特許第6707369号(P6707369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6707369シリコーン材料、硬化性シリコーン組成物、および光デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707369
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】シリコーン材料、硬化性シリコーン組成物、および光デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20200601BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08L83/05
   H01L23/30
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-40279(P2016-40279)
(22)【出願日】2016年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-191038(P2016-191038A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2019年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-70211(P2015-70211)
(32)【優先日】2015年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 伸
(72)【発明者】
【氏名】飯村 智浩
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−144360(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/030262(WO,A1)
【文献】 特開2012−197409(JP,A)
【文献】 特開2004−292807(JP,A)
【文献】 特開2009−062446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08G 77/00− 77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線光電子分光法(ESCA)によるシリコーン材料表面の元素組成百分率において、(i)炭素原子の元素組成百分率が61.566.7atom%であるか、(ii)炭素原子の元素組成百分率とケイ素原子の元素組成百分率の比(C/Si)が3.44.2であるか、または(iii)前記(i)および(ii)のいずれも満たし、前記シリコーン材料が、
(A)平均組成式:
SiO[(4−a)/2]
(式中、Rは独立に、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、但し、アルケニル基は全Rの1〜20モル%であり、アリール基は全Rの多くとも40モル%であり、aは1≦a<2を満たす数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜5モルとなる量}、および
(C)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物の硬化を促進する量)
から少なくともなる硬化性シリコーン組成物の硬化により形成されていることを特徴とするシリコーン材料。
【請求項2】
シリコーン材料が光学材料である、請求項1に記載のシリコーン材料。
【請求項3】
シリコーン材料が光素子の封止材である、請求項1に記載のシリコーン材料。
【請求項4】
請求項1に記載のシリコーン材料で光素子を封止してなる光デバイス。
【請求項5】
光素子がLEDである、請求項に記載の光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン材料、それを形成するための硬化性シリコーン組成物、および前記シリコーン材料を有する光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン材料は透明性が優れ、耐熱性や耐候性も優れることから、レンズ材料、あるいは発光ダイオード(LED)の封止材として使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、近年、LEDの高輝度化に伴い、シリコーン材料といえども光や熱により透明性が低下し、クラックが発生するという課題があることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−314139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光および熱に対して安定であり、透過率の低減やクラックが起こり難いシリコーン材料を提供することにある。また、本発明の他の目的は、このようなシリコーン材料を形成する硬化性シリコーン組成物を提供することにあり、また、このようなシリコーン材料を用いた、信頼性が優れる光デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシリコーン材料は、X線光電子分光法(ESCA)によるシリコーン材料表面の元素組成百分率において、(i)炭素原子の元素組成百分率が50.0〜70.0atom%であるか、(ii)炭素原子の元素組成百分率とケイ素原子の元素組成百分率の比(C/Si)が2.0〜5.0であるか、または(iii)前記(i)および(ii)のいずれも満たすことを特徴とする。
【0007】
このシリコーン材料は、その構造中にSi−R−Si結合(式中、Rはアルキレン基またはアリーレン基である。)を有することが好ましく、このシリコーン材料は光学材料、特に、光素子の封止材であることが好ましい。
【0008】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、硬化して、上記のようなシリコーン材料を形成するものであり、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基と少なくとも1個のケイ素原子結合アリール基を有するオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、およびヒドロシリル化反応用触媒からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の光デバイスは、上記のシリコーン材料で光素子を封止してなることを特徴とし、好ましくは、前記光素子がLEDであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシリコーン材料は、光および熱に対して安定であり、透過率の低減やクラックが起こり難いという特徴がある。また、本発明のシリコーン組成物は、このようなシリコーン材料を形成するという特徴がある。さらに、本発明の光デバイスは、信頼性が優れるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の光デバイスの一例であるチップオンボード(COB)型のLEDデバイスの断面図である。
