(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1に示す導波管通信システム1は、複数の通信装置10,20が円形導波管5を媒体として互いに通信を行うシステムである。導波管通信システム1では、複数の通信装置として、通信装置A10と通信装置B30とを備える。円形導波管5は、円形導波管5の長手方向と直交する任意の平面にて円形導波管5を切断したときの断面が円形かつ中空に構成されている。
【0010】
通信装置A10および通信装置B30は、それぞれ、通信制御部A11,B31、コネクタオスA12,B32、プリント基板A20,B40を備えている。プリント基板20,40は、それぞれ、給電部A21,B41、送受信モジュールA22,B42、コネクタメスA23,B43を備えている。
【0011】
通信装置A10および通信装置B30は、同様の構成であるため、以下、通信装置A10についてのみ説明し、通信装置B30については説明を省略する。なお、通信装置A10および通信装置B30は、同様の構成である必要はなく、本開示の技術範囲に属する限り任意の態様を採用しうる。
【0012】
通信制御部A11は、円形導波管5を通じて送信しようとするデータに基づく電気信号を生成し、送受信モジュールA22に向けて送信する。また、通信制御部A11は、送受信モジュールA22から得られる電気信号に基づいてデータを復元する。
【0013】
コネクタオスA12およびコネクタメスA23は、周知のコネクタとして構成され、通信制御部A11とプリント基板20とを電気的に接続するために用いられる。コネクタオス12とコネクタメス23とが結合されると、通信制御部A11と送受信モジュールA22とが通信可能に接続される。
【0014】
送受信モジュールA22は、通信装置における周知の送信機能および受信機能を備えている。送信機能とは、所定の搬送波に対して通信制御部A1から得られた電気信号に応じた変調を行うことによって送信波を生成して給電部A21に送る機能をいう。また、受信機能とは、給電部A21から得られた受信波から搬送波の成分を除去した電気信号を生成して通信制御部A11に送る機能をいう。
【0015】
給電部A21は、送受信モジュールA22にて送受信される送信波および受信波を円形導波管5内に送受信するための構成である。具体的には、配線および給電素子を備える。
プリント基板20は、
図2に示すように、表面201に円形導波管5の端部を接合することにより固定される。そして、プリント基板20においては、円形導波管5の内周よりも内側の領域が複数の給電素子が配置される給電素子配置領域26Aとされる。
【0016】
給電素子配置領域26Aにおいては、前述の複数の給電素子として、
図3に示すように、複数組のダイポールアンテナ261,262,263がそれぞれ異なる位置に配置されている。送受信モジュールA22は、複数組のダイポールアンテナ261,262,263のそれぞれから同時に電磁波を放射させることによって複数の異なるモードでの電磁波を送信する。
【0017】
ここで、モードとは、個々の電磁波の発生態様を示す。具体的には、電磁波の偏波面の方向、電磁波の強度、電磁波の周波数、電磁波の分布等の電磁界の発生状態を示す。モードは、給電素子の種別や偏波面の方向、給電素子から出力される電磁波の強度や電磁波の周波数、電磁波の発生位置等によって決められる。
【0018】
具体的には、例えば
図4に示すようなモードが予め準備される。すなわち、モード1として、円形導波管5の変形がないときに損失が最小となり良好に通信ができるモードが準備される。なお、損失とは、円形導波管5における電磁波の伝送時の減衰量または減衰率を示す。
【0019】
また、モード2〜5としては、例えば、円形導波管5の変形がない通常のとき、膨張、収縮、湾曲等の変形が生じたときに少なくとも1つのモードで通信可能となるように各モードが準備される。
【0020】
例えば、モード2として、気温や湿度等の変化により円形導波管5が膨張したときや円形導波管5が湾曲したとき等に損失が比較的小さくなり良好に通信ができるモード、また、モード3として、気温や湿度等の変化により円形導波管5が収縮したとき等に損失が比較的小さくなり良好に通信ができるモードが準備される。また、例えば、モード4として、円形導波管5が湾曲したとき等に損失が比較的小さくなるモード、また、モード5として、円形導波管5の断面形状変形時に損失が比較的小さくなるモードが準備される。
【0021】
なお、各モードを設定するにあたって前提となる、円形導波管5の膨張量、収縮量、湾曲量、回転量等の変形量については、実験的に設定される。また、円形導波管5において異なる複数の変形量に対応した複数のモードが準備されていてもよい。また、各変形量を組み合わせたモードが準備されていてもよい。
【0022】
また、本実施形態の給電素子においては3組のダイポールアンテナ261,262,263が配置されているため、予め準備された複数のモードのうち事前に選択された3つのモードで電磁波が同時に放射される。
【0023】
