特許第6709918号(P6709918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709918
(24)【登録日】2020年5月28日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】ロゴスキ型電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
   G01R15/18 A
【請求項の数】19
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-529943(P2017-529943)
(86)(22)【出願日】2016年7月22日
(86)【国際出願番号】JP2016071542
(87)【国際公開番号】WO2017014297
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-145674(P2015-145674)
(32)【優先日】2015年7月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】大村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】附田 正則
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−130571(JP,A)
【文献】 特開2005−303798(JP,A)
【文献】 特開2009−124086(JP,A)
【文献】 特開2003−050254(JP,A)
【文献】 特開2009−004801(JP,A)
【文献】 特開2013−160638(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0167740(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 15/00−17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記最初のコイルの巻き始め側端子と前記復線路の端子との間に誘起される電圧を前記閉じた線の内部に挿通される被測定回路の電流の関数として検出するロゴスキ型電流センサにおいて、
前記複数のコイルを構成する各コイルが、前記閉じた線に直交する平面上に形成され、隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始め間が、前記閉じた線に並行する往線路により接続され、前記往線路全体と前記復線路とが、近接して配置されていることを特徴とするロゴスキ型電流センサ。
【請求項2】
複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記最初のコイルの巻き始め側端子と前記復線路の端子との間に誘起される電圧を前記閉じた線の内部に挿通される被測定回路の電流の関数として検出するロゴスキ型電流センサにおいて、
前記複数のコイルを構成する各コイルは、前記閉じた線に直交する平面に投影したときに矩形となる形状で形成され、当該各コイルのうち前記復線路から離隔した3辺は前記閉じた線に直交する平面上に形成され、残りの1辺は次のコイルと接続するように斜めに形成された往線路であり、前記コイル全体において前記斜めの辺が形成する面は前記閉じた線が作る面と平行でかつ前記復線路と近接して配置されていることを特徴とするロゴスキ型電流センサ。
【請求項3】
前記各コイルは、中央に被測定回路を挿通する穴を有し、少なくとも3層の導電パターン層を有する環状基板の異なる2層に形成された第1コイルパターン及び第2コイルパターンと、これらの第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホールとによって形成され、
前記往線路は、前記3層のうちいずれかの層に形成され、
前記復線路は、前記往線路に近接した、当該往線路とは異なる層に形成された請求項1記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項4】
前記往線路は、前記第1コイルパターンと同じ層に形成され、
前記復線路は、前記往線路と近接した、前記第1コイルパターンおよび第2コイルパターンとは異なる層に形成された請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項5】
前記復線路は、前記第1コイルパターンおよび前記第2コイルパターンの間にある層に形成された請求項4記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項6】
前記最後のコイルの前記第1コイルパターンのうち、前記復線路と接続された第1コイルパターンは、前記第2コイルパターンと接続された前記スルーホールから、前記復線路と同じ層に配線された請求項3から5のいずれかの項に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項7】
前記ロゴスキ型電流センサにおいて、前記閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっている請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項8】
前記コイルと前記復線路とのいずれか一方が接続された第1の電極パッドが中心にありその両側に他方が接続された第2の電極パッドがある請求項3に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項9】
前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとに、コネクタが接続された請求項8記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項10】
前記環状基板の、前記コイル、往線路、または復線路が形成されていない部分に、前記被測定回路を前記環状基板の穴に挿通するための切り込みを設けた請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項11】
