(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Aは、Na、Si、S、K、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Sr、Nb、Zr、W、F及び希土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの元素を更に含む、請求項1に記載のリチウム金属酸化物粉末。
【背景技術】
【0002】
酸化物は、コア−シェル構造を有し、ドーピング元素、酸化物及び専用コーティング層を備える。
【0003】
リチウムコバルト酸化物は、1980年にMizushimaらがその電気化学的特性を発見して以来、二次リチウム電池のための典型的なカソード材料として使用されてきた。リチウムコバルト酸化物系材料は、CoO
2とLiO
2のスラブを交互に積層した層状構造を有し、六方晶単位セル(空間群R−3m)の001方向に沿って稜線共有型CoO
6及びLiO
6の八面体を有する。そのような層状構造は、電池の充電と放電中にそれぞれデインターカレーションとインターカレーションによってリチウムを可逆的に収容するのに理想的である。高エネルギー密度のために、再充電可能リチウム電池及びリチウムイオン電池は、携荷電話、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ及びビデオカメラなどの様々なポータブル電子機器用途に使用され得る。市販のリチウムイオン電池は、典型的には、グラファイト系のアノードと、LiCoO
2系のカソード材料とからなる。今日のコンシューマエレクトロニクスでは、高エネルギー密度の再充電可能電池が要求されており、より要求の厳しい最終用途向けにエネルギー密度が向上したLiCoO
2系材料が急増している。
【0004】
LiCoO
2系カソード材料のエネルギー密度(Wh/L)は、サイクル中の平均電圧(V)、比容量(mAh/g)及び重量密度(g/cm
3)の積として定義される。エネルギー密度を改善するための有効なアプローチには、(a)充填密度を増加させること(これは、通常、粉末粒子の粒子サイズを増大させることを必要とする)、及び
(b)充電電圧を増加させることによって比容量を増加させること、が含まれる。市販の電池では、LiCoO
2は、通常、グラファイトアノードに対して約4.35Vの上限カットオフ電圧でサイクルされ、164mAh/gの比容量を与える。LiCoO
2からより高い容量を得るためには、それを4.35Vより高い電位、典型的には172mAh/gの比容量で4.40V、更には182mAh/gの比容量で最大4.45V、に充電しなければならない。しかし、高い上限カットオフ電圧を使用して充放電サイクルを繰り返すと、急速な容量損失がもたらされる。これは、デインターカレーションされたLiCoO
2の構造的不安定性によって、及び電解液との副反応の増加によって引き起こされると考えられている。
【0005】
したがって、これら2つのアプローチの産業上の適用性は、副次的な問題によって制限される。後者の経路は、より高い電圧で電解質と接触している荷電した電極材料の不安定な挙動によって制限される。リチウムがLi
xCoO
2(x<1)から取り除かれると、コバルト及び酸素への強い電子電荷移動を特徴とする、Li
xCoO
2の電子構造の変化が起こり、強い電子非局在化がもたらされる。荷電したLi
xCoO
2は非常に強い酸化剤であり、反応性の高い表面を有する。電解質は、そのような酸化表面と接触すると熱力学的に不安定になる。還元剤である電解質との反応はエネルギー的に非常に好ましい。高電圧でのLiCoO
2カソードの通常のサイクル中の低温においてさえも、この寄生反応はゆっくりではあるが連続的に進行する。反応生成物は表面を覆い、電解質は分解され、両方の効果は電池の電気化学的性能の低下を連続的にもたらし、それによって容量の損失及び抵抗の著しい増加(分極としても知られる)が観察される。
【0006】
更に、「Solid State Ionic,83,167(1996)」には、荷電したLi
xCoO
2について、重度のコバルト溶出が報告されている。コインセルでリチウムアノードに対して充電電位が4.1Vから最大4.5Vに上昇すると、コバルト溶出は指数関数的に増加し、コバルトがコバルト金属の形で負電極に付着する。この電圧範囲では、コインセル容量低下とコバルト溶出の間の直接的な相関が確立された。「Journal of Materials Chemistry,21(2011)17754−17759」において、Amineらは、Liイオン電池におけるカソードからの遷移金属イオンの溶出は、これらの金属イオンがカソードからアノードに移動し、アノード表面電解質界面(SEI)上に金属状態に還元されるので、有害な現象であると強調している。グラファイトアノードの表面に付着した金属又は金属合金は、SEIの安定性に悪影響を与える。したがって、カソードからのこの金属溶出及びアノードへの付着は、低い安全性、高電圧における低いサイクル安定性、高温における充電されたカソードの低い保存特性をもたらす。「J.Electrochem.Soc.,155,711,(2008)」は、電解液中に含まれる浮遊HFがLiCoO
2を攻撃し、Co溶出を引き起こすメカニズムを記載している。
【0007】
この先行技術研究の第1の結論は、副反応及び金属溶出を防止する機能的表面を有するリチウムコバルト酸化物を達成することが望ましいということである。一方、充填密度を高めるために粒径を大きくすると、再充電可能電池の電力能力が低下する。電力要件を満たすためには、電池全体、特に活性カソード材料自体が十分な高速性能を有さなければならない。平均粒径を大きくすると、効果的な固体リチウム拡散速度が低下し、最終的にレート性能の低下をもたらす。
【0008】
カソード材料に関する公表された結果を注意深く研究することにより、LiCoO
2系再充電可能電池の限界をよりよく理解することができる。最先端のLiCoO
2系材料の根本的な限界は、Li過剰及び粒径のジレンマにある。このジレンマは、Yoshio,M.et al.(2009).Lithium−Ion batteries.New York:Springer Science+Buisness Media LLC.:において詳細に記載されている。典型的にはLi:Coは約1.05であるが、合成に使用される、モル比Li:Co>>1.00として表される、対応するリチウム過剰量が多い程、充填密度は高くなり、粒子サイズは大きくなり、比表面積(又はBET)は低くなり、塩基含有量は高くなり、電気化学的電力特性は低くなる。Li:Co比の増加によるLiCoO
2の粒子成長及び高密度化のメカニズムはいわゆる「リチウムフラックス効果」に基づいている。これは、Li過剰量がLiCoO
2粒子の成長を促進するフラックス剤として作用し、最終的に充填密度を増加させる。高密度かつモノリシックな粒子形態を有するそのようなLiCoO
2材料は、比表面積を減少させ、カソード材料との電解質の副反応領域を減少させるのに望ましい。
【0009】
国際公開第2010−139404号では、本発明者らは、最新のMg及びTiドープLiCoO
2の調製に使用される、充填密度、平均粒径とリチウム過剰量の関係を説明している。18μmの粒子について、約3.70g/cm
3の典型的な充填密度が達成されている。本発明者らは、モノリシックなポテト型及び非凝集型の一次LiCoO
2粒子では、大きな圧縮密度が好ましくかつ得られることを強調している。しかし、より大きなモノリシック粒子を達成するために大きなLi:Co過剰量を使用すると、より低い電力(より低いCレート)及びより低い放電容量で、低い電気化学的性能をもたらし、その結果、粒子サイズを増加させることによって達成されるエネルギー密度の増加を結果的に打ち消す。電力及び放電容量におけるこれらの制限は、2つの主な要因からもたらされる:(i)粒子サイズが増大するときに準Fick法(D〜L
2/t)に従う基本的な固体拡散の制限、及び(ii)Li過剰量の増加による構造的欠陥の導入、例えば、Levasseurによって、Chem.Mater.,2002,14,3584−3590において議論されているように、Li過剰量は、CoO
2層中のLiと酸素欠損Li
1+xCo
1−xO
2−x’とのCo置換に関連付けられ、粒子内のLiイオン拡散平均自由行程を更に制限する、ことである。最後に、そのような大きなLi:Coの値は、pH、遊離(又は可溶性)塩基含有量及び炭素含有量も増加させ、荷電したカソードの安全性、貯蔵及び膨張特性を損なう。
【0010】
先行技術では、これらの問題に対処するためにいくつかのアプローチが示唆されている。それらは、通常、LiCoO
2系材料のドーピング、コーティング又は表面改質に関連付けられる。Mg、Ti及びAlなどの元素のCo置換及び高電圧特性の改善は、例えば欧州特許第1137598(B1)号に記載されている。そのようなドーピングは、構造崩壊を防止し、高電圧でのLiCoO
