特許第6707291号(P6707291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707291
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20200601BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20200601BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H01L21/304 622S
   B24B7/04 A
   B24B49/12
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-203068(P2016-203068)
(22)【出願日】2016年10月14日
(65)【公開番号】特開2018-64076(P2018-64076A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】大山 裕輔
【審査官】 山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−197855(JP,A)
【文献】 特開2014−053354(JP,A)
【文献】 特開2002−273653(JP,A)
【文献】 特開2011−125987(JP,A)
【文献】 特開2016−064459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 7/04
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にデバイスが形成されたウェーハの厚さ方向に伸長し該ウェーハの表面から所定深さ位置に至る複数の電極ポストが埋設されたウェーハの加工方法であって、
ウェーハの表面側を保持テーブルで保持する保持ステップと、
該保持テーブルで保持されたウェーハの裏面側を加工することで該ウェーハを所定の厚さへと薄化する薄化ステップと、
該薄化ステップを実施した後、ウェーハの裏面を撮像し撮像画像を作成し、該撮像画像に基づいて該裏面に露出していない電極ポストの有無を判定する判定ステップと、を備え、
該判定ステップでウェーハの裏面に露出していない電極ポストが有ると判定された場合に、ウェーハをさらに薄化する追加工ステップを実施する、
ことを特徴とする、ウェーハの加工方法。
【請求項2】
該判定ステップは、ウェーハが該保持テーブルで保持された状態で実施され、
該追加工ステップは、該ウェーハが該保持テーブルで保持された状態で遂行される、
ことを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等で構成されるウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスを有するチップは、表面に複数のデバイスが形成された略円板形状のウェーハが分割されて形成される。該複数のデバイスは、該ウェーハの表面に格子状に設定された分割予定ラインによって区画される複数の領域のそれぞれに形成される。複数のデバイスが形成された後、ウェーハは研削装置や研磨装置等により裏面側から加工されて所定の厚みへと薄化される。薄化された該ウェーハが切削装置等によって分割予定ラインに沿って切削されることで個々のチップへと分割される。
【0003】
デバイスを有するチップは携帯電話、パソコン等の各種電子機器に搭載され広く利用されている。各種の電子機器に対する小型化や薄型化の要求は高まり続けており、それに伴いチップの小型化や薄型化、チップの実装に要する面積の省面積化等も検討されている。
【0004】
近年、デバイスの集積度を高める技術として、複数のチップを積み重ねて実装する技術が実用化されている。さらに、複数の積み重なったチップ間の電気的な接続を省スペースに実現するために、チップを貫通する孔に埋め込まれた貫通電極(以下、電極ポストと呼ぶ)によりチップ間を電気的に接続する技術が実用化されている。特許文献1及び特許文献2には、積層されたチップ間を電極ポストで電気的に接続する技術が開示されている。
【0005】
電極ポストは、例えば、分割前のウェーハの表面から所定の深さの穴を形成し、該穴に導電材料を埋め込むことによって形成される。その後、ウェーハを裏面から加工して薄化する際に該穴の底部を除去し、該穴に埋め込まれた電極ポストを裏面側に露出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−53218号公報