前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かってまで配線され、前記コイル群に接続された前記復線路が第2の電極パッドまで配線された請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項12】
前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群は、第1のコイル群と第2のコイル群とに分割され、
前記第1のコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かってまで配線され、前記第1のコイル群に接続された前記復線路が前記切り込みに向かって配線され、前記復線路に接続された前記第2のコイル群が第2の電極パッドまで配線された請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項13】
前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群は、第1のコイル群と第2のコイル群に分割され、
前記復線路は、第1の線路と第2の線路に分割され、
前記第1のコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かって配線され、前記第1のコイル群に接続された前記第1の線路が前記第1の電極パッドの位置まで配線され、前記第1の線路に接続された前記第2のコイル群が前記切り込みに向かって配線され、前記第2のコイル群に接続された前記第2の線路が第2の電極パッドまで配線された請求項10記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項14】
前記複数のコイルのコイル間隔が等間隔である請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項15】
アンプ回路が前記環状基板に搭載されている請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項16】
前記環状基板はノイズシールドで覆われている請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項17】
前記ノイズシールドは、前記各コイルが形成された内層より外側のそれぞれの外層に形成された第1の導電パターンおよび第2の導電パターンを備えた請求項16に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項18】
前記ノイズシールドは、更に、前記第1の導電パターンおよび前記第2の導電パターンが形成された層間を貫通し、前記コイルの内周側と外周側との両方に、円周方向に沿って形成された第1のスルーホールおよび第2のスルーホールを備え、
前記第1の導電パターンと、前記第1のスルーホールと、前記第2の導電パターンと、前記第2のスルーホールとによるループの形成を回避するために、前記ループに非接続部が形成された請求項17に記載のロゴスキ型電流センサ。
【請求項19】
前記環状基板をパワー半導体チップまたはパワー半導体モジュールに搭載する場合に、前記環状基板が、前記パワー半導体チップまたはパワー半導体モジュールと接続する電極、導電部およびボンディングワイヤを取り囲むように構成されている請求項3記載のロゴスキ型電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用半導体デバイス、特にIGBTとよばれる、1kW以上の電気機器および電子機器の電源やインバータ等に広く使われているデバイスを用いたパワーモジュールおよび圧接パッケージ内の電流分布を測定するロゴスキ型電流センサに関し、特に外部磁界の影響を受けにくく、また量産性に富む超小型ロゴスキ型電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
IGBTの市場は、産業機器向け、車載機器向け、民生機器向けの3分野に大きく分けられる。産業機器向けで大きいのは、電車や産業ロボット、工作機械のモータ制御インバータ用途である。車載機器向けでも、ハイブリッド自動車の駆動用モータとカー・エアコン制御用のインバータ用途が多い。民生機器ではカメラのストロボ向けとエアコンのインバータ用途が主流である。特にハイブリッド自動車や電気自動車におけるIGBT需要により市場は拡大している。
【0003】
電流の大きさを検出するセンサとして、従来より、リング状鉄心にコイルを巻いて鉄心の中心を貫通する電流を検出するCT(電流変成器)が用いられているが、鉄心を用いているために小型化できないこと、また磁気飽和により大電流の測定には誤差が大きくなるなどの欠点がある。これに対して、ロゴスキーコイルを用いた電流センサでは、空芯であるため磁気飽和がなく、また小型化ができるという利点がある。IGBT等の、高集積化、大電流化が進んでいるパワーデバイスにおいては、ロゴスキ型電流センサは好適と考えられている。
ロゴスキーコイルは、複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに、前記閉じた線に沿った1ターン分の巻線を相殺するため、前記閉じた線に並行した復線路を有し、複数のコイルのうちの最初のコイルの巻き始め側端子と、前記復線路の端子とを出力端子とするものである。このロゴスキーコイルを電流センサとして用いることが、特許文献1〜4に記載されている。
【0004】
特許文献5には、導電体または導電ワイヤが非磁性コアの周囲に巻かれて構成され、その内部に被測定導体が配置され、導電ワイヤは非磁性コアの断面の中心を通過するラインに対して直角方向に沿って巻き込まれたロゴスキ型コイルが記載されている。
【0005】
特許文献6には、送変電機器の主回路交流電流を検出し、その交流電流量をアナログ電圧信号として出力するロゴスキ型コイルと、前記アナログ電圧信号をデジタル電気信号に変換するアナログ/デジタル変換器、そのデジタル電気信号をデジタル光信号に変換する電気/光変換器とを有するセンサユニットと、前記デジタル光信号を上位システムに伝送する光伝送手段とを有し、前記ロゴスキ型コイルは、中央に導体が貫通する開口部を有する4層のプリント基板であって、その両外側の基板面と内層の2層とに前記開口部の中心を略中心としてそれぞれ放射状に延びる複数本の金属箔が形成され、一方の基板面の金属箔と前記内層の2層のうち隣接する内層の金属箔との間、及び、他方の基板面の金属箔と前記内層の2層のうち隣接する内層の金属箔との間を、それぞれプリント基板を厚さ方向に貫通するメッキを施した穴により電気的に接続することにより互いに鏡像関係にある2つの巻線を形成し、前記2つの互いに鏡像関係にある巻線を直列に接続した変流器が記載されている。
