特許第6709727号(P6709727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709727
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】電解めっき装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/00 20060101AFI20200608BHJP
   C25D 17/08 20060101ALI20200608BHJP
   C25D 17/06 20060101ALI20200608BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20200608BHJP
【FI】
   C25D21/00 E
   C25D17/08 R
   C25D17/06 C
   C25D17/08 G
   C25D17/08 Q
   C25D21/00 A
   C25D21/12 K
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-242365(P2016-242365)
(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公開番号】特開2018-95930(P2018-95930A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】藤方 淳平
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−053372(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/157129(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00− 9/12
C25D 13/00−21/22
H04B 5/00− 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を保持可能なめっき槽と、
前記めっき槽内に配置されたアノードと、
基板に接触可能な電気接点を有する基板ホルダと、
前記アノードに接続された電源と、
前記電源に接続されたワイヤレス送電器と、
前記基板ホルダに取り付けられ、かつ前記電気接点に電気的に接続されたワイヤレス受電器とを備えたことを特徴とする電解めっき装置。
【請求項2】
前記ワイヤレス送電器は、前記めっき槽の外に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電解めっき装置。
【請求項3】
前記ワイヤレス送電器は、送電コイルを備えており、
前記送電コイルは、前記めっき槽内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電解めっき装置。
【請求項4】
前記基板ホルダには窪みが形成されており、前記送電コイルは前記窪み内に位置していることを特徴とする請求項3に記載の電解めっき装置。
【請求項5】
前記基板ホルダは、前記基板を挟むための第1保持部材および第2保持部材を備えており、
前記第2保持部材には、前記基板の被めっき面を露出させるための開口部が形成されており、
前記ワイヤレス受電器は、前記第2保持部材内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電解めっき装置。
【請求項6】
前記ワイヤレス送電器は少なくとも1つの送電コイルを備え、前記ワイヤレス受電器は少なくとも1つの受電コイルを備えていることを特徴とする請求項1に記載の電解めっき装置。
【請求項7】
前記ワイヤレス送電器は複数の送電コイルを備え、前記ワイヤレス受電器は複数の受電コイルを備えていることを特徴とする請求項6に記載の電解めっき装置。
【請求項8】
前記送電コイルおよび前記受電コイルは鉛直姿勢で配置されていることを特徴とする請求項6に記載の電解めっき装置。
【請求項9】
前記送電コイルおよび前記受電コイルは水平姿勢で配置されていることを特徴とする請求項6に記載の電解めっき装置。
【請求項10】
めっき液を保持可能なめっき槽と、
前記めっき槽内に配置されたアノードと、
前記めっき槽内に配置された基板ホルダと、
直流電圧を高周波電圧に変換するDC−RF変換器と、
前記DC−RF変換器に接続された電源と、
前記電源に接続されたワイヤレス送電器を備え、
前記DC−RF変換器は、前記アノードに接続されていることを特徴とする電解めっき装置。
【請求項11】
めっき液を保持可能なめっき槽と、
前記めっき槽内に配置されたアノードと、
前記めっき槽内に配置された基板ホルダと、
直流電圧を高周波電圧に変換するDC−RF変換器と、
前記DC−RF変換器に接続された電源と、
前記電源に接続されたワイヤレス送電器を備え、
前記DC−RF変換器は、前記アノードに接続されており、
