μmの範囲にある金属粒子を2種以上含むものである場合、平均粒子径が最も大きい金属粒子の平均粒子径は、1.0〜9.9μmであることが好ましい。また、平均粒子径が最も小さい金属粒子の平均粒子径は、0.1〜0.99μmであることが好ましい。すなわち、導電性組成物が、メジアン径で1.0〜9.9μmの平均粒子径を有する金属粒子と、メジアン径で0.1〜0.99μmの平均粒子径を有する金属粒子とを含むことは、本発明の好適な実施形態の1つである。
平均粒子径が最も大きい金属粒子の平均粒子径は、より好ましくは、1.2〜8μmであり、更に好ましくは、1.4〜5μmであり、特に好ましくは、1.6〜4μmであり、中でも特に好ましくは、1.8〜3.5μmであり、最も好ましくは、2.0〜3.2μmである。
また、平均粒子径が最も小さい金属粒子の平均粒子径は、より好ましくは、0.1〜0.9μmであり、更に好ましくは、0.15〜0.8μmであり、特に好ましくは、0.2〜0.7μmであり、中でも特に好ましくは、0.25〜0.6μmであり、最も好ましくは、0.3〜0.5μmである。
【0016】
本発明の導電性組成物が、平均粒子径(メジアン径)が異なる金属粒子を2種以上含むものである場合、平均粒子径が最も大きい金属粒子と平均粒子径が最も小さい金属粒子の質量比は、30/70〜85/15であることが好ましい。より好ましくは、40/60〜80/20であり、更に好ましくは、50/50〜70/30である。
【0017】
本発明の導電性組成物が含む金属粒子は、BET法により測定したBET比表面積が0.5〜10m/gであることが好ましい。より好ましくは、0.6〜8.0m/gであり、更に好ましくは、0.6〜6.0m/gである。
【0018】
本発明の導電性組成物が含む金属粒子の形状は特に制限されず、球状、偏平状、多面体状等のいずれの形態のものであってもよく、2種以上の異なる形状の金属粒子が含まれていてもよい。本発明の導電性組成物が平均粒子径の異なる2種以上の金属粒子を含む場合、それらの金属粒子の形状は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0019】
本発明の導電性組成物は、上記金属粒子とは異なる無機成分を含む。上記金属粒子とは異なる無機成分は、化合物であってもよく、原子の単体であってもよい。
無機成分は、導電性組成物が含む金属粒子が有する金属元素及び炭素(C)を除く周期表第1〜17族の元素を少なくとも1つ含むものであり、それらの元素を2つ以上含んでいてもよい。また該元素は、金属元素であってもよく、非金属元素であってもよい。
導電性組成物が含む金属粒子が有する金属元素及び炭素(C)を除く周期表第1〜17族の元素としては、好ましくは、周期表第3〜16族の元素であり、より好ましくは、周期表第4〜15族の元素である。
【0020】
無機成分が化合物である場合、化合物としては、酸化物;窒化物;複合酸化物;層状複水酸化物;水酸化物;粘土化合物;固溶体;合金;ゼオライト;ハロゲン化物;カルボキシラート化合物;炭酸化合物;炭酸水素化合物;硝酸化合物;硫酸化合物;スルホン酸化合物;ヒドロキシアパタイト等のリン酸化合物;亜リン化合物;次亜リン酸化合物、ホウ酸化合物;ケイ酸化合物;アルミン酸化合物;硫化物;オニウム化合物;塩等が挙げられる。好ましくは、酸化物;窒化物;硫化物のいずれかであり、更に好ましくは、酸化物;窒化物のいずれかである。
【0021】
本発明の導電性組成物における上記金属粒子とは異なる無機成分は、粒子状の形状のものであることが好ましく、その平均粒子径(メジアン径)は、0.05〜50μmであることが好ましい。より好ましくは、0.08〜20μmであり、更に好ましくは、0.1〜10μmである。
本発明において、上記金属粒子とは異なる無機成分の平均粒子径(メジアン径)は、レーザー回折法により測定することができる。
【0022】
本発明の導電性組成物における上記金属粒子とは異なる無機成分の含有割合は、導電性組成物全体100質量%に対して、0.5〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.8〜40質量%であり、更に好ましくは、1.0〜30質量%である。
【0023】
本発明の導電性組成物は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては特に制限されず、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコール、ベンゼン、キシレン、トルエン、ナフタレン、(ジ)メチルナフタレン等の無極性芳香族化合物;C5〜12ぐらいまでの炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、γ―ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム等のエーテル類等が挙げられる。中でも置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコールが最も好ましい。
【0024】
上記置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコールについて、炭素数1〜20のアルコールは、水酸基を1〜3個有するものが好ましい。炭素数1〜20のアルコールは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐状アルキル基を有するものであることが好ましく、炭素数1〜20のアルコールが置換基を有する場合には、炭素数1〜10の直鎖又は分岐状アルキル基の水素原子が置換基によって置換されたものが好ましい。
置換基を有さない炭素数1〜20のアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、n−プロパノール、i−プロパノール、トリエチレングリコール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、2−メチルブタノール、n−ヘキサノール、1−メチルペンタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、4−メチルペンタノール、1−エチルブタノール、2−エチルブタノール、1,1−ジメチルブタノール、2,2−ジメチルブタノール、3,3−ジメチルブタノール、および1−エチル−1−メチルプロパノール等が挙げられる。
【0025】
炭素数1〜20のアルコールが有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アミノ基及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。アルコキシ基としては、炭素数1〜10のものが好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素、臭素、塩素およびヨウ素が挙げられる。
置換基を有する炭素数1〜20のアルコールとしては、メトキシメタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−クロロエタノール、エタノールアミン等が挙げられる。
本発明の導電性組成物は、溶媒を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0026】
本発明の導電性組成物が溶剤を含む場合、上記金属粒子と溶剤との配合割合(質量比)は特に制限されないが、上記金属粒子:溶剤が4:1〜16:1であることが好ましい。このような割合で上記金属粒子を含むと、組成物がダイアタッチ材としてより良好な性能を発揮することができる。上記金属粒子:溶剤は、より好ましくは、6:1〜12:1であり、更に好ましくは、8:1〜10:1である。
