(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁性材からなる複数の突極を有するロータと、前記ロータを囲うように配置された複数の電磁石を有するステータとを備えたスイッチドリラクタンスモータを駆動するためのセンサレス駆動装置であって、
前記電磁石に電流を間欠的に流して前記電磁石を励磁させ、前記ロータの突極と前記電磁石との間に磁気力を発生させることで前記ロータを回転させるモータドライバと、
前記複数の電磁石の内、非励磁相の電磁石に流れるリップル電流の大きさに基づいてロータの角度を検出するロータ角検出器とを備え、
前記モータドライバは、PWMドライバであって、かつ前記ロータの角度に従って、前記複数の電磁石を順番に励磁させるように構成されており、
前記リップル電流は、前記PWMドライバのキャリア周波数に同期しており、
前記モータドライバは、前記リップル電流の大きさに基づいて検出された前記ロータの角度が予め設定された時間の間に変化しなかった場合は、次の電磁石を励磁させることを特徴とするセンサレス駆動装置。
前記ロータ角検出器は、前記リップル電流の大きさが所定の値に達したか否かを決定することにより、前記ロータが所定の角度に達したか否かを決定することを特徴とする請求項1に記載のセンサレス駆動装置。
前記モータドライバは、前記リップル電流の大きさが前記所定の値に達したときに、前記複数の電磁石の内、少なくとも1つの電磁石に電流を流すことを特徴とする請求項3に記載のセンサレス駆動装置。
前記モータドライバは、前記差が前記所定の値に達したときに、前記複数の電磁石の内、少なくとも1つの電磁石に電流を流すことを特徴とする請求項5に記載のセンサレス駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、スイッチドリラクタンスモータおよびそのセンサレス駆動装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、スイッチドリラクタンスモータを示す断面図である。
図1に示すスイッチドリラクタンスモータ1は、6極ステータ2と4極ロータ10を備えた3相スイッチドリラクタンスモータである。ステータ2およびロータ10は、ケイ素鋼板などの磁性材で構成される。ロータ10には4つの突極11があり、ステータ2には6つの突極3がある。ステータ2はロータ10を囲うように配置されている。ステータ2のそれぞれの突極3にコイル(巻線)6が取り付けられ、それぞれ磁極U1,U2,V1,V2,W1,W2を形成している。コイル6に電流を流すことで磁極U1,U2,V1,V2,W1,W2は電磁石となり、これら電磁石がロータ10の突極11を引き寄せる磁力を発生させる。
【0013】
図2は、磁極U1,U2,V1,V2,W1,W2の接続例を説明する図である。磁極U1のコイル6と磁極U2のコイル6は直列に接続されており、U相の電磁石を形成する。U相に電流iUを流すことで、磁極U1がN極に、磁極U2がS極となるようコイル6の巻き方向を決定している。同様に、磁極V1と磁極V2、磁極W1と磁極W2もそれぞれV相の電磁石およびW相の電磁石を形成する。
【0014】
ロータ10が1回転するとき、ロータ10の4つの突極11は各磁極(例えば、磁極U1)を4回通過することになる。すなわち、各相のコイル6に4回電流を流し、ロータ10の突極11を磁力で引き寄せることでロータ10は360度回転する。
図3に各相の磁極の励磁タイミングの一例を示す。この例では、磁極U1とロータ10の突極11の1つが、直線的に最も近づく時のロータ10の角度(機械角)を0度としている。U相の電磁石(磁極U1,U2)を励磁している時は、V相の電磁石(磁極V1,V2)およびW相の電磁石(磁極W1,W2)は非励磁としている。同様に、V相の電磁石を励磁している時は、W相の電磁石およびU相の電磁石は非励磁であり、W相の電磁石を励磁している時は、U相の電磁石およびV相の電磁石は非励磁としている。
