(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る半導体装置を図面に基づいて説明する。実施の形態1に係る半導体装置は、ユニポーラ型の半導体装置の一例であるショットキーバリアダイオード(以下、ショットキーバリアダイオードをSBDと略す。)である。
図1に示すSBD100は、半導体層であるシリコン基板101と、シリコン基板101の主面に形成されたカソード層103と、シリコン基板101の厚み方向F1の両側に配置されたアノード電極104およびカソード電極105とを備えている。
【0021】
シリコン基板101は、第1導電型であるN型の半導体基板から形成されている。シリコン基板101は、シリコン基板だけで形成することができるが、シリコン基板となるウエハにエピ層を形成したものとしてもよい。
シリコン基板101には、複数のトレンチ106が形成されている。トレンチ106はシリコン基板101の厚み方向F1を深さ方向とする溝である。
【0022】
トレンチ106の内面には、その全域を覆うように、絶縁膜107が形成されている。絶縁膜107は、例えば、シリコン酸化膜により形成することができる。
【0023】
アノード電極104は、シリコン基板101に接するように形成されている。また、カソード電極105は、カソード層103に接するように形成されている。カソード電極105は、第2電極として機能する。
アノード電極104は、第1電極として機能する金属電極104bと、第3電極として機能する半導体電極104aとを備えている。
【0024】
金属電極104bは、半導体電極104aを覆うと共に、シリコン基板101を覆うように形成されている。金属電極104bはアルミ電極とすることができる。
半導体電極104aは、絶縁膜107の内側に配置されると共に、絶縁膜107の開口を塞ぐように形成されている。半導体電極104aは、半導体膜により形成することができ、例えば、ポリシリコン電極とすることができる。半導体電極104aは、金属電極104bと接して電気的に接続されているため、同極性となる。
【0025】
SBD100は、アノード電極104とカソード電極105とに、順方向電圧から逆方向電圧が印加されると非導通状態となる。このとき、N型半導体によるシリコン基板101の少数キャリアである正孔は、アノード電極104の金属電極104bに誘引される。
【0026】
カソード電極105は、カソード層103全域を覆うように形成された金属電極である。カソード電極105は、アルミ電極とすることができる。
【0027】
ここで、シリコン基板101と絶縁膜107との界面について説明する。
シリコン基板101と絶縁膜107との界面は、シリコン基板101の出っ張りが嵌まる絶縁膜107の引っ込みと、シリコン基板101の引っ込みに嵌まる絶縁膜107の出っ張りとが交互に繰り返すことで凹凸面S1により形成されている。この凹凸面S1は、三角形状の突状部が連続的に深さ方向に沿って並んでいる。
凹凸面S1は、絶縁膜107の凸部107bの頂部から凹部107aの底部までの深さが、0.1μmより深いことが望ましい。また、凸部107bの繰り返し間隔は2μmであることが望ましい。
【0028】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係るSBD100の製造方法を図面に基づいて説明する。
まず、
図2(A)に示すように、ウエハ状態のシリコン基板110の一面側に、フォトレジスト112を形成する。
次に、
図2(B)に示すように、フォトレジスト112から、トレンチ106となる溝の領域を除去し、ボッシュプロセスにより、シリコン基板110に、トレンチ106を形成する。これにより、SBD100(
図1参照)としてのシリコン基板101となる。
【0029】
ボッシュプロセスは、エッチングと、エッチングからの側壁面の保護とを繰り返し、等方的なエッチングと異方的なエッチングとが交互に作用することで、アスペクト比の高い溝を形成する方法である。このようにボッシュプロセスにより、シリコン基板110にトレンチ106を形成することで、側壁面106aに凹凸面S1ができる。
【0030】
次に、
図2(C)に示すように、フォトレジストを除去した後に、シリコン基板101上の領域と、トレンチ106内とに絶縁膜113を形成する。
次に、
図2(D)に示すように、絶縁膜113をシリコン基板101が露出するまで研磨した後、トレンチ106の側壁面と底面とに絶縁膜113の厚みを残すようなエッチングを行って、トレンチ106の溝方向に沿った溝114を形成して、絶縁膜107を形成する。トレンチ106の内側に絶縁膜107が形成されることで、トレンチ106の側壁面の凹凸面S1に応じた凹凸が、絶縁膜107にできる。