前記ワイヤレス送電器は複数の送電コイルを備えていることを特徴とする電解めっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの基板とアノードとの間に電圧を印加することにより基板をめっきする電解めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造では、ウェーハなどの基板に金属(例えば銅)を堆積させるために、電解めっき装置が使用されている。電解めっき装置は、一般に、めっきすべき基板を保持した基板ホルダをめっき槽内のめっき液中に浸漬させ、アノードと基板との間に電圧を印加することにより、基板をめっきするように構成される。電源の負極に接続された配線には給電端子が接続され、基板ホルダは、この給電端子に電気的に接続される外部電気接点を有している。さらに、基板ホルダは、基板の導電層(例えばシード層)に接触する内部電気接点を有している。
【0003】
基板が基板ホルダに保持されると、内部電気接点は基板の導電層に接触し、これによって基板は基板ホルダに電気的に接続される。さらに、基板ホルダがめっき槽に置かれると、基板ホルダの外部電気接点は給電端子に接触し、基板ホルダは電源の負極に電気的に接続される。基板は、基板ホルダを介して電源の負極に電気的に接続されるので、電源はアノードと基板との間に電圧を印加することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−193935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した各電気接点は、薄い金属板から構成されており、給電端子または基板に接触しやすいように短冊状となっている。このため、電気接点に過度な力が加わると、変形したり、場合によっては破損することがある。また、基板ホルダを繰り返し使用すると、電気接点が疲労により破損するおそれもある。さらに、導電性を高めるために、電気接点の金属板は金でめっきされており、高価なものとなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、電源と基板との電気的接続を、物理的な接触なく確立することができる電解めっき装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、めっき液を保持可能なめっき槽と、前記めっき槽内に配置されたアノードと、基板に接触可能な電気接点を有する基板ホルダと、前記アノードに接続された電源と、前記電源に接続されたワイヤレス送電器と、前記基板ホルダに取り付けられ、かつ前記電気接点に電気的に接続されたワイヤレス受電器とを備えたことを特徴とする電解めっき装置である。
【0008】
本発明の好ましい態様は、前記ワイヤレス送電器は、前記めっき槽の外に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ワイヤレス送電器は、送電コイルを備えており、前記送電コイルは、前記めっき槽内に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基板ホルダには窪みが形成されており、前記送電コイルは前記窪み内に位置していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基板ホルダは、前記基板を挟むための第1保持部材および第2保持部材を備えており、前記第2保持部材には、前記基板の被めっき面を露出させるための開口部が形成されており、前記ワイヤレス受電器は、前記第2保持部材内に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記ワイヤレス送電器は少なくとも1つの送電コイルを備え、前記ワイヤレス受電器は少なくとも1つの受電コイルを備えていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ワイヤレス送電器は複数の送電コイルを備え、前記ワイヤレス受電器は複数の受電コイルを備えていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記送電コイルおよび前記受電コイルは鉛直姿勢で配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記送電コイルおよび前記受電コイルは水平姿勢で配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の一参考例は、めっき液を保持可能なめっき槽と、前記めっき槽内に配置されたアノードと、前記めっき槽内に配置された基板ホルダと、前記めっき槽の外部に配置された金属板と、前記アノードおよび前記金属板に接続された電源を備えたことを特徴とする電解めっき装置である。
本発明の一参考例は、めっき液を保持可能なめっき槽と、前記めっき槽内に配置されたアノードと、前記めっき槽内に配置された基板ホルダと、前記基板ホルダ内に配置された金属板と、前記アノードおよび前記金属板に接続された電源を備えたことを特徴とする電解めっき装置である。
本発明の他の態様は、めっき液を保持可能なめっき槽と、前記めっき槽内に配置されたアノードと、前記めっき槽内に配置された基板ホルダと、直流電圧を高周波電圧に変換するDC−RF変換器と、前記DC−RF変換器に接続された電源と、前記電源に接続されたワイヤレス送電器を備え、前記DC−RF変換器は、前記アノードに接続されていることを特徴とする電解めっき装置である。