【0015】
図1では、6極ステータ2および4極ロータ10を有する3相モータの構成を示しているが、例えば、12極ステータ、8極ロータで、U相,V相,W相それぞれの磁極を4つとしてもよい。また、4相など相の数を変えることもできることは言うまでもない。
【0016】
図4は、
図1に示すスイッチドリラクタンスモータ1を駆動するためのセンサレス駆動装置20の構成の一例を示す模式図である。モータ装置は、
図1に示すスイッチドリラクタンスモータ1と、
図4に示すセンサレス駆動装置20とから構成される。このセンサレス駆動装置20は、目標電流生成器21、PWMコントローラ30、ドライブ回路40、電流センサ50、ロータ角検出器(転流タイミング生成器)60、およびロータ角速度決定部90を備えている。
【0017】
電流センサ50は、ドライブ回路40からスイッチドリラクタンスモータ1に流れる三相(U相,V相,W相)の電流を測定する電流計測装置である。PWMコントローラ30は、目標電流i
U*,i
V*,i
W*がスイッチドリラクタンスモータ1に流れるように、ドライブ回路40のU相,V相,W相のPWMゲート信号G
U,G
V,G
Wを生成する。より具体的には、減算器31は、電流センサ50からフィードバックされた電流の測定値を目標電流値i
U*,i
V*,i
W*から減算し、減算して得られた信号をPID補償器32に入力する。比較器33は、PID補償器32で適度に調整された信号を三角波のPWMキャリアと比較することで、ドライブ回路40のU相,V相,W相のPWMゲート信号G
U,G
V,G
Wを生成する。PWMキャリアは三角波に限らず、例えばノコギリ波であってもよい。
【0018】
ドライブ回路40は、駆動電圧V
DCを生成する直流電圧生成器42と、この直流電圧生成器42に接続された複数のスイッチング素子44を有している。これらのスイッチング素子44は、PWMゲート信号G
U,G
V,G
Wに従って開閉(ON/OFF)する。ドライブ回路40はスイッチドリラクタンスモータ1に接続されている。U相,V相,W相それぞれのコイル6には、PWMゲート信号がONの時は駆動電圧V
DC、OFFの時は−V
DCが印加される。このようにして各相のコイル6に目標の電流が流れ、電磁石が励磁される。PWMコントローラ30およびドライブ回路40は、ステータ2の電磁石に電流を間欠的に流して電磁石を励磁させ、ロータ10の突極11と電磁石との間に磁気力を発生させることでロータ10を回転させるモータドライバ55を構成する。このタイプのモータドライバ55は、PWMドライバである。
【0019】
ロータ角検出器60は、電流センサ50で測定した電流値に基づいてロジック信号P
U,P
V,P
Wを生成する。ロジック信号P
U,P
V,P
Wは、各相の電磁石に電流を流すタイミングを決定する信号であり、ON信号とOFF信号とから構成される。ON信号は、各相の電磁石への電流供給を開始させるための指令信号であり、OFF信号は、各相の電磁石への電流供給を停止させるための指令信号である。ロータ1回転当たり、各相の電磁石への電流供給と電流供給の停止は、それぞれ4回繰り返される。より具体的には、ロジック信号P
U,P
V,P
Wは、それぞれ「1」と「0」から構成され、「1」はON信号、すなわち電流供給の開始を表し、「0」はOFF信号、すなわち電流供給の停止を表す。ロジック信号が1の時は電磁石を励磁し、0の時は電磁石は非励磁となる。
【0020】
ロータ角検出器60は、さらに、ロジック信号のON/OFF周期あるいは復調信号(後述する)からロータ10の位置、すなわち角度θを推定する。例えば、ロータ角検出器60は、ON信号からOFF信号へ(またはOFF信号からON信号へ)のロジック信号の切り換えタイミングの間隔から角度θを推定する。推定されたロータ10の角度θは、およびロータ角速度決定部90に送られる。このロータ角速度決定部90は、ロータ10の角度θの時間的変化を計算することで、ロータ10の角速度ωを決定する。