【0027】
本発明の導電性組成物をダイアタッチ材として用いた場合、上記金属粒子が溶融して基板と半導体素子とに融着し、これにより基板と半導体素子とが固定される。したがって、本発明の導電性組成物は、基板に半導体素子を固定するために接着成分を必要としない。
したがって、本発明の導電性組成物は、接着成分の含有割合が導電性組成物全体に対して、15質量%以下であることが好ましい。接着成分の含有割合は、より好ましくは、10質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%以下であり、特に好ましくは、3質量%以下である。接着成分の含有割合が3質量%以下であると、実質的に接着成分を含まないということができる。ただし、このような接着成分を上述した本発明の導電性組成物が含む有機成分として用いる場合には、該接着成分の好ましい含有割合は、上述した金属粒子とは異なる無機成分の含有割合と同様であることが好ましい。
ここで接着成分とは、異なる物質間を接着する作用を有する有機化合物を意味し、エポキシ系、フェノール系、アクリル系、ポリイミド系、シリコン系、ウレタン系又は熱可塑性系の接着剤として知られる化合物等が含まれる。
【0028】
本発明の導電性組成物は、上述した各種成分以外の、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、カップリング剤等が挙げられる。
これらその他の成分の含有割合は、導電性組成物全体100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、8質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%以下である。
【0029】
<シアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物>
本発明におけるシアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物は、シアネートエステル化合物、マレイミド化合物いずれか一方、又は、両方を含む。樹脂組成物が含むシアネートエステル化合物、マレイミド化合物は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
以下において、シアネートエステル化合物、マレイミド化合物について順に説明し、その後に樹脂組成物が含んでもよいその他の成分について説明する。
[シアネートエステル化合物]
本発明における樹脂組成物が含むシアネートエステル化合物は、1分子中に少なくとも2個のシアナト基(−OCN)を有するものであるが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が好適である。
【0030】
【化1】
【0031】
(上記一般式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、又は、ハロゲン基(X)を表す。Rは、同一又は異なって、下記化学式で表される有機基のいずれかを表す。Rは、同一又は異なって、下記化学式で表される有機基を表す。mは、0又は1である。nは、0〜10の整数を表す。)
【0032】
【化2】
【0033】
上記一般式(1)で表される化合物としては特に限定されないが、例えば、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(4−シアナトフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、ジ(4−シアナトフェニル)エーテル、ジ(4−シアナトフェニル)チオエーテル、4,4−{1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)}ビスフェニルシアナト、4,4−ジシアナトフェニル、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1’−ビス−(p−シアナトフェニル)−エタン、2,2’−ビス(p−シアナトフェニル)プロパン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアナト)、2,2’−ビス(p−シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、α,α′−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン等の二価フェノールのシアン酸エステル;トリス(4−シアネートフェニル)−1,1,1−エタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)−4−シアネートフェニル−1,1,1−エタン等の三価フェノールのシアン酸エステル;フェノールノボラック型のシアン酸エステル、クレゾールノボラック型のシアン酸エステル、ジシクロペンタジエンビスフェノール型のシアン酸エステル;等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の誘電特性や硬化性等の観点から、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンや、フェノールノボラック型のシアン酸エステルが好適である。
【0034】
上記シアネートエステル化合物としてはまた、上記一般式(1)で表される化合物が有するシアナト基が環化してトリアジン環構造を形成してなる多量体(例えば、三量体、五量体)を使用することもできる。中でも、操作性や、他の硬化性樹脂への溶解性の観点から、三量体が好適である。多量体を得る手法は、通常の手法で行えばよい。
【0035】
上記シアネートエステル化合物は、液状であっても固体状であってもよいが、他の硬化性樹脂との溶融混練を考慮すると、高い相溶性を持つか、又は、120℃以下の融点若しくは軟化点を有するものであることが好適である。より好ましくは、100℃以下の融点又は軟化点を有するものである。
なお、融点とは、不活性雰囲気下で結晶が溶けて液状になる状態の温度(℃)を意味する。したがって、非晶質の化合物や、室温で既に液状のものは、融点を有しない。
シアネートエステル化合物の融点は、例えば、示差走査熱量測定法(DSC)にて測定することができる。また、軟化点(℃)はJIS K7234(1986年)に準じて測定した値であり、例えば、熱軟化温度測定装置(製品名「ASP−MG4」、メイテック社製)を用いて測定することができる。
【0036】
本発明における樹脂組成物がシアネートエステル化合物を含む場合、シアネートエステル化合物の配合割合は、樹脂組成物に含まれる有機成分の総質量100質量%に対して、5〜95質量%であることが好ましい。このような配合割合であることで、熱や湿度に対する耐久性と半導体封止材としてのハンドリング性とを両立して、それを用いた半導体パッケージに優れた信頼性を与えることができる。より好ましくは、10〜90質量%であり、更に好ましくは、15〜85質量%である。
【0037】
[マレイミド化合物]
本発明における樹脂組成物がマレイミド化合物を含有すると、樹脂組成物のハンドリング性が向上する。
マレイミド化合物としては、ビスマレイミド、例えば、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、N,N’−p,p’−ジフェニルジメチルシリルビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−メチレンビス(3−クロロ−p−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジシクロヘキシルメタンビスマレイミド、N,N’−ジメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’−m−キシレンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルシクロヘキサンビスマレイミド、N−フェニルマレイミドとホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアルデヒドなどのアルデヒド化合物との共縮合物が好適である。また、下記一般式(2):
