特許第6708645号(P6708645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708645
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】シラン基を含む急速硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/10 20060101AFI20200601BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20200601BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200601BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20200601BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   C08L101/10
   C09J201/00
   C09J11/06
   C09D201/00
   C09K3/10 Z
【請求項の数】15
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2017-527757(P2017-527757)
(86)(22)【出願日】2015年11月23日
(65)【公表番号】特表2018-502182(P2018-502182A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】EP2015077377
(87)【国際公開番号】WO2016083312
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年11月19日
(31)【優先権主張番号】14194599.8
(32)【優先日】2014年11月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クレーマー
(72)【発明者】
【氏名】ウルス ブルクハルト
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0034627(US,A1)
【文献】 特表2016−525618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08G 18/00− 18/87
C08G 77/00− 77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む組成物:
− 少なくとも1種のシラン官能性ポリマーP1;及び
− 式(I)の末端基を有する少なくとも1種のシラン官能性ポリマーP2:
【化1】
(式中、
1a及びR1bは、それぞれ独立して、水素原子又は1〜12個の炭素原子を含む一価のヒドロカルビルラジカルであるか、又は一緒になって、2〜6個の炭素原子を含むアルキレンラジカルであり、
は、水素原子、又は1〜12個の炭素原子を有し、任意選択的にエーテル基、エステル基、ニトリル基、アミノ基若しくはシラン基を含有する一価のヒドロカルビルラジカルであり、
は、芳香族部分を有していてもよく、また1個若しくは複数個のヘテロ原子を有していてもよい、1〜20個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカルであり、
は、1〜8個の炭素原子を含むアルキルラジカルであり、
は、エーテル基を有していてもよい、1〜10個の炭素原子を含むアルキルラジカルであり、かつ
xは、0、1又は2である);
ここで、前記シラン官能性ポリマーP1と前記シラン官能性ポリマーP2との重量比は、99:1〜10:90であり、かつ
前記シラン官能性ポリマーP1は、式(I)のいかなる末端基も持たない。
【請求項2】
前記シラン官能性ポリマーP1が、シラン基を含有するポリエーテルであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記シラン官能性ポリマーP1が、以下の(a)〜(d)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の組成物:
(a)鎖延長されていてもよい、アリル基を有するポリエーテルとヒドロシランとの反応から得られた、シラン基を有するポリエーテル;
(b)鎖延長されていてもよい、アルキレンオキシドとエポキシシランとの共重合から得られた、シラン基を有するポリエーテル;
(c)ジイソシアネートで鎖延長されていてもよい、ポリエーテルポリオールとイソシアナトシランとの反応から得られた、シラン基を有するポリエーテル;及び
(d)イソシアネート基を有するウレタンポリエーテルとアミノシラン又はヒドロキシシラン又はメルカプトシランとの反応から得られた、シラン基を有するポリエーテル。
【請求項4】
前記シラン官能性ポリマーP1が、(a)アリル基を有するポリエーテルとヒドロシランとの反応から得られた、前記シラン基を有するポリエーテルか、又は(c)ポリエーテルポリオールとイソシアナトシランとの反応から得られた、前記シラン基を有するポリエーテルかのいずれかであることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記シラン官能性ポリマーP2が、シラン基を有するポリエーテル及び/又はポリエステル及び/又はポリカーボネートであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
1aがメチルラジカルであり、R1bが水素原子であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
1aがメチルラジカルであり、R1bが水素原子であり、Rが水素原子であり、Rが、1,3−プロピレン、2−メチル−1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、3−メチル−1,4−ブチレン、及び3,3−ジメチル−1,4−ブチレンからなる群から選択されるラジカルであり、Rが、メチルラジカル又はエチルラジカルであり、かつxが0であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記シラン官能性ポリマーP1と前記シラン官能性ポリマーP2との重量比が、98:2〜20:80であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記シラン官能性ポリマーP1及び前記シラン官能性ポリマーP2が両方とも、もっぱらメトキシシラン基か、又はもっぱらエトキシシラン基か、のいずれかを有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
充填材、架橋剤、可塑剤、溶媒、触媒、接着促進剤、乾燥剤、安定剤、顔料及びレオロジー助剤から選択される少なくとも1つのさらなる要素を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
5重量%〜95重量%の範囲の含有量でシラン官能性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
重金属含有有機化合物を含まないことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物から、それが湿分と反応した後に得られる、硬化組成物。
【請求項14】
接着剤若しくはシーラントとして、又はコーティングとしての、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
なくとも1つのシラン官能性ポリマーP1を含む湿分硬化組成物の硬化の加速方法であって、以下の式(I)の末端基を有する少なくとも1つのシラン官能性ポリマーP2を前記組成物に添加することによる、加速方法:
【化2】
(式中、
1a及びR1bは、それぞれ独立して、水素原子又は1〜12個の炭素原子を含む一価のヒドロカルビルラジカルであるか、又は一緒になって、2〜6個の炭素原子を含むアルキレンラジカルであり、
は、水素原子、又は1〜12個の炭素原子を有し、任意選択的にエーテル基、エステル基、ニトリル基、アミノ基若しくはシラン基を含有する一価のヒドロカルビルラジカルであり、
は、芳香族部分を有していてもよく、また1個若しくは複数個のヘテロ原子を有していてもよい、1〜20個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカルであり、
は、1〜8個の炭素原子を含むアルキルラジカルであり、
は、エーテル基を有していてもよい、1〜10個の炭素原子を含むアルキルラジカルであり、かつ
xは、0、1又は2である)、
ここで、前記シラン官能性ポリマーP1が、式(I)のいかなる末端基も持たない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン基を含有する組成物に、並びに建設及び工業用途向けの湿分硬化型接着剤、シーラント又はコーティングでのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シラン基含有ポリマーは、「シラン官能性ポリマー」又は「シラン変性ポリマー(SMP)」又は「シラン末端ポリマー(STP)」とも呼ばれ、湿分硬化組成物におけるバインダーとして、しばらくの間は満足のいくレベルで使用されてきており、特には、建設産業及び製造産業において、弾性接着剤、シーラント又はコーティングとしての用途を見出しており、従来からのポリウレタンに対してイソシアネートフリーの代替え物を構成している。
【0003】
シラン官能性ポリマーは、ポリウレタンポリマーから極めて単純な方法で得ることが可能であり、それには、そのイソシアネート官能基を、アミノシラン又はヒドロキシシランの手段によってシラン基に転化させる。そのようなシラン官能性ポリウレタンは、比較的急速に架橋、硬化して、良好な強度及び伸張性を有する非粘着性の物質を与える。しかしながら、それらは、水素結合形成性のウレタン基及び/又はウレア基の含量が高いので、それらは粘度が比較的高く、そのため、常に簡単な方法で加工できるという訳ではない。
【0004】
ウレア基を含まず、ウレタン基を含有するとしてもごくわずかしかない低粘度のシラン官能性ポリマーも同様に公知であり、たとえば、ポリエーテルポリオールをイソシアナトシランと反応させるか、又はアリル官能性ポリエーテルのヒドロシリル化によって得ることができる。そのようなシラン官能性ポリマーは、それらの加工が容易であり、そのため、多くの製造業者から市場に供給されているので、広く使用されている。しかしながら、それらは、反応が極めて遅く、そのため架橋が遅く、粘着性の高いまま長時間留まっている。十分に早く、完全に硬化させるには、多くの場合、高活性の触媒を大量に使用することが必要とされる。さらには、硬化させた後でも、それらは通常、アミノシラン又はヒドロキシシランを介して得られるシラン官能性ポリウレタンポリマーの機械的な品質を達成できない。
【0005】
