特許第6707498号(P6707498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6707498シールドゲートを有する炭化珪素装置を形成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707498
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】シールドゲートを有する炭化珪素装置を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20200601BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H01L29/78 652D
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 652J
   H01L29/78 652K
   H01L29/06 301D
   H01L29/06 301V
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-151252(P2017-151252)
(22)【出願日】2017年8月4日
(62)【分割の表示】特願2015-240816(P2015-240816)の分割
【原出願日】2015年12月10日
(65)【公開番号】特開2017-204655(P2017-204655A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2018年12月6日
(31)【優先権主張番号】14/567,504
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501209070
【氏名又は名称】インフィネオン テクノロジーズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エステベ, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】アイヒンガー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ベルクナー, ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】キュック, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ペーテルス, デトハルト
(72)【発明者】
【氏名】シーミーニエック, ラルフ
【審査官】 棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−107571(JP,A)
【文献】 特開2014−216410(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/103257(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
H01L 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素トランジスタ装置であって、
炭化珪素半導体基板であって、
前記基板の主面の下に互いに横方向に離間された複数の第1のドープ領域と、
前記主面から前記第1のドープ領域の上にある第3のドープ領域へ延びる第2のドープ領域と、
前記主面から前記第1のドープ領域へ延びる、前記基板内の複数の第4のドープ領域であって、前記第2のドープ領域は第1の導電型を有し、前記第1のドープ領域、第3のドープ領域および第4のドープ領域は前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する、第4のドープ領域とを有した、炭化珪素半導体基板と、
前記第2および第3のドープ領域を貫通して広がるゲートトレンチであって、側壁、下部、及び前記下部と前記側壁との間の丸い角を有する、ゲートトレンチと、
を備え
前記第1のドープ領域のドーピング濃度が、前記第1のドープ領域の上部よりも前記第1のドープ領域の下部において高くなるように、前記第1のドープ領域のドーピング濃度は、前記主面からの距離の増加とともに増加する、炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項2】
前記第4のドープ領域が電気的に導電性となるように、前記第4のドープ領域が、前記第1、第2、および第3のドープ領域よりも高濃度にドープされた、請求項1に記載の炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の炭化珪素トランジスタ装置であって、
前記第2のドープ領域はn型ソース領域であり、前記第3のドープ領域は、p型ボディ領域であり、前記ボディ領域の下でかつ前記第1のドープ領域に隣接した前記基板の一部がn型ドリフト領域を形成し、前記第1のドープ領域がp型埋め込み領域であり、前記第4のドープ領域が前記第1のドープ領域とオーミック接続を形成する、炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の炭化珪素トランジスタ装置であって、前記炭化珪素トランジスタ装置がオフ状態にあり、かつ大きな逆電圧が前記炭化珪素トランジスタ装置のソースおよびドレイン端子に印加されたときに、前記p型埋め込み領域が、前記n型ドリフト領域のうちの周囲部分とともに空乏領域を形成する、炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項5】
前記ゲートトレンチの第1の側壁が前記炭化珪素半導体基板の結晶面と整列している、請求項1に記載の炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項6】
前記ゲートトレンチの前記第1の側壁が前記炭化珪素半導体基板の(11−20)結晶面と整列している、請求項5に記載の炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項7】
前記ゲートトレンチの第1の側壁前記炭化珪素半導体基板の前記主面に対して85度から87度の角度がつけられている、請求項1に記載の炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項8】
前記ゲートトレンチの丸い角の一つが前記複数の第1のドープ領域のうちの1つの中に配置される、請求項1に記載の炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項9】