【特許文献2】特開2005−136187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
導電材料が埋め込まれる該穴は、最終的に形成されるチップの仕上がり厚さと同程度の深さで形成されるが、各穴の深さにばらつきが存在する。よって、導電材料が埋め込まれた複数の該穴を有するウェーハの裏面を研削装置、研磨装置、または、バイト切削装置等の加工装置で加工して該ウェーハを設計値まで薄化しても、すべての穴の底部を除去できず、一部の電極ポストが裏面側に露出しない場合がある。
【0008】
そのため、ウェーハを薄化した際にすべての電極ポストがウェーハの裏面側に露出したか否かを確認する必要がある。従来、作業者がウェーハの裏面を目視して確認していたが、そのためには薄化が実施された場所からウェーハを動かさなければならず、さらに追加工が必要となったときにウェーハを元の場所に戻す必要があり、作業が煩雑となっていた。また、露出していない電極ポストを見落とす等の問題を生じていた。
【0009】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、薄化された後のウェーハの裏面に複数の電極ポストのすべてが露出しているか否かを効率良く判定できるウェーハの加工方法を提供することである。また、露出していない電極ポストがある場合にこれを確実に検出して追加工を実施し、すべての電極ポストを該裏面に露出できるウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、表面にデバイスが形成されたウェーハの厚さ方向に伸長し該ウェーハの表面から所定深さ位置に至る複数の電極ポストが埋設されたウェーハの加工方法であって、ウェーハの表面側を保持テーブルで保持する保持ステップと、該保持テーブルで保持されたウェーハの裏面側を加工することで該ウェーハを所定の厚さへと薄化する薄化ステップと、該薄化ステップを実施した後、ウェーハの裏面を撮像し撮像画像を作成し、該撮像画像に基づいて該裏面に露出していない電極ポストの有無を判定する判定ステップと、を備え、該判定ステップでウェーハの裏面に露出していない電極ポストが有ると判定された場合に、ウェーハをさらに薄化する追加工ステップを実施する、ことを特徴とする、ウェーハの加工方法が提供される。
【0011】
なお、本発明の一態様において、該判定ステップは、ウェーハが該保持テーブルで保持された状態で実施され、該追加工ステップは、該ウェーハが該保持テーブルで保持された状態で遂行されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係るウェーハの加工方法によると、ウェーハを所定の厚さへと薄化する薄化ステップを実施した後、加工された該ウェーハの裏面を撮像して撮像画像を作成し、該撮像画像に基づいて該裏面に露出していない電極ポストの有無を判定できる。該判定は、例えば、作成された撮像画像と、すべての電極ポストが露出している場合の撮像画像と、を照合することにより実施される。そのため、目視で判定するよりも短時間で正確な判定を実施できる。
【0013】
すべての電極ポストがウェーハの裏面側に露出しているか否かを素早く判定できるため、追加工が必要である場合に、該追加工を実施するとの判断を早急に下せる。そして、追加工を実施した後、露出していない電極ポストの有無を再度判定する際にも、該判定に要する時間を短縮できる。
【0014】
該判定を実施した結果、すべての電極ポストがウェーハの裏面に露出していることを確認できた場合、追加工を実施する必要はない。ここで、追加工の必要がないと判断される場合でも、追加工を実施しないとの判断を早急に下せるため、ウェーハを次の工程に送るまでに要する時間が短縮される。
【0015】
さらに、該判定には加工装置に備え付けられた撮像ユニットにより撮像された撮像画像が用いられるため、加工が実施された位置からウェーハを動かすことなく判定できる。ウェーハを目視する場合、そのためにウェーハを加工装置から取り出す等しなければならず、追加工を実施する場合にウェーハを再配置する作業が必要となる。しかし、本発明によると、そのような作業が不要となり加工プロセスの効率を高められる。
【0016】