慣用的に使用されている高活性の触媒は、有機スズ化合物である。しかしながら、それらは健康に有害であり、環境にも危険であるので、その理由から、それらの使用が望ましくないという意見が強くなってきている。有機スズ化合物の代替え品として、有機チタネートが使用されることも多いが、それらは、有機スズ化合物に比べると触媒活性が低く、その理由から、極めて大量に使用されるか、又は強塩基、特には、環状アミジンたとえば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)と共に使用される。しかしながら、DBUもまた同様に健康に有害であり、環境にも危険であり、その上に悪臭を有しており、そしてさらには、シラン官能性ポリマーをベースとする組成物の中への相溶性が極めて限られているので、それらは、分離したり、汗かき現象を起こしたり、基材を汚したりする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、高い架橋速度を有する低粘度のシラン官能性ポリマー系が必要とされている。
【0007】
それ故、低い粘度を有し、有機スズ化合物又はDBUなどのEHS−クリティカル触媒の使用なしでさえも迅速に架橋し、そして同時に硬化して良好な強度及び伸展性の非粘着性材料を与えるシラン官能性ポリマーシステムを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外にも、この目的は、下記の態様1に記載されるような2つの異なるシラン官能性ポリマーの組成物によって達成されることが分かった。それは、製造するのが簡単であり、良好な貯蔵性を有し、低い粘度を有し、そして、存在する触媒が追加の強塩基なしの有機チタネートであるにすぎない場合でさえも、湿分で意外にも迅速に硬化して良好な強度、伸展性及び熱安定性を有する弾性材料を与える。
【0009】
とりわけ意外なのは、小割合の場合でさえも、1つのポリマーの高い反応性が、他の、反応性がより小さいポリマー及び組成物に伝達され、硬化における2つのポリマー中の異なる反応性のシラン基にもかかわらず、良好な機械的特性を有する材料を形成するという事実である。
【0010】
本発明はさらに、下記の態様15に記載されるような方法を提供する。この方法によって、有機スズ化合物又はDBUなどの強塩基の使用なしに、低粘度の、しかし比較的非反応性のシラン官能性ポリマーの硬化を大きく加速すること、同時にその強度及び弾性を上げることが可能である。
【0011】
本発明のさらなる態様は、さらなる下記の独立的態様の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、下記の従属的態様の主題である。
すなわち、本発明の態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
以下を含む組成物:
− 少なくとも1種のシラン官能性ポリマーP1;及び
− 式(I)の末端基を有する少なくとも1種のシラン官能性ポリマーP2:
【化1】
(式中、
1a及びR1bは、それぞれ独立して、水素原子又は1〜12個の炭素原子を含む一価のヒドロカルビルラジカルであるか、又は一緒になって、2〜6個の炭素原子を含むアルキレンラジカルであり、
は、水素原子、又は1〜12個の炭素原子を有し、任意選択的にエーテル基、エステル基、ニトリル基、アミノ基若しくはシラン基を含有する一価のヒドロカルビルラジカルであり、
は、芳香族部分を有していてもよく、また1個若しくは複数個のヘテロ原子、とりわけ窒素原子を有していてもよい、1〜20個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカルであり、
は、1〜8個の炭素原子を含むアルキルラジカルであり、
は、エーテル基を有していてもよい、1〜10個の炭素原子を含むアルキルラジカルであり、かつ
xは、0、1又は2である);
ここで、前記シラン官能性ポリマーP1と前記シラン官能性ポリマーP2との重量比は、99:1〜10:90であり、かつ
前記シラン官能性ポリマーP1は、式(I)のいかなる末端基も持たない。
《態様2》
前記シラン官能性ポリマーP1が、シラン基を含有するポリエーテルであることを特徴とする、態様1に記載の組成物。
《態様3》
前記シラン官能性ポリマーP1が、以下からなる群から選択されることを特徴とする、態様2に記載の組成物:
− 鎖延長されていてもよい、アリル基を有するポリエーテルとヒドロシランとの反応から得られた、シラン基を有するポリエーテル;
− 鎖延長されていてもよい、アルキレンオキシドとエポキシシランとの共重合から得られた、シラン基を有するポリエーテル;
− ジイソシアネートで鎖延長されていてもよい、ポリエーテルポリオールとイソシアナトシランとの反応から得られた、シラン基を有するポリエーテル;及び
− イソシアネート基を有するウレタンポリエーテルとアミノシラン又はヒドロキシシラン又はメルカプトシランとの反応から得られた、シラン基を有するポリエーテル。
《態様4》
前記シラン官能性ポリマーP1が、アリル基を有するポリエーテルとヒドロシランとの反応から得られた、シラン基を有するポリエーテルか、又はポリエーテルポリオールとイソシアナトシランとの反応から得られた、シラン基を有するポリエーテルかのいずれかであることを特徴とする、態様3に記載の組成物。
《態様5》
前記シラン官能性ポリマーP2が、シラン基を有するポリエーテル及び/又はポリエステル及び/又はポリカーボネートであることを特徴とする、態様1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
《態様6》
1aがメチルラジカルであり、R1bが水素原子であることを特徴とする、態様1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
《態様7》
1aがメチルラジカルであり、R1bが水素原子であり、Rが水素原子であり、Rが、1,3−プロピレン、2−メチル−1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、3−メチル−1,4−ブチレン、及び3,3−ジメチル−1,4−ブチレンからなる群から選択されるラジカルであり、Rが、メチルラジカル又はエチルラジカルであり、かつxが0であることを特徴とする、態様1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
《態様8》
前記シラン官能性ポリマーP1と前記シラン官能性ポリマーP2との重量比が、98:2〜20:80であることを特徴とする、態様1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
《態様9》
前記シラン官能性ポリマーP1及び前記シラン官能性ポリマーP2が両方とも、もっぱらメトキシシラン基か、又はもっぱらエトキシシラン基か、のいずれかを有することを特徴とする、態様1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
《態様10》
充填材、架橋剤、可塑剤、溶媒、触媒、接着促進剤、乾燥剤、安定剤、顔料及びレオロジー助剤から選択される少なくとも1つのさらなる要素を含むことを特徴とする、態様1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
《態様11》
5重量%〜95重量%の範囲の含有量でシラン官能性ポリマーを含むことを特徴とする、態様10に記載の組成物。
《態様12》
重金属含有有機化合物を含まないことを特徴とする、態様1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
《態様13》
態様1〜12のいずれか一項に記載の組成物から、それが湿分と反応した後に得られる、硬化組成物。
《態様14》
接着剤若しくはシーラントとして、又はコーティングとしての、態様1〜12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
《態様15》
少なくとも1つの少なくとも1つのシラン官能性ポリマーP1を含む湿分硬化組成物の硬化の加速方法であって、以下の式(I)の末端基を有する少なくとも1つのシラン官能性ポリマーP2を前記組成物に添加することによる、加速方法:
【化2】
(式中、
1a及びR1bは、それぞれ独立して、水素原子又は1〜12個の炭素原子を含む一価のヒドロカルビルラジカルであるか、又は一緒になって、2〜6個の炭素原子を含むアルキレンラジカルであり、
は、水素原子、又は1〜12個の炭素原子を有し、任意選択的にエーテル基、エステル基、ニトリル基、アミノ基若しくはシラン基を含有する一価のヒドロカルビルラジカルであり、
は、芳香族部分を有していてもよく、また1個若しくは複数個のヘテロ原子、とりわけ窒素原子を有していてもよい、1〜20個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカルであり、
は、1〜8個の炭素原子を含むアルキルラジカルであり、
は、エーテル基を有していてもよい、1〜10個の炭素原子を含むアルキルラジカルであり、かつ
xは、0、1又は2である)、
ここで、前記シラン官能性ポリマーP1が、式(I)のいかなる末端基も持たない。
【0012】
本発明を実行する方法
本発明は、
− 少なくとも1つのシラン官能性ポリマーP1と;
− 式(I)の末端基
【化1】
(式中、
1a及びR1bはそれぞれ独立して、水素原子又は1〜12個の炭素原子を有する一価のヒドロカルビルラジカルであるか、又は一緒に2〜6個の炭素原子を有するアルキレンラジカルであり、
は、水素原子又は1〜12個の炭素原子を有し、任意選択的にエーテル基、エステル基、ニトリル基、アミノ基若しくはシラン基を含有する一価のヒドロカルビルラジカルであり、
は、1〜20個の炭素原子を有し、芳香族成分を任意選択的に有し、そして任意選択的に1個若しくは複数のヘテロ原子、とりわけ窒素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカルであり、
は、1〜8個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、
は、1〜10個の炭素原子を有し、任意選択的にエーテル基を含有するアルキルラジカルであり、
xは、0、1又は2である)
を有する少なくとも1つのシラン官能性ポリマーP2と
を含む組成物であって、
シラン官能性ポリマーP1とシラン官能性ポリマーP2との間の重量比が99:1〜10:90であり、かつ
シラン官能性ポリマーP1が、式(I)のいかなる末端基も持たない
組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書においては、「アルコキシシラン基」又は略して「シラン基」という用語は、有機ラジカルに結合され、そしてそのケイ素原子の上に1〜3個、特には2個又は3個の加水分解性アルコキシラジカルを有するシリル基を指している。「メトキシシラン基」という用語は、アルコキシラジカルとしてもっぱらメトキシラジカルを有しているシラン基を指している。「エトキシシラン基」という用語は、アルコキシラジカルとしてもっぱらエトキシラジカルを有しているシラン基を指している。
【0014】
「アルコキシシラン」又は略して「シラン」という用語は、少なくとも1個のシラン基を有する有機化合物を指している。
【0015】
「ヒドロキシシラン」、「イソシアナトシラン」、「アミノシラン」、及び「メルカプトシラン」という用語は、有機ラジカルの上にシラン基に加えて、それぞれ、1個又は複数のヒドロキシル、イソシアナト、アミノ、及びメルカプト基を有するシランを指している。
【0016】
たとえばポリオール又はポリイソシアネートのように、「ポリ」で始まる物質名称は、形式的には、一つの分子に2個又は複数のそれらの名称を有する官能基を含む物質を指している。
【0017】
用語「シラン基を含有するポリエーテル」はまた、ポリエーテル単位に加えて、ウレタン基、ウレア基又はチオウレタン基をまた含有してもよい、シラン基を含有する有機ポリマーを包含する。シラン基を含有するそのようなポリマーはまた、「シラン基を含有するポリウレタン」と言うことができる。