前記ゲートトレンチの前記下部が、前記複数の第4のドープ領域のうちの1つの中に部分的に配置される、請求項1に記載の炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項10】
前記ゲートトレンチの全体が、前記ゲートトレンチの前記側壁が前記複数の第1のドープ領域から離間するように前記複数の第1のドープ領域のうち互いに隣接するドープ領域の間にある前記炭化珪素半導体基板の側部内に配置される、請求項1に記載の炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項11】
前記ゲートトレンチの第1および第2の側壁が前記炭化珪素半導体基板の結晶面と整列している、請求項10に記載の炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項12】
前記第1および第2の側壁が(11−20)結晶面以外の結晶面と整列している、請求項11に記載の炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項13】
前記第1の側壁が前記炭化珪素半導体基板の(1−100)結晶面と整列しており、前記第2の側壁が前記炭化珪素半導体基板の(−1100)結晶面と整列している、請求項12に記載の炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項14】
請求項1に記載の炭化珪素トランジスタ装置であって、第1の誘電体層が、前記側壁ではなく前記ゲートトレンチの前記下部と角のみに沿って、前記ゲートトレンチの中に配置され、第2の誘電体層が前記第1の誘電体層の上でかつ前記ゲートトレンチの前記側壁に沿って、前記ゲートトレンチの中に配置される、炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項15】
請求項1に記載の炭化珪素トランジスタ装置であって、前記ゲートトレンチの第1の側壁が、前記複数の第1のドープ領域の隣接したもの同士の間にある、前記ゲートトレンチの第1の丸い下側角まで延在し、前記ゲートトレンチの第2の側壁が、前記複数の第1のドープ領域の1つの内部に配置された、前記ゲートトレンチの第2の丸い下側角まで延在する、炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項16】
請求項1に記載の炭化珪素トランジスタ装置であって、
ゲート誘電体が前記ゲートトレンチの中で、前記ゲートトレンチの前記側壁、下部および、丸い角に沿って配置され、前記ゲート誘電体は前記丸い角にて一様な厚さを有する、炭化珪素トランジスタ装置。
【請求項17】
前記ゲートトレンチの前記下部が前記複数の第1のドープ領域のうちの1つの一部の上に配置された、請求項1に記載の炭化珪素トランジスタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は一般的には、炭化珪素基板内の装置の形成に関し、より具体的には電気的シールドゲート構造を有する炭化珪素ベースのスイッチング装置を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体トランジスタ、特に金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)および絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などの電界効果制御スイッチング装置は、電源、電力変換器、電気自動車および空気調節器など多種多様の用途において使用されてきた。これらの用途の多くは、トランジスタがかなりの電流および/または電圧に対処することができることを要する高電力用途である。
【0003】
最大数百ボルトの電圧遮断能力と1アンペアより高い定格電流とを有し得る電力用トランジスタは垂直型MOSトレンチトランジスタとして実現され得る。垂直型トランジスタでは、ゲート電極は半導体ボディの垂直方向に延びるトレンチ内に配置され得る。ゲート電極は、トランジスタのソース、ボディおよびドリフト領域から誘電体的に絶縁され、半導体ボディの横方向のボディ領域に隣接する。ドレイン領域はドリフト領域に隣接し得、ソース電極はソース領域に接続され得る。
【0004】
炭化珪素(SiC)は、電力用トランジスタの基板材料としていくつかの好ましい特性を提供する。SiCの特定の性質は、シリコンなどの他の基板材料を使用する半導体装置と比較して所与のオン抵抗においてより高い電圧遮断能力を有する電力用トランジスタを実現するために利用され得る。例えば、SiCは従来のシリコンより高い2×10ボルト/センチメートル(V/cm)の臨界電界(すなわち、アバランシェ降伏が発生する電界)を提供する。したがって、同等に構成されたSiCベースのトランジスタは、従来のシリコンベースのトランジスタより高い閾値のアバランシェ降伏を有する。
【0005】
SiCは降伏電圧に関し好ましい特性を提供するが、いくつかの挑戦的設計課題も提示する。例えば、SiCベースの装置では、SiCとゲート誘電体(例えば、SiO)との界面は熱酸化されやすく、SiCの欠陥を生じる。これらの欠陥の1つの結果は電子移動度の低下とオン抵抗の増加である。さらに、トレンチエッチング技術の困難性のために、SiCベースの装置内のゲートトレンチの角は一様でない。したがって、ゲートトレンチの角において均一厚さのゲート誘電体を設けるのは困難である。これにより、ゲートトレンチの角における電界を増加させ、装置をより故障しやすくする。ゲート誘電体内の電界は、SiC内の電界が臨界電界に近づけば、2.5倍増加し得る。したがって、SiCの有利なアバランシェ降伏特性を十分に活用するためには、ゲート誘電体をSiC材料により許容される大きな電圧からシールドするために適切な措置が取られなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SiC技術においてチャンネル領域およびシールドゲート構造内に最少欠陥を有する電力用トランジスタを最少費用で提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
半導体装置を形成する方法が開示される。一実施形態によると、本方法は、基板の主面の下に互いに横方向に離間された複数の第1のドープ領域と、主面から第1のドープ領域の上に存在する第3のドープ領域へ延びる第2のドープ領域と、主面から第1のドープ領域へ延びる基板内の複数の第4のドープ領域とを有する炭化珪素半導体基板を形成する工程を含む。第2の領域は第1の導電型を有し、第1のドープ領域、第3のドープ領域および第4のドープ領域は第2の導電型を有する。基板は、第2、第3および第4のドープ領域内のドーパント原子を活性化するようにアニールされる基板である。第2および第3のドープ領域を貫通するゲートトレンチであって第1のドープ領域のうちの1つの領域の一部の上に配置された下部を有するゲートトレンチが形成される。高温工程が、ゲートトレンチの側壁に沿って炭化珪素原子を再整列させるとともにゲートトレンチの下部と側壁間に丸い角を形成するように非酸化物および非窒化物形成雰囲気内で基板に適用される。高温工程中にゲートトレンチの側壁に沿って形成された表面層は基板から除去される。
