特許第6706863号(P6706863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706863
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】ケーブル牽引構造及びケーブル端末
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/02 20060101AFI20200601BHJP
   H02G 1/08 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H02G15/02
   H02G1/08 010
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-100114(P2016-100114)
(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公開番号】特開2017-208951(P2017-208951A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591086843
【氏名又は名称】古河電工産業電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】桜井 裕士
(72)【発明者】
【氏名】貝塚 啓
(72)【発明者】
【氏名】山下 和生
【審査官】 鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−135022(JP,U)
【文献】 特開2000−041327(JP,A)
【文献】 特開2009−037906(JP,A)
【文献】 実開昭58−049888(JP,U)
【文献】 実開昭50−056980(JP,U)
【文献】 実開平02−037521(JP,U)
【文献】 実開昭56−089611(JP,U)
【文献】 実公昭49−032133(JP,Y1)
【文献】 実開平07−030530(JP,U)
【文献】 実公昭51−030627(JP,Y1)
【文献】 実公昭51−030628(JP,Y1)
【文献】 米国特許第03522961(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
6/02
6/245−6/25
6/44−6/54
H01R 3/00−4/22
4/58−4/72
H02G 1/00−1/10
15/00−15/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの絶縁被覆を皮剥ぎした導体で構成され、又は該導体と、前記導体の延長上に近接して配置された導体延長部材との相互接続状態で構成される導体部、及び
該導体部が嵌挿された状態で当該導体部の周面に圧縮接続されたスリーブ
を有する少なくとも1本のスリーブ付きケーブル先端部と、
該少なくとも1本のスリーブ付きケーブル先端部を収容する内部空間を有する保護カバー、
該保護カバーに対して分離可能に連結され、各スリーブ付きケーブル先端部を前記保護カバー内に位置決め固定する固定部材、及び
前記保護カバーの外面に連結固定されるアイ金具
を有するプーリングアイと
を備え、
前記導体部又は前記スリーブが、外周面にねじ切りされた螺合部を有し、
前記導体部は、前記螺合部よりも先端側の部分が、前記スリーブから前記先端側に露出して、接続相手に接続される電気接続部分を構成することを特徴とするケーブル牽引構造。
【請求項2】
前記導体部が、前記ケーブルの絶縁被覆を皮剥ぎした導体で構成され、
前記螺合部が前記スリーブに形成され、
前記電気接続部分が、前記導体の前記スリーブから前記先端側に露出している部分であることを特徴とする請求項1に記載のケーブル牽引構造。
【請求項3】
前記導体部が、前記スリーブを介し、前記導体と前記導体延長部材との相互接続状態で構成され、
前記螺合部が前記スリーブに形成されていると共に、前記電気接続部分が、前記導体延長部材の、前記スリーブから前記先端側に露出している部分であることを特徴とする請求項1に記載のケーブル牽引構造。
【請求項4】
前記導体部が、前記スリーブを介し、前記導体と前記導体延長部材との相互接続状態で構成され、
前記螺合部が、前記導体延長部材に形成されていると共に、前記螺合部及び前記電気接続部分が、前記導体延長部材の、前記スリーブから前記先端側に露出している部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル牽引構造。
【請求項5】
前記導体延長部材が、複数本の銅線を撚り合せてなる撚り線であることを特徴とする請求項3又は4に記載のケーブル牽引構造。
【請求項6】
前記導体延長部材が銅製の棒材からなることを特徴とする請求項4に記載のケーブル牽引構造。
【請求項7】
前記スリーブが、アルミニウム製であることを特徴とする請求項2に記載のケーブル牽引構造。
【請求項8】
前記導体を収容する前記スリーブの部分が、アルミニウム製であり、
前記導体延長部材を収容する前記スリーブの部分が、銅製である
ことを特徴とする請求項3から6までのいずれか一項に記載のケーブル牽引構造。
【請求項9】
前記固定部材が、前記螺合部及び前記電気接続部分が挿通可能な内径をもつ挿通孔を有し、
該挿通孔から突出した前記螺合部及び前記電気接続部分を覆う有底筒状の保護キャップが設けられていることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載のケーブル牽引構造。
