(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記添え字nが2であり、前記ラジカルAが、1個又は複数個のヘテロ原子を有していてもよい、2〜10個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の2価炭化水素ラジカルを表す、請求項1に記載の熱膨張性組成物。
少なくとも50%の前記カルバメートCAが、170℃〜230℃の温度でのガス放出下で、10分以内に分解する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
前記カルバメートCAのために活性化剤ACをさらに含み、前記活性化剤ACが、少なくとも1種のカルボン酸を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
中空構造体のバッフル及び/又は補強要素であって、前記要素が、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物を含み、前記膨張性組成物がその上に堆積又は付着する担体を含んでいてもよい、中空構造体のバッフル及び/又は補強要素。
陸上車両、船舶、又は航空機の空洞又は中空構造体の空洞又は中空構造体、及び/又は建物の空洞又は中空構造体を封止し、塞ぎ、又は補強するための請求項10に記載のバッフル及び/又は補強要素の使用であって、騒音、振動、湿気、かつ/又は熱の伝達を低減させ、かつ前記空洞又は中空構造体周辺の物体を機械的に強化するような、請求項10に記載のバッフル及び/又は補強要素の使用。
空洞又は中空構造体を封止し、塞ぎ、かつ/又は補強する方法であって、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物を含む要素を、前記空洞又は中空構造体に導入し、続いて熱膨張させて、それにより前記空洞又は中空構造体が少なくとも部分的に膨張した組成物によって充填することを特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第一態様において、本発明の目的は、式(I)
【化1】
[式中
R
1とR
2は、独立して1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜5個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の1価の炭化水素ラジカルを表し、場合により1つ又は複数のヘテロ原子、及び/又はC−C多重結合、及び/又は脂環式部位、及び/又は芳香族部位を含有し、或いは4〜10個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する2価の炭化水素ラジカルを一緒に表し;
R
3は、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の1価の炭化水素ラジカルを表し、場合により1つ又は複数のヘテロ原子、具体的には1つ又は複数の場合により置換の第3級アルキルカルバメート、及び/又はC−C多重結合、及び/又は脂環式部位、及び/又は芳香族部位を含有し;
R
4は、水素ラジカル、或いは1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜5個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の1価の炭化水素ラジカルを表し、場合により1個又は複数個のヘテロ原子、及び/又はC−C多重結合、及び/又は脂環式部位、及び/又は芳香族部位を含有し、或いはAと一緒に、4〜40個の炭素原子、好ましくは4〜20個の炭素原子を有する(n+1)価の炭化水素ラジカルを表し、場合により1個又は複数個のヘテロ原子、及び/又は脂環式部位を含有し;
Aは、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のn価の炭化水素ラジカルを表し、場合により1個又は複数個のヘテロ原子、特にエーテル性酸素若しくはアミン性窒素の形態で、場合により1つ又は複数のC−C多重結合、及び/又は脂環式部位、及び/又は芳香族部位を含有し、或いはR
4と一緒に、4〜40個の炭素原子、好ましくは4〜20個の炭素原子を有する(n+1)価の炭化水素ラジカルを表し、場合により1個又は複数個のヘテロ原子、及び/又は脂環式部位を含有し;
添え字nは、1又は2又は3又は4、好ましくは2又は3の値を表す]
によるカルバメートCAを少なくとも1種含む化学発泡剤である。
【0011】
ポリアミン又はポリイソシアネート等の「ポリ」で始まる物質名は、1分子当たりアミン又はイソシアネート基をそれぞれ1つだけ含有するモノアミン又はモノイソシアネートとは対照的に、正式には物質名にある官能基を2つ以上含有する物質を指す。用語「ポリマー」は、一方では、化学的に均一であるが、重合度、分子量及び鎖長に関して異なり、重反応(polyreaction)(重合、重付加、重縮合)により合成される巨大分子の集まりを含む。他方では、この用語には、このような群の巨大分子の重反応による誘導体、即ち所定の巨大分子上の官能基の付加又は置換等の反応により得られる、化学的に均一でも不均一でもよい化合物も含まれる。この用語はまた、所謂プレポリマー、即ち、反応性オリゴマーのプレアダクトを含み、その官能基は、巨大分子の合成に関与する。
【0012】
用語「ポリウレタンポリマー」は、所謂ジイソシアネートの重付加プロセスにより合成される全てのポリマーを含む。これはまた、ウレタン基を殆ど又は全く含まないポリマーも含む。ポリウレタンポリマーの例としては、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリ尿素、ポリ尿素、ポリエステルポリ尿素、ポリイソシアヌレート及びポリカルボジイミドが挙げられる。
【0013】
用語「イソシアネート官能性」は、イソシアネート基を含有する化合物を意味する。「イソシアネート官能性ポリマー」は、従って、イソシアネート基を少なくとも1個含有するポリマーである。同様に、用語「アミン官能性」は、アミン官能基を含有する化合物を意味する。
【0014】
「第1級アミン」は、第1級アミノ基、即ち有機ラジカルに結合するNH
2基を少なくとも1つ有する分子である。「第2級アミン」は、第2級アミノ基、即ち2つの有機ラジカルに結合するNH基を少なくとも1つ有するアミンである。「第3級アルコール」は、第3級炭素に結合するヒドロキシル基を有する分子、即ち構造式HO−C(R)(R’)(R’’)(式中、R、R’、及びR’’は、有機ラジカルであるが水素ではない)を有する分子を示す。「第3級アルキルカルバメート」は、正式には、カルバミン酸と第3級アルコールとのエステルを示し、この構造要素を含有する分子を含み、それは、例えば、式(I)によるカルバメートに相当する。
【0015】
「分子量」は、分子のモル質量(グラム/モル)を指す。用語「平均分子量」は、オリゴマー又はポリマーの平均モル質量を指し、通例ポリスチレン標準を用いてTHFにおいてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、オリゴマー又はポリマー分子の混合物の数平均モル質量(M
n)を示す。
【0016】
「ガス量」又は「分解ガス量」は、1グラム(又は明示的に指定される量)の発泡剤又は発泡剤に含まれる特定の化学物質が分解する際に形成されるガス量(特に明記されなければ、ミリリットル、略して「mL」)を示す。ガス量は、通常、雰囲気圧力及び指定される温度で測定される。
【0017】
本発明の化学発泡剤に含まれるカルバメートCAは、本発明の化学発泡剤に使用するのに好適な式(I)に基づくいかなる構造を呈してもよい。つまり、このカルバメートCAの全てが、それらの分子構造において、場合により置換の第3級アルキルカルバメートエステル官能基を少なくとも1つ有する。
【0018】
本発明の化学発泡剤に含まれるカルバメートCAの好ましい実施形態は、前記添え字nが2であり、前記ラジカルAが、2〜10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の2価炭化水素ラジカルを表し、場合により1個又は複数個のヘテロ原子を特にエーテル性酸素の形態で含有する式(I)に基づくカルバメートCAである。