【0018】
本明細書においては、「分子量」という用語は、分子、又は分子の一部(「ラジカル」と呼ぶこともある)のモル質量(単位;グラム/モル)を意味していると理解されたい。「平均分子量」という用語は、分子又はラジカルのオリゴマー性又はポリマー性の混合物の数平均Mを意味していると理解されたいが、これは、典型的には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の手段により、標準としてのポリスチレンを用いて測定される。
【0019】
「貯蔵安定性(Storage−stable)」又は「貯蔵可能(storable)」という用語は、室温で、適切な容器中、長期間、典型的には少なくとも3ヶ月から最長6ヶ月又はそれ以上の期間貯蔵しても、その貯蔵の結果として、その用途において使用するのに差し支えるようなレベルの変化、特には粘度及び架橋速度における変化がないような、物質又は組成物を指している。
【0020】
「粘度」という用語は、本明細書においては、剪断応力と剪断速度との比率(速度勾配)によって定義される動的粘度又は剪断粘度を指しており、それは、実施例の項で記載する方法で測定される。
【0021】
本明細書の中の式の中の点線は、それぞれの場合において、置換基と、その分子の対応している残りの部分との間の結合を表している。
【0022】
「室温」は、23℃の温度を指している。
【0023】
シラン官能性ポリマーP1は好ましくは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート若しくはポリエーテル又はこれらのポリマーの混合形態である。そのシラン基は、式(I)の末端基ではない。そのシラン基は、側鎖位に又は末端位に存在してもよい。
【0024】
より好ましくは、シラン官能性ポリマーP1は、ポリオレフィン若しくはポリエステル若しくはポリ(メタ)アクリレート若しくはポリエーテル又はこれらのポリマーの混合形態である。
【0025】
最も好ましくは、シラン官能性ポリマーP1は、シラン基を含有するポリエーテルである。それは好ましくは、大半のオキシアルキレン単位、とりわけ1,2−オキシプロピレン単位を有する。シラン基は好ましくは、ジアルコキシシラン基及び/又はトリアルコキシシラン基、とりわけジメトキシメチルシラン基若しくはトリメトキシシラン基又はトリエトキシシラン基である。
【0026】
シラン官能性ポリマーP1は好ましくは、イソシネート基を含まない。
【0027】
シラン官能性ポリマーP1は、1分子当たり平均好ましくは1.3〜4、とりわけ1.5〜3、より好ましくは1.7〜2.8のシラン基を有する。シラン官能性ポリマーP1は好ましくは、1000〜30,000g/モル、とりわけ2000〜20,000g/モルの範囲の平均分子量を有する。
【0028】
シラン官能性ポリマーP1は好ましくは、室温で液体である。より好ましくは、それは低い粘度を有する。より具体的には、20℃での粘度は、1〜200Pa・s、好ましくは2〜100Pa・s、より好ましくは5〜50Pa・sの範囲にある。
【0029】
好ましくは、シラン官能性ポリマーP1は、
− とりわけジイソシアネートでの、任意選択的に鎖延長ありで、アリル基を含有するポリエーテルとヒドロシランとの反応から得られたシラン基を含有するポリエーテル;
− とりわけジイソシアネートでの、任意選択的に鎖延長ありで、アルキレンオキシドとエポキシシランとの共重合から得られたシラン基を含有するポリエーテル;
− 任意選択的にジイソシアネートでの鎖延長ありで、ポリエーテルポリオールとイソシアナトシランとの反応から得られたシラン基を含有するポリエーテル;
− イソシアネート基を含有するウレタンポリエーテルとアミノシラン又はヒドロキシシラン又はメルカプトシランとの反応から得られたシラン基を含有するポリエーテル
からなる群から選択される。
【0030】
これらのシラン官能性ポリマーP1は、特に良好な入手可能性を有する。
【0031】
これらの中で、アリル基を含有するポリエーテルとヒドロシランとの反応から得られたシラン基を含有するポリエーテルが好ましい。これらのシラン官能性ポリマーP1は、特に低い粘度及び特に低い反応性のものである。
【0032】
これらの中で、ポリエーテルポリオールとイソシアナトシランとの反応から得られたシラン基を含有するポリエーテルがさらに好ましい。これらのシラン官能性ポリマーP1は、特に良好な入手可能性を有し、そして非常に低い粘度のもの及び比較的低い反応性のものである。
【0033】
商業的に入手可能なシラン官能性ポリマーP1、とりわけ、商品名MS Polymer(商標)(Kaneka Corp.製;とりわけ製品S203H、S303H、S227、S810、MA903若しくはS943);MS Polymer(商標)又はSilyl(商標)(Kaneka Corp.製;とりわけ製品SAT010、SAT030、SAT200、SAX350、SAX400、SAX725、MAX450、MAX602若しくはMAX951);Excestar(登録商標)(Asahi Glass Co.Ltd.製;とりわけ製品S2410、S2420、S3430若しくはS3630);SPUR+(Momentive Performance Materials製;とりわけ製品1010LM、1015LM若しくは1050MM);Vorasil(商標)(Dow Chemical Co.製;とりわけ製品602若しくは604);Desmoseal(登録商標)(Bayer MaterialScience AG製;とりわけ製品S XP 2636、S XP 2749、S XP 2774若しくはS XP 2821);TEGOPAC(登録商標)(Evonik Industries AG製;とりわけ製品Seal 100、Bond 150若しくはBond 250);又はGeniosil(登録商標)STP(Wacker Chemie AG製;とりわけ製品E15若しくはE35)で知られる製品がさらに好適である。
【0034】
シラン官能性ポリマーP1の製造方法は、当業者に公知である。
【0035】
第1の好ましい方法では、シラン官能性ポリマーP1は、任意選択的に例えば、ジイソシアネートでの鎖延長ありで、アリル基を含有するポリエーテルとヒドロシランとの反応から得られる。そのようなシラン官能性ポリマーP1はとりわけ、式(IIa)
【化2】
(式中、
は、メチルラジカル又はエチルラジカルであり、
nは、0又は1又は2である)
の末端基を有する。
【0036】
好ましくは、nは0又は1、とりわけ1であり、Rはメチルラジカルである。
【0037】
さらに好ましい方法では、シラン官能性ポリマーP1は、任意選択的に例えば、ジイソシアネートでの鎖延長ありで、アルキレンオキシドとエポキシシランとの共重合から得られる。そのようなシラン官能性ポリマーP1はとりわけ、式(IIb)
【化3】
(式中、
は、メチルラジカル又はエチルラジカルであり、
mは、0又は1又は2である)
のシラン基を有する。
【0038】
好ましくは、mは0である。
【0039】
さらに好ましい方法では、シラン官能性ポリマーP1は、任意選択的にジイソシアネートでの鎖延長ありで、ポリエーテルポリオールとイソシアナトシランとの反応から得られる。そのようなシラン官能性ポリマーP1はとりわけ、式(IIc)
【化4】
(式中、
は、1〜6個の炭素原子を有するアルキレンラジカルであり、
10は、メチルラジカル又はエチルラジカルであり、
pは、0又は1又は2である)
のシラン基を有する。
【0040】
好ましくは、pは0である。
【0041】
好ましくは、Rは1,3−プロピレンラジカルである。
【0042】
さらに好ましい方法では、シラン官能性ポリマーP1は、超化学量論量のポリイソシアネートとのポリエーテルポリオールの反応からのイソシアネート基を含有するポリエーテル、とりわけNCO−末端ウレタンポリエーテルと、又はアミノシラン、ヒドロキシシラン又はメルカプトシランとの反応から得られる。同じNCO末端ウレタンポリエーテルは、式(I)の末端基を有するシラン官能性ポリマーP2の製造のために記載されるものとして本明細書で好適である。
【0043】
そのようなシラン官能性ポリマーP1はとりわけ、式(IId)
【化5】
(式中、
Xは、O又はS又はNR12であり、ここで、R12は、水素原子又は1〜20個の炭素原子を有し、任意選択的に環状成分を有し、そして任意選択的にアルコキシシリル基又は1つ若しくは複数のエーテル若しくはカルボン酸エステル基を有するヒドロカルビルラジカルであり、
10は、1〜18個の炭素原子を有し、任意選択的に環状及び/又は芳香族成分を有し、そして任意選択的に1つ若しくは複数のヘテロ原子を有する二価のヒドロカルビルラジカルであり、
11は、1〜5個の炭素原子を有し、そして任意選択的にエーテル基を含有するアルキルラジカルであり、
qは、0又は1又は2である)
の末端基であって、
式(IId)の末端基が式(I)の末端基ではない末端基を有する。
【0044】
好ましくは、qは0である。
【0045】
好ましくは、R10は、1,3−プロピレン又は1,4−ブチレン又は3,3−ジメチル−1,4−ブチレンであり、XはNR12であり、ここで、R12は好ましくは、式
【化6】
のラジカルである。
【0046】
さらに好ましくは、XはOであり、R10は、式
【化7】
のラジカルであり、ここで、このラジカルは、Xがシクロヘキシル環に直接結合しているような位置にあり、そしてここで、Yは、O又はNR14であり、R13及びR14はそれぞれ独立して、1〜18個の炭素原子を有し、エーテル酸素若しくはチオエーテル硫黄若しくは第三級アミン窒素の形態でヘテロ原子を含有してもよい一価のヒドロカルビルラジカルであるか、又はY(つまりN)と一緒に環、とりわけモルホリン環を形成する。
【0047】
記載される組成物はさらに、式(I)の末端基
【化8】
を有する少なくとも1つのシラン官能性ポリマーP2を含む。
【0048】
シラン官能性ポリマーP2は好ましくは、室温で液体である。
【0049】
シラン官能性ポリマーP2は好ましくは、シラン基を含有するポリエーテル及び/又はポリエステル及び/又はポリカーボネートである。
【0050】
より好ましくは、それは、シラン基を含有するポリエーテルである。それは好ましくは、大半のオキシアルキレン単位、とりわけ1,2−オキシプロピレン単位を有する。
【0051】
式(I)のその末端基の大半は、脂環式又は芳香族ラジカルに、とりわけ、イソホロンジイソシアネートに由来する脂環式ラジカルに結合している。式(I)の末端基が脂環式ラジカルに結合した状態で、それは、特に光安定性である。
【0052】
シラン官能性ポリマーP2は好ましくは、イソシアネート基を含まない。
【0053】
シラン官能性ポリマーP2は好ましくは、式(I)の末端基は別として、いかなるさらなるシラン末端基も含有しない。
【0054】
シラン官能性ポリマーP2は、1分子当たり平均好ましくは1.3〜4、とりわけ1.5〜3、より好ましくは1.7〜2.8の式(I)の末端基を有する。
【0055】
好ましくは、ポリマーP2は、1,000〜30,000g/モル、好ましくは2,000〜25,000g/モル、より好ましくは3,000〜20,000g/モルの範囲の平均分子量を有する。
【0056】
1aは好ましくは、水素原子又はメチルラジカル、とりわけメチルラジカルである。
【0057】
1bは好ましくは、水素原子又はメチルラジカル、とりわけ水素原子である。
【0058】