【請求項10】
前記保護キャップが、開口側の内周面に、前記螺合部と螺合して前記各スリーブ付きケーブル先端部を前記固定部材に位置決め固定するねじ切り部を有することを特徴とする請求項9に記載のケーブル牽引構造。
【請求項11】
前記保護キャップが、前記開口側に、径方向外側に突出し、前記螺合部とのねじ連結によって前記固定部材の対向面に接触する環状の鍔部を有し、
環状の第1の封止部材が、前記鍔部と前記固定部材との間に設けられ、環状の第2の封止部材が、前記挿通孔の内周面と前記スリーブの外周面との間に設けられることを特徴とする請求項10に記載のケーブル牽引構造。
【請求項12】
前記固定部材が、前記導体延長部材が挿通可能な内径をもつ挿通孔を有しており、
環状の第3の封止部材が、前記導体延長部材の外周面と前記挿通孔の内周面との間に設けられ、環状の第4の封止部材が、前記固定部材の、前記スリーブが衝き合わされる衝合面に設けられることを特徴とする請求項3から8までのいずれか一項に記載のケーブル牽引構造。
【請求項13】
前記固定部材が、前記導体延長部材を構成する前記螺合部及び前記電気接続部分が挿通可能な内径をもつ挿通孔を有しており、
環状の第5の封止部材が、前記固定部材の、前記スリーブが衝き合わされる衝合面であって、かつ前記導体延長部材の外周面に密着する状態で設けられることを特徴とする請求項3から8までのいずれか一項に記載のケーブル牽引構造。
【請求項14】
前記スリーブ付きケーブル先端部が、前記電気接続部分及び前記螺合部を露出させたままで、前記スリーブの基端部と前記絶縁被覆とに跨がる部分を少なくとも被覆する絶縁部材を有することを特徴とする請求項1から13までのいずれか一項に記載のケーブル牽引構造。
【請求項15】
ケーブルの絶縁被覆を皮剥ぎした導体で構成され、又は該導体と、前記導体の延長上に近接して配置された導体延長部材との相互接続状態で構成される導体部、
該導体部が嵌挿された状態で当該導体部の周面に圧縮接続されたスリーブ、及び
該スリーブの基端部と前記絶縁被覆とに跨がる部分を少なくとも被覆する絶縁部材
を有し、前記導体部又は前記スリーブが、外周面にねじ切りされた螺合部を有し、前記導体部は、前記螺合部よりも先端側の部分が、前記スリーブから前記先端側に露出して、接続相手に接続される電気接続部分を構成する少なくとも1本のスリーブ付きケーブル先端部と、
該電気接続部分に装着される端子と、
前記端子の基端部及び前記絶縁部材の先端部に跨がる部分を少なくとも被覆する絶縁性及び防水性の被覆部材と、
を有することを特徴とするケーブル端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば少なくとも1本のケーブル先端部にプーリングアイを取り付けたケーブル牽引構造及びケーブル端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線ケーブルを布設管路に引き入れて所定の場所まで延線するためのプーリングアイが知られている。
例えば特許文献1には、導体把持ソケットの先端にねじ付きボルトを突設させたスリーブでケーブル導体を把持し、その複数条を同数の挿入孔が同一円周上に穿設されかつ中央部に延線用ロープを取り付けるアイ部が突設された支持板の前記挿入孔に挿入し、ケーブル被覆から前記スリーブに跨って防水テープ層を形成するとともに、その外周に金属保護カバーを被嵌しこれを前記支持板に固定してなるケーブル用プーリングアイが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−135022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プーリングアイは、ケーブルを牽引して布設管路等に引き入れやすくし、接続相手となる対象機器が設置されている場所までケーブルを牽引して移動させることができる。しかしながら、ケーブル導体を把持するプーリングアイのスリーブは、ケーブル導体に圧縮により接続されていて、接続相手(例えば配電盤)に接続(配線)するための端子をケーブル導体に装着するには、ケーブルを牽引した後に、ケーブルに圧縮接続されていたスリーブをケーブルから取り外さなければならず、このスリーブの取り外しは、プーリングアイの金属保護カバーが被嵌しているケーブル先端部よりもケーブル本体側に位置するケーブル被覆部分を切断することにより行なわれていた。ケーブルの切断後には再度、ケーブルの被覆を剥離して新たに導体を露出させ、その露出させた導体に端子を装着し、さらに絶縁や防水を図る等の端末処理を行うことが必要であった。
仮にスリーブだけを取り外せたとしても、その導体部分の形状は、スリーブの圧縮接続により著しく変形しており、端子を装着するには不向きであり、端子を装着するには、変形した導体部分を切断した上で新たに導体を露出させる必要があった。
【0005】
マンション、ビル等の建造物の高層化に伴い、幹線(ケーブル)の高容量化、多系統化が進み配電室の省スペース化が望まれている近年、接続相手の設置場所において十分に広い作業スペースの確保が困難な場合が想定される。狭い作業スペースにおいてケーブルの被覆を皮剥ぎして導体を露出させるなどの処理は、作業者に無理な姿勢での作業を強いることになって作業効率が低下し、場合によっては作業が困難になることもあった。このため、プーリングアイを装着したケーブル先端部の構造を、接続相手との接続作業が効率良くできるように改良することが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、接続相手との接続作業性を格段に向上させることができるケーブル牽引構造及びケーブル端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