【0008】
主面を有する第1の導電型炭化珪素半導体基板から半導体装置を形成する方法が開示される。一実施形態によると、本方法は、主面の下に互いに横方向に離間された複数の第2の導電型埋め込み領域を形成する工程を含む。第1の導電型ソース領域と第2の導電型ボディ領域が基板内に形成される。主面から第2の導電型埋め込み領域へ延びる第2の導電型コンタクト領域が基板内に形成される。基板は、ソース、ボディおよびコンタクト領域内のドーパント原子を活性化するようにアニールされる。ソースおよびボディ領域を貫通するゲートトレンチであって埋め込み領域の一部の上に配置された下部を有するゲートトレンチが形成される。高温工程が、ゲートトレンチの側壁に沿って炭化珪素原子を再整列させるとともにゲートトレンチの下部と側壁間に丸い角を形成するように非酸化物および非窒化物形成雰囲気内で基板に適用される。高温工程中にゲートトレンチの側壁に沿って形成された表面層が基板から除去される。
【0009】
添付図面の要素は必ずしも互いに対しスケーリングされていない。同様な参照符号は対応する同様な部分を示す。様々な図示の実施形態の特徴は互いに排除しない限り組み合せられ得る。実施形態は添付図面に描写され、以下の明細書において詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による、シールドゲート電極を有する垂直型電力用トランジスタの断面図を示す。
図2】一実施形態による、炭化珪素基板上に酸化物層を形成する処理工程を示す。
図3】一実施形態による、図2の酸化物層をマスクする処理工程を示す。
図4】一実施形態による、酸化物層をエッチングする処理工程を示す。
図5】一実施形態による、注入マスクとして酸化物層を使用することにより基板内に埋め込みドープ領域を形成する処理工程を示す。
図6】一実施形態による、装置領域と埋め込みドープ領域への電気的接続とを形成するために基板に適用される別の処理工程を示す。
図7】一実施形態による、図6の基板の上に酸化物層を形成する処理工程を示す。
図8】一実施形態による、図7の酸化物層をマスクする処理工程を示す。
図9】一実施形態による、図8の酸化物層をエッチングする処理工程を示す。
図10】一実施形態による、ゲートトレンチを形成するためにエッチマスクとして図9の酸化物層を使用することにより基板をエッチングする処理工程を示す。
図11】一実施形態による、基板から酸化物層を除去する処理工程を示す。
図12】一実施形態による、ゲートトレンチ内に丸い角を形成するように非酸化物および非窒化物形成雰囲気内で高温工程を適用する処理工程を示す。
図13】一実施形態による、ゲートトレンチの別の構成を示す。
図14】一実施形態による、ゲートトレンチ内に犠牲酸化物を形成する処理工程を示す。
図15】一実施形態による、犠牲酸化物の一部を選択的除去するために基板をマスクする処理工程を示す。
図16】一実施形態による、犠牲酸化物の一部の除去後の基板を示す。
図17】一実施形態による、ゲートトレンチ内の誘電材料全体の厚さが側壁に沿った厚さよりゲートトレンチの下部においてより大きくなるように、ゲートトレンチ内にゲート誘電体を形成するように基板に適用される別の処理工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において開示される実施形態は、炭化珪素半導体基板102から半導体装置を形成する方法を提供する。本明細書で説明する方法に従って形成され得る例示的半導体装置100を図1に描写する。装置100は、基板102の主面105の下に互いに横方向に離間された複数の第1のドープ領域104を含む。第2のドープ領域106は、主面105から第1のドープ領域104の上に存在する第3のドープ領域108へ延びる。第2のドープ領域106は第1の導電型(例えば、n型)を有する。第1および第3のドープ領域104、108は第2の導電型(例えば、p型)を有する。装置100はさらに、第2および第3のドープ領域106、108を貫通するゲートトレンチ110であって第1のドープ領域104のうちの1つの領域の一部の上に配置される下部112を有するゲートトレンチ110を含む。導電性ゲート電極114はゲートトレンチ110内に配置され、ゲート誘電体116により基板102から誘電的に絶縁される。複数の第4のドープ領域122が主面105から第1のドープ領域104へ延びる。第4のドープ領域122は第2の導電型を有し、第4のドープ領域122が導電性となるように他の領域に比べて高い濃度に(例えば、P++)ドープされ得る。
【0012】
一実施形態によると、図1の装置100はnチャネル(ディプレッションモード)MOSFETであり、第2のドープ領域106はn形ソース領域であり、第3のドープ領域108はp型ボディ(チャネル)領域である。基板102は、ボディ領域104の下に存在するとともに第1のドープ領域104に隣接する基板の一部118が装置100のn型ドリフト領域を形成するようにn型ドーパントで実質的にドープされる。ドリフト領域118は、より高い濃度にドープされたn形ドレイン領域120へ結合される(直接または間接的にのいずれかで)。ソース領域106とドレイン領域120は、外部電極(図示せず)によりソースとドレイン電位へそれぞれ結合され得る。第4のドープ領域122はp型導電性コンタクト領域として構成される。コンタクト領域122は第1のドープ領域104とのオーミック接続を形成し、したがって第1のドープ領域104が外部電位(例えば、ソース電位)へ接続され得るようにする。
【0013】
ゲート電極114は、一般的に知られたやり方でボディ領域108内に導電性チャネルを設けるまたはボディ領域108内の導電性チャネルを除去するように構成される。ソース電位に対するゲート電極114のバイアスが装置100のオン/OFF制御を可能にする。第1のドープ領域104は、装置100の動作中に基板102中に成長する電界からゲート誘電体116をシールドするp型埋め込み領域として構成される。装置がオフ状態であり、大きな逆電圧がソースおよびドレイン端子へ印加される場合、大きな逆電圧はドリフト領域118全体にわたって分散される。p型埋め込み領域104は周囲n型材料を有する空間電荷領域(すなわち空乏領域)を提供する。この空間電荷領域は、ゲート誘電体116をドリフト領域118内の大きな電界からシールドする防護壁を提供する。したがって、描写されたやり方でp型埋め込み領域104を設けることにより、SiC材料の有利な降伏特性が利用され得、ゲート誘電体116の遮断能力は装置100の逆方向遮断能力全体の制限因子とならない。換言すれば、p型埋め込み領域104は装置100の降伏特性を改善する。