【0019】
前記ラジカルR
1、R
2及びR
3がそれぞれメチル基を表す式(I)に基づくカルバメートCAを含む化学発泡剤がさらに好ましい。これらのカルバメートは、分解中にイソブチレンを形成するので高いガス量に関して殊に有利であり、またこれらのカルバメートは、以下にさらに詳細に考察するが、少なくとも2つの異なる合成経路により取得可能である。これらのうちで、前記ラジカルR
1、R
2及びR
3がそれぞれ、メチル基を表し、R
4が、水素ラジカルを表す式(I)に基づくカルバメートCAが特に好ましい。
【0020】
特定の実施形態において発泡剤として本発明によるカルバメートCAを用いる別の利点は、アミンが分解反応において形成される事実であり得る。これらのアミンは、特定の反応において触媒特性を有することがあり、又はこれらのアミンは、ポリマーの架橋反応に、例えばこれらのアミンが(ポリ)イソシアネート若しくは(ポリ)エポキシドと反応性があるポリウレタン若しくはエポキシ系に、混入されることもある。しかしながら、これは、それぞれの用途に応じて異なり、このような系を計画する場合に考慮する必要がある。熱膨張性の熱可塑性組成物中の発泡剤にカルバメートCAをこのようなポリマーと共に用いる態様は、本発明の別の一態様であり、以下でさらに考察する。
【0021】
本発明による化学発泡剤は、低分子量及び/又は高いカルバメート官能価を有するカルバメートCAを含むのが好ましい。これにより、任意のプロセスに利用される化学発泡剤の質量単位当たりのガス量が高いことが確保される。従って、前記カルバメートCAが、131g/mol〜750g/mol、好ましくは131g/mol〜500g/mol、さらに好ましくは131g/mol〜450g/molの分子量を有する実施形態が、好ましい。
【0022】
それゆえに、本発明の化学発泡剤が、本発明の態様が意図する方法で分解する際に高いガス量を生じるのが好ましい。これは、好ましい実施形態において、本発明の化学発泡剤のカルバメートCAが、本質的に全てのカルバメートCAが分解されるまでその分解温度を超えて加熱される際に、カルバメートCA1グラム当たり少なくとも140mL、好ましくは少なくとも160mL、さらに好ましくは少なくとも180mL、最も好ましくは少なくとも200mLのガスを生じるのが好ましいことを意味する。ガス量は、雰囲気圧力(およそ1バール)、23℃のガス温度で測定される。
【0023】
本発明の化学発泡剤は、効率的であり、つまり、本発明の化学発泡剤は、例えば熱可塑性組成物を発泡させるのに発泡剤として好適であるのに十分な速さでガスを生じる。従って、好ましい実施形態において、発泡剤中に含まれるカルバメートCAのうち少なくとも50%が、170℃〜230℃の温度でのガス放出下で、10分以内に分解する。他の好ましい実施形態においては、発泡剤に含まれるカルバメートCAの少なくとも95%が、170℃〜230℃の温度でのガス放出下で、20分以内に分解する。
【0024】
本発明の別の一態様は、上述の化学発泡剤に使用するのに好適である好ましいカルバメートCAを製造する方法であり、式(II)
【化2】
[式中、ラジカルA及びR
4及び添え字nは、前述と同じ意味を有する]
に基づくアミンとn当量のジ−tert−ブチルジカルボネートとの反応を含む。
【0025】
この方法で製造されるカルバメートCAは、本発明の発泡剤に殊に好ましい。このようなカルバメートCAは、R
1、R
2及びR
3がそれぞれメチル基を表す式(Ia)で示される一般構造式を有する。
【化3】
【0026】
式(Ia)に基づくカルバメートCAは、(Ia)に基づくカルバメート基当たり1分子のCO
2と1分子のイソブチレンを放出するので、分解の際に殊に高量のガス生じる利点を有する。これにより、より高いガス量のより良好なフォーム構造体がもたらされる。
【0027】
本発明に好適なカルバメートCAを製造するこの方法は、アミンと等モル量のジ−tert−ブチルジカルボネートとの反応を用いて、相当するtert−ブチルカルバメート(Ia)を形成する。この反応は、通常保護基としての官能基において、tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基をアミンに導入すると知られている。この反応は、例えばトリエチルアミン塩基を用いて、テトラヒドロフラン(THF)において25℃で既知の合成手順を用いて実施される。
【0028】
式(II)の好適なアミンとしては、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のモノアミン又はポリアミンが挙げられ、そのアミンは、場合により特にエーテル性酸素若しくはアミン性窒素の形態で1個又は複数個のヘテロ原子を含有し、また場合により1つ又は複数のC−C多重結合、及び/又は脂環式部位、及び/又は芳香族部位を含有する。このようなアミンは、1〜4個の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有することができるが、2個又は3個の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリアミンが好ましい。
【0029】
好適なモノアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、1−ブチルアミン、2−ブチルアミン、イソブチルアミン、1−ペンチルアミン、イソペンチルアミン、1−へキシルアミン、イソへキシルアミン、2−エチルへキシルアミン、1−オクチルアミン、1−デシルアミン、1−ドデシルアミン、シクロへキシルアミン、ベンジルアミン、N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−(2−アミノエチル)モルホリン、N−メチル−N’−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)ピペリジン、N−(3−アミノプロピル)モルホリン、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、2−n−ブトキシエチルアミン、2−シクロヘキシルオキシエチルアミン、2−ベンジルオキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−n−ブトキシプロピルアミン、3−シクロヘキシルオキシプロピルアミン、3−フェニルオキシプロピルアミン、3−(2−メトキシエトキシ)プロピルアミン又は2(4)−メトキシフェニルエチルアミン等の第1級モノアミン(R
4=H、n=1)が挙げられる。
【0030】
好適な第2級モノアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジイソヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、メチルエチルアミン、メチルイソプロピルアミン、メチル−n−ブチルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、メチルベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、モルホリン又は2,6−ジメチルモルホリンが挙げられる。
【0031】