【0031】
次に、絶縁膜107上に、ポリシリコン層を形成した後に、
図3(A)に示すように、エッチングにより不要な部分を除去することで、ポリシリコンによる半導体電極104aを形成する。半導体電極104aをポリシリコン電極とすることで、溝幅が狭い溝114(
図2(D)参照)であっても、電極を形成することができる。このように、トレンチ106を形成し、絶縁膜107および半導体電極104aを、トレンチ106の内部に形成することで、容易に絶縁膜107および半導体電極104aを、シリコン基板101の厚み方向に沿って配置することができる。
【0032】
次に、
図3(B)に示すように、半導体電極104a上に金属電極104bを形成して、アノード電極104を形成する。
次に、
図3(C)に示すように、アノード電極104側とは反対側となるシリコン基板101の他面に、カソード層103を形成する。
そして、
図3(D)に示すように、カソード層103に、カソード電極105を形成して、SBD100が完成する。
【0033】
シリコン基板101にボッシュプロセスによりトレンチ106を形成したときの状態を、
図4にて写真で示す。
図4(A)に示す例は、シリコン基板にボッシュプロセスによるエッチングにより掘削したトレンチに、写真撮影用に樹脂を充填したものである。
図4(B)に示す写真から判るように、シリコン基板側が少し凹んだ曲面が連続する鋸状の凹凸面となっている。
ボッシュプロセスによる凹凸は、パワー半導体の電気特性や信頼性の劣化原因となるので、通常は凹凸が形成されにくい条件でトレンチを掘ったりボッシュプロセス後に犠牲酸化や薬液処理などを用いたりして平坦化される。しかし、本発明では、非導通状態のときに絶縁膜(酸化膜)による凹凸形状を利用するため、キャリアの移動速度が遅い方が望ましいことと、厚い酸化膜で信頼性の低下を防ぐことができるので、通常、悪影響を及ぼすと考えられていたこの凹凸形状を利用したパワー半導体の特性向上が可能である。
【0034】
このシリコン酸化膜などの酸化膜により形成された絶縁膜107は厚みが厚い方が高耐圧化するため望ましい。例えば、酸化膜の厚みが1μmであれば、1kVの耐圧を確保できる。従って、絶縁膜107は、酸化膜厚(μm)/最大電圧(kV)≧1を満足する厚みとすることが望ましい。
このような厚みの絶縁膜107とすることで、アノード電極104とカソード電極105とに電圧が印加されるときに、その最大電圧が全て絶縁膜107に掛かっても絶縁破壊を起こすことが防止できる。
【0035】
このように作製されるSTB100の電界分布について、図面に基づいて説明する。
図5では、
図1に示すSTB100と、STB100と比較するために、第3電極として機能する半導体電極および絶縁膜を有しない非トレンチ構造のSBD100aと、シリコン基板および絶縁膜の界面が凹凸面となっていない平坦面のSBD100bとの、非導通状態の電界分布を示している。
【0036】
図5(A)に示すSBD100aにおける電界分布は、アノード電極A1とシリコン基板SB1との主接合部分からカソード電極C1への厚み方向(深さ方向)へ進むに従って比例的に減少する。電界分布の積分値が電圧であるため、耐圧として必要な電圧の面積の三角形を設定し、ノイズの抑制も考慮することで、耐圧に必要なシリコン基板SB1の厚みを決定することができる。
【0037】
図5(B)に示すSBD100bでは、半導体電極104aに電圧が印加され、絶縁膜107に電圧が加わることでシリコン基板SB2に掛かる電圧が変化する。従って、SBD100bにおける電界分布は、シリコン基板SB2の厚み方向(深さ方向)へ進むに従って減少するが、途中から徐々に増加する凹状となる。従って、電圧を示す電圧分布の面積が同じであれば、
図5(A)に示す三角形状の電界分布から求められるシリコン基板SB1の厚みより、
図5(B)に示す電界分布から求められるシリコン基板SB2の厚みの方が、薄くすることができる。
【0038】
図5(C)に示す本実施の形態1に係るSBD100は、絶縁膜107とシリコン基板101との界面に凹凸面S1が形成されている。従って、SBD100における電界分布は、
図5(B)と同様に、絶縁膜107に電圧が加わることでシリコン基板101に掛かる電圧が変化するだけでなく、凹凸面S1の影響により、シリコン基板SB2の厚み方向(深さ方向)に向かって強度が一定となる方向に変化する。従って、
図5(B)に示す電界分布から求められるシリコン基板SB2の厚みより、電圧を示す電界分布の面積が同じであれば、
図5(C)に示す電界分布から求められるシリコン基板101の厚みの方が、更に、薄くすることができる。
【0039】
