特許第6708055号(P6708055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708055
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】ケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/14 20060101AFI20200601BHJP
   B29C 48/154 20190101ALI20200601BHJP
   B29C 48/29 20190101ALI20200601BHJP
   B29C 48/34 20190101ALI20200601BHJP
   B29C 48/455 20190101ALI20200601BHJP
   B29K 105/24 20060101ALN20200601BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20200601BHJP
【FI】
   H01B13/14 A
   B29C48/154
   B29C48/29
   B29C48/34
   B29C48/455
   B29K105:24
   B29L9:00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-162984(P2016-162984)
(22)【出願日】2016年8月23日
(65)【公開番号】特開2018-32495(P2018-32495A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】児玉 壮平
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−125632(JP,A)
【文献】 特開2014−096252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/14
B29C 48/154
B29C 48/29
B29C 48/34
B29C 48/455
B29K 105/24
B29L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン架橋触媒を含有する内層シース及び前記内層シースよりも多量のシラン架橋触媒を含有する最外層シースを備えたケーブルの製造方法であって、
ベースポリマ100質量部に対してシラン架橋触媒1質量部未満を含有する組成物を用いて前記内層シース及び前記最外層シースをそれぞれ押出機により成形する工程において、
前記最外層シースを成形する前記押出機の出口近傍で前記組成物に更にシラン架橋触媒を添加する工程を有することを特徴とするケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記最外層シースを成形する前記押出機で前記組成物に更に添加されるシラン架橋触媒の添加量は、前記ベースポリマ100質量部に対して1質量部以上3質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載のケーブルの製造方法。
【請求項3】
前記組成物は、前記ベースポリマ100質量部に対してシラン1質量部以上5質量部以下を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のケーブルの製造方法。
【請求項4】
前記シラン架橋触媒が更に添加される前の前記組成物中の前記シラン架橋触媒の含有量は、前記ベースポリマ100質量部に対して0.2質量部以上0.8質量部以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のケーブルの製造方法。
【請求項5】
前記シラン架橋触媒は、有機錫系の化合物であり、前記最外層シースの錫元素含有量が前記内層シースの錫元素含有量の2〜8倍であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からシラン架橋させたゴム又はポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を用いて種々の押出成形物が形成されている。当該押出成形物は、電力ケーブルやキャブタイヤケーブルのシース被覆などに使用されている。
【0003】
シラン架橋させたゴムからなるシースを備えたケーブルの製造には多量の熱エネルギや高価な加熱装置を必要とせず、大気中の水分で架橋が進むことで所望の特性が得られるため、コスト面で非常に優位である。
【0004】
その一方でシランによる架橋は架橋速度が遅いという問題がある。ゴムシースを被覆後、巻取機に到達するまでに少なくとも最表面層はある程度の架橋(一次架橋)が進んでいなければ、整列巻された時の張力や自重によってケーブル表面に永久歪みが残ってしまう。そのため、特許文献1に記載の発明では永久変形率の小さい外層を被覆するなどして対策している。
【0005】
また、架橋は表面から内部に向かって反応が進んでいくので、肉厚の厚いゴムシースの場合は内部が架橋されるまでには非常に時間がかかってしまう。そのため、肉厚が厚いゴムシースケーブルの場合は、巻取機で巻き取った後、何日も保管しておかなければならず、架橋が完全に完了(二次架橋)し、製品として出荷させるまでに非常に日数がかかるという問題もある。
【0006】