好適な第1級ポリアミンとしては、エタン−1,2−ジアミン、プロパン−1,2−ジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、ブタン−1,3−ジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ペンタン−1,5−ジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(MPMD)、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、ヘキサン−1,6−ジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、オクタン−1,8−ジアミン、デカン−1,8−ジアミン、ドデカン−1,12−ジアミン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、4−(アミノメチル)オクタン−1,8−ジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロ-ヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)-メタン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン又はIPDA)、2−メチル−1,3−ジアミノシクロヘキサン、4−メチル−1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDA)、3(4)、8(9)−ビス(アミノメチル)-トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、1,8−メンタンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)-ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、N,N’−ビス(アミノプロピル)−ピペラジン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、3−オキサペンタン−1,5−ジアミン(商品名Jeffamine(登録商標)EDR−104の下でHuntsmanから入手可能)、3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン(商品名Jeffamine(登録商標)EDR−148の下でHuntsmanから入手可能)、及び4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン(商品名Jeffamine(登録商標)EDR−176の下でHuntsmanから入手可能)が挙げられるのが好ましい。
【0032】
好ましい第2級ポリアミンとしては、ピペラジン、N−(2−アミノプロピル)ピペラジン、4,4’−トリメチレンジピペリジンが挙げられ、上述のN−モノアルキル化第1級ジアミン又はN,N’−ジアルキル化第1級ジアミンがさらに好適であり、それにより、アルキル基は、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル及びイソブチル、さらに好ましくはN,N’−ジメチル化第1級ジアミン、具体的には3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)、N−メチル−エタン−1,2−ジアミン又はN,N’−ジメチル−エタン−1,2−ジアミンから選択され、N−アミノプロピル化第1級モノアミンがさらに好適であり、具体的にはN−メチル−プロパン−1,3−ジアミン、N−ブチル−プロパン−1,3−ジアミン、N−シクロヘキシル−プロパン−1,3−ジアミン、N1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1,3−ジアミノプロパン(DMAPAPA)、N−(2−エチルヘキシル)−プロパン−1,3−ジアミン、N−ドデシル−プロパン−1,3−ジアミン又はN−ココアルキル−プロパン−1,3−ジアミン、N−オレイル−プロパン−1−3−ジアミン又はN−ソイアルキル−プロパン−1,3−ジアミン(例えば商品名Duomeen(登録商標)の下でAkzo Nobelから入手可能)等の脂肪ジアミンである。
【0033】
2−アミノエタノール、2−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、5−アミノ−1−ペンタノール、6−アミノ−1−ヘキサノール、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサノール、2−(2−アミノエトキシ)−エタノール、N−メチル−2−アミノエタノール、N−ブチル−2−アミノエタノール、N−ブチル−2−アミノプロパノール、ジエタノールアミン又はジイソプロパノールアミン等のアミノアルコールも同様に好適である。
【0034】
ジアミン及びトリアミンが最も好ましく、殊に、エタン−1,2−ジアミン、プロパン−1,2−ジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、ブタン−1,3−ジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ペンタン−1,5−ジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(MPMD)、オクタン−1,8−ジアミン、デカン−1,8−ジアミン、ドデカン−1,12−ジアミン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、4−(アミノメチル)オクタン−1,8−ジアミン、ピペラジン、3−オキサペンタン−1,5−ジアミン(商品名Jeffamine(登録商標)EDR−104の下でHuntsmanから入手可能)、3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン(商品名Jeffamine(登録商標)EDR−148の下でHuntsmanから入手可能)、及び4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン(商品名Jeffamine(登録商標)EDR−176の下でHuntsmanから入手可能)をはじめとするジアミンが最も好ましい。
【0035】
前述のように、式(Ia)に基づくカルバメートCAは、それらのガス量が高いので殊に有利であり、そして一方、形成したガスは、本発明の意図に沿った用途での使用中に生成される量において、本質的に非反応性でかつ無毒である。
【0036】
前述の化学発泡剤に使用されるのに好適なカルバメートCAを製造する別の好ましい一方法は、式(III)
【化4】
[式中、ラジカルR
1、R
2、R
3及びA並びに添え字nは、前述と同じ意味を有する]
に基づくイソシアネートとn当量の第3級アルコールHO−C(R
1)(R
2)(R
3)との反応を含む。
【0037】
この方法で製造されるカルバメートCAは、多種多様なアルコールと式(III)に基づくイソシアネートを用いて合成できる。この方法は、従って、それぞれの用途に適合できるさらに注文通りの製品をもたらす利点を有する。第3級アルコールとしてtert−ブタノールを用いるならば、式(Ia)に基づく好ましいカルバメートCAが得られる。
【0038】
第3級アルコールHO−C(R
1)(R
2)(R
3)を式(III)に基づくイソシアネートと反応させて式(I)に基づくカルバメートCAを生じる反応は、ポリウレタン化学において既知の合成手順に従って実施される。例えば、イソシアネート(III)に対して過剰モルの第3級アルコールを用いて、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)触媒の存在下、70℃で変換を実施する。
【0039】
式(III)に基づく好適なイソシアネートとしては、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のモノイソシアネート又はポリイソシアネートが挙げられ、そのイソシアネートは、場合により脂環式部位及び/又は芳香族部位を含有する。このようなイソシアネートは、1〜4個のイソシアネート基を有することができ、2又は3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが、好ましい。
【0040】
好適なモノイソシアネートとしては、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n−プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、n−ブチルイソシアネート、イソブチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、イソヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート及びベンジルイソシアネートが挙げられる。
