(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成形材料から形成する成形品の曲げ靭性を改良する方法であって、ポリオキシメチレン又はコポリマー中に存在する繰り返し単位の数のうち50%を超える繰り返し単位がオキシメチレン単位である当該コポリマーを含む成形材料中に、該成形材料から形成する成形品の曲げ靭性を改良するため、ポリ−1,3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフラン又はこれらの混合物を導入する工程を含み、20,000〜200,000g/molの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有するポリオキシメチレンコポリマーであって、ポリオキシメチレンコポリマーに対して少なくとも90質量%が、モノマーとしてのトリオキサン及び1,3−ジオキセパン及び調節剤としてのブチラールから誘導され、1,3−ジオキセパンの割合がポリオキシメチレンコポリマーに対して1〜30質量%の範囲であり、またブチラールの割合がポリオキシメチレンコポリマーに対して0.01〜2.5質量%の範囲にある(質量%はポリオキシメチレンコポリマーに対するものである)ものを使用し、分子量をゲル浸透クロマトグラフィー又はサイズ排除クロマトグラフィーによって測定することを特徴とする方法。
ポリ−1,3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフラン又はこれらの混合物を、ポリオキシメチレン又はコポリマー中に存在する繰り返し単位の数のうち50%を超える繰り返し単位がオキシメチレン単位である当該コポリマー、及びポリ−1,3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフラン又はこれらの混合物の総量に対して、1〜16質量%の量で使用する請求項1又は2に記載の方法。
前記ポリオキシメチレンコポリマーの質量平均モル質量(Mw)が、30,000〜60,000g/mol、及び/又は数平均モル質量(Mn)が5,000〜18,000g/molである請求項1に記載の方法。
ポリマーに対して少なくとも90質量%の成分B1.1は、モノマーとしてのトリオキサン及び任意の1,3−ジオキセパンから誘導されるものであって、1,3−ジオキセパンの割合が、ポリマーに対して1〜5質量%である請求項7に記載の方法。
ポリマーに対して少なくとも90質量%の成分B1.2は、モノマーとしてのトリオキサン及び任意 1,3−ジオキセパンから誘導されるものであって、1,3−ジオキセパンの割合が、ポリマーに対して2.7〜30質量%である請求項7又は8に記載の方法。
成分B1.1として、10〜90質量%のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーで60,000g/molを超えて200,000g/molまでの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有するものと、成分B1.2として、10〜90質量%のポリオキシメチレンコポリマーで10,000〜60,000g/molの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有するものとを含む異なるポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーの混合物を含む成形材料から形成する成形品の曲げ靭性を改良する方法であって、該成形材料中にポリ−1,3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフラン又はこれらの混合物を含ませる工程を包含することを特徴とする方法。
【背景技術】
【0002】
金属成形体及びセラミック成形体は、金属又はセラミック粉末と有機バインダー材料とを含む熱可塑性成形材料の射出成形によって製造することができる。このバインダー材料には、高度に金属又はセラミック粉末が充填(loaded)されている。射出成形した後に、このように充填されている熱可塑性成形材料を押出成形又はプレスしてグリーン体(green body)を形成し、有機バインダーを除去し、バインダーを取り除いたグリーン体を焼結するものである。適切なポリマー材料としては、商標Catamold(登録商標)で知られているポリオキシメチレンをベースとするものがある。
【0003】
商標Catamold(登録商標)で市販されている熱可塑性成形材料は無機粉末、特に金属粉末又はセラミック粉末を含んでいる。この粉末は、典型的には、最初に、ポリエチレンの薄い層が被覆され、次いで、ポリオキシメチレンバインダーに配合されている。このようなCatamold顆粒を、次に、射出成形により加工してグリーンパーツ(green part)を得、バインダーを除去してブラウンパーツ(brown part)に変換し、次いで、焼結し焼結成形体を得ている。このプロセスは金属又はセラミック射出成形(MIM又はCIM)として知られており、これにより、複雑な形状の金属又はセラミック成形体の製造が可能である。
【0004】
ポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーを用いて作製したグリーンパーツは非常に良好な機械的特性、特に寸法安定性を有している。
【0005】
バインダーの除去は、多くの場合、110〜140℃の温度で、酸性の雰囲気、例えばHNO
3雰囲気に暴露して行う。この結果、POMバインダーの分解が起こる。POMの酸性解重合(depolymerization)により、バインダーを完全に除去することが可能となる。上記無機粒子上に設けた薄いポリエチレン被覆により、得たブラウンパーツ内の無機粒子が相互に結合することになる。
【0006】
そのブラウンパーツを約1300〜1500℃の範囲の温度で、焼結炉を用いて焼結し、所望の金属成形体又はセラミック成形体を得ることが好ましい。
【0007】