一般に、架橋速度を向上させるためには、シラン架橋触媒(主として有機錫系のものが使用される)の量を増やすことが考えられる。
【0007】
また、グラフト化したポリオレフィンはスコーチ(早期架橋)発生等の問題があって保存や取扱いが面倒であった。この問題を解決する方法としては、押出機の樹脂供給口にポリオレフィンのベース樹脂を供給する一方で、押出機の樹脂供給口側又は途中(シリンダー側やスクリュー側)でシラン架橋触媒やシランカップリング剤を圧入供給する製造方法がある(特許文献2参照)。当該製造方法は、樹脂とシラン架橋触媒やシランカップリング剤とを混合状態で保存等することなく、すべての材料が同時にブレンドされることにより、スコーチ発生等の問題を解消しようとするものである(特許文献2の段落0018、0027)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015−146303号公報
【特許文献2】特開平11−195335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、触媒の量を増加させると、スコーチによるヤケが発生し、押出成形物の外観不良が発生するという問題がある。これは、ベース材にシラン液や架橋触媒を事前にコンパウンディングしたペレットを使用した場合、押出機内の滞在時間が長く、フライト溝、ブレーカープレート、スクリーンメッシュ等で材料の一部が滞留してしまうと、過剰な熱が印加されるためである。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術でもスコーチ発生等の問題を解消するためには十分ではなく、例えば、大量のシラン架橋触媒を途中で圧入供給した場合、フライト部に材料の一部が付着し、滞留することによるヤケは発生してしまう。
【0011】
一例として、クロロプレンゴムをベースとするゴム材料にシラン液を3phr程度混練した材料での触媒量とスコーチタイムの関係を調査したところ、触媒量が0、0.5、1.0、1.5phrと増加するにつれ、スコーチタイムは60、35、15、5分と短くなっていくことが分かった。
【0012】
一般的なゴム材料の押出し条件では、材料投入から押出されてケーブルに被覆されるまでの押出機内滞在時間は15分程度である。従って、上記例の場合、触媒量1.0phrより多く含んだ材料になるとヤケが発生し、良好な押出しは不可能と言える。
【0013】
一方、ヤケを発生しないための安全量(例えば、触媒量が0.5phr以下)とした場合、数気圧の蒸気で一次架橋するためには1時間以上の架橋時間が必須となる。このため、ライン速度を非常に遅くするか、又はライン長(蒸気缶長)を長くしなければならなかった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、押出機内のスコーチによるヤケの発生を抑制でき、かつ、架橋速度を速くしても耐変形性に優れるケーブルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するために、下記のケーブルの製造方法を提供する。
【0016】
[1]シラン架橋触媒を含有する内層シース及び前記内層シースよりも多量のシラン架橋触媒を含有する最外層シースを備えたケーブルの製造方法であって、ベースポリマ100質量部に対してシラン架橋触媒1質量部未満を含有する組成物を用いて前記内層シース及び前記最外層シースをそれぞれ押出機により成形する工程において、前記最外層シースを成形する前記押出機の出口近傍で前記組成物に更にシラン架橋触媒を添加する工程を有することを特徴とするケーブルの製造方法。
[2]前記最外層シースを成形する前記押出機で前記組成物に更に添加されるシラン架橋触媒の添加量は、前記ベースポリマ100質量部に対して1質量部以上3質量部以下であることを特徴とする前記[1]に記載のケーブルの製造方法。
[3]前記組成物は、前記ベースポリマ100質量部に対してシラン1質量部以上5質量部以下を含有することを特徴とする前記[1]又は前記[2]に記載のケーブルの製造方法。
[4]前記シラン架橋触媒が更に添加される前の前記組成物中の前記シラン架橋触媒の含有量は、前記ベースポリマ100質量部に対して0.2質量部以上0.8質量部以下であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のケーブルの製造方法。
[5]前記シラン架橋触媒は、有機錫系の化合物であり、前記最外層シースの錫元素含有量が前記内層シースの錫元素含有量の2〜8倍であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のケーブルの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、押出機内のスコーチによるヤケの発生を抑制でき、かつ、架橋速度を速くしても耐変形性に優れるケーブルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係るケーブルの製造方法により製造されたケーブルの一例を示す横断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るケーブルの製造方法に使用する製造装置の概略図であり、(a)は装置全体を示し、(b)は(a)におけるB領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔ケーブルの製造方法〕