【0041】
好ましい好適なポリイソシアネートとしては、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネート及び2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネート(TMDI)、1,10−デカンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、リシンエステルジイソシアネート若しくはリシンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート若しくはシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、1−メチル−2,4−ジイソシアナトシクロヘキサン及び1−メチル−2,6−ジイソシアナトシクロヘキサン(H
6TDI)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート若しくはIPDI)、パーヒドロ−2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及びパーヒドロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(H
12MDI)、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン若しくは1,4−ビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジイソシアネート及びp−キシリレンジイソシアネート(m−XDI及びp−XDI)、m−テトラメチル−1,4−キシリレンジイソシアネート及びp−テトラメチル−1,4−キシリレンジイソシアネート(m−TMXDI及びp−TMXDI)、ビス−(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ナフタレン、並びに3,6−ビス−(9−イソシアナトノニル)−4,5−ジ−(1−ヘプテニル)シクロヘキセン(ジメチルジイソシアネート)等の2量体脂肪酸イソシアネートが挙げられる。
【0042】
殊に好ましいイソシアネートは、HDI、TMDI、IPDI及びH
12MDIである。最も好ましいイソシアネートは、HDI及びIPDIである。
【0043】
好適な第3級アルコールHO−C(R
1)(R
2)(R
3)としては、tert−ブタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2,2−ジメチル−3−エチル−3−ペンタノール、2,6−ジメチル−2−ヘプタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、1−メチルシクロヘキサノール、1−メチルシクロペンタノール、2−エチルフェンコール、1,1−ジフェニルエタノール、1,2−ジフェニル−2−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、2−メチル−4−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール(ジメチルビニルカルビノール)、1,1−ジメトキシ−2−メチル−3−ブテン−2−オール、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オール(リナロール)、3,7−ジメチル−6−オクテン−3−オール(ジヒドロリナロール)、3,7−ジメチル−3−オクタノール(テトラヒドロリナロール)、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、さらに不飽和C−C結合を有する前述の第3級アルコールの水素化誘導体が挙げられる。最も好ましい第3級アルコールHO−C(R
1)(R
2)(R
3)は、tert−ブタノールである。
【0044】
他の好ましい実施形態は、第3級ポリオール、即ち複数個の第3級アルコール基HO−C(R
1)(R
2)(R
3)を有する分子、具体的には第3級アルコール基を2個有するジオールを用いる。これらのポリオールは、本発明によるカルバメートCAを形成するために、上述の第3級アルコールと同じ方法で使用してよい。しかしながら、第3級ポリオールをモノイソシアネート又はポリイソシアネートと反応させる際に、ヒドロキシル基のイソシアネート基に対するモル比を正確に計算するために注意が必要である。当業者ならば、これらの官能基の正確な当量比の計算を良く知っている。第3級ポリオールの場合においては、このように形成されたカルバメートCAでのカルバメート官能基の高い官能度を実現するために、第3級ポリオールの反応相手として小さい(低分子量)及び/又はモノ官能性イソシアネートを使用することは有利であり得る。好適な第3級ポリオールとしては、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、3,6−ジメチルオクタ−4−イン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチルデ−5−イン−4,7−ジオール、及び2,6,9,13−テトラメチルテトラデカ−2,12−ジエン−7−イン−6,9−ジオール、及びそれらの水素化変性体等のより大きな第3級ポリオールが挙げられる。最も好ましい第3級ポリオールは、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール及び2,4,7,9−テトラメチルデ−5−イン−4,7−ジオールである。
【0045】
好ましい実施形態において、本発明による本発明の化学発泡剤を含む組成物は、少なくとも1種のカルバメートCAを分解するために少なくとも1種の活性化剤ACをさらに含む。
【0046】
任意の実施形態のカルバメートCAが、活性化剤ACを使用することなく、特定の用途に好適な温度で、好適なやり方で分解することは可能であるが、活性化剤ACを使用するのが、一般的に好ましい。このような活性化剤は、より低い分解温度及び/又は速い分解を実現できる方法で、カルバメートCAの分解を触媒又は促進して、それが、膨張プロセスに有益となり得る。所与のカルバメートCAの分解温度は、その化学構造に応じて大きく異なり、その事実は以下で考察する。
【0047】
好適な活性化剤ACは、カルバメートCAの分解を触媒する又は活性化する全ての化合物である。カルバメートCAのそれぞれの構造に応じて、このような化合物は、有機酸若しくは無機酸、塩基、又は金属錯体を含んでもよい。
【0048】
好ましい実施形態において、活性化剤ACは、少なくとも1種の酸、好ましくはカルボン酸を含む。好適な酸として、具体的には、室温(23℃)で固体のカルボン酸が挙げられる。一塩基酸と多塩基酸の両方とも好適である。
【0049】
殊に好ましい実施形態において、活性化剤ACは、pKa値2.5〜5を有する少なくとも1種のカルボン酸を含む。トリフルオロ酢酸等の強カルボン酸を使用することが可能であり、強カルボン酸は、カルバメートCAの分解においてさらに効率的である。しかしながら、カルバメートCAの有用な安定性を維持するために、pKa値2.5〜5を有する弱カルボン酸を用いるのは、好ましい。より強い酸を使用することにより、カルバメートCAは、室温でのようにあまりに容易に分解することが可能となり、発泡剤が、許容可能な保存安定性を有する製品に使用されるほど十分に安定でないことがある。カルバメートCA及び活性化剤ACを所望の用途に適合させることは重要である。一般的に、カルバメートCAが90℃〜150℃より低い温度で殆ど分解されないのは良好であるが、しかしこれは、目的とする用途に応じて異なる。
【0050】
好ましい活性化剤ACとしては、カルボン酸、具体的には、室温(23℃)で固体である及び/又はpKa値2.5〜5を呈するカルボン酸が挙げられる。このような好ましい活性化剤ACの例として、C10〜C20の脂肪酸等のモノカルボン酸、安息香酸若しくはサリチル酸等の芳香族カルボン酸、又はアジピン酸、フマル酸、若しくはクエン酸等のポリカルボン酸が挙げられる。サリチル酸が最も好ましい。
【0051】