2系材料のサイクル安定性及び可逆容量を改善する。しかしながら、LiCoO
2の焼結はTiドーピングによって阻止され、したがって、より高い焼結温度又はより大きなLi過剰量を必要とするため、産業的適用性は制限される。高い電圧安定性を達成するために、LiCoO
2材料は通常(例えばAl
2O
3で)コーティングされるか、又は化学的に(例えばフッ素化表面を施すことによって)改質される。問題は、コーティングされた密なLiCoO
2粒子は、より大きな分極及びより低いLiイオン拡散を有することが多く、このことによって、より低い可逆容量及びレート性能が低下をもたらされ、より高い電圧まで充電することによって達成されるエネルギー密度の利得の一部は、より低い固有容量によって無効にされる、ということである。
【0011】
結果として、現在の合成技術では、優れたエネルギー密度、すなわち電気化学的電力及びサイクル寿命特性、を有する密でモノリシックなLiCoO
2系粒子を達成することができない。部分的な改善と最適化が達成されているが、上記の基本的な問題はまだ完全には解決されていない。したがって、高エネルギー密度のLiCoO
2系カソードが、安定した方法で、すなわち、より高い電圧での実セルでの副反応及び金属溶出を低減することによって、サイクルされ得る必要があることは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高い充填密度、高いレート性能、改善された放電容量、及び高い充電電圧における長いサイクル中に高い安定性を示す高性能二次電池用途のためのカソード材料を画定することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様から見ると、本発明は、以下の生成物の実施形態を提供することができる。
実施形態1:一般式(1−x)[Li
a−bAb]
3a[Co
1−cM
c]
3b[O
2−d−eN’
e]
6c.xLi
3PO
4[式中、0.0001≦x≦0.05、0.95≦a≦1.10、0<b+c≦0.1、−0.1≦d≦0.1及びe≦0.05である]で表される、再充電可能電池に用いられるカソード材料用の層状リチウム金属酸化物粉末であって、Li対(Co+A+M+3P)のモル比が0.970〜1.005であり、A及びMは、Mg、Ti及びAlからなる群の少なくとも1つを含む1つ以上の元素であり、N’は、F、S、N及びPからなる群のいずれか1つ以上のドーパントであり、粉末は、コア及び表面層を含み、コアは元素Li、Co及び酸素を含む層状結晶構造を有して、0と0.05未満の間のP対Coのモル比を有し、表面層は元素Li、Co及び酸素の混合物からなり、混合物は、Mg、Ti及びAlからなる群から選択される1つ以上の元素を含む酸化物からなる電子絶縁性粒子を更に含み、酸化物はLiとCoの一方又は両方を更に含むことができ、混合物は、コアに密に付着した個別の粒子の形態の複数のイオン伝導性Li
3PO
4粒子を更に含む、リチウム金属酸化物粉末。Li対(Co+A+M+3P)のモル比は[((1−x).(a−b))+3x]/[((1−x).(1+b))+3x]に対応する。更なる実施形態では、b>0若しくはc>0、又はb>0及びc>0の両方である。「密に付着した」とは、個別の粒子が、全く、又は少なくともかなりの力を及ぼすことなくコアから分離され得ず、それとは逆の「ゆるく付着した」粒子とは、例えば、固相混合による付着だけで、容易に分離され得ると理解される。
【0014】
実施形態2:一般式において、
0.970≦[((1−x).(a−b))+3x]/[((1−x).(1+b))+3x]≦1.000である。
【0015】
実施形態3:一般式において、
0.970≦[((1−x).(a−b))+3x]/[((1−x).(1+b))+3x]≦0.990である。
【0016】
これらの実施形態では、Li対(Co+A+M+3P)のモル比を1.000又は更に0.990に限定することにより、以下に示すように、電気化学的試験においてより良好な結果が達成される。
【0017】
実施形態4:粉末でLi
3PO
4をフィルム層と個別の粒子の組み合わせでコアの表面に付着させて、コア上にイオン伝導性電子絶縁層を形成する。
【0018】
実施形態5:粉末において、Li
3PO
4粒子は、5μm未満、好ましくは1μm未満のサイズを有し得る。
【0019】
実施形態6:実施形態4において、フィルムとして存在するLi
3PO
4は、コアの表面の少なくとも50%を覆うことができる。
【0020】
実施形態7:実施形態4において、フィルムは10nm未満であるが>0nmの厚さを有することができる。
【0021】
実施形態8:粉末において、Li
3PO
4は結晶性化合物であってもよい。
【0022】
実施形態9:粉末において、Li
3PO
4は、酸素サイト上に最大25at%の窒素ドーピングを有することができる。
【0023】
実施形態10:実施形態4において、XPSによって決定される(A+M)/Coのモル比が、[(b+c)/(1−c)の2倍]よりも大きい場合の深さとして定義される、イオン伝導性電子絶縁表面層の厚さが、と、1μm以下であるが、>0μmである。粉末の全体の式中、(A+M)/Coのモル比は(b+c)/(1−c)で表される。A及びMが表面層に偏析すると、この層の深さは、モル比(A+M)/Coが一般式の値の2倍を超える領域として定義され得る。表面層では、A、M及びCoのモル含量は、XPS(X線光電子分光法)を用いて測定される。
【0024】
実施形態11:実施例10において、厚さは0.5μm以下であるが、>0μmである。
【0025】
実施形態12:粉末の一般式において、Aは、Mg、Ti及びAlからなる群の少なくとも1つの他に、Na、Si、S、K、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Sr、Nb、Zr、W、F及び希土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことができる。実施形態13:一般式において、Mは、Mg、Ti及びAlからなる群の少なくとも1つの他に、Li、Na、Si、S、K、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Sr、Nb、Zr、W、F及び希土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの元素を更に含むことができる。
【0026】
実施形態14:粉末は、室温で10
−3S/cm未満、又は10
−4S/cm未満、又は更に10
−5S/cm未満の電気伝導率を有する。
【0027】
実施形態15:一般式において、P/Coモル比は0.01〜5モル%である。
【0028】
実施形態16:一般式において、Li/(Co+3P)のモル比は0.980〜1.020である。
【0029】
実施形態17:粉末は、20μmol/g未満、好ましくは15μmol/g未満、より好ましくは12μmol/g未満の可溶性塩基含量を有することができる。
【0030】
本発明による更なる生成物の実施形態は、前述の様々な生成物の実施形態により網羅される個々の特徴を組み合わせることにより提供され得ることは明白である。
【0031】
第2の態様から見ると、本発明は、以下の方法実施形態を提供することができる。
実施形態18:前述のリチウム金属酸化物粉末の製造方法であって、
第1のCo含有前駆体粉末又はCo、A及びM含有前駆体粉末並びに第1のLi含有前駆体粉末の第1の混合物を準備するステップであって、第1の混合物がLi:Coモル比が1.02超、又は更に1.04超、である、第1の混合物を準備するステップと、
350℃、又は少なくとも600℃、又は少なくとも900℃の温度T1で、酸素含有雰囲気中で第1の混合物を焼結して、Li富化リチウム金属酸化物化合物を得るステップと、
第2のCo含有前駆体粉末又はCo、A及びM含有前駆体粉末並びにホスフェート含有試薬を準備するステップと、
Li富化リチウム金属酸化物化合物、第2のCo含有前駆体粉末又はCo、A及びM含有前駆体粉末、並びにホスフェート含有試薬を混合して、Li対(Co+A+M+3P)のモル比が0.970〜1.005である第2の混合物を得るステップと、
少なくとも600℃の温度T2で、酸素含有雰囲気中で第2の混合物を焼結するステップと、を含む方法。この温度は、700〜1000℃、又は850〜950℃に設定されてもよい。第2の混合物には、第2のLi含有前駆体粉末をT2での焼結ステップの前に添加することができる。この方法におけるLi含有前駆体粉末は、Li
2CO
3であってよい。このプロセス実施形態では、Li富化リチウム金属酸化物化合物、第2のCo含有前駆体粉末又はCo、A及びM含有前駆体粉末、並びにホスフェート含有試薬を混合して、Li対(Co+A+M+3P)のモル比が0.970〜1.005の間にある第2の混合物を得るステップを、以下のように変更してもよい。A及びM含有前駆体粉末を第2混合物に添加せず、第2混合物を乾燥又は噴霧乾燥して、Li