【0008】
(1)ケーブルの絶縁被覆を皮剥ぎした導体で構成され、又は該導体と、前記導体の延長上に近接して配置された導体延長部材との相互接続状態で構成される導体部、及び該導体部が嵌挿された状態で当該導体部の周面に圧縮接続されたスリーブを有する少なくとも1本のスリーブ付きケーブル先端部と、該少なくとも1本のスリーブ付きケーブル先端部を収容する内部空間を有する保護カバー、該保護カバーに対して分離可能に連結され、各スリーブ付きケーブル先端部を前記保護カバー内に位置決め固定する固定部材、及び前記保護カバーの外面に連結固定されるアイ金具を有するプーリングアイとを備え、前記導体部又は前記スリーブが、外周面にねじ切りされた螺合部を有し、前記導体部は、前記螺合部よりも先端側の部分が、前記スリーブから前記先端側に露出して、接続相手に接続される電気接続部分を構成することを特徴とするケーブル端末牽引構造。
【0009】
(2)前記導体部が、前記ケーブルの絶縁被覆を皮剥ぎした導体で構成され、前記螺合部が前記スリーブに形成され、前記電気接続部分が、前記導体の前記スリーブから前記先端側に露出している部分であることを特徴上記(1)に記載のケーブル牽引構造。
【0010】
(3)前記導体部が、前記スリーブを介し、前記導体と前記導体延長部材との相互接続状態で構成され、前記螺合部が前記スリーブに形成されていると共に、前記電気接続部分が、前記導体延長部材の、前記スリーブから前記先端側に露出している部分であることを特徴とする上記(1)に記載のケーブル牽引構造。
【0011】
(4)前記導体部が、前記スリーブを介し、前記導体と前記導体延長部材との相互接続状態で構成され、前記螺合部が、前記導体延長部材に形成されていると共に、前記螺合部及び前記電気接続部分が、前記導体延長部材の、前記スリーブから前記先端側に露出している部分に設けられていることを特徴とする上記(1)に記載のケーブル牽引構造。
【0012】
(5)前記導体延長部材が、複数本の銅線を撚り合せてなる撚り線であることを特徴とする上記(3)又は(4)に記載のケーブル牽引構造。
【0013】
(6)前記導体延長部材が銅製の棒材からなることを特徴とする上記(4)に記載のケーブル牽引構造。
【0014】
(7)前記スリーブが、アルミニウム製であることを特徴とする上記(2)に記載のケーブル牽引構。
【0015】
(8)前記導体を収容する前記スリーブの部分が、アルミニウム製であり、前記スリーブの前記導体延長部材を収容する部分が、銅製であることを特徴とする上記(3)から(6)までのいずれか1つに記載のケーブル牽引構造。
【0016】
(9)前記固定部材が、前記螺合部及び前記電気接続部分が挿通可能な内径をもつ挿通孔を有し、該挿通孔から突出した前記螺合部及び前記電気接続部分を覆う有底筒状の保護キャップが設けられていることを特徴とする上記(1)から(8)までのいずれか1つに記載のケーブル牽引構造。
【0017】
(10)前記保護キャップが、開口部側の内周面に、前記螺合部と螺合して前記各スリーブ付きケーブル先端部を前記固定部材に位置決め固定するねじ切り部を有することを特徴とする上記(9)に記載のケーブル端末牽引構造。
【0018】
(11)前記保護キャップが、前記開口部側に、径方向外側に突出し、前記螺合部とのねじ連結によって前記固定部材の対向面に接触する環状の鍔部を有し、環状の第1の封止部材が、前記鍔部と前記固定部材との間に設けられ、環状の第2の封止部材が、前記挿通孔の内周面と前記スリーブの外周面との間に設けられることを特徴とする上記(10)に記載のケーブル端末牽引構造。
【0019】
(12)前記固定部材が、前記導体延長部材が挿通可能な内径をもつ挿通孔を有しており、環状の第3の封止部材が、前記導体延長部材の外周面と前記挿通孔の内周面との間に設けられ、環状の第4の封止部材が、前記固定部材の、前記スリーブが衝き合わされる衝合面に設けられることを特徴とする上記(3)から(8)までのいずれか1つに記載のケーブル端末牽引構造。
【0020】
(13)前記固定部材が、前記導体延長部材を構成する前記螺合部及び前記電気接続部分が挿通可能な内径をもつ挿通孔を有しており、環状の第5の封止部材が、前記固定部材の、前記スリーブが衝き合わされる衝合面であって、かつ前記導体延長部材の外周面に密着する状態で設けられることを特徴とする上記(3)から(8)までのいずれか1つに記載のケーブル端末牽引構造。
【0021】
(14)前記スリーブ付きケーブル先端部が、前記電気接続部分及び前記螺合部を露出させたままで、前記スリーブの基端部と前記絶縁被覆とに跨がる部分を少なくとも被覆する絶縁部材を有することを特徴とする上記(1)から(13)までのいずれか1つに記載のケーブル端末牽引構造。
【0022】
