(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、レジストを用いたレジストパターンの形成プロセスでは、電離放射線等の照射、現像液を用いた現像処理およびリンス液を用いたリンス処理を経てレジストパターンを形成した際に、レジストパターンの倒れが発生することがある。そのため、レジストを用いたレジストパターンの形成では、レジストパターンの倒れを抑制することが求められている。
【0006】
また、主鎖切断型のポジ型レジストにおいては、得られるレジストパターンが明瞭であること、すなわち、レジスト膜が残って(残膜して)いる部分と、溶解している部分との境界が明瞭であることが求められる。具体的には、より明瞭性の高いレジストパターン形成を可能とする観点からは、レジストには、照射量が特定量に至らなければ現像液に溶解せず、特定量に至った時点で速やかに主鎖が切断され現像液に溶解される特性を有すること、すなわち電離放射線等の照射量の常用対数と、現像後のレジストの残膜厚との関係を示す感度曲線の傾きの大きさを表すγ値を高めることが求められている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のα−メチルスチレン・α−クロロアクリル酸メチル共重合体よりなるポジ型レジストでは、レジストパターンの倒れを十分に抑制することができなかった。また、かかるポジ型レジストでは、得られるパターンの明瞭性を十分に高めることができなかった。
【0008】
そこで、本発明は、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用した際にレジストパターンの倒れの発生を十分に抑制可能であるとともに、得られるレジストパターンの明瞭性が高い、重合体を提供することを目的とする。
また、本発明は、レジストパターン形成時に、レジストパターンの倒れの発生を十分に抑制可能であるとともに、γ値が高く、明瞭なパターンを得ることができるポジ型レジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、フッ素原子を1つ以上含有し、且つ重量平均分子量が22000以上である共重合体が、主鎖切断型のポジ型レジスト組成物として使用した際に、レジストパターンの倒れの発生を十分に抑制可能であると共に、γ値が高く、得られるパターンの明瞭性が高いことを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の重合体は、下記一般式(I):
【化1】
(式(I)中、R
1は、塩素原子、フッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R
2は、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R
3およびR
4は、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される単量体単位(A)と、下記一般式(II):
【化2】
(式(II)中、R
5、R
6、R
8およびR
9は、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、R
7は、水素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、pおよびqは、0以上5以下の整数であり、p+q=5である。)で表される単量体単位(B)とを有し、前記単量体単位(A)および前記単量体単位(B)の少なくとも一方がフッ素原子を一つ以上有し、且つ、重量平均分子量が22000以上であることを特徴とする。少なくとも一方がフッ素原子を一つ以上有する所定の単量体単位(A)および単量体単位(B)を含有し、且つ重量平均分子量が22000以上である重合体は、ポジ型レジストとして使用した際にレジストパターンの倒れの発生を十分に抑制可能であるとともに、γ値が高く、得られるパターンの明瞭性を高めることができるため、主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用することができる。
なお、本発明において、式(II)中のpが2以上の場合には、複数あるR
6は互いに同一でも異なっていてもよく、また、式(II)中のqが2以上の場合には、複数あるR
7は互いに同一でも異なっていてもよい。また、本発明において「重量平均分子量(Mw)」は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0011】
ここで、本発明の重合体は、重量平均分子量が110000以下であることが好ましい。重合体の重量平均分子量が110000以下であれば、主鎖切断型のポジ型レジスト組成物として使用した場合に感度を適度に向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明の重合体は、分子量分布(Mw/Mn)が1.60未満であることが好ましい。重合体の分子量分布が1.60未満であれば、主鎖切断型のポジ型レジスト組成物として使用した場合に、γ値を一層向上させ、得られるパターンの明瞭性を一層向上させることができる。
なお、本発明において、「分子量分布(Mw/Mn)」とは、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比を指す。そして、本発明において、「数平均分子量(Mn)」は、上述した「重量平均分子量(Mw)」と同様に、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0013】
さらに、本発明の重合体は、前記R
1が塩素原子であることが好ましい。単量体単位(A)のR
1が塩素原子であれば、電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させることができる。従って、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用した場合に、レジストパターンの明瞭性を一層向上させると共に、感度を適度に向上させることができる。また、単量体単位(A)のR
1が塩素原子の重合体は調製し易い。
【0014】
また、本発明の重合体は、前記R
2がフッ素原子で置換されたアルキル基であり、前記R
3およびR
4が水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましい。単量体単位(A)のR
2がフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R
3およびR
4が水素原子または非置換のアルキル基であれば、電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させることができる。従って、主鎖切断型のポジ型レジストとして特に良好に使用することができる。
【0015】
更に、本発明の重合体は、前記R
5〜R
9が水素原子または非置換のアルキル基であり、前記単量体単位(A)がフッ素原子を一つ以上有することが好ましい。単量体単位(B)のR
5〜R
9が水素原子または非置換のアルキル基であり、単量体単位(A)がフッ素原子を一つ以上有している重合体は、製造し易く、また、電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性に優れている。
【0016】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のポジ型レジスト組成物は、上述した重合体の何れかと、溶剤とを含むことを特徴とする。上述した重合体をポジ型レジストとして含有すれば、レジストパターンの形成に使用した際にレジストパターンの倒れの発生を十分に抑制するとともに、明瞭なレジストパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の重合体によれば、レジストとして使用した際にレジストパターンの倒れの発生を十分に抑制可能であるとともに、得られるパターンの明瞭性が高いポジ型レジストを提供することができる。
また、本発明のポジ型レジスト組成物によれば、γ値が高く、明瞭なパターンを良好に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の重合体は、電子線などの電離放射線や紫外線などの短波長の光の照射により主鎖が切断されて低分子量化する、主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用することができる。そして、本発明のポジ型レジスト組成物は、ポジ型レジストとして本発明の重合体を含むものであり、例えば、ビルドアップ基板などのプリント基板の製造プロセスにおいてレジストパターンを形成する際に用いることができる。
【0019】
(重合体)
本発明の重合体は、下記の一般式(I):
【化3】
(式(I)中、R
1は、塩素原子、フッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R
2は、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R
3およびR
4は、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R
3およびR
4は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される単量体単位(A)と、
下記の一般式(II):
【化4】
(式(II)中、R
5、R
6、R
8およびR
9は、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R
5、R
6、R
8およびR
9は互いに同一でも異なっていてもよく、R
7は、水素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、pおよびqは、0以上5以下の整数であり、p+q=5である。)で表される単量体単位(B)とを有する。また、本発明の重合体は、単量体単位(A)および単量体単位(B)の少なくとも一方がフッ素原子を一つ以上有する。即ち、本発明の重合体は、単量体単位(A)がフッ素原子を一つ以上有し、単量体単位(B)がフッ素原子を有していなくてもよいし、単量体単位(B)がフッ素原子を一つ以上有し、単量体単位(A)がフッ素原子を有していなくてもよいし、単量体単位(A)および単量体単位(B)のそれぞれがフッ素原子を一つ以上有していてもよい。さらに、本発明の重合体は、重量平均分子量が22000以上である。
なお、本発明の重合体は、単量体単位(A)および単量体単位(B)以外の任意の単量体単位を含んでいてもよいが、重合体を構成する全単量体単位中で単量体単位(A)および単量体単位(B)が占める割合は、合計で90mol%以上であることが好ましく、100mol%(即ち、重合体は単量体単位(A)および単量体単位(B)のみを含む)ことが好ましい。
【0020】
そして、本発明の重合体は、所定の単量体単位(A)および単量体単位(B)を含んでいるので、電離放射線等(例えば、電子線、KrFレーザー、ArFレーザー、EUVレーザーなど)が照射されると、主鎖が切断されて低分子量化する。また、本発明の重合体は、単量体単位(A)および単量体単位(B)の少なくとも一方がフッ素原子を一つ以上有しているので、レジストとして使用した際にレジストパターンの倒れの発生を十分に抑制することができる。
なお、単量体単位(A)および単量体単位(B)の少なくとも一方にフッ素原子を含有させることでレジストパターンの倒れの発生を抑制することができる理由は、明らかではないが、重合体の撥液性が向上するため、レジストパターンの形成過程において現像液やリンス液を除去する際にパターン間で引っ張り合いが起こるのを抑制することができるからであると推察される。
また、本発明の重合体は重量平均分子量が22000以上であるので、ポジ型レジストとして使用した際に、電離放射線等の放射量が低い場合に過度に減膜することが無いので、γ値を向上させることができ、得られるレジストパターンの明瞭性に優れるので、主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用することができる。また、重合体の重量平均分子量が22000以上であれば、かかる重合体を用いて形成したポジ型レジストの弾性を向上させることができるので、レジストパターンの倒れの発生を一層抑制することが可能である。
【0021】
<単量体単位(A)>
ここで、単量体単位(A)は、下記の一般式(III):
【化5】
(式(III)中、R
1〜R
4は、式(I)と同様である。)で表される単量体(a)に由来する構造単位である。
【0022】
そして、重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(A)の割合は、特に限定されることなく、例えば30mol%以上70mol%以下とすることができる。
