(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記管状係合部材が、前記各ケーブル端末の、少なくとも前記端子の基端部と前記絶縁被覆とに跨る部分を絶縁被覆するように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブル端末牽引構造。
前記各ケーブル端末が、前記端子の基端部では覆われていない前記導体露出部を少なくとも被覆する絶縁部材を有することを特徴とする請求項4に記載のケーブル端末牽引構造。
前記少なくとも1本のケーブル端末が、複数本のケーブル端末であり、該複数本のケーブル端末のそれぞれの前記端子を、配線される接続面が内向き状態の対向配置関係で分離可能に固定する間挿部材をさらに有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載のケーブル端末牽引構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プーリングアイは、ケーブルを牽引して布設管路等に引き入れやすくし、接続相手となる対象機器が設置されている場所までケーブルを牽引して移動させることができる。しかしながら、ケーブル導体を把持するプーリングアイのスリーブは、ケーブル導体に圧縮により接続されていて、接続相手(例えば配電盤)に接続(配線)するための端子をケーブル導体に装着するには、ケーブルを牽引した後に圧縮接続したスリーブをケーブルから取り外さなければならず、このスリーブの取り外しは、プーリングアイの金属保護カバーが被嵌しているケーブル先端部よりもケーブル本体側に位置するケーブル被覆部分を切断することにより行なわれていた。また、ケーブルの切断後には再度、ケーブルの被覆を剥ぎ取って新たに導体を露出させ、その導体露出部に端子を装着し、さらに絶縁や防水を図る等の端末処理を行うことが必要であった。
【0005】
マンション、ビル等の建造物の高層化に伴い幹線(ケーブル)の高容量化や多系統化が進み、配電室の省スペース化が望まれている近年、接続相手の設置場所において十分に広い作業スペースの確保が困難な場合がある。狭い作業スペースにおいてケーブルの端末処理を行うことは作業環境を悪くし、場合によってはケーブルの端末処理の作業を十分に行なうことができない場合も想定される。このため、かかる場合であっても、作業接続相手に対し配線作業を容易にできるケーブル牽引構造を開発することが必要であった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、少なくとも1本のケーブルを、接続相手に対して配線作業が容易である端末処理した状態のまま牽引することができ、接続場所での配線作業性を格段に向上させることができるケーブル端末牽引構造及びその組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の要旨構成は以下の通りである。
【0008】
(1)導体露出部に端子が装着されて配線可能状態に仕上げた少なくとも1本のケーブル端末と、前記少なくとも1本のケーブル端末を、各ケーブル端末が配線可能状態のまま収容する内部空間を有する保護カバー、該保護カバーに対して分離可能に連結され、前記各ケーブル端末を前記保護カバー内に位置決め固定する解体可能な構造を有する固定部材、及び前記保護カバーの外面に連結固定されるアイ金具を有するプーリングアイとを備え、前記各ケーブル端末が、前記導体露出部側の絶縁被覆に、前記導体露出部側に向かって拡径する外周面形状の拡径部をもつ管状係合部材を密着固定状態で有し、前記固定部材は、前記各ケーブル端末の前記拡径部の外周面に対して接触保持可能な形状の内周面をもつ収容部を有し、前記拡径部が前記収容部で保持されて前記プーリングアイに対する前記各ケーブル端末の引き抜けを防止することを特徴とするケーブル端末牽引構造。
【0009】
(2)前記収容部の前記内周面は、前記各ケーブル端末の基端側に向かって縮径する形状を有し、前記収容部の最小内径は、前記拡径部の最大外径よりも小さい寸法を有することを特徴とする上記(1)に記載のケーブル端末牽引構造。