(15)ケーブルの絶縁被覆を皮剥ぎした導体で構成され、又は該導体と、前記導体の延長上に近接して配置された導体延長部材との相互接続状態で構成される導体部、該導体部が嵌挿された状態で当該導体部の周面に圧縮接続されたスリーブ、及び該スリーブの基端部と前記絶縁被覆とに跨がる部分を少なくとも被覆する絶縁部材を有し、前記導体部又は前記スリーブが、外周面にねじ切りされた螺合部を有し、前記導体部は、前記螺合部よりも先端側の部分が、前記スリーブから前記先端側に露出して、接続相手に接続される電気接続部分を構成する少なくとも1本のスリーブ付きケーブル先端部と、該電気接続部分に装着された端子と、前記端子の基端部及び前記絶縁部材の先端部に跨がる部分を少なくとも被覆する絶縁性及び防水性の被覆部材と、を有することを特徴とするケーブル端末。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るケーブル牽引構造によれば、ケーブルの絶縁被覆を皮剥ぎした導体で構成され、又は該導体と、前記導体の延長上に近接して配置された導体延長部材とを有する導体部、及び該導体部が嵌挿された状態で当該導体部の周面に圧縮接続されたスリーブを有する、少なくとも1本のスリーブ付きケーブル先端部と、該少なくとも1本のスリーブ付きケーブル先端部を収容する内部空間を有する保護カバー、該保護カバーに対して分離可能に連結され、各スリーブ付きケーブル先端部を前記保護カバー内に位置決め固定する固定部材、及び前記保護カバーの外面に連結固定されるアイ金具、を有するプーリングアイとを備え、前記導体部又は前記スリーブが、外周面に前記各スリーブ付きケーブル先端部の前記固定部材へのねじ連結に用いられる螺合部を有し、前記導体部は、前記螺合部よりも先端側の部分が、前記スリーブから前記先端側に露出して、接続相手に接続される電気接続部分であることにより、接続相手に接続される電気接続部分を、プーリングアイに装着するためのスリーブの圧縮接続する部分とはせず、スリーブから露出させた接続可能状態のままで、少なくとも1本のケーブルを、所定の接続場所まで牽引して延線することができ、この結果、プーリングアイをスリーブ付きケーブル先端部から取り外すだけで接続相手との接続に用いられる端子を即座に電気接続部分に装着することができるので、接続場所での作業性を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明に従う代表的な実施形態のケーブル牽引構造の内部状態を説明するため、プーリングアイを構成する保護カバーの一部を切除して示す部分断面図である。
図2図2は、図1に示すケーブル牽引構造を構成するスリーブ付きケーブル先端部の1本のみを抜き出して部分的に断面にして示す部分断面図である。
図3図3は、ケーブル牽引構造の構成要素の分解斜視図である。
図4図4は、スリーブ付きケーブル先端部と固定部材とのねじ連結状態を示す斜視図である。
図5図5は、スリーブ付きケーブル先端部を保護する保護キャップを説明する図である。
図6図6は、スリーブ付きケーブル先端部を保護する別の保護キャップを説明する図である。
図7図7は、スリーブ付きケーブル先端部を保護するさらに別の保護キャップ、及びケーブル端末における封止部材を説明する図である。
図8図8(a)、(b)は、ケーブル端末を示す図であり、図8(a)がケーブル端末の斜視図であり、図8(b)が図8(a)の軸線を含む平面で断面にした部分断面図である。
図9図9(a)、(b)は、スリーブ付き導体部の別の実施形態(変形例1)を示したものであって、図9(a)が斜視図であり、図9(b)の軸線を含む平面で断面にした部分断面図である。
図10図10(a)、(b)は、スリーブ付きケーブル先端部の他の実施形態(変形例2)を示したものであって、図10(a)が斜視図であり、図10(b)が図10(a)の軸線を含む平面で断面にした部分断面図である。
図11図11は、封止部材を説明する図である。
図12図12は、封止部材を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に従うケーブル牽引構造を、図面を参照しながら以下で説明する。なお、以下に示す幾つかの実施形態はいずれも例示であり、本発明の範囲において種々の形態をとりうる。
【0026】
図1は、本発明に従う代表的な実施形態のケーブル牽引構造の内部状態を説明するため、プーリングアイを構成する保護カバーの一部を切除して部分的に断面にして示し、図2は、図1に示すケーブル牽引構造を構成するスリーブ付きケーブル先端部の1本のみを抜き出して部分的に断面にして示し、図3は、ケーブル牽引構造を分解して斜視的に示し、図4は、ケーブル牽引構造の構成要素を分解して斜視的に示し、図5は、スリーブ付きケーブル先端部を保護する保護キャップを説明し、図6は、スリーブ付きケーブル先端部を保護する別の保護キャップを説明し、図7は、スリーブ付きケーブル先端部を保護するさらに別の保護キャップ、及びケーブル端末における封止部材を説明し、図8(a)、(b)は、ケーブル端末を示し、図8(a)は、ケーブル端末を斜視的に示し、図8(b)は、図8(a)の軸線を含む平面でスリーブ付きケーブル先端部を部分的に断面にして示す。
【0027】
<ケーブル牽引構造>
ケーブル牽引構造1は、図1に示すように、少なくとも1本のスリーブ付きケーブル先端部2と、スリーブ付きケーブル先端部2を収容して牽引するプーリングアイ4と、を備えた構造体である。例えば図示の実施形態では、3本のスリーブ付きケーブル先端部2からなるスリーブ付きケーブル先端部群(以下「ケーブル先端部群」ともいう。)を備えている。
なお、説明の便宜上、ケーブルC又はスリーブ付きケーブル先端部2の延在方向(長手方向)を「X」とし、先端側方向(ケーブル延長方向)を「X1」、基端側方向を「X2」と定義する。
【0028】
[スリーブ付きケーブル先端部]
図2に示すスリーブ付きケーブル先端部2は、導体部6と、導体部6が嵌挿された状態で導体部6の外周面に圧縮接続(連結)されたスリーブ7と、絶縁部材8とを有する。絶縁部材8は、スリーブ7の基端部分及びケーブルCの絶縁被覆5に跨がるケーブルCの部分を、少なくとも被覆する。
【0029】
(ケーブルの絶縁被覆)