より好ましくは、R1aはメチルラジカルであり、R1bは水素原子である。そのようなポリマーP2は、特に良好な入手可能性、特に良好な製造可能性及び特に良好な機械的特性を有する。
【0059】
は好ましくは水素原子である。
【0060】
は好ましくは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキレンラジカルである。
【0061】
より好ましくは、Rラジカルは、メチレン、1,3−プロピレン、2−メチル−1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、3−メチル−1,4−ブチレン及び3,3−ジメチル−1,4−ブチレンからなる群から選択される。これらの中で、1,3−プロピレン又は3,3−ジメチル−1,4−ブチレン、とりわけ1,3−プロピレンが好ましい。
【0062】
ラジカル中の置換基の位置は、ケイ素原子から出発して番号を付けられる。
【0063】
は好ましくはメチルラジカルである。
【0064】
は好ましくは、メチルラジカル又はエチルラジカルである。
【0065】
xは好ましくは、0又は1、とりわけ0である。そのようなポリマーは特に反応性シラン基を有する。
【0066】
最も好ましくは、R1aはメチルラジカルであり、R1bは水素原子であり、Rは水素原子であり、Rは、1,3−プロピレン、2−メチル−1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、3−メチル−1,4−ブチレン及び3,3−ジメチル−1,4−ブチレンからなる群から選択されるラジカルであり、Rは、メチルラジカル又はエチルラジカルであり、xは0である。
【0067】
式(I)の末端基を有するシラン官能性ポリマーP2は好ましくは、超化学量論量のポリイソシアネートとのポリオールの反応からの、イソシアネート基を含有するポリマー、とりわけNCO末端ウレタンポリエーテル及び/又はウレタンポリエステル及び/又はウレタンポリカーボネートと、式(III)
【化9】
(式中、R1a、R1b、R、R、R、R及びxは、既に与えられた定義を有する)
の少なくとも1つのヒドロキシシランとの反応から得られる。
【0068】
式(III)の特に好ましいヒドロキシシランは、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2−ヒドロキシプロパンアミド又はN−(3−トリメトキシシリルプロピル)−2−ヒドロキシプロパンアミドである。
【0069】
式(III)のヒドロキシシランを、NCO末端ウレタンポリエーテルのイソシアネート基に対して化学量論量又はわずかに超化学量論量で、とりわけ1.0〜1.2の範囲の比で使用することが好ましい。
【0070】
式(III)のヒドロキシシランは好ましくは、式(IV)の少なくとも1つのアミノシランと式(V)の少なくとも1つのラクチド
【化10】
(式中、R1a、R1b、R、R、R、R及びxは、既に与えられた定義を有する)
との反応から得られる。
【0071】
この反応は好ましくは、任意選択的に、より具体的には、ビニルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン又はモレキュラーシーブなどの触媒及び/又は乾燥剤の存在下で、15〜120℃、とりわけ20〜90℃の範囲の温度で湿分を排除して行われる。ラクチドの1モル当たり約2モルのアミノシランを使用することが好ましい。より具体的には、1.8〜2.2の範囲のアミノシラン/ラクチド比が用いられる。反応は、溶媒なしで又は好適な溶媒中で達成することができる。反応後に、存在するあらゆる揮発性化合物、とりわけ溶媒、未反応反応剤又は放出されたアルコールは、蒸留によって反応生成物から除去することができる。
【0072】
好適なNCO末端ウレタンポリエーテル及び/又はウレタンポリエステル及び/又はウレタンポリカーボネートはとりわけ、ポリオールと超化学量論量のポリイソシアネート、とりわけジイソシアネートとの反応から得られる。反応は好ましくは、そのイソシアネート基がポリオールのヒドロキシル基に関して化学量論的過剰に存在するようなやり方で、ポリイソシアネートを計量供給添加して、任意選択的に好適な触媒の存在下で、50℃〜160℃の温度で湿分を排除して行われる。より具体的には、過剰のポリイソシアネートは、すべてのヒドロキシル基の転化後に結果として生じたウレタンポリエーテル中に、全体ポリマーを基準として、0.1重量%〜5重量%、好ましくは0.2重量%〜4重量%、より好ましくは0.3重量%〜3重量%の遊離イソシアネート基の含有量を残すように選ばれる。任意選択的に、ウレタンポリマーは、可塑剤を追加的に使用して製造することができ、その場合に使用される可塑剤は、イソシアネート基に対して反応性が高いいかなる基も含有しない。
【0073】
好ましいポリイソシアネートは、ジイソシアネート、とりわけ、ヘキサメチレン 1,6−ジイソシアネート(HDI)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート、つまりIPDI)、トリレン 2,4−及び2,6−ジイソシアネート並びにこれらの異性体の任意の所望の混合物(TDI)、並びにジフェニルメタン 4,4’−、2,4’−及び2,2’−ジイソシアネート並びにこれらの異性体の任意の所望の混合物(MDI)からなる群から選択されるジイソシアネートである。IPDI又はTDIが特に好ましい。IPDIが最も好ましい。このようにして、特に良好な光堅牢度を有するシラン官能性ポリマーが得られる。
【0074】
好ましくはポリオールは、以下のものである:
− ポリエーテルポリオール、特にはポリオキシアルキレンジオール及び/又はポリオキシアルキレントリオール、特にはエチレンオキシド又は1,2−プロピレンオキシド又は1,2−若しくは2,3−ブチレンオキシド又はオキセタン又はテトラヒドロフラン又はそれらの混合物の重合生成物、ここでこれらのものは、2個以上の活性水素原子を有する出発分子(starter molecule)、特には、たとえば水、アンモニア、又は複数のOH若しくはNH基を有する化合物のような出発分子、たとえばエタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−及び1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体も含めたジプロピレングリコール若しくはトリプロピレングリコール、異性体も含めたブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、シクロヘキサン−1,3−及び−1,4−ジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、又はアニリン、又は上述の化合物の混合物を用いて、重合させたものであってよい。同様に好適なのは、その中にポリマー粒子を分散させたポリエーテルポリオール、特にはスチレン−アクリロニトリル粒子(SAN)又はアクリロニトリル−メタクリル酸メチル粒子を含むものである。
− ポリエステルポリオール、特にはヒドロキシカルボン酸を重縮合させたもの、又は、特には二官能〜三官能、特には二官能のアルコール、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、3−メチルヘキサン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、デカン−1,10−ジオール、ドデカン−1,12−ジオール、1,12−ヒドロキシステアリルアルコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー脂肪酸ジオール(ダイマージオール)、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、グリセロール、又は1,1,1−トリメチロールプロパン又は上述のアルコールの混合物と、有機のジ−若しくはトリカルボン酸、特にはジカルボン酸、又はそれらの無水物若しくはエステル、たとえば、より特には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、ダイマー脂肪酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸若しくは無水トリメリット酸、又は上述の酸の混合物とから調製されるもの、並びにさらに、ラクトンたとえば、より特には、ε−カプロラクトンと、出発物質たとえば上述の二官能若しくは三官能のアルコールとから形成されるポリエステルポリオール;特に好適なポリエステルポリオールは、ポリエステルジオールである。
− ポリカーボネートポリオール、たとえば上述のアルコール(ポリエステルポリオールを形成させるのに使用したもの)を、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、又はホスゲンと反応させることによって得られるもの。
− ブロックコポリマー、少なくとも2個のヒドロキシル基を担持し、上述のタイプの、ポリエーテル、ポリエステル及び/又はポリカーボネート構造を有する少なくとも2種の異なったブロックを有するもの、特にはポリエーテルポリエステルポリオール。
【0075】
特に好ましいポリオールは、ポリエーテルポリオール、特にはポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシプロピレントリオール、又はエチレンオキシド末端(EO末端封止)ポリオキシプロピレンジオール若しくはポリオキシプロピレントリオールと呼ばれているものである。後者は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン・コポリオールであって、これらは特には、ポリプロポキシル化反応が完了してから、エチレンオキシドを用いて、ポリオキシプロピレンジオール又はポリオキシプロピレントリオールをさらにアルコキシル化させることによって得られ、その結果、それらは、結局のところ、一級ヒドロキシル基を有している。
【0076】
好ましいポリエーテルポリオールは、0.02meq/g未満、特には0.01meq/g未満の不飽和度を有している。
【0077】
好ましいポリエーテルポリオールは、500〜30,000g/mol、好ましくは1,000〜20,000g/mol、特には2,000〜15,000g/molの範囲の平均分子量を有している。
【0078】
好適なNCO末端ウレタンポリエーテル、並びにポリエーテルポリオールの製造のために、複数割合の他のポリオール、とりわけポリアクリレートポリオール又は低分子量ジオール若しくはトリオールを使用することもまた可能である。
【0079】
式(I)の末端基を有するシラン官能性ポリマーP2は有利な特性を有する。それは、適度な粘度のものであり、非常に貯蔵安定性であり、室温で湿分で迅速に硬化して、高い強度、高い伸展性及び非常に良好な熱安定性を有する弾性の、非粘着性材料を与える。
【0080】
シラン官能性ポリマーP1及び式(I)の末端基を有するシラン官能性ポリマーP2は典型的には,互いに別々に製造される。その後、2つのポリマーと任意のさらなる構成要素とが、好適な方法によって混合され、本発明の組成物を生成する。
【0081】
本発明の一実施形態では、式(I)の末端基を有するポリマーP2は、あらかじめ既に製造されたシラン官能性ポリマーP1の存在下で製造される。この手順は本明細書ではとりわけ、(i)シラン官能性ポリマーP1が最初に装入され、(ii)式(IV)のアミノシランと式(V)のラクチドとがポリマーP1に混ぜ込まれ、前に記載されたように反応させられ、式(III)のヒドロキシシランを生成し、最後に(iii)NCO末端ウレタンポリエーテルが反応混合物に混ぜ込まれ、記載されたようなヒドロキシシランと反応させられ、本発明の組成物を生成する。