カルボン酸を活性化剤ACに使用する好ましい実施形態において、本発明の化学発泡剤は、前記カルバメートCAのカルバメート官能基の、前記活性化剤ACのカルボン酸官能基に対するモル比およそ1:1を呈示する。
【0052】
カルバメートCAの吸熱分解反応に必要な熱は、その熱により前記カルバメートCAを含む発泡剤を含有する組成物の発泡(膨張)が生じるが、その熱は外部からでも内部からでも印加でき、内部からの熱は、例えば発熱反応からである。正確な分解温度は、カルバメートCAの構造に、活性化剤ACを使用するか否かに大きく依存し、そして活性化剤ACを用いるならば活性化剤ACの種類に応じて大きく変わる。活性化剤ACを使用しない場合、本発明のカルバメートCAの分解温度は、通常およそ200℃〜270℃と確認される。好適な活性化剤ACを用いることにより、分解温度をかなり下げることができ、例えば、使用するカルバメートCAと活性化剤ACに応じておよそ150℃〜220℃まで下げることができる。
【0053】
本発明の別の一態様は、上述のカルバメートCAを少なくとも1種含む化学発泡剤の使用であり、好ましくは上述の活性化剤ACとの組み合わせで、熱膨張性の熱可塑性組成物における発泡剤としての使用である。
【0054】
それゆえに、本発明のさらなる一態様は、
a)上述のカルバメートCAを含む化学発泡剤を少なくとも1種、
b)少なくとも1種の熱可塑性材料、
c)場合により少なくとも1種の安定剤S
を含む熱膨張性組成物である。
【0055】
本発明の熱膨張性組成物は、好ましくは(カルバメートCAを含む又はから本質的になる)前記化学発泡剤を、組成物の総重量を基準として、2重量%〜10重量%、好ましくは4重量%〜8重量%、さらに好ましくは5重量%〜7重量%の量で含有する。
【0056】
このような熱膨張性組成物は、上述の化学発泡剤とは別に、制御可能な条件下で、それらに含有される前記化学発泡剤を分解することにより、発泡できる熱可塑性材料を少なくとも1種含有する。
【0057】
好ましい実施形態において、熱可塑性材料は、硬化型の熱可塑性材料である。用語「硬化型の熱可塑性材料」は、特定の温度で軟化するが、室温(23℃)で好ましくは僅かに高い温度でも、例えば最大50℃又は60℃までの温度で本質的に固体であり、好ましくは特定の条件下で例えば昇温で「硬化」できる、又はつまり架橋反応をうけることができる熱可塑性材料を意味する。硬化型の熱可塑性材料の使用は、膨張後に最適の機械特性をもたらし、フォームの安定性を増大することを確証する。
【0058】
架橋反応の化学は、熱可塑性材料に使用されるポリマーの種類により、ポリマーが備える官能基により、及び架橋剤、開始剤又は触媒等のさらなる反応相手の存在により決まる。架橋反応は、イオン機構又はラジカル機構を有する縮合反応又は付加反応を含んでもよい。
【0059】
例えば、好ましい一実施形態において、硬化型の熱可塑性材料は、過酸化物によって架橋できるポリマーを少なくとも1種含む。
【0060】
これらのポリマーが、ラジカル開始剤、例えば過酸化物の影響下で、それらの主鎖又は側鎖から水素原子を遊離させ、その結果、続いてのステップにおいて他のポリマー鎖をラジカル攻撃できるラジカルが残り、ラジカル鎖反応の架橋プロセスをもたらし、最終的にポリマー網目構造に至る官能基、例えばC−C二重結合を含有するならば、ポリマーは、「過酸化物によって架橋できる」と示される。
【0061】
この型の好適なポリマーとしては、例えばスチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、エチレン−メタクリレートコポリマー、エチレン−エチルアクリレートコポリマー、エチレン−ブチルアクリレートコポリマー、エチレン−(メタ)アクリル酸コポリマー、エチレン−2−エチルヘキシルアクリレートコポリマー、エチレンアクリル酸エステルコポリマー、ポリオレフィンブロックコポリマー、及びポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンが挙げられる。
【0062】
コポリマーは、複数の型のモノマーからなるポリマーを意味するが、ブロック型コポリマー、規則正しく交互のコポリマー、又はランダムコポリマーであってよい。
【0063】
これらのポリマーはまた、さらに官能化できるが、それは、ヒドロキシル基、カルボキシ基、無水物基、アクリレート基、及び/又はグリシジルメタクリレート基等のさらなる官能基を含有できることを意味する。
【0064】
過酸化物によって架橋できる好ましいポリマーは、エチレン−ビニルアセテート(EVA)を含む又はEVAから本質的になる。この場合において、EVA中のビニルアセテートモノマーの含有量は、EVAポリマーの総重量を基準として、8重量%〜45重量%、好ましくは15重量%〜30重量%であるのが望ましい。
【0065】
好ましいEVAポリマーとしては、例えば、Elvax(登録商標)150、Elvax(登録商標)240、Elvax(登録商標)260、Elvax(登録商標)420、Elvax(登録商標)670(全てDuPontから)、又は対応するEvatane(登録商標)コポリマー(Arkemaから)が挙げられる。
【0066】
硬化型の熱可塑性材料に含まれるのに好適である他のポリマー系として、例えば室温(23℃)で本質的に固体である一成分エポキシ樹脂系が挙げられ、そのエポキシ樹脂系は、高い衝撃強度又は靭性を呈し、好ましくは発熱性シリカ又はナノクレイ等の揺変性改質剤を含有する。
【0067】
さらに好適なエポキシ系の熱可塑性材料としては、トリグリシジルイソシアヌレート、テレフタル酸トリグリシジルエーテル、テレフタル酸トリグリシジルエーテルとトリメリト酸トリグリシジルエーテルとの混合物、ヒドロキノンジグリシジルエーテル等の結晶性ポリエポキシドが挙げられ、同様に、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテルと、4,4’−ジフェニル-メタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニル-メタンジイソシアネート及び2,2’−ジフェニル-メタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トルイレンジイソシアネート及び2,6−トルイレンジイソシアネート(TDI)、又は1−イソ-シアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン(IPDI)等のジイソシアネートとのアダクトも挙げられる。
【0068】
これらの熱可塑性材料に殊に好適な靭性又は衝撃強度改質剤としては、ニトリルゴム又はポリエーテルポリオールポリウレタンの誘導体を主材とする反応性の液状ゴム、コア−シェルポリマー、及び当業者に既知の他のこのような系が挙げられる。
【0069】
硬化型の熱可塑性材料に好適な他のポリマー系としては、他のポリオールと混合した、好ましくはポリエーテルポリオールと混合した、結晶性ヒドロキシ官能性ポリエステル又はポリカーボネートポリオールと、ブロックイソシアネート基を有するポリイソシアネートとを含む一成分ポリウレタン組成物が挙げられる。結晶性ポリエステル又はポリカーボネートポリオールの融点は、好ましくは少なくとも50℃であるのが望ましい。ポリイソシアネートのイソシアネート基は、例えば、カプロラクタム、フェノール、又はベンゾオキサゾロン等の求核剤でブロックできる。例えば粉体塗料の用途において使用されるブロックポリイソシアネートがさらに好適であり、それらは、例えば、商品名Vestagon(登録商標)BF1350及びVestagon(登録商標)BF1540(Evonikから)の下で市販されている。さらに所謂、封入又は表面不活性化ポリイソシアネートが、ポリイソシアネートとして好適であり、それは、当業者には既知であり、例えば欧州特許第0204970号明細書に記載されている。
【0070】
例えば、国際公開第2005/080524A1号パンフレットに記載される二成分エポキシ/ポリウレタン組成物が、硬化型の熱可塑性材料としてさらに好適である。
【0071】
例えば、商品名SikaBaffle(登録商標)240、SikaBaffle(登録商標)250、又はSikaBaffle(登録商標)255(Sika Corp.,USA)の下で市販されているこれらの組成物が、硬化型の熱可塑性材料として同様に好適であり、それらは、米国特許第5,266,133号明細書及び米国特許第5,373,027号明細書に詳細に説明されており、それらの開示は本明細書に参考として援用されている。このような硬化型の熱可塑性材料は、本発明に特に好ましい。