SBDの抵抗は、シリコン基板の厚みに比例するため、本実施の形態1に係るSBD100は、
図5(A)に示すSBD100aおよび
図5(B)に示すSBD100bと同じ高耐圧でありながら、薄型化が可能なので低抵抗化することができる。
また、
図5(C)に示すSBD100におけるシリコン基板101および
図5(B)に示すSBD100bにおけるシリコン基板SB2は、
図5(A)SBD100aにおけるシリコン基板SB1の不純物の濃度より高い濃度とすることができる。従って、シリコン基板101は、SBD100aより、単位長さ当たりの抵抗値を低下させることができる。
【0040】
以上のように、本発明の実施の形態1に係るSBD100は、シリコン基板101と絶縁膜107との界面が凹凸面S1に形成されているため、簡素な構造でありながらも、高耐圧化と低抵抗化との両方を図ることができる。また、凹凸面S1が、連続した三角形状に形成されているため、ボッシュプロセスなどで高速に効果的な形状を作製することが可能である。
【0041】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態1に係る半導体装置を図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る半導体装置は、バイポーラ型の半導体装置の一例であるPINダイオードである。なお、
図6においては、
図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図6に示すPINダイオード200は、半導体層であるシリコン基板101と、シリコン基板101の厚み方向F1の一面側に形成されたアノード層102と、シリコン基板101の厚み方向F1の他面側に形成されたカソード層103と、厚み方向F1の両側に配置されたアノード電極104およびカソード電極105とを備えている。
【0042】
シリコン基板101は、N
-型の半導体基板から形成され、PINダイオード200の高抵抗領域として機能するものである。高抵抗領域は、実施の形態1と同様に、シリコン基板101だけで形成することができるが、シリコン基板にエピ層を形成したものとしてもよい。アノード層102は、トレンチ106が形成されたシリコン基板101の残余の領域に形成された第2導電型のP型半導体層である。
【0043】
以上のように構成された本発明の実施の形態2に係るPINダイオード200の製造方法を説明する。
まず、
図7(A)に示すように、高抵抗領域となるシリコン基板110の一面側に、アノード層102となるP型層111を形成する。
次に、
図7(B)に示すように、P型層111上に、トレンチ106となる溝の領域を露出させたフォトレジスト112を形成し、ボッシュプロセスにより、シリコン基板110に、P型層111(アノード層102)を貫通するトレンチ106を形成する。これにより、PINダイオード200(
図6参照)としてのシリコン基板101となる。ボッシュプロセスにより、シリコン基板101にトレンチ106を形成することで、側壁面106aに凹凸面S1ができる。
【0044】
次に、
図7(C)に示すように、フォトレジストを除去した後に、P型層111上の領域と、トレンチ106内とに絶縁膜113を形成する。
次に、
図7(D)に示すように、絶縁膜113をP型層111が露出するまで研磨した後、トレンチ106の側壁面と底面とに厚みを残すようなエッチングを行って、トレンチ106の溝方向に沿った溝114を形成して、絶縁膜107を形成する。トレンチ106の内側に絶縁膜107が形成されることで、トレンチ106の側壁面の凹凸面S1に応じた凹凸が、絶縁膜107にできる。
【0045】
次に、P型層111、絶縁膜107上に、ポリシリコン層を形成した後に、
図8(A)に示すように、エッチングにより不要な部分を除去することで、ポリシリコンによる半導体電極104aを形成する。
【0046】
次に、
図8(B)に示すように、アノード層102および半導体電極104a上に金属電極104bを形成して、アノード電極104とする。
次に、
図8(C)に示すように、アノード層102側とは反対側となるシリコン基板101の他面に、カソード層103を形成する。
そして、
図8(D)に示すように、カソード層103に、カソード電極105を形成して完成である。
【0047】
なお、本実施の形態では、
図7(A)に示すシリコン基板110の一面側にP型層111を形成して、同図(B)に示すトレンチ106を形成し、同図(C),(D)に示す絶縁膜113(絶縁膜107)を形成していたが、P型層111を形成する前に、トレンチ106と絶縁膜113とを形成し、その後に、P型層111を形成してもよい。
【0048】