図2】本発明の光デバイスの一例である他のLEDデバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(シリコーン材料)
本発明のシリコーン材料は、X線光電子分光法(ESCA)によるシリコーン材料表面の元素組成百分率において、
(i)炭素原子の元素組成百分率が50.0〜70.0atom%であるか、
(ii)炭素原子の元素組成百分率とケイ素原子の元素組成百分率の比(C/Si)が2.0〜5.0であるか、または
(iii)前記(i)および(ii)のいずれも満たすことを特徴とする。
【0013】
シリコーン材料表面のX線光電子分光法(ESCA)による原子組成百分率における炭素原子の割合は50.0〜70.0atom%、好ましくは、60.0〜68.0atom%である。これは、炭素原子の割合が上記範囲の下限以上であれば、光および熱に安定でシリコーン材料の透過率低減が起こりづらく、高耐久のLEDデバイスが作製できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、シリコーン材料のクラックが起こりにくく、高耐久のLEDデバイスが作製できるからである。
【0014】
また、シリコーン材料表面のX線光電子分光法(ESCA)による原子組成百分率における、炭素原子の元素組成百分率とケイ素原子の元素組成百分率の比(C/Si)は2.0〜5.0であり、好ましくは、3.0〜4.5である。これは、この比(C/Si)が上記範囲の下限以上であれば、高靱性付与によるクラックの発生抑制できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、光および熱による組成分解を抑制できるからである。
【0015】
また、シリコーン材料は、その構造中にSi−R−Si結合を有することが好ましい。これは、このような結合を有するシリコーン材料は、光および熱による劣化、およびLEDの点灯・消灯を繰り返すときに生じる内部圧力によるダメージを緩和することができるからである。
【0016】
式中、Rはアルキレン基またはアリーレン基である。このアルキレン基としては、メチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、イソブチレン基等の炭素数2〜12のアルキレン基が挙げられる。また、このアリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等の炭素数6〜12のアリーレン基が挙げられる。
【0017】
このような本発明のシリコーン材料の形状は限定されず、例えば、シート状、フィルム状、ファイバー状、板状、球状、半球状、凸レンズ状、凹レンズ状、フレネルレンズ状、円柱状、円筒状が挙げられる。また、本発明のシリコーン材料は単体で使用することもできるが、例えば、光デバイスにおける光素子の封止材、接着材、被覆材としても用いることができ、光デバイスにおけるレンズや、太陽電池における保護材や集光レンズとして用いることもできる。
【0018】
(硬化性シリコーン組成物)
本発明のシリコーン材料を形成する硬化性シリコーン組成物の硬化機構は限定されず、例えば、付加反応、縮合反応、ラジカル反応が例示され、好ましくは、付加反応である。
【0019】
付加反応で硬化する硬化性シリコーン組成物は、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基と少なくとも1個のケイ素原子結合アリール基を有するオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、およびヒドロシリル化反応用触媒から少なくともなる。
【0020】
このような硬化性シリコーン組成物としては、
(A)平均組成式:
SiO[(4−a)/2]
(式中、Rは独立に、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、但し、アルケニル基は全Rの1〜20モル%であり、アリール基は全Rの多くとも40モル%であり、aは1≦a<2を満たす数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜5モルとなる量}、および
(C)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物の硬化を促進する量)
から少なくともなるものが好ましい。
【0021】
(A)成分は本組成物の主剤であり、平均組成式:
SiO[(4−a)/2]
で表されるオルガノポリシロキサンである。
【0022】
式中、Rは独立に、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、ピレニルエチル基等のアラルキル基;およびこれらのアリール基またはアラルキル基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、上式中、全Rの1〜20モル%、好ましくは、1〜15モル%、または2〜15モル%は前記アルケニル基である。これは、アルケニル基の含有量が上記範囲の下限以上であると、本組成物が十分に硬化するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、本組成物を硬化して得られる硬化物の物理特性が良好であるからである。また、上式中、全Rの多くとも40モル%、好ましくは、多くとも35モル%、または多くとも30モル%は前記アリール基であり、一方、少なくとも1モル%、少なくとも5モル%、または少なくとも10モル%である。これは、アリール基の含有量が上記範囲の上限以下であると、本組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性が良好であり、本組成物により光素子を封止した光デバイスの信頼性を向上させることができるからであり、一方、上記範囲の上限以上であると、本組成物により光素子を封止した光デバイスの発光効率を向上させることができるからである。
【0023】
式中、aは1≦a<2を満たす数であり、好ましくは、1.2≦a<2を満たす数、1.3≦a<2を満たす数、あるいは、1.4≦a<2を満たす数である。これは、aが上記範囲の下限以上であると、本組成物により光素子を封止した光デバイスの信頼性を向上させることができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、本組成物を硬化して得られる硬化物の物理的特性が良好であるからである。