本発明の実施の形態に係るケーブルの製造方法は、シラン架橋触媒を含有する内層シース11及び内層シース11よりも多量のシラン架橋触媒を含有する最外層シース12を備えたケーブル20の製造方法であって、ベースポリマ100質量部に対してシラン架橋触媒1質量部未満を含有する組成物を用いて内層シース11及び最外層シース12をそれぞれ押出機により成形する工程において、最外層シース12を成形する押出機33の出口近傍で上記組成物に更にシラン架橋触媒38を添加する工程を有する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係るケーブルの製造方法により製造されたケーブルの一例を示す横断面図である。また、図2は、本発明の実施の形態に係るケーブルの製造方法に使用する製造装置の概略図であり、(a)は装置全体を示し、(b)は(a)におけるB領域の拡大図である。
【0021】
図1に示されるケーブル20は、絶縁電線3を2本撚り合わせたケーブルコア10と、ケーブルコア10の外周に押出被覆された内層シース11と、内層シース11の外周に押出被覆された外層シース12(最外層シース)とを備える。絶縁電線3は単芯でもよく、二芯以外の多芯撚り線であってもよい。
【0022】
絶縁電線3は、導体1と、導体1の外周に被覆された絶縁体2とを備える。導体1及び絶縁体2の材料は特に限定されず、それぞれ既知の材料を用いて形成することができる。導体1は、1本である場合に限られず、複数本の素線を撚合せたものであってもよい。
【0023】
内層シース11は、シラン架橋触媒1質量部未満を含有しており、ケーブルコア送出し機31により送り出されたケーブルコア10の外周に、ベースポリマ100質量部に対してシラン架橋触媒1質量部未満を含有する組成物を用いて押出機32により成形される。ここで用いる組成物は、押出機32に投入する前にベースポリマとシラン架橋触媒とを混合した組成物でもよいし、ベースポリマ(又はベースポリマ組成物)とシラン架橋触媒とを押出機の投入口に別々に投入して押出機32内にて混合した組成物であってもよい。
【0024】
上記組成物中のシラン架橋触媒の含有量は、好ましくはベースポリマ100質量部に対して0.2質量部以上0.8質量部以下であり、より好ましくはベースポリマ100質量部に対して0.3質量部以上0.7質量部以下であり、更に好ましくはベースポリマ100質量部に対して0.4質量部以上0.6質量部以下である。
【0025】
シラン架橋触媒としては、ジオクチル錫、ジブチル錫などの有機錫系の化合物が使用できる。
【0026】
ベースポリマは、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン等のハロゲン元素含有ゴムであることが好ましい。所望の特性を満足するためにベースポリマに充填剤、難燃剤、滑剤などの各種添加剤を添加することが好ましい。
【0027】
上記組成物中のシランの含有量は、好ましくはベースポリマ100質量部に対して1質量部以上5質量部以下であり、より好ましくはベースポリマ100質量部に対して1.5質量部以上4.5質量部以下であり、更に好ましくはベースポリマ100質量部に対して2質量部以上4質量部以下である。シランがベースポリマ100質量部に対して1質量部未満になると、シラン架橋効果がシース全体に得られず強度が劣化してしまい、またシラン液がベースポリマに対して5質量部を超えると、過剰にシラン架橋が進行してしまい、伸びが劣化してしまうためである。
【0028】
シランとしては、特に限定されるものではないが、一般的なアミノシランやビニルシランなどが使用できる。
【0029】
外層シース12(最外層シース)は、内層シース11よりも多量のシラン架橋触媒を含有する。外層シース12の成形に際し、ベースポリマ100質量部に対してシラン架橋触媒1質量部未満を含有する上記組成物を用いる点は内層シース11と同様であるが、外層シース12を押出機33により成形する工程においては、外層シース12を成形する押出機33の出口近傍で上記組成物に更にシラン架橋触媒38を添加する工程を有する点で内層シース11とは相違する。出口近傍とは、具体的には、押出機33内のスクリュー41の先端(終点)から押出機33の出口までの間を指し、好ましくは、スクリーンメッシュ42やブレーカープレート43通過後から出口までの間のことである。
【0030】
図2では、押出機33内のブレーカープレート43通過直後にシラン架橋触媒投入口44が設けられ、ここにシラン架橋触媒38が圧入ポンプ37により投入される。
【0031】
外層シース12を成形する押出機33で上記組成物に更に添加されるシラン架橋触媒の添加量は、ベースポリマ100質量部に対して0.6質量部以上3.4質量部以下であることが好ましく、より好ましくはベースポリマ100質量部に対して0.8質量部以上3.2質量部以下であり、更に好ましくはベースポリマ100質量部に対して1質量部以上3質量部以下である。
【0032】