以上のように、本発明の一態様により、薄化された後のウェーハの裏面に複数の電極ポストのすべてが露出しているか否か、効率良く判定できるウェーハの加工方法が提供される。また、露出していない電極ポストがある場合にこれを確実に検出して追加の加工を実施し、すべての電極ポストを該裏面に露出できるウェーハの加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(A)は、複数の電極ポストが埋め込まれたウェーハを示す断面模式図であり、図1(B)は、ウェーハの表面にサポートウェーハを配設する場合を示す断面模式図である。
図2】加工装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3(A)は、保持ステップを説明する側面図であり、図3(B)は、薄化ステップの一例を説明する側面図である。
図4】薄化ステップの他の一例を説明する断面図である。
図5図5(A)は、判定ステップを説明する側面図であり、図5(B)は、撮像画像の一例を示す模式図であり、図5(C)は、撮像画像の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る実施形態について説明する。まず、本実施形態に係るウェーハの加工方法の被加工物であるウェーハについて説明する。図1(A)は被加工物であるウェーハ1を示す断面模式図である。ウェーハ1の表面1aは、格子状に配列された分割予定ライン(不図示)で複数の領域に区画されており、区画された各領域にはIC、LSI等のデバイス(不図示)が形成されている。最終的にウェーハ1は該分割予定ラインに沿って分割されて、複数のチップが形成される。
【0019】
ウェーハ1は、例えば、シリコン、サファイア、ガラス、石英等の材料でなる、例えば、略円板形の基板である。半導体材料で構成されるウェーハを用いる場合、デバイスは、例えば、該ウェーハ1の一部を用いて形成される。ウェーハ1が半導体材料で構成されない場合、例えば、ウェーハ1の表面1aに半導体層を設け、該半導体層を加工してデバイスを形成する。
【0020】
ウェーハ1には、表面1a側に開口する所定の深さの複数の穴が設けられ、該穴のそれぞれに導電材料が導入され、ウェーハ1の厚さ方向に伸長した複数の電極ポスト3が形成されている。該穴への導電材料の導入は、電解めっき法、CVD法、蒸着法等により実施される。または、該導電材料を含むペーストを導入して固化させる。これらの方法で該穴に導電材料を導入した後、過剰に供給され穴に納まらなかった余分な導電材料を除去するために、ウェーハ1の表面1a側をCMP法等により平坦化する。
【0021】
該導電材料には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等の材料が用いられる。該電極ポスト3は、積層される各チップ間を電気的に接続するために用いられるので、該導電材料には、電気抵抗の低い材料を用いるとよい。
【0022】
ウェーハ1を裏面1b側から加工して所定の厚さに薄化する際、導電材料が導入された穴の底部を除去して該裏面1b側に該電極ポスト3を露出させるため、該穴はウェーハ1の薄化後の仕上がり厚さよりも深く形成される。
【0023】
本実施形態に係る加工方法では、ウェーハ1の裏面1bを加工する前に、図1(B)に示すように、該表面1aのデバイスを保護するためのサポートウェーハ5が該表面1aに貼着される。サポートウェーハ5としては、例えば、シリコンウェーハが用いられる。サポートウェーハ5に代えてウェーハ1の表面1aに保護テープを貼着してもよい。
【0024】
次に本実施形態に係るウェーハの加工方法を実施するのに適した加工装置について説明する。図2には、該加工装置の一例の斜視図が示されている。加工装置2は、ウェーハに研削加工、及び、研磨加工等の加工を実施できる装置である。
【0025】
加工装置2は、略直方体形状の台4を具備している。台4の上面の端部付近には、略直方体形状のコラム6が立設されている。コラム6の加工装置2の前面には、上下方向に伸長する二対のレール8及びレール10が設けられている。
【0026】
一方の対のレール8には粗研削ユニット12が粗研削ユニット送り機構14により上下方向(Z軸方向)に移動可能に装着されており、他方の対のレール10には仕上げ研削ユニット16が仕上げ研削ユニット送り機構18により上下方向に移動可能に装着されている。
【0027】
粗研削ユニット12の詳細な構成を、図2及び図3(B)を参照して説明する。粗研削ユニット12は、筒状のユニットハウジング20と、ユニットハウジング20中に回転自在に収容されたスピンドル22を回転駆動するモータ32と、を有する。スピンドル22の先端は、ユニットハウジング20の下面から外部に露出している。
【0028】