【0010】
(3)前記管状係合部材が、前記各ケーブル端末の、少なくとも前記端子の基端部と前記絶縁被覆とに跨る部分を絶縁被覆するように構成されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のケーブル端末牽引構造。
【0011】
(4)前記管状係合部材が複数の分割部材で構成されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のケーブル端末牽引構造。
【0012】
(5)前記各ケーブル端末が、前記端子の基端部では覆われていない前記導体露出部を少なくとも被覆する絶縁部材を有することを特徴とする上記(4)に記載のケーブル端末牽引構造。
【0013】
(6)前記少なくとも1本のケーブル端末が、複数本のケーブル端末であり、該複数本のケーブル端末のそれぞれの前記端子を、配線される接続面が内向き状態の対向配置関係で分離可能に固定する間挿部材をさらに有することを特徴とする上記(1)から(5)までのいずれか1つに記載のケーブル端末牽引構造。
【0014】
(7)前記固定部材が、前記プーリングアイの内部に設けられ、前記各ケーブル端末の前記拡径部を収容する凹部を有する固定板と、前記拡径部が収容された前記固定板の前記凹部の開口に向かって近接移動させて、前記固定板と共に前記収容部を形成して前記拡径部を挟持する押さえ部材と、を備えることを特徴とする上記(1)から(6)までのいずれか1つに記載のケーブル端末牽引構造。
【0015】
(8)少なくとも1本の、導体露出部を含むケーブル先端部にプーリングアイを取り付けたケーブル端末牽引構造の組立方法であって、前記導体露出部に端子を装着して配線可能状態に仕上げ、その後、前記導体露出部側の絶縁被覆に、前記導体露出部側に向かって拡径する外周面形状の拡径部をもつ管状係合部材を密着固定して、ケーブル端末を形成する工程と、前記少なくとも1本のケーブル端末を、各ケーブル端末が配線可能状態のまま収容する内部空間を有する保護カバー、該保護カバーに対して分離可能に連結され、前記各ケーブル端末を前記保護カバー内に位置決め固定する、前記各ケーブル端末の引き抜けを防止する収容部を有する解体可能な構造を有する固定部材、及び前記保護カバーの外面に連結固定されるアイ金具を有するプーリングアイの固定部材に、前記ケーブル端末の前記拡径部を収容保持してケーブル端末牽引構造を形成する工程と、を含むことを特徴するケーブル端末牽引構造の組立方法。
【0016】
(9)前記管状係合部材が可撓性の部材であり、前記管状係合部材を予め拡径し、次いで前記管状係合部材を前記端子側から所定の位置まで被せた後、前記ケーブル端末を形成する工程において、拡径された状態の前記管状係合部材を自己収縮させることにより前記絶縁被覆に密着固定させることを特徴とする上記(8)に記載のケーブル構造の組立方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導体露出部に端子が装着されて配線可能状態に仕上げた少なくとも1本のケーブル端末と、前記少なくとも1本のケーブル端末を、各ケーブル端末が配線可能状態のまま収容する内部空間を有する保護カバー、該保護カバーに対して分離可能に連結され、前記各ケーブル端末を前記保護カバー内に位置決め固定する解体可能な構造を有する固定部材、及び前記保護カバーの外面に連結固定されるアイ金具を有するプーリングアイとを備え、前記各ケーブル端末が、前記導体露出部側の絶縁被覆に、前記導体露出部側に向かって拡径する外周面形状の拡径部をもつ管状係合部材を密着固定状態で有し、前記固定部材は、前記各ケーブル端末の前記拡径部の外周面に対して接触保持可能な形状の内周面をもつ収容部を有し、前記拡径部が前記収容部で保持されて前記プーリングアイに対する前記各ケーブル端末の引き抜けを防止することにより、少なくとも1本のケーブルを、各ケーブル端末が端末処理されて端子の接続面が配線可能状態のままで損傷や変形を生じさせることなく、所定の接続場所まで牽引して延線することができ、この結果、接続場所での配線作業性を格段に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に従う実施形態のケーブル端末牽引構造を、図面を参照しながら以下で説明する。なお、以下で示す実施形態は本発明のケーブル端末牽引構造を具体的に説明するための例示であり、本発明の範囲において種々の形態をとりうる。