3PO
4粒子を、混合物中の固体上に析出させる。その後、A及びM含有前駆体を添加して、Li対(Co+A+M+3P)のモル比が0.970〜1.005である第3の混合物を得て、最後の焼結ステップに続く。
【0032】
実施形態19:前述のリチウム金属酸化物粉末の製造方法であって、
第1のCo含有前駆体又はCo、A及びM含有前駆体、並びに第1のLi含有前駆体粉末の第1の混合物を準備するステップであって、第1の混合物はLi:Coモル比が1.01超、又は更に1.04超、である、第1の混合物を準備するステップと、
少なくとも350℃、又は少なくとも600℃、又は少なくとも900℃の温度T1で、酸素含有雰囲気中で第1の混合物を焼結して、Li富化リチウム金属酸化物化合物を得るステップと、
Li富化リチウム金属酸化物化合物をホスフェート及びリチウム含有試薬と混合して、Li富化リチウム金属酸化物化合物の表面上にLi
3PO
4粒子(フレーク)を析出させて第2の混合物を得るステップと、
第2のCo含有前駆体粉末又はCo、A及びM含有前駆体粉末を準備するステップと、
第2の混合物並びに第2のCo含有前駆体粉末又はCo、A及びM含有前駆体粉末を混合して、第3の混合物を得るステップであって、第3の混合物が0.970〜1.005のLi対(Co+A+M+3P)のモル比を有する、第3の混合物を得るステップと、
少なくとも600℃、又は更に少なくとも700℃の温度T2で、酸素含有雰囲気中で第3の混合物を焼結するステップと、を含む方法。この温度は、700〜1000℃、又は850〜950℃に設定されてもよい。第3の混合物には、第2のLi含有前駆体粉末をT2での焼結ステップの前に添加することができる。この方法におけるLi含有前駆体粉末は、Li
2CO
3であってもよい。ホスフェート及びリチウム含有試薬は通常液体に含まれるので、乾燥した第2のCo含有前駆体粉末又はCo、A及びM含有前駆体粉末を加えて第3の混合物を得る前に、第2の混合物はまず乾燥されてもよい。プロセス実施形態19では、Co前駆体粉末をLi富化リチウム金属酸化物化合物、ホスフェート及びリチウム含有試薬と混合して、次いで噴霧乾燥された中間混合物を得、第2の混合物中にCo前駆体粉末及びLi富化リチウム金属酸化物化合物の混合物上にLi
3PO
4粒子(フレーク)を析出させる。その後、A及びM含有前駆体粉末のみを加えて第3の混合物を得た後、焼結する。異なるプロセス実施形態では、A及びM含有前駆体は、Al酸化物、すなわちAl
2O
3を含むことができ、MgOとTi
2O
3のいずれか1つを含むこともできる。Co前駆体はCo
3O
4であってもよい。
【0033】
第3の態様から見ると、本発明は、Liイオン、Liポリマー又は固体状態の二次電池(SSBとしても知られている)のいずれか1つにおける、前述のリチウム金属酸化物粉末の使用を実施形態20において提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図2、6及び11において、倍率はx5000であり、白いバーは1μmを表す。
【0036】
本発明は、高いエネルギー密度を有し、高い電圧で優れたサイクル安定性を保持するリチウム二次電池用LiCoO
2系正極活物質を開示する。第1の態様から見ると、本発明は、再充電可能電池におけるカソード材料用のリチウム金属酸化物粉末を提供することができ、それは一般式(1−x)[Li
a−bA
b]
3a[Co
1−cM
c]
3b[O
2−d−eN’
e]
6c.xLi
3PO
4を有し、ここで[]の後に追加された文字はサイトを表し、式中0.0001≦x≦0.05、0.90≦a≦1.10、0<b+c≦0.1及び−0.1≦d+e≦0.1であって、A及びMは、Mg、Ti及びAlからなる群の少なくとも1種を含む1つ以上の元素である。リチウムコバルト酸化物系材料は、菱面体晶対称性(a〜2.8(1)Å及びc〜14.1(1)Åを有する空間群R−3m)を有する層状材料であり、a−NaFeO
2と同形である。そのような構造では、Li及びCoイオンは酸素最密充填から八面体サイトを占め、Liイオンは優先的に(x,y,z)=(0,0,0)結晶サイト(3aワイコフ位置)を占め、Coイオンは優先的に(0,0,1/2)(3bワイコフ位置)を占め、Oイオンは(0,0,z)(6cワイコフ位置)を占める。Aは、3aサイト上のドーパントであって、Na、Mg、Al、Si、S、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Sr、Nb、Zr、W、F及び希土類金属から選択され、Mg、Ti及びAlからなる群のうちの少なくとも1つである。Mは、3bサイト上のドーパントであって、Li、Na、Mg、Al、Si、S、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Sr、Nb、Zr、W、F及び希土類金属からなる群から選択され、Mg、Ti及びAlからなる群の少なくとも1つである。N’は6cサイト上のドーパントであって、F、S、N及びPの中から選択される。特に、金属サイト(3bサイト)上のLiドーピングは、そのような層状コバルト系構造について報告されていて、酸素欠損をもたらし、典型的には最大0.1までのLiイオンが3bサイトを占めることができ、約0.1の酸素欠損をもたらす。本発明者らは、本発明の材料の電気化学的性能が、(Li):(Co+M+A+3P)のモル比が0.970〜1.005、好ましくは0.970〜1.000である場合に大きく改善されることを見出した。モル比が1.005を超えると、電気化学的特性、主として高電圧におけるサイクル安定性が低下する。一方、0.970未満の値では、材料の比容量が著しく減少する。これらの考察は(1−x)[Li
a−bA
b]
3a[Co
1−cM
c]
3b[O
2−d−eN’
e]
6c.xLi
3PO
4材料が、最良に作動するためには、0.970≦[((1−x).(a−b))+3x]/[((1−x).(1+b))+3x]≦1.005、好ましくは0.97≦[((1−x).(a−b))+3x]/[((1−x).(1+b))+3x]≦1.000の化学量論比を有さなければならないことを示す。
【0037】
本発明の材料は、第2の相Li
3PO
4を含み、結晶状態又は非晶質状態、又は結晶状態及び非晶質状態の両方の組み合わせで存在する。β(空間群Pmn2
1)及びγ(xyz軸の参照選択に依存する空間群Pnma、Pmnb又はPcmn)として認識されるLi
3PO
4の特性のよく知られた結晶多形が2つ存在する。α型は、文献[Popovic et al.,J.Raman Spectrosc.,34,77(2003)]に記載されているが、その結晶構造はまだ完全に解明されていない。β型は、400〜600℃の範囲を超える温度で不可逆的にγ型に変換することができる。γLi
3PO
4では、ワイコフ位置を使用すると、リチウムイオンは8dと4cと同定される2つの異なる結晶学的サイトを占め、リンは4cにあり、酸素は8d及び2つの4cと示される3つの別個のサイトを占める。A元素によるLi
3PO
4のドーピングが可能であり、Li
3PO
4と同形のLi
3P
1−xA
xO
4化合物が得られる。O(少なくとも25at%まで)を部分的に置換するN(窒素元素)を有するLi
3PO
4化合物も可能であり、Li
3PO
4と同形の、−1≦α≦1及び0<β≦1及び0<γ≦1を有する化合物Li
3−αPO
4−βN
γをもたらす。Li
3PO
4は、Li/Li
+に対して最大4.7Vまでの、比較的高いLiイオン伝導度及び良好な電気化学的安定性を特徴とし、例えば、Kuwata et al.,ECS Trans.,16,53(2009)は、全固体リチウムイオン二次電池(SSB)用の潜在的電解質として使用するのに適した、25℃で4.5×10
−7S/cmの電気伝導率を報告した。
【0038】
モル比P/Coで表されるLi
3PO
4の量は、0.01mol%〜5mol%であり得る。その量が0.01mol%未満の場合、電気化学的特性に影響は観察されず、その量が5mol%を超えるとカソード材料の比容量が著しく低下する。本発明の材料は、1つ以上のA、M、Li及びCo元素を含む酸化物の形態の第2の化合物を含み得る。典型的な例には、Li
2O、Li
2SO
4、Li
2TiO
3、MgO、CoO、Mg
1−xCo
xO、Co
3O
4、Co
3−xMg
xO
4、Li
2ZrO
3、Li
1+xNi
1−XO
2、などがあるが、これらに限定されない。LiFも存在し得る。一実施形態では、二次相の量は5
重量%を超えない。量が多すぎると、カソード材料の比容量が大きく低下する。
【0039】
本発明のカソード材料は、コア及びイオン伝導性電子絶縁表面層からなり、コアは層状結晶構造を有し、表面層は、コアの元素、Mg、Ti及びAlからなる群の元素のいずれか1つ以上を含む酸化物並びにLi