ケーブルCは、当該ケーブルCの導体と、この導体の外周を覆う絶縁被覆(ケーブル絶縁体)5と、導体及び絶縁被覆5を保護する保護層(ケーブルシース)とから構成されている。なお、図面においては、絶縁被覆5及び保護層を一体にして描いた。絶縁被覆5の材質としては、外部から絶縁する材質であればよく、材料の種類は問わない。例えばポリ塩化ビニル(PVC)、架橋ポリエチレンを含む絶縁樹脂が挙げられる。
【0030】
(導体部)
図2に示す導体部6は、ケーブルCの先端部であって、絶縁被覆を皮剥ぎして露出させた導体で構成されている。導体部6は、ケーブルCの延在方向Xの先端側X1でスリーブ7から露出している部分に、接続相手に接続される電気接続部分61を有する。
つまり、図2に示す実施形態における「電気接続部分61」は、皮剥ぎした導体からなる導体部6が、スリーブ7に嵌挿された状態で、スリーブ7から先端側方向X1に露出した導体部6の部分(先端部分)である。電気接続部分61には、接続相手に実際に接続される端子Tが装着される(図8参照)。
導体部6は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金などの金属材料で構成されている。導体部6の形態は、図2では素線を複数本撚り合わせてなる撚り線で構成した場合を示している。
【0031】
(スリーブ)
図2に示すスリーブ7は、導体部6の周面に圧縮して接続される金属製の筒状の段付きスリーブであり、一端から他端にわたって延在する貫通孔71を有する。スリーブ付きケーブル先端部2を固定部材42に位置決め固定するため、スリーブ7は、先端側部分の外周面にねじ切りされた螺合部72を有する。スリーブ7は、貫通孔71に導体部6を嵌挿した状態にて、螺合部72が存在しない部分を外周側から圧縮することで導体部6の外周面に接続(連結)される。
螺合部72の、後述するナット44と螺合する部分に、例えばシールテープ(図示せず)等を巻回形成してもよい。
【0032】
スリーブ7の材料は、導電性であれば種類は問わないが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金といった金属材料から形成されていることが好ましい。また、スリーブ7の材料が、導体部6の材料と同等以上の熱膨張係数を有していることが好ましいが、異種金属腐食等を考慮すると、スリーブ7と導体部6は、同じ金属材料で構成されていることが特に好ましい。
また、導体部6とスリーブ7とを異なる金属材料で構成する場合、例えば導体部6が複数本の銅(素)線を撚り合わせてなる撚り線で構成され、スリーブ7がアルミニウム材料で構成された場合、アルミニウムの熱膨張係数は、銅の熱膨張係数よりも大きいため、加熱や冷却されるような使用環境下であったとしても、スリーブ7による導体部6の良好な圧着状態を維持することができる。
【0033】
本発明のケーブル牽引構造では、プーリングアイによるケーブルの牽引時に、スリーブ7から、ケーブルCの先端側方向X1に露出した電気接続部分61を、プーリングアイ4(特に固定部材42)に取り付けるためのスリーブ7を圧着接続する部分とはせず、接続可能状態のままとすることができるため、接続相手との接続現場において、ケーブル先端部を切断した後に、絶縁被覆を皮剥ぎして新たに導体を露出させて電気接続部分を形成するなどの作業を省略することができるので、端子Tの装着作業性が格段に向上する。
【0034】
(絶縁部材)
絶縁部材8は、図2では、ケーブルCの延在方向Xにおいて、スリーブ7の基端側部分と、ケーブルCの先端側の絶縁被覆5とに跨がる範囲にわたって被覆する場合を示している。絶縁部材8は、モールド加工によりケーブルCに一体に成形されるか、あるいは、別体として管状に形成した絶縁部材をケーブルCの外周に装着してもよい。絶縁部材8の材質は、良好な絶縁性及び防水性を発揮できる材質であればよく、特に限定しないが、例えばシリコーンゴム、EPゴム等のゴム材料、又はプラスチック等の合成樹脂材料が挙げられる。
【0035】
なお、例えば工場等においてモールド加工等により予めスリーブ付きケーブル先端部2の一部として形成した絶縁部材8は、接続相手との接続場所における限られた作業スペースで手作業により形成した絶縁部材と比べて絶縁性及び防水性等の性能が優れている。
また、絶縁部材8は、収縮チューブであってもよく、またレジン注入、テープ巻き等によって形成することもできる。
【0036】
[プーリングアイ]
プーリングアイ4は、1本又は複数本の電線ケーブルCを、接続相手が設置されている位置まで牽引して延線する際に使用されるケーブル牽引治具である。プーリングアイ4は、例えば図1に示す実施形態では、3本の電線ケーブルCを牽引できるように構成した場合を示したものであって、3本のスリーブ付きケーブル先端部2を纏めてケーブル先端部群として連結したものである。保護カバー41、固定部材42及びアイ金具46を備える。
【0037】
(保護カバー)
保護カバー41は、各スリーブ付きケーブル先端部2を構成する電気接続部分61が、接続可能状態又は端子装着可能状態のままで、ケーブル先端部群を収容する内部空間を有し、図1では有底筒状に形成されている。保護カバー41は、その内部空間に、電気接続部分61の先端から少なくとも絶縁部材8の基端位置までのケーブル先端部を挿入し、ケーブル先端部群の周りを覆うように配設される。保護カバー41の材質は、特に限定しないが、例えば金属が好ましい。