【0014】
本明細書で説明する方法によると、ゲートトレンチ110は、装置100のチャネルに隣接する第1の側壁124が(11−20)結晶面など基板102の結晶面と整列するように形成され得る。SiC材料中で、(11−20)結晶面は他の結晶面と比較して高い電子移動度を提供する。したがって、キャリヤが(11−20)結晶面に沿って走行するようにチャネルが構成されれば装置100の性能は改善され得る。
【0015】
有利には、本明細書で説明する方法は、第1の側壁124が(11−20)結晶面など所望結晶面に密接にまたは正確に整合するようにゲートトレンチ110を形成するために2工程処理を利用する。第1の工程では、ゲートトレンチ110は、第1の側壁124が主面105に対して約86度の角度となり(11−20)結晶面とほぼ一致するようにマスクエッチング技術により形成される。第2の工程では、基板102は、第1の側壁124において炭化珪素原子を再整列させるように水素(H)またはアルゴン(Ar)などの非酸化物および非窒化物形成雰囲気内の高温(例えば、摂氏1500度)下に置かれる。これにより、(11−20)結晶面に第1の側壁124をより密接に整合させる。しかし、この高温工程は第1の側壁124の近傍のSiC材料を変化させる。炭化珪素原子の再配置はゲートトレンチの表面層内のドーパント原子の再配置を招く。表面層は例えば20〜40nmの厚さであるSiC材料の層であり、第1の側壁124を含むゲートトレンチ110の表面まで延びる。高温工程は、この表面層を完全に非ドープ状態にする、またはこの表面層が少なくとも非一様かつ予測不能ドーピング濃度を有するようにさせる。表面層は装置100のチャンネル領域を包含するので、漏れ電流増加と不正確な閾値電圧制御などの望ましくない装置特徴が、高温工程に伴うドーパント原子の再配置から生じ得る。
【0016】
有利には、本明細書で説明する方法は、第1の側壁124に炭化珪素原子を再整列させる高温処理工程中に形成される表面層を除去する処理工程を含む。一実施形態によると、表面層は、犠牲酸化物層126を形成するように基板102を酸化しその後ゲートトレンチ110の少なくとも一部から犠牲酸化物層126を除去する一連の工程により除去される。代替的に、湿式化学エッチングなどの技術が表面層を除去するために利用され得る。表面層を除去した結果、ゲートトレンチ110の第1の側壁124は漏れ電流増加と不正確な閾値電圧制御という欠点無しに(11−20)結晶面に密接にまたは正確に一致するように形成され得る。
【0017】
高温工程と高温工程中に形成された表面層の後の除去工程との別の利点は、装置100が急性故障(例えば、漏れ電流からの)および長期故障(例えば、誘電降伏からの)の影響を受けにくいので装置100の頑強性が改善されるということである。これは、ゲートトレンチ110はゲート誘電体116が比較的均一な厚さを有するように滑らかな表面と丸い遷移部とで形成されるということとゲート誘電体116とSiC材料との界面は実質的に欠陥を含まないということとに少なくとも部分的に起因する。
【0018】
有利な実施形態によると、ゲートトレンチ110は、埋め込み領域104が形成され、ソース、ボディおよびコンタクト領域106、108、122が形成された後に形成される。これらの領域を形成する工程は、ソース、ボディおよびコンタクト領域106、108、122内のドーパント原子を活性化するアニール処理を必要とし得る。このようなアニール処理は、基板が摂氏1700〜1800度の温度に晒されることを必要とし得る。このアニール処理後にゲートトレンチ110を形成することにより、ゲートトレンチ110の幾何学形状(特に特定結晶面と側壁との整列状態)はドーパント原子を活性化するために必要とされる高温により影響されない。
【0019】
図2図17は、図1の半導体装置100を形成するために使用され得る選択された方法工程を描写する。
【0020】
図2を参照すると、炭化珪素(SiC)半導体基板102が設けられる。半導体基板102はエピタキシャル成長工程により形成され得る。一実施形態によると、半導体基板102は、基板102が固有の第1の導電型多数キャリヤ濃度を有するようにエピタキシャル成長工程中に第1の導電型ドーパント(例えば、n型ドーパント)でドープされる。
【0021】
第1の誘電体層128が基板102の主面105に沿って形成される。第1の誘電体層128はSiOなどの酸化物であり得る。一実施形態によると、第1の誘電体層128は主面105上にSiOを蒸着することにより形成される。第1の誘電体層128は2〜4μm(例えば、3μm)の厚さを有し得る。
【0022】
図3を参照すると、第1のマスク130が第1の誘電体層128上に形成される。第1のマスク130は一般的に知られた技術に基づき形成されるフォトレジストマスクであり得る。第1のマスク130は、第1の誘電体層128の一部が第1のマスク130内の開口132により露出され第1の誘電体層128の他の部分が第1のマスク130により覆われるようにパターン化される。
【0023】
図4を参照すると、第1の誘電体層128のマスクされない部分が除去される。これは湿式または乾式エッチング技術を使用することにより行われ得る。このエッチングは、基板102の主面105が第1の誘電体層128内の開口134により露出されるように行われる。
【0024】
図5を参照すると、複数の第1のドープ領域104が基板102内に形成される。第1のドープ領域104は互いに横方向に離間されて基板102の主面105の下に配置される。第1のドープ領域104は基板102中へドーパント原子を注入することにより形成される。ドーパント原子は、基板102の導電型(すなわち、第1の導電型)と反対の第2の導電型を有する。第1の誘電体層128は、第1の誘電体層128により覆われる基板102の一部へドーパント原子が侵入することを禁じる。すなわち、第1の誘電体層128は注入マスクとして使用され、第1の誘電体層128内の開口134は第1のドープ領域104の幾何学形状を画定する。一実施形態によると、第1のドープ領域104は、主面105からの距離の増加とともに増加するドーパント濃度でドープされる。すなわち、第1のドープ領域104のドーピング濃度は、第1のドープ領域104の上部よりも第1のドープ領域104の下部ではるかに高い。このプロファイルは、第1のドープ領域104内のドーパントが、第1のドープ領域104の真上に形成され同じ導電型を有するボディ領域108に影響を与えるのを防止する。
【0025】