シラン架橋触媒量が少ない場合(例えば0.5phr以下の場合)、シラン架橋により所定の強度(外層シース12断面の高さ方向に対し、潰れ幅10%以下)を得るための一次架橋が完了までには数気圧蒸気で1時間以上必要である。一方、シラン架橋触媒を1phr含めれば40分程度で、1.5phr含めれば30分程度で所定の強度が得られる。このため、一次架橋速度を向上させるにはシラン架橋触媒を1.5phr以上配合することが有効である。そこで、本発明の実施形態においては、シラン触媒量を、内層シース11は1.0phr未満とし、外層シース12は1.5phr以上含ませることとした。これにより、ヤケを抑制することが可能であり、かつ、一次架橋速度を向上でき(一次架橋完了までの時間を短縮化でき)、パスラインでのプーリー接触や巻取ドラムへの整列巻されるまでに一次架橋を完了させることができるため潰れを抑制できる。また、本発明の実施形態によれば、シース肉厚の厚いケーブルにおける内部のシースほど二次架橋完了が遅いという課題の解決も可能である。外層シース12はシース全体の肉厚に対し、50%以下の肉厚であることが好ましい。
【0033】
なお、外層シース12の錫元素含有量が内層シース11の錫元素含有量の2〜8倍であることが好ましい。
【0034】
押出機32、33の成形温度は、好ましくは60℃以上、100℃以下である。
【0035】
クロスヘッド34にて内層シース11及び外層シース12の押出成形後、蒸気缶35を通過させて飽和水蒸気等により架橋処理が施される。その後、巻取り機36にケーブル20が巻き取られる。
【0036】
本実施の形態においては、シースを3層以上の多層構造とすることもできる(例えば内層シース11と同様の内層シースをもう1層設ける)。さらに、必要に応じて、セパレータ、編組、金属箔によるシールドテープ等を施してもよい。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
図1の構造のケーブルを下記の通りの方法で製造し、評価を行なった。
【0039】
銅線からなる導体1とエチレンプロピレンゴムからなる絶縁体2を備えた絶縁電線3を2本撚り合せたケーブルコア10(外径φ45mm)に内層シース11(肉厚3mm)、外層シース12(肉厚1mm)を被覆した外径φ53mmのケーブル20を作製した。また、実際の作業を考慮した場合、配合種類はできるだけ少ない方が良い。そこで、本検討では、内層シース、外層シースともに同じ材料とした。
【0040】
使用した材料は、ベースとしてクロロプレンゴムを使用し、シランとしてアミノシラン:商品名KBM-573(信越シリコン製)及びシラン架橋触媒としてジオクチル錫:商品名ネオスタンU830(日東化成製)を使用した(表1)。
【0041】
【表1】
【0042】
内層シース11は90mm押出機32で、外層シース12は40mm押出機33を使用した。シラン架橋触媒0.5〜1.5phrを事前含浸させた材料3種類をそれぞれ投入し、外層シース押出機33ではブレーカープレート43の後でシラン架橋触媒38をさらに液添した(図2参照、添加量については表2参照)。
【0043】
合否は、押出したケーブル(押出時間:0〜60分以上)の外観調査及び30分後の変形量で判断した。60分以上押出してもケーブルの外観荒れが見られなかったものを合格(〇)、押出直後(0分)は外観荒れが発生しないものの押出し途中(60分未満)で外観が荒れ始めたものを不合格(△)、押出直後(0分)から外観荒れが発生したものを不合格(×)とした。また、外観荒れが発生しなかった合格品については、2気圧蒸気で30分、架橋させ、1N荷重時の変形量が肉厚の10%未満(0.4mm未満)のものを合格(〇)、10%以上(0.4mm以上)のものを不合格(×)とした。両方の評価において合格(〇)のものを合格と判定した(表2参照)。
【0044】
シラン架橋触媒を外層シースの材料にブレーカープレート43の後で触媒を液添せず、内外層シースの触媒含有量0.5質量部の比較例1では、外観荒れは発生しなかったものの、30分後の変形量が大きかった。シラン架橋触媒を外層シースの材料にブレーカープレート43の後で触媒を液添せず、内外層シースの触媒含有量1.0質量部の比較例2では、押出し直後の外観は良好なものの、途中から外観荒れが発生した。また、シラン架橋触媒を外層シースの材料にブレーカープレート43の後で触媒を液添せず、内外層シースの触媒含有量1.5質量部の比較例3では、押出し開始時点で既に外観荒れが発生した。これらの結果、触媒量1.0質量部未満である0.5質量部では外観荒れはないが架橋速度が遅いことが分かった。一方、触媒量1.0質量部以上では架橋速度が速すぎて押出し直後又は押出し途中からヤケによる外観荒れが発生することが分かった。
【0045】
そこで、本実施例1〜3においては、材料に含まれるシラン触媒量を0.5質量部として、さらに外層シース用の押出機33の出口近傍でシラン触媒を液添することにした。
【0046】
シラン液添量を0.5質量部としたところ、外層シース12の外観荒れは見られなかった。シラン液添量を1.0〜3.0質量部とした場合、外観も良好で、30分後の変形量も小さく合格した。
【0047】
また、SEM-EDXを使用して、実施例及び比較例のクロロプレン(Cr)に対する錫(Sn)元素量(%)を測定し、その内外層比率を求めた。結果、実施例1〜3では、内層に対して外層は2〜8倍程度Snが多いことが分かった。
【0048】
【表2】
【符号の説明】
【0049】
1:導体、2:絶縁体、3:絶縁電線、10:ケーブルコア
11:内層シース、12:外層シース、20:ケーブル
31:ケーブルコア送出し機
32:押出機(内層)、33:押出機(外層)
34:クロスヘッド、35:蒸気缶、36:巻取機
37:圧入ポンプ、38:シラン架橋触媒
41:スクリュー、42:スクリーンメッシュ
43:ブレーカープレート
図1
図2