【0020】
図1は、ケーブル端末牽引構造を、その内部構造を説明するために一部だけ分解して斜め上方から眺めたものであり、
図2は、
図1に示すケーブル端末牽引構造の内部状態を説明するため、プーリングアイを構成する保護カバーの一部を切除して示す部分断面図であり、
図3(a)、(b)は、
図1に示すケーブル端末牽引構造を構成するケーブル端末の1本のみを抜き出して示したものであって、
図3(a)が斜視図、
図3(b)が部分断面図であり、
図4は、プーリングアイを構成する固定部材の分解斜視図であり、そして、
図5(a)、(b)は、固定部材の要部構成を示した断面図であって、
図5(a)が固定部材の組立前の状態、
図5(b)が固定部材の組立後の状態を示したものである。
【0021】
<ケーブル端末牽引構造>
ケーブル端末牽引構造1は、
図1及び
図2に示すように、ケーブル2の先端側に端末処理を施した少なくとも1本のケーブル端末2aと、各ケーブル端末2aを牽引するプーリングアイ4と、を備えた構造体である。例えば図示の実施形態では、3本のケーブル端末2aからなるケーブル端末群3を備える。
【0022】
ケーブル端末2aは、ケーブル2の先端部に端末処理を施した部分である。ここで「端末処理」とは、ケーブル2を構成する絶縁被覆21の剥ぎ取りによりケーブル2の先端部を露出させて導体露出部23を形成し、この導体露出部23に端子24を装着し、さらに絶縁及び防水処理を施すまでの一連の処理を意味する。つまり、
図3に示す実施形態で説明すると、ケーブル端末2aは、ケーブル2の導体露出部23に装着された端子24と、絶縁及び防水性の管状係合部材25とを有し、ケーブル先端部に構成された構造部分のことである。
ケーブル2は、接続相手に配線可能状態に仕上げられたケーブル端末2aにおいてプーリングアイ4に固定される。ケーブル端末2aは、作業スペースが十分に確保されていると共に粉塵等が極力存在しないクリーンな環境において牽引前に予め形成されるので、高品質のケーブル端末2aを提供することができる。これにより、接続場所において導体22が露出することはなくなり、特にケーブル2の導体22がアルミニウム製である場合には、酸化を防ぐことができる。
なお、ケーブル2は、当該ケーブル2の導体22と、この導体22の外周を覆う絶縁被覆(ケーブル絶縁体)21と、導体22及び絶縁被覆21を保護する保護層(ケーブルシース)とから構成されている。図面においては、絶縁被覆21及び保護層を一体にして描いた。
【0023】
(絶縁被覆)
絶縁被覆21は、導体22を外部から絶縁する物質であれば材料の種類は問わない。絶縁被覆21は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、架橋ポリエチレンを含む絶縁樹脂からなる。
【0024】
(導体)
導体22は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金などの金属材料で構成されている。導体22の形態は、
図3(b)では素線を複数本撚り合わせてなる撚り線で構成した場合を示しているが、撚り線に限られることなく単線であってもよい。例えばアルミニウム製の導体22は、ケーブル2の軽量化の点においても好ましい。
導体露出部23は、ケーブル2の先端部の絶縁被覆21を剥ぎ取って導体を露出させた部分であって、接続相手(例えば配電盤)と接続するための端子24が装着される。
【0025】
(端子)