【0038】
【化3】
【0039】
(式中、Rは、
【0040】
【化4】
【0041】
又は、
【0042】
【化5】
【0043】
よりなる2価の基を表す。Qは、2つの芳香環に直結する基であり、炭素数1〜10の2価の炭化水素基、6フッ素化されたイソプロピリデン基、カルボニル基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基及びオキシド基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表す。)で表されるビスマレイミド化合物が好適である。
具体的には、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、下記一般式(3):
【0044】
【化6】
【0045】
(式中、Qは、置換基があってもよい芳香環からなる2価の基を表す。nは、繰り返し数を表し、平均で0〜10の数である。)で表される化合物等が好適である。上記Qとしては、具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の2価の基(フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチリデン基等)が好ましい。
【0046】
本発明におけるマレイミド化合物が高分子化合物である場合、マレイミド化合物の重量平均分子量は、200〜5000であることが好ましい。マレイミド化合物の分子量がこのような範囲にあると、耐熱性等に優れた硬化物が得られる。より好ましくは、220〜4500であり、更に好ましくは250〜4000である。
マレイミド化合物の重量平均分子量は、GPCにより、実施例に記載の条件で測定することができる。
【0047】
本発明における樹脂組成物がマレイミド化合物を含む場合、その含有割合は、樹脂組成物に含まれる有機成分の総質量100質量%に対して、10〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは、15〜85質量%であり、更に好ましくは、20〜80質量%である。
【0048】
本発明における樹脂組成物は、シアネートエステル化合物とマレイミド化合物とをともに含むことが好ましい。
本発明における樹脂組成物がシアネートエステル化合物とマレイミド化合物とを含む場合、マレイミド化合物の配合割合は、硬化性樹脂組成物中のシアネートエステル化合物100質量%に対して、5〜500質量%であることが好ましい。このような割合で用いることで、樹脂組成物を、耐熱性に優れ、かつ、ハンドリング性も充分に向上されたものとすることができる。より好ましくは、シアネートエステル化合物100質量%に対して、5〜400質量%であり、更に好ましくは、5〜300質量%である。
【0049】
[シロキサン化合物]
本発明における樹脂組成物は、更に下記平均組成式(4):
XaYbZcSiOd (4)
(式中、Xは、同一又は異なって、イミド結合を含む有機骨格を表す。Yは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子及びOR基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。Zは、同一又は異なって、イミド結合を含まない有機基を表す。Rは、同一又は異なって、アルキル基、アシル基、アリール基及び不飽和脂肪族残基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表し、置換基があってもよい。a、b及びcは、0又は3未満の数であり、dは、0でない2未満の数であり、a+b+c+2d=4である。)で表されるシロキサン化合物を含有することが好ましい。
このようなシロキサン化合物を含むことで、樹脂組成物が更に耐熱性に優れたものとなる。
【0050】
上記シロキサン化合物において、シロキサン骨格(シロキサン結合を必須とする主鎖骨格)の構造は、例えば、鎖状(直鎖状又は分岐状)、ラダー状、網状、環状、かご状、キュービック状等が好ましく例示される。中でも、シロキサン化合物の添加量が少量であっても効果が発揮されやすいため、ラダー状、網状、かご状であることが好ましい。すなわち上記シロキサン化合物としては、ポリシルセスキオキサンを含むものが特に好適である。
なお、上記シロキサン化合物におけるシロキサン骨格の占める割合は、シロキサン化合物100質量%中、10〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは15〜70質量%であり、更に好ましくは20〜50質量%である。
【0051】
上記平均組成式(4)において、Xの好ましい形態は後述するとおりであるが、Yとしては、水酸基又はOR基が好適である。中でもOR基がより好ましく、更に好ましくは、Rが炭素数1〜8のアルキル基であるOR基である。また、Zとしては、アルキル基、アリール基やアラルキル基等の芳香族残基、及び、不飽和脂肪族残基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい(これらは置換基を有していてもよい)。より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜8のアルキル基、又は、アリール基やアラルキル基等の芳香族残基である。また、Xの係数aは、0≦a<3の数であり、Yの係数bは、0≦b<3の数であり、Zの係数cは、0≦c<3の数であり、Oの係数dは、0<d<2の数である。Xの係数aは、0<a<3の数であることが好ましい。言い換えれば、Xの係数aは、0でない3未満の数であることが好ましい。
【0052】
上記シロキサン化合物は、例えば、下記一般式(5):
【0053】
【化7】
【0054】
(式中、X、Y及びZは、各々上記と同様である。n及びnは、重合度を示す。nは、0でない正の整数であり、nは、0又は正の整数である。)で表すことができる。
なお、「Y/Z−」は、Y又はZが結合していることを表し、「X1〜2−」は、Xが1個又は2個結合していることを表し、「(Z/Y)1〜2−」は、Z又はYが1個結合するか、Z又はYが2個結合するか、又は、Z及びYが1個ずつ、合計2個結合することを表す。「Si−(X/Y/Z)」は、X、Y及びZから選ばれる任意の3種がケイ素原子に結合していることを示す。
上記一般式(5)において、Si−OmとSi−Omは、Si−OmとSi−Omの結合順序を規定するものではなく、例えば、Si−OmとSi−Omが交互又はランダムに共縮合している形態、Si−OmからなるポリシロキサンとSi−Omのポリシロキサンが結合している形態等が好適であり、縮合構造は任意である。
【0055】
上記シロキサン化合物は、上記平均組成式(4)で表すことができるが、該シロキサン化合物が有するシロキサン骨格(シロキサン結合を必須とする主鎖骨格)は、(SiOと表すこともできる。このようなシロキサン化合物における(SiO以外の構造は、イミド結合を有する有機骨格(イミド結合を必須とする構造)X、水素原子や水酸基等のY、及び、イミド結合を含まない有機基Zであり、これらは主鎖骨格のケイ素原子に結合することとなる。