WO2008/006776は、金属成形体を生産するための結合剤(binding agent)を含有する熱可塑性素材に関する。バインダーは、1種以上のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマー、1種以上のポリオレフィン、及びポリ−1,3−ジオキセパン又はポリ−1、3−ジオキソラン又はこれらの混合物を含んでいる。バインダーにこの3種類の成分を使用することによって、バインダーの流動性を改良することができ、また、脱−結合剤の際に、残渣を生じることなくバインダーを除去することができると記載されている。したがって、上記材料は複雑な形状の射出成形体を製造するのに特に適切であると言われている。
【0008】
具体的には、ポリ−1,3−ジオキセパン及びポリ−1、3−ジオキソランが、典型的には、ポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーをベースとするバインダー材料中で流動性向上剤として使用されている。
【0009】
WO2013/113879には、5000〜15000g/molの範囲の質量平均モル質量を有するポリオキシメチレンコポリマーが開示されており、高分子量を有するポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマー用の粘度調整添加剤として使用されている。
【0010】
短鎖ポリオキシメチレン又はそのコポリマーは、一般的には、非常に良好な流動挙動を示すが、脆性が増して、ひいては破断点伸びが小さくなる可能性がある。
【0011】
WO2013/052024には、さまざまの分子量のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーを用いて生成する混合物、及び該混合物を金属又はセラミック成形体の製造に使用する方法が開示されている。質量平均モル質量が50000〜400000g/molの範囲にあるポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーが、質量平均モル質量が5000〜15000g/molの範囲にあるポリオキシメチレンコポリマーと混合されている。
【0012】
低分子量ポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマー、又は低分子量ポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーの混合物のいずれかを有する成形材料から製造されたパーツ(部品)は、流動性が改善する。しかしながら、得られる成形品の機械的特性については、要求の厳しい用途に用いるには、改善が必要である。金型から成形品を取り出すために、成形体はある程度の可撓性(flexibility)を示さなければならない。これと同時に、その曲げ靭性(flexural toughness)は、金型から取り出す際に成形品に悪影響を及ぼさないよう十分に高いものでなければならない。
【0013】
WO91/04285には、非結晶性ポリ−1,3−ジオキセパン又はポリ−1,3−ジオキソランを結晶性オキシメチレンポリマーとブレンドするときの相手方として使用し、元の結晶性材料の衝撃特性を改善する方法が開示されている。しかし、曲げ特性については一切言及されていない。
【0014】
グリーン体を型から取り出す際、その取扱い(曲げ操作)が甚だしいときには、微小クラックが形成してしまうおそれがあり、その大きさによっては、焼結してもクラックをふさぐことができない可能性がある。その結果、微小クラックが最終の成形部品に残ってしまい、機械的特性が不満足なものとなる場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によれば、ポリオキシメチレン又は多数のオキシメチレン単位を含有するコポリマーを含む成形材料中に、該成形材料から形成する成形品の曲げ靭性(flexural toughness)を改良するため、ポリ−1,3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフラン又はこれらの混合物を使用することができることが分かった。この効果は、射出成形パーツ(部品)又は成形品を製造するのに十分低い粘度を示す各種の成形材料で観察することができる。したがって、ポリ−1,3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフラン又はこれらの混合物は、流動挙動を改善するために成形材料に含ませるものではなく、曲げ靭性を向上させるためである。特には、破断点伸びを増大させるために成形材料に添加するものである。好ましいのは、粘度が十分に低い成形材料から出発した場合に、ポリ−1、3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフラン又はこれらの混合物を添加することによって、曲げ弾性率及び破断点伸びの両方が増加することである。
【0023】
また一方、破断点伸びが増加することは、実際の用途における主な利点である。剛性(stiffness)と靭性(toughness)とは、異なる特性である。剛性/硬直性(rigid)のある材料が靱性を有するものになると言うことはできない。剛性と靭性とは直線的に比例しない。
【0024】
剛性は、ひずみを増加させて適用することによる材料内での応力増加率の尺度である。これは、応力−ひずみ曲線の、初期の直線部分における勾配である。
【0025】
靭性は、材料が破損する前に、曲げ(flexing)又は張力(tension)によって材料に伝達され得る総エネルギーである。これは、応力−ひずみ曲線全体の下方の面積に換算できる。破断点伸びは、材料の靱性に関する一層優れた指標となる。同様の剛性を有する材料の場合、破断点伸びが増加すると、靱性が増大していることが示される。
ポリ(1,3−ジオキセパン)を使用するときは、大抵の場合、曲げ弾性率に対する影響はわずかであるが、破断点伸びについては、明らかに、増加させるものである。この結果、曲げ靱性が増大することになる。
【0026】
本発明によれば、今や、ポリ−1,3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフラン又はこれらの混合物の新たな用途が見出された。
【0027】
ポリ−1,3−ジオキセパンは、ポリブタンジオールホルマール又はポリBUFOとして知られており、構造−O−CH
2−O−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−の反復単位をもつものである。ポリ−1,3−ジオキソランは構造−O−CH