【0021】
ロータ10の角速度ωは、目標電流生成器21にフィードバックされる。目標電流生成器21は、減算器22、PID補償器23、電流リミッタ26、および乗算器25を備えている。減算器22は、角速度ωを目標角速度ω
*から減算して目標角速度ω
*と角速度ωとの差を求め、PID補償器23は上記差に基づいて目標電流信号i
*を生成する。さらに、乗算器25は、目標電流信号i
*をロジック信号P
U,P
V,P
Wに乗算することで、目標電流値i
U*,i
V*,i
W*を生成する。電流リミッタ26は、後述するように、目標電流信号i
*を制限するためのものである。
【0022】
このようなセンサレス駆動装置20によれば、ロータ10に負荷が加わった時は角速度ωが目標角速度ω
*よりも遅くなるため、目標電流信号i
*が大きくなる。つまり、ロータ10の負荷に応じてステータ2の電磁石が励磁される。このように、ステータ2の電磁石は、角速度ωが目標角速度ω
*に追従するように磁気力、すなわちトルクを発生する。
【0023】
各相のコイル6に流れる電流には、PWMキャリアの周波数(キャリア周波数という)に同期したリップル電流が重畳する。このリップル電流は、PWMコントローラ30およびドライブ回路40によって生成される。リップル電流の大きさは、コイル6のインダクタンスに反比例する。つまり、ロータ10の突極11がステータ2の突極3に接近するとリップル電流が小さくなり、離れると大きくなる。したがって、このリップル電流の脈動を検出することでロータ10の角度θを推定することができる。ロータ角検出器60は、リップル電流の大きさ(振幅)に基づいてロータ10の位置、すなわち角度θを検出する。
【0024】
図5は
図4に記載のロータ角検出器60の一例の詳細を示す。ロータ角検出器60は、復調部70と、ロジック信号生成部80とから構成される。まず復調部70について説明する。復調部70は、バンドパスフィルタ(AM変調波抽出器)71、絶対値回路73、ノッチフィルタ75、およびローパスフィルタ77を備えている。バンドパスフィルタ71、絶対値回路73、ノッチフィルタ75、およびローパスフィルタ77は、この順に直列に接続されている。
【0025】
上述したように、各相のコイル6に流れる電流には、キャリア周波数に同期したリップル電流が重畳する。電流センサ50で検出した電流値i
U,i
V,i
Wは、PWMキャリアの周波数を通過帯域の中心周波数とするバンドパスフィルタ71に通される。これによりロータ10の角度に応じて振幅が変動する正弦波信号、すなわちAM変調波を抽出できる。すなわち、ロータ10の突極11がステータ2の突極3に接近すると波高値が小さくなり、ロータ10の突極11がステータ2の突極3から離れると波高値が大きくなるようなAM変調波を抽出できる。
【0026】
AM変調波は次に絶対値回路73に送られる。絶対値回路73は、AM変調波のマイナス側成分をプラス側に折り返す。すなわち、絶対値回路73は、AM変調波のマイナス側成分をプラス側成分に変換する。そうすることでAM変調波はプラス側成分のみから構成され、AM変調波の周波数はPWMキャリアの周波数の2倍となる。このプラス側成分のみを持つAM変調波は、キャリア周波数の2倍の周波数を阻止帯域の中心周波数に持つノッチフィルタ75に通され、ノッチフィルタ75によってAM変調波の波高値のみが抽出される。そしてわずかに残るキャリア周波数ノイズを除去するため、AM変調波を、キャリア周波数の1/10程度にカットオフ周波数を設定したローパスフィルタ77に通過させる。このようにしてリップル電流から抽出したAM変調波の復調信号S
U,S
V,S
Wを得る。ノイズが小さければローパスフィルタ77は不要である。
【0027】