【0082】
本組成物中に、ポリマーP1及びポリマーP2は、シラン官能性ポリマーP1とP2との間の重量比が99:1〜10:90の範囲にあるような量で存在する。
【0083】
好ましくは、シラン官能性ポリマーP1とP2との間の重量比は、98:2〜20:80、とりわけ95:5〜25:75、より好ましくは90:10〜30:70の範囲にある。そのような組成物は、低い粘度と迅速な硬化との最適組み合わせを有する。
【0084】
シラン官能性ポリマーP1及びシラン官能性ポリマーP2は両方とも、シラン基を有する。両ポリマーとも、湿分を排除した状態で貯蔵安定性である。湿分と接触すると、シラン基は加水分解される。これはシラノール基(Si−OH基)を形成し、その後の縮合反応はシロキサン基(Si−O−Si基)を形成する。これらの反応の結果として、組成物は硬化して架橋プラスチックを与える。硬化のための水は、空気(空気湿度)に由来することができるか、組成物は、例えば拡散、噴霧又は混ぜ込みによって、水含有成分と接触することができるかのいずれかである。
【0085】
好ましくは、2つのシラン官能性ポリマーは、同じアルコキシラジカルのシラン基を含有する。結果として、組成物の硬化は、たった1種類のアルコールを放出する。そのような組成物は、特に良好な貯蔵安定性を有する。異なるアルコキシラジカルのシラン基を有する組成物の場合には、シラン基が貯蔵中にエステル交換によって互いにアルコキシラジカルを交換することが可能であり、それは組成物の硬化スピードの著しい変化をもたらすことがあり、これは望ましくない。
【0086】
好ましくは、組成物中のシラン官能性ポリマーP1及びシラン官能性ポリマーP2は両方とも、もっぱらメトキシシラン基か、あるいは、もっぱらエトキシシラン基か、のいずれかを有する。
【0087】
もっぱらメトキシシラン基を有する組成物は、湿分で特に早く架橋するという利点を有している。
【0088】
もっぱらエトキシシラン基を有する組成物は、特に貯蔵安定性が高く、硬化の過程で、毒性が、より低いエタノールを放出するという利点を有している。
【0089】
本組成物は好ましくは、シラン官能性ポリマーP1及びシラン官能性ポリマーP2だけでなく、充填材、架橋剤、可塑剤、溶媒、触媒、接着促進剤、乾燥剤、安定剤、顔料及びレオロジー助剤から選択される少なくとも1つのさらなる構成要素を含む。そのような組成物はとりわけ、弾性接着剤若しくはシーラント又は弾性コーティングとして使用することができる。
【0090】
好ましくは、そのような組成物は、5重量%〜95重量%の範囲の、とりわけ20重量%〜80重量%の範囲のシラン官能性ポリマーの含有量を有する。
【0091】
その組成物が、シラン官能性ポリマーの架橋を促進する少なくとも1種の触媒を含んでいるのが好ましい。その目的のために特に好適なのは、金属触媒及び/又は窒素化合物である。
【0092】
好適な金属触媒としては、特にはチタン、ジルコニウム、アルミニウム、又はスズの化合物、特には有機スズ化合物、有機チタネート、有機ジルコネート、又は有機アルミネートが挙げられるが、ここで、これらの化合物は、特には、アルコキシ基、アミノアルコキシ基、スルホネート基、カルボキシル基、1,3−ジケトネート基、1,3−ケトエステレート基、ジアルキルホスフェート基、及びジアルキルピロホスフェート基を有している。
【0093】
特に好適な有機スズ化合物は、以下のものである:ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズジクロリド、ジアルキルスズジカルボキシレート、及びジアルキルスズジケトネート、特にはジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロリド、ジジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジオクチルスズオキシド、ジオクチルスズジクロリド、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、及びジオクチルスズジアセチルアセトネート、又はアルキルスズチオエステル。
【0094】
特に好適な有機チタネートは以下のものである:
− 2個の1,3−ジケトネート配位子、特には2,4−ペンタンジオネート(=アセチルアセトネート)、及び2個のアルコキシド配位子を有するチタン(IV)錯体;
− 2個の1,3−ケトエステレート配位子、特にはエチルアセトアセテート、及び2個のアルコキシド配位子を有するチタン(IV)錯体;
− 1個又は複数のアミノアルコキシド配位子、特にはトリエタノールアミン又は2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノール、及び1個又は複数のアルコキシド配位子を有するチタン(IV)錯体;
− 4個のアルコキシド配位子を有するチタン(IV)錯体;
− 及び、より高度に縮合された有機チタネート、特には、オリゴマー性チタン(IV)テトラブトキシド(ポリブチルチタネートとも呼ばれている);
ここで、好適なアルコキシド配位子は、特には、イソブトキシ、n−ブトキシ、イソプロポキシ、エトキシ、及び2−エチルヘキソキシである。
【0095】
極めて特に好適なのは、以下のものである:ビス(エチルアセトアセタト)ジイソブトキシチタン(IV)、ビス(エチルアセトアセタト)ジイソプロポキシチタン(IV)、ビス(アセチルアセトナト)ジイソプロポキシチタン(IV)、ビス(アセチルアセトナト)ジイソブトキシチタン(IV)、トリス(オキシエチル)アミンイソプロポキシチタン(IV)、ビス[トリス(オキシエチル)アミン]ジイソプロポキシチタン(IV)、ビス(2−エチルヘキサン−1,3−ジオキシ)チタン(IV)、トリス[2−((2−アミノエチル)アミノ)エトキシ]エトキシチタン(IV)、ビス(ネオペンチル(ジアリル)オキシジエトキシチタン(IV)、チタン(IV)テトラブトキシド、テトラ(2−エチルヘキシルオキシ)チタネート、テトラ(イソプロポキシ)チタネート、又はポリブチルチタネート。特に好適なのは、以下の市販製品である:Tyzor(登録商標)AA、GBA、GBO、AA−75、AA−65、AA−105、DC、BEAT、BTP、TE、TnBT、KTM、TOT、TPT、又はIBAY(すべて、Dorf Ketal製);Tytan PBT、TET、X85、TAA、ET、S2、S4、又はS6(すべて、Borica Company Ltd.製)、並びにKen−React(登録商標)KR(登録商標)TTS、7、9QS、12、26S、33DS、38S、39DS、44、134S、138S、133DS、158FS、又はLICA(登録商標)44(すべて、Kenrich Petrochemicals製)。
【0096】
特に好適な有機ジルコネートは、以下の市販製品である:Ken−React(登録商標)NZ(登録商標)38J、KZ(登録商標)TPPJ、KZ(登録商標)TPP、NZ(登録商標)01、09、12、38、44、又は97(すべて、Kenrich Petrochemicals製)、又はSnapcure(登録商標)3020、3030、1020(すべて、Johnson Matthey & Brandenberger製)。
【0097】
特に好適な有機アルミネートは、市販製品のK−Kat 5218(King Industries製)である。
【0098】
触媒として好適な窒素化合物は、特には以下のものである:アミンたとえば、より特には、N−エチルジイソプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルアルキレンジアミン、ポリオキシアルキレンアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン;アミノシランたとえば、より特には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−N’−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]エチレンジアミン、又はケイ素の上のメトキシ基に代えてエトキシ又はイソプロポキシを有するそれらの類似体;環状アミジンたとえば、より特には、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン;グアニジンたとえば、より特には、テトラメチルグアニジン、2−グアニジノベンゾイミダゾール、アセチルアセトングアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、2−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン;又は、カルボジイミドと、アミン、たとえば、より特には、ポリエーテルアミン又はアミノシランとの反応生成物;又は、イミダゾールたとえば、より特には、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、及びN−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール。
【0099】
さらに好適なのは、各種の触媒の組合せ、特には少なくとも1種の金属触媒と少なくとも1種の窒素化合物との組合せである。
【0100】
好ましい触媒は、有機スズ化合物、有機チタネート、アミン、アミジン、グアニジン、及びイミダゾールである。
【0101】
特に好ましいのは、有機チタネート及びグアニジンである。
【0102】
追加して好適なのは、特には、以下の助剤及び添加剤である:
− 無機及び有機充填剤、特には、任意選択的に脂肪酸、特にはステアリン酸でコーティングされた、天然、摩砕、若しくは沈降炭酸カルシウム、バライト(重晶石)、タルク、石英粉、けい砂、ドロマイト、ウォラストナイト、カオリン、か焼カオリン、マイカ、モレキュラーシーブ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、熱分解プロセスからの微細シリカを含むシリカ、工業的に製造されたカーボンブラック、グラファイト、金属粉たとえば、アルミニウム、銅、鉄、銀、又は鋼、PVC粉体、又は中空ビーズ。
− 接着促進剤及び/又は架橋剤、特には、シランたとえば、より特には、アミノシランたとえば、より特には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−N’−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]エチレンジアミン、及びケイ素の上のメトキシ基に代えてエトキシ又はイソプロポキシを有するそれらの類似体、N−フェニル−、N−シクロヘキシル−若しくはN−アルキルアミノシラン、さらには、メルカプトシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリロイルシラン、アンヒドリドシラン、カルバマトシラン、アルキルシラン、又はイミノシラン、又はこれらのシランのオリゴマーの形態、又は一級アミノシランと、エポキシシラン又は(メタ)アクリロイルシラン又はアンヒドリドシランとのアダクト。特に好適なのは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシ−シラン、N−(2−アミノエチル)−N’−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及びメトキシ基に代えてエトキ基を有するそれらに相当するシラン、又はそれらのシランのオリゴマーの形態のもの。