X、Y及びZは、「鎖」の形態となった繰り返し単位に含まれてもよく、含まれていなくてもよい。例えば、Xは、側鎖として1分子に1つ以上含まれていればよい。上記(SiOにおいて、nは、重合度を表すが、該重合度は、主鎖骨格の重合度を表し、イミド結合を有する有機骨格は、必ずしもn個存在していなくてもよい。言い換えれば、(SiOの1つの単位に必ず1つのイミド結合を有する有機骨格が存在していなくてもよい。また、イミド結合を有する有機骨格は、1分子中に1つ以上含まれていればよいが、複数含まれる場合、上述したように、1つのケイ素原子に2以上のイミド結合を有する有機骨格が結合していてもよい。これらは、以下においても同様である。
【0056】
上記主鎖骨格(SiOにおいて、mは、1以上、2未満の数であることが好ましい。より好ましくはm=1.5〜1.8である。
上記nは、重合度を表し、1〜5000であることが好ましい。より好ましくは1〜2000であり、更に好ましくは1〜1000であり、特に好ましくは1〜200である。
上記nが2である場合のシラン化合物としては、ケイ素原子にイミド結合を有する有機骨格(X)が少なくとも1個結合してなる構成単位(以下、「構成単位(I)」とも称す)が2つ含まれる形態と、該構成単位(I)が1つしか含まれない形態が挙げられる。具体的には、下記一般式(6):
【0057】
【化8】
【0058】
(式中、AはY又はZであり、X、Y及びZは、各々上記と同様である。)等が好適であり、同一の構成単位(I)を2つ含むホモポリマーの形態と、異なる構成単位(I)を2つ含むホモポリマーの形態と、当該構成単位(I)を1つしか含まないコポリマーの形態(共縮合構造の形態)がある。
【0059】
上記平均組成式(4)において、イミド結合を有する有機骨格が占める割合としては、シラン化合物に含まれるケイ素原子100モルに対して、20〜100モルであることが好ましい。より好ましくは50〜100モル、更に好ましくは70〜100モルである。
【0060】
上記平均組成式(4)におけるXは、下記一般式(7)で表される構成単位であることが好適である。すなわち、本発明におけるシロキサン化合物は、上記平均組成式(4)中のXが、下記一般式(7):
【0061】
【化9】
【0062】
(式中、Rは、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数であり、yは、0又は1である。)で表される構成単位である、シロキサン化合物を含むことが好適である。このような、構造中に環構造を含むシロキサン化合物を含むことで、本発明における樹脂組成物から得られる硬化物の耐熱性が更に向上されることになる。
【0063】
上記一般式(7)で表される構成単位において、x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数である。また、yは、0又は1であり、0であることが好ましい。x+zとしては、0以上10以下の整数であればよいが、3〜7であることが好ましく、より好ましくは3〜5であり、特に好ましくは3である。
【0064】
また上記一般式(7)中、Rは、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。すなわち、Rが芳香族化合物の環構造(芳香環)を有する基、複素環式化合物の環構造(複素環)を有する基及び脂環式化合物の環構造(脂環)を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることを表す。
上記Rとして具体的には、フェニレン基、ナフチリデン基、ノルボルネンの2価基、(アルキル)シクロヘキシレン基、シクロヘキセニル基等が好ましい。
なお、上記一般式(7)で表される構成単位は、Rがフェニレン基である場合には下記一般式(7−1)で表される構成単位となり、Rが(アルキル)シクロヘキシレン基である場合には下記一般式(7−2)で表される構成単位となり、Rがナフチリデン基である場合には下記一般式(7−3)で表される構成単位となり、Rがノルボルネンの2価基である場合には下記一般式(7−4)で表される構成単位となり、Rがシクロヘキセニル基である場合には下記一般式(7−5)で表される構成単位となる。
【0065】
【化10】
【0066】
上記一般式(7−1)〜(7−5)中、x、y及びzは、各々上記一般式(7)中のx、y及びzと同様である。
上記一般式(7−1)中、R〜R10は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R〜R10としては、全てが水素原子である形態が好ましい。
上記一般式(7−2)中、R11〜R14及びR11´〜R14´は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R11〜R14及びR11´〜R14´としては、R12若しくはR13がメチル基で残りの全てが水素原子である形態、又は、R11〜R14及びR11´〜R14´全てが水素原子である形態、又は、R11〜R14及びR11´〜R14´全てがフッ素原子である形態が好ましい。より好ましくは、R12又はR13がメチル基で残りの全てが水素原子である形態である。
【0067】
上記一般式(7−3)中、R15〜R20は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R15〜R20としては、全てが水素原子である形態、又は、全てがフッ素原子である形態が好ましい。より好ましくは、全てが水素原子である形態である。
上記一般式(7−4)中、R21〜R26は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R21〜R26としては、全てが水素原子である形態、全てがフッ素原子である形態、又は、全てが塩素原子である形態のいずれかの形態が好ましい。より好ましくは、全てが水素原子である形態である。
上記一般式(7−5)中、R27〜R30、R27´及びR30´は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R27〜R30、R27´及びR30´としては、全てが水素原子である形態、全てがフッ素原子である形態、又は、全てが塩素原子である形態のいずれかの形態が好ましい。より好ましくは、全てが水素原子である形態である。
【0068】
上記一般式(7−1)〜(7−5)の中でも、一般式(7−4)又は(7−5)が好ましい。このような側鎖に反応性の炭素−炭素不飽和結合を有するシロキサン化合物を用いると、樹脂組成物の硬化時にマレイミド化合物等と反応することでシロキサン化合物が硬化物表面に浮き出すことが抑制され、硬化物の外観を良好なものとすることができる。
【0069】
上記一般式(7)で表される構成単位の中でも、下記一般式(7−6):
【0070】
【化11】
【0071】
(式中、R31は、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。)で表される構成単位であることが好適である。すなわち、本発明のシロキサン化合物は、上記平均組成式(4)中のXが上記一般式(7−6)で表される構成単位である、シロキサン化合物を含むことが好適である。なお、上記一般式(7−6)中のR31は、上記一般式(7)において説明したRと同様であることが好ましい。
【0072】
上記シロキサン化合物の特に好ましい形態としては、R31がフェニレン基であるポリ(γ−フタロイミドプロピルシルセスキオキサン);R31がメチルシクロヘキシレン基であるポリ{γ−(へキサヒドロ−4−メチルフタルイミド)プロピルシルセスキオキサン};R31がナフチリデン基であるポリ{γ−(1,8−ナフタルイミド)プロピルシルセスキオキサン};R31がノルボルネンの2価基であるポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン};R31がシクロヘキセニル基であるポリ〔(cis−4−シクロヘキセン−1,2−イミド)プロピルシルセスキオキサン〕である。