図6は、U相電流と、AM変調波と、AM変調波の復調信号の一例を示す図である。ステータ2のコイル6の直流抵抗やスイッチング損失が存在しない理想的な状態では、PWMのデューティ比が50%のときにドライブ回路40から出力される平均電流は一定となる。ドライブ回路40は、デューティ比が50%より大きいときは電流が上昇し、50%未満のときは下降するよう動作する。実際には、ステータ2のコイル6の直流抵抗やスイッチング損失が存在するため、デューティ比を50%に固定した場合でも電流は一定とならず下降傾向となる。
【0028】
ドライブ回路40の特性上、電流の流れる方向は一方向のみである。すなわち、必ず
図2の端子U+からコイル6に電流が流入し、端子U−に戻ってくる。電流0近辺ではマイナスの電流が流せないため、
図6に示すようにステータ2の磁極が非励磁状態であってもリップル電流の平均値は0近辺である。このことから、ステータ2の磁極が非励磁の時はPWMのデューティ比を50%近辺に固定してもよい。デューティ比を所定の値に固定することで安定したリップル電流が得られ、ノイズの少ないAM変調波や復調信号が得られる。
【0029】
上述した復調部70は、AM変調波のピーク(波高値)を抽出する包絡線検波方式であるが、これに代えて、復調器はPWMコントローラ30のキャリア周波数と同期した参照波を用いてAM変調波を復調する同期検波方式であってもよい。
【0030】
リップル電流の波高値は通常インダクタンスに反比例する。しかしながら、励磁開始時および励磁終了時はPWMのデューティ比がそれぞれ100%、0%となり、PWMスイッチングをやめてしまうため、リップル電流が発生しなくなる。また、励磁中は電流が大きいほどステータ2およびロータ10は磁気飽和していき、インダクタンスが低下する。このようにインダクタンスと励磁電流には非線形な関係が成立している。つまり非励磁状態では安定したインダクタンスの検出、つまりロータ10の角度検出を行うことができるが、励磁状態では励磁電流と共にインダクタンスが変化するため精度が良いロータ10の角度検出ができない。
【0031】
そこで、本実施形態では、非励磁相のコイル6に流れるリップル電流から生成された復調信号を用いてロータ10の角度検出が行われ、さらに各相の転流タイミングが決定される。次に、ロジック信号生成部80について、
図5および
図7を参照しながら説明する。ここでは説明の簡略化のためU相の転流タイミングについてのみ説明する。復調信号S
UはU相の磁極U1,U2が励磁されている時は、本来であれば前述の通り非線形性の影響で精度よく検出できないが、
図7では簡略化のために常に非励磁状態として記載する。V相、W相についても同様である。
【0032】
U相のインダクタンスは、ロータ10の角度θが0度の時に最も大きくなる。従って、ロータ10の角度θが0度の時、リップル電流の振幅は小さくなり、復調信号S
Uも小さくなる。ロータ10の角度θが45度の時はインダクタンスが最小となるため、復調信号S
Uは最大となる。このように、復調信号S
Uは45度毎に最小、最大を繰り返す。V相の復調信号S
VはU相の復調信号S
Uから30度遅れで、W相の復調信号S
WはU相の復調信号S
Uから60度遅れで最小、最大を繰り返す。
【0033】
U相の磁極U1,U2の励磁開始および励磁停止のタイミングを正確に決定するため、非線形性の影響がない非励磁相の復調信号を使う。
図7に示す例では、非励磁のV相の復調信号S
Vと閾値P
UONを比較し、復調信号S
Vが閾値P
UONに達した時に、ロジック信号P
UはOFF信号からON信号に切り替わる。また非励磁のW相の復調信号S
Wと閾値P
UOFFを比較し、復調信号P
Wが閾値P
UOFFに達した時に、ロジック信号P
UはON信号からOFF信号に切り替わる。このように、非励磁相のコイル6に流れるリップル電流から生成された復調信号の変化に基づいて、ロジック信号P
UのON信号とOFF信号の切り替え、すなわち磁極の励磁開始および励磁停止のタイミングが決定される。V相、W相のロジック信号P
V,P
Wについても同様である。