2−O−CH
2−CH
2−の繰り返し単位を有している。1,3−ジオキセパン及びブタンジオールホルマールの用語は、この特許出願全体を通して同じ意味で使用する。
【0028】
ポリ−1,3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフランの分子量(質量平均)は、2000〜150000g/molの範囲であることが好ましく、より好ましいのは5000〜50000g/molの範囲、特に好ましいのは7000〜35000g/molの範囲である。これら数値は、ポリ−1,3−ジオキセパンについて特に有利である。ポリ−1,3−ジオキソランについては、30000〜120000g/mol、特に好ましくは40000〜110000g/molの範囲の分子量(質量平均)も採用することができる。
【0029】
更なる説明のために、WO2008/006776号の成分B
3)についての開示を参照することができる。
【0030】
分子量、すなわち、モル質量、Mn及びMwについては、SEC装置でサイズ排除クロマトグラフィーにより決定する。実施例に記載したように、分布の狭いPMMA標準試料を較正目的に使用することが好ましい。ポリ−1,3−ジオキセパン及びポリ−1、3−ジオキソランの製造については、ポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーの製造プロセスと類似の方法により行うことができる。
【0031】
ポリ−1,3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフラン、又はこれらの混合物は、ポリオキシメチレン又は多数のオキシメチレン単位を含有するコポリマー、及び、ポリ−1,3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフラン、又はこれらの混合物の総量に対して、1〜40質量%、より好ましくは3〜30質量%、特に4〜26質量%の量で用いることが好ましい。
【0032】
1種以上のポリオレフィンを更に含有する成形材料を使用する場合には、上記これらの数値は、ポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマー、ポリオレフィン、及び、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3−ジオキセパン又はポリテトラヒドロフラン又はこれらの混合物からなる混合物に適用することができる。
【0033】
ポリテトラヒドロフランを用いる場合、時には、同一の混合物に対して1〜10質量%、より好ましくは3〜8質量%、特に4〜6質量%の範囲の量を使用することも可能である。
【0034】
成形材料に用いるポリオキシメチレン又は多数のオキシメチレン単位を含有するコポリマーとしては、所望の粘度を有する通常のポリマー又はコポリマーを用いることができる。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、ポリオキシメチレンコポリマーとして、20,000〜200,000g/molの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有するポリオキシメチレンコポリマーであって、該コポリマーの、ポリマーに対して少なくとも90質量%が、モノマーとしてのトリオキサン及びブタンジオールホルマール及び調節剤としてのブチラールから誘導されるものであり、ブタンジオールホルマールの割合がポリマーに対して1〜30質量%の範囲であり、またブチラールの割合がポリマーに対して0.01〜2.5質量%の範囲にある(質量%はコポリマーに対するものである)ものを用いる。
【0036】
その質量平均モル質量(Mw)は、30,000〜60,000g/mol、好ましくは40,000〜50,000g/mol、及び/又は数平均モル質量(Mn)が5,000〜18,000g/mol、好ましくは8,000〜16,000g/mol、特に、10,000〜14,000g/molであることが好ましい。
【0037】
また、そのMw/Mn比は、3〜5の範囲、好ましくは3.5〜4.5の範囲にあることが好ましい。
【0038】
別の方法としては、異なるポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーの混合物を用いることもでき、かかる混合物は、成分B1.1として、10〜90質量%のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーで60,000g/molを超えて200,000g/molまでの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有するものと、成分B1.2として、10〜90質量%のポリオキシメチレンコポリマーで10,000〜60,000g/molの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有するものとを含む。
【0039】
好ましいのは、ポリマーに対して少なくとも90質量%の成分B1.1が、モノマーとしてのトリオキサン及び任意のブタンジオールホルマール、好ましくはモノマーとしてのトリオキサン及びブタンジオールホルマールから誘導するものであって、ブタンジオールホルマールの割合が、ポリマーに対して1〜5質量%、好ましくは2〜3.5質量%、特に、2.5〜3質量%の範囲であることである。
【0040】
一層好ましいのは、ポリマーに対して少なくとも90質量%の成分B1.2が、モノマーとしてのトリオキサン及び任意のブタンジオールホルマール、好ましくはモノマーとしてのトリオキサン及びブタンジオールホルマールから誘導するものであって、ブタンジオールホルマールの割合が、ポリマーに対して2.7〜30質量%、好ましくは2.8〜20質量%、特に、3〜17質量%の範囲であることである。
【0041】
本発明に係る成形材料には、典型的には、焼結可能な粉砕した、金属又は金属合金又はセラミック粉末、又はこれらの混合物を充填する。
【0042】
好ましいのは、次のものを含む混合物(原料)を使用することである。
【0043】
A.)焼結可能な粉砕金属又は焼結可能な粉砕金属合金又は焼結可能な粉砕セラミック又はこれらの混合物40〜70体積%;
B.)以下のものからなる混合物を含むバインダー30〜60体積%;