本発明の他の態様は、めっき液を保持可能なめっき槽と、前記めっき槽内に配置されたアノードと、前記めっき槽内に配置された基板ホルダと、直流電圧を高周波電圧に変換するDC−RF変換器と、前記DC−RF変換器に接続された電源と、前記電源に接続されたワイヤレス送電器を備え、前記DC−RF変換器は、前記アノードに接続されており、前記ワイヤレス送電器は複数の送電コイルを備えていることを特徴とする電解めっき装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、めっき槽側のワイヤレス送電器と、基板ホルダ側のワイヤレス受電器によって電源と基板との電気的接続が確立される。よって、電気接点の数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ウェーハなどの基板をめっきするための電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
図2】基板ホルダに配置された受電コイルを示す図である。
図3】電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
図4】電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
図5】電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
図6図5に示す基板ホルダの断面図である。
図7図5に示すめっき槽の断面図である。
図8】電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
図9】電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
図10】基板ホルダに配置された受電コイルを示す図である。
図11】電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
図12】電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
図13】電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
図14】電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
図15】電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
図16】電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
図17】電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ウェーハなどの基板をめっきするための電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示すように、電解めっき装置は、めっき液を内部に保持可能なめっき槽1と、めっき槽1内に配置されたアノード5と、基板Wに接触可能な電気接点21,22を有する基板ホルダ7を備えている。めっき液中には、金属源となる金属イオンと、めっきの促進剤、抑制剤、レベラーなどの添加剤が含まれる。本実施形態では、アノード5および基板ホルダ7は鉛直姿勢でめっき槽1内に配置され、基板ホルダ7に保持された基板Wはめっき液中に浸漬される。本実施形態では、基板Wは円形である。一実施形態では、基板Wは四角形であってもよい。
【0014】
ウェーハなどの基板Wは、その表面が露出した状態で基板ホルダ7に保持される。基板ホルダ7は、トランスポータ(図示せず)によってめっき槽1に搬送され、図1に示すように、めっき槽1内に鉛直姿勢で配置される。基板ホルダ7に保持された基板Wと、アノード5は、めっき槽1内で互いに対向している。
【0015】
基板Wの被めっき面は、シード層などの導電層から構成されている。基板ホルダ7は、基板Wを挟むことができる第1保持部材11および第2保持部材12を有している。基板Wは第1保持部材11に支持され、第2保持部材12によって第1保持部材11に押し付けられる。第2保持部材12には、基板Wの被めっき面を露出させるための開口部12aが形成されている。基板Wが第1保持部材11および第2保持部材12によって保持されるとき、基板Wの被めっき面は開口部12aを通じて露出する。よって、被めっき面はめっき槽1内のめっき液に接触することができる。
【0016】
第2保持部材12は、基板Wの被めっき面のエッジ部に接触する第1シール突起14と、第1保持部材11に接触する第2シール突起15とを有している。第1シール突起14および第2シール突起15は、無端形状を有している。基板Wが第1保持部材11と第2保持部材12とによって保持されるとき、第1シール突起14は基板Wの被めっき面のエッジ部に押し付けられ、第2シール突起15は第1保持部材11に押し付けられる。第2保持部材12と基板Wとの間の隙間は、第1シール突起14によってシールされ、第1保持部材11と第2保持部材12との間の隙間は、第2シール突起15によってシールされる。その結果、基板ホルダ7の内部には密閉空間が形成される。
【0017】
基板ホルダ7は、上記密閉空間内に配置された複数の第1電気接点21および複数の第2電気接点22を有している。これら第1電気接点21および第2電気接点22は、基板Wの外縁部に沿って等間隔に配列されている。第1電気接点21は第1保持部材11に固定され、第2電気接点22は第2保持部材12に固定されている。基板Wが第1保持部材11と第2保持部材12とによって保持されるとき、複数の第2電気接点22は複数の第1電気接点21にそれぞれ接触し、かつ基板Wの被めっき面に接触する。これによって、基板Wの被めっき面を構成する導電層(例えばシード層)は、第1電気接点21および第2電気接点22と電気的に接続される。