【0072】
例えば、商品名SikaReinforcer(登録商標)941(Sika Corp.,USAから)の下で販売されている熱可塑性材料が、例えば自動車製造において補強性を有する硬化型の熱可塑性材料として殊に好適である。このような組成物は、米国特許第6,387,470号明細書に記載されており、その開示は本明細書に参考として援用されている。
【0073】
本発明による熱膨張性組成物は、熱膨張性組成物の総重量を基準として、60重量%〜80重量%、好ましくは65重量%〜78重量%、さらに好ましくは70重量%〜75重量%の量で、前記の少なくとも1種の熱可塑性材料を含有するのが好ましい。
【0074】
本発明による熱膨張性組成物は、少なくとも1種の安定剤Sを含むのが好ましい。
【0075】
前記安定剤Sは、熱可塑性材料中のカルバメートCAを分解するガスにより生じるフォームを安定化させる。
【0076】
フォーム安定化は、通常、整泡剤及び/又は熱可塑性溶融物の高速架橋のどちらかにより、達成される。整泡剤は、フォームの気泡の安定性維持を助力し、それにより、熱可塑性材料が気泡構造を維持するほど十分に硬化又は固体化されるまで、フォームを崩壊しないように保護する。
【0077】
好適な整泡剤Sとしては、例えばポリエーテル変性ポリシロキサン(例えばEvonikからのTegostab(登録商標)製品、又はAltana GroupからのSilbyk(登録商標)9000、Silbyk(登録商標)9020、及びSilbyk(登録商標)9230)或いはモノグリセリド(例えばDaniscoからのDimodan HP(登録商標)等のグリセロールモノステアレート)等の低分子量の両親媒性分子が挙げられる。商品名Armostat(登録商標)3002の下でAkzoNobelから販売されているナトリウムsec−アルカンスルホネートがさらに好適である。他の好適な整泡剤Sとしては、シロキサン−グリコールランダムコポリマー、又は例えば国際公開第2014/040913A1号パンフレットに記載されるような長鎖分岐のポリマーが挙げられ、その開示は本明細書に参考として援用されている。同様に好適な安定剤Sは、例えば商品名Omyacarb(登録商標)5−GUの下で販売されている炭酸カルシウム、又はEvonikからのAerosil(登録商標)R972若しくはWackerからのHDK(登録商標)H18等のヒュームドシリカなどの揺変剤である。
【0078】
本発明による熱膨張性組成物の好ましい一実施形態において、前記安定剤Sは、熱膨張性組成物の総重量を基準として、0.1重量%〜3%重量%、好ましくは0.2重量%〜2重量%、さらに好ましくは0.25重量%〜1重量%の量で含有されている。
【0079】
好ましい実施形態において、前記の本発明の熱膨張性組成物は、前記カルバメートCAのための活性化剤ACをさらに含む。活性化剤ACは、詳細にさらに上述されている。殊に好ましい実施形態において、前記活性化剤ACは、カルボン酸、好ましくはpKa値2.5〜5を有するカルボン酸を少なくとも1種含む。さらに、上述の本発明によるこのような膨張性組成物の殊に好ましい実施形態において、前記カルバメートCAのカルバメート官能基の、前記活性化剤ACのカルボン酸官能基に対するモル比は、1:1又はおよそ1:1である。
【0080】
さらに上述のa)、b)、及びc)で要約したような必須成分及び任意の成分を別として、本発明の熱膨張性組成物は、このような組成物に一般的に使用され当業者に既知の他の成分を含有してもよい。これらの成分としては、例えば、充填剤、着色剤、分散助剤又は均質化剤、接着促進剤、酸化防止剤、安定剤等が挙げられる。
【0081】
例えば、重質炭酸カルシウム若しくは沈降炭酸カルシウム、カルシウム−マグネシウムカーボネート、タルカム、セッコウ、グラファイト、重晶石、シリカ、シリケート、雲母、珪灰石、カーボンブラック、又はそれらの混合物等が、充填剤として好適である。充填剤は、たとえ含有されるとしても、組成物の総重量を基準として、1重量%〜15重量%の量で含有されるのが好ましい。
【0082】
例えば、カーボンブラックを主材とする顔料等の着色剤若しくは染料は、本発明の組成物に含有できる。それらの量は、組成物の総重量を基準として、0重量%〜1重量%であるのが好ましい。
【0083】
分散助剤又は均質化剤は、湿潤剤又は表面活性剤として記載されることもあるが、均質に混合される組成物を促進するために、本発明の組成物にとって有益となり得る。炭化水素樹脂、例えばNovares(登録商標)TL90(Ruetgersから)、Wingtack(登録商標)樹脂(Cray Valleyから)、Escorez(登録商標)粘着付与樹脂(例えば、Escorez(登録商標)1304、ExxonMobilから)、及びPiccotac(登録商標)炭化水素樹脂(例えば、Piccotac(登録商標)1100又はPiccotac(登録商標)1100E、Eastmanから)を含むこのような化合物を使用するのが好ましい。このような化合物は、好ましくは、組成物の総重量を基準として、2重量%〜10重量%、好ましくは4重量%〜8重量%、さらに好ましくは5重量%〜7重量%の量で含有される。
【0084】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、同様に、接着促進剤を含む。好ましくはこれらの物質が、該当する場合、硬化型の熱可塑性材料を提供する官能基と類似の官能基により、架橋反応中にポリマー網目構造に組み込まれるのが好ましい。好適な接着促進剤としては、例えば、Lotader(登録商標)ADX1200S、Lotader(登録商標)AX8840、Lotader(登録商標)3210、Lotader(登録商標)3410(Arkemaから)又はLotryl(登録商標)コポリマー(Arkemaから)等のエチレン−グリシジルメタクリレートコポリマーが挙げられる。
【0085】
接着促進剤は、好ましくは組成物の総重量を基準として、2重量%〜15重量%、好ましくは4重量%〜10重量%、さらに好ましくは5重量%〜7重量%の量で含有される。
【0086】
さらに潜在的に有用な添加剤として、ポリマーベースの組成物に一般的に使用される酸化防止剤及び安定剤、及びポリマーベースの組成物製剤の当業者が既知の酸化防止剤及び安定剤が挙げられる。好適な酸化防止剤及び安定剤の例として、ビス(3,3−ビス(4’−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブタン酸)グリコールエステル及び商品名Irganox(登録商標)1010(BASFから)の下で知られているペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等の立体障害性チオエーテル、立体障害性芳香族アミン、及び/又は立体障害性フェノールが挙げられる。このような物質は、好ましくは組成物の総重量を基準として、0重量%〜0.5重量%、好ましくは0.1重量%〜0.3重量%の量で含有されている。
【0087】
本発明による組成物は、任意の好適な混合装置中で、例えばディスパーションミキサー、プラネタリーミキサー、二軸混錬機、連続混錬機、押出機、又は二軸押出機中で成分を混合することにより、製造できる。
【0088】
それぞれの成分の粘性及び/又は溶融を低減することにより、成分の均質混合物への処理を促進するために、外部熱源を加えることによるか、又は混合プロセス自体から生じる摩擦によるかのどちらかで、混合前又は混合中に成分を加熱することは有利であり得る。しかしながら、例えば温度監視により、また適切な場合には冷却装置を使用して、発泡剤の活性化温度を超えないように、注意を払う必要がある。最終組成物は、好ましくは室温(23℃)で本質的に固体であり、つまり最終組成物は、少なくとも24時間重力だけによりこの温度で目視可能に変形することはない。
【0089】
混合後、得られた組成物は、例えば、押出成形、ブロー成形、ペレット成形、射出成形、圧縮成形、打ち抜き若しくは型抜き又は任意の他の好適なプロセスにより、その所望の形態に賦形できる。