B1.)50〜97質量%(成分Bの合計量に対して)の1種又はそれ以上のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマー;
B2.)2〜35質量%(成分Bの合計量に対して)の1種又はそれ以上のポリオレフィン;
B3.)1〜40質量%(成分Bの合計量に対して)のポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3−ジオキセパン、ポリテトラヒドロフラン又はこれらの混合物(B1.)、B2.)及びB3.)の総量が100質量%になるまで加える)
【0044】
適切な金属粉末の具体例としては、Fe、Al、Cu、Nb、Ti、Mn、V、Ni、Cr、Co、Mo、W及びSiの粉末が挙げられる。金属粉末は、また、合金の形態で、例えば、TiAl、Ti
3Al及びNi
3Alなどの金属間相として使用することができる。グラファイト及びカーボンブラックも適している。上記した材料の混合物を使用することももちろん可能である。また、例えば、Al
2O
3、SiC、Si
3N
4又はCの無機繊維又はウィスカーを上記材料に添加することができる。この材料は、また、分散剤などの補助剤を含有することができる。
【0045】
酸化物セラミック粉末としては、例えば、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2及びY
2O
3、があり、また、非酸化物セラミック粉末としては、例えば、SiC、Si
3N
4、TiB、及びAlNなどがあり、単独で、又は混合物の形態で使用することができる。
【0046】
粉末の粒径としては、一般に、0.005〜100μm、好ましくは0.1〜30μm、特に好ましくは0.2〜10μmである。
【0047】
金属成形体の製造方法に適した熱可塑性バインダーB.)組成物は、EP−A−0446708及びUS2009/0288739A1に具体例として記載されている。
【0048】
本発明に従って用いるバインダーは、好ましくは、以下のものを含む。
【0049】
B1.)50〜97質量%の1種又はそれ以上のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマー;
B2.)2〜35質量%の1種又はそれ以上のポリオレフィン;
B3.)1〜40質量%のポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3−ジオキセパン、ポリテトラヒドロフラン又はこれらの混合物、
(各数値は成分Bの合計量に対するものであり、また、B1.)、B2.)及びB3.)の総量が100質量%になるまで加える)
【0050】
成分B1は、バインダーBの合計量に対して60〜95質量%の量で使用することが好ましく、より好ましくは70〜91質量%の量で使用する。
【0051】
成分B1に関して、ポリオキシメチレン及びポリオキシメチレンブレンドは、10,000〜500,000g/molの分子量(Mw)を有することが有利である。ホルムアルデヒド又はトリオキサンのホモポリマーに加えて、トリオキサンと、例えば、エチレンオキサイド及び1、3−ジオキソランのような環状エーテル類、又はブタンジオールホルマールのようなホルマール類とのコポリマーも、また、適切であり、各コモノマーの量は、一般的に、ポリマーの1〜20質量%である。
【0052】
好ましい構成成分B1としては、20,000〜200,000g/molの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有するポリオキシメチレンコポリマーであって、該コポリマーの、ポリマーに対して少なくとも90質量%が、モノマーとしてのトリオキサン及びブタンジオールホルマール及び調節剤としてのブチラールから誘導されたものであり、ブタンジオールホルマールの割合が、ポリマーに対して1〜30質量%の範囲であり、またブチラールの割合が、ポリマーに対して0.01〜2.5質量%の範囲であるものを用いる。
【0053】
その質量平均モル質量(Mw)は、30,000〜60,000g/mol、好ましくは40,000〜50,000g/mol、及び/又は数平均モル質量(Mn)が5,000〜18,000g/mol、好ましくは8,000〜16,000g/mol、特に、10,000〜14,000g/molであることが好ましい。
【0054】
また、そのMw/Mn比は、3〜5の範囲、好ましくは3.5〜4.5の範囲にあることが好ましい。
【0055】
第2の好適な構成成分B1は、2種のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマー、すなわちB1.1及びB1.2のブレンドを含むものである。ここで、
− 成分B1.1としては、10〜90質量%のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーで60,000g/molを超えて200,000g/molまでの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有するものであり、
− 成分B1.2としては、10〜90質量%のポリオキシメチレンコポリマーで10,000〜60,000g/molの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有するものである。
【0056】
また、B1.1及びB1.2の両者について、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(また、多分散性又はMw/Mnとも呼ばれる)は、3〜5、好ましくは3.5〜4.5の範囲であることが好ましい。
【0057】
ポリマーに対して少なくとも90質量%の成分B1.1が、モノマーとしてのトリオキサン及び任意のブタンジオールホルマールから、好ましくはモノマーとしてのトリオキサン及びブタンジオールホルマールから誘導するものであって、ブタンジオールホルマールの割合が、ポリマーに対して1〜5質量%、好ましくは2〜3.5質量%、特に、2.5〜3質量%の範囲にある組成物が好適である。
【0058】