図6を参照すると、第1の誘電体層128は除去され、別の処理工程が基板102に適用された。これらの別の処理工程は、基板102内に第2および第3のドープ領域106、108を形成する工程と複数の第4のドープ領域122を形成する工程とを含む。第2、第3および第4のドープ領域106、108、122のそれぞれはイオン注入により形成され得る。第4のドープ領域122のドーピング濃度は、これらの領域122が導電性となり第1のドープ領域104とのオーム接続を形成するように選択され得る。例えば、第4のドープ領域122はP++領域であり得る。第1および第2の導電型ドーパント原子がこれらの領域を形成するために基板102中に注入された後、基板102は例えばドーパント原子を活性化するために摂氏1700〜1800度でアニールされ得る。
【0026】
図7を参照すると、第2の誘電体層136が基板102の主面105に沿って形成される。一実施形態によると、第2の誘電体層136は主面105上にSiOを蒸着することにより形成される。第2の誘電体層136の厚さは、ゲートトレンチ110の要求深さが達成されるように選択され得る。例えば、誘電体層136は、1.0μmの深さであるゲートトレンチ100を設けるために少なくとも1.5μmの厚さで形成され得る。これは、基板102が誘電体層136に対し選択的にエッチングされない場合に誘電体層136のバッファ厚さを提供する。
【0027】
図8を参照すると、第2のマスク138が第2の誘電体層136上に形成される。第2のマスク138は一般的に知られた技術に基づき形成されるフォトレジストマスクであり得る。第2のマスク138は、第2の誘電体層136の一部が第2のマスク138内の開口140により露出され、第2の誘電体層136の他の部分が第2のマスク138により覆われるようにパターン化される。
【0028】
図9を参照すると、第2の誘電体層136のマスクされない部分が除去される。これは湿式または乾式エッチング技術を使用することにより行われ得る。このエッチングは、基板102の主面105が第2の誘電体層136内の開口142により露出されるように行われる。一実施形態によると、エッチング工程は異方性エッチング処理であり、第2の誘電体層136の側壁は主面105とほぼ直交する。これにより、第2のマスク138のパターン化と開口142により露出された基板102の一部の幾何学形状との密接な相関を可能にする。
【0029】
図10を参照すると、第2のマスク138は除去され、基板102の露出部分は基板102内にゲートトレンチ110を形成するためにエッチング除去される。すなわち、第2の誘電体層136はゲートトレンチ110の形成のためのエッチマスクとして使用される。ゲートトレンチ110は、第2および第3のドープ領域106、108を含む基板102の一部をエッチング除去することにより形成される。加えて、第1のドープ領域104のうちの1つの領域の上側部分はゲートトレンチ110のエッチング中に除去され得る。一実施形態によると、ゲートトレンチ110は異方性ドライエッチング技術により形成される。
【0030】
ゲートトレンチ110は、第2および第3のドープ領域106、108を貫通する第1および第2の側壁124、144と、第1のドープ領域104のうちの1つの領域の一部の上に配置される下部112とを含む。第1の側壁124は、第1のドープ領域104のうちの隣接領域同士間に存在する基板102の側部内の第2および第3のドープ領域106、108を貫通し、第1のドープ領域104のうちの隣接領域同士間に存在する第1の下側角148に達する。第2の側壁144は、第1のドープ領域104のうちの1つの領域と重なる基板102の側部内の第2および第3のドープ領域106、108を貫通し、第1のドープ領域104のうちの隣接領域同士間に存在する第2の下側角150に達する。換言すれば、ゲートトレンチ110は、下部112がn型ドリフト領域118とp型埋め込み領域104の一部とを貫通するように形成され得る。下部112はまた、コンタクト領域122を貫通し得る。代替的に、コンタクト領域122は、ゲートトレンチ110と交差しない基板102の側部内の第1のドープ領域104とだけコンタクト領域122が接続するようにゲートトレンチ110の外側端を越えて配置され得る。
【0031】
一実施形態によると、基板102は、エッチング工程の処理公差内でゲートトレンチ110の第1の側壁124が基板102の結晶面とほぼ整列するようにエッチングされる。例えば、基板102は、第1の側壁124がゲートトレンチ110の主面105および/または下部112に対して約86度の角度となるようにエッチングされ得る。この配向を図11に示す。この実施形態では、第1の側壁124は、基板102の主面105またはゲートトレンチ110の下部112に対して垂直ではなく(下部112が主面105に対して垂直である場合には)、その代りに垂直平面から約4度の角度だけオフセットされる。86度の角度は、基板102の(11−20)結晶面にほぼ整列された第1の側壁124をもたらす。(11−20)結晶面は、例えば(1−100)平面または(−1−120)平面など他の結晶面と比較して強化された電子移動度を提供する。したがって、第1の側壁124が(11−20)結晶面とほぼ整列するようにゲートトレンチ110を形成することにより装置の性能(例えば、オン抵抗)が改善され得る。
【0032】
エッチング工程の公差のために、第1の側壁124を主面105に対し86度の角度で精密に(したがって(11−20)結晶面に沿って精密に)形成することは可能ではない。既知のエッチング技術は+/−1度のプロセスウインドウだけを実現することができる。すなわち、達成可能なプロセスウインドウ内で、第1の側壁124は主面105に対して85〜87度で配向され得る。さらに、エッチング工程は、第1および第2の角148、150の幾何学形状を最適化するその能力に限界がある。図10に示すように、第1および第2の角148、150の近傍のゲートトレンチ110の表面が一様でなくなるように第1および第2の角148、150には急峻な角度が存在する。すなわち、ゲートトレンチ110の第1および第2の側壁124、144と下部112は第1および第2の角148、150に近づくにつれてそれぞれの平面から逸脱する。例えば、図10は第1および第2の角148、150における2つの切欠き状領域を描写する。この幾何学形状はゲートトレンチ110内のゲート誘電体(例えば、SiO)の形成の助けにならない。第1および第2の角148、150の近傍に酸化物を形成するのは困難または不可能かもしれない。したがって、ゲート誘電体116の厚さは第1および第2の角148、150における厚さより薄いかもしれなく、これにより装置故障(例えば、漏れ電流または誘電降伏からの)の可能性を増す。要約すると、別の手段無しにゲートトレンチ110を形成するエッチング技術の排他的使用は、ゲートトレンチ110の最適とはいえない幾何学形状を生じる。