【0023】
ここで、式(I)および式(III)中のR
1〜R
4を構成し得る、フッ素原子で置換されたアルキル基としては、特に限定されることなく、アルキル基中の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した構造を有する基が挙げられる。
また、式(I)および式(III)中のR
2〜R
4を構成し得る非置換のアルキル基としては、特に限定されることなく、非置換の炭素数1以上10以下のアルキル基が挙げられる。中でも、R
2〜R
4を構成し得る非置換のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0024】
そして、電離放射線等を照射した際の重合体の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(I)および式(III)中のR
1は、塩素原子、フッ素原子またはフッ素原子で置換された炭素数1以上5以下のアルキル基であることが好ましく、塩素原子、フッ素原子またはパーフルオロメチル基であることがより好ましく、塩素原子またはフッ素原子であることが更に好ましく、塩素原子であることが特に好ましい。特に、R
1が塩素原子である重合体は、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用した場合に、R
1がフッ素原子である重合体よりも主鎖の切断性に富み、レジストパターンの明瞭性を一層向上させると共に、感度を適度に向上させることができる。なお、式(III)中のR
1が塩素原子である単量体(a)は、重合性に優れており、式(I)中のR
1が塩素原子である単量体単位(A)を有する重合体は、調製が容易であるという点においても優れている。
【0025】
また、電離放射線等を照射した際の重合体の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(I)および式(III)中のR
2は、フッ素原子で置換されたアルキル基であることが好ましく、フッ素原子で置換された炭素数1以上10以下のアルキル基であることがより好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロヘキシル)エチル基、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル基、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル基、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル基、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル基、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル基または1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基であることが更に好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル基であることが特に好ましい。
【0026】
更に、電離放射線等を照射した際の重合体の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(I)および式(III)中のR
3およびR
4は、それぞれ、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0027】
そして、上述した式(I)で表される単量体単位(A)を形成し得る、上述した式(I)で表される単量体(a)としては、特に限定されることなく、例えば、α−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、α−クロロアクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、α−クロロアクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチル、α−クロロアクリル酸2−(パーフルオロヘキシル)エチル、α−クロロアクリル酸1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル、α−クロロアクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル、α−クロロアクリル酸1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル、α−クロロアクリル酸1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル、α−クロロアクリル酸1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル、α−クロロアクリル酸1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチルなどのα−クロロアクリル酸フルオロアルキルエステル;α−フルオロアクリル酸メチル、α−フルオロアクリル酸エチルなどのα−フルオロアクリル酸アルキルエステル;α−トリフルオロメチルアクリル酸メチル、α−トリフルオロメチルアクリル酸エチルなどのα−フルオロアルキルアクリル酸アルキルエステル;α−フルオロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、α−フルオロアクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、α−フルオロアクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチル、α−フルオロアクリル酸2−(パーフルオロヘキシル)エチル、α−フルオロアクリル酸1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル、α−フルオロアクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル、α−フルオロアクリル酸1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル、α−フルオロアクリル酸1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル、α−フルオロアクリル酸1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル、α−フルオロアクリル酸1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチルなどのα−フルオロアクリル酸フルオロアルキルエステル;が挙げられる。