ポリマーに対して少なくとも90質量%の成分B1.2は、モノマーとしてのトリオキサン及び任意のブタンジオールホルマール、好ましくはモノマーとしてのトリオキサン及びブタンジオールホルマールから誘導したものであって、ブタンジオールホルマールの割合が、ポリマーに対して1〜30質量%、好ましくは2.7〜30質量%、好適には2.8〜20質量%、特に3〜17質量%の範囲であり、ブチラールの割合が、ポリマーに対して0.7〜2.5質量%、好ましくは1.0〜2.0質量%、特に1.0〜1.3質量%の範囲である組成物が好適である。さらに、このポリオキシメチレンコポリマーは、10,000〜60,000g/mol、好ましくは30,000〜60,000g/mol、特に40,000〜50,000g/molの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する。
【0059】
分子量は、ここでは、実施例に記載するようにして決定することができる。一般に、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)又はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって測定する。数平均分子量は、一般に、GPC‐SECによって測定する。
成分B1について、より詳細に以下に記載する。
【0060】
非常に一般的に、本発明のポリオキシメチレンコポリマー(POM)は、ポリマー主鎖に少なくとも50モル%の−CH
2O−反復単位を有するものである。ポリオキシメチレンコポリマーは、また、−CH
2O−繰り返し単位と一緒に、50モル%までの、好ましくは0.01〜20モル%、特に0.1〜10モル%、極めて格別好ましくは0.5〜6モル%の下記式の
【化1】
の繰り返し単位を有するポリオキシメチレンコポリマーが好適である。上記式中、R
1〜R
4は、互いに独立して、水素原子、C
1〜C
4−アルキル基、又は1〜4個の炭素原子を有するハロゲン置換アルキル基であり、R
5は−CH
2−、−CH
2O−、又はC
1〜C
4−アルキル又はC
1〜C
4−ハロアルキル−置換メチレン基、又は相応するオキシメチレン基であり、nは0〜3の範囲内の数値を有している。上記の基は、環状エーテルの開環を介してコポリマーの中へ有利に導入することができる。好適な環状エーテルは、下記式で表わされるエーテルである。
【0062】
上記式中、R
1〜R
5及びnは上記で定義したとおりである。環状エーテルとして、ほんの一例であるが、エチレンオキシド、プロピレン1,2−オキシド、ブチレン1,2−オキシド、ブチレン1,3−オキシド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、及び1,3−ジオキセパン(=ブタンジオールホルマール、BUFO)を挙げることができる。コモノマーとして、線形オリゴ−又はポリホルマール、例えば、ポリジオキソラン又はポリジオキセパンを挙げることができる。
【0063】
同様に適切な材料としては、オキシメチレンターポリマーがある。これは、例えば、トリオキサン又は上述の環状エーテルの一つと、下記式の第3のモノマー、好ましくは、二官能性化合物との反応を通じて製造する。
【0065】
上記式中、Zは、化学結合−O−、−ORO−(R=C
1〜C
8−アルキレン、又はC
3〜C
8−シクロアルキレン)である。
【0066】
このタイプの好適なモノマーとしては、エチレンジグリシド、ジグリシジルエーテル、及びグリシジル化合物とホルムアルデヒド、ジオキサン又はトリオキサンとからモル比2:1で誘導したジエーテル、また同様にグリシジル化合物2モルと2〜8個の炭素原子を有する脂肪族ジオール1モルとからなるジエーテル、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、シクロブタン−1,3−ジオール、1,2−プロパンジオール及びシクロヘキサン−1,4−ジオールのジグリシジルエーテルが挙げられるが、ほんの一例に言及したにすぎない。
【0067】
特に好ましいのは、鎖末端に、主にC−C結合又は−O−CH
3結合を有する、末端基安定化ポリオキシメチレンポリマーである。
【0068】
ポリマーに対して少なくとも90質量%のコポリマーは、トリオキサンとブタンジオールホルマールとをモノマーとして誘導する。
【0069】
ポリオキシメチレンコポリマーは、好ましくは、専ら、モノマーとしてのトリオキサン及びブタンジオールホルマールから誘導するものであって、このとき、ブタンジオールホルマールの割合が、ポリマーに対して又はモノマーに対して、1〜30質量%、好ましくは2.7〜30質量%、さらに好ましくは2.8〜20質量%、特に、3〜17質量%の範囲であることである。
【0070】
ポリマーの分子量については、調節剤(regulator)又は連鎖移動剤としてブチラールを使用して所望の値に調整する。
【0071】
調節剤としてブチラール(n−ブチラール)を使用する場合、メチラールが毒性として分類されるのに対して、ブチラール(n−ブチラール)は非毒性であるという利点を有する。また、調節剤としてブチラールを使用すると、米国特許第6,388,049号から公知のポリオキシメチレンコポリマーと比較するとき更なる利点を示すものである。
【0072】
したがって、該ポリマーの製造に調節剤としてブチラールを使用することが好ましい。ポリマーに対して、0.1〜5質量%、特に0.2〜4質量%、格別には0.3〜2質量%の量のブチラールを使用することが好ましい。
【0073】
特定量のコモノマー及び特定の分子量にあっては、特に適切な機械的特性を有するポリオキシメチレンコポリマーが得られ、その結果、機械的性質、特に硬度に重大な障害を生じることなく、一層高分子量のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーに対する粘度調整添加剤として適合するものである。曲げ強度及び破壊強度も高い水準にとどまる。
【0074】
ポリオキシメチレンコポリマーに関連して、分子量、コモノマーの割合、コモノマーの選択、調節剤の割合、及び調節剤の選択などの特有の組合せにより、格別に適切な機械的特性がもたらされるものであって、これにより、当該ポリオキシメチレンコポリマーを一層高分子量のポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーに対する粘度調整添加剤として有利に使用することが可能となる。
【0075】