− 可塑剤、特には、カルボン酸エステルたとえばフタル酸エステル、特にはフタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル又はフタル酸ジイソデシル、アジピン酸エステル、特にはアジピン酸ジオクチル、アゼライン酸エステル、セバシン酸エステル、ポリオール、特には、ポリオキシアルキレンポリオール又はポリエステルポリオール、グリコールエーテル、グリコールエステル、有機リン酸若しくはスルホン酸のエステル、ポリブテン、又は天然油脂から誘導された脂肪酸のメチル若しくはエチルエステル(「バイオジーゼル(biodiesel)」とも呼ばれている)。
− 溶媒。
− 乾燥剤、特には、テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシ−若しくはビニルトリエトキシ−シラン、及びシラン基に対してα位に官能基を有する有機アルコキシシラン、特にはN−(メチルジメトキシシリルメチル)−O−メチルカルバメート、(メタクリロイルオキシメチル)シラン、メトキシメチルシラン、オルトギ酸エステル、又は酸化カルシウム又はモレキュラーシーブ;
− 酸化、熱、光、又はUV照射に対する安定剤。
− 顔料、特には二酸化チタン又は酸化鉄。
− レオロジー調節剤、特には増粘剤、特には層状ケイ酸塩たとえばベントナイト、ヒマシ油の誘導体、水素化ヒマシ油、ポリアミド、ポリウレタン、ウレア化合物、ヒュームドシリカ、セルロースエーテル、又は疎水化変性されたポリオキシエチレン。
− 繊維、特には、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、又はポリマー繊維たとえば、ポリアミド繊維若しくはポリエチレン繊維。
− 染料。
− 天然樹脂、油脂たとえば、ロジン、セラック、アマニ油、ヒマシ油、又はダイズ油。
− 非反応性ポリマーたとえば、より特には、特にはエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、酢酸ビニル、及びアルキル(メタ)アクリレートを含む群からの不飽和モノマーのホモポリマー若しくはコポリマー、特にはポリエチレンs(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン、エチレン−酢酸ビニル・コポリマー(EVA)、又はアタクチックポリ−α−オレフィン(APAO)。
− 難燃剤物質、特には先に挙げた水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム充填剤、又は特には、有機リン酸エステルたとえば、より特には、リン酸トリエチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸イソデシルジフェニル、リン酸トリス(1,3−ジクロロ−2−プロピル)、リン酸トリス(2−クロロエチル)、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリス(クロロイソプロピル)、リン酸トリス(クロロプロピル)、イソプロピル化リン酸トリフェニル、各種のイソプロピル化レベルのリン酸モノ−、ビス−及びトリス−(イソプロピルフェニル)、レソルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、又はポリリン酸アンモニウム。
− 表面活性剤物質、特には濡れ剤、レベリング剤、脱泡剤(deaerator)、又は消泡剤(defoamer)。
− 殺生物剤、特には、殺藻剤、殺真菌剤、又は真菌の生育を抑制する物質。
又は、湿分硬化組成物において慣用されるさらなる物質。ある種の構成成分は、化学的又は物理的に乾燥させてから、組成物の中に混ぜ込むのが望ましい。
【0103】
好ましい実施態様においては、その組成物には、重金属含有有機化合物が含まれない。より特には、それには、有機スズ化合物が含まれない。
【0104】
さらなる好ましい実施態様においては、その組成物には、環状アミジン、特には1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)が含まれない。
【0105】
その組成物は、湿分を排除して製造し、貯蔵するのが好ましい。典型的には、その組成物は、好適な包装又は取り扱い(arrangement)で、たとえば、より特には、ドラム、パウチ又はカートリッジの中で湿分を排除することにより、高い貯蔵安定性を有する。
【0106】
その組成物は、一成分組成物の形態又は二成分組成物の形態をとることができる。
【0107】
本明細書においては、「一成分」組成物という用語は、同一の容器の中に、その組成物の全部の構成成分が混合物の形態で貯蔵され、湿分を用いて硬化させることが可能な組成物を指している。
【0108】
本明細書においては、「二成分」組成物という用語は、その組成物の構成成分が、二つの別な成分として存在しており、それらが別の容器の中に貯蔵される組成物を指している。その組成物の適用の直前又は適用の際に、それら二つの成分を相互に混合し、次いで、その混合した組成物を硬化させるが、その硬化は、湿分の作用によってのみ、進行するか又は完了する。
【0109】
その組成物を少なくとも1種の固体又は物品に適用すると、存在しているシラン基及び、存在している各種さらなる湿分反応性の基が、湿分と接触するようになり、その結果、その組成物が硬化する。硬化は、温度、接触の性質、湿分の量及び任意の触媒の存在に従って異なるスピードで進行する。空気湿度による硬化の場合には、スキンが組成物の表面上に最初に形成される。スキン時間と呼ばれるものが、硬化速度の尺度である。
【0110】
本発明はしたがってさらに、記載されるような組成物から、それが湿分と反応した後に得られる硬化組成物を提供する。
【0111】
その組成物は、硬化された状態では、各種の基材の上で、顕著に高い弾性、特には高い強度及び高い伸張性、さらには良好な熱安定性及び良好な接着性能を有している。その結果、それは、多くの用途に好適であり、特には、繊維複合材料(複合材料)、注封材料(potting compound)、シーラント、接着剤、被覆、建設用途及び産業用途のためのコーティング又はペイントとして、たとえば電気絶縁化合物、スパックリング化合物、ジョイントシーラント、ウェルド若しくはフランジシームシーラント、寄木張り接着剤、組立用接着剤、ボディワーク接着剤、グレージング接着剤、サンドイッチエレメント接着剤、フロアカバリング、フロアコーティング、バルコニーコーティング、ルーフコーティング、コンクリート保護コーティング、パーキングガレージコーティングとして、又は耐食ペイントとして、シール、ペイント、ワニス、及びプライマーとして好適である。
【0112】
その組成物は、接着剤又はシーラントとして又はコーティングとして、特には建設用途又は産業用途におけるジョイントシーリングのため、又は弾性接着接合のために、特に好適である。
【0113】
本発明はさらに、接着剤又はシーラントとして、又はコーティングとしての、上述の組成物の使用も提供する。
【0114】
接着剤又はシーラントとして使用するためには、その組成物が、構造粘性を有する、ペースト状の粘稠度を有しているのが好ましい。そのようなペースト状の接着剤又はシーラントは、特には、手動で操作されるか若しくは圧縮空気の手段により市販のカートリッジから、あるいは送液ポンプ若しくはエクストルーダーの手段によってドラム若しくはバットから、任意選択的に塗布ロボットの手段によって、基材に適用される。
【0115】
二つの同一の基材又は二つの異なった基材を接合したりシールしたりすることができる。
【0116】
好適な基材としては、特には、以下のものが挙げられる。
− ガラス、ガラスセラミック、スクリーン印刷されたセラミック、コンクリート、モルタル、れんが、タイル、セッコウ、又は天然石たとえば花崗岩若しくは大理石;
− 金属及び合金たとえば、アルミニウム、鉄、鋼、及び非鉄金属、又は表面処理した金属及び合金たとえば、メッキ処理若しくはクロム処理した金属;
− 皮革、織物、紙、木材、樹脂たとえば、フェノール樹脂、メラミン樹脂又はエポキシ樹脂を用いて接合させた木材ベースの材料、樹脂−織物の複合材料、又はさらなるポリマー複合材料;
− プラスチック、特には、硬質若しくは軟質のPVC、ABS、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、PMMA、エポキシ樹脂、PUR、POM、PO、PE、PP、EPM、又はEPDM、任意選択的に、プラズマ、コロナ、又は火炎の手段により表面処理したプラスチック;
− 繊維強化プラスチック、たとえば炭素繊維強化プラスチック(CFP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFP)、又はシートモールディングコンパウンド(SMC);
− コーティングされた基材、たとえば粉体コーティングされた金属又は合金;
− ペイント又はラッカー、特には自動車のトップコート。
【0117】
接着剤又はシーラントを適用する前に、必要があれば、特には物理的及び/又は化学的なクリーニング方法によるか、又は接着促進剤、接着促進剤溶液若しくはプライマーを塗布することによって、基材の前処理を行うことができる。
【0118】
二つの基材を接合又はシーリングすると、接合又はシーリングされた物品が得られる。そのような物品は、建造構造物、特には建設又は土木工学における建造構造物であってもよいし、あるいは、産業用商品又は消費者用商品、特には窓、家庭電化製品、又は、輸送手段たとえば、より特には、自動車、バス、トラック、鉄道車両、船舶、航空機若しくはヘリコプター、又はそれらの組み込み部品などであってもよい。
【0119】
本発明はさらに、式(I)の末端基を有する少なくとも1つのシラン官能性ポリマーP2を組成物に添加することによる、少なくとも1つのシラン官能性ポリマーP1を含む湿分硬化組成物であって、シラン官能性ポリマーP1が式(I)のいかなる末端基も持たない組成物の硬化の加速方法に関する。
【0120】
好適なシラン官能性ポリマーP1及びP2は本明細書では、前に記載されたものであり、とりわけその好ましい実施形態である。この方法によって、有機スズ化合物又はDBUなどの強塩基の使用なしに、低粘度の、しかし比較的非反応性のシラン官能性ポリマー、例えば、商品名MS Polymer(商標)、TEGOPAC(登録商標)又はSPURを有する商業的に入手可能な製品の硬化を大きく加速すること、そして同時にそれらの強度及び弾性を上げることが可能である。このようにして、意外にも速いスキン時間及び低い粘度の湿分硬化組成物を得ることができ、それは、既に述べられた利点をもたらす。ポリマーP2の少量の添加でさえも、ポリマーP2単独と事実上同程度に速いスキン時間を有する組成物が得られる。
【0121】
好ましくは、シラン官能性ポリマーP2は、シラン官能性ポリマーP1とP2との間の重量比が99:1〜10:90、好ましくは95:5〜20:80、より好ましくは90:10〜30:70、とりわけ80:20〜40:60の範囲にあるような量で添加される。
【0122】
湿分硬化組成物は好ましくは、前に記載されたように、充填材、架橋剤、可塑剤、溶媒、触媒、接着促進剤、乾燥剤、安定剤、顔料及びレオロジー助剤から選択される少なくとも1つのさらなる構成要素を含む。
【0123】
シラン官能性ポリマーP2の添加後に、そのような湿分硬化組成物は好ましくは、5重量%〜95重量%の範囲の、とりわけ20重量%〜80重量%の範囲のシラン官能性ポリマーの含有量を有する。
