【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式(1)で表されるジチエノゲルモール化合物である。以下に本発明を詳述する。
【0007】
【化1】
【0008】
一般式(1)中、R
1及びR
2の両方又はいずれか一方は不斉中心を有する基であり、R
4は水素又はOR
3である。
【0009】
本発明者らは、ジチエノゲルモール骨格を複数のフェニルイソオキサゾールで修飾した構造をもち、該構造中に不斉中心を有する上記一般式(1)で表されるジチエノゲルモール化合物の製造に成功した。更に、本発明者らは、得られたジチエノゲルモール化合物が自己集合してらせん状の集積体を形成すること、及び、該らせん状の集積体が円偏光発光性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、下記一般式(1)で表されるジチエノゲルモール化合物である。
【0011】
【化2】
【0012】
一般式(1)中、R
1及びR
2の両方又はいずれか一方は不斉中心を有する基であり、R
4は水素又はOR
3である。
【0013】
R
1及びR
2は、その両方又はいずれか一方が不斉中心を有する基である。なお、上記一般式(1)中の複数のR
1は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、複数のR
2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
R
1が不斉中心を有する基である場合、R
1として、例えば、不斉中心を有する2−エチルへキシル基、シトロネリル基、ペリリル基、メンチル基等が挙げられる。なかでも、2−エチルへキシル基が好ましい。
R
1が不斉中心を有する基である場合、R
2は特に限定されず、不斉中心を有していても有していなくてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シトロネリル基、ゲラニル基、ファルネシル基、メンチル基、3,7−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルデカニル基等が挙げられる。なかでも、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。
【0014】
R
2が不斉中心を有する基である場合、R
1は特に限定されず、不斉中心を有していても有していなくてもよく、例えば、立体障害の少ないアルキル基等が挙げられる。上記立体障害の少ないアルキル基として、例えば、直鎖アルキル基等が挙げられ、該直鎖アルキル基として、n−オクチル基、n−ブチル基等の炭素数2〜12の直鎖アルキル基が好ましい。
R
2が不斉中心を有する基である場合、R
2として、例えば、不斉中心を有するアルキル基、不斉中心を有するアミノ酸誘導体、不斉中心を有するコレステロール誘導体等が挙げられる。なかでも、製造の容易さ、立体障害、集積能等の観点から、不斉中心を有するアルキル基が好ましい。上記不斉中心を有するアルキル基として、例えば、3,7−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルデカニル基等が挙げられる。
【0015】
R
1及びR
2は、その両方又はいずれか一方が不斉中心を有する基であればよいが、製造の容易さ、立体障害、集積能等の観点から、R
1が上記立体障害の少ないアルキル基等の不斉中心を有さない基であり、かつ、R
2が上記不斉中心を有するアルキル基等の不斉中心を有する基であることがより好ましい。
【0016】
R
4は、水素又はOR
3である。R
3は特に限定されず、例えば、直鎖アルキル基、不斉中心を有するアルキル基、不斉中心を有するアミノ酸誘導体、不斉中心を有するコレステロール誘導体等が挙げられる。なかでも、直鎖アルキル基が好ましい。この場合、上記一般式(1)中のR
2及びR
4の両方をアルキル基とすることができ、即ち、上記一般式(1)中のフェニルイソオキサゾール部分に複数のアルキル基を導入することができ、ジチエノゲルモール化合物の集積能をより向上させることができる。なお、上記一般式(1)中の複数のR
3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、複数のR
4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0017】
本発明のジチエノゲルモール化合物を製造する方法は特に限定されないが、ジチエノゲルモール骨格を製造した後、該ジチエノゲルモール骨格を複数のフェニルイソオキサゾールで修飾する方法が好ましい。
より具体的には、臭素又はヨウ素で置換されたジチエノゲルモール骨格とエチニル基を有するフェニルイソオキサゾールの均等カップリング反応を用いて修飾する方法が好ましい。
【0018】
本発明のジチエノゲルモール化合物は、自己集合してらせん状の集積体を形成する。本発明のジチエノゲルモール化合物の自己集合特性を評価する方法は特に限定されず、例えば、プロトンNMR測定、紫外可視吸収スペクトル、円二色性(CD)スペクトル等が挙げられる。
例えば、プロトンNMR測定では、ジチエノゲルモール化合物の濃度を変化させたプロトンNMR測定を行ったとき、ジチエノゲルモール化合物の濃度を高くするに従って芳香環の各プロトンのピークが高磁場シフトすることで、ジチエノゲルモール化合物の分子が積層構造を形成していると判断することができる。また、紫外可視吸収スペクトル及びCDスペクトルでは、各スペクトルの温度変化測定において温度に依存した吸収バンド又はCDシグナルの変化を分析することで、ジチエノゲルモール化合物の集積体の形成、らせん構造の存在等を確認することができる。
【0019】
本発明のジチエノゲルモール化合物は、自己集合してらせん状の集積体を形成し、該らせん状の集積体は、円偏光発光性を示す。上記らせん状の集積体の形成及びそれによる円偏光発光性の発現は温度に依存するため、円偏光発光性の発現を温度によって制御することができる。
本発明のジチエノゲルモール化合物の発光特性を評価する方法は特に限定されず、例えば、蛍光スペクトル、円偏光発光(CPL)スペクトル等が挙げられる。
【0020】
本発明のジチエノゲルモール化合物の用途は特に限定されず、円偏光発光性(特に、円偏光発光性の発現が温度によって制御されること)を利用して、例えば、セキュリティインク、3Dメガネ、センサー、発光性中間膜、温度センサー等の発光材料として本発明のジチエノゲルモール化合物を用いることができる。また、本発明のジチエノゲルモール化合物を用いることにより、液晶ディスプレイ(LCD)パネルの構成部材の数を低減させることが期待できる。