【0024】
このような(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、樹枝状が挙げられ、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、樹枝状である。(A)成分としては、これらの分子構造を有する2種以上のオルガノポリシロキサンを混合してもよい。
【0025】
(B)成分は本組成物の架橋剤であり、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。(B)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、樹枝状が挙げられ、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、樹枝状である。(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の結合位置は限定されず、例えば、分子鎖末端および/または分子鎖側鎖が挙げられる。また、(B)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、(B)成分の粘度は限定されないが、25℃における粘度が1〜10,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、1〜1,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0026】
このような(B)成分のオルガノポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1−(3−グリシドキシプロピル)−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジ(3−グリシドキシプロピル)−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−(3−グリシドキシプロピル)−5−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリメトキシシランの加水分解縮合物、(CH)HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH)HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とからなる共重合体、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。
【0027】
(B)成分として、さらに次のようなオルガノシロキサンも例示される。なお、式中、Me、Phは、それぞれ、メチル基、フェニル基を示し、mは1〜100の整数であり、nは1〜50の整数であり、b、c、d、eはそれぞれ正の数であり、ただし、一分子中のb、c、d、eの合計は1である。
HMeSiO(PhSiO)SiMe
HMePhSiO(PhSiO)SiMePhH
HMePhSiO(PhSiO)(MePhSiO)SiMePhH
HMePhSiO(PhSiO)(MeSiO)SiMePhH
(HMeSiO1/2)(PhSiO3/2)
(HMePhSiO1/2)(PhSiO3/2)
(HMePhSiO1/2)(HMeSiO1/2)(PhSiO3/2)
(HMeSiO1/2)(PhSiO2/2)(PhSiO3/2)
(HMePhSiO1/2)(PhSiO2/2)(PhSiO3/2)
(HMePhSiO1/2)(HMeSiO1/2)(PhSiO2/2)(PhSiO3/2)
【0028】
(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜5モルの範囲内となる量であり、好ましくは、0.5〜2モルの範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物が十分に硬化するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、シリコーン材料の耐熱性が向上するからである。
【0029】
(C)成分は本組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒であり、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、好ましくは、白金系触媒である。この白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体等の白金系化合物が例示される。
【0030】
(C)成分の含有量は本組成物の硬化を促進する量であり、好ましくは、本組成物に対して、この触媒中の金属原子が質量単位で0.01〜1,000ppmの範囲内となる量である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物の硬化が十分に進行しなくなるおそれがあるからであり、一方、上記範囲の上限を超えても硬化が著しく促進されるものではなく、むしろ硬化物に着色等の問題を生じるおそれがあるからである。
【0031】
本組成物には、常温での可使時間を延長し、保存安定性を向上させるための任意の成分として、(D)ヒドロシリル化反応抑制剤を含んでもよい。このような(D)成分としては、1−エチニルシクロヘキサン−1−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、および2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、および3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、および1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシロキサンオリゴマー;ジメチルビス(1,1−ジメチル−2−プロピンオキシ)シラン、およびメチルビニルビス(1,1−ジメチル−2−プロピンオキシ)シラン等のアルキンオキシシラン、ならびにトリアリルイソシアヌレート系化合物が例示される。
【0032】
(D)成分の含有量は限定されないが、好ましくは、上記(A)成分〜(C)成分の合計100質量部に対して0.01〜3質量部の範囲内、または0.01〜1質量部の範囲内である。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、本組成物の適度な可使時間を有し、一方、上記範囲の上限以下であると、適度な作業性を有するからである。
【0033】