【0018】
電解めっき装置は、直流電源25と、直流電源25に接続されたワイヤレス送電器41と、基板ホルダ7に取り付けられたワイヤレス受電器51とをさらに備えている。アノード5は直流電源25の正極に配線26を介して電気的に接続されており、ワイヤレス送電器41は直流電源25の負極に配線46を介して電気的に接続されている。ワイヤレス送電器41およびワイヤレス受電器51は、ワイヤレス送電器41からワイヤレス受電器51に非接触で電力を送ることができるワイヤレス給電システムである。本実施形態では、ワイヤレス送電器41はめっき槽1に取り付けられ、ワイヤレス受電器51は基板ホルダ7内に組み込まれている。
【0019】
ワイヤレス送電器41は、DC−RFドライバ43と、送電コイル44とを備えている。本実施形態では、DC−RFドライバ43および送電コイル44は、めっき槽1の外に配置されている。送電コイル44はめっき槽1の側壁1aの外面に固定されている。DC−RFドライバ43は、直流電源25の負極に配線46によって電気的に接続され、さらに送電コイル44に配線47によって電気的に接続されている。DC−RFドライバ43は、直流電源25から印加される直流電圧を高周波電圧に変換し、この高周波電圧を送電コイル44に印加するように構成されている。
【0020】
ワイヤレス受電器51は、RF−DC整流器53と、受電コイル54とを備えている。本実施形態では、RF−DC整流器53および受電コイル54は、基板ホルダ7の第1保持部材11内に配置されている。RF−DC整流器53は、基板ホルダ7の第1電気接点21に配線56によって電気的に接続され、さらに受電コイル54に配線57によって電気的に接続されている。RF−DC整流器53は、受電コイル54が発生した高周波電圧を直流電圧に変換し、この直流電圧を第1電気接点21に印加するように構成されている。
【0021】
図2は、基板ホルダ7に配置された受電コイル54を示す図である。図2に示すように、受電コイル54は1つの円環状コイルである。受電コイル54は、他の形状を有してもよい。例えば、基板Wが四角形であれば、受電コイル54も四角形を有してもよい。受電コイル54は、基板ホルダ7によって完全に覆われており、めっき液が受電コイル54に接触しないようになっている。受電コイル54のサイズは、基板Wのサイズと同じか、あるいは異なってもよい。送電コイル44のサイズは、受電コイル54と同じか、あるいは異なってもよい。
【0022】
送電コイル44および受電コイル54は、隙間を介して互いに向き合っている。送電コイル44および受電コイル54は同心状に配置されている。本実施形態では、送電コイル44および受電コイル54は、鉛直姿勢である。送電コイル44および受電コイル54は、互いに物理的に非接触であるが、以下に説明するように送電コイル44に高周波電圧を印加すると、受電コイル54に高周波電圧が誘起される。めっき槽1外に配置された送電コイル44と、めっき槽1内に配置された受電コイル54との距離は、受電コイル54が基板Wのめっきに有効な電力を発生することができる距離とされる。
【0023】
基板Wのめっきは次のようにして行われる。めっきすべき基板Wを保持した基板ホルダ7は、トランスポータ(図示せず)によってめっき槽1に搬送され、図1に示すように、めっき槽1内のめっき液中に浸漬される。アノード5および基板Wの被めっき面がめっき液に接触している状態で、直流電源25はアノード5およびワイヤレス送電器41に直流電圧を印加する。DC−RFドライバ43は、直流電源25から印加される直流電圧を高周波電圧に変換し、この高周波電圧を送電コイル44に印加する。送電コイル44と受電コイル54との間には電磁界が形成され、受電コイル54には高周波電圧が誘起される。
【0024】
RF−DC整流器53は、受電コイル54が発生した高周波電圧を直流電圧に変換し、この直流電圧を基板ホルダ7の第1電気接点21に印加する。第1電気接点21と第2電気接点22は接触しており、第2電気接点22は基板Wの被めっき面に接触している。したがって、基板Wには直流電圧が印加される。基板ホルダ7に保持された基板Wの露出面は、めっき液の存在下でめっきされる。基板Wのめっきが終了した後、基板ホルダ7は、トランスポータ(図示せず)によってめっき槽1から取り出され、次の工程に搬送される。
【0025】
ワイヤレス送電器41およびワイヤレス受電器51としては、公知のワイヤレス給電システムを使用することができる。例えば、直流共鳴方式、電磁誘導方式、磁気共鳴方式、マイクロ波(電磁波)方式などの公知のワイヤレス給電システムを使用することができる。磁気共鳴方式は、給電側、受電側の双方で共振回路を用い、交流電流を用いた給電側からの電磁界に受電側を共鳴させる方式である。これにより、空間を隔てた受電側に電力を供給することができる。また、直流共鳴方式のワイヤレス給電システムは、給電側、受電側の双方で共振回路を用い、給電側の直流電圧から発生させた電磁界に受電側の共鳴を起こすことで、空間を隔てた受電側に電力を供給する方式である。
【0026】