3PO
4の混合物を含む。物質の粒子表面上の局所的な副反応(電解質の減少、コバルト溶出など)は、リチウムカチオン及び電子が同時に存在することを必要とする。リチウムカチオンは電解質中に存在し、電子はカソードバルク中に存在する。しかしながら、電子絶縁層がカソードバルク中の電子を電解質中のリチウムカチオンから物理的に分離する場合、更なる電解質の還元は不可能である。電子的に絶縁性のカソード材料をうまくサイクルすることができれば、電解質の酸化は電子がカソードに供給されることを必要とするので、高い電圧安定性が期待される。しかしながら、比較的低い電気伝導率を有するカソードは、良好な電気化学的性能を有することができないということは従来の知見である。明らかに、電子絶縁性及びイオン伝導性表面を有するカソード材料がこの問題を解決するであろう。この問題は、本発明の材料によって、コアの元素、特にLi及びCo、並びにリチオ化されてその式にCoを有してもよい電子絶縁酸化物を含む、機能化粒子表面を提供することによって対処される。
【0040】
LiCoO
2の電気伝導率は、(米国特許出願公開第2012/0107691(A1)号に記載されているように)室温で10
−2〜1S/cmの範囲内である。本発明の材料は、非常に低い電気伝導率を有し、従来技術のリチウムコバルト酸化物よりも少なくとも1(〜10
−3S/cm)〜3(<10
−5S/cm)桁程度低い大きさの導電率値を有して、優れたリチウムイオン導電性を依然として保持する。本発明者らは、電気伝導率と高イオン伝導性の共存が本発明の重要な特徴であり、得られる相乗効果により、カソード材料の優れた高電圧安定性を達成できると考える。そのような低導電率のLiCoO
2系カソードが優れた電気化学的性能をもたらすことができることは驚くべきことである。なぜなら、比較的高い電気伝導率が、カソード粒子内及び電解質とカソード粒子の間の界面を横切るLiカチオン拡散に必要であることが、一般的には認められているからである。
【0041】
Liイオン伝導性Li
3PO
4化合物は、フィルム層、個別の粒子又はフィルム層と個別の粒子の組み合わせの形態でコアの表面に付着される。一実施形態において、Li
3PO
4化合物は、粒子に密に付着し、表面を均一に覆う。少なくとも2つの実施形態では、本発明者らは、典型的な直径が5μm未満であり、リチウムコバルト酸化物系粒子に密に付着した、典型的には0.01〜20nmの範囲の厚さ(XPSを用いて対SiO
2から決定される)で粒子を均一に覆うフィルムと組み合わせられた、複数のLi
3PO
4粒子の共存を推測する。本発明者らは、結果として、高電圧において金属(コバルト)溶出が強く抑制されることを観察したので、Li
3PO
4化合物のそのような分布及び形態は、特に望ましい。本発明者らは、Li
3PO
4コーティング層は、良好なイオン伝導性を提供することに加えて、HFレベルを低下させる電解質中の水の吸収、HFの除去、及び電解質との劣化副反応からの活物質の保護など、いくつかの機能を果たすと推測する。この段階では、電子絶縁性表面とイオン伝導性表面の組み合わせのみが、優れたサイクル安定性と、高電圧における(抑制された)金属溶出を改善することができることを想起することが重要である。
【0042】
A、M及びN’元素は、XPSによって示されるように、粒子の表面からコアへの半径方向の勾配ドーピング分布で(コアから)分離されているように見える。少なくとも2つの実施形態において、本発明者らは、A及びM元素対Coの原子比が、約500nmの深さ(表面から、XPSによって対SiO
2から決定される)内の公称含有量(b+c)/(1−c)を超えることを観察している。そのようなA、M及びN’元素は分離され、粒子の表面でより高い濃度で見出されることが特に望ましい。本発明者らは、例えば、Mg、Ti及びAlの場合、Mg−O、Ti−O及びAl−Oの金属−酸素結合の安定した性質のために、電解質と接触する表面層の構造的安定性が改善され、高電圧での広範なサイクリングにおいて改善された容量保持が可能になると推測する。層状相のドーピングに加えて、リストA及びMの1つ以上の元素並びにコアからの元素(Li及びCo)も二次相として存在することができ、これらの二次相は、粒子の表面に密に付着されやすい。A及びMのリストからの元素の二次相の例としては、Li
2O、LiF、Li
2SO
4、Li
2TiO
3、MgO、CoO、Mg
1−xCo
xO(0≦x≦1)、Co
3O
4、Co
3−xMg
xO
4(0≦x≦1)、Li
2ZrO
3、Li
2MgZrO
4、Li
1+xNi
1−xO
2(0≦x≦1)、Co
2MgO
4、Li
2TiO
3、ZrO
2、SiO
2、Al
2O
3、LiAlO
2、Li
2SiCoO
4、などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの元素のほとんどは電気化学的に不活性であり、活物質の比容量を高く維持するためには、二次相の量を5重量%未満、好ましくは2.5重量%未満に保つことが重要である。そのような二次相は、粒子表面に密に付着され、1〜100nmの深さ内に蓄積すると考えられる。
【0043】
N’元素は、F、S、N及びPのリストから選択される。例えば、Fが部分的にOを置換するとき及びCo−F及びLi−F結合の強い安定した性質のために、カソード材料の寄生反応(電解質分解)に関して、高電位における電気化学的安定性が改善されると予想される。
【0044】
いくつかの実施形態では、コア材料粒子はモノリシックな形態を有し、D50>10μm、又はD50>15μm又は更に>20μmの平均粒径を有する。プレスされた密度が改善され、Brunauer−Emmett−Teller(BET)表面積が制御されて0.5m
2/g未満であるので、コア材料はそのような密でモノリシックな形態を特徴とすることが特に望ましい。他の実施形態では、粒度分布は、微粒子及び大粒子の混合物を有する二峰性プロファイルを有し、微粒子の量は、典型的には1〜25重量%、又は更に10〜20重量%であり、大粒子と微粒子の間のモード比は、少なくとも3μm/μm超、更に4μm/μm超、及び又は更に5μm/μm超である。そのような方法は、いくつかの実施形態が、少なくとも3.5g/cm
3、又は更に少なくとも3.7g/cm
3の圧縮密度に達することを可能にする。
【0045】
第2の態様から見ると、本発明は、前述のプロセス方法を提供することができる。特定の実施形態では、この方法は、
第1のCo酸化物、Ti酸化物及びMg酸化物の第1の混合物、及び第1のLi含有前駆体粉末を準備するステップであって、第1の混合物はLi:Coモル比が1.05超である、ステップと、
少なくとも350℃、又は少なくとも600℃、又は更に少なくとも900℃の温度の酸素含有雰囲気中で第1の混合物を焼結し、それによってLi富化リチウム金属酸化物化合物を得るステップと、
Li富化リチウム金属酸化物化合物の表面上にLi
3PO
4フレークを析出させるステップと、
Li
3PO
4フレークを担持するLi富化リチウム金属酸化物化合物を、第2のCo酸化物、Ti酸化物及びMg酸化物の第2の混合物、及び第2のLi含有前駆体粉末と混合し、それによって第3の混合物を得るステップであって、この第3の混合物におけるLi対(Co+Ti+Mg+3P)のモル比が0.970〜1.005、好ましくは0.985〜1.000であるステップと、
少なくとも600℃、又は更に少なくとも900℃の温度の酸素含有雰囲気中で、第3の混合物を焼結するステップと、を含む。析出は、Li富化リチウム金属酸化物化合物を水に浸漬し、LiH
2PO
4及びLiOHなどのリチオ化ホスフェートの水溶液を添加した後、乾燥機又は噴霧乾燥によって水を蒸発させることによって得られ得る。
【0046】
第1の焼結ステップ中にリチウム超化学量論的混合物が形成され、第2のステップにおいて、過剰のLiが、第2のCo含有前駆体と反応してリチオ化コバルト酸化物を形成することにより、及びホスフェート含有試薬と反応してLi
3PO
4を形成することによって消費される、本発明の方法により、Li、Co及び酸素の元素の異種混合物からなる複合表面構造が得られる。この混合物は、Mg、Ti及びAlからなる群のいずれか1つ以上の元素を含む酸化物からなる電子絶縁性粒子を更に含む。この酸化物は、LiとCoのいずれか又は両方を更に含むことができ、混合物は、コアに密に付着した個別の粒子の形態の複数のイオン伝導性Li
3PO
4粒子を更に含む。第1の焼結ステップの後のLi対金属比が第2の焼結工程中において低減されない場合、A及びM酸化物が偏析したそのような表面層は形成されない。実施例に示すように、この複合コア表面層構造を有する粉末は、従来技術の粉末より良好な電気化学的結果を示す。Li対(Co+A+M+3P)のモル比はこれらの結果に直接的な影響を有することも示されている。
【0047】
M前駆体は、好ましくは、TiO
2、MgO、Al
2O
3、ZnO、ZrO
2、Li
2ZrO