【0033】
図12を参照すると、基板102は、(11−20)結晶面と第1の側壁124とをより密接に整列させるように高温の非酸化物および非窒化物形成雰囲気内に置かれた。これは、高温工程の時間、温度および雰囲気を設定することにより実現され得る。一実施形態によると、基板102は、約5〜7分間摂氏1400〜1600度の温度で水素(H)またはアルゴン(Ar)雰囲気内に置かれる。例えば、基板102は6分間摂氏1500度の温度の水素(H)雰囲気内に置かれ得る。
【0034】
基板102を上記やり方で非酸化物および非窒化物形成雰囲気内に置く高温工程は、ゲートトレンチ110の表面に沿って炭化珪素原子を再整列することを誘起する。炭化珪素原子は、第1の側壁124が(11−20)結晶面に沿って一様に延びるように再整列する。さらに、この再整列は、図10に描写された切欠き状領域が削除されるように第1および第2の角148、150の丸み付けを引き起こす。換言すれば、ゲートトレンチ110の第1および第2の側壁124、144と下部112との間に湾曲した遷移部が存在する。丸い第1および第2の角148、150は、図10に描写される切欠き形状より、酸化物蒸着に対する寛容性が高く、したがって第1および第2の角148、150において均一の厚さを有するゲート誘電体116の形成を可能にする。したがって第1および第2の角148、150におけるゲート誘電体116内に存在する電界ピークが低減され得る。要約すると、高温工程は、主面105に対し精密に86度の角度で(したがって精密に(11−20)結晶面に沿って)第1の側壁124を形成するプロセスウインドウを改善し、加えて、ゲート誘電体116の形成のための第1および第2の角148、150の幾何学形状を改善する。
【0035】
図13は、第1および第2の側壁124、144の両方が第1のドープ領域104のうちの隣接領域同士間に存在する基板102の側部内の第2および第3のドープ領域106、108を貫通するようにゲートトレンチ110が形成される別の実施形態を描写する。すなわち、図9図12のゲートトレンチ110と比較して、図13のゲートトレンチ110は、第1および第2の側壁124、144それぞれがn型ドリフト領域118中に延びて埋め込みドープ領域104から離間されるように横方向にシフトされる。したがって、ゲートトレンチ110全体は埋め込みドープ領域104のうちの隣接領域同士間に存在する基板102の側部内に形成される。
【0036】
図13のゲートトレンチ110構成は第1および第2の側壁124、144の両方に沿った装置100のチャネルの形成を可能にする。この実施形態では、第1および第2の側壁124、144は(11−20)結晶面以外の結晶面に沿って形成されなければならない。より具体的には、ゲートトレンチ110は、第1の側壁124が基板102の(1−100)結晶面と整列し第2の側壁144が基板102の(−1100)結晶面と整列するように形成され得る。これは、第1および第2の側壁124、144の両方が主面105に対し約90度の角度(すなわち、垂直)となるように上記やり方で基板102をエッチングすることにより実現される。このエッチング技術は、正確な90度の角度が実現可能ではなく+/−1度だけ変化し得るという前述のやり方で制限される。その後、基板102が上記やり方で非酸化物および非窒化物形成雰囲気内に置かれる(例えば、6分間摂氏1500度の温度の水素(H)雰囲気内に基板102を置くことによる)高温処理工程が続く。この高温工程は、第1および第2の側壁124、144を(1−100)および(−1100)結晶面それぞれと密接にまたは正確に整列させる。さらに、この高温工程は既に論述したように丸い第1および第2の角148、150を生成する。
【0037】
図14を参照すると、ゲートトレンチ110の形成および高温工程後、基板102は例えば熱酸化により酸化される。これにより犠牲酸化物層126を生成する。犠牲酸化物層126はゲートトレンチ110の少なくとも一部分内に形成される。一実施形態によると、基板102全体は、犠牲酸化物層126が主面105に沿っておよびゲートトレンチ110全体に形成されるように熱酸化される。犠牲酸化物層126は高温工程中に形成される表面層を包含するのに十分に厚い(例えば、少なくとも30nmの厚さ)。したがって、犠牲酸化物層126は高温工程中にゲートトレンチ110内に形成される表面層を除去するために使用され得る。
【0038】
図15図16は、ゲートトレンチ110の少なくとも一部から犠牲酸化物層126を除去するために適用され得る別の処理工程を基板102の平面図観点から描写する。図15は、セルフィールド内に配置された複数のゲートトレンチ110を有する基板102の平面図を描写する。セルフィールドは基板102の端から離間される。図15に示すように、セルフィールドと重なる基板の一部の上にマスク152が設けられる。マスク152は例えば従来から知られている任意のフォトリトグラフィマスクであり得る。一実施形態によると、マスク152は、ゲートトレンチ110の外側端を覆うとともに外側端間のゲートトレンチ110の中央部154を露出するように基板102上に形成される。
【0039】
図16を参照すると、犠牲酸化物層126は基板102のマスクされていない部分から除去され、マスク152はその後除去される。犠牲酸化物層126は例えば湿式化学エッチ技術により除去され得る。
【0040】
ゲートトレンチの外側端がマスク152で覆われる図15のマスク構成のために、犠牲酸化物126はゲートトレンチ110の中央部154からエッチングされるだけである。ゲートトレンチ110の外側端(すなわち、中央部154の外の互いに反対側に存在するゲートトレンチ110の両端)は、エッチング工程後は犠牲酸化物層126で敷き詰められたままである。犠牲酸化物層126をゲートトレンチ110の外側端に残すことにより装置100の信頼性と頑強性が改善される。これは、ゲートトレンチ110の外側端において均一な厚さでゲート誘電体116を形成するのが困難また不可能であるからである。その結果、電界ピークがゲートトレンチ110の外側端のゲート誘電体116内に発生し、装置が漏れ電流および/または降伏の影響をより受けやすくされる。犠牲酸化物層126をゲートトレンチ110の外側端に残すことにより、誘電材料の厚さは装置がより大きな電界に耐えるように増加される。さらに、犠牲酸化物層126を装置100内に包含することは、犠牲酸化物層126が装置100の大部分のチャンネル領域に沿って存在しないので装置100の接続品質を著しくは劣化させない。
【0041】
別の実施形態によると、犠牲酸化物層126はゲートトレンチ110から完全に除去される。この実施形態では、マスク152は、エッチング工程が行われると犠牲酸化物層126全体がエッチング除去されるようにゲートトレンチ110の外側端の一部を覆わない。