端子24は、接続相手と接続される部分であって、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金などの金属材料で構成され、
図1では板状端子である場合を示している。端子24が有する2つの主面のうち一方の主面が、接続相手と接触して接続される通電接触面をなしている。
端子24の先端側には、接続相手と接続される板状部24aが設けられている。板状部24aには、例えばボルト等の固定具が挿通される、接続相手との固定用の2つの挿通孔24bを有する。なお、挿通孔24bの数は自由に設定可能である。
ケーブル端末2aを構成する端子24は、その基端側に、導体22の導体露出部23の先端が挿入される筒状部24cが設けられている。端子24は、導体露出部23の先端部が挿入された状態で筒状部24cを導体露出部23に接続(連結)される。接続方法は、圧着や圧縮といったかしめ、半田付けなどがあるが、電気的、機械的に満足するものであれば、その方法は問わない。
【0026】
(管状係合部材)
管状係合部材25は、ケーブル2の絶縁被覆21に密着固定状態で設けられ、後述する固定部材42に保持される部材である。管状係合部材25は、
図3に示すように、少なくとも端子24の基端側と絶縁被覆21とに跨がるケーブル2の部分を絶縁被覆するように構成されている。管状係合部材25は、ケーブル2に一体に成形された一体成形部材であり、例えば公知のモールド法により形成されている。
管状係合部材25の材質は、絶縁性及び防水性に優れていればよく、特に限定しないが、シリコーンゴム、EPゴム等のゴム材料、又はプラスチック等の合成樹脂材料が用いられる。
【0027】
管状係合部材25は、導体露出部23側の絶縁被覆21の外周に、導体露出部23側に向かって拡径する外周面形状の拡径部25aを有する。具体的には、拡径部25aはケーブル2の先端側に向かって拡径している略円錐台形状をなす部分である。拡径部25aは、管状係合部材25のケーブル本体側部分に設けられている。拡径部25aの存在により、管状係合部材25の外径は、ケーブル2の径方向外側に向かって大きくなっている。
【0028】
また、管状係合部材25は、絶縁性及び防水性を有し、少なくとも端子24の基端部と絶縁被覆21とに跨がるケーブル2の部分を被覆して絶縁・防水機能も果たしているので、別体の絶縁部材を用意する必要はなく、ケーブル端末2aにおける部品点数を減じることができる。
【0029】
[プーリングアイ]
プーリングアイ4は、1本又は複数本のケーブル2を、接続相手が設置されている位置まで牽引して延線する際に使用されるケーブル牽引治具である。プーリングアイ4は、例えば
図1に示す実施形態では、複数本のケーブル端末2aを纏めてケーブル端末群3として牽引することができるように構成されている。プーリングアイ4は、保護カバー41、固定部材42及びアイ金具46を備える。
【0030】
(保護カバー)
保護カバー41は、ケーブル端末群3を、各ケーブル端末2aが配線可能状態のまま収容する内部空間を有し、
図1では有底筒状に形成されている。保護カバー41は、ケーブル2の先端(ケーブル端末2a)側に被嵌されて、少なくとも管状係合部材25の拡径部25aを完全に覆っている。保護カバー41の材質は、特に限定しないが、例えば金属が好ましい。
保護カバー41は、後述する固定部材42を連結するための、例えば先端にねじ山を有する連結具41aが挿通される挿通孔41bを有する。挿通孔41bの数は自由に設定可能であるが複数あることが好ましく、例えば保護カバー41の周面に等間隔(120°)で3つの挿通孔41bが設けられ、3本の連結具41aで固定部材42に連結することが好ましい。
【0031】
(固定部材)
固定部材42は、保護カバー41に対して分離可能に連結され、各ケーブル端末2aを保護カバー41内に位置決め固定するものである。固定部材42は平面視円形であり、その材質は特に限定しないが、例えば金属が好ましい。固定部材42は、
図5(b)に示すように、ケーブル端末2aの拡径部25aの外周面に対して接触保持可能な形状の内周面をもつ収容部42aを有する。拡径部25aが収容部42aで保持されてプーリングアイ4に対する各ケーブル端末2aの引き抜けを防止する。
