【実施例1】
【0022】
本発明の具体的な実施例1について
図1〜
図5に基づいて説明する。
【0023】
本実施例は、
図1,2に示すように、内部に筒状の燃焼部1を有する燃焼器本体部2と、燃焼部1の内面の接線方向に向けて燃料ガスを導入する燃料ガス導入部3とから成り、燃料ガス導入部3から燃焼部1内に燃料ガスが導入されることで、この燃料ガスが燃焼部1内で旋回流になってこの燃焼部1内に渦流火炎が形成され、この渦流火炎の熱若しくは渦流火炎の燃焼によって生じた燃焼ガスの熱により被加熱部4が加熱されるように構成され、更に、燃焼部1は、燃焼器本体部2に形成された燃焼部形成孔5に、燃焼器本体部2と別体で構成される筒状燃焼部形成部6が配設されて形成されており、この燃焼部1を形成する筒状燃焼部形成部6は、燃焼時に、渦流火炎が形成される渦流火炎形成領域部7と、渦流火炎が形成されない渦流火炎非形成領域部8とが生じる構成とされるとともに、渦流火炎形成領域部7が該渦流火炎形成領域部7で形成される渦流火炎の火炎温度の低下を抑制する火炎温度保持部9で囲繞され、且つ渦流火炎非形成領域部8が被加熱部4と熱伝導可能に連結されている小型渦流燃焼器である。
【0024】
具体的には、本実施例は、
図3に示すように、燃焼器本体部2、筒状燃焼部形成部6、燃料ガス導入部3、導入部断熱部13、熱伝導部材10、本体部側閉塞板部14及びガス導入部側閉塞板部15の各部により構成されている。
【0025】
以下、本実施例に係る構成各部について詳細に説明する。
【0026】
本実施例の燃焼器本体部2は、この燃焼器本体部2自体が被加熱部4となる構成とされていて、そのため、熱伝導率の高い金属部材(例えばアルミニウムやアルミニウム合金等)で構成されている。
【0027】
また、本実施例の燃焼器本体部2は、後述する筒状燃焼部形成部6を挿入配設する燃焼部形成孔5と、燃焼部1から熱伝導する熱の受部となる被加熱部側熱伝導部材着接部12と、燃焼によって生じた燃焼ガスを外部へ排出するための排気経路部16とが設けられている。
【0028】
具体的には、燃焼部形成孔5は、燃焼器本体部2の前後方向に貫通する貫通孔であり、内径寸法がこの燃焼部形成孔5内に挿入配設される筒状燃焼部形成部6の外径寸法よりも若干大径に設定されている。即ち、本実施例の燃焼器本体部2は、燃焼部形成孔5に筒状燃焼部形成部6を挿入配設すると、この挿入配設された筒状燃焼部形成部6と燃焼部形成孔5の内周面との間に隙間が形成されるように構成されていて、この隙間が、筒状燃焼部形成部6内に形成される渦流火炎の火炎温度の低下を抑制する火炎温度保持部9としての燃焼ガス流通空隙部9となる構成とされている。
【0029】
即ち、この燃焼ガス流通空隙部9は、筒状燃焼部形成部6を囲繞するように環状に形成され、筒状燃焼部形成部6、即ち燃焼部1と燃焼器本体部2とを分離するように形成されており、筒状燃焼部形成部6内で形成される渦流火炎の熱の燃焼器本体部2への熱伝導を抑制するように構成されている。尚、この燃焼ガス流通空隙部9は、少なくとも渦流火炎が形成される筒状燃焼部形成部6の渦流火炎形成領域部7を囲繞する位置に形成される構成とされ、本実施例においては、この燃焼ガス流通空隙部9が、この渦流火炎形成領域部7以外に、渦流火炎が形成されない筒状燃焼部形成部6の渦流火炎非形成領域部8も囲繞するように形成されている。
【0030】
また、本実施例の燃焼部形成孔5は、燃焼部1の燃焼ガス排出口17側、言い換えると、この燃焼部形成孔5に挿入配設される筒状燃焼部形成部6の先端部側が基端部側よりも大径に形成されていて、筒状燃焼部形成部6が挿入配設されることで、筒状燃焼部形成部6の基端部側に前述した燃焼ガス流通空隙部9が形成され、先端部側にこの燃焼ガス流通空隙部9よりも幅広の燃焼ガス誘導部18が形成されるように構成されている。
【0031】
この燃焼ガス誘導部18は、燃焼ガス流通空隙部9と同様、燃焼部1(筒状燃焼部形成部6)を囲繞するように環状に形成されると共に、燃焼ガス流通空隙部9と連通状態に形成されていて、燃焼部1から排出された燃焼ガスがこの燃焼ガス誘導部18に誘導され、この燃焼ガス誘導部18を通じて燃焼ガス流通空隙部9へ導入されるように構成されている。