【0034】
ロジック信号P
U,P
V,P
Wは、
図5に示すロジック信号生成部80にて生成される。すなわち、各比較器81は、非励磁相の復調信号と閾値とを比較し、加算器83は復調信号と閾値との比較結果に基づいて、ON信号とOFF信号からなるロジック信号を生成する。
【0035】
ロジック信号P
UのON信号とOFF信号とが切り替わるタイミングは、ロータ10の角度θに依存して変わる。したがって、ロジック信号P
Uからロータ10の角度θを算出することができる。例えば、ロータ10の角度θが60度のときに、ロジック信号P
UがOFF信号からON信号に切り替わるように閾値P
UONを設定しておけば、ロジック信号P
UがON信号に切り替わった時のロータ10の角度θが60度であると決定できる。
図5に示すロジック信号生成部80に設けられた角度計算器85は、ロジック信号P
Uからロータ10の角度θを算出するように構成されている。
図5ではロジック信号P
Uを使ってロータ10の角度θを計算しているが、ロジック信号P
Vあるいはロジック信号P
Wからロータ10の角度θを計算してもよい。
【0036】
ロータ10の角度θが分かれば、ロータ角速度決定部90は、CPU(中央処理装置)やDSP(デジタル信号処理装置)などの演算器と、タイマーカウンターとを用いることにより、角度θの時間的な変化、すなわち角速度ωを算出することができる。ロジック信号生成部80全体をCPUやDSPで構成してもよい。
【0037】
更に精度のよいロジック信号P
Uを生成するために、2つの非励磁相の復調信号を用いてもよい。例えば、磁極U1,U2,V1,V2が非励磁の時の復調信号S
Uと復調信号S
Vを比較し、S
VとS
Uとの差が所定の値に達した時にロジック信号P
UをOFF信号からON信号に切り替える。さらに、磁極V1,V2,W1,W2が非励磁の時の復調信号S
Vと復調信号S
Wを比較し、P
WとP
Vとの差が所定の値に達した時にロジック信号P
UをON信号からOFF信号に切り替える。復調信号S
U,S
V,S
Wそれぞれを増幅するゲイン調整器を設け、ロータ10の角度θが所定の角度となった時にロジック信号P
UのON信号またはOFF信号が切り替わるようにそれぞれの復調信号の増幅度を調整してもよい。
【0038】
このように2つの非励磁相の復調信号を使うことで、個体差や温度変化等によるインダクタンス特性変化の影響をキャンセルでき、より精度が高くロバスト性に優れた転流タイミング制御を実現できる。2つの非励磁相の復調信号を用いてロジック信号を生成するロジック信号生成部80の一例を
図8に示す。
図8に示すように、ロジック信号生成部80は、復調信号S
U,S
V,S
Wそれぞれを増幅するゲイン調整器G1〜G12を備えている。ゲイン調整器G1〜G12は、比較器81の前に配置されており、それぞれのロジック信号P
U,P
V,P
WのON信号とOFF信号の切り替えタイミングを細かく調整できるようになっている。
図8に示す実施形態では、比較器81は、2つの非励磁相の復調信号S
V,S
Uの差を算出し、角度計算器85は、復調信号S
V,S
Uの差が所定の値(例えば0)に達したときにロータ10の角度θが所定の角度に達したことを決定する。
【0039】
復調信号S
U,S
V,S
Wの大きさの変化がどの角度θでも安定しているならば、復調信号S
U,S
V,S
Wそれぞれに対応する3つのゲイン調整器のみを設けてもよい。また、復調部70で復調する前にリップル電流のゲインを調整しても同じ効果が得られる。
【0040】