粗研削ユニット12は、さらに、スピンドル22の先端に固定された円板状のホイールマウント24と、ホイールマウント24の先端に着脱自在に装着された研削ホイール26と、を有する。研削ホイール26は、ホイールマウント24と概ね径が等しい円板状のホイール基台28と、ホイール基台28の下端面外周に環状に固着された複数の研削砥石30と、から構成されている。
【0029】
仕上げ研削ユニット16は、粗研削ユニット12と同様に構成される。ただし、仕上げ研削ユニット16が有する研削ホイールには、粗研削ユニット12が有する研削砥石と比較して、ウェーハを滑らかに研削するのに適した研削砥石が使用される。
【0030】
加工装置2は、図2に示す通り、コラム6の前に台4の上面と略平行なターンテーブル34を具備している。ターンテーブ34は、図示しない回転駆動機構によって矢印36で示す方向に回転される。ターンテーブル34上には、互いに円周方向に90度離間する4個の保持テーブル38が水平面内で回転可能に配置されている。
【0031】
該保持テーブル38の上部には多孔質部材38aが配設され、該多孔質部材38aの上面が保持面となる(図4参照)。保持テーブル38は、一端が吸引源(不図示)と接続された吸引路38bを内部に有する。該吸引路38bの他端は該多孔質部材38aに接続されている(図4参照)。保持テーブル38は、該多孔質部材38aを通して該保持面上に載せ置かれたウェーハ1に該吸引源により生じた負圧を作用させて、ウェーハ1を吸引保持する。
【0032】
ターンテーブル34に配設された4個の保持テーブル38は、ターンテーブル34が適宜回転することにより、ウェーハ搬入・搬出領域A、粗研削加工領域B、仕上げ研削加工領域C、研磨加工領域Dに順次移動される。各保持テーブル38は保持面に垂直な軸の周りにそれぞれ回転可能であり、ウェーハ1が研削等される際に回転してウェーハ1を回転させる。
【0033】
研磨加工領域Dには第1研磨ユニット40が配設されている。第1研磨ユニット40は、台4上に固定された静止ブロック(不図示)と、静止ブロックに装着されてX軸移動機構(不図示)によりX軸方向に移動可能なX軸移動ブロック(不図示)と、X軸移動ブロックに装着されてZ軸移動機構(不図示)によりZ軸方向に移動可能なZ軸移動ブロック(不図示)とを含んでいる。
【0034】
Z軸移動ブロックには筒状のユニットハウジング(不図示)が配設されており、ユニットハウジング中には、図4に示すように、スピンドル42が回転可能に収容されている。スピンドル42の先端は、ユニットハウジングの下面から外部に露出している。スピンドル42の先端には、円板状のホイールマウント44が固定されており、このホイールマウント44に対して着脱自在に研磨ホイール46が装着されている。
【0035】
研磨ホイール46は、ホイールマウント44と概ね径が等しい円板状の基台48と、基台48に貼着された研磨パッド50と、から構成される。この研磨ホイール46の基台48側がホイールマウント44に装着される。研磨パッド50は、例えば、ポリウレタンやフェルトに砥粒を分散させボンド剤で固定したフェルト材から形成されている。基台48及び研磨パッド50の中心部には、研磨液供給路52が形成されている。更に、研磨パッド50の研磨面(下面)には研磨液を保持する複数の溝(不図示)が形成されている。
【0036】
ウェーハ搬入・搬出領域Aと研磨加工領域Dとの間に、第2研磨ユニット40aが配設されている。第2研磨ユニット40aは、第1研磨ユニット40と同様に構成される。
【0037】
加工装置2の台4のコラム6とは反対側には、例えば、加工前のウェーハをストックする第1のカセット62と、例えば、加工後のウェーハをストックする第2のカセット64が着脱可能に装着される。
【0038】
ウェーハ搬送ロボット66は、第1のカセット62内に収容されたウェーハを仮置きテーブル68に搬出する。また、スピンナ洗浄ユニット70で洗浄された加工後のウェーハを第2のカセット64に搬送する。
【0039】
搬送ユニット72は、仮置きテーブル68からウェーハをウェーハ搬入・搬出領域Aに位置付けられた保持テーブル38に搬入する。また、加工後のウェーハを吸着して保持テーブル38からスピンナ洗浄ユニット70まで搬送する。搬送ユニット70はウェーハをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動可能である。
【0040】
加工装置2の粗研削ユニット12、仕上げ研削ユニット16、第1研磨ユニット40、及び、第2研磨ユニット40aの少なくとも一つは、さらに、被加工物の状態や加工位置を確認する際に使用される撮像ユニットを備える。そして、該撮像ユニットは本実施形態に係る加工方法の判定ステップでも使用される。該撮像ユニットは、例えば、棒状の筐体中に直線状に並んだ複数の撮像素子を備えるラインセンサ等で形成される。