3、Li
2TiO
3などのこれらに限定されないミクロン又はサブミクロンサイズの粉末である。ホスフェート含有試薬の例としては、Li
3PO
4、LiPO
3、H
3PO
4、Li
3−xH
xPO
4(0≦x≦3)、(NH
4)
3PO
4、H(NH
4)
2PO
4、H
x(NH
4)
3−xPO
4(0≦x≦3)などが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなホスフェート含有試薬は、水性媒体中に分散した後、湿式含浸、析出又は噴霧コーティング、ノズル噴霧などの方法によって適用されるのに特に適している。Li
1+xTi
2−xAl
x(PO
4)
3(0≦x≦1)及びLiTi
2−xZr
x(PO
4)
3(0≦x≦2)などの、これらに限定されない、一般式M’PO
4[式中M’はMから選択される1つ以上の金属を含む]を有するAlPO
4、LISICON化合物などの、他のA及びM及びホスフェート含有試薬が可能である。これらの場合には、ミクロンサイズ、又は更にサブミクロンサイズのそのような試薬の粉末を上記プロセスで使用することができる。
【0048】
このプロセスにおける重要な態様は、ホスフェート含有試薬とリチウム金属酸化物化合物の混合物のアニーリング温度を制御することである。アニーリングは、350℃〜1100℃の温度範囲で行われ得る。アニーリングは、LiCoO
2系材料粒子の表面にLi
3PO
4化合物を密に付着させるために600℃〜1100℃の範囲で行われるのが好ましい。
【0049】
要約すると、本発明は、高電圧(典型的にはLi金属に対して4.6V)における電解質と高反応性コア表面の直接接触を防止して寄生反応(電解質酸化、金属溶出など)を抑制し、高電圧(典型的にはLi金属に対して4.6V)における優れた容量、容量低下及びエネルギー低下を特徴とするイオン伝導性電子絶縁表面を有する正極活物質を設計する独特の戦略を開示する。更に、イオン伝導性の高い電子絶縁性正極活物質表面により高速のLiイオン移動反応が可能となり、不可逆容量が大幅に低減され、レート性能が大幅に改善される。そのような向上した電気化学的特性は、上記の材料がLiイオン、Liポリマー又は全固体Liイオン二次電池(SSB)に適合される場合に非常に望ましい。
【0050】
本発明は、以下の実験方法が使用される以下の実施例で更に説明される。
【0051】
カソード材料の元素組成を決定するために、Agilent ICP−720ESで誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−OES)を実施する。
【0052】
走査型電子顕微鏡(SEM)は、JEOL JSM 7100F走査型電子顕微鏡を用いて行われる。電子顕微鏡には、Oxford instrumentsの50mm
2 X−Max
N EDS(Energy−dispersive X−ray spectroscopy)センサーが取り付けられている。
【0053】
X線回折は、Cu(Kα)ターゲットX線管回折ビームモノクロメータを備えたRigaku D/MAX 2200 PCディフラクトメータを用いて、15〜85度の2Θ範囲、室温で行われる。異なる相の格子パラメータは、完全パターンマッチング及びリートベルト精密解析法を用いてX線回折パターンから計算される。
【0054】
導電率は、4プローブ構成のLoresta GP MCP−T610マルチメータを備えた三菱MCP−PD51粉末抵抗率測定システムで測定される。粉末で直接測定される導電率は、表面層の導電率に対応する。測定は、63.7MPaの印加圧力下で、粉末状カソード材料で行われる。
【0055】
残留Li
2CO
3及びLiOH塩基含有量は、表面と水の間の反応生成物の分析によって定量的に測定され得る材料表面特性である。粉末が水に浸されると、表面反応が起こる。反応中、水のpHは(塩基性化合物が溶出するにつれて)増加し、塩基はpH滴定によって定量化される。滴定の結果は、「可溶性塩基含有量」(SBC)である。可溶性塩基の含有量は、以下のように測定することができる。20gのカソード粉末に100mLの脱イオン水を加えた後、10分間撹拌する。空気からのCO
2取り込みが起こり得て誤った結果が導かれ得るため、撹拌期間中にフラスコを閉じて空気への暴露を防ぐように注意する。次いで、吸引によりブフナー濾過を用いて水溶液を除去し、それにより可溶性塩基を含有する90g超の透明な溶液を得る。可溶性塩基の含有量は、撹拌しながらpHが3に達するまで、0.5ml/分のレートで0.1M HClの添加中にpHプロファイルを記録することによって滴定される。参照電圧プロファイルは、DI水中に低濃度で溶出したLiOH及びLi
2CO
3の適切な混合物を滴定することによって得られる。ほとんどすべての場合において、2つの異なるプラトーが観察される。pH8〜9の間の終点γ1(mL)を有する上部プラトーはOH
−/H
2O、続いてCO
32−/HCO
3−であり、pH4〜6の間の終点γ
2(mL)を有する下部プラトーはHCO
3−/H
2CO
3である。第1プラトーと第2プラトーの間の変曲点γ1及び第2プラトーの後の変曲点γ2は、pHプロファイルの微分係数dpH/dVolの対応する最小値から得られる。第2の変曲点は一般にpH4.7に近い。次いで、結果は、LiOH及びLi
2CO
3の重量パーセントで、SBCの場合はμmol/gで表される。
【0056】
圧縮密度は、次のように測定される。3グラムの粉末を、直径「d」が1.300cmのペレットダイに充填する。207MPaの圧力に相当する2.8トンの一軸荷重を30秒間加える。荷重を7.4MPa(100kgの一軸荷重)まで緩和した後、圧縮粉末の厚さ「t」を測定する。ペレット密度は、次のように計算される。3/(Πx(d/2)
2xt)g/cm
3。
【0057】
粒度分布は、水性媒体中に粉末を分散させた後、Hydro 2000MU湿式分散アクセサリを有するMalvern Mastersizer 2000を用いて測定される。PSDにおいて、D50値は、体積分布のメジアン値である。すなわち、分布をこの直径で分割すると、上半分と下半分に分割される、ミクロン単位のサイズのことである。D10及びD90値は同様に定義される。
【0058】
コインセルの電気化学的特性は以下のように測定される。コインセル電極を、次のように調製する。約27.27wt.%の活性カソード材料、1.52wt.%ポリフッ化ビニリデンポリマー(KF polymer L #9305,Kureha America Inc.)、1.52wt.%導電性カーボンブラック(Super P,Erachem Comilog Inc.)及び69.70wt.%N−メチル−1,2−ピロリドン(NMP)(Sigma−Aldrich製)を高速ホモジナイザーにより密に混合する。次いで、このスラリを、テープキャスティング法によってアルミニウム箔上に薄層(典型的には100マイクロメートルの厚さ)で広げる。NMP溶媒を蒸発させた後、キャストフィルムを40マイクロメートルのギャップを使用してロールプレスで処理する。電極は直径14mmの円形ダイカッタを使用してフィルムから打ち抜かれる。次いで電極を90℃で一晩乾燥させる。続いて電極を秤量して、活物質の積載量を決定する。典型的には、電極は、約17mg(約11mg/cm
2)の活物質積載重量を有する90wt.%活物質を含む。次いで、電極をアルゴン充填グローブボックスに入れ、2325型コインセル本体内で組み立てる。アノードは、500マイクロメートルの厚さのリチウム箔である(Hosenより入手)。セパレータはTonen20MMS微多孔性ポリエチレンフィルムである。コインセルに、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの1:2体積比の混合物に溶出したLiPF
6の1M溶液を充填する(Techno Semichem Co.より入手)。各セルを、Toscat−3100コンピュータ制御ガルバノスタティックサイクリングステーション(東洋製)を用いて25℃でサイクルする。コア_1、コア_2、及びサンプル1a〜1gを評価するのに使用されるコインセル試験スケジュールを、表4に詳述する。このスケジュールでは、160mA/gの1C電流定義を使用し、以下のように2つの部分で構成される。
(i)パートIは、4.3〜3.0V/Li金属のウィンドウ範囲内での、0.1C(10時間で完全放電)、0.2C、0.5C、1C(1Cは1時間での完全放電に対応する)、2C及び3Cにおけるレート性能の評価である。初期充電容量CQ1と放電容量DQ1が定電流モード(CC)で測定される第1サイクルを除き、すべての後続サイクルは、充電中、定電流−定電圧で行われ、終了電流基準を0.05Cとする。最初のサイクルに対して30分及びその後のすべてのサイクルに対して10分の休止時間が、各充電と放電の間に許容される。不可逆容量Qirr.は次のように%で表される:
【0060】