使用する開始剤(触媒とも呼ばれる)は、トリオキサンの重合で従来から用いられているカチオン性開始剤である。プロトン酸が適切であり、例えば、フッ素化又は塩素化アルキル−及びアリールスルホン酸、具体例としては、過塩素酸及びトリフルオロメタンスルホン酸、又はルイス酸があり、例えば、四塩化スズ、五フッ化ヒ素、五フッ化リン、及び三フッ化ホウ素、またこれらの錯化合物及び塩様(salt-like)化合物、具体例としては、三フッ化ホウ素エーテラート及びトリフェニルメチルヘキサフルオロフォスフェートがある。開始剤(触媒)の使用量は、約0.01〜1000ppm、好ましくは0.01〜500ppm、特に0.01〜200ppmである。一般的には、当該開始剤は希釈した形態で、好ましくは0.005〜5質量%の濃度で添加することが推奨される。この目的に使用する溶媒には、脂肪族又は脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、ハロゲン化脂肪族炭化水素、グリコールエーテルなどがある。ブチルジグリム(ジエチレングリコールジブチルエーテル)、及び1,4−ジオキサンが、溶媒として特に好適であり、特に格別、ブチルジグリムが好ましい。
【0076】
本発明では、カチオン性開始剤として、ブレンステッド酸を、モノマー及び調節剤の全体に対して0.01〜1ppmの範囲(好ましくは0.02〜0.2ppm、特に好ましくは0.04〜0.1ppm)の量で使用することが特に好ましい。特に、HClO
4をカチオン性開始剤として使用する。
【0077】
開始剤に加えて、共触媒を併用することができる。共触媒としては、いかなる種類のアルコールでもよく、具体例としては、tert-アミルアルコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどの2〜20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール; ヒドロキノンのような2〜30個の炭素原子を有する芳香族アルコール; ヘキサフルオロイソプロパノールのような2〜20個の炭素原子を有するハロゲン化アルコール; いかなる種類のグリコールでもよく、特にジエチレングリコール及びトリエチレングリコールが非常に特に好ましい;脂肪族ジヒドロキシ化合物、特に、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びネオペンチルグリコールのような2〜6個の炭素原子を有するジオール等が挙げられる。
【0078】
モノマー、開始剤、共触媒、及び必要に応じて用いる調節剤は、任意の所望の方法で予備混合することができ、あるいは重合反応器に、互いに別々に加えることができる。
【0079】
さらに、安定化のための成分としては、EP−A129369又はEP−A128739に記載されている立体障害フェノールを含むことができる。
【0080】
成分B1.2のポリオキシメチレンコポリマーは、トリオキサン、ブタンジオールホルマール、及び場合により更なるコモノマーを少なくとも1種のカチオン開始剤及び調節剤としてのブチラールの存在下で重合することによって製造する。
【0081】
好ましくは相変化を伴わずに、重合反応の直後に、重合混合物を失活させることが好ましい。開始剤残渣(触媒残渣)については、一般的には、不活性化剤(停止剤)を重合用溶融物に添加することによって失活させる。適切な不活性化剤の具体例には、アンモニア、並びに、第一級、第二級又は第三級の脂肪族及び芳香族アミン類、例えば、トリエチルアミンのようなトリアルキルアミン、又はトリアセトンジアミンがある。他の適切な化合物には、塩基と反応する塩類があり、例えばソーダ及びホウ砂があり、また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩及び水酸化物、更にはナトリウムエタノラートのようなアルコラートがある。ポリマーに通常加える不活性化剤の量は、好ましくは0.01ppmw(質量百万分率)〜2質量%である。不活性化剤としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルキル化合物が好ましく、この場合、アルキル部分に2〜30個の炭素原子を有する。特に好適な金属としては、Li、Mg、Naが挙げられ、ここでn−ブチルリチウムが特に好ましい。
【0082】
本発明の一実施形態では、モノマー及び調節剤の全体に対して3〜30ppm、好ましくは5〜20ppm、特に8〜15ppmの連鎖停止剤を併用することができる。連鎖停止剤として、ここでは特に、ナトリウムメトキシドを使用する。
【0083】
トリオキサン及びブタンジオールホルマールからなるPOMは、一般にバルク重合によって得られ、この目的のために高レベルの混合作用を有する任意の反応器を使用することができる。ここでの反応は、均一状態で、例えば、溶融状態で実施することができる。あるいは、不均一状態で、例えば、固体又は固体顆粒を得るための重合として実施することができる。適切な装置の具体例としては、トレイ(tray)反応装置、プラウシェア(plowshare)混合装置、管型反応装置、リスト反応装置、混練機ニーダー(例えば、Bussニーダー)、押出機、例えば、1つ又は2つのスクリューを有するもの、及び撹拌反応装置があり、各反応装置は、静的又は動的混合器を有することができる。好ましいトレイプロセスについては、WO2013/113879及びWO2013/052042を参照することができる。
【0084】
成分B1.2の低分子量POMは、少量の開始剤、多量の調節剤を使用し、鎖末端をキャッピングすることによって特に有利に製造することができる。得られる中程度の分子量を有するPOMは、耐熱性のみならず耐化学薬品性も有しており、その粘度は、Catamold(R)組成物でこれまで使用されてきたような従来の高分子量のPOMと比較して、1000倍まで低下することができる。
【0085】
成分B1.2の低分子量POMを、成分B1.1の質量平均モル質量が60,000g/molを超え、好ましくは少なくとも80,000g/molのPOMについての粘度調整添加剤として使用する場合には、熱的にも化学的にも安定であり、粘度を大幅に低減することができるPOM系が得られる。
【0086】
成分B1.1の構造及びその製造については、分子量、Mw/Mn比、調節剤及びカチオン開始剤の量を除いて、成分B1.2に関する上記の記述を参照することができる。 さらに、コモノマーのブタンジオールホルマールを成分B1.1に付随して使用する必要はない(しかし、好適なことではあるが)。