【0032】
固定部材42は、解体可能な構造を有する。具体的には固定部材42は、
図4に示すように、プーリングアイ4の内部に設けられ、ケーブル端末2aの拡径部25aを収容する固定板43と、固定板43に収容された拡径部25aを径方向の外側から固定板43と共に挟持する押さえ部材44とを備える。固定板43と押さえ部材44とは、ボルトのような連結具45によって互いに連結される(
図4参照)。これにより、固定板43と押さえ部材44との挟持によりケーブル端末2aを容易に保持することができると共に、固定部材42のケーブル端末2aへの装着及びケーブル端末2aからの取り外しが容易になる。
【0033】
収容部42aは、
図5に示すように、固定板43と押さえ部材44とを互いに連結して組み立てることにより形成される中空部である。収容部42aは、ケーブル端末2aの基端側Gに向かって、つまり、絶縁被覆21に向かって縮径するように構成されている。収容部42aの内周面は、拡径部25aの略円錐台形状に対応する形状をなしていて、管状係合部材25の拡径部25aの外周面と面接触する。なお、
図5等では、説明の便宜上、収容部42aの内周面と拡径部25aの外周面とを少しだけ分離した状態で示しているが、実際には接触(密着)している。
【0034】
固定板43は、
図4に示すように、固定部材42の径方向外側に開口して、ケーブル端末2aにおける管状係合部材25の拡径部25aを収容する3つの切欠き状の凹部43aを有している。凹部43aは固定板43の厚さ方向に延在している。拡径部25aと面接触する凹部43aの収容面は、
図5に示すように、ケーブル端末2aの基端側Gから先端側Tに沿って固定板43の軸線Xに向かって傾斜して延在している。
さらに固定板43は、
図4に示すように、凹部43aと凹部43aとの間の部分に、連結具45が挿通される挿通孔43bを有する。挿通孔43bは固定板43をその厚さ方向に貫通している。
【0035】
固定板43は、凹部43aと凹部43aとの間の部分に、周方向に延在するスリット43cを有する。スリット43cには、押さえ部材44の連結フランジ部44bが挿入される。スリット43cは挿通孔43bをその延在方向において途中で分断している(
図5参照)。
【0036】
固定板43は、
図4に示すように、スリット43cを避ける位置に、固定部材42を保護カバー41内に連結するための連結具41aが挿入される挿入孔43dを有する。挿入孔43dの内壁にはねじ山が形成されている。挿入孔43dは、保護カバー41の挿通孔41bと対応する位置に形成されている。
【0037】
押さえ部材44は、拡径部25aが収容された固定板43の凹部43aの開口に向かって近接移動して、固定板43と共に収容部42aを形成して拡径部25aを挟持する。押さえ部材44は、
図4及び
図5に示すように、固定板43の径方向内側に向かって開口している、管状係合部材25の拡径部25aを径方向外側(
図5(a)の太矢印で示す)から押さえる押さえ部44aを有する。押さえ部44aは、固定板43の厚さ方向に延在している。押さえ部44aの拡径部25aと面接触する押さえ面は、ケーブル端末2aの基端側Gから先端側Tに沿って固定板43の軸線Xから離れるように傾斜して延在している。
【0038】
押さえ部材44は、その両端に固定部材42の周方向に突出している2つの連結フランジ部44bを有する。連結フランジ部44bにはその厚さ方向に貫通した、後述する連結具45が挿通される挿通孔44cを有する。連結フランジ部44bは、固定板43のスリット43cの正規位置に装着されたときに、固定板43の挿通孔43bと押さえ部材44の挿通孔44cとが一致するように構成され、連結具45によって、固定板43と押さえ部材44とを連結することができる。
さらに押さえ部材44は、導体露出部23側の押さえ部44aの端部に、ケーブル端末2aの引き抜き方向とは反対方向の移動を抑制するための縁部44d(
図5参照)を有している。
【0039】