非励磁相の復調信号は、閾値や他の非励磁相の復調信号と比較され、ロジック信号のON信号とOFF信号の切り替えタイミングが決定される。ロジック信号のON/OFF切り替えタイミングを決定するとき以外は復調信号を正確に求める必要はない。このため、例えば、復調信号を閾値や他相の復調信号の比較していない時は、PWMのデューティ比を完全に0%として、リップル電流を完全にゼロとし、銅損や鉄損、スイッチング損失を低減してもよい。ロータ10の角速度が安定していれば、ロジック信号が完全に周期的となるため、復調信号が必要となる時間、および必要としない時間が明確になる。したがって、デューティ比を0%にするタイミングを正確に判断できる。またロータ10の角速度に変化が生じたときは、速やかに非励磁時のデューティ比0%の制御を中止し、デューティ比を50%程度に切り換えてもよい。
【0041】
リップル電流の波高値は、電磁石のインダクタンスに反比例するとともに、駆動電圧V
DCに比例する。駆動電圧V
DCに変動が生じる場合、ロータ角度情報以外のノイズが発生する。この駆動電圧V
DCの変動に起因するノイズを除去するために、閾値P
UON,P
UOFF,P
VON,P
VOFF,P
WON,P
WOFFを駆動電圧V
DCに比例して変化させてもよい。
【0042】
図3に示すように、U相の電磁石、V相の電磁石、およびW相の電磁石を順次励磁させる通電サイクルは、6つの制御区間E1,E2,E3,E4,E5,E6から構成される。制御区間E1は、U相の電磁石(磁極U1,U2)が励磁される区間である。V相の電磁石(磁極V1,V2)およびW相の電磁石(磁極W1,W2)は非励磁である。制御区間E2は、U相の電磁石(磁極U1,U2)、V相の電磁石(磁極V1,V2)、およびW相の電磁石(磁極W1,W2)のすべてを非励磁とする区間である。制御区間E3は、V相の電磁石(磁極V1,V2)が励磁される区間である。U相の電磁石(磁極U1,U2)およびW相の電磁石(磁極W1,W2)は非励磁である。制御区間E4は、U相の電磁石(磁極U1,U2)、V相の電磁石(磁極V1,V2)、およびW相の電磁石(磁極W1,W2)のすべてを非励磁とする区間である。制御区間E5は、W相の電磁石(磁極W1,W2)が励磁される区間である。U相の電磁石(磁極U1,U2)およびV相の電磁石(磁極V1,V2)は非励磁である。制御区間E6は、U相の電磁石(磁極U1,U2)、V相の電磁石(磁極V1,V2)、およびW相の電磁石(磁極W1,W2)のすべてを非励磁とする区間である。つまり、制御区間E1,E3,E5は、U相、V相、W相の電磁石の励磁区間であり、制御区間E2,E4,E6は非励磁区間である。これら6つの制御区間E1,E2,E3,E4,E5,E6が順次繰り返されることにより、ロータ10は回転することができる。
【0043】
図9は、スイッチドリラクタンスモータ1の始動時の各相の電磁石の励磁タイミングの一例を示す図である。スイッチドリラクタンスモータ1の始動時においても、
図3と同じように、6つの制御区間E1,E2,E3,E4,E5,E6からなる通電サイクルが繰り返される。なお、
図9に示す例では、通電サイクルは制御区間E1から開始されているが、ロータ10の初期角度(初期位置)によって他の制御区間から開始されることもある。
【0044】
ロータ10が回転しているとき、リップル電流の大きさが変化し、
図7を参照して説明したように、リップル電流の大きさに基づいて各相の転流タイミングが決定される。したがって、ロータ10が一旦回転し始めると、6つの制御区間E1〜E6が繰り返され、ロータ10が回転する。
【0045】
スイッチドリラクタンスモータ1を始動するとき、まず、停止しているロータ10の角度(初期角度)θが検出される。この停止しているロータ10の角度θは、前述の定格運転時と同様に2つの非励磁相の電磁石に流れるリップル電流の大きさ(振幅)から推定することができ、適切な相に電流を流すことができる。しかしながら、推定されたロータ10の角度θによっては、センサレス駆動装置はスイッチドリラクタンスモータ1の始動に失敗することがある。例えば、ロータ10の角度θが、
図9に示す、U相の電磁石(磁極U1,U2)への通電開始点である転流点t1にある場合、ロータ10からU相の突極3までの距離が大きいため力が足りず、ロータ10を回転させることができないことがある。別の例では、ロータ10の角度θが、