なお、本実施形態では、3組の給電素子の位置がそれぞれ異なるので、給電素子の種別や偏波面の方向、給電素子から出力される電磁波の強度や電磁波の周波数が同様であったとしても、異なるモードの電磁波が放出される。
【0024】
[1−2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)上記の通信システム1においては、円形導波管5と、円形導波管5の内部にて電磁波を送受信することによって通信を行う複数の通信装置10,30と、を備え、複数の通信装置10,30は、個々の電磁波の発生態様をモードとして、複数の異なるモードの電磁波を送受信することで通信を行う。
【0025】
このような通信システム1によれば、複数の異なるモードの電磁波を送受信することで通信を行うので、あるモードでの通信に失敗したとしても他のモードでの通信が成功しやすくなる。したがって、曲げることができる円形導波管5を用いる場合においても良好な通信が成立しやすくすることができる。
【0026】
また、上記通信システム1において、複数の通信装置10,30は、複数のモードとして、円形導波管5の変形がないときに良好に通信ができるモードとして予め準備されたノーマルモードと、円形導波管5の変形があるときに良好に通信ができるモードとして予め準備された変形時モードとを含むモードで電磁波を送受信する。
【0027】
このような通信システム1によれば、円形導波管5の変形があるときであっても良好に通信を行うことができる。なお、変形時モードとしては、円形導波管5が膨らんだとき、円形導波管5が縮んだとき、円形導波管5が回転し捩れたとき、円形導波管5が曲がったとき、のうちの少なくとも1つに対応したモードを準備しておくとよい。
【0028】
また、上記通信システム1において、複数の通信装置10,30は、複数の異なるモードの電磁波を同時に送受信することで通信を行う。
このような通信システム1によれば、複数の異なるモードの電磁波を同時に送受信するので通信速度を維持することができる。
【0029】
また、上記通信システム1において、予め設定されたモード毎に異なる位置に配置された複数の給電素子を有する。
このような通信システム1によれば、給電素子の位置を変更することで異なるモードとすることができる。よって簡素な構成で複数のモードを実現することができる。
【0030】
[2.他の実施形態]
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0031】
(2a)上記実施形態では、複数のモードの電磁波を同時に送信したが、同時である必要はない。例えば、1つの給電素子を用いて時分割でモードを変更してもよいし、複数のモードの電磁波を同時に送信する構成と時分割でモードを変更する構成とを組み合わせてもよい。
【0032】
(2b)また、上記実施形態では、給電素子配置を異ならせることによって異なるモードの電磁波を放出できるよう構成したが、この構成に限定されるものではない。複数のモードの電磁波を同時に送信する場合には、送信周波数は同じであっても、偏波面の方向を給電素子毎に変更することによって複数のモードとしてもよい。
【0033】
この場合、例えば、
図5に示すように、給電素子配置領域26Bには、それぞれが異なる偏波面の方向を有する複数のダイポールアンテナ264,265,266を準備し、それぞれのダイポールアンテナ264,265,266から電磁波を送信するとよい。
【0034】
このような通信システムによれば、偏波方向を異ならせることで異なるモードとすることができる。
(2c)また、上記実施形態では、予め設定されたモード毎に異なる電磁波の周波数で通信を行うようにしてもよい。例えば、
図6に示すように、給電素子配置領域26Cには、モード毎に周波数に応じた異なる電気長を有する複数のダイポールアンテナ267,268,269を備えておく。そして、これらのダイポールアンテナ267,268,269には、送受信モジュールA22から電気長に応じて適した周波数の送信波が供給され、その周波数の電磁波が放出される。なお、電気長とは、伝送線路上を伝わる信号の遅延時間を基準に給電素子や配線等の長さを表したものである。
【0035】
このような通信システムによれば、異なる電磁波の周波数とすることで異なるモードとすることができる。また、周波数を異ならせる際に適切な電気長とすることができる。
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
【0036】
(2e)上述した導波管通信システムの他、当該導波管通信システムの構成要素となる装置、当該導波管通信システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、導波管通信方法など、種々の形態で本発明を実現することもできる。
【0037】
[3.本開示の構成と実施形態の構成との関係]
上記実施形態における通信装置10,30は本開示でいう通信部に相当する。また、上記実施形態の
図4にて示すモード1が本開示でいうノーマルモードに相当し、モード2,3,4,5が本開示でいう変形時モードに対応する。