【0028】
なお、電離放射線等を照射した際の重合体の主鎖の切断性を更に向上させる観点からは、単量体単位(A)は、α−クロロアクリル酸フルオロアルキルエステルに由来する構造単位であることが好ましい。即ち、式(I)および式(III)中のR
1〜R
4は、R
1が塩素原子であり、R
2がフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R
3およびR
4が水素原子であることが特に好ましい。
【0029】
<単量体単位(B)>
また、単量体単位(B)は、下記の一般式(IV):
【化6】
(式(IV)中、R
5〜R
9、並びに、pおよびqは、式(II)と同様である。)で表される単量体(b)に由来する構造単位である。
【0030】
そして、重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(B)の割合は、特に限定されることなく、例えば30mol%以上70mol%以下とすることができる。
【0031】
ここで、式(II)および式(IV)中のR
5〜R
9を構成し得る、フッ素原子で置換されたアルキル基としては、特に限定されることなく、アルキル基中の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した構造を有する基が挙げられる。
また、式(II)および式(IV)中のR
5〜R
9を構成し得る非置換のアルキル基としては、特に限定されることなく、非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基が挙げられる。中でも、R
5〜R
9を構成し得る非置換のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0032】
そして、重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中のR
5は、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0033】
また、重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中に複数存在するR
6および/またはR
7は、全て、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
なお、重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中のpが5であり、qが0であり、5つあるR
6の全てが水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、5つあるR
6の全てが水素原子または非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であることがより好ましく、5つあるR
6の全てが水素原子であることが更に好ましい。
【0034】
一方、重合体をレジストパターンの形成に使用した際にレジストパターンの倒れの発生を更に抑制する観点からは、式(II)および式(IV)中に複数存在するR
6および/またはR
7は、フッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基を含むことが好ましく、フッ素原子またはフッ素原子で置換された炭素数1以上5以下のアルキル基を含むことがより好ましい。
【0035】
更に、重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中のR
8およびR
9は、それぞれ、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0036】
そして、上述した式(II)で表される単量体単位(B)を形成し得る、上述した式(IV)で表される単量体(b)としては、特に限定されることなく、例えば、以下の(b−1)〜(b−11)等のα−メチルスチレンおよびその誘導体が挙げられる。
【化7】
【0037】
なお、重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、単量体単位(B)は、フッ素原子を含有しない(即ち、単量体単位(A)のみがフッ素原子を含有する)ことが好ましく、α−メチルスチレンに由来する構造単位であることがより好ましい。即ち、式(II)および式(IV)中のR
5〜R
9、並びに、pおよびqは、p=5、q=0であり、R
5がメチル基であり、5つあるR
6が全て水素原子であり、R
8およびR
9が水素原子であることが特に好ましい。
【0038】
(重合体の性状)
<重量平均分子量>
ここで、本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)は、22000以上である必要があり、25000以上であることが好ましく、55000以上であることがより好ましく、110000以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましく、90000以下であることが更に好ましい。重合体の重量平均分子量(Mw)が22000以上であれば、ポジ型レジストとして使用した際に、パターニングに用いた電離放射線等を照射しなかった領域(以下、非照射領域ともいう)における残膜率を高めることにより、γ値を高め、得られるレジストパターンの明瞭性を一層高めることができる。また、重合体の重量平均分子量が22000以上であれば、かかる重合体を用いて形成したポジ型レジストの弾性を向上させることができるので、レジストパターンの倒れの発生を一層抑制することが可能である。また、重合体の重量平均分子量(Mw)が110000以下であれば、ポジ型レジストとして使用した際の感度を適度に向上させることができるとともに、重合体の製造容易性を高めることができる。
【0039】
[数平均分子量]