図9に示す制御区間E2にある場合、三相の電磁石には電流が供給されないので、ロータ10は回転を開始することができない。
【0046】
そこで、本実施形態では、ロータ10の角度θが予め設定された時間の間に変化しなかった場合には、モータドライバ55は、次の電磁石を励磁させるように構成されている。
図10は、本実施形態によるスイッチドリラクタンスモータ1の始動時の各相の電磁石の励磁タイミングの一例を示す図である。この
図10に示す例では、ロータ10の初期角度θは、制御区間E1の始点、すなわち転流点t1にある。この転流点t1では、ロータ10には十分な力が作用しないため、ロータ10の角度θが変化しない。そこで、モータドライバ55は、予め設定された時間T1の間に、ロータ10の角度θが変化しない場合は、U相の電磁石への電流の供給を停止し(制御区間E2)、次の相の電磁石であるV相の電磁石(磁極V1,V2)に電流を供給してV相の電磁石を励磁する(制御区間E3)。つまり、制御区間は、次の励磁区間である制御区間E3に強制的に切り替えられる。
図10の例では、予め設定された時間T1の始点は、U相の電磁石への電流の供給が開始された時点であるが、本発明はこの例に限定されない。
【0047】
V相の電磁石(磁極V1,V2)が励磁されると、ロータ10はV相の電磁石に引き寄せられ、ロータ10は回転し始めることができる。このように、モータドライバ55は、予め設定された時間T1の間に、ロータ10の角度θが変化しない場合は、次の相の電磁石を強制的に励磁することにより、スイッチドリラクタンスモータ1を始動させることができる。本実施形態によれば、始動用の複雑な制御シーケンスを備える必要はなく、モータドライバ55は、定格運転時の制御シーケンスを用いてスイッチドリラクタンスモータ1を始動させることが可能である。
【0048】
図10の例では、U相の電磁石に電流が供給されている間、ロータ10の回転速度(角速度)は0であるため、ロータ10の現在の角速度0と目標角速度ω
*との差は大きい。このため、
図4に示すPID補償器23を備えた目標電流生成器21は、ロータ10の現在の角速度0を目標角速度ω
*との差を最小にするために、より大きな目標電流信号i
*を生成する。しかしながら、次相の電磁石のコイル6に過大な電流が流れると、コイル6が過度に発熱し損傷するおそれがある。
【0049】
そこで、
図4に示すように、目標電流生成器21は、各相の電磁石に流す電流の大きさを制限するための電流リミッタ26を備えている。この電流リミッタ26は、PID補償器23の下流側に配置されており、PID補償器23によって生成された目標電流信号i
*を制限し、これによって、各相の電磁石のコイル6に流れる電流の大きさを制限する。
【0050】
図11は、本実施形態によるスイッチドリラクタンスモータ1の始動時の各相の電磁石の励磁タイミングの他の例を示す図である。
図11に示す例では、モータ始動時のロータ10の角度θは、非励磁区間である制御区間E2にある。制御区間E2では、三相の電磁石には電流が供給されないので、ロータ10は回転を開始することができない。このような場合も、モータドライバ55は、予め設定された時間T2の間に、ロータ10の角度θが変化しない場合は、次の相の電磁石であるV相の電磁石(磁極V1,V2)に電流を供給し、V相の電磁石を励磁する。V相の電磁石(磁極V1,V2)が励磁されると、ロータ10はV相の電磁石に引き寄せられ、ロータ10は回転し始めることができる。
【0051】
なお、上述した実施形態では、始動時にまずロータ10の角度θを検出したが、あらかじめ決められた相の電磁石をまず励磁し、予め設定された時間の間にロータ10の角度θが変化しない場合は、上述した実施形態と同様に次の相の電磁石を励磁するという方法をとってもよい。
【0052】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。