【0041】
図5(A)に示されるように、撮像ユニット54は、棒状の筐体の長軸がウェーハ1に平行となるよう、該ウェーハ1の端部の上方に位置付けられる。撮像ユニット54は、水平面内を該筐体の該長軸に垂直な方向(図5(A)の矢印の方向)へ移動しながら加工後のウェーハ1を撮像して撮像画像を作成し、該撮像画像を加工装置2のコントローラ(制御部)56に送る。
【0042】
加工装置2は、図2に示すように、台4に接続されたコントローラ(制御部)56を有する。該コントローラ(制御部)56は、加工装置2の各構成要素を制御する機能を有する。また、後述の判定ステップでは、該コントローラ(制御部)56は、該撮像ユニット54から撮像画像を受け、該撮像画像に基づきウェーハ1の該裏面1b側にすべての電極ポスト3が露出しているか否かを判定する。なお、該コントローラ(制御部)56の構成と機能は、PC上にソフトウエアとして実現されてもよい。
【0043】
該コントローラ(制御部)56は、判定部58と、標準画像保存部60と、を有する。標準画像保存部60には、正しく加工されたウェーハ1の裏面1b側の撮像画像が標準画像として保存されている。後述の判定ステップでは、標準画像保存部60から読み出される該標準画像と、撮像ユニット54から送られる撮像画像と、を判定部58が比較し、該裏面に露出していない電極ポスト3の有無を判定する。
【0044】
露出していない電極ポスト3が無いと判定部58で判定されると、該コントローラ(制御部)56は、ウェーハ1を次のステップに送る。露出していない電極ポスト3が有ると該判定部58で判定されると、該撮像ユニット54が取り付けられている加工ユニット(研削ユニットまたは研磨ユニット)にウェーハを再度加工させる。なお、ウェーハを再度加工させた後には、再び撮像ユニット54に撮像画像を作成させ判定を実施するとよい。
【0045】
次に、本実施形態に係るウェーハの加工方法について説明する。まず、図3(A)に示すように、表面1aに複数のデバイスが形成されたウェーハ1を加工装置2のウェーハ搬入・搬出領域Aにある保持テーブル38で保持する保持ステップを実施する。ウェーハ1の表面1aには、予めサポートウェーハ5等の表面保護部材が貼着されており、ウェーハ1は、表面1a側を該保持テーブル38の保持面に向けて保持テーブル38上に載せ置かれて吸引保持される。
【0046】
次に、該保持テーブル38で保持されたウェーハ1の裏面1b側を加工することで該ウェーハ1を薄化する薄化ステップを実施する。該薄化ステップでは、ウェーハ1が薄化されるとともにウェーハ1の電極ポスト3が埋め込まれている穴の底部が除去されて、電極ポスト3がウェーハ1の裏面1b側に露出する。
【0047】
電極ポスト3を露出させる薄化ステップは、例えば、加工装置2の粗研削ユニット12、仕上げ研削ユニット16、第1研磨ユニット40、第2研磨ユニット40a等を用いて実施される。以下、これらの各ユニットにおけるウェーハ1の加工について説明する。
【0048】
まず、ターンテーブル34を回転させ、保持テーブル38を粗研削加工領域Bに送り、ウェーハ1を移動させる。そして、粗研削ユニット12により該ウェーハ1の裏面1bを粗研削する。図3(B)は、粗研削について説明する側面図である。
【0049】
粗研削では、まず、保持テーブル38と、研削ホイール26と、を図3(B)に示す矢印の方向にそれぞれ回転させる。そして、両者が回転している状態で、粗研削ユニット送り機構を作動させ研削ホイール26を下方向に加工送りする。そして、研削ホイール26が保持する研削砥石30がウェーハ1に接触すると、該ウェーハ1の裏面1b側が粗研削される。ウェーハ1が所定の厚さになるまで粗研削されたら、粗研削を終了させる。
【0050】
次に、加工装置2のターンテーブル34を回転させて、該保持テーブル38を仕上げ研削加工領域Cに送る。そして、仕上げ研削ユニット16により該ウェーハ1を仕上げ研削する。なお、仕上げ研削ユニット16による仕上げ研削は、粗研削ユニット12による粗研削と同様に実施される。
【0051】
仕上げ研削は、粗研削よりも遅い加工送り速度で実施され、研削後の被研削面が滑らかになるように実施される。ウェーハ1の裏面1bは、粗研削及び仕上げ研削により、チップの仕上がり厚さ程度の厚さに薄化される。
【0052】
仕上げ研削の後、ターンテーブル34を回転させて、該保持テーブル38を研磨加工領域Dに送る。そして、第1研磨ユニット40により該ウェーハ1の裏面1b側を研磨する。図4は、第1研磨ユニット40によるウェーハ1の裏面1b側の研磨を模式的に示す断面図である。