0.2C、0.5C、1C、2C及び3Cにおけるレート性能は、次のように、nC=0.2C、0.5C、1C、2C、及び3Cに対してそれぞれn=2、3、4、5及び6を有する保持放電容量DQn間の比として表される:
【0064】
(ii)パートIIは、0.5Cにおけるサイクル寿命の評価である。4.6V/Li金属における放電容量は、サイクル7において0.1Cで、サイクル8において1Cで測定される。0.1C及び1Cにおける容量低下は次のように計算され、100サイクルあたりの%で表される:
【0066】
0.1C及び1Cにおけるエネルギー低下は次のように計算され、100サイクルあたりの%で表され、Vnは、サイクルnでの平均電圧である
【0068】
フロート充電法:
市販の「3M電池電解質HQ−115」の最近の技術報告では、高電圧における新規電解質の安定性を試験するのにフロート充電法が使用されている。この方法は、4.2V及び60℃で900時間、LCO/グラファイトパウチセル又は18650セルを連続充電することにより行われる。充電下で記録される電流を比較する。より高い電流は、発生するより多くの副反応を反映するので、この方法は、高電圧でバッテリ内に発生する寄生反応を識別することができる。「Energy Environ.Sci.,6,1806(2013)」では、Li金属に対して5V〜6.3Vの高電圧下での酸化に対する電解液の安定性を評価するのに同様のフロート充電法が使用されている。上記の知識に基づいて、要求される充電電圧に対して比較的安定な電解質及びアノード材料を選択することによって、フロート充電法を用いて、高電圧下のカソード材料の安定性を研究することができ、漏洩電流によってカソード材料からの金属溶出を反映することができる。更に、「Nature Comm.,4,2437(2013)」には、リチウムマンガン酸化物カソードからの溶出マンガンが、金属又は金属合金の形でアノードの表面に付着し、その付着量を、誘導結合プラズマ原子吸光分光法(ICP)によって検出することができる。このアノード上のICP実験は、リチウムコバルト酸化物系材料の金属溶出の問題を研究するためにも使用され得る。したがって、ICP測定に関連するフロート充電法(以下、「フロート実験」と呼ぶ)は、高電圧及び高温におけるリチウムコバルト酸化物系カソード材料の副反応及び金属溶出を評価するための適切な方法である。
【0069】
本研究では、高電圧充電及び高温(50℃)におけるカソード材料の安定性を評価するために、フロート実験を行った。いくつかの実施形態では、試験された電池構成は、以下のように組み立てられたコインセルである。2つのセパレータ(SK Innovation製)を、正極(前述)とグラファイト負極(三菱MPG)の間に配置する。電解質は、EC/DMC(1:2体積比)溶媒中の1M LiPF
6である。準備したコインセルを、以下の充電プロトコルに供する。まず、C/20レートテーパ電流(1C=160mAh/g)を有する定電流モードで、コインセルを所定の上限電圧(4.45V対グラファイト)に充電し、次いで、50℃で120時間、4.45Vの一定電圧(CVモード)に維持する。フロート実験の後、コインセルを分解する。アノードと接触するアノード及びセパレータは、金属溶出分析のためにICP−OESによって分析される。
【0070】
X線光電子分光法(XPS):XPS測定は、ULVAC−PHI(Q2)のQuantera SXM(商標)で実施される。測定は、単色のAlKα線と、100μmのスポットサイズ(100ワット)を使用して1200×500μm
2の面積にわたってスキャンして行われる。測定角度Θは45°であり、この設定では、情報の深さは約7nmである。ワイドスキャン測定によって、表面に存在する元素を同定する。正確な狭いスキャンを行い、正確な表面組成を決定する。濃度−深さプロファイルは、測定及びイオンボンバードメントを交互に行うことによって求められる(アルゴンイオン、V
i=4kV、ラスタ3.6x3.6mm
2、SiO
2中のスパッタレート:8.8nm/分。他の材料では、スパッタレートは異なる)。標準感度係数を使用して、ピーク面積を原子濃度に変換する。結果として、絶対的な意味では、濃度は実際からずれが発生する可能性がある。スパッタ深さプロファイルでは、優先スパッタリング効果のためにずれがより大きくなり得る。異なる元素の検出限界は、典型的には0.1at%であり、0.1at%未満の原子濃度を有する元素はXPSによって観測されず、0.1at%未満の濃度の元素の存在は除外され得ないことを意味する。
【0071】
実施例1:
この実施例は、電子絶縁表面を有するLiCoO
2系粒子を含み、及びイオン伝導性の結晶性Li
3PO
4を含む材料は、最新のリチウムコバルト酸化物と比較して優れた電気化学的挙動を有することを示すであろう。
【0072】
サンプル調製:Li/Co/Ti/Mgのモル比が1.075/0.9967/0.0008/0.0025であるLi
2CO
3、Co
3O
4、TiO
2及びMgOの混合物を用いて、Ti及びMgをドープしたLiCoO
2系材料を量産規模で調製する。生成物をセラミックトレイに入れ、990℃の温度で空気中で10時間焼結する。次いで、生成物を粉砕し、分級して、
図1に示すように、約28μmのメジアン体積粒径D50を得る。粉末の圧縮密度は3.90g/cm
3である。調製したサンプルをコア_1と呼ぶ。コア_1サンプルのSEM画像を
図2(1a参照)に示す。
【0073】
次に、以下のように、コア_1の表面に1モル%のLi
3PO
4を適用する。ある量のコア_1の粉末を脱イオン水に5:2の重量比で浸漬し、連続的に撹拌した。1.02mol/LのLiH
2PO
4の水溶液と2.04mol/LのLiOHの水溶液を1mL/分のレートで同時に滴下した。次いで、水を90℃の乾燥機中で蒸発させる。その結果、LiH
2PO
4はLi
3PO
4粒子に析出し、コア−1粒子の表面上に付着する。調製したサンプルをコア_2と呼ぶ。コア_2サンプルのSEM画像が
図2(1b参照)に示されており、コア_2粒子が約500nmの典型的なサイズを有する、析出したLi
3PO
4のフレークによって均一に覆われていることを示している。
【0074】
次に、サンプル1aを次のように調製する。ある量のコア_2を微細なCo
3O
4粉末(Umicoreから市販されている、累積体積粒度分布から決定される典型的なD10、D50及びD90粒径がD10<3μm、D50=3〜5μm及びD90<10μmの範囲を有するもの)と(コア_2):Co(Co
3O
4)=0.8696:0.1304のモル比で混合し、MgO及びTiO
2も添加して、0.9925/0.0025/0.0050の全体Co/Ti/Mgモル組成を達成する。97.74重量%の上記混合物と2.26重量%のLi
2CO
3を更に共にブレンドする。調製したブレンドをセラミックるつぼに入れ、980℃で空気中で12時間焼成する。次いで、焼結生成物を粉砕し、分級して、サンプル1aを得る。サンプル1bは、2.63重量%のLi
2CO
3を添加することを除いて、サンプル1aと同様の方法で調製される。サンプル1cは、2.99重量%のLi
2CO
3が添加することを除いて、サンプル1aと同様の方法で調製される。サンプル1dは、3.17重量%のLi
2CO
3を添加することを除いて、サンプル1aと同様の方法で調製される。サンプル1eは、3.35重量%のLi
2CO
3を添加することを除いて、サンプル1aと同様の方法で調製される。サンプル1fは、3.71重量%のLi
2CO
3を添加することを除いて、サンプル1aと同様の方法で調製される。サンプル1gは、4.07重量%のLi
2CO
3を添加することを除いて、サンプル1aと同様の方法で調製される。
【0075】
コア_1並びにサンプル1a、1c及び1eの粒度分布を
図1に示し、それらのD5、D50及びD90値を表1に示す。コア_1はD50が28μmに近い対称粒度分布を示す。実施例1a、1c及び1eは、二峰性粒度分布を特徴とし、微細なCo
3O
4粒子試薬の導入によってもたらされる4μm近傍にある第1のモードと、コア_1に帰属される28μm近傍にある第2のモードを有する。そのような構成では、大粒子と微粒子の間のモード比は約7である。化学的ICP分析の結果を表2に示す。目標と実験のMg、Ti及びP含有量の間に非常に良好な一致が見出される。Li:Co比及びLi:(Co+3P)比の両方は、添加されたLi
2CO
3の重量%がサンプル1a〜1gに対して増加するときに増加する。Li:(Co+3P)比は、サンプル1c、1d及び1eでは1に近い。
【0076】
結果と考察:
FESEM分析:
図2は、コア_1、コア_2並びにサンプル1c及び1eの5000倍の倍率のSEM画像を示す。コア_1の表面は滑らかである。コア_2の画像は、粒子の表面上のLi
3PO
4フレークの均一な析出及び付着を示す。サンプル1c及び1eの画像は、熱処理後に粒子表面が滑らかな外観を回復することを示している。サンプル1c及び1eの画像に観察される微粒子は、Co