これらの化合物の構造は、H−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSを測定して同定することができる。
【0073】
上記シロキサン化合物の分子量は、数平均分子量が100〜10000であることが好適である。10000を超える高分子化合物であると、シアネートエステル化合物やマレイミド化合物とより充分に混じり合うことができないおそれがある。また、100未満であると、耐熱性等が充分とはならないおそれがある。より好ましくは500〜5000、更に好ましくは1000〜5000である。また、重量平均分子量は100〜10000であることが好適である。より好ましくは500〜5000、更に好ましくは1000〜5000である。
シロキサン化合物の分子量(数平均分子量及び重量平均分子量)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により、実施例に記載の条件で測定することができる。
【0074】
上記樹脂組成物において、シロキサン化合物は、マレイミド化合物を含む樹脂組成物に配合されることが好ましく、その場合の配合割合は、樹脂組成物が含むマレイミド化合物100質量%に対して、30〜350質量%であることが好ましい。より好ましくは、35〜350質量%であり、更に好ましくは、40〜300質量%である。
【0075】
上記シロキサン化合物を得る方法としては特に限定されないが、例えば、下記の製法(I)及び(II)等が挙げられる。
(I)上記シロキサン化合物におけるイミド結合を含む有機骨格Xに対応するアミド結合を有する有機骨格X´と、シロキサン結合とを有する平均組成式X´aYbZcSiOdで表される(シロキサン化合物からなる)中間体を、イミド化させる工程を含む製造方法。
(II)上記シロキサン化合物におけるイミド結合を含む有機骨格Xに対応するイミド結合を有する有機骨格が、ケイ素原子に結合し、かつ加水分解性基を有するシロキサン化合物からなる中間体を、加水分解・縮合させる工程を含む製造方法。
【0076】
[カルボジイミド化合物]
本発明における樹脂組成物は、更にカルボジイミド化合物を含むことが好ましい。カルボジイミド化合物は、シアネートエステル化合物よりも水との反応性が高く、シアネートエステル化合物を含有する樹脂組成物に配合すると優先して水と反応し、下記式(8)のとおり、尿素化合物となる。このように、カルボジイミド化合物がシアネートエステル化合物に優先して水を消費するため、カルボジイミド化合物をシアネートエステル化合物に添加することで、シアネートエステル化合物の加水分解による二酸化炭素の発生や、副反応によるカーバメート化合物の発生を抑制することができる。
更に、カルボジイミド化合物が水と反応してできる尿素化合物は、活性水素部位でシアネートエステル化合物と反応することができるため、樹脂組成物の硬化時には架橋構造を形成するために消費され、機械強度等の硬化物の物性を阻害しない。このため、本発明における樹脂組成物は、気泡やゲル物等の不均一構造の発生が充分に抑制され、かつ、物性にも優れた硬化物を形成することができる。
【0077】
【化12】
【0078】
本発明における樹脂組成物が含むカルボジイミド化合物とは、分子内に少なくとも一つの(−N=C=N−)で表されるカルボジイミド基を有する化合物であればよいが、下記一般式(9):
【0079】
【化13】
【0080】
(式中、R32、R34は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜50の1価の炭化水素基を表す。R33は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜50の2価の炭化水素基を表す。nは、0〜10,000の数を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
【0081】
上記一般式(9)において、R32〜R34の炭化水素基の炭素数は、好ましくは、1〜40であり、より好ましくは、1〜30であり、更に好ましくは、1〜20である。
上記R32、R34の1価の炭化水素基としては、脂肪族基である、鎖状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基;芳香族基であるアリール基;又はこれらの2つ以上を組み合わせた基のいずれのものであってもよい。
33の2価の炭化水素基としては、上記1価の炭化水素基から水素原子を1つとった2価の基のいずれのものであってもよい。
上記一般式(9)において、R32〜R34は置換基を有していてもよいが、置換基としては、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
32〜R34はこれらの置換基を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。また、置換基を1種有していてもよく、2種以上有していてもよい。
上記一般式(9)において、nは、好ましくは、0〜200であり、より好ましくは、0〜150であり、更に好ましくは、0〜100である。
【0082】
上記カルボジイミド化合物の具体例としては、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−トルイルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トルイルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−クロルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−3,4−ジクロルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,5−ジクロルフェニルカルボジイミド、N,N’−p−フェニレン−ビス−o−トルイルカルボジイミド、N,N’−p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−p−フェニレン−ビス−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、N,N’−2,6,2’,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、N,N’−ヘキサメチレン−ビス−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−エチレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−トルイル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジ−tert−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トルイル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N’−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−トリルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド等のモノカルボジイミド化合物;ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等のポリカルボジイミド化合物等が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0083】