また、本組成物には、その接着性を向上させるための(E)接着付与剤を含有してもよい。この(E)成分としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基が好ましい。また、(E)成分のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;3,4−エポキシブチル基、7,8−エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基;3−メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。(E)成分は本組成物中のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を有することが好ましい。また、各種の基材に対して良好な接着性を付与できることから、(E)成分は一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。(E)成分としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、アルキルシリケートが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーあるいはアルキルシリケートの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。(E)成分としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、およびケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物またはシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。(E)成分は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1〜500mPa・sの範囲内であることが好ましい。また、本組成物において、(E)成分の含有量は限定されないが、本組成物の合計100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0034】
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の無機質充填剤;ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末;蛍光体、耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、溶剤等を含有してもよい。
【0035】
本組成物は室温もしくは加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには加熱することが好ましい。この加熱温度としては、50〜200℃の範囲内であることが好ましい。
【0036】
(光デバイス)
本発明の光デバイスは、上記のシリコーン材料により光素子が封止されてなることを特徴とする。本発明の光デバイスにおける光素子は限定されないが、フォトカプラー、発光ダイオード、固体撮像素子が例示され、好ましくは、発光ダイオードである。このような本発明の光デバイスを図1および図2を用いて詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の光デバイスの一例であるチップオンボード(COB)型のLEDデバイスの断面図を示す。図1のCOB型LEDデバイスでは、LED2はCOB用の基板1上にダイボンドにより搭載され、シリコーン材料3により封止されている。また、基板1上のLED2周囲には、LED2から出る光を効率よく反射するように光反射材(図示せず)が形成されていてもよい。
【0038】
図2は、本発明の光デバイスの一例である他のLEDデバイスの断面図を示す。図2のLEDデバイスでは、LED2がリードフレーム4’上にダイボンドにより搭載され、リードフレーム4とボンディングワイヤ5により電気的に接続されている。LED2はシリコーン材料3により封止されている。また、リードフレーム4、4’上のLED2周囲には、LED2から出る光を効率よく反射するように光反射材6が形成されている。
【0039】
図1のLEDデバイスにおいて、基板1はアルミニウムや銅等の金属製基板であってもよい、その金属製基板の表面に絶縁層(図示せず)を介して回路が形成されている。また、基板1として非金属製基板を用いる場合には、絶縁層を形成する必要はない。このような非金属製基板としては、ガラスエポキシ基板、ポリブチレンテレフタレート(PBT)基板、ポリイミド基板、ポリエステル基板、窒化アルミニウム基板、窒化ホウ素基板、窒化ケイ素基板、アルミナセラミックス基板、ガラス基板、フレキシブルガラス基板が例示される。さらには、この基板1として、絶縁樹脂層を有するアルミニウム製基板または銅製基板からなるハイブリッド基板や、プリント配線したシリコン基板、炭化ケイ素基板、サファイア基板を用いることもできる。
【0040】
図2のLEDデバイスにおいて、リードフレーム4、4’には、電気伝導性の高い、銀、銅、およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属、または、銀、銅、およびアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む合金が用いられる。さらに、このリードフレーム4、4’には、LED2を搭載する部分を露出するように光反射材6が形成されていることが好ましい。
【0041】
図1では、LED2が基板1上に1個のみ図示されているが、このLED2を基板1上に複数搭載してもよい。
【実施例】
【0042】
本発明のシリコーン材料、硬化性シリコーン組成物、および光デバイスを実施例により詳細に説明する。
【0043】
[X線光電子分光法(XPS)による表面の原子組成百分率の測定]
X線光電子分光(X−ray Photoelectron Spectroscopy)によりシリコーン材料表面の原子組成百分率を測定した。なお、測定は、Kratos Analytical社製のAXIS Novaを用いた。また、使用したX線の励起源は、Al−K α線を使用し、150W、モノクロメーターを使用し、分析面積は0.4mm×0.9mmとした。サーベイスキャン測定によって、C1s、O1s、N1s、F1sのピーク面積を求め、各元素に対するXPSの相対感度にて補正してうえで、原子組成百分率を求めた。得られた原子組成百分率の値から、C原子の比率、およびSi原子に対するC原子の割合を求めた。
【0044】
[硬化性シリコーン組成物の調製]