【0032】
また、本実施例は、この燃焼部形成孔5の内径寸法が拡大される境界部、即ち燃焼ガス流通空隙部9と燃焼ガス誘導部18との境界部に形成される段差平坦部が前述した燃焼部1から熱伝導してくる熱の受部となる被加熱部側熱伝導部材着接部12となる構成とされており、この被加熱部側熱伝導部材着接部12は、図示するように、小径側の燃焼部形成孔5の開口部の周囲に沿設するように環状に形成されている構成とされている。
【0033】
また、排気経路部16は、燃焼器本体部2の長さ方向(前後方向)を横断するように設けられていて、一端が前述した燃焼ガス流通空隙部9の筒状燃焼部形成部6基端部寄りに接続され、他端が燃焼器本体部2の後面部に設けられた排気口19に接続されている。即ち、本実施例は、この燃焼器本体部2を長さ方向に横断する排気経路部16を高温の燃焼ガスが流通することで、燃焼ガスと燃焼器本体部2とが熱交換し、燃焼器本体部2自体が燃焼ガスの熱により加熱される被加熱部4となる構成とされている。尚、排気経路部16の取り回し及び排気口19の配置は、本実施例に記載の構成に限定されるものでは無い。
【0034】
また、この燃焼器本体部2に形成される燃焼部形成孔5に挿入配設されることで、この燃焼器本体部2内に燃焼部1を形成する筒状燃焼部形成部6は、円筒状に形成されており、先端部に渦流火炎の燃焼によってこの筒状燃焼部形成部6に付与された熱を被加熱部4となる燃焼器本体部2へ熱伝導するための熱伝導部となる燃焼部側熱伝導部材着接部11が設けられていて、基端部にこの筒状燃焼部形成部6を前述した燃焼部形成孔5に対して所定位置に配設するための位置決め用基板部20が設けられた構成とされている。
【0035】
具体的には、本実施例の筒状燃焼部形成部6は、渦流火炎が形成されない渦流火炎非形成領域部8先端部側の周壁の厚さが基端部側に比べて薄く形成されていて(即ち内孔6Aの内径寸法は一定)、この厚さが異なる境界部の筒状燃焼部形成部6の外周面に段差部が形成されており、この段差部が前述した燃焼部側熱伝導部材着接部11となる構成とされており、この燃焼部側熱伝導部材着接部11は、前述した燃焼器本体部2に設けられた被加熱部側熱伝導部材着接部12と、熱伝導部材10が着接される着接面が面一状態となるように形成されている。
【0036】
即ち、本実施例は、この燃焼ガス流通空隙部9が介在する筒状燃焼部形成部6の渦流火炎非形成領域部8に形成される燃焼部側熱伝導部材着接部11と燃焼器本体部2に形成される被加熱部側熱伝導部材着接部12との間に熱伝導部材10が架設され、この熱伝導部材10により筒状燃焼部形成部6の渦流火炎非形成領域部8と燃焼器本体部2とが熱伝導可能に連結されている構成とされている。
【0037】
また、位置決め用基板部20は、燃焼器本体部2の前面部と同形状に形成されていて、本実施例は、この位置決め用基板部20を燃焼器本体部2の前面部に重合配設することで、筒状燃焼部形成部6が燃焼部形成孔5の所定位置(燃焼部形成孔5の中心軸と筒状燃焼部形成部6の中心軸とが一致する状態)に配設され、この筒状燃焼部形成部6と前述した燃焼部形成孔5との間に燃焼ガス流通空隙部9と燃焼ガス誘導部18となる隙間が形成される構成とされている。尚、位置決め用基板部20と燃焼器本体部2との間に断熱部材を介在させる構成としても良い。
【0038】
また、前述した筒状燃焼部形成部6の渦流火炎非形成領域部8と燃焼器本体部2とを熱伝導可能に連結する熱伝導部材10は、図示するように、リング状に形成された平板部材(筒状燃焼部形成部6と同等若しくはこの筒状燃焼部形成部6よりも熱伝導率の高い部材)から成り、板面に燃焼ガスが通過する複数の燃焼ガス通過孔21が形成されている。
【0039】
即ち、本実施例の熱伝導部材10は、筒状燃焼部形成部6と燃焼器本体部2との間に介在する燃焼ガス流通空隙部9を跨るようにして、筒状燃焼部形成部6の燃焼部側熱伝導部材着接部11と、燃焼器本体部2の被加熱部側熱伝導部材着接部12とに架設状態に設けられ、板幅方向内側が筒状燃焼部形成部6の渦流火炎非形成領域部8に設けられた燃焼部側熱伝導部材着接部11に着接し、板幅方向外側が燃焼器本体部2に設けられた被加熱部側熱伝導部材着接部12に着接して、この筒状燃焼部形成部6の渦流火炎非形成領域部8と燃焼器本体部2との間を熱伝導可能に連結するとともに、燃焼ガス誘導部18に誘導された燃焼ガスが、この熱伝導部材10に設けられた燃焼ガス通過孔21を通じて燃焼ガス流通空隙部9へ導入されるように構成されている。