図3に示す保護カバー41は、後述する固定部材42が連結される位置に挿通孔41bを形成し、この挿通孔41bに、固定部材42を連結するためのねじ等の連結具41aが挿通される。挿通孔41bの数は、自由に設定可能であるが複数あることが好ましく、例えば、図3では、保護カバー41の周面に等間隔(120°)で3つの挿通孔41bが設けられ、3本の連結具41aで固定部材42を保護カバー41に連結する。
【0038】
(固定部材)
固定部材42は、保護カバー41に対して分離可能に連結され、各スリーブ付きケーブル先端部2を保護カバー41内に位置決め固定するものであり、プーリングアイ4に対する各スリーブ付きケーブル先端部2の引き抜けを防止する。固定部材42は平面視円形であり、その材質は特に限定しないが、例えば金属が好ましい。
図3及び図4に示す固定部材42は、各スリーブ付きケーブル先端部2を収容し、保護カバー41内に位置決めする固定板43と、各スリーブ付きケーブル先端部2を固定板43に位置決め固定するため、スリーブ7に形成した螺合部72に螺合させてねじ連結するナット44とを有している。
【0039】
図3に示す固定板43は、円板状の部材であり、固定板43を厚さ方向に貫通し、中心軸線周りに等間隔(120°)で形成された3つの挿通孔43aを有する。図4に示す各挿通孔43aは、スリーブ7の螺合部72、及び導体部6の電気接続部分61が挿通可能な内径をもっている。固定板43の挿通孔43aに、各スリーブ付きケーブル先端部2を挿通完了位置まで挿入したとき、螺合部72は、固定板43の挿通孔43aから先端側方向X1に少なくとも部分的に突き出た状態で露出している。
固定板43の周面には、保護カバー41に形成した挿通孔41bを貫通した連結具41aが挿入されてねじ連結されるねじ孔43bが設けられている。ねじ孔43bは、固定板43の周面に等間隔で複数個形成されていることが好ましく、図3では3個形成した場合を示している。各ねじ孔43bは、上記の保護カバー41の挿通孔41bの配設位置に合わせて形成される。
【0040】
ナット44は、固定板43の挿通孔43aから突出したスリーブ7の螺合部72に締結されて各スリーブ付きケーブル先端部2を固定板43に取り付ける。図3及び図4では、固定板43とナット44との間に座金45を設けた場合を示している。
【0041】
(アイ金具)
アイ金具46は、プーリングアイ4を構成する部品であって、保護カバー41の外面に連結固定され、延線用のロープ、ワイヤ、フック等の牽引器具を取り付けることができる。図示はしないが、アイ金具のボルトを固定板に接続、固定する場合もある。アイ金具46は、図3では保護カバー41の底部に設けられ、環状部46aを有している場合を示している。
【0042】
[保護キャップ]
図5に示すケーブル牽引構造1は、プーリングアイ4を構成する保護カバー41の内部に、スリーブ7から先端側方向X1に突出している導体部6を保護するための有底筒状の保護キャップ9をさらに有していてもよい。保護キャップ9は、導体部6の先端側部分である電気接続部分61を覆うように構成されている。保護キャップ9は、その開口側の内周面に形成されたねじ切り部を、ナット44の頂面から先端側方向X1に突出して延在する螺合部72に対してねじ込むことによってスリーブ7に連結されている。
【0043】
図6は、別の保護キャップ(保護キャップ9A)を示したものである。図6に示す保護キャップ9Aは、図5に示す保護キャップ9とナット44とを一体に形成したものであって、保護キャップ9Aの開口側に、スリーブ7の螺合部72と螺合して各スリーブ付きケーブル先端部2を固定部材42の固定板43に位置決め固定するねじ切り部91Aを有している。この保護キャップ9Aは、導体部6の先端側部分である電気接続部分61の保護と、スリーブ付きケーブル先端部2の固定部材42への固定の2つの役割を兼ね備えている。
【0044】
図7は、他の保護キャップ(保護キャップ9B)を示したものである。保護キャップ9Bは、その開口側に、保護キャップ9Bの径方向外側に突出し、螺合部72とのねじ連結によって固定部材42の対向面に接触する環状の鍔部92Bを有している。保護キャップ9Bは、鍔部92Bにおいて固定板43と面接触している。
【0045】
導体部6の電気接続部分61が保護キャップ9,9A,9Bによって覆われていることにより、電気接続部分61を外部に対し保護した状態でケーブルCを牽引することができ、水分等が、保護キャップ9,9A,9Bの外側から内部に侵入して電気接続部分61に付着するのを有効に防止することができる。さらに、保護キャップ9A,9Bのように、その開口側の内周面にスリーブ7の螺合部72と連結するナット44の機能を備えたねじ切り部91A,91Bを有していると、部品点数(例えばナット44)を減じることができる。
【0046】
[封止部材]
図7に示すケーブル牽引構造1は、鍔部92Bと固定部材42の固定板43との間を有効に封止するため、鍔部92Bと、固定部材42(より厳密には固定板43)との間に、環状の第1の封止部材S1が設けられている。第1の封止部材S1は、水分が、保護キャップ9Bの外側から鍔部92Bと固定板43との接触界面を通じて保護キャップ9Bの内部へ浸入することを防ぐ。
さらに、図7に示すケーブル牽引構造1は、スリーブ7の外周面と、挿通孔43aの内周面との間を有効に封止するため、挿通孔43aの内周面とスリーブ7の外周面との間に環状の第2の封止部材S2が設けられている。第2の封止部材S2は、水分が、ケーブル本体側から挿通孔43aを通って保護キャップ9Bの内部へ浸入することを防ぐ。
固定板43には、第1及び第2の封止部材S1,S2を収容する環状凹部がそれぞれ形成されている。第1及び第2の封止部材S1,S2としては、例えば公知のシールリングを用いることができる。
【0047】