【0042】
図17を参照すると、ゲート誘電体116がゲートトレンチ110内に形成される。一実施形態によると、ゲート誘電体116は二酸化珪素(SiO)の層を蒸着することにより形成される。異なる結晶面に沿って(例えば、ゲートトレンチ110の下部の結晶面と第1および第2の側壁124、144の結晶面との間で)異なる酸化物成長速度を有し得る蒸着技術が熱酸化などの他の技術より好ましいかもしれない。ゲート誘電体116は、中央部154から離れた犠牲酸化物層126だけを上記やり方でエッチングした後にゲートトレンチ110全体に蒸着され得る。その結果、ゲート誘電体116は中央部内のゲートトレンチ110の下部112と側壁124、144とに直接隣接し、犠牲酸化物層126は、ゲートトレンチ110の下部112および側壁124、144と外側端のゲート誘電体116との間に挿入される。
【0043】
一実施形態によると、ゲート誘電体116は2つの層116、116を含む。誘電体層のうちの第1の層116は、側壁124、144ではなくゲートトレンチ110の下部112に沿ってだけ形成される。この構成は、酸化物が最初にゲートトレンチ110の全体にわたって蒸着されその後ゲートトレンチ110の側壁124、144から除去される高密度プラズマ蒸着(HPD:high−density plasma deposition)工程を使用することにより実現され得る。その後、誘電体層のうちの第2の層116は、第1の誘電体層116の上と側壁124、144に沿ったゲートトレンチ110内に蒸着される。上記やり方で2つの層116、116でゲート誘電体116を形成することにより、ゲートトレンチ110内の誘電材料全体の厚さは側壁124、144に沿った厚さよりゲートトレンチ110の下部112においてより厚い。結局、SiC材料の高電界に晒されるゲートトレンチ110の一部分内の電界の勾配が低減され得る。
【0044】
その後、図17に描写された基板102は、ゲート誘電体116と炭化珪素半導体基板102との界面を不動態化するようにガス雰囲気内でアニールされ得る。例えば、基板102は5分〜6時間摂氏1100〜1250度の温度の酸化窒素(NO)雰囲気内に置かれ得る。
【0045】
ゲート電極114は従来から知られたやり方でゲートトレンチ116内に形成され得る。
【0046】
本明細書では、nドープが第1の導電型と呼ばれ、pドープは第2の導電型と呼ばれる。代替的に、半導体装置100は、第1の導電型がpドープであり第2の導電型がnドープとなるように反対のドーピング関係で形成され得る。さらに、いくつかの図面は、導電型の隣の「−」または「+」により相対的ドーピング濃度を示す。例えば、「n」は「n」ドーピング領域のドーピング濃度より低いドーピング濃度を意味し、一方「n」ドーピング領域は「n」ドーピング領域より高いドーピング濃度を有する。しかし、相対的ドーピング濃度を示すことは、特記しない限り同じ相対的ドーピング濃度のドーピング領域が同じ絶対的ドーピング濃度を有しなければならないということを意味しない。例えば、2つの異なる「n」ドーピング領域が異なる絶対的ドーピング濃度を有し得る。同じことは、例えばnドーピングとpドーピング領域に適用される。
【0047】
本明細書内に記載された特定の実施形態は限定しないが半導体装置に関し、特に電界効果半導体トランジスタと製造法とに関する。本明細書内では、用語「半導体装置」と「半導体部品」は同義的に使用される。形成される半導体装置は、第1の表面上に配置されたソースメタライゼーションと、第1の表面の隣の垂直トレンチ内に配置された絶縁ゲート電極と、第1の表面と反対の第2の表面上に配置されたドレインメタライゼーションとを有する垂直型MOSFETなどの垂直型半導体装置であり得る。形成される半導体装置は、負荷電流を運ぶおよび/または制御するための複数のMOSFETセルを備えた活性領域を有する電力半導体装置であり得る。さらに、電力半導体装置は、上から見ると活性領域を少なくとも部分的に囲む少なくとも1つの終端構造を備えた周辺領域を典型的には有し得る。
【0048】
「真下」、「下方」、「下の」、「上方」、「上の」などの空間的相対語は、第2の要素に対する一要素の位置決めについて説明するための説明の容易さのために使用される。これらの用語は、図面に描写されたものとは異なる配向に加え、装置100の異なる配向を包含するように意図されている。さらに、「第1」、「第2」などの用語もまた、様々な構成要素、領域、部分などを説明するために使用され、制限することを意図していない。同様な用語は本明細書を通して同様な構成要素を指す。
【0049】
本明細書で使用されるように、用語「有する」「含有する」、「からなる」、「含む」などは、上述の要素または特徴の存在を示す開放型用語であり、追加要素または特徴を排除するものではない。単数形式の冠詞は文脈が明確に指示しない限り単数の物だけでなく複数の物を含むように意図されている。
【0050】
上記範囲の変形と応用とを考慮に入れて、本発明はこれまでの説明により制限されないしまた添付図面により制限されないということを理解すべきである。むしろ、本発明は以下の特許請求範囲とそれらの法的均等物によってのみ限定される。
また、本願は以下の態様を含む。
(態様1)
半導体装置を形成する方法であって、前記方法は、
炭化珪素半導体基板を形成する工程であって、前記基板の主面の下に互いに横方向に離間された複数の第1のドープ領域と、前記主面から前記第1のドープ領域の上に存在する第3のドープ領域へ延びる第2のドープ領域と、前記主面から前記第1のドープ領域へ延びる前記基板内の複数の第4のドープ領域とを有し、前記第2のドープ領域は第1の導電型を有し、前記第1のドープ領域、第3のドープ領域および第4のドープ領域は第2の導電型を有する、工程と、
前記第2、第3および第4のドープ領域内のドーパント原子を活性化するように前記基板をアニールする工程と
前記第2および第3のドープ領域を貫通して広がるゲートトレンチであって、前記第1のドープ領域のうちの1つの領域の一部の上に配置された下部を有するゲートトレンチを形成する工程と、
前記ゲートトレンチの側壁に沿って炭化珪素原子を再整列させるとともに前記ゲートトレンチの前記下部と側壁間に丸い角を形成するように非酸化物および非窒化物形成雰囲気内で高温工程を適用する工程と、
前記高温工程中に前記ゲートトレンチの前記側壁に沿って形成された表面層を前記基板から除去する工程とを含む方法。
(態様2)
前記表面層を除去する工程は、前記ゲートトレンチ内に犠牲酸化物層を形成するために前記表面層を酸化する工程と前記ゲートトレンチの少なくとも一部から前記犠牲酸化物層を除去する工程とを含む、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記表面層を酸化する工程は前記ゲートトレンチ全体に前記犠牲酸化物層を敷き詰める工程を含み、