以上のように製造される本発明の実施の形態2に係るPINダイオード200は、シリコン基板101に、トレンチ106により絶縁膜107と第3電極として機能する半導体電極104aを備えているため、非導通状態のときに、
図5(C)に示すような電界分布となる。そのため、PINダイオード200は、高電圧化および低抵抗化を図ることができる。
次に、本発明の実施の形態2に係るPINダイオード200の動作について、図面に基づいて説明する。
例えば、
図6に示すアノード電極104とカソード電極105との間に、順方向電圧が印加された場合では、アノード層102から正孔がシリコン基板101に流れ込み、カソード層103から電子がシリコン基板101に流れ込む。
【0049】
この状態で、逆方向電圧に切り替わると、シリコン基板101からの少数キャリアである正孔が、アノード電極104の金属電極104bに引き寄せられ、シリコン基板101からアノード層102へ移動する。その際に、トレンチ106間の中央部分では、正孔の移動に阻害されるものがないため、最大ドリフト速度で求められる速さで移動する。
しかし、シリコン基板101と絶縁膜107との厚み方向F1に沿った界面では、アノード電極104への電圧の印加により、アノード電極104の半導体電極104aの方向となる絶縁膜107側へ引き寄せられる。絶縁膜107とシリコン基板101との界面は、凹凸面S1となっているため、凹凸面S1の絶縁膜107による凹部107aに、キャリアである正孔が入り込む。
正孔が凹部107aに入り込むことで、絶縁膜107の凸部107bにより金属電極104bへの方向への移動が阻害される。
【0050】
正孔(キャリア)の移動が阻害されることで、正孔の移動速度(ドリフト速度)が低下するため、わずかに抵抗を持った状態が持続する。従って、PINダイオード200が通電状態から非導通状態に変化したときに、低ノイズ化を図ることができると共に、低スイッチング損失化が可能である。よって、実施の形態2に係るPINダイオード200は、高性能化を図ることができる。
【0051】
(実施例)
ここで、実施の形態2に係るPINダイオード200について、TCADによるシミュレーションを行って性能を検証した。
発明品としてのPINダイオードのシミュレーションモデルを
図9に示す。
図9に示すシミュレーションモデルでは、非トレンチ形状のものと比べて高いドーピング濃度を有するシリコン基板の厚みT1を50μmとした。また、トレンチからセル同士の中間点までの距離L1を20μmとした。また、トレンチの溝幅W1を20μm、絶縁膜の厚みT3を7μm、電極(第2電極)の厚みT4を6μmとした。また、シリコン基板に面した絶縁膜の凸部の繰り返し間隔W2を2μm、凸部の高さH(高さの差)を0.5μmとした。また、カソードから絶縁膜の底面までのシリコン基板の厚みT2を10μmとした。
【0052】
なお、比較のために、シリコン基板で、トレンチおよびトレンチ内部に形成された絶縁膜と電極とを省略した従来のPINダイオード(縦型PINダイオード)を、比較品として、シミュレーションした。
比較品のシリコン基板は、スイッチングの際にノイズが発生しない厚みとして80μmとした。
【0053】
シミュレーションの条件は、印加電圧を600Vより大きく、順方向電流が100A、ジャンクション温度TjをRT、寄生インダクタンスLsを50nHとした。
シミュレーションの結果を、
図10に示す。
図10に示すグラフから、発明品は、比較品に対して逆回復損失が半減していることが判る。
【0054】
更に、
図11に示すように、発明品のチップサイズの面積は、順方向電圧が同じであれば、比較品より約2/3ほど縮小できることが判る。
次に、
図12に、シリコン基板の厚みが同じ場合におけるスイッチングの際のノイズを波形により示す。
図12(A)から同図(C)は、通電状態から遮断状態に変化したときの電流および電圧の状態を示すグラフである。
【0055】
図12(A)では、
図10および
図11にて示した比較品(従来のPINダイオード)を比較品Aとし、
図12(B)では、トレンチおよび絶縁膜を有しているが、絶縁膜とシリコン基板との界面に凹凸面が無いPINダイオードを比較品Bとして、シミュレーションを行った。
図12(A)に示す比較品Aと、
図12(B)に示す比較品Bでは、シリコン基板に溜まったキャリアが、逆回復後にシリコン基板から急激に吐き出されるため、波打つような電圧がノイズとなって出現することがわかる。
【0056】
しかし、
図9に示す発明品では、上述したように、絶縁膜とシリコン基板との界面にできた凹凸面によりキャリアが捕捉されるため、凹凸面にキャリアが滞留することで、逆回復後の移動に時間を要してしまう。従って、