(アイ金具)
アイ金具46は、保護カバー41の外面に連結固定されて、延線用のロープ、ワイヤ、フック等の牽引器具が取り付けられるものである。アイ金具46は、
図1では保護カバー41の底部に設けられ、環状部46aを有している。
【0040】
[間挿部材]
さらにケーブル端末牽引構造1は、
図1及び
図2に示すように、各ケーブル端末2aに装着された端子24の間に間挿部材5を有していることが好ましい。間挿部材5は、端子24を配線用の接続面が内向き状態の対向配置関係で分離可能に固定して、ケーブル端末群3の牽引時や、ケーブル端末牽引構造1の組み立て時に、端子24の通電接触面を損傷しないように保護するものである。
【0041】
間挿部材5は、
図1では、最大で3本のケーブル端子2aを装着する場合の実施形態を示しているため、三角形の断面形状を有する棒状の部材を用いているが、四角形などの多角形などの他の断面形状にすることも可能である。間挿部材5の材質は、プーリングアイでの牽引時に端子の接続面が損傷することなく保護できるものであればよく、特に限定しないが硬質であることが好ましく、例えばプラスチック、硬質ゴム、硬質ナイロン等が挙げられる。
間挿部材5と端子24とは、端子24の挿通孔24bを介して、例えばボルト及びナット等からなる固定装置51により互いに固定することができる。これにより、配線用の接続面を保護しつつ、収容するケーブル端末2aの端子24周りの収容容積を小さくできるため、ケーブル端末牽引構造1の小型化を達成することができる。
【0042】
<ケーブル端末牽引構造の組立方法>
次に、ケーブル端末牽引構造1の組立方法について説明する。
まず、一端(先端)側の絶縁被覆21を剥ぎ取って導体22の導体露出部23が形成されているケーブル2を用意し、導体露出部23に端子24を装着して配線可能状態に仕上げる。その後、各ケーブル2の、導体露出部23側の絶縁被覆21に、管状係合部材25の拡径部25aを密着固定して、ケーブル端末2aを形成する。この時点で全ての端末処理が完結している。
【0043】
管状係合部材25の密着固定は、ケーブル2の導体露出部23が位置する部分を金型内に設置し、金型内に成形材料を注型して管状係合部材25をモールド加工により実施される。管状係合部材25の拡径部25aは、モールド加工により絶縁被覆21の外周面に形成される。
【0044】
次いで、ケーブル端末2aを、管状係合部材25の拡径部25aにおいてプーリングアイ4の固定部材42に収容保持して、後述する保護カバー41を取り付けてケーブル端末牽引構造1を形成する。まず、各ケーブル端末2aの拡径部25aを固定部材42の固定板43の凹部43a内にそれぞれ収容する。その後、押さえ部材44を凹部43aの開口に向かって近接移動させて、固定板43と共に拡径部25aを挟持する。これにより、ケーブル端末2aは固定部材42に位置固定される。
【0045】
最後に、
図1に示す矢印方向Lにおいて、保護カバー41をケーブル端末群3にその先端側から被せ、保護カバー41の挿通孔41bを通じて固定板43の挿入孔43dに連結具41aを挿入して、保護カバー41と固定部材42とを固定する。以上でケーブル端末牽引構造1の組立てが完了する。
なお、間挿部材5は、ケーブル端末2aの、固定部材42への位置固定中又は位置固定後に各端子24の間に設けることができる。
【0046】
次に、
図6を用いて引き抜け防止構造について説明する。
図6(a)、(b)は、固定部材にケーブル端末が保持された状態を示す図であって、
図6(a)はケーブルが固定部材の正規位置で保持されている状態、
図6(b)はケーブルが牽引されて固定部材の正規位置から引き抜き方向に移動した状態を示す。
【0047】
プーリングアイ4によりケーブル端末2aを牽引する場合、固定部材42は、
図6(a)に示す位置から
図6(b)に示す位置へと、牽引方向Pにケーブル端末2aに対して相対的に移動する傾向がある。この相対移動に伴い、拡径部25aの略円錐台形状をなす外周面が、固定部材42の略円錐台形状をなす内周面を有する収容部42aで、ケーブル2の軸心に向かって押圧される。具体的には、固定部材42の収容部42aが、管状係合部材25の拡径部25aの外径よりも小さい内径部分において拡径部25aに面接触するので、