【0087】
成分B1.1及びB1.2の両方が共にコポリマーであること、及び、同じコモノマーを同じコモノマー割合で使用するコポリマーであることが特に好ましい。
【0088】
製造プロセスに用いるカチオン開始剤の量は、好ましくは0.05〜2ppm、特に好ましくは0.1〜1ppmである。
【0089】
成分B1として、得られたポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーのMw/Mn比は、好ましくは3.5〜9、特に4〜8、格別特に4.2〜7.7の範囲である。
【0090】
本発明の一実施形態では、本発明の熱可塑性組成物は、成分B1.1を10〜90質量%、好ましくは30〜90質量%、特に50〜90質量%、それに対応して、成分B1.2を10〜90質量%、好ましくは10〜70質量%、特に10〜50質量%用いる。
【0091】
その熱可塑性組成物は、成分B1.1及び成分B1.2を別々に製造し、次いでこの2つの成分を混合することによって製造する。ここでの混合は、任意の所望の適切な装置、例えば混練機又は押出機で行うことができる。ここでは、固体粒子である成分B1.1及び成分B1.2の機械的予備混合をすることから始めて、その後、これらを一緒に溶融させることが可能である。成分B.1を押出機中で溶融させ、成分B1.2を前記溶融体に添加することも可能である。混合プロセスは、150〜220℃、特に180〜200℃の範囲の温度で、0.5〜5バール、特に0.8〜2バールの範囲の圧力下で行うのが好ましい。
【0092】
成分B2は、ポリオレフィン又はその混合物を含むものであり、バインダーBの合計量に対して、2〜35質量%、好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは4〜15質量%の量で使用する。好適なポリマーの具体例としては、C
2〜8−オレフィン、特に、エチレン及びプロピレンなどのC
2〜4−オレフィン、スチレン及びアルファ−メチルスチレンなどのビニル芳香族モノマー、脂肪族C
1〜8−カルボン酸のビニルエステル、例えばビニルアセテート及びビニルプロピオネート、ビニルメチルエーテル及びビニルエチルエーテルなどのビニルC
1〜8−アルキルエーテル、及びメチルメタクリレート及びエチルメタクリレートなどのC
1〜12−アルキル(メタ)アクリレートなどから誘導されるポリマーが挙げられる。成分B2は、エチレン、プロピレンの少なくとも1種のポリマー、又はこれらのモノマーのコポリマーであることが好ましい。
【0093】
成分B3として適切なポリマーは、ポリ−1,3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフラン又はこれらの混合物であり、その量は、バインダーBの合計量に対して1〜40質量%、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは4〜26質量%である。ポリ−1,3−ジオキセパンが特に好適である。
【0094】
成分のすべてを、例えば配合機又は押出機中で混合した後、その材料を、例えば、従来のスクリュー又はプランジャ射出成形機での射出成形によって、160℃〜200℃及び500〜2,000バールで成形する。
【0095】
得られる成形体を酸で処理すると、バインダーのポリオキシメチレンが分解して気体生成物、主としてホルムアルデヒドを生じる。ガス状分解生成物は、通常、反応ゾーンから除去する。
【0096】
本発明に係る方法で使用する酸としては、無機酸、好ましくはHNO
3、及びメタンスルホン酸のような有機酸、又は溶媒中メタンスルホン酸、シュウ酸又はこれらの混合物の溶液から選択することができ、その溶媒は水、C
1〜4−カルボン酸及びこれらの混合物から選択する。
【0097】
これらの酸による処理は、従来技術から知られているように、液体中、又は好ましくは気相中で実施することができる。
【0098】
バインダー除去の際には、これらの酸は、単独で、又は空気、窒素又は希ガスなどのキャリアガスと一緒に使用することができる。
【0099】
バインダーの除去は、減圧下で、又は好ましくは大気圧下で行うことができ、この場合には、キャリアガス、特に窒素も使用する。バインダーの除去を減圧下で行う場合には、キャリアガスを必要としない。
【0100】
バインダーの除去は、グリーン生成物をガス状酸含有雰囲気で、20〜150℃の範囲の温度で0.1〜24時間処理することによって達成することができる。
【0101】
金属又はセラミックの成形品は、例えば、EP−A0444475、EP−A0446708及びEP−A0853995に記載されている従来技術から公知の方法によって製造することができる。また、補足的な情報については、EP−A1717539及びDE−T1−10084853に記載されている方法を参照することができる。
【実施例】
【0102】
本発明について、以下の実施例によってさらに説明する。
【0103】
実施例
POMオリゴマー及びポリマーの製造
実験室規模の重合を、循環トレイプロセスをシミュレートした方法で行った。モノマー及び調節剤の加熱を、磁気撹拌しながら、開放した鉄又はアルミニウム反応器中で80℃まで行った。ここでの混合物は透明な液体であった。接合部t=0において、ブチルジグリム中HClO
4から構成した開始剤溶液を注入した。そのプロトン濃度はモノマーに対して典型的には0.05ppmであり、あるいは、より多量のコモノマーを含有するPOMに対しては、それに対応して、一層高濃度である。重合が達成すると、当該混合物は短時間(典型的には数秒〜1分の範囲の誘導時間)で濁り、ポリマーが沈殿した。
【0104】
生(raw)ポリ(オキシメチレン)の後処理
生のポリ(オキシメチレン)を微粉に粉砕し、0.01質量%グリセロリン酸ナトリウム及び0.05質量%四ホウ酸ナトリウム緩衝水溶液をスプレーした。
【0105】
粘度測定
回転レオロジー測定を、Rheometric Scientific社製SR2回転式レオメータを使用して行った。プレートの寸法を直径25mm及びプレート間隔0.8〜1mmに設定した。測定は190℃及び15分の時間で行った。周波数掃引測定を行い、10rad/sの周波数での複素粘度を第2掃引で記録した。
【0106】