図12(C)に示すように、発明品では、比較品A,Bと比較して、逆回復後の電圧変動が抑えられることが判る。
【0057】
キャリアの移動時間について、
図13に示すように比較品A,Bでは、逆回復後から40ns経過すると徐々に正孔が拡散して密度が低くなっていることが判る。しかし、発明品では、逆回復後から40ns以降、正孔の密度が徐々に低くなっているが、100ns経過した後でも、シリコン基板に正孔の密度が高い領域が残っていることが判る。このことからも、発明品は、正孔の移動に時間を要していることが判る。従って、発明品は逆回復時の損失を抑えることができる。
【0058】
ここで、絶縁膜における凹凸面の高さの差と凸部の繰り返し間隔とによる比率と、ノイズ電圧との関係について、
図14に示す。
図14では、高さの差(凸部の高さH)を凸部の繰り返し間隔W2で割った比率が、0.05より大きいときに、急激にノイズ電圧の最大値が低下していることが判る。従って、高さの差を凸部の繰り返し間隔で割った比率が、0.05より大きくなるようにすることが望ましい。
【0059】
また、絶縁膜における高さの差について、
図15に示すように、絶縁膜の凸部の頂部から凹部の底部までの深さが0.1μmより深いときに、急激にノイズ電圧の最大値が低下していることが判る。従って、絶縁膜における高さの差は、0.1μmより大きくなるようにすることが望ましい。
【0060】
(実施の形態2の第1変形例)
本発明の実施の形態2に係る半導体装置の第1変形例を
図16に基づいて説明する。なお、
図16においては、
図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図16に示すように、PINダイオード200Xは、絶縁膜113とシリコン基板101との界面が凹凸面S2を成している。この凹凸面S2は、矩形状の突状部が連続的に深さ方向に沿って並んでいる。凹凸面S2は、凹凸面S1(
図1参照)と同様に、絶縁膜107の凸部107cの頂部から凹部107dの底部までの深さが0.1μm以上であることが望ましい。
そうすることで、PINダイオード200(
図6参照)と同様に、絶縁膜107とシリコン基板101との界面にできた凹凸面S2によりキャリア(正孔)が捕捉されるため、凹凸面S2にキャリアが滞留することで、逆回復後の移動に時間を要する。従って、PINダイオード200Xは、逆回復後の電圧変動を抑えられることが期待できる。
【0061】
(実施の形態2の第2変形例)
本発明の実施の形態2に係る半導体装置の第2変形例を
図17に基づいて説明する。なお、
図17においては、
図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図17に示すように、PINダイオード200Yは、トレンチ106(絶縁膜107)の底面に接するようにP型層108が配置されていることで、高電界が掛かっても酸化膜による絶縁膜107が破壊される可能性が低減できる。
従って、PINダイオード200Yは、実施の形態2に係るPINダイオード200での効果を得つつ、高耐圧を図ることができ、信頼性を高めることができる。
【0062】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る半導体装置を、図面に基づいて説明する。なお、
図18においては、
図6と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0063】
実施の形態3に係る半導体装置は、バイポーラ型の電力用半導体装置の一例であるIGBTである。
図18に示すIGBT300は、キャリアが厚み方向F1に移動する半導体層の一例である低濃度N型層(Nベース層301)の表面側に選択的に形成され、広い間隔と狭い間隔を交互に有するトレンチ302,303と、トレンチ302,303の表面に形成されたゲート絶縁膜304,305と、ゲート絶縁膜304,305の内側に形成されたポリシリコンからなるゲート電極(制御電極)306,307と、狭い間隔を有する隣り合うトレンチ間に選択的に形成されたPベース層(Pウエル層)308と、Pベース層308の表面に選択的に形成された高濃度のNソース層309と、Pベース層308とNソース層309の双方に接続する第一の主電極(エミッタ電極310)とを備えている。
【0064】
前記のNソース層309と、Pベース層308と、Nベース層301の表面部にMOSトランジスタ構造が形成され、広い間隔の隣り合うトレンチ間にトレンチと同程度の深さを有するP型層(電位が固定されないP型層311)が、エミッタ電極310と接続しない状態で、またはエミッタ電極310と高抵抗で接続された状態で形成されている。