第1及び第2の封止部材S1,S2の配設は、例えば導体部6が銅の撚り線、スリーブ7がアルミニウム製である場合には、導体部6とスリーブ7との接触界面位置に水分が浸入しないように構成することができるので、異種金属腐食を防ぐ観点から好ましい。
【0048】
<ケーブル端末>
次に、スリーブ付きケーブル先端部2に端末処理を施したケーブル端末CTについて説明する。ここで「端末処理」とは、接続相手の設置場所まで牽引されるケーブルCの先端部、すなわち図8に示すスリーブ付きケーブル先端部2を構成する導体部6の電気接続部分61に端子Tを装着し、端子Tの基端側と絶縁部材8とに跨る部分にわたって絶縁性及び防水性の被覆部材Rを被覆するまでの一連の処理を意味する。
【0049】
端子Tは、接続相手と接続される部材であって、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金といった金属材料で構成され、図8では板状端子である場合を示している。端子Tは、筒状開口部を有し、この筒状開口部に、導体部6の電気接続部分61を挿入した状態で筒状開口部を電気接続部分61の外面に装着することによって、導体部6に接続(連結)される。接続方法は、圧着や圧縮といったかしめ、半田付けなどがあるが、電気的、機械的に満足するものであれば、その方法は問わない。
端子Tが有する2つの主面のうち一方の主面が、接続相手と接触して接続される通電接触面をなしている。
【0050】
被覆部材Rは、端子Tの筒状開口部からスリーブ7の先端側部分に跨がる部分を少なくとも被覆することが好ましい。被覆部材Rの材質は、良好な絶縁性及び防水性を有していればよく、特に限定しないが、例えばシリコーンゴム、EPゴム等のゴム材料、又はプラスチック等の合成樹脂材料が挙げられる。
【0051】
<変形例1>
次に、図9に基づいて、ケーブル牽引構造のスリーブ付きケーブル先端部の変形例1について説明する。なお、上記の実施形態と同じ構成については、同一符号を付して説明を省略する。図9は、変形例1のスリーブ付きケーブル先端部を示し、具体的には、図9(a)は、スリーブ付きケーブル先端部を斜視的に示し、図9(b)は、図9(a)の軸線を含む平面でスリーブ付きケーブル先端部を部分的に断面にして示す。
【0052】
図9に示すスリーブ付きケーブル先端部2Aの導体部6Aは、ケーブルC1の絶縁被覆を皮剥ぎした導体6aと、導体6aの延長上に近接して配置された導体延長部材6bとの相互接続状態で構成されている。具体的に導体延長部材6bは、導体6aにスリーブ7Aを介して導電的に接続されている。導体延長部材6bは、スリーブ7Aから先端側方向X1に突出している部分に、接続相手と接続する電気接続部分61Aを有している。
【0053】
導体6a及び導体延長部材6bは、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金などの金属材料で構成されている。導体6a及び導体延長部材6bの形態は、図9では素線を複数本撚り合わせてなる撚り線で構成した場合を示している。例えば導体6aを複数本のアルミニウム線で構成し、導体延長部材6bを複数本の銅線で構成した場合が挙げられる。
【0054】
図9に示すスリーブ7Aは、上記の実施形態のスリーブ7とは異なり、異なる金属材料でそれぞれ構成された2つの部材同士を接合して一体に形成した場合を示している。具体的には、スリーブ7Aは、導体6aの先端部を収容する第1の収容部7aと、導体延長部材6bの基端部を収容する第2の収容部7bとを有している。第1の収容部7aは、導体6aの先端面が突き当たる底面をもつ穴の形で形成され、第2の収容部7bは、導体延長部材6bの基端面が突き当たる底面をもつ穴の形で形成されていて、互いの穴は連通しておらず、独立した穴として存在している。第2の収容部7bは、その先端側部分の外周面に、固定部材42にスリーブ付きケーブル先端部2Aを固定する際に用いられる螺合部71Aを形成してある。
【0055】
例えば腐食防止の観点から、第1の収容部7aと導体6aを同一材料で構成するとともに、第2の収容部7bと導体延長部材6bを同一部材で構成することが好ましい。例えば、導体6aがアルミニウム材料で構成されている場合には、第1の収容部7aもアルミニウム材料で構成し、導体延長部材6bが銅材料で構成されている場合には、第2の収容部7bも銅材料で構成することが好ましい。スリーブ7Aは、材質の異なる部材(第1及び第2の収容部7a,7b)同士を、例えば摩擦圧接により接合することで形成されている。
【0056】
スリーブ付きケーブル先端部2Aを用いたケーブル牽引構造においても、上記の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0057】
<変形例2>
次に、図10に基づいて、ケーブル牽引構造のスリーブ付きケーブル先端部の変形例2について説明する。なお、上記の実施形態と同じ構成については、同一符号を付して説明を省略する。図10は、変形例2に係るスリーブ付きケーブル先端部の構造を示し、具体的には、図10(a)は、変形例2に係るスリーブ付きケーブル先端部を斜視的に示し、図10(b)は、図10(a)の軸線を含む平面でスリーブ付きケーブル先端部を部分的に断面にして示す。
【0058】