ワイヤレス送電器41およびワイヤレス受電器51は、直流電源25と基板Wとの電気的接続を物理的接触なく確立することができる。よって、上述した本実施形態は、従来必要であった、給電端子と基板ホルダ7との電気接点をなくすことが可能である。結果として、基板ホルダ7を繰り返し使用した後であっても、所望の電圧を基板Wに印加することが可能となる。
【0027】
図3は、電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図3に示すように、ワイヤレス受電器51は、基板ホルダ7の第2保持部材12内に配置されている。より具体的には、RF−DC整流器53および受電コイル54は、基板ホルダ7の第2保持部材12内に配置されている。
【0028】
本実施形態によれば、基板ホルダ7の第1保持部材11と第2保持部材12とを電気的に接続するための第1電気接点21が不要である。よって、本実施形態では、第2電気接点22を単に電気接点22という。この電気接点22は、RF−DC整流器53に配線56によって接続されている。受電コイル54に誘起された高周波電圧は、RF−DC整流器53によって直流電圧に変換され、直流電圧は配線56および電気接点22を介して基板Wに印加される。本実施形態によれば、第1電気接点21が不要であるので、電気接点間の接触不良に起因するめっき不良が軽減できる。
【0029】
図4は、電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図4に示すように、ワイヤレス送電器41の送電コイル44は、めっき槽1内に配置されている。より具体的には、送電コイル44は、めっき槽1の側壁1aの内面に固定されている。送電コイル44は、シールカバー60によって液密的に覆われており、めっき槽1内のめっき液が送電コイル44に接触しないようになっている。シールカバー60は、めっき槽1の側壁1aの一部から構成してもよい。
【0030】
DC−RFドライバ43は、上述の実施形態と同じように、めっき槽1の外に配置されている。DC−RFドライバ43と送電コイル44とは配線47により電気的に接続されている。本実施形態によれば、送電コイル44と受電コイル54との間の距離を短くすることができる。よって、伝送効率が向上され、基板Wのめっきに有効な電圧を確実に受電コイル54に誘起させることができる。
【0031】
図5は、電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図4に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図5に示すように、送電コイル44の外径は、受電コイル54の内径よりも小さく、送電コイル44は受電コイル54の半径方向内側に配置されている。本実施形態では、送電コイル44および受電コイル54は同一平面上であって、かつ同心状に配置されている。
【0032】
図6は、図5に示す基板ホルダ7の断面図であり、図7は、図5に示すめっき槽1の断面図である。基板ホルダ7の第1保持部材11の背面には窪み63が形成されている。この窪み63は、受電コイル54の半径方向内側に位置している。窪み63の大きさは、図7に示すシールカバー60の大きさよりも大きく、シールカバー60は窪み63内に挿入可能となっている。シールカバー60は送電コイル44を完全に覆う形状を有しており、送電コイル44はシールカバー60内に配置されている。本実施形態では、シールカバー60は円筒形であり、シールカバー60の外径は、受電コイル54の内径よりも小さい。図5は、送電コイル44およびシールカバー60が窪み63の内部に位置している状態、すなわち送電コイル44が受電コイル54の内側に位置している状態を示している。
【0033】
基板ホルダ7は次のようにしてめっき槽1内にセットされる。基板ホルダ7は、トランスポータ(図示せず)によってめっき槽1の上方位置まで搬送され、さらにめっき槽1内に下降される。次いで、送電コイル44が受電コイル54の内側に位置するまで、トランスポータは基板ホルダ7をワイヤレス送電器41に向かって横方向に移動させ、送電コイル44およびシールカバー60を基板ホルダ7の窪み63内に挿入する。基板ホルダ7をめっき槽1から取り出すときは、基板ホルダ7をワイヤレス送電器41から離れる方向に横方向に移動させ、次いで、基板ホルダ7がめっき槽1から引き上げられる。
【0034】
図8は、電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図7に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図8に示すように、本実施形態では、送電コイル44の内径は、受電コイル54の外径よりも大きく、送電コイル44は受電コイル54の半径方向外側に配置されている。基板ホルダ7の第1保持部材11の背面には、環状の窪み63が形成されている。この窪み63は、受電コイル54の半径方向外側に位置している。送電コイル44およびシールカバー60は、この窪み63内に配置される。本実施形態でも、送電コイル44および受電コイル54は同一平面上であって、かつ同心状に配置される。
【0035】
図4乃至図8に示す実施形態によれば、送電コイル44および受電コイル54の両方は、めっき槽1内に配置されるので、送電コイル44と受電コイル54との間の距離を短くすることができる。よって、伝送効率が向上され、基板Wのめっきに有効な電圧を確実に受電コイル54に誘起させることができる。