【実施例】
【0124】
以後における詳細な記述は、実施例であって、それは、詳しく記述された本発明の説明をすることを目的としている。言うまでもないことであるが、本発明が、それら記載されている実施例に限定される訳ではない。
【0125】
「標準的気象条件(standard climatic conditions)」という用語は、23±1℃の温度及び50±5%の相対空気湿度を意味している。「SCC」は、「標準的気象条件」を表す。
【0126】
「TFT」は、「タックフリータイム(tack free time)」を表す。
【0127】
粘度は、Rheotec RC30温度調節付きコーン−プレート粘度計(コーン直径:50mm、コーン角度:1度、コーンチップ〜プレート距離:0.05mm、剪断速度:10s−1)上、20℃で測定した。
【0128】
表1〜4の中で、「(参照)」で表示された組成物は、比較例である。
【0129】
1.使用した出発物質及びそれらの略称:
Acclaim(登録商標)12200:低レベルの不飽和のポリオキシプロピレンジオール、OH価;11.0 mgKOH/g、含水率;約0.02重量%(Bayer製)
IPDI:イソホロンジイソシアネート、Vestanat(登録商標)IPDI(Evonik Industries製)
TDI:トリレン 2,4−ジイソシアネート、Desmodur(登録商標)T−100(Bayer MaterialScience製)
DIDP:ジイソデシルフタレート
IBAY:ビス(エチルアセトアセテート)ジイソブトキシチタン(IV)、Tyzor(登録商標)IBAY(Dorf Ketal製)
VTEO:ビニルトリエトキシシラン
VTMO:ビニルトリメトキシシラン
PCC:沈澱炭酸カルシウム、Socal(登録商標)U1 S2(Solvay製)
GCC:粉砕炭酸カルシウム、Omyacarb(登録商標)5 GU(Omya製)
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
【0130】
ヒドロキシシラン:
ヒドロキシシラン1:N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2−ヒドロキシプロパンアミド
丸底フラスコの中で、20.00g(90.4mmol)の3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び6.71g(46.6mmol)のL−ラクチドを、窒素雰囲気下、80℃で3時間、IR分光光度法の手段で検出して、反応がそれ以上進まなくなるまで撹拌した。その粗反応生成物を、60℃、約10mbarで15分間、後処理した。無色で液状の反応生成物が得られた。
【0131】
ヒドロキシシラン2:N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−2−ヒドロキシプロパンアミド
丸底フラスコ中で、16.21g(90.4mmol)の3−アミノプロピルトリメトキシシランと6.71g(46.6mmol)のL−ラクチドとを、反応のさらなる進行がIR分光法によってまったく検出されなくなるまで3時間80℃で窒素雰囲気下に攪拌した。粗生成物を60℃及び約10ミリバールで15分間後処理した。無色液体生成物が得られた。
【0132】
ヒドロキシシラン3:2−モルホリノ−4(5)−(2−トリエトキシシリルエチル)シクロヘキサン−1−オール
丸底フラスコ中で、38.46g(133.33mmol)のβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン(Momentive製のCoatOSil(登録商標)1770)と、15.34g(176.08mmol)の無水モルホリンと0.10gのランタン(III)トリフレートとを、反応のさらなる進行がガスクロマトグラフィーによってまったく検出されなくなるまで2時間110℃で窒素雰囲気下に攪拌した。粗生成物を80℃及び約1ミリバールで30分間後処理した。無色液体生成物が得られた。
【0133】
ヒドロキシシラン4:2−エトキシ−4(5)−(2−トリエトキシシリルエチル)シクロヘキサン−1−オール
丸底フラスコ中で、150.00gのエタノールと0.50gのビニルトリエトキシシランとを50℃で15分間窒素雰囲気下に攪拌した。その後、180.00g(624mmol)のβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン(Momentive製の、CoatOSil(登録商標)1770)と3.06gのアルミニウムイソプロポキシドとを添加し、混合物を窒素雰囲気下に100℃で16時間還流にて攪拌した。次に、曇った反応混合物を室温に冷却し、濾過し、過剰のエタノールを、80℃及び10ミリバールでロータリーエバポレーターで除去した。無色液体生成物が得られた。
【0134】
ヒドロキシシラン5:2−メトキシ−4(5)−(2−トリメトキシシリルエチル)シクロヘキサン−1−オール
丸底フラスコ中で、104.35gのメタノールと0.39gのビニルトリメトキシシランとを50℃で15分間窒素雰囲気下に攪拌した。次に、153.74g(624mmol)のβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Momentive製の、Silquest(登録商標)A−186)と3.06gのアルミニウムイソプロポキシドとを添加し、曇った混合物を60g部分で、いずれの場合にも140℃及び約12バールの圧力で30分間、マイクロ波反応器中で反応させた。その後、合わせた曇った反応混合物を室温に冷却し、濾過し、過剰のメタノールを、80℃及び10ミリバールでロータリーエバポレーターで除去した。無色液体生成物が得られた。
【0135】
ヒドロキシシラン6:2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ−4(5)−(2−トリス(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)シリルエチル)シクロヘキサン−1−オールと、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ−4(5)−(2−エトキシビス(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)シリルエチル)シクロヘキサン−1−オールと2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ−4(5)−(2−ジエトキシ−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)シリルエチル)シクロヘキサン−1−オールとを含む混合物
丸底フラスコ中で、117.04gのメチルジグリコールと、50.00g(203mmol)のβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Momentive製の、Silquest(登録商標)A−186)と0.50gのアルミニウムイソプロポキシドとを、120℃で1時間窒素雰囲気下に攪拌した。その後、一定温度で、無色透明の留出物を、2時間にわたって400ミリバールで、さらなる2時間にわたって300ミリバールで及びさらなる3時間にわたって150ミリバールで非冷却の蒸留アタッチメントによって集め、それは、FT−IRによって痕跡のメチルグリコール入りのほぼ純粋なメタノールと同定された。反応混合物を、それがいかなるそれ以上の留出物も集めることがもはやできなくなるまで、140℃及び50ミリバールで24時間攪拌した。最後に、過剰のメチルジグリコールを120℃及び0.5ミリバールで除去した。無色透明の液体生成物が得られた。
【0136】
イソシアネート基を有するポリウレタンポリマー:
NCOポリマー1:
湿分を排除して、720.0gのAcclaim(登録商標)12200と、34.5gのIPDIと、80.0gのDIDPと0.1gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)とを、一定に攪拌しながら90℃に加熱し、滴定法によって測定される、遊離のイソシアネート基の含有量が0.73重量%の安定した値に達してしまうまでこの温度のままにした。イソシアネート基を有するポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、31Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0137】
シラン官能性ポリマーP1:
ポリマーP1−1:
湿分を排除して、100.00gのNCOポリマー1と、0.06gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)と7.19gのN−(3−トリエトキシシリルプロピル)アスパラギン酸ジエチルとを、イソシアネート基がIR分光法によってもはや検出できなくなるまで(約1.5時間)80℃で窒素雰囲気下に攪拌した。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、83Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0138】
ポリマーP1−2:78Pa・s(20℃)の粘度を有するTEGOPAC(登録商標)Bond 150(Evonik Industries製)
【0139】
ポリマーP1−3:
湿分を排除して、250.00gのAcclaim(登録商標)12200と0.25gのビニルトリエトキシシランとを80℃で30分間攪拌し、次に0.25gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)と12.86gのイソシアナトプロピルトリエトキシシランとを添加し、反応混合物を減圧下に80℃で2時間攪拌した。その後、3.00gのエタノールを添加し、混合物を減圧なしに15分間、次に減圧下にさらなる15分間攪拌した。イソシアネートバンドは、FT−IRでもはや検出されなかった。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、10Pa・sの粘度を有していた。
【0140】
ポリマーP1−4:
湿分を排除して、100.00gのNCOポリマー1と、0.06gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)と7.54gのヒドロキシシラン3とを、イソシアネート基がIR分光法によってもはや検出できなくなるまで(約2時間)80℃で窒素雰囲気下に攪拌した。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、98Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0141】
ポリマーP1−5:
湿分を排除して、100.00gのNCOポリマー1と、0.06gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)と6.72gのヒドロキシシラン4とを、イソシアネート基がIR分光法によってもはや検出できなくなるまで(約2時間)80℃で窒素雰囲気下に攪拌した。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、116Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0142】