また、本発明の重合体の数平均分子量(Mn)は、15000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましく、35000以上であることがさらに好ましい。重合体の数平均分子量(Mn)が15000以上であれば、かかる重合体を含有するポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジストをポジ型レジストとして使用した際のγ値を更に高めることができる。
【0040】
<分子量分布>
本発明の重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.60未満であることが好ましく、1.45未満であることがより好ましく、1.40未満であることがより好ましく、1.20以上であることが好ましく、1.26以上であることがより好ましく、1.30以上であることがさらに好ましい。重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.60未満であれば、ポジ型レジストとして使用した際のγ値を一層高めることがで、得られるレジストパターンの明瞭性を一層高めることができる。また、重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.20以上であれば、重合体の製造容易性を高めることができる。さらに、重量平均分子量が22000以上である重合体の分子量分布が(Mw/Mn)が1.20以上であれば、かかる重合体を用いて形成したポジ型レジストの弾性を一層向上させることができるので、レジストパターンの倒れの発生を一層抑制することが可能である。
【0041】
<分子量が6000未満の成分の割合>
本発明の重合体は、分子量が6000未満の成分の割合が6%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましく、0.2%以下であることが特に好ましく、0%であることが更に特に好ましい。分子量が6000未満の成分の割合が6%以下であれば、ポジ型レジストとして使用した際に離放射線等の照射量が少ない場合に過度に減膜することを抑制して、γ値を一層高めることができ、得られるレジストパターンの明瞭性を一層高めることができる。
【0042】
<分子量が10000未満の成分の割合>
本発明の重合体は、分子量が10000未満の成分の割合が15%以下であることが好ましく、2.7%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。分子量が10000未満の成分の割合が15%以下であれば、ポジ型レジストとして使用した際のγ値を一層高めることができ、得られるレジストパターンの明瞭性を一層高めることができる。
【0043】
<分子量が20000超の成分の割合>
本発明の重合体は、分子量が20000超の成分の割合が、60%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。分子量が20000超の成分の割合が、60%以上であれば、ポジ型レジストとして使用した際に、非照射領域における残膜率を高めることで、γ値を高め、得られるレジストパターンの明瞭性を一層高めることができる。
【0044】
<分子量が100000超の成分の割合>
本発明の重合体は、分子量が100000超の成分の割合が、40%以下であることが好ましい。分子量が100000超の成分の割合が40%以下であれば、重合体の製造が容易である上に、かかる重合体を含有するポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジストをポジ型レジストとして使用した際の感度を適度に高めることができる。
【0045】
(重合体の調製方法)
そして、上述した単量体単位(A)および単量体単位(B)を有する重合体は、例えば、単量体(a)と単量体(b)とを含む単量体組成物を重合させた後、任意に得られた重合物を精製することにより調製することができる。
なお、重合体の組成、分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量は、重合条件および精製条件を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、重合体の組成は、重合に使用する単量体組成物中の各単量体の含有割合を変更することにより調整することができる。また、重量平均分子量および数平均分子量は、重合温度を高くすれば、小さくすることができる。更に、重量平均分子量および数平均分子量は、重合時間を短くすれば、小さくすることができる。
【0046】
<単量体組成物の重合>
ここで、本発明の重合体の調製に用いる単量体組成物としては、単量体(a)および単量体(b)を含む単量体成分と、任意で使用可能な溶媒と、重合開始剤と、任意に添加される添加剤との混合物を用いることができる。そして、単量体組成物の重合は、既知の方法を用いて行うことができる。中でも、溶媒を使用する場合には、溶媒としてシクロペンタノンなどを用いることが好ましい。また、重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。なお、重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、重合開始剤の配合量を変更することによっても調整することができる。具体的には、重量平均分子量および数平均分子量は、重合開始剤の配合量を少なくすれば、大きくすることができ、反対に、重合開始剤の配合量を多くすれば、小さくすることができる。また、重合体の重量平均分子量及び数平均分子量を大きくするにあたり、単量体組成物中における溶媒の配合量を少なくする、或いは、単量体組成物溶媒を配合しないこともあり得る。
【0047】
また、単量体組成物を重合して得られた重合物は、そのまま重合体として使用してもよいが、特に限定されることなく、重合物を含む溶液にテトラヒドロフラン等の良溶媒を添加した後、良溶媒を添加した溶液をメタノール等の貧溶媒中に滴下して重合物を凝固させることにより回収し、以下のようにして精製することもできる。
【0048】
<重合物の精製>
得られた重合物を精製する場合に用いる精製方法としては、特に限定されることなく、再沈殿法やカラムクロマトグラフィー法などの既知の精製方法が挙げられる。中でも、精製方法としては、再沈殿法を用いることが好ましい。
なお、重合物の精製は、複数回繰り返して実施してもよい。
【0049】