【0090】
熱膨張性組成物は、全ての成分を一続きに添加及び/又は同時に添加することを伴い、実質的に1ステップのプロセスで生成できる。しかしながら、2成分系、或いは多成分系として組成物を配合し、後の段階でこれらの成分を最終組成物に混合することも有利であり得る。このような取り組みは、例えば、厳しい条件(異常に高い温度等)を伴う場所での組成物の保存安定性を高めることができ、保管室の需要及び輸送重量を最適化することができ、異なる用途に対して注文作製の基本組成物(modular composition)を見込むことができる。
【0091】
本発明による熱膨張性組成物の膨張は、通常、熱により誘発される。これは、カルバメートCAを含む発泡剤と、好ましい場合には硬化型の熱可塑性材料の硬化機構との双方が、それらのそれぞれの活性化温度を超える熱プロセスにより活性化されて、膨張性材料が膨張してその目的の最終(十分に膨張して安定な)状態に硬化されるまで進行するのに、双方のプロセス(例えば過酸化物より開始するラジカル重合や、ガス生成を伴う発泡剤の分解等の硬化プロセス)にとって十分に長い継続時間を呈する。最適な温度及び継続時間(滞留時間)は、本発明の組成物に使用される発泡剤及び熱可塑性材料の特性に応じて異なる。一般的には、このような活性化温度は、130℃〜250℃、好ましくは150℃〜210℃であり、10分〜90分、好ましくは15分〜60分の滞留時間を必要とする。
【0092】
本発明の別の一態様は、中空構造体のためのバッフル及び/又は補強要素であり、前記要素は、上述の熱膨張性組成物を含み、場合により、前記膨張性材料がその上に堆積又は付着する担体を含む。
【0093】
さらに詳細には、本発明の本態様はまた、バッフル及び/又は補強要素の製造のために本発明の化学発泡剤を含有する上述の本発明の熱膨張性組成物の使用も記載する。このような要素は、中空構造体、例えば自動車の中空構造部品の空洞を封止し、塞ぎ、及び/又は補強するために使用される。車の中空部品としては、胴体部品(例えば、パネル)、フレーム部品(例えば、ハイドロフォーム成形した管)、ピラー構造(例えば、A、B、C、又はDピラー)、バンパー、ルーフ等を挙げることができる。
【0094】
好ましい一実施形態において、このような中空構造体のためのバッフル及び/又は補強要素は、上述の熱膨張性組成物から本質的になる。この場合において、塞がれる及び/又は補強される中空構造体の壁に、要素が容易に嵌合されて取り付けられことができる方法で、要素の形状を設計できることは有利である。製造は、この場合において、好ましくは射出成形、圧縮成形、打ち抜き若しくは型抜き、又は形状テンプレートを介して押出成形によりなされる。
【0095】
別の好ましい一実施形態において、中空構造体のためのこのようなバッフル及び/又は補強要素は、熱膨張性組成物の他に、本発明の熱膨張性組成物がその上に堆積又は付着する担体要素を含む。このような設計は、さらにコスト効率を高くすることができ、例えばピン、ボルト、又はフックを担体要素上に組み込むことにより、塞がれる及び/又は補強される構造体の壁上へのバッフル及び/又は補強要素の固定を促進できる。さらに、担体要素の好適な設計により、本発明によるバッフル及び/又は補強要素の機械的性能及び安定性を増大できる。
【0096】
前記担体要素は、本発明の実施形態に有用な形状に加工できるいかなる材料からなってもよい。好ましい材料は、エラストマー、熱可塑性物質、熱硬化性ポリマー、それらのブレンド又は他の組み合わせ等のポリマー材料である。好ましい熱可塑性材料としては、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン等が挙げられるがこれらに限定されない。ポリ(フェニレンエーテル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、好ましくはPA6、PA6,6、PA11、PA12、PA6,10、PA6,12、又はそれらの混合物等の高温安定性ポリマーが、殊に好ましい。他の好適な材料としては、金属、殊にアルミニウム若しくは鋼、又は木材若しくは他の(圧縮)繊維状材料等の天然の有機材料が挙げられる。同様にガラス質材料又はセラミック材料も使用できる。このような材料の任意の組み合わせも使用できる。このような材料は、(例えば繊維、ミネラル、粘土、シリケート、カーボネート、それらの組み合わせ等で)充填できる又は発泡できる。
【0097】
担体要素は、あらゆる形状又は配置を呈することができる。担体要素はまた、直接に連結されていない幾つかの部品からなることができる。例えば、担体要素は、塊状、中空、又は発泡、格子状構造を呈することができる。担体要素の表面は、通例、バッフル及び/又は補強要素の目的とする用途に従って、滑らか、粗い、又は構造化であることが可能である。
【0098】
本発明に従ってバッフル及び/又は補強要素の製造プロセスは、主として担体要素の材料に応じて異なる。担体要素の材料が、射出成形又は押出成形により加工できるならば、バッフル及び/又は補強要素全体が、担体要素及び熱膨張性組成物の2ステップの射出成形プロセス又は共押出成形プロセスで生産できる。2ステップ射出成形プロセスを用いるならば、第一ステップにおいて、担体要素用の材料が、金型内に注入される。固化後、射出成形冶具の空洞が、増大されるか若しくは調整され、又は射出成形片は、別の冶具に移され、第二成分、この場合において熱膨張性組成物用の材料が、注入される。
【0099】
担体要素が、射出成形でも押出成形でも賦形されないならば、例えば、担体要素は、金属又は合金からなるので、担体要素を好適なプロセスにより最初に製造した後、射出成形冶具に導入してよく、担体要素が置かれる冶具に熱膨張性組成物を射出成形してよい。別の可能性は、予め作製した担体要素上に熱膨張性組成物を押し出すことである。勿論、担体要素と膨張性組成物要素を好適なプロセスにより別々に製造した後、化学的手段又は物理的手段等の任意の好適な手段により、例えば貼付等、又は機械的手段により、例えばボルト締め、ねじ締め等により、膨張性組成物要素を担体要素に取り付ける可能性も存在する。
【0100】
本発明の別の一態様は、陸上車両、船舶、又は航空機、好ましくは自動車の空洞又は中空構造体を封止し、塞ぎ、又は補強するための上述のバッフル及び/又は補強要素の使用、及び/又は騒音、振動、湿気、及び/又は熱の伝達を低減させる及び/又は前記空洞周辺の物体を機械的に強化するような建物の空洞を封止し、塞ぎ、又は補強するための上述のバッフル及び/又は補強要素の使用である。
【0101】
本発明のさらなる一態様は、空洞又は中空構造体を封止、塞ぐ及び/又は補強する方法であり、上述の熱膨張性組成物を含む要素が、前記空洞又は中空構造体に導入されて、続いて熱膨張されて、その結果、前記空洞又は中空構造体が少なくとも部分的に膨張した組成物により充填されることを特徴とする。熱膨張プロセスの好ましい温度は、130℃〜210℃である。
【0102】
上述の熱膨張性組成物が、例えば自動車製造において、バッフル及び/又は補強要素での用途があるならば、発泡剤の活性化温度は、塞がれる又は補強される自動車部品の製造条件に調節されるのが好ましい。例として、バッフル及び/又は補強要素は、構造体の表面を依然として利用可能のままにしているその未膨張の状態において、エレクトロコーティング溶液で処理する必要がある構造体の空洞に挿入でき、続いて自動車部品の熱処理中(即ち、陰極浸漬塗装/コーティング又はエレクトロコーティング溶液のための硬化手順)、バッフル及び/又は補強要素が、同時に(又はその後すぐに)その目的とする最終形状に膨張し、少なくとも部分的に空洞を閉鎖又は充填する。このような場合には、膨張温度が、前記熱処理の温度条件、即ち90℃〜200℃まで対応するのが望ましい。
【0103】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明されるが、しかし実施例が本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0104】
示される割合及び百分率は、特に明記しなければ、重量によるものである。それゆえに、「重量%」は、それぞれの場合において付与される全組成物の重量を基準として、重量による百分率を意味する。
【0105】
試験方法及び手順