【0053】
保持テーブル38上に保持されたウェーハ1に研磨液供給路52を介して研磨液を供給しながら保持テーブル38と、研磨パッド50と、をそれぞれ図4に示した矢印の方向に回転させる。そして、Z軸移動機構を作動させてウェーハ1の裏面1bに研磨パッド50を接触させ、そのまま研磨パッド50をウェーハ1の裏面1bに向けて押し付けて研磨を実施する。
【0054】
次に、ターンテーブル34を回転させて、該保持テーブル38をウェーハ搬入・搬出領域Aに送る。そして、第2研磨ユニット40aにより該ウェーハ1をさらに研磨する。なお、第2研磨ユニット40aによる研磨は、第1研磨ユニット40による研磨と同様に実施される。ウェーハ1の裏面1bが第1の研磨ユニット40及び第2の研磨ユニット40aで実施される研磨によりさらに薄化されると、ウェーハ1の裏面1bの研削歪みが除去される。
【0055】
ここで、粗研削ユニット12で実施される研削、仕上げ研削ユニット16で実施される研削、第1研磨ユニット40で実施される研磨、または、第2研磨ユニット40aで実施される研磨のいずれかの加工において電極ポスト3が埋め込まれた穴の底部が除去される。そして、電極ポスト3がウェーハ1の裏面1b側に露出する。しかし、ウェーハ1に形成された該穴はその深さにばらつきを有し、所定の条件で加工を実施しても、複数の電極ポスト3のすべてがウェーハ1の裏面1b側に露出しない場合がある。
【0056】
ウェーハ1の裏面1b側に電極ポスト3が露出していなければ、ウェーハ1が分割されて形成された複数のチップを積層させて積層体を作成したとき、該電極ポスト3でチップ間を適切に接続できないため、該積層体は正しく機能しない。そのため、ウェーハ1に形成された電極ポスト3のすべてをウェーハ1の裏面1bに露出させなければならない。
【0057】
そこで、本実施形態に係るウェーハの加工方法においては、電極ポスト3を裏面1b側に露出させる薄化ステップを実施した後、判定ステップを実施する。該判定ステップでは、ウェーハ1の裏面1bを撮像し撮像画像を作成し、該撮像画像に基づいて該裏面1bに露出していない電極ポスト3の有無を判定する。
【0058】
上述のように、粗研削ユニット12、仕上げ研削ユニット16、第1研磨ユニット40、または、第2研磨ユニット40aには、撮像ユニット54が取り付けられている。該撮像ユニット54により、加工後のウェーハ1の裏面1b側を撮像して撮像画像を作成する。図5(A)は、撮像ユニット54を用いたウェーハ1の裏面1b側の撮像を示す側面図である。撮像ステップは、薄化ステップの直後に保持テーブル38にウェーハ1が保持された状態でそのまま実施される。
【0059】
判定ステップでは、まず、撮像ユニット54の棒状の筐体が、その長軸が該ウェーハ1に平行となるように向けられてウェーハ1の端部の上方に位置付けられる。そして、撮像ユニット54は、該筐体の該長軸に垂直な方向(図5(A)に示す矢印の方向)に水平面内を移動しながら加工後のウェーハ1を撮像して撮像画像を作成し、該撮像画像を加工装置2のコントローラ(制御部)に送る。
【0060】
図5(B)及び図5(C)に、撮像ユニット54により撮像される撮像画像の一例をそれぞれ示す。図5(B)は、ウェーハ1に形成された複数の電極ポスト3の一部がウェーハ1の裏面1b側に露出していない場合を示す撮像画像7であり、図5(C)は、すべての電極ポスト3がウェーハ1の裏面1b側に露出している場合の撮像画像9である。
【0061】
図5(C)に図示するような撮像画像9は、正常に薄化ステップが実施された状態を示す標準画像として予め加工装置2のコントローラ(制御部)56の標準画像保存部60に保存される。
【0062】
撮像ユニット54から該撮像画像を受ける該コントローラ(制御部)56の判定部58は標準画像保存部60と接続されており、撮像ユニット54から該撮像画像を受けた際に、該標準画像保存部60から図5(C)に示されるような標準画像を読み込む。そして、該撮像画像と、該標準画像と、を比較してすべての電極ポスト3をウェーハ1の裏面に露出できているか否かを判定する。
【0063】
該判定は、例えば、2つの画像の照合により実施される。該照合により2つの画像が一致していると判断される場合、判定部はウェーハ1の裏面1b側に露出していない電極ポスト3は無いと判定する。一方で、2つの画像が一致していないと判断される場合、判定部はウェーハ1の裏面1b側に露出していない電極ポスト3が有ると判定する。なお、2つの画像の照合においては、両者が完全に一致していなくてもよく、例えば、それぞれの電極ポスト3の形成位置の誤差の範囲において位置のずれが許容される。