そして、再沈殿法による重合物の精製は、例えば、得られた重合物をテトラヒドロフラン等の良溶媒に溶解した後、得られた溶液を、テトラヒドロフラン等の良溶媒とメタノール等の貧溶媒との混合溶媒に滴下し、重合物の一部を析出させることにより行うことが好ましい。このように、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中に重合物の溶液を滴下して重合物の精製を行えば、良溶媒および貧溶媒の種類や混合比率を変更することにより、得られる重合体の分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量を容易に調整することができる。具体的には、例えば、混合溶媒中の良溶媒の割合を高めるほど、混合溶媒中で析出する重合体の分子量を大きくすることができる。
【0050】
なお、再沈殿法により重合物を精製する場合、本発明の重合体としては、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中で析出した重合物を用いてもよいし、混合溶媒中で析出しなかった重合物(即ち、混合溶媒中に溶解している重合物)を用いてもよい。ここで、混合溶媒中で析出しなかった重合物は、濃縮乾固などの既知の手法を用いて混合溶媒中から回収することができる。
【0051】
(ポジ型レジスト組成物)
本発明のポジ型レジスト組成物は、上述した重合体と、溶剤とを含み、任意に、レジスト組成物に配合され得る既知の添加剤を更に含有する。そして、本発明のポジ型レジスト組成物は、上述した重合体をポジ型レジストとして含有しているので、レジストパターンの形成に使用した際にレジストパターンの倒れの発生を十分に抑制することができる。
【0052】
<溶剤>
なお、溶剤としては、上述した重合体を溶解可能な溶剤であれば既知の溶剤を用いることができる。中でも、適度な粘度のポジ型レジスト組成物を得てポジ型レジスト組成物の塗工性を向上させる観点からは、溶剤としてはアニソールを用いることが好ましい。
【0053】
<レジストパターンの形成>
また、本発明のポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成は、特に限定されることなく、既知のレジストパターンの形成方法を用いて行うことができる。具体的には、本発明のポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成は、例えば、(1)レジストパターンを利用して加工される基板などの被加工物の上に上述したポジ型レジスト組成物を塗布し、塗布したポジ型レジスト組成物を乾燥させてレジスト膜を形成した後、(2)レジスト膜に対して電離放射線や光を照射して所望のパターンを描画し、(3)更に、パターンを描写したレジスト膜を現像液と接触させてレジスト膜を現像し、(4)最後に現像したレジスト膜をリンス液でリンスする、ことにより実施できる。
【0054】
特に、現像液及びリンス液としては、例えば、CF
3CFHCFHCF
2CF
3、CF
3CF
2CHCl
2、CClF
2CF
2CHClF、CF
3CF
2CF
2CF
2OCH
3、C
8F
18等のフッ素系溶剤;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)等のアルコール;酢酸アミル、酢酸ヘキシルなどのアルキル基を有する酢酸エステル;フッ素系溶剤とアルコールとの混合物;フッ素系溶剤とアルキル基を有する酢酸エステルとの混合物;アルコールとアルキル基を有する酢酸エステルとの混合物;フッ素系溶剤とアルコールとアルキル基を有する酢酸エステルとの混合物;などを用いることができる。現像液及びリンス液の組合せは、例えば、本発明の重合体を含んでなるレジストの溶解性などを考慮して決定することができる。具体的には、レジスト溶解性のより高い溶剤を現像液とし、レジスト溶解性のより低い溶剤をリンス液とすることができる。また、現像液の選定にあたり、上記工程(2)を実施する前のレジスト膜を溶解しない現像液を選択することが好ましい。さらに、リンス液の選定にあたり、現像液と混ざり易いリンス液を選択し、現像液との置換が容易となるようにすることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、重合体の重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合、並びに、重合体よりなるポジ型レジストの耐パターン倒れ性、γ値、及び残膜率は、下記の方法で測定および評価した。
【0056】
<重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布>
得られた重合体についてゲル浸透クロマトグラフィーを用いて重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。具体的には、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー製、HLC−8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を標準ポリスチレン換算値として求めた。そして、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0057】
<重合体中の各分子量の成分の割合>
ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー製、HLC−8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、重合体のクロマトグラフを得た。そして、得られたクロマトグラムから、ピークの総面積(A)、分子量が所定範囲である成分のピークの面積の合計(X)をそれぞれ求めた。具体的には、下記複数の閾値によりそれぞれ定められる所定範囲の分子量の成分について、割合を算出した。
分子量が6000未満の成分の割合(%)=(X
6/A)×100
分子量が10000未満の成分の割合(%)=(X
10/A)×100
分子量が20000超の成分の割合(%)=(X
20/A)×100
分子量が100000超の成分の割合(%)=(X
100/A)×100
【0058】
<レジスト膜の耐パターン倒れ性>