【0040】
また、前述した筒状燃焼部形成部6内に燃料ガスを導入する燃料ガス導入部3は、燃焼器本体部2と同じ部材(アルミニウムやアルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属部材)から成り、燃焼器本体部2及び筒状燃焼部形成部6と別体で構成されている。
【0041】
具体的には、本実施例の燃料ガス導入部3は、前述した筒状燃焼部形成部6の位置決め用基板部20と同形状の板状に形成され、この燃料ガス導入部3と筒状燃焼部形成部6(筒状燃焼部形成部6の位置決め用基板部20)との間の熱伝導を抑制するための導入部断熱部13を介して、筒状燃焼部形成部6(具体的には、筒状燃焼部形成部6の位置決め用基板部20)に重合配設される構成とされている。
【0042】
より具体的には、燃料ガス導入部3は、板面中央部に、前後方向(板厚方向)に貫通し筒状燃焼部形成部6と連通する燃焼部連通孔22が形成されており、また、この燃焼部連通孔22内に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入経路部23がこの燃焼部連通孔22の左右両側に設けられている。
【0043】
更に詳細に説明すると、この燃料ガス導入経路部23は、先端部に小径(数mm)の接線方向吹出口部24が設けられていて、この接線方向吹出口部24は、燃焼部連通孔22の内周面の接線方向に向けて燃料ガスを導入するように構成されている。即ち、本実施例は、この燃料ガス導入経路部23に設けられた接線方向吹出口部24から燃焼部連通孔22内に燃料ガスが導入されることで、燃焼部連通孔22内で燃料ガスが旋回流となって燃焼部1に向かって進み、そのまま、この燃焼部連通孔22と連通する燃焼部1内(具体的には、筒状燃焼部形成部6内)でも旋回流を保持するように構成されている。尚、本実施例では燃料ガス導入部3に導入される燃料ガスは、予め空気と可燃性ガスとが混合された予混合気とされている。
【0044】
この燃料ガス導入部3と前述した筒状燃焼部形成部6(具体的には、筒状燃焼部形成部6の位置決め用基板部20)との間に配設される導入部断熱部13は、筒状燃焼部形成部6の位置決め用基板部20及び燃料ガス導入部3の後面部(筒状燃焼部形成部6側の板面部)と同形状に形成された板状の断熱性部材若しくは低熱伝導性部材から成る構成とされている。
【0045】
また、本実施例の本体部側閉塞板部14は、平板状に形成されており、燃焼器本体部2の後面部に重合配設されて、この燃焼器本体部2に形成された燃焼部形成孔5の後面部側開口部を閉塞するとともに、燃焼部1、具体的には、筒状燃焼部形成部6の燃焼ガス排出口17から排出された燃焼ガスの進行方向を燃焼ガス誘導部18へ向かうように折り返させる折り返し部として機能するように構成されている。即ち、本実施例は、筒状燃焼部形成部6の燃焼ガス排出口17から排出された燃焼ガスが、その進行方向に配設された本体部側閉塞板部14に衝突することで、その進路を180°折り返して燃焼ガス誘導部18に向い、この燃焼ガス誘導部18を通じて燃焼ガス流通空隙部9に導入されるように構成されている。
【0046】
また、本実施例の本体部側閉塞板部14は、板面中央部に耐熱ガラス等の耐熱性透明部材から成る渦流火炎視認部25が設けられていて、この渦流火炎視認部25から燃焼部1内に形成される渦流火炎の燃焼状態を目視にて確認できるように構成されている。尚、この本体部側閉塞板部14は、渦流火炎視認部25を設けない単なる板状部材とした構成でも良い。また、本実施例は、燃焼器本体部2の燃焼部形成孔5が貫通孔として形成されていることから、前述した本体部側閉塞板部14を用いて燃焼部形成孔5の開口部が閉塞される構成とされているが、燃焼部形成孔5を貫通孔とせずに有底孔として形成して、この燃焼部形成孔5の底部を本体部側閉塞板部14とすることで本体部側閉塞板部14を別体で設けない構成としても良い。