【0036】
図9は、電解めっき装置の一実施形態を示す模式図であり、図10は基板ホルダ7に配置された受電コイル54を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、複数の送電コイル44および複数の受電コイル54が設けられている。送電コイル44の数と受電コイル54の数は同じである。送電コイル44および受電コイル54は、共通の中心線(想像線)の周りに等間隔に配置されており、送電コイル44および受電コイル54は互いに向き合っている。
【0037】
DC−RFドライバ43は1つであるが、RF−DC整流器53は複数設けられている。RF−DC整流器53の数は、受電コイル54の数と同じである。送電コイル44の数、受電コイル54の数、およびRF−DC整流器53の数は、第1電気接点21の数(すなわち第2電気接点22の数)と同じである。受電コイル54およびRF−DC整流器53は、基板ホルダ7の第1保持部材11に配置されている。図3に示す実施形態のように、受電コイル54およびRF−DC整流器53は、基板ホルダ7の第2保持部材12に配置されてもよい。複数の受電コイル54は、複数のRF−DC整流器53に複数の配線57によってそれぞれ接続されており、複数のRF−DC整流器53は複数の第1電気接点21に複数の配線56によってそれぞれ接続されている。
【0038】
本実施形態においても、複数の送電コイル44と、対応する複数の受電コイル54との間には電磁界が形成され、受電コイル54には高周波電圧が誘起される。RF−DC整流器53は、受電コイル54が発生した高周波電圧を直流電圧に変換し、この直流電圧を基板ホルダ7の第1電気接点21に印加する。第1電気接点21と第2電気接点22は接触しており、第2電気接点22は基板Wの被めっき面に接触している。したがって、基板Wには直流電圧が印加される。
【0039】
本実施形態によれば、複数の送電コイル44および複数の受電コイル54が使用されるので、電気接点21,22への電流値の均一化が達成され、ひいては均一な膜を基板W上に形成することができる。
【0040】
図11は、電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、基板ホルダ7は水平にめっき槽1に配置される。このようなめっき装置は、基板Wの被めっき面が下方を向くフェースダウンタイプと呼ばれる。このフェースダウンタイプのめっき装置では、第2保持部材12のサイズを上方に大きくすることによって、第2シール突起15を省略してもよい。
【0041】
図11に示すように、アノード5は、めっき槽1の底部の近傍に配置されている。アノード5は、アノードホルダ66に保持された状態で、めっき槽1内に水平に配置されている。アノードホルダ66の上端はめっき槽1の上端に固定されており、アノードホルダ66の下端はアノード5に接続されている。本実施形態では、複数のアノードホルダ66が設けられているが、1つのアノードホルダ66のみを設けてもよい。直流電源25の正極は、アノードホルダ66内を延びる配線26を通じてアノード5に電気的に接続されている。
【0042】
本実施形態では、送電コイル44および受電コイル54は、基板Wと同様に水平に配置されている。送電コイル44および受電コイル54は、隙間を介して互いに向き合っている。本実施形態でも、送電コイル44および受電コイル54は同心状に配置されている。受電コイル54およびRF−DC整流器53は、基板ホルダ7の第1保持部材11に配置されている。図3に示す実施形態のように、受電コイル54およびRF−DC整流器53は、基板ホルダ7の第2保持部材12に配置されてもよい。
【0043】
送電コイル44は、めっき槽1内に設置された基板ホルダ7の直上に配置されており、図示しない移動機構によって支持されている。基板ホルダ7をめっき槽1に設置するとき、および基板ホルダ7をめっき槽1から取り出すときは、送電コイル44は上記移動機構によってめっき槽1から離れる方向に移動され、基板Wをめっきするときは、送電コイル44が上記移動機構によって基板ホルダ7の上方位置に移動される。
【0044】
図12は、電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図11に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、送電コイル44は、めっき槽1の周囲に配置されている。より具体的には、送電コイル44は、めっき槽1内に設置された基板ホルダ7の周りに配置される。送電コイル44および受電コイル54は同一平面上であって、かつ同心状に配置される。本実施形態では、送電コイル44を移動させるための上記移動機構は不要である。
【0045】
図13は、電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図12に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態は、基板ホルダ7は水平にめっき槽1に配置される点で図12に示す実施形態と同じであるが、ワイヤレス受電器51は、基板ホルダ7の第2保持部材12内に配置されている点で異なっている。ワイヤレス受電器51および基板ホルダ7の構成は図3に示す実施形態と同じである。すなわち、RF−DC整流器53および受電コイル54は、基板ホルダ7の第2保持部材12内に配置されている。本実施形態によれば、基板ホルダ7の第1保持部材11と第2保持部材12とを電気的に接続するための第1電気接点21が不要である。