Bruker Ascend400分光計で、400.14MHz、CDCl
3中で
1H−NMRスペクトル及び
13C−NMRスペクトルを測定し、テトラメチルシラン(TMS)に対してppmで、その化学シフトを示す。
【0106】
解像度1cm
−1を有するThermo Scientific製のNicolet iS5分光計での水平型全反射吸収(ATR)ダイヤモンドユニットにおいて、希釈されていない形態のフィルム又は粉体として、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)スペクトルを記録した。4000〜650cm
−1の測定範囲に対して、吸収帯を波数(cm
−1)で示す。
【0107】
以下の手順を用い、Mettler Toledo製のDSC1示差走査熱量計で示差走査熱量(DSC)測定を実施した:25℃で2分間、5℃/分で25℃から280℃まで昇温し、280℃で2分、10℃/分で280℃から25℃まで冷却。分解温度範囲(℃)、分解開始温度(℃)、分解ピーク温度(℃)及びエンタルピー(J/kg)さらに融点T
m(℃)を測定した。
【0108】
上述のDSC手順を用いて、異なる3つの昇温速度(10℃/分、20℃/分及び30℃/分)で活性化剤/カルバメート混合物を実施した。STARe Software(Mettler Toledo,Switzerland)の自動運動(MFK)手順を用いて活性エネルギープロットを生成し、3つ全ての実行の分解ピークを評価した。活性エネルギー曲線を用いて、変換(分解速度)プロットを生成し、表(下表4及び5を参照のこと)を作成した。
【0109】
以下のパラメーターを用いMettler Toledo TGA1機で熱重量分析(TGA)測定を実施した:5℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、第二昇温手順、40℃/分で250℃から900℃まで昇温した。記録した値は、分解温度範囲(℃)、分解開始温度(℃)、分解ピーク温度(℃)、質量損失(%)、及び静止(残留)質量(%)を含む。
【0110】
以下の手順を用い、ガス発生装置によるガス量及び分解温度をTramaco GmbH(Germany)で測定した:原理:体積測定管において、吸引により試料管を減圧して、水柱を生成した。発泡剤が熱分解している間に、水柱がさらに減少するのを防ぐ減圧が再び形成されるまで、放出されるガス量に比例して水柱が減少する。体積測定管から滴下する水を回収し、続けて秤量し、温度毎に質量を記録した。評価:各測定(mL/gによるガス量=水の重量/最初の試料重量
*補正係数)中に、機器用ソフトウェアにより、ガス量(正規化した)及び分解温度(測定範囲80℃〜300℃)を記録した。記録したデータをソフトウェアで解析し、温度(x/yグラフ)の関数としてガス量を表示する。分解が終了した後、曲線は、もはや上昇しない。
【0111】
実施例化合物の合成
以下の手順に従って、一連の本発明のカルバメートを合成した。
【0112】
アミンからの実施例カルバメートCA1〜CA7及びCA10〜CA18の合成
出発材料としてポリアミンとジ−tert−ブチルジカルボネートを用いてカルバメートCAを生じる第一方法により、一連の実施例カルバメートCAを生成した。触媒としてトリエチルアミンを用い、アミノ基に対して等モル量のジ−tert−ブチルジカルボネートを用いて、全ての反応をTHFにおいて25℃で実施した。すべての場合において、90〜99%の収量で対応するカルバメートを取得でき、
1H−NMR及び
13C−NMR並びにFT−IR分光法により、特徴付けられる。使用したポリアミンの化学名及び得られる対応のカルバメートCAを表1に示す。Huntsman Corp.,USAから購入した、CA4及びCA5に使用したアミンを除いて、反応物(アミンを含む)は、全てSigma Aldrich,Switzerlandから購入した。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
ジ−tert−ブチルエタン−1,2−ジイルジカルバメート(CA6)のキャラクタリゼーションデータ
NMR及びFT−IRによる化学キャラクタリゼーションデータの例として、
1H−NMR及び
13C−NMR並びにFT−IRのスペクトル帰属を本発明のカルバメートCAの最も好ましい実施形態のひとつであるCA6に対して示す:
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ4.88(s,2H,NH),3.23(s,4H,CH
2),1.44(s,18H,CH
3);
13C−NMR(100MHz,CDCl
3):δ156.3(C=O),79.4(C),40.8(CH
2),28.0(CH
3);
FT−IR(最も重要なバンド):3374.1(NH),2867.7,2935.1,2982.5(CH
3,CH
2),1680.9(C=O),1523.2(NH),1461.9,1367.0(CH
3,CH
2),1140.2(N−C).
【0116】
イソシアネートからの実施例カルバメートCA8、CA9、CA19、及びCA20の合成
出発材料としてポリイソシアネートとアルコールを用いてカルバメートCAを生じる第二方法により、2種の実施例カルバメートCAを生成した。反応物としても働くtert−ブタノール中、50℃で、触媒としてジブチルスズジラウレート(DBTDL)を用い、両方の反応を実施した。1,6−ヘキサンジイソシアネート(HDI)と、tert−ブタノール、すなわち2−メチル−2−ブタノール(CA19)及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7,ジオール(CA20)以外の他のアルコールとを反応させることにより、さらに2種の追加のカルバメートを調製した。全ての場合において、80〜95%の収量で対応するカルバメートを取得でき、
1H−NMR及び
13C−NMR並びにFT−IR分光法により特徴付けられる。使用したポリイソシアネートの化学名及び取得した対応のカルバメートCAを表2に示す。反応物を全てSigma Aldrich,Switzerlandから購入した。
【0117】
【表3】
【0118】
ガス量及び分解温度
表3は、参照化合物及び本発明のカルバメートCAを含む様々な化学発泡剤の分解温度及びガス量を示す。
【0119】
【表4】
【0120】
本発明のカルバメートは、ADCA(エントリー1)、DNPT(エントリー8)を別として、またADCAやDNPTほどではないが5−PT(エントリー7)も別として、概して参照化合物よりも高いガス量を生成する。DNPTは、分解の際に、有毒の一酸化炭素(CO)を生成する不利な点を有する。
【0121】
活性化剤の影響
カルバメートCAを含む本発明の発泡剤への活性化剤ACの影響を示すために、表4及び5は、様々な温度でカルバメートCA6を分解するのに必要な時間(分で)(分解速度)を示す。表4は、活性化剤を含まない場合の異なる温度での分解速度、即ち、分解が選択した段階(5〜95%)に達する時間を示し、一方表5は、同じ実験であるが、活性化剤としてサリチル酸を含む場合の実験を示す。両方の場合において、カルバメートCA6の量は同じであった。2番目の実験(表5)において、カルバメートCAの活性化剤ACに対するモル比は、1:1であった。
【0122】
【表5】
【0123】
活性化剤を含まない、カルバメートCA6は、200℃をかなり超える温度のみに効率的に分解する。230℃でさえも、材料の95%を分解するのに必要な時間は、ほぼ14分である。
【0124】
【表6】
【0125】
活性化剤としてサリチル酸をカルバメートCA6と組み合わせて使用すると、分解は、かなり速く進行する。200℃未満の温度で既に有用な分解速度を実現する。
【0126】
分子量の影響
表6は、実施例カルバメートCAの分解ピーク温度及び分子量を列挙する。それは、分子量が本発明によるカルバメートの分解挙動に影響することを示すデータから明らかである。カルバメートCAの分子量が大きくなるほど、その分解ピーク温度は高くなる。これは、例えばそれらの分子量等のそれらの化学構造を改質して、本発明によるカルバメートCAを特定の用途に適応できることを示す。
【0127】
【表7】
【0128】
【表8】