上記カルボジイミド化合物の中でも、ポリカルボジイミド化合物が好ましい。ポリカルボジイミド化合物としては、上記一般式(9)におけるR33が脂肪族基である脂肪族ポリカルボジイミドと、R33に芳香族基を有する基である芳香族ポリカルボジイミドとがあり、脂肪族ポリカルボジイミドの方が芳香族ポリカルボジイミドよりもブリードしやすいため好ましく、また脂肪族基は分枝状よりも直鎖状の方が好ましい。
【0084】
上記カルボジイミド化合物として、ポリカルボジイミド化合物を用いる場合、安全性や扱いやすさの観点から、重量平均分子量が100以上、100,000以下のものが好ましく、500以上、10,000以下のものがより好ましい。
カルボジイミド化合物の重量平均分子量は、以下の測定条件の下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
【0085】
上記カルボジイミド化合物は、例えば、適当な触媒の存在下に、有機イソシアネートを加熱して脱炭酸反応させて、カルボジイミド結合基を形成することにより製造することができる。
カルボジイミド結合基の生成は、2260cm−1のイソシアネ−ト基の吸収ピ−クの消失、及びカルボジイミド結合基の吸収ピ−クの生成によって確認することができる。
【0086】
上記カルボジイミド化合物は、上記の基本的な製造方法の他、例えば、米国特許第2,941,956号、特公昭47−33279号公報、特開平5−178954号公報、特開平7−330849号公報等に開示されている方法や、J.Org.Chem.,28,2069(1963)、Chem.,Review81,619(1981)に記載されている方法でも製造することができる。また、特開平5−178954号公報、特開平6−56950号公報等に開示されている様に無溶媒下でも行うことができる。
【0087】
上記カルボジイミド化合物としては、市販品を用いることもできる。一般的に入手可能な市販の脂肪族ポリカルボジイミド化合物としては、カルボジライトLA−1、カルボジライトHMV−8CA、カルボジライトV−05、カルボジライトV−07、イソシアネート基を含まないカルボジライトHMV−15CA、カルボジライトV−03、カルボジライトV−09(以上、日清紡ケミカル(株)製)等が挙げられる。また、芳香族ポリカルボジイミド化合物の市販品としては、スタバクゾールPや、スタバクゾールP−400、スタバクゾールI(以上、ラインケミー(株)製)等が挙げられる。
【0088】
本発明の硬化性樹脂組成物において、カルボジイミド化合物の配合割合は、硬化性樹脂組成物中のシアネートエステル化合物100質量%に対して、0.01〜5質量%であることが好ましい。このような割合で用いることで、不均一構造の発生をより充分に抑制することができ、また、硬化物を外観にも優れたものとすることができる。より好ましくは、シアネートエステル化合物100質量%に対して、0.05〜4質量%であり、更に好ましくは、0.1〜3質量%である。
【0089】
[無機充填材]
本発明における樹脂組成物は、更に無機充填材を含むことが好ましい。無機充填材としては特に限定されず、通常の実装基板の封止材等で使用されるものを用いればよい。例えば、シリカフィラー等が挙げられる。
【0090】
上記樹脂組成物における無機充填材の含有割合としては、樹脂組成物の総量100質量%に対し、50〜95質量%とすることが好適である。より好ましくは60〜93質量%、更に好ましくは70〜90質量%である。このように多量の無機充填材を用いることで、例えば、実装基板の封止材等を得るために用いた場合に、硬化後の基板の反り発生を充分に防ぐことが可能になる。
【0091】
[他の成分]
本発明における樹脂組成物はまた、必要に応じて、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。例えば、硬化剤;硬化促進剤;無機充填材;有機溶剤や希釈剤等の揮発成分;難燃剤;強化材;カップリング剤;応力緩和剤;離型剤;安定剤;着色剤;可塑剤;可とう化剤;各種ゴム状物;光感光剤;顔料;等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
本発明における樹脂組成物は、揮発成分を多量に含むと不具合を生じるおそれがあるため、揮発成分を含まないことが望まれており、例えば、上記樹脂組成物100質量%中の揮発成分の含有割合は、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは実質的に揮発成分を含まないことである。
【0092】
<基板>
本発明の半導体装置が含む基板は、一般に基板として用いられるものを用いることができ、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタン、酸化ケイ素、サファイアまたはこれらの混合物を含むセラミック基板、Cu、Fe、Ni、Cr、Al、Ag、Au、Tiまたはこれらの合金を含む金属基板、ガラスエポキシ基板、BTレジン基板、ガラス基板、樹脂基板等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0093】
<半導体素子>
本発明の半導体装置に用いられる半導体素子は特に制限されないが、上述したとおり、本発明の半導体装置は、長期間にわたって200℃を超える高温で使用しても、半導体装置内での剥離の発生が充分に抑制されたものであるため、使用時に200℃を超える高温になるSiCやGaNといった次世代パワー半導体を用いることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0094】
2.半導体装置の製造方法
本発明はまた、基板と半導体素子とを含んで構成される半導体装置の製造方法であって、上記製造方法は、金属粒子、並びに、上記金属粒子とは異なる無機成分を含む導電性組成物を基板上に塗布した後、基板上に半導体素子を設置する工程と、上記半導体素子を設置した基板を大気又は酸素ガス雰囲気下で150℃〜300℃で加熱する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法でもある。
【0095】
上記導電性組成物を基板上に塗布する工程における導電性組成物の塗布方法は特に制限されず、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スタンピング、ディスペンス、スキ−ジ印刷、シルクスクリ−ン印刷、噴霧、刷毛塗り等のいずれの方法を用いてもよいが、これらの中でも、スクリーン印刷法、スタンピング及びディスペンスが好ましい。
【0096】
上記導電性組成物を基板上に塗布する工程によって基板上に形成される塗膜の膜厚は、20〜500μmであることが好ましい。より好ましくは、30〜300μmであり、更に好ましくは、50〜200μmである。
塗膜の膜厚は、非接触式レーザー顕微鏡、接触式表面粗さ測定装置、光干渉式膜厚測定装置、エリプソメーターなどにより測定することができる。
【0097】
上記半導体素子を設置した基板を大気又は酸素ガス雰囲気下で加熱する工程は、150℃〜300℃で行われればよいが、200〜300℃で行われることが好ましい。より好ましくは、250〜300℃で行われることである。
また、150℃〜300℃で加熱する時間は特に制限されないが、5〜300分であることが好ましい。より好ましくは、10〜150分である。
150℃〜300℃での加熱は、半導体素子を設置した基板を加圧しながら行ってもよい。また、上記加熱工程は、150℃〜300℃で加熱する前に、溶媒を揮発させる工程を含んでいてもよく、その場合の加熱温度は150℃よりも低い温度であってもよい。溶媒を揮発させる工程の加熱温度は、使用する溶媒によって適宜選択すればよいが、例えば、室温〜100℃とすることができる。