【0046】
図14は、電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、ワイヤレス送電器41およびワイヤレス受電器51に代えて、金属板70が設けられている。金属板70は、めっき槽1の外に配置されており、基板ホルダ7と基板Wは、アノード5と金属板70との間に配置されている。本実施形態では、金属板70は、めっき槽1の側壁1aの外面に固定されている。金属板70は、配線71を通じて直流電源25の負極に電気的に接続されている。金属板70は鉛直姿勢で配置されており、基板Wと同じか、または基板Wよりも大きなサイズを有している。金属板70は、例えば、銅から構成されている。本実施形態の電解めっき装置は、上述した実施形態におけるワイヤレス送電器41およびワイヤレス受電器51に相当する装置を備えていない。
【0047】
基板Wの被めっき面は、シード層などの導電層74から構成されている。直流電源25がアノード5および金属板70に直流電圧を印加すると、金属板70と導電層74はキャパシタとして機能し、導電層74には直流電圧が誘起される。結果として、直流電源25と基板Wとは物理的接触がない状態で電気的に接続される。本実施形態によれば、基板Wと直流電源25とを電気的に接続するための電気接点を基板ホルダ7に設けることが不要となる。本実施形態では、基板Wに接する電気接点が不要であるので、第1シール突起14および第2シール突起15を省略してもよい。また、本実施形態は、直流電源25の電圧の正負を切り替えながら基板をめっきするPRめっきに適用可能である。
【0048】
図15は、電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図14に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、金属板70は基板ホルダ7の内部に配置されている。より具体的には、金属板70は、基板ホルダ7の第1保持部材11の内部に配置されている。金属板70は、第1保持部材11によって液密的に完全に覆われている。本実施形態でも、直流電源25と基板Wとを物理的接触がない状態で電気的に接続することができるので、電気接点を不要とすることができる。
【0049】
図16は、電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態は、高周波電流をカソード側のコイルに通電することで導電材に高周波の渦電流が発生する現象を利用して基板をめっきする方法である。DC−RFドライバ43および送電コイル44は、めっき槽1の外に配置されており、送電コイル44はめっき槽1の側壁1aの外面に固定されている。DC−RFドライバ43は、直流電源25の負極に配線46によって電気的に接続され、さらに送電コイル44に配線47によって電気的に接続されている。直流電源25の正極は、DC−RF変換器75に配線26を通じて接続され、さらにDC−RF変換器75は配線26を通じてアノード5に接続されている。DC−RF変換器75は、直流電源25から印加される直流電圧を高周波電圧に変換し、この高周波電圧をアノード5に印加するように構成されている。
【0050】
DC−RFドライバ43が高周波電圧を送電コイル44に印加すると、送電コイル44は高周波磁界を発生し、基板Wのシード層などの導電層74に渦電流が発生する。渦電流によって導電層74に発生する電圧は、直流電源25の出力電圧によって変えることができる。本実施形態では、基板Wに接する電気接点が不要であるので、第1シール突起14および第2シール突起15を省略してもよい。
【0051】
図17は、電解めっき装置の一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図16に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態に係る電解めっき装置は、複数のDC−RFドライバ43と、複数の送電コイル44とを備えている。複数の送電コイル44は、複数のDC−RFドライバ43に配線47によってそれぞれ電気的に接続されている。この実施形態においても、DC−RFドライバ43が高周波電圧を送電コイル44に印加すると、送電コイル44は高周波磁界を発生し、基板Wのシード層などの導電層74に渦電流が発生する。よって、本実施形態では、基板Wに接する電気接点が不要である。
【0052】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 めっき槽
5 アノード
7 基板ホルダ
11 第1保持部材
12 第2保持部材
12a 開口部
14 第1シール突起
15 第2シール突起
21 第1電気接点
22 第2電気接点
25 直流電源
26 配線
41 ワイヤレス送電器
43 DC−RFドライバ
44 送電コイル
46 配線
47 配線
51 ワイヤレス受電器
53 RF−DC整流器
54 受電コイル
56 配線
57 配線
60 シールカバー
63 窪み
70 金属板
71 配線
74 導電層
75 DC−RF変換器
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17