図6(b)において矢印を用いて概念的に示す楔作用が発生する。この楔作用により固定部材42の収容部42aが、管状係合部材25の拡径部25aの外周面を押圧することになる。この楔作用により、ケーブル端末2aを固定部材42により安定的に保持することができる。
【0048】
<その他>
なお、収容部42aの内周面形状は、管状係合部材25の拡径部25aの外周面と少なくとも部分的に接触すればよく、例えば円筒形であってもよい。つまり、収容部42aの最小内径が、拡径部25aの最大外径よりも小さい寸法を有していればよい。
また、間挿部材5の代わりに、例えば発泡シートやゴムシート等によって接続面を保護してもよい。
アイ金具46は、固定板43にボルトを直接設置して、そのボルトの先端に螺合により取り付けてもよい。
【0049】
<変形例1>
次に、
図7に基づいて、ケーブル端末牽引構造1のケーブル端末の変形例1について説明する。なお、上記の実施形態と同じ構成については、同一符号を付して説明を省略する。
図7は、変形例1に係るケーブル端末の構造を示し、具体的には、
図7(a)は、ケーブル端末を斜視的に示し、
図7(b)は、ケーブル端末を部分的に断面にして示す。
【0050】
ケーブル端末2Aaは、
図7に示すように、端子24と、絶縁及び防水性の管状係合部材26とを有する構造部分である。
図7に示す管状係合部材26は、シリコーンゴム、EPゴム等のゴム材料からモールド加工により形成されている可撓性及び絶縁性を有するものであり、常温収縮チューブで構成されている場合を示している。拡径部26aは、管状係合部材26のケーブル本体側に位置する部分である。管状係合部材26は、ケーブル2Aの延在方向に沿って少なくとも端子24の基端部と絶縁被覆21とに跨がるケーブル2Aの部分を被覆している。
【0051】
管状係合部材26は、ケーブル2Aにモールド加工では形成されていない。ケーブル端末2Aaを形成する工程の前に、管状係合部材26の内径を、例えば解体可能に構成されている筒状保持部材(図示せず)を挿入して予め数倍に拡径した状態にしておく。次に、拡径された状態の管状係合部材26を、ケーブル2Aに端子24側から挿入し、所定の位置まで被せ、その後、筒状保持部材を解体して取り除く。これにより、管状係合部材26は自己収縮して、ケーブル2Aに密着固定される。
【0052】
管状係合部材26を用いたケーブル端末牽引構造においても、上記の実施形態と同様の効果を奏することができる。また、管状係合部材26は製造に際し、特別な熟練度や火気を必要としない。さらに、管状係合部材26は可撓性であるため、ケーブル2Aの表面形状、具体的には絶縁被覆21、導体露出部23及び端子24の表面形状に沿って密着するので、封止性の観点において有利である。
【0053】
<変形例2>
次に、
図8に基づいて、ケーブル端末牽引構造1のケーブル端末の変形例2について説明する。なお、上記の実施形態と同じ構成については、同一符号を付して説明を省略する。
図8は、変形例2に係るケーブル端末の構造を示し、具体的には、
図8(a)は、ケーブル端末を斜視的に示し、
図8(b)は、ケーブル端末を部分的に断面にして示す。
【0054】
図8に示すケーブル端末2Baは、端子24と、絶縁及び防水性の管状係合部材27と、絶縁部材6とを有する構造部分である。
変形例2において、管状係合部材27は、拡径部27aからなる2つの分割部材28を互いに組み合わせて構成されている。分割部材28の材質は、特に限定しないが、例えば金属材料又は合成樹脂材料を用いればよい。分割部材28は、ケーブル2Bにおいては、導体露出部23から所定の間隔をおいて絶縁被覆21の外表面に密着して固定されている。分割部材28は絶縁被覆21に、例えば接着剤を用いて固定することができる。
【0055】