スピンコーター(ミカサ製、MS−A150)を使用し、ポジ型レジスト組成物を、直径4インチのシリコンウェハ上に塗布した。次いで、塗布したポジ型レジスト組成物を温度180℃のホットプレートで3分間加熱して、シリコンウェハ上に厚さ40nmのレジスト膜を形成した。そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS−S50)を用いてレジスト膜を最適露光量(Eop)で露光して、パターンを描画した。その後、レジスト用現像液としてイソプロピルアルコール及びフッ素系溶剤(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、バートレルXF(登録商標)、CF
3CFHCFHCF
2CF
3)を体積比率で1:1となるように混合して得た現像液を用いて温度23℃で1分間の現像処理を行った後、リンス液としてのフッ素系溶剤(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、バートレルXF(登録商標)、CF
3CFHCFHCF
2CF
3)で10秒間リンスしてレジストパターンを形成した。そして、形成したレジストパターンのパターン倒れの有無を観察した。なお、最適露光量(Eop)は、それぞれEthの約2倍の値を目安として、適宜設定した。また、レジストパターンのライン(未露光領域)とスペース(露光領域)は、それぞれ20nmとした。
そして、以下の基準に従って耐パターン倒れ性を評価した。
A:パターン倒れ無し
B:パターン倒れ有り
【0059】
<レジスト膜のγ値>
スピンコーター(ミカサ製、MS−A150)を使用し、ポジ型レジスト組成物を直径4インチのシリコンウェハ上に厚さ500nmになるように塗布した。そして、塗布したポジ型レジスト組成物を温度180℃のホットプレートで3分間加熱して、シリコンウェハ上にレジスト膜を形成した。そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS−S50)を用いて、電子線の照射量が互いに異なるパターン(寸法500μm×500μm)をレジスト膜上に複数描画し、レジスト用現像液として、イソプロピルアルコール及びフッ素系溶剤(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、バートレルXF(登録商標)、CF
3CFHCFHCF
2CF
3)を体積比率で1:1となるように混合して得た現像液を用いて、温度23℃で1分間の現像処理を行った後、フッ素系溶剤(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、バートレルXF(登録商標)、CF
3CFHCFHCF
2CF
3)で10秒間リンスした。なお、電子線の照射量は、4μC/cm
2から200μC/cm
2の範囲内で4μC/cm
2ずつ異ならせた。次に、描画した部分のレジスト膜の厚みを光学式膜厚計(大日本スクリーン製、ラムダエース)で測定し、電子線の総照射量の常用対数と、現像後のレジスト膜の残膜率(=(現像後のレジスト膜の膜厚/シリコンウェハ上に形成したレジスト膜の膜厚)との関係を示す感度曲線を作成した。そして、得られた感度曲線(横軸:電子線の総照射量の常用対数、縦軸:レジスト膜の残膜率(0≦残膜率≦1.00))について、下記の式を用いてγ値を求めた。なお、下記の式中、E
0は、残膜率0.20〜0.80の範囲において感度曲線を二次関数にフィッティングし、得られた二次関数(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率0を代入した際に得られる総照射量の対数である。また、E
1は、得られた二次関数上の残膜率0の点と残膜率0.50の点とを結ぶ直線(感度曲線の傾きの近似線)を作成し、得られた直線(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率1.00を代入した際に得られる総照射量の対数である。そして、下記式は、残膜率0と1.00との間での上記直線の傾きを表している。
【数1】
γ値の値が大きいほど、感度曲線の傾きが大きく、明瞭性の高いパターンを良好に形成し得ることを示す。
【0060】
<レジスト膜の残膜率>
「レジスト膜のγ値」の評価方法と同様にしてシリコンウェハ上にレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜の初期厚みT
0を光学式膜厚計(大日本スクリーン製、ラムダエース)で測定した。また、γ値の算出の際に得られた直線(感度曲線の傾きの近似線)の残膜率が0となる際の、電子線の総照射量Eth(μC/cm
2)を求めた。そして、感度曲線作成時に使用した、4μC/cm
2から200μC/cm
2の範囲内で4μC/cm
2ずつ異ならせた電子線の照射量(すなわち、4、8、12、16・・・196、200μC/cm
2)を、それぞれ上述のように決定したEthで除した。得られた値(電子線の照射量/Eth)が0.85となる電子線の照射量が存在すれば、その電子線の照射量における残膜率を、残膜率(0.85Eth)とした。得られた値(電子線の照射量/Eth)が0.85となる電子線の照射量が存在しない場合、これらの値のうち、0.85に最も近接する2つの値を特定し、この2点における電子線の照射量を、それぞれP(μC/cm
2)、P+4(μC/cm
2)とした。そして、下記式により、残膜率(0.85Eth)を決定した。結果を表1に示す。
残膜率(0.85Eth)=S−{(S−T)/(V−U)}×(0.85−U)
この式中、
Sは電子線の照射量Pにおける残膜率を示し、
Tは電子線の照射量P+4における残膜率を示し、
UはP/Ethを示し、そして、
Vは(P+4)/Ethを示す。
同様にして、得られた値(電子線の照射量/Eth)が0.80となる電子線の照射量における残膜率(0.80Eth)を決定した。
ここで算出したような0.85Eth、0.80Ethにおける残膜率が高いほど、残膜率を概ね0とすることができる電子線の総照射量(すなわち、Eth(μC/cm
2))よりも低い照射量では、レジスト膜が現像液に対して溶解しにくいということである。換言すれば、照射量の比較的少ない領域である、レジスト膜上におけるパターン形成領域の周辺領域(非照射領域)では、レジスト膜の現像液に対する溶解性が低いということである。したがって、上述のようにして算出した残膜率が高いということは、レジスト膜上で溶解されてパターンを形成すべき領域と、溶解せずに残るべき領域との境界が明瞭であり、パターンの明瞭性が高いということを意味する。
【0061】
(実施例1)
<重合体の調製>