【0064】
ウェーハ1の裏面1b側に露出していない電極ポスト3は無いと該判定部58が判定した場合、加工装置2はウェーハ1に対して該薄化ステップの次のステップを実施する。このように、薄化ステップが正常に行われ追加工の必要がない場合でも、本実施形態に係るウェーハの加工方法では、追加工の必要性が無いとの判断を早急に下せるため、本実施形態に係る加工方法によると工程を迅速化できる。
【0065】
ウェーハ1の裏面1b側に露出していない電極ポスト3が有ると該判定部58が判定した場合、保持テーブル38に保持されたままのウェーハ1に対して追加工を実施する。追加工は、すべての電極ポスト3をウェーハ1の裏面1b側に露出させるために実施される。追加工は、薄化ステップで使用された加工ユニットをそのまま使用して実施される。
【0066】
本実施形態に係るウェーハの加工方法では、判定や追加工の際に保持テーブル38やウェーハ1等を移動させる必要がなく、ウェーハ1に迅速に追加工を実施できる。追加工は、薄化ステップで実施した加工と同様の加工を、例えば、加工の時間を短くする等して実施する。追加工を実施した後は、上述の判定ステップを再度実施して、すべての電極ポスト3が露出したとの判定を得てから次のステップを実施する。
【0067】
本実施形態に係るウェーハの加工方法では、撮像ユニット54によりウェーハ1の裏面1bを撮像し撮像画像を作成し、該撮像画像に基づいて該裏面1bに露出していない電極ポスト3の有無を判定する。そのため、ウェーハ1を保持テーブル38から剥離して目視で作業者が判断する場合と比べて、迅速かつ確実に判定を実施できる。さらに、保持テーブル38を移動することなく判定できるため、追加工の実施が必要である場合でも、そのままの位置のウェーハ1に追加工を実施できる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、該判定部58の判定を受けて追加工を実施する場合、実施する追加工の程度を決定するために、複数の電極ポスト3のうち裏面1b側に露出した電極ポスト3の割合を導出してもよい。電極ポスト3が埋め込まれた穴の深さの一般的な分布を考慮すると、該割合が低いほど、最も浅い穴の底部の裏面1bからの距離が大きくなる。そのため、該割合と、必要な追加工の強度と、の間の相関関係を考慮して追加工の内容を決定できる。
【0069】
例えば、標準画像に映る電極ポスト3の数と、撮像ユニットにより作成された撮像画像に映る電極ポスト3の数と、を検出する。そして、全体に対する露出した電極ポスト3の割合を導出する。露出した電極ポスト3の割合が比較的低いのであれば、すべての電極ポスト3を露出させるために強度の高い追加工を実施すればよい。一方で、露出した電極ポスト3の割合が比較的高い場合は、強度の低い追加工を実施すればよい。
【0070】
このように撮像画像を用いて追加工の内容を決定できると、露出していない電極ポスト3を露出するのに最低限必要な程度の追加工を実施できるため、追加工にかかる時間的及び金銭的コストを低く抑えることができる。
【0071】
また、本発明の一態様では、判定ステップと、再加工と、を薄化ステップとは異なる場所で実施してもよい。例えば、薄化ステップとして仕上げ研削を実施した場合、判定ステップを研磨後に行ってもよく、さらに再加工を粗研削から実施してもよい。
【0072】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0073】
1 ウェーハ
1a 表面
1b 裏面
3 電極ポスト
5 サポートウェーハ
7,9 撮像画像
2 加工装置
4 台
6 コラム
8,10 レール
12 粗研削ユニット
14 粗研削ユニット送り機構
16 仕上げ研削ユニット
18 仕上げ研削ユニット送り機構
20 ユニットハウジング
22 スピンドル
24 ホイールマウント
26 研削ホイール
28 ホイール基台
30 研削砥石
32 モータ
34 ターンテーブル
36 矢印
38 保持テーブル
38a 多孔質部材
38b 吸引路
40,40a 研磨ユニット
42 スピンドル
44 ホイールマウント
46 研磨ホイール
48 基台
50 研磨パッド
52 研磨液供給路
54 撮像ユニット
56 コントローラ(制御部)
58 判定部
60 標準画像保存部
62,64 カセット
66 ウェーハ搬送ロボット
68 仮置きテーブル
70 スピンナ洗浄ユニット
72 搬送ユニット
図1
図2
図3
図4
図5