【0065】
更に、IGBT300は、Nベース層301の裏面側に一様に形成された、Nベース層301よりも不純物濃度の高いNバッファ層312と、Nバッファ層312の表面に一様に形成された高濃度のP型層(Pエミッタ層313)と、Pエミッタ層313の表面に一様に形成された第2の主電極(コレクタ電極314)を備えている。
【0066】
このIGBT300には、実施の形態1,2と同様に、Nベース層301にトレンチ106が形成されている。トレンチ106はNベース層301の厚み方向F1を深さ方向とする溝である。
トレンチ106の内面には、その全域を覆うように、絶縁膜107が形成されており、トレンチ106の開口縁部から延びて、ゲート絶縁膜304,305と接続されている。
絶縁膜107の内側と、絶縁膜107の開口部には、エミッタ電極310の一部となる半導体電極104aが形成されている。また、エミッタ電極310が半導体電極104a上まで延びて、半導体電極104aを覆っている。
また、トレンチ106と、Nベース層301との界面は、凹凸面S1をなしている。
【0067】
トレンチ106とNベース層301との界面が凹凸面S1となっていることで、エミッタ電極310の方向へ少数キャリアである正孔が移動する際に、正孔はエミッタ電極310の半導体電極104aの方向となる絶縁膜107側へ引き寄せられる。
絶縁膜107とNベース層301との界面は、凹凸面S1となっているため、凹凸面S1の絶縁膜107による凹部107aに正孔が入り込む。正孔が凹部107aに入り込むことで、絶縁膜107の凸部107bにより金属電極104bへの方向への移動が阻害される。
従って、IGBT300は、実施の形態1に係るSBD100での効果を得つつ、通電状態から遮断状態に変化したときの低ノイズ化を図ることができ、低スイッチング損失化が可能である。
【0068】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る半導体装置を図面に基づいて説明する。なお、
図19においては、
図18と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
実施の形態4に係る半導体装置は、ユニポーラ型の電力用半導体装置の一例であるパワーMOSFETである。
図19に示すMOSFET400は、実施の形態3に係るIGBT300(
図18参照)と同様に、絶縁膜107と、Nベース層301との界面が、凹凸面S1をなしている。
【0069】
絶縁膜107とNベース層301との界面が凹凸面S1をなすことにより、実施の形態1に係るSBDと同様に、MOSFET400における電界分布は、Nベース層301の厚み方向(深さ方向)に向かって強度が一定となる方向に変化する。従って、絶縁膜とNベース層との界面が凹凸面となっていないものと比較して、Nベース層301の厚みを薄くすることができる。
従って、MOSFET400は、簡素な構造でありながらも、高耐圧化と低抵抗化との両方を図ることができる。
【0070】
なお、本実施の形態1〜4では、
図20(A)に示すようにトレンチ106を直線状の溝とすることができるが、
図20(B)に示すように開口側から見たときに、円形状の有底の穴が複数形成されたドット状のトレンチ109としてもよい。また、金属電極104bは金属電極の一例であるアルミ電極により形成され、半導体電極104aは半導体電極の一例であるポリシリコン電極により形成されているが、第2電極は第1電極と同じ金属電極により形成されていてもよい。
【0071】
更に、本発明の実施1から4に係る半導体装置では、第3電極として機能する半導体電極104aは、直接、第1電極として機能する金属電極104bと同極性となっていたが、第1電極と第3電極とは、電気的に接続されて同極性であればよいので、半導体電極104aと金属電極104bとは半導体装置内では非導通でも、外部で接続されることで同極性とすることができる。
【0072】
例えば、
図21に示すSBD100Xのように、第1電極として機能するアノード電極104X1は、第3電極として機能する半導体電極104X2と分離している。しかし、SBD100Xの外部で電気的に接続されることで、アノード電極104X1と半導体電極104X2とは同極性とすることができる。
【0073】
また、トレンチは、第1電極(金属電極104b)側から形成されていたが、第3電極(半導体電極)にあっては、少数キャリアが誘引される第1電極と同極性であれば、第2電極(カソード電極105,コレクタ電極314)側から形成されていてもよい。
【0074】
更に、シリコン基板101とした半導体層は、シリコン以外に、化合物半導体、例えば、SiCやGaNなどとすることができる。