キャピラリーレオロジー測定を、毛管長30mm、半径0.5mmのGottfert−Rheograph2003を用いて行った。測定は190℃で行い、57〜115201 l/sのせん断周波数掃引を測定した。
【0107】
モル質量の測定
ポリマーのモル質量は、SEC装置内でサイズ排除クロマトグラフィーによって測定した。このSEC装置は、次の分離カラムの組合せ、すなわち、長さ5cm及び直径7.5mmの予備カラムと長さ30cm及び直径7.5mmの第2の直線カラムとの組合せからなるものであった。両方のカラム内の分離材料は、Polymer Laboratories社製のPL‐HFIPゲルであった。使用した検出器は、アジレント(Agilent)G1362Aからの示差屈折計を具備している。ヘキサフルオロイソプロパノールと0.05%のトリフルオロ酢酸カリウムとの混合物を溶離剤として使用した。流速は0.5ml/分であり、カラム温度は40℃であった。1リットルの溶離液につき試料1.5gの濃度で60マイクロリットルの溶液を注入した。この試料溶液は、ミリポア・マイレクス(Millipor Millex) GF(孔の幅0.2マイクロメートル)を介して予め濾過しておいた。モル質量Mが505〜2,740,000g/molであるPSS(マインツ、ドイツ)社製の分布が狭いPMMA標準試料を較正に使用した。
【0108】
三点曲げ試験
DSMミニ押出機で緩衝ポリマーを加工処理した後、寸法(10×4×8mm)を有する切り欠き(ノッチ)のないシャルピー・バー(charpy bar)を射出した。そのポリマーを80rpmのスクリュー速度で2回それぞれ2分間押出した。これらのバーを試験片として用い、ISO178:2010試験を使用して、曲げ弾性率、並びに曲げ引張における破断時の応力及び伸びを測定した。屈曲速度は2mm/分に設定した。試験は室温(23℃)で行った。
【0109】
成形材料組成物に使用する成分:
高分子量(HMW)POM: このPOMは0.35質量%のブチル含量で製造したものである。数平均分子量は23000g/molであり、質量平均分子量は94000g/molである。Mw/Mn比は4.2であり、10rad/sにおける粘度は200Pa・sであり、MFIは42〜43cm
3/10minである。ブタンジオールホルマールコモノマーの割合は、ポリマーに対して2.7質量%であった。開始剤の濃度は、モノマーに対して0.05ppmであった。
【0110】
オリゴマーPOM: オリゴマーPOMは、4.5質量%のブチラール濃度、2.7質量%のブタンジオールホルマール含量(モノマー濃度に対して)を有しており、0.05ppmの触媒を使用した。数平均分子量は4700g/molであり、質量平均分子量は11000g/molであった。Mw/Mn比は3.8であり、10rad/sにおける粘度は0.1Pa・sであった。
【0111】
中間分子量(IMW)POM: このPOMは、ブチラール含量1質量%、ブタンジオールホルマール含量20質量%(モノマー濃度に対して)及び触媒濃度0.2ppmで製造したものである。数平均分子量は12000g/molであり、質量平均分子量は34000g/molである。Mw/Mn比は2.9であり、10rad/sでの粘度は3.6Pa・sである。
【0112】
ポリBUFO: 30,000〜60,000g/molの質量平均分子量を有するポリブタンジオールホルマールである。
【0113】
金属粉末: ステンレス鋼金属粉末(ステンレス鋼17‐4PH、典型的な粉末粒度分布を有し、D
50は10〜15μmの範囲、D
90は30μm未満)
【0114】
各種成形材料の調製は、高分子量(HMW)POM、オリゴマーPOM、中間分子量(IMW)POM、及びポリBUFOを用いて行った。
【0115】
第一の試験系列
比較例C1では、高分子量POMのみを使用している。比較例2は、高分子量POMとオリゴマーPOMとの混合物を使用している。本発明に係る実施例1は、高分子量POM、オリゴマーPOM及びポリBUFOを使用している。
【0116】
各組成物中の成分量を以下の表1に列挙する。
【0117】
【表1】
【0118】
金属粉末(17‐4PH)を充填した成形材料を調製するためのバインダーとして、表1に記載の組成物を使用した。金属は総質量の91.27質量%を構成する。残りの質量/体積はバインダーの質量/体積である。表1の質量%は、添加金属粉末を含まないそれぞれのバインダーに対するものである。バインダー材料と金属粉末との混合は混練装置内で行う。
【0119】
その後、上述したような切り欠きのないシャルピー・バーを金属充填した成形材料から製造した。
【0120】
各種成形材料の粘度及び機械的特性を以下の表2で比較する。
【0121】
【表2】
【0122】
表2の結果から明らかなように、高分子量POMにオリゴマーPOMを含めることにより、高分子量POMを含有する組成物と比較して、粘度を大幅に低下させることができる。例C2及びC1の結果を参照されたい。高分子量POM、オリゴマーPOM及びポリBUFOの組合せを実施例1に従って使用する場合には、粘度は比較例組成物C2とほぼ同じである。しかし、曲げ弾性率は、比較例C2と比較して増加している。また、比較例C2と比較して、破断点伸びはさらに著しく増加している。
【0123】
例C2及び実施例1は、ポリ(1,3−ジオキセパン)を添加することが剛性(stiffness)にはあまり影響しないが、靭性が改善することを示している。応力−ひずみ曲線の初期部分の勾配は類似しているが、実施例1では、応力−ひずみ曲線の下方の面積が明らかに増加しているからである。
【0124】
したがって、表2の結果が示すように、射出成形に適した粘度を有するPOM成形材料においては、ポリBUFO(ポリ−1,3−ジオキセパン)を添加することにより、改善された曲げ靭性を改良することができ、曲げ弾性率を増加させ、さらには破断時の伸びを増大させることができる。このとき、粘度に悪影響を与えることがない。
【0125】
第二の試験系列
表3に示すような更に別の各種組成物について評価した。第一の試験系列と同様に、金属充填(91.27質量%)した成形材料の機械的特性を測定した。
【0126】
【表3】
【0127】
これらの材料についての結果を表4に示す。
【0128】
【表4】
【0129】
ポリBUFOを使用することにより、破断点曲げ伸びを顕著に改善することができ、ひいては曲げ靭性が改善した。