単量体(a)としてのα−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル3.0gおよび単量体(b)としてのα−メチルスチレン4.40gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.006975gと、溶媒としてのシクロペンタノン1.85gを含む単量体組成物をガラス容器に入れ、ガラス容器を密閉および窒素置換して、窒素雰囲気下、78℃の恒温槽内で6時間撹拌した。その後、室温に戻し、ガラス容器内を大気解放した後、得られた溶液にテトラヒドロフラン(THF)10gを加えた。そして、THFを加えた溶液を、メタノール300g中に滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の凝固物(重合物)を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)は50883であり、数平均分子量(Mn)は31303であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.63であった。また、得られた重合物は、α−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル単位を50mol%、α−メチルスチレン単位を50mol%含んでいた。
[重合物の精製]
次いで、得られた重合物を100gのTHFに溶解させ、得られた溶液をTHF150gとメタノール(MeOH)850gとの混合溶媒に滴下し、白色の凝固物(α−メチルスチレン単位およびα−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル単位を含有する重合体)を析出させた。その後、析出した重合体を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の重合体を得た。そして、得られた重合体について、重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合を測定した。結果を表1に示す。
<ポジ型レジスト組成物の調製>
得られた重合体を溶剤としてのアニソールに溶解させ、重合体の濃度が11質量%であるレジスト溶液(ポジ型レジスト組成物)を調製した。そして、重合体よりなるポジ型レジスト膜の耐パターン倒れ性、γ値、および残膜率を上述に従って評価した。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2)
重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルの配合量を0.005231gに変更し、溶媒を添加しなかった以外は実施例1と同様にして重合物を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)は49744であり、数平均分子量(Mn)は30184であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.65であった。また、得られた重合物は、α−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル単位を50mol%、α−メチルスチレン単位を50mol%含んでいた。
そして重合物の精製にあたり、得られた溶液をTHF200gとメタノール(MeOH)800gとの混合溶媒に滴下した以外は実施例1と同様にして、重合体を得た。そして、得られた重合体について、実施例1と同様にして重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合を測定した。結果を表1に示す。さらに、実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製し、測定及び評価を行った、結果を表1に示す。
【0063】
(実施例3)
重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルの配合量を0.069751gに変更し、溶媒であるシクロペンタノンの配合量を1.87gに変更した以外は実施例1と同様にして、重合物を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)は21807であり、数平均分子量(Mn)は14715であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.48であった。また、得られた重合物は、α−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル単位を50mol%、α−メチルスチレン単位を50mol%含んでいた。
そして重合物の精製にあたり、得られた溶液をTHF100gとメタノール(MeOH)900gとの混合溶媒に滴下した以外は実施例1と同様にして、重合体を得た。そして、得られた重合体について、実施例1と同様にして重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合を測定した。結果を表1に示す。さらに、実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製し、測定及び評価を行った、結果を表1に示す。
【0064】
(実施例4)
実施例1で調製した重合物を精製せずにそのままポジ型レジスト組成物を調製に用いた。そして、調製したレジスト組成物を用いて実施例1と同様にして測定及び評価を行った、結果を表1に示す。
【0065】
(実施例5)
実施例2で調製した重合物を精製せずにそのままポジ型レジスト組成物を調製に用いた。そして、調製したレジスト組成物を用いて実施例1と同様にして測定及び評価を行った、結果を表1に示す。
【0066】
(比較例1)
実施例3で調製した重合物を精製せずにそのままポジ型レジスト組成物を調製に用いた。そして、調製したレジスト組成物を用いて実施例1と同様にして測定及び評価を行った、結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
上述の表1より、フッ素原子を含有し、重量平均分子量が22000以上である重合体を含むポジ型レジスト組成物を使用した場合、耐パターン倒れ性に優れることがわかる。さらに、これらの実施例によるポジ型レジスト組成物によれば、高いγ値を確保しつつ、Eth付近の照射量における残膜率も比較的高く維持することができ、明瞭性の高いレジストパターンを良好に形成しうることがわかる。