ポリマーP1−6:
湿分を排除して、100.00gのNCOポリマー1と、0.06gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)と12.66gのヒドロキシシラン6とを、イソシアネート基がIR分光法によってもはや検出できなくなるまで(約2時間)80℃で窒素雰囲気下に攪拌した。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、126Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0143】
ポリマーP1−7:50Pa・s(20℃)の粘度を有するTEGOPAC(登録商標)Bond 250(Evonik Industries製)
【0144】
ポリマーP1−8:40Pa・s(20℃)の粘度を有するTEGOPAC(登録商標)Seal 100(Evonik Industries製)
【0145】
ポリマーP1−9:
湿分を排除して、100.00gのNCOポリマー1と、0.06gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)と6.42gのN−(3−トリメトキシシリルプロピル)アスパラギン酸ジエチルとを、イソシアネート基がIR分光法によってもはや検出できなくなるまで(約1.5時間)80℃で窒素雰囲気下に攪拌した。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、143Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0146】
ポリマーP1−10:11Pa・s(20℃)の粘度を有するMS Polymer(商標)S203H(Kaneka製)
【0147】
ポリマーP1−11:83Pa・s(20℃)の粘度を有するSilyl(商標)MAX602(Kaneka製)
【0148】
ポリマーP1−12:431Pa・s(20℃)の粘度を有するMS Polymer(商標)XMAP SA100S(Kaneka製)
【0149】
ポリマーP1−13:
湿分を排除して、250.00gのAcclaim(登録商標)12200と0.25gのビニルトリメトキシシランとを80℃で30分間攪拌し、次に0.25gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)と10.67gのイソシアナトプロピルトリメトキシシランとを添加し、反応混合物を減圧下に80℃で2時間攪拌した。その後、2.10gのメタノールを添加し、混合物を減圧なしに15分間、次に減圧下にさらなる15分間攪拌した。イソシアネートバンドは、FT−IRでもはや検出されなかった。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、11Pa・sの粘度を有していた。
【0150】
ポリマーP1−14:
湿分を排除して、100.00gのNCOポリマー1と、0.06gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)と5.58gのヒドロキシシラン5とを、イソシアネート基がIR分光法によってもはや検出できなくなるまで(約2時間)80℃で窒素雰囲気下に攪拌した。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、91Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0151】
ポリマーP1−15:
湿分を排除して、333.30gのNCOポリマー1と、0.25gのCoscat(登録商標)83(Vertellus製の、Bi(III)ネオデカノエート)と13.09gの(国際公開第2015/113923号パンフレット実施例3に記載されているように製造された)N−(3−トリエトキシシリルプロピル)ホルムアミドとを、イソシアネート基がIR分光法によってもはや検出できなくなるまで(約3時間)窒素雰囲気下に80℃で攪拌した。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、203Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0152】
ポリマーP1−16:
Polyvest(登録商標)EP ST−E(Evonik Industrie製)、11Pa・s(20℃)の粘度を有するトリエトキシシラン−末端ポリブタジエン.
【0153】
式(I)の末端基を有するシラン官能性ポリマーP2:
ポリマーP2−1:
湿分を排除して、100.00gのNCOポリマー1と、0.06gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)と5.88gのヒドロキシシラン1とを、イソシアネート基がIR分光法によってもはや検出できなくなるまで(約2時間)80℃で窒素雰囲気下に攪拌した。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、88Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0154】
ポリマーP2−2:
湿分を排除して、250.00gのAcclaim(登録商標)12200及び0.25gのビニルトリエトキシシランを、減圧下、80℃で30分間撹拌した。次いで、0.25gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)及び9.06gのTDIを添加し、その混合物を、減圧せずに80℃で1時間、次いで減圧下に80℃で1時間撹拌した。次いで、17.32gのヒドロキシシラン1を添加し、その混合物を減圧下、80℃で90分間、IR分光光度法の手段でイソシアネート基がもはや検出できなくなるまで撹拌した。そのシラン官能性ポリマーを冷却して室温とし、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、85.2Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0155】
ポリマーP2−3:
湿分を排除して、100.00gのNCOポリマー1と、0.06gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)と4.86gのヒドロキシシラン2とを、イソシアネート基がIR分光法によってもはや検出できなくなるまで(約2時間)80℃で窒素雰囲気下に攪拌した。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、158Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0156】
シラン官能性ポリマーP1中でのシラン官能性ポリマーP2の製造:
ポリマーP12−1:
湿分を排除して、146.20gのポリマーP1−2(Evonik Industries製の、TEGOPAC(登録商標)Bond 150)を最初に装入し、100℃で5分間減圧下に攪拌した。次に5.45g(24.6mmol)の3−アミノプロピルトリエトキシシラン、その後1.81g(12.6mmol)のL−ラクチドを混ぜ入れ、混合物を110℃で1時間攪拌した。その後、140.00gのNCOポリマー1と0.30gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)とを添加し、反応混合物を減圧下に100℃で1時間攪拌した。イソシアネートバンドは、FT−IRでもはや検出されなかった。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、93Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0157】
ポリマーP12−2
湿分を排除して、146.20gのMS Polymer(商標)S303H(Kaneka製)を最初に装入し、100℃で5分間減圧下に攪拌した。次に4.42g(24.6mmol)の3−アミノプロピルトリメトキシシラン、その後1.81g(12.6mmol)のL−ラクチドを混ぜ入れ、混合物を100℃で1時間攪拌した。その後、140.00gのNCOポリマー1と0.30gのビスマストリス(ネオデカノエート)(DIDP中10重量%)とを添加し、反応混合物を減圧下に100℃で1時間攪拌した。イソシアネートバンドは、FT−IRでもはや検出されなかった。シラン官能性ポリマーを室温に冷却し、湿分を排除して貯蔵した。それは、無色透明であり、製造の次の日に、62Pa・s(20℃)の粘度を有していた。
【0158】
2.湿分硬化組成物(非充填)
組成物Z1〜Z28:
それぞれの組成物について、表1に記載された成分を、記載された量(単位、重量部)で、真空ミキサー中で、湿分を排除して50℃で30分間加工すると、均質なペーストが得られたので、貯蔵した。それぞれの組成物を、以下の手順で試験した。
粘度は、調製した翌日に、温度調節付きRheotec RC30コーン−プレート粘度計(コーン直径:50mm、コーン角度:1度、コーンチップ〜プレート距離:0.05mm、剪断速度:10s−1)を用いて、20℃の温度で測定した。
【0159】
タックフリータイム(TFT)を求めるためには、数グラムの組成物を層厚約2mmの厚紙に塗布し、標準的気象条件下で、その組成物の表面をLDPEピペットの手段により穏やかに叩いて、はじめてそのピペットに残留物が付着しなくなるまでの時間を測定した。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
【0164】
3.湿分硬化組成物(充填剤入り)
組成物Z29〜Z73
それぞれの組成物について、表2〜4に記載された成分を、記載された量(単位、重量部)で、真空ミキサー中で、湿分を排除して50℃で30分間加工すると、均質なペーストが得られたので、貯蔵した。それぞれの組成物を、以下の手順で試験した。
粘度及びタックフリータイムは、組成物Z1の記述と同様にして試験した。
【0165】
ショアーA硬度は、標準的気象条件下で14日間かけて硬化させておいた試験片について、DIN 53505に従って測定した。
【0166】
機械的性質を測定するためには、PTFEコーティングされたフィルムの上に組成物を適用して、厚み2mmのフィルムを作成し、それを標準的気象条件下で2週間貯蔵し、そのフィルムから、全長75mm、直線部長さ(bar length)30mm、直線部幅(bar width)4mmのダンベルを数本打ち抜き、そしてそれらについて、DIN EN 53504に従い、引張速度200mm/minで、引張強度(破断力)、破断時伸び、及び弾性モジュラス(0.5%〜5%伸びにおける弾性モジュラス)を試験した。
【0167】
それらの結果は、表2〜4に示した。
【0168】
増粘剤のペーストは、最初に300gのフタル酸ジイソデシル及び48gの4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(Desmodur(登録商標)44 MC L、Bayer製)を真空ミキサーに仕込み、それらを穏やかに加熱し、次いで激しく撹拌しながら27gのモノブチルアミンを滴下により徐々に加えることによって製造した。そのようにして得られたペーストを、真空中でさらに1時間撹拌してから、冷却させた。
【0169】
【表5】
【0170】
【表6】
【0171】
【表7】
【0172】
【表8】
【0173】
【表9】
【0174】
【表10】