前記犠牲酸化物層を除去する工程は、前記ゲートトレンチの外側端が前記犠牲酸化物層を除去する工程後に前記犠牲酸化物層で敷き詰められるように前記ゲートトレンチの中央部からだけ前記犠牲酸化物層を除去する工程を含む、態様2に記載の方法。
(態様4)
前記中央部からだけ前記犠牲酸化物層を除去する工程は、前記ゲートトレンチの外側端を覆い前記中央部を露出するマスクを前記基板上に形成する工程と前記犠牲酸化物をエッチングして前記中央部から離す工程とを含む、態様3に記載の方法。
(態様5)
ゲート誘電体が前記中央部内の前記ゲートトレンチの前記下部および側壁に直接隣接するとともに前記犠牲酸化物層が前記下部および側壁と前記ゲートトレンチの前記外側端における前記ゲート誘電体との間に挿入されるように、前記犠牲酸化物層を除去した後に前記ゲートトレンチの全体にわたって前記ゲート誘電体を蒸着する工程と、
前記ゲート誘電体と前記炭化珪素半導体基板との界面を不動態化するように前記基板をガス雰囲気内でアニールする工程とをさらに含む態様3に記載の方法。
(態様6)
前記ゲート誘電体を蒸着する工程は、前記ゲートトレンチの前記下部に沿ってだけ第1の誘電体層を形成する工程と前記ゲートトレンチ内の誘電材料全体の厚さが前記側壁に沿った厚さよりも前記ゲートトレンチの前記下部においてより厚くなるように、前記第1の誘電体層の上および前記側壁に沿って第2の誘電体層を形成する工程とを含む、態様5に記載の方法。
(態様7)
前記表面層を酸化する工程は前記ゲートトレンチ全体に前記犠牲酸化物層を敷き詰める工程を含み、前記犠牲酸化物層を除去する工程は前記ゲートトレンチから前記犠牲酸化物層を完全に除去する工程を含む、態様2に記載の方法。
(態様8)
前記第1のドープ領域は前記基板中にドーパント原子を注入することにより形成され、前記ゲートトレンチは前記ドーパント原子の注入後に形成される、態様1に記載の方法。
(態様9)
前記第1のドープ領域を形成する工程は前記基板上に第1のマスクを形成する工程を含み、
前記ゲートトレンチを形成する工程は、前記第1のマスクを除去した後に前記基板上に第2のマスクを形成する工程と、前記第2および第3のドープ領域を含む前記基板の一部をエッチング除去する工程とを含む、態様8に記載の方法。
(態様10)
前記基板は、前記エッチング工程の処理公差内で前記ゲートトレンチの第1の側壁が前記基板の結晶面とほぼ整列するようにエッチングされ、
前記高温工程の時間、温度および雰囲気は前記第1の側壁が前記結晶面とより密接に整列されるように制御される、態様9に記載の方法。
(態様11)
前記基板は、前記第1の側壁が前記基板の(11−20)結晶面とほぼ整列するように前記主面に対して約86度の角度となるようにエッチングされ、
前記高温工程は、前記(11−20)結晶面に前記第1の側壁をより密接に整列させるために前記基板を約5〜7分間摂氏1400〜1600度の温度の水素またはアルゴンの雰囲気内に置く工程を含む、態様10に記載の方法。
(態様12)
前記ゲートトレンチは、前記第1の側壁が前記第1のドープ領域のうちの隣接領域同士間に存在する第1の下側角まで延びるようにおよび前記第2の側壁が前記第1のドープ領域のうちの1つの領域内に配置された第2の下側角まで延びるように形成される、態様11に記載の方法。
(態様13)
前記基板は、前記ゲートトレンチの第1の側壁が前記基板の(1−100)結晶面とほぼ整列し前記第2の側壁が前記基板の(−1100)結晶面とほぼ整列するようにエッチングされ、
前記高温工程の前記時間、温度および雰囲気は、前記第1の側壁および第2の側壁が前記(1−100)および(−1100)結晶面それぞれとより密接に整列されるように制御される、態様10に記載の方法。
(態様14)
前記ゲートトレンチ全体は、前記第1および第2の側壁の両方が前記第1のドープ領域から離間されるように前記第1のドープ領域のうちの隣接領域同士間に存在する前記基板の側部内に形成される、態様13に記載の方法。
(態様15)
前記ゲートトレンチは前記第2、第3および第4のドープ領域内のドーパント原子を活性化するように前記基板のアニール工程後に形成される、態様1に記載の方法。
(態様16)
主面を有する第1の導電型炭化珪素半導体基板から半導体装置を形成する方法であって、前記方法は、
前記主面の下に互いに横方向に離間された複数の第2の導電型埋め込み領域を形成する工程と、
前記基板内に第1の導電型ソース領域と第2の導電型ボディ領域を形成する工程であって、前記ソース領域は前記主面から前記ボディ領域へ延び、前記ボディ領域は前記埋め込み領域の上に配置される、工程と、
前記基板内に前記主面から前記第2の導電型埋め込み領域へ延びる第2の導電型コンタクト領域を形成する工程と、
前記ソース、ボディおよびコンタクト領域内のドーパント原子を活性化するように前記基板をアニールする工程と、
前記ソースおよびボディ領域を貫通して延びるゲートトレンチであって、前記埋め込み領域の一部の上に配置された下部を有するゲートトレンチを形成する工程と、
前記ゲートトレンチの側壁に沿って炭化珪素原子を再整列させるとともに前記ゲートトレンチの前記下部と側壁間に丸い角を形成するように非酸化物および非窒化物形成雰囲気内で高温工程を適用する工程と、
前記高温工程中に前記ゲートトレンチの前記側壁に沿って形成された表面層を前記基板から除去する工程とを含む方法。
(態様17)
前記表面層を除去する工程は前記ゲートトレンチ内に犠牲酸化物層を形成するために前記表面層を酸化する工程と前記ゲートトレンチの少なくとも一部から前記犠牲酸化物層を除去する工程とを含む、態様16に記載の方法。
(態様18)
前記ゲートトレンチは、前記ソース、ボディおよびコンタクト領域内のドーパント原子を活性化するように前記基板のアニール工程後に形成される、態様16に記載の方法。
【符号の説明】
【0051】
100 装置
102 基板
104 第1のドープ領域
105 主面
106 第2のドープ領域
108 ボディ領域
110 ゲートトレンチ
112 下部
114 ゲート電極
116 ゲート誘電体
118 ドリフト領域
120 ドレイン領域
122 コンタクト領域
124 側壁
126 犠牲酸化物層
128 第1の誘電体層
130 第1のマスク
132 開口
134 開口
136 第2の誘電体層
138 第2のマスク
140 開口
142 開口
144 第2の側壁
148 第1および第2の角
150 第2の角
152 マスク
154 中央部
1161 第1の誘電体層
1162 第2の誘電体層
図1
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