【0098】
上記製造方法は更に、上記加熱工程後の基板が配置された成形型中に、溶融したシアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物を加圧注入して半導体素子が設置された基板の封止を行う工程を含むことが好ましい。
シアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物を用いて封止を行う場合、このような方法を用いることで半導体素子が設置された基板との密着性の高い良好な封止膜を形成することができる。
このような封止工程を行う方法としては、トランスファー成形機を用いたトランスファーモールド成型法が好ましい。
【0099】
上記封止工程を行う場合、溶融したシアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物は、150℃における粘度が0.1〜60Pa・sであることが好ましい。樹脂組成物がこのような適度な粘度を有するものであると、例えば、塗布する際のハンドリング性に優れたものとなる。より好ましくは0.2〜40Pa・sである。また、常温で注型する場合には、常温で液状であり、5〜1000Pa・sであることが好ましい。粘度が低すぎると無機充填剤が沈降するおそれがあり、粘度が高すぎると封止対象の凹凸に充填できないおそれがあるためである。より好ましくは10〜500Pa・sである。なお、上記樹脂組成物の175℃における粘度の好ましい範囲も、上述した150℃における粘度の好ましい範囲と同様である。
樹脂組成物の粘度は、例えば、E型粘度計(ブルックフィールド社製)やフローテスター CFT−500D(株式会社島津製作所製)を用いて、測定することができる。
【0100】
上記封止工程において、加圧注入された樹脂組成物の硬化方法は特に制限されないが、例えば、熱硬化することにより、硬化物とすることができる。硬化方法は特に限定されず、通常の熱硬化手法を採用すればよい。例えば、熱硬化温度は70〜250℃が好適であり、より好ましくは100〜250℃である。また、硬化時間は1〜15時間が好適であり、より好ましくは2〜10時間である。
【0101】
上記硬化物は、熱機械分析装置(DMA)によるガラス転移温度が180℃以上であることが好適である。これにより、例えば、実装基板の封止材等のエレクトロニクス実装材料により好適に利用することができる。より好ましくは190℃以上、更に好ましくは195℃以上、特に好ましくは200℃以上である。
【0102】
本発明の半導体装置の製造方法は、上記導電性組成物を基板上に塗布した後、基板上に半導体素子を設置する工程、及び、封止工程以外のその他の工程を含んでいてもよく、その他の工程としては、例えば、基板上に半導体素子を設置する工程の後に半導体素子と端子との間をワイヤボンドする工程等が含まれる。
【発明の効果】
【0103】
本発明の半導体装置は、上述の構成よりなり、金属粒子に、該金属粒子とは異なる無機成分を加えた導電性組成物をダイアタッチ材として用い、更にそのダイアタッチ材を用いた半導体素子の封止をシアネートエステル化合物及び/又はマレイミド化合物を含有する樹脂組成物で行うことで、長期間にわたって200℃を超える高温で使用しても半導体装置内での剥離の発生が充分に抑制されたものであるから、特に、SiCやGaN等の次世代パワー半導体を含む半導体装置として各種用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】実施例におけるパワーサイクル特性評価の評価システムの概略を示した図である。
図2】比較例1の半導体パッケージのヒートサイクル前(左)とヒートサイクル後(右)の超音波探傷試験結果を示した図である。
図3】比較例2の半導体パッケージのヒートサイクル前(左)とヒートサイクル後(右)の超音波探傷試験結果を示した図である。
図4】実施例1の半導体パッケージのヒートサイクル前(左)とヒートサイクル後(右)の超音波探傷試験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0106】
<分子量測定>
シロキサン化合物の数平均分子量、重量平均分子量は、以下の測定条件の下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めた。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
【0107】
<ガラス転移温度(Tg)測定>
樹脂組成物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(装置名DMA7100、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。測定温度領域は−100℃〜400℃で、昇温速度は5℃/minとし、窒素雰囲気下で測定した。
【0108】
合成例1
ポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン}の合成
攪拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた500mL4つ口フラスコに、予めモレキュラーシーブで乾燥したジグライム87.9gと、3−アミノプロピルトリメトキシシラン142.5gを投入し、攪拌しながら乾燥窒素流通下で100℃に昇温して系内の水分を除去した。次に100℃のまま反応液温度を維持しながら5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物131.8gを30分かけて4分割投入した。投入終了後9時間で5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が完全に消費されているのを高速液体クロマトグラフィで確認した。
続いて脱イオン水42.9gを一括投入し冷却管で副生メタノールの還流が掛かるように昇温し、95℃で10時間保持したのち、冷却管をパーシャルコンデンサーに付け替えて再び昇温を開始し、副生メタノールおよび縮合水を回収しながら3時間かけて反応液温度を120℃に到達させた。120℃到達時に炭酸セシウム0.65gを投入してそのまま昇温を開始し、縮合水を回収しながら3時間かけて160℃に到達、同温度で2時間保持して室温まで冷却することで反応生成物Aを得た。
反応生成物Aは不揮発分70.0%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定したところ数平均分子量2340、重量平均分子量2570であった。H−NMR、13C−NMRを測定し、下記式(10)の化合物(シロキサン化合物1)を含有することを確認した。
H−NMR:0.25−0.45(bs、2H)、1.2−1.45(bs、2H)、1.47(dd、2H)、3.0−3.2(bs、4H)、3.4―3.6(bs、2H)、5.8−6.0(bs、2H)
13C−NMR:9.7、21.5、40.4、44.9、45.7、50.1、134.2、178.0
【0109】
【化14】
【0110】
合成例2
ポリ{(cis−4−シクロヘキセン−1,2−イミド)プロピルシルセスキオキサン}の合成
合成例1の5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物131.8gの代わりにcis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物122.2gを用いる以外はすべて合成例1と同じ操作により反応生成物Bを得た。反応生成物Bは不揮発分70.0%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定したところ数平均分子量2041、重量平均分子量2838であった。H−NMR、13C−NMRを測定し、下記式(11)の化合物(シロキサン化合物2)を含有することを確認した。