下記の成分を用いて、表1に示した組成(質量部)で硬化性シリコーン組成物を調製した。なお、表1中、(C)成分の含有量を、質量単位における、硬化性シリコーン組成物に対する白金金属の含有量(ppm)で示した。また、表1中のSiH/Viは、硬化性シリコーン組成物において、(A)成分中のビニル基1モルに対する、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル数の値である。なお、式中、Me、Ph、Vi、Epはそれぞれ、メチル基、フェニル基、ビニル基、3−グリシドキシプロピル基を表す。
【0045】
(A)成分として、次の成分を用いた。
(a−1)成分:平均組成式:
Me1.62Vi0.06Ph0.26SiO1.03
で表されるオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=3.1モル%、フェニル基の含有量=13.4モル%)
(a−2)成分:平均組成式:
Me1.14Vi0.14Ph0.26SiO1.22
で表されるオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=9.1モル%、フェニル基の含有量=16.9モル%)
(a−3)成分:平均組成式:
Me1.17Vi0.13Ph0.23SiO1.23
で表されるオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=8.5モル%、フェニル基の含有量=15.0モル%)
(a−4)成分:平均組成式:
Me0.94Vi0.18Ph0.44SiO1.22
で表されるオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=11.5モル%、フェニル基の含有量=28.2モル%)
(a−5)成分:平均組成式:
Me0.68Vi0.34Ph0.73SiO1.11
で表されるオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=19.4モル%、フェニル基の含有量=41.7モル%)
(a−6)成分:平均組成式:
Me1.78Vi0.04SiO1.09
で表されるオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=2.2モル%)
【0046】
(B)成分として、次の成分を用いた。
(b−1)成分:平均単位式:
(MeHSiO1/2)0.65(SiO4/2)0.35
で表されるオルガノポリシロキサンレジン
(b−2)成分:式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン
(b−3)成分:平均単位式:
(MeHSiO1/2)0.6(PhSiO3/2)0.4
で表されるオルガノポリシロキサンレジン
(b−4)成分:式:
MeSiO(MeHSiO)50SiMe
で表されるオルガノポリシロキサン
【0047】
(C)成分として、次の成分を用いた。
(c−1)成分:白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサンの溶液(白金として0.1質量%含有する溶液)
【0048】
(D)成分として、次の成分を用いた。
(d−1)成分:1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン
(d−2)成分:1−エチニルシクロヘキサノール
【0049】
(E)成分として、次の成分を用いた。
(e−1)成分:25℃における粘度が30mPa・sである分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの縮合反応物からなる接着付与剤
(e−2)成分:平均単位式:
(MeViSiO1/2)0.18(MeEpSiO2/2)0.28(PhSiO3/2)0.54
で表されるオルガノポリシロキサンレジンからなる接着付与剤
【0050】
得られた硬化性シリコーン組成物1〜6をそれぞれ120℃の熱プレスで5分間加熱して硬化させた後、150℃のオーブン中でさらに1時間加熱して、シリコーン材料1〜6を作製した。これらのシリコーン材料表面の元素組成比をX線光電子分光法にて測定した。また、シリコーン材料の構造中のSi−C−Si結合の有無を、13C−核磁気共鳴スペクトル分析により確認した。それらの結果を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
[実施例1]
セラミック基板にLEDチップを実装したセラミックLED基板を圧縮成型機に設置し、硬化性シリコーン組成物1を金型キャビティに流し込み、120℃5分間加熱圧縮成型することでLEDチップ上にドーム状の封止材を成型した。さらに、150℃で1時間熱硬化を行い、LEDデバイスを作製した。得られたLEDデバイスを85℃85%RHの恒温恒湿オーブン中で700mAの電流を流し、通電点灯テストを行った。規定時間(50時間)以内に、封止材の透過率の低減によるLEDの輝度の低下(通電点灯試験での初期の輝度の90%以下に低下)がなく、また、シリコーン材料にクラックは観察されなかった。
【0053】
[実施例2]
硬化性シリコーン組成物2を用いて、実施例1と同様の方法でLEDデバイスを作製し、通電点灯テストを行った。規定時間(50時間)以内に、封止材の透過率の低減によるLEDの輝度の低下や、シリコーン材料にクラックは観察されなかった。
【0054】
[実施例3]
硬化性シリコーン組成物3を用いて、実施例1と同様の方法でLEDデバイスを作製し、通電点灯テストを行った。規定時間(50時間)以内に、封止材の透過率の低減によるLEDの輝度の低下や、シリコーン材料にクラックは観察されなかった。
【0055】
[実施例4]
硬化性シリコーン組成物4を用いて、実施例1と同様の方法でLEDデバイスを作製し、通電点灯テストを行った。規定時間(50時間)以内に、封止材の透過率の低減によるLEDの輝度の低下や、シリコーン材料にクラックは観察されなかった。
【0056】
[比較例1]
硬化性シリコーン組成物5を用いて、実施例1と同様の方法でLEDデバイスを作製し、通電点灯テストを行った。規定時間(50時間)以内に、封止材の透過率の低減によりLEDデバイスの輝度が低下した。
【0057】
[比較例2]
硬化性シリコーン組成物6を用いて、実施例1と同様の方法でLEDデバイスを作製し、通電点灯テストを行った。しかし、規定時間(50時間)以内でシリコーン材料にクラックが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のシリコーン材料は、光および熱に対して安定であり、透過率の低減やクラックが起こり難いので、高輝度で高耐久性が求められるLEDの封止材として好適である。
【符号の説明】
【0059】
1 基板
2 LED
3 シリコーン材料
4、4’ リードフレーム
5 ボンディングワイヤ
6 光反射材
図1
図2