【0047】
また、本実施例のガス導入部側閉塞板部15は、本体部側閉塞板部14と同様、平板状に形成されており、燃料ガス導入部3に重合配設されて、この燃料ガス導入部3に形成された燃焼部連通孔22の基端側開口部を閉塞するように構成され、また、板面中央部に耐熱ガラス等の耐熱性透明部材から成る渦流火炎視認部25が設けられていて、この渦流火炎視認部25から燃焼部1内に形成される渦流火炎の燃焼状態を目視にて確認できるように構成されている。尚、このガス導入部側閉塞板部15も、前述した本体部側閉塞板部14同様、渦流火炎視認部25を設けない単なる板状部材とした構成でも良い。
【0048】
また、本実施例は、燃料ガス導入部3の燃焼部連通孔22が貫通孔として形成されていることから、前述したガス導入部側閉塞板部15を用いて燃焼部連通孔22の開口部が閉塞される構成とされているが、前述した本体部側閉塞板部14同様、燃焼部連通孔22を貫通孔とせずに有底孔として形成して、この燃焼部連通孔22の底部をガス導入部側閉塞板部15とすることで、ガス導入部側閉塞板部15を別体で設けない構成としても良い。
【0049】
上述のように構成した本実施例の作用・効果について以下に説明する。
【0050】
本実施例は、燃料供給部から供給される燃料ガス(予混合気)が燃料ガス導入部3を介して燃焼部1、具体的には、燃焼部1を形成する筒状燃焼部形成部6へ導入され、この筒状燃焼部形成部6に導入された燃料ガスは、旋回流状態で導入され、この旋回流状態の燃料ガスに着火することで筒状燃焼部形成部6内に渦流火炎が形成される。
【0051】
筒状燃焼部形成部6において、この渦流火炎が形成される渦流火炎形成領域部7は、燃焼ガス流通空隙部9で囲繞されているので、この燃焼ガス流通空隙部9により筒状燃焼部形成部6内で形成される渦流火炎の熱がこの筒状燃焼部形成部6の外(例えば燃焼器本体部2や燃料ガス導入部3など)へ熱伝導されることが抑制され、これにより、渦流火炎の火炎温度の低下が抑制されて、渦流火炎の高温状態が維持されることで燃焼反応が促進され、不完全燃焼が低減されることとなり、一酸化炭素の発生が抑制されるとともに、発熱ロスが低減されて、渦流火炎の燃焼による発熱量が向上する。
【0052】
そして、この渦流火炎の燃焼によって生じた熱(渦流火炎の熱および渦流火炎の燃焼によって生じた燃焼ガスの熱)が、渦流火炎が形成されない渦流火炎非形成領域部8から熱伝導部材10を通じて熱伝導可能に連結されている被加熱部4としての燃焼器本体部2に熱伝導して、燃焼器本体部2を積極的に加熱することで、この燃焼器本体部2がこの筒状燃焼部形成部6からの熱伝導と、排気経路部16を流通する燃焼ガスからの熱伝導により効率良く加熱されることとなる。
【0053】
即ち、本実施例は、筒状燃焼部形成部6内で形成される渦流火炎の熱がこの筒状燃焼部形成部6の外部に熱伝導する際は、渦流火炎の燃焼に影響しにくい、渦流火炎が形成されない渦流火炎非形成領域部8で行われるから、この渦流火炎の燃焼によって生じた熱を被加熱部4である燃焼器本体部2へ熱伝導させても、渦流火炎の温度を殆ど低下させることがなく、しかも、渦流火炎の燃焼によって生じた熱を、筒状燃焼部形成部6の渦流火炎非形成領域部8から燃焼器本体部2へ熱伝導させることで、筒状燃焼部形成部6の過剰加熱も抑制されることとなり、これにより筒状燃焼部形成部6の高温劣化による損傷の虞が可及的に低減され、筒状燃焼部形成部6の高寿命化が図れるとともに、本小型渦流燃焼器の信頼性も向上することとなる。
【0054】
このように、本実施例は、筒状燃焼部形成部6(燃焼部1)内に形成される渦流火炎の火炎温度の低下が抑制され、火炎温度上昇(火炎温度の高温状態の維持)による燃焼反応の促進により不完全燃焼が低減されるとともに、渦流火炎の燃焼によって生じた熱が積極的に燃焼器本体部2に熱伝導されて、燃焼ガスによる加熱とともにこの燃焼器本体部2が効率的に加熱され、燃焼熱を有効的に利用する発熱体として用いることができ、しかも、筒状燃焼部形成部6の高温劣化による損傷の虞も無く安心して使用できる安全性且つ実用性に優れた画期的な小型渦流燃焼器となる。