図10に示すスリーブ付きケーブル先端部2Bの導体部6Bは、ケーブルC2の絶縁被覆を皮剥ぎした導体6cと、導体6cの延長上に近接して配置された導体延長部材6dとの相互接続状態で構成されている。具体的に導体延長部材6dは、導体6cにスリーブ7Bを介して導電的に接続されている。導体6cは、変形例1の導体6aと同じ構成である。これに対して、図10に示す導体延長部材6dは、棒状の部材である。この棒状の部材は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金のような金属材料で構成すればよい。特に導体延長部材6dの材質は、後述する端子T又は接続相手の材質に合わせて選択することが好ましい。例えば、導体延長部材6dは、端子T又は接続相手が銅又は銅合金から構成されている場合、同様に銅又は銅合金で構成することが好ましい。
【0059】
図10に示す導体延長部材6dは、スリーブ7Bの第2の収容部7d内に嵌挿された状態でスリーブ7Bに連結されて一体化されている。螺合部62Bは、導体延長部材6dに形成されていると共に、螺合部62B及び電気接続部分61Bは、いずれも導体延長部材6dの、スリーブ7Bから先端側に露出している部分に設けられている。電気接続部分61Bは、螺合部62Bよりも先端側に設けられている。
【0060】
図10に示すスリーブ7Bは、第1の収容部7c及び第2の収容部7dを備えている。スリーブ7Bは、第2の収容部7dに螺合部が形成されていない以外は、上記の変形例1のスリーブ7Aと同じ構成である。
【0061】
導体延長部材6dが、図11に示すように、固定部材42の挿通孔43aに挿通される。スリーブ付きケーブル先端部2Bは、固定板43から先端側方向X1に突出した螺合部62Bの部分にナット44を締結することで、固定部材42の固定板43に位置固定される。導体延長部材6dは、主に、導体延長部材6dの螺合部62Bが形成されていない部分(平滑周面部)が、挿通孔43a内に位置している(図11参照)。
【0062】
次に、図11及び図12を用いて、変形例2のスリーブ付きケーブル先端部2Bを用いたケーブル牽引構造について説明する。図11及び図12は、ケーブル牽引構造における封止部材の配置を示す。
図11に示すケーブル牽引構造1Aは、導体延長部材6dの外周面と、固定板43の挿通孔43aの内周面との間に設けられた環状の第3の封止部材S3を備えている。さらに、固定部材42の固定板43の、スリーブ7Bが衝き合わされる衝合面に環状の第4の封止部材S4が設けられている。
封止部材S3,S4の配設により、水分が、先端側から挿通孔43aを通じて、また、基端側から固定板43とスリーブ7Bとの衝合面を通じて第2の収容部7d内に浸入することを効果的に阻止することができる。これにより、導体延長部材6dと、スリーブ7の第2の収容部7dとの接続部分への水分の浸入を防ぐことができる。特に、導体延長部材6dを銅材料で構成し、スリーブ7Bの第2の収容部7dをアルミニウム材料で構成する場合には、異種金属腐食を防止する観点から、封止部材S3,S4の配設は有利である。
【0063】
図12に示すケーブル牽引構造1Bは、固定部材42の、スリーブ7Bが衝き合わされる衝合面であって、かつ導体延長部材6dの外周面に密着する状態で設けられた環状の第5の封止部材S5を備えている。挿通孔43aの、スリーブ7Bの衝合面側に位置する開口の周縁には、環状の第5の封止部材S5を収容するテーパ状の受け部が形成されている。
導体延長部材6dの螺合部62Bとナット44とのねじ連結により、スリーブ付きケーブル先端部2Bは、先端側方向X1に引き寄せられる力が作用する。第5の封止部材S5は、固定板43の上記の受け部とスリーブ7Bの衝合面との間で押圧され、導体延長部材6dと挿通孔43aとの間をより確実に密封する。
【0064】
第5の封止部材S5としては、例えば公知のシールリングを用いることができる他に、ソロバン玉型パッキンを用いることもできる。ソロバン玉型パッキンが固定板43の受け部によって押圧されると、パッキン内部に多方面の応力、つまり異方性の応力が発生する。封止部材S5がソロバン玉型パッキンの場合、例えばスリーブ7Bの第2の収容部7dの先端側X1に、封止部材S5を収容する収容部(図示せず)が形成されている。
【0065】
第5の封止部材S5の存在により、水分が、先端側X1から挿通孔43aを通じて、合わせて、固定板43とスリーブ7Bの衝合面を通じて第2の収容部7d内に浸入することを効果的に阻止することができる。つまり、封止部材S5により、導体延長部材6dと、スリーブ7の第2の収容部7dとの接続部分への水分の浸入を防ぐことができる。導体延長部材6dを銅材料で構成し、スリーブ7Bの第2の収容部7dをアルミニウム材料で構成する場合には、異種金属腐食を防止する観点から封止部材S5の配設は有利である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、プーリングアイをスリーブ付きケーブル先端部から取り外すだけで接続相手との接続に用いられる端子を即座に電気接続部分に装着することができるので、接続相手との接続作業性を格段に向上させることができる。
【符号の説明】
【0067】
1,1A ケーブル牽引構造
2,2A,2B スリーブ付きケーブル先端部
4 プーリングアイ
5 ケーブルの絶縁被覆
6,6A,6B 導体部
6a,6c 導体
6b,6d 導体延長部材
7,7A,7B スリーブ
7a,7c 第1の収容部
7b,7d 第2の収容部
8 絶縁部材
9 保護キャップ
41 保護カバー
42 固定部材
43 固定板
43a 挿通孔
46 アイ金具
61,61A,61B 電気接続部分
72 螺合部
91A,91B ねじ切り部
92B 鍔部
C,C1,C2 ケーブル
T 端子
CT ケーブル端子
R 被覆部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12