H−NMR:0.25−0.55(bs、2H)、1.3−1.5(bs、2H)、2.0−2.5(dd、4H)、2.9−3.1(bs、2H)、3.2―3.35(bs、2H)、5.65−5.8(bs、2H)
13C−NMR:10.0、21.0、23.8、39.0、41.1、127.8、180.5
【0111】
【化15】
【0112】
調製例1(半導体封止材組成物の調製)
下記の表1の組成で各原料を計量したのち、加熱ロール混練機を用いて混練してコンパウンドを得た。混練ロールの表面温度は72℃、混練時間は5分に設定した。コンパウンドは粉砕機を用いて1mm以下の粉体にしたのち、打錠機を用いて直径18mm重さ7gのタブレット形状にして半導体封止材として供した。
【0113】
【表1】
【0114】
表1に記載のシアネートエステル化合物、マレイミド化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、芳香族アミン化合物、フェノール化合物、イミダゾール化合物、及び、シランカップリング剤は、それぞれ以下のとおりである。
シアネートエステル化合物:下記式(12)で表されるフェノールノボラック型シアネートエステル化合物(製品名「プリマセットPT30」、ロンザジャパン社製)
マレイミド化合物:下記式(13)で表される構造のビスマレイミド化合物(製品名「ビスマレイミドBMI80」、ケイ・アイ化成社製)
カルボジイミド化合物:脂肪族ポリカルボジイミド化合物(製品名「カルボジライトV−05」、日清紡ケミカル社製)
エポキシ化合物:トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂(製品名「EPPN−501HY」、日本化薬社製)
芳香族アミン化合物:4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(製品名「セイカキュアS」、和歌山精化工業社製)
フェノール化合物:フェノールノボラック硬化剤(製品名「TD−2131」、DIC社製)
イミダゾール化合物:2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(製品名「キュアゾール2P4MHZ」、四国化成工業社製)
シランカップリング剤:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名「KBM573」、信越化学工業社製)
【0115】
【化16】
【0116】
調製例2(ダイアタッチ材の調製)
下記2種類の銀粉末と2種類の無機粒子を表2に示す組成で混合してエタノール洗浄を行い、乾燥後にエチレングリコール溶媒と混合して自転公転型撹拌混合器を用いてペースト化した後、シリンジに充填及び脱泡処理を施し、焼結型銀ダイアタッチ材として用いた。
<銀粉末>
(1)福田金属箔粉工業株式会社製、製品名「AgC−239」:平均粒径(メジアン径)が6μm、BET比表面積が5.0m2/g
(2)三井金属鉱業株式会社製、製品名「FHD:平均粒径(メジアン径)が0.3μm、BET比表面積が1.70m2/g
<無機粒子>
(3)Superior Graphite社製、製品名「HSC059」:材質はSiC、平均粒径(メジアン径)が0.6μm、多角形状
(4)日本触媒社製「KE−P30」:材質はシリカ、平均粒径0.3μm、真球状
【0117】
【表2】
【0118】
実施例1〜4、比較例1、2(半導体パッケージの作製)
銅製TO247リードフレームのパッドエリア上に表2に記載のダイアタッチ材1〜3を塗布した。その後1.5mm□のSiCショットキーバリアダイオードをダイアタッチ材の上に乗せて表面温度を250℃に調節したホットプレートの上で大気雰囲気下に30分間放置した。冷却後にダイオード素子と端子間を直径350μmのアルミ線でワイヤボンドし、エタノール中で超音波洗浄を行うことで基板上に部品取り付けを行った。
この部品付き基板と、封止材1〜3を低圧トランスファー成形機にセットし、銅製リードフレームのインサート成型によりTO247型半導体パッケージを作製した。成型条件は金型温度180℃、クランプ圧294KN、プレヒート時間5秒、注入圧力15KN、注入速度0.5mm/s、トランスファータイム28秒、硬化時間360秒に設定した。得られた成型品は270℃、窒素流通状態のイナートオーブン中に5時間放置してポストキュア処理を行い、評価用パワーデバイスとした。
【0119】
<信頼性評価1(ヒートサイクル試験)>
実施例、比較例の半導体パッケージの信頼性を評価するため、ヒートサイクル試験を実施し、冷熱環境に繰り返し暴露した際の内部応力の発生によるパッケージ内部構造への影響を調べた。ヒートサイクル試験条件は冷却下限条件を−50℃で30分間放置、加熱上限条件を250℃で30分間放置、冷却/加熱時間を約3分とし、500サイクルを実施した。
パッケージ内部構造は超音波探傷試験器(日立パワーソリューションズ社製、FineSATIII)を用いて確認し、パッケージ内部の内蔵部品と封止材界面に剥離がみられる場合は×、剥離はないものの気泡やゲル状物等の不均一構造が多くみられる場合は△、剥離がなく、不均一構造も少ない場合は◎とした。
【0120】
<信頼性評価2(パワーサイクル特性評価)>
(パワーサイクル評価)
測定に用いたシステムを図1に示す。直流電源を評価用パワーデバイスと接続し、パワーデバイス表面に熱電対を接着してマルチメーターで温度変化を追跡し、コンピューター制御により一定の電流を流しながら指定の温度に到達した際に電流を止めてパワーデバイスを空冷して室温に戻すのを1サイクルとして、これを繰り返し行い、電流が流れなくなったサイクル数を調べた。パワーサイクル条件としてはケース温度(パワーデバイス表面温度、Tc)上限を250℃、下限を室温とし、順電流値8Aを印加して発熱させて、Tc=250℃に到達後、電流値を2Aに落として10秒間保持に設定した。試験数は各試料で15個として、500サイクル、1000サイクル、3000サイクルの試験を合格した割合を調べた。
評価システム概略:
直流電源:高砂製作所社製、製品名「ZX−400LAN」
マルチメーター:KEITHLEY社製、製品名「2701 multimeter」
【0121】
表3に各実施例、比較例で用いたダイアタッチ材、封止材の種類とヒートサイクル試験およびパワーサイクル試験の結果を示す。図2〜4にヒートサイクル試験前後でのパワーデバイス内部構造の超音波探傷試験結果を示す。
【0122】
【表3】
【0123】
ヒートサイクル試験においては、ダイアタッチ材に無機粒子が添加されているかどうかによらず、封止材としてイミド系材料を用いることで過酷な温度差での冷熱衝撃に対してパッケージ内部に剥離や亀裂などの物理的損傷を抑制できていた。
しかしながら、パワーサイクル試験では、比較例においてはサイクル試験の初期に相当する500サイクル程度で約20%〜30%の試料が機能を果たさなくなっているのに対して、実施例においては3000サイクルという長いサイクルにおいても機能を損なわれず、パワーデバイスとして実働可能であった。
電流により電気化学的変化がチップ、ダイアタッチ材、ワイヤ周辺で起きていると考えられるだけでなく、チップ周辺部と封止材表面との温度勾配による熱応力の偏在化などの影響もあると考えられるが、ダイアタッチ材に無機粒子を添加することで、これらの影響を最小限に抑制できると予想できる。
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図2
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