3O
4(D50〜3μm)の添加に由来する。
【0077】
XRD分析:
図3にコア_1、コア_2並びにサンプル1a、1b、1c、1e及び1fのXRDパターンを示す。回折強度は、明瞭にするために対数スケールで表示されている。すべてのXRDパターンは、R−3m空間群において、格子パラメータa=2.817Å及びc=14.057Åを有する十分に結晶化された六方晶の層状O3型LiCoO
2相の典型的な反射が支配的である。コア_2のXRDパターンは、Li
3PO
4(120)及び(101)反射の特徴である22.3及び23.1の2θ角における弱く広いピークの余分な存在を示し、これは、コア_1粒子表面にLi
3PO
4が析出した際の、予想通りである。1a〜1gのすべてのサンプルについて、Li
3PO
4相に起因する明確に示されたピークが観察され、Pmnb空間群を有するa=6.14Å、b=10.48Å及びc=4.93Åのパラメータの斜方格子を用いて、判定される。これらのユニットセルパラメータは、Li
3PO
4の「γ」多形に相当する。サンプル1a及び1bについては、スピネルCo
3O
4相の不純物ピークが観察されている。そのようなスピネルのピークは、ブレンドにより多量のLi
2CO
3を添加したサンプル1c〜1gでは観察されない。これは、サンプル1a及び1bにおいてスピネルCo
3O
4試薬をO3型層状酸化物に変換するのに十分なリチウムが、ブレンド中には得られないことを意味する。サンプル1cにおいては、スピネルCo
3O
4試薬のO3型層状酸化物への完全な変換が達成されているが、この観察は、ICP滴定データと一致し、それは、サンプル1cがLi:Co及びLi:(Co+3P)のモル比が1.00に近いことを示している。
【0078】
導電率:
表1は、コア_1、コア_2、及びサンプル1a〜1gの導電率を示す。コア_1及びコア_2は、10
−3S/cmを超える電気伝導率を有し、ドープされたLiCoO
2について報告された値と一致する。導電率はサンプル1cの最小値を超えており、コア_1及び1gサンプルより3桁低い値である。そのような導電率の劇的な低下は、LiCoO
2系材料にとって驚くべきことであり、予期されないことである。
【0079】
可溶性塩基含量pH滴定:
表1は、サンプル1a〜1gのpH滴定によって決定された残留LiOH及びLi
2CO
3の量(重量%)並びにSBCを示す。可溶性塩基含量は、サンプル1gから1cまで急速に減少し、最小値9.9μmol/gに達する。LiOH重量%は同じ挙動に従い、0.0002重量%の1Cで最小である。Li
2CO
3可溶性含量は急速に減少し、次いでサンプル1a〜1dで0.3〜0.35重量%近傍で安定する。
【0080】
圧縮密度:
表1は、コア_1及びサンプル1a〜1gの圧縮密度を示す。サンプル1a〜1gの圧縮密度は、コア_1よりも約0.1g/cm
3高い。この圧縮密度の増加は、粒度分布の特定の変更の結果である。すなわち、大きなコア_1粒子の間のサイトをより小さな粒子で充填するために二峰性の特徴の導入することで、充填密度が増加する。結晶学では、半径「r」の球状粒子の一様かつ理想的な最密充填を仮定すると、八面体、四面体及び三方晶の間のサイトは、それぞれ0.414xr、0.225xr及び0.155xrの最大半径を有するより微細な粒子にのみアクセス可能であることは周知である。そのような考察を約14μmの半径を有する大きな粒子(コア_1由来)と、約1.5〜2.5μmの半径を有するより微細な粒子(Co
3O
4由来)の混合物であるサンプル1a〜1gに適用すると、それぞれ5.8、3.2及び2.2μmの半径を有する八面体、四面体及び三方晶の間のサイトのすべてがアクセス可能である。結果として、これらの間のサイトの充填は、コア_1と比較して、サンプル1a〜1gに対して大きな充填密度を可能にする。
【0081】
XPS:
サンプル1cで検出された元素のリストを表6に示す。いくつかの有機C(284.8eV付近のピーク)がサンプルの表面に存在する。これは、周囲の空気中に保存されたサンプルでは普通である。795eVでのコバルト2p
1/2 XPSピークは、LiCoO
2のCo
3+イオンに特徴的であり、XPSのat%解像度及び感度内で粒子の表面におけるCo
2+の有意な存在を除外する。サンプル1cでは、49.5eV付近の良好に解像されたMg 2p XPSピークが観測され、これはMgO又はMg含有ホスフェートなどの酸素環境中のMgに対して典型的である。ブレンド組成から、予想される公称Mg/Co原子比は0.0050/0.9925=0.0054である。XPSで測定したサンプル1cの粒子表面のMg/Co原子比は、1.4/9.4=0.1489であり、ブレンド中の予想される公称Mg/Co原子比の27倍を超える。同様に、良好に分解されたTi 2pピークが458eV付近に観測される。これらの結合エネルギーは、TiO
2及びLi
2TiO
3又はTi含有ホスフェートなどの化合物に見られるような6倍酸素環境においてTi
4+が独占的に存在している場合とよく一致している。ブレンド組成から、予想される公称Ti/Co原子比は0.0025/0.9925=0.0025である。XPSで測定したサンプル1cの粒子表面のTi/Co原子比は、2.0/9.4=0.2127であり、予想される公称Ti/Co原子比より約2桁高い。
【0082】
Pの2pピークが133.6eV付近に観測され、これは−PO
43−基の特徴である。又、XPSによって測定されたサンプル1cの粒子表面のP/Co原子比は、2.1/9.4=0.2234であり、予想される公称P/Co原子比より約1桁大きい。
図13に示すように、粒子深さの関数としての、Ca、Mg、Na、P、S及びTi対Coのモル比の変化を、サンプル1cについてXPS深さ方向分析によってモニターした。S、Mg、Na及びCa対Coのモル比は、サンプル1cの粒子表面の50nm未満で「0」になり、これらの元素の原子含有量がXPSの検出限界未満であることが示唆される。同様に、Ti/Coモル比は減少し、450nm深さ付近で「0」に等しく、これはTiの原子含有量がXPSの検出限界未満であることを示唆している。Mg及びTi対Coの原子比の予想公称表面値と表面XPSの間の大きな差は、Mg及びTiの原子分布が均質でなく、偏析されていることを示唆している。サンプル1cの粒子の表面は、コアと比較してMg及びTiが富化されているが、コアの元素は依然として存在している。そのような元素偏析は、サンプル1cの電子絶縁挙動に対する説明となる。ホスフェート分布は、0〜50nmの深さで急激に減少し、次いで600nmまで単調に減少し、材料のコアは0.05モル/モル未満のP対Coモル比を有する。急速な初期の減少は、表面を均一に覆うLi
3PO
4のような非常に薄いホスフェート化合物の層によっておそらく説明され得るが、典型的な厚さは20nmよりも劣り、0.01〜10nmの範囲にあると考えられている。50〜600nmの線形的な減少は、SEM及びXRDによって証明されるように、サンプル1cの表面に付着した大きなLi
3PO
4粒子に起因する可能性が最も高い。
【0083】
コインセル:
表3は、コア_1及びコア_2並びにサンプル1a〜1gのコインセル特性を示す。
図4_1、4_2、4_3及び4_4は、それぞれコア_1、コア_2、サンプル1c及び1gの詳細なコインセルプロファイルを示す。左側の図のそれぞれにおいて、レート性能は、明らかに右から左へサイクル1〜6で示されている。中央の図のそれぞれにおいて、サイクル7〜31及び8〜32を右から左のサイクル7、8、31及び32と比較して、容量低下が示されているが、サイクルの順序が7、31、8及び32である
図4_3を除く。右側の図のそれぞれにおいて、サイクル安定性が示されており、放電容量DQは充電容量CQよりわずかに小さい。コア_1は、CQ1、DQ1及びレート性能については4.3Vの、サイクル安定性については4.6Vの両方で、現在の最新の電気化学的性能を示す。これらの性能は低く、このような最先端の素材を適切な性能で4.6Vで動作させることはできない。Li
3PO
4でコーティングされたコア_2の性能は、4.6Vの容量及びエネルギー低下の強力な加速により、更に低くなる。サンプル1a〜1gの電気化学的性能は、多くの点で顕著であり、最先端のリチウムコバルト酸化物系材料と比較して、大きな改善をもたらす。電気化学的性能は1g、1f、1e、1dから1cまで連続的に向上し、CQ_1、CQ_7及び3Cのレートが連続的に増加して、0.1C及び1CにおけるQIrr.、QFad.及びEfad.は最小となる。サンプル1c〜1aは、電気化学的特性の安定化を示し、優れたレベルの性能を保持する。
図5は、電気伝導率の関数としてDQ_7及び1CにおけるEfad.の変化を示す。DQ_7はサンプル1dに対して、導電率<10
−4S/cmで最大となる。1CにおけるEfad.はサンプル1cに対して連続的に減少し、導電率<10
−5S/cmで最小となる。
【0084】
実施例2:
この実施例は、電子絶縁表面を有するLiCoO
2系粒子を含み、及びイオン伝導性の結晶性Li
3PO
4を含む材料は、電子絶縁のみの材料と比較して優れた電気化学的挙動を有することを示すであろう。
【0085】
サンプル調製:Li/Co/Ti/Mgのモル比が1.060/0.9967/0.0008/0.0025であるLi
2CO
3、Co
3O
4、TiO
2及びMgOの混合物を用いて、Ti及びMgをドープしたLiCoO
2系材料を量産規模で調製する。生成物をセラミックトレイに入れ、990℃の温度で空気中で10時間焼結する。次いで、生成物を粉砕し、分級して、約18μmの体積D50のメジアン粒径を得た。調製したサンプルをコア_3と呼ぶ。
図6aは、コア_3のSEM画像を示す。
【0086】
次に、1.85mol%のLi
3PO
4をコア_3の表面に次のように適用する。まず、水酸化リチウム一水和物とリン酸(和光純薬工業製H
3PO
4)を脱イオン水に添加して10重量%のLiH
2PO
4水溶液を得る。Co(コア_3)/Co(Co
3O
4)=0.8696/0.1304のモル比のCo_3粉末とCo
3O
4(D50−3.5μm)の混合物2kgをタンブリング流動コーティング装置(Powrex Corp.製MP−01 mini)中に配置する。LiH
2PO
4の水溶液を、90℃の高温空気下で粉末材料混合物の表面上に噴霧し、乾燥させる。粉状混合物を回転ブレード(300rpm)及び0.4Nm
3/分の空気流によって流動化する。調製した溶液を、5g/分の一定レートでスプレーノズルに供給し、60L/分の噴霧空気を噴霧した。粉状材料混合物は噴霧の間に高温空気によって流動化されるので、噴霧溶液の水性溶媒は直ちに蒸発する。調製したサンプルをコア_4と呼ぶ。コア_4サンプルのSEM画像を
図6bに示し、コア_3粒子が「LiPO
3」又は「LiH
2PO
4」の均一なフィルムによって均一に覆われていることを示す。
【0087】
次に、サンプル2aを以下のように調製する。コア_4材料の粉末をMgO、TiO
2及びAl
2O
3と混合して、0.9919/0.0035/0.0028/0.0018の全体Co/Ti/Mg/Alモル組成を達成する。次に、95.48wt%の上記混合物と4.52wt%のLi
2CO
3を更に共にブレンドする。調製したブレンドをセラミックるつぼに入れ、980℃で空気中で10時間焼成する。次いで、焼結生成物を粉砕し、分級して、サンプル2aを得る。
図6cは、サンプル2aのSEM画像を示す。サンプル2aのICPデータを表2に示す。
【0088】
サンプル2bを次のように調製する。コア_3粉体とCo
3O
4(D50〜3.5μm)材料をCo(コア_3)/Co(Co
3O
4)=0.8696/0.1304のモル比(コア_3とCo
3O
4に対してそれぞれ60.21%と73.42%のコバルト重量含量を考慮する場合、0.8905/0.1095の重量比に相当する)で混合する。MgO、TiO
2及びAl
2O
3を更に添加して、0.9919/0.0035/0.0028/0.0018の全体のCo/Ti/Mg/Alモル組成を達成する。Mg、Ti及びAlドーパントの組成は、サンプル2aと同じである。次に、96.94重量%の上記混合物と3.06重量%のLi
2CO
3を更に共にブレンドする。調製したブレンドをセラミックるつぼに入れ、980℃で空気中で10時間焼成する。次いで、焼結生成物を粉砕し、分級して、サンプル2bを得る。サンプル2bのICPデータを表2に示す。Li:(Co+3P)及びLi:(Co+3P+Al+Mg+Ti)のモル比はサンプル2aに非常に近いため、物理的特性と電気化学的特性の信頼性の高い比較が可能である。
【0089】
図7は、サンプル2a及び2bのXRDパターンを示す。両方のXRDパターンは、典型的なO3層状のリチウムコバルト酸化物(空間群R−3m)の反射を示す。微量のCo
3O
4スピネル不純物が両方のサンプルで観察され、0.5重量%未満と推定される。同様の量のCo
3O
4不純物の存在は、両方のサンプルにおいてリチウム含有量が非常に類似しており、両方のサンプルは、十分に制御された方法でわずかにLi準化学量論的であることを示す。サンプル2aのXRDパターンは、サンプル中に十分に結晶化されたLi
3PO
4相が存在することを示す。XRD分析から、サンプル2bは、その表面に結合した結晶性Li
3PO
4が存在しないことにおいてのみ、サンプル2aと異なると結論される。サンプル2a及び2bの導電率はそれぞれ1.78×10
−5S/cm及び5.63×10
−5S/cmである。両方の場合において、コインセル0.1C及び1Cのエネルギー低下が良好であり、サンプル2aの低下レートはそれぞれ100サイクルあたり14.4%及び33.8%であり、サンプル2bの低下レートはそれぞれ100サイクルあたり22.1%及び46.5%であった。
【0090】
図8は、サンプル2a(下側の線)及び2b(上側の線)について、t=0時間とt=120時間の間のフロート電流I(t)の変化を示す。表5は、フロート電流を0時間と120時間の間で積分することによって算出されたフロート容量(mAh/g)と、アノード上及びアノードと接触しているセパレータ上でICP−OESによって測定されたCo溶出を示す。サンプル2aは、サンプル2bと比較して6.2倍低いフロート容量及び約100倍低いCo溶出を示す。
【0091】
EDS表面マッピングは、サンプル2aに対して30×40μm
2表面で行われる。
図9a、b及びcは、EDSマッピングが行われるサンプル表面を示す。Co及びP元素の空間分布を
図9b及び
図9cに示す。
図10は、調査された表面のマップ和スペクトルを示す。リンが豊富な領域は、リチウムコバルト酸化物粒子の表面に対し、分離しているが密に付着しているようである。このSEM/EDS観察は、XRDと一致しており、リチウムコバルト酸化物粒子の表面に密に付着したLi
3PO
4領域の存在を明らかにする。
【0092】
XPS分析は、サンプル1cと同じ方法でサンプル2aに対して行われる。サンプル2aの結果を表6及び
図14に示す。同様に、表面分析及び深さ方向分析は、Mg及びTiの原子分布が均質でなく、偏析されていることを示している。サンプル2aの粒子の表面は、コアに比べてMg(25nmまで)及びTi(200nmまで)に富んでいる。ホスフェート分布は、0〜25nmの深さで急激に減少し、次いで600nmまで単調に減少し、材料のコアは0.05モル/モル未満のP対Coモル比を有する。急速な初期の減少は、表面を均一に覆うLi
3PO
4のような非常に薄いホスフェート化合物の層によっておそらく説明され得るが、典型的な厚さは20nm未満、おそらく0.01〜10nmの範囲にあると考えられている。50〜600nm間の線形減少は、SEM、EDSマッピング及びXRDによって証明されるように、サンプル2aの表面に付着した大きなLi
3PO
4粒子に起因する可能性が最も高い。
【0093】
実施例3:
この実施例は、LiCoO
2系の粒子の表面に適用されたLi
3PO
4コーティングの形態がアニーリング温度の選択によって影響されることを示すであろう。850℃未満の温度で、LiCoO
2系粒子は、連続的なLi
3PO
4層で覆われている。850℃を超える温度では、LiCoO
2系粒子の表面はLi
3PO
4アイランドを含む。Li
3PO
4アイランド間の連続保護膜の存在は、アイランド間の非常に滑らかな粒子表面から推定される。
【0094】
2mol%のLi
3PO
4を25μmのLiCoO
2系コアの表面に適用する。
図11は、Li
3PO
4コーティングの前(サンプル3a)及び後(サンプル3ac)の粒子表面を示す。次いで、100gの調製した混合物を乾燥空気中で700℃で10時間アニールし、室温まで冷却する。生成物を粉砕して分級し、サンプル3bを得る。アニーリング温度を800℃に設定したこと以外は、サンプル3bと同様にしてサンプル3cを調製する。アニーリング温度を900℃に設定したこと以外は、サンプル3bと同様にしてサンプル3dを調製する。アニーリング温度を980℃に設定したこと以外は、サンプル3bと同様にしてサンプル3eを調製する。
【0095】
図12は、サンプル3a〜3eのXRDパターンを示す。表7は、リートベルト精密解析法から得られた空間群R−3m及びLi
3PO
4相を有するO3層状相の格子定数をまとめたものである。サンプル3ac及びサンプル3a〜3eのSEM画像を
図11に示す。サンプル3ac粒子の表面は、Li
3PO
4のフレークによって均一かつ連続的に覆われている。熱処理温度を700℃から980℃に上昇させると、アイランドの形成による、合体が生じるまで、粒子の表面に付着したLi
3PO
4化合物を結晶化し高密度化することが可能になる。前述の実施例1に示すように、アイランド間の非常に滑らかな粒子表面に基づいて、Li
3PO
4アイランド形成後、粒子表面及びLi
3PO
4アイランド間のLi
3PO
4の薄い連続層の存在が予想され得る。