ケーブル端末2Baは、その延在方向において端子24の基端部から露出している、つまり端子24によって覆われていない導体露出部23を少なくとも被覆する絶縁部材6を有している。絶縁部材6は、例えば絶縁テープ又は絶縁シートである。絶縁部材6は、ケーブル端末において端子24の基端部と、拡径部27aを覆わない位置において絶縁被覆21の先端側に巻いて貼り付けられている。絶縁部材6の形成は、2つの分割部材28のケーブル2Bへの固定の前でも固定の後でもよい。
なお、絶縁部材6は、
図8(b)では単層で形成した場合を示しているが、複数回にわたって巻回して複数層の積層体として形成することもできる。
【0056】
管状係合部材27を用いたケーブル端末牽引構造においても、上記の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0057】
また、端子24を取り付ける接続相手の形状が不明な場合がある。このような場合、まず、端末処理を施していないケーブル2Bを接続現場にまで搬送する。管状係合部材27は、2つの分割部材28からなり、かつ絶縁部材6とは別体であるため、絶縁被覆21に簡単に固定することができる。これにより、接続相手の形状を確認して適切な端子24を選択した上で、接続現場の広い作業スペースで、牽引前にケーブル2Bに端末処理を実施することができる。
さらに、端子取り付け以外の管状係合部材27の固定、及び絶縁、防水処理を終わらせてから、上記のプーリングアイ4で引き込めば、延線後、接続相手の形状に見合った端子24を装着して、その端部近傍をテープなどで絶縁、防水処理を施してもよい。つまり、端子24が装着されていない導体露出部23を有するケーブル2Bを、接続場所まで牽引して保護カバー41を外せば、直ぐに端子24を装着できると共に、絶縁部材6を巻き付けることができる。
【0058】
絶縁部材6は、熱収縮式又は常温収縮式チューブ、絶縁及び防水性パテ、レジン等を用いて形成することもできる。
【0059】
<変形例3>
次に、
図9に基づいて、ケーブル端末牽引構造1のケーブル端末の変形例3について説明する。なお、上記の実施形態と同じ構成については、同一符号を付して説明を省略する。
図9は、変形例3に係るケーブル端末の構造を示し、具体的には、
図9(a)は、変形例3のケーブル端末を斜視的に示し、
図9(b)は、ケーブル端末を部分的に断面にして示す。
【0060】
図9に示すケーブル端末2Caは、端子24と、絶縁及び防水性の管状係合部材29と、絶縁部材7とを有する構造部分である。変形例3において、管状係合部材29は、ケーブル2Cの絶縁被覆21に嵌着されている。拡径部29aは、管状係合部材29のケーブル本体側部分に設けられている。管状係合部材29の材質は、特に限定しないが、例えば金属材料又は合成樹脂材料を用いればよい。
【0061】
管状係合部材29は、導体露出部23側の開口部に径方向内側に突出した管状の鍔部29bを有する。管状係合部材29は、ケーブル2Cの先端側において端子24に当接している。管状係合部材29は、その内部で鍔部29bにおいて絶縁被覆21の先端と当接している。管状係合部材29は、端子24を取り付ける前にケーブル2Cに嵌着するように構成されている。
【0062】
ケーブル2Cは、端子24と管状係合部材29との当接部を少なくとも被覆する絶縁部材7を有する。絶縁部材7は、ケーブル端末2Caの延在方向において端子24の基端部から少なくとも絶縁被覆21の先端部、特に端子24から露出している、つまり端子24では覆われていない導体露出部23を少なくとも被覆している。絶縁部材7は、管状係合部材29の嵌着後に設けられる。
絶縁部材7は、熱収縮チューブ、絶縁テープ又は絶縁シート、常温収縮チューブ、絶縁及び防水パテ、レジン等を用いて形成することができる。
【0063】
管状係合部材29を用いたケーブル端末牽引構造においても、上記の実施形態と同様の効果を奏することができる。
端子24が、管状係合部材29と接触し、管状係合部材29のケーブル端末2Caの軸線方向に沿った移動を抑制するため、押さえ部材44の縁部44dを省略することができる。