【0006】
特許文献7には、第1のコイルと、前記第1のコイルと直列に接続された第2のコイルと、を備え、前記第1及び第2のコイルの間または、前記第1及び第2のコイルのいずれかの近傍に配置された被測定体を流れる電流を検出可能とした電流検出装置であって、前記第1及び第2のコイルのそれぞれは、基板の表面に設けられた第1の導体パターンと、前記基板の裏面に設けられた第2の導体パターンと、前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとを接続する接続部と、からなる電流検出装置が記載されている。
【0007】
特許文献8には、多層印刷回路基板の上部層に第一の導電トレースを、底部層に第二のトレースを設け、基板に対して横方向に広がるコイル形状に形成したセンサが記載されている。
【0008】
特許文献9には、複数のプリント回路基板にそれぞれ渦巻状のコイルを形成し、各プリント基板のコイルをスルーホールにより接続した多層化コイルが記載されている。
【0009】
非特許文献1には、プリント基板を用いない配線によるロゴスキーコイルの例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−285112号公報
【特許文献2】特許第2932332号公報
【特許文献3】特許第4129932号公報
【特許文献4】特開2007−292526号公報
【特許文献5】米国特許第6313623号明細書
【特許文献6】特開2003−130894号公報
【特許文献7】特開2003−315373号公報
【特許文献8】米国特許第6380727号明細書
【特許文献9】米国特許第6680608号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】C. Hewson, WR Ray, "The effect of electrostatic screening of Rogowski coils designed for wide-bandwidth current measurement in power electronic applications," 2004 35th Annual IEEE Power Electronics Specialists Conference.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前掲の特許文献1〜5に記載された電流センサは、nターンの円形のコイルを環状に曲げて形成したロゴスキーコイルが用いられている。
ロゴスキーコイルの利点は、コイルの中心部を通る電流は検出し、コイルの外部の電流は検出しないため、ノイズに強いことである。しかし、これは複数の円形のコイルを均等間隔で巻いた場合であり、現実にはコイルの間隔にバラつきがあると、外部ノイズを拾ってしまい、ノイズの影響が無視できなくなる。
【0013】
前掲の特許文献6〜9に記載された電流センサは、コイルを複数のプリント基板で形成したロゴスキーコイルが用いられており、プリント基板に均等にコイルを形成することにより、そのようなノイズの発生を低減できる利点がある。また、円形コイルに比べて、コイルを小型化できる利点もある。
【0014】
ここで、ロゴスキーコイルとして、円形コイルを用いた場合と、プリント配線により矩形コイルを形成した場合の外部磁界による誤差について説明する。
【0015】
図21A図21Cは円形コイルを示すものであり、図21Aは斜視図、図21Bは上方から見た図、図21Cは側方から見た図である。図中21は円形コイルの往線路、22は復線路であり、実際は往線路21、復線路22とも、環状であるが、説明の簡略化のために直線状に記載している。図21Bおよび図21Cに示されているように、電流経路に近い側の磁束が通過するエリアの面積S1と、電流経路から遠い側の磁束が通過するエリアの面積S2とにより、次の関係が導かれる。
電流経路に近い側の面積S1のエリアで誘起される電圧は以下の関係式で導かれる。
ここで、V1は誘起される電圧、B1は磁束密度、S1は往復線路が形成する面積である。
電流経路から遠い側の面積S2のエリアで誘起される電圧は以下の関係式で導かれる。
ここで、V2は誘起される電圧、B2は磁束密度、S2は往復線路が形成する面積である。
図21A図21Cのコイルの場合は上から見ても横から見てもS1=S2であるので、電流経路が遠方の場合はB1=B2と仮定すればV=V1+V2=0になり、誘起される電圧がない理想的な状態になる。
電流経路が近い場合はS1=S2であるが、B1≠B2であるので電圧が誘起されノイズとして影響する。
【0016】
図22A図22Cは、プリント配線基板で矩形のロゴスキーコイルを形成した例を示すものであり、図22Aは斜視図、図22Bは上方から見た図、図22Cは側方から見た図である。この例では、矩形の3辺は傾斜した同一平面上に形成されているが、残りの1辺は、次のコイルと接続するために逆の傾斜で形成されている。図中31は円形コイルの往線路、31'はコイル間をつなぐ往線路、32は復線路である。図22Aから図22Cに示されているように、電流経路に近い側の磁束が通過するエリアの面積S1と、電流経路から遠い側の磁束が通過するエリアの面積S2とにより、次の関係が導かれる。
すなわち、図21A図21Cのところで述べた関係式で説明する。
図22Bに示すように、上から見た場合はS1=S2であるので、電流経路が遠方の場合はB1=B2と仮定してV=V1+V2=0、つまり誘起される電圧がない理想的な状態になる。電流経路が近い場合はB1≠B2であるので電圧が誘起されノイズとして影響する。
図22Cに示すように、横から見た場合は、S1≠S2であるので電流経路に関わらず電圧が誘起されノイズとして影響する。
なお、ロゴスキーコイルを、配線とスルーホール(ビア)とにより、一般的なプリント配線基板にて構成すると、製造上の制約により復線路は、プリント配線基板の表面層あるいは裏面層に配線する必要があるため、S1≠S2となる。
【0017】
パワー半導体デバイスにおいては、半導体素子電極とパッケージ電極との間を複数本のボンディングワイヤで接続し、半導体素子電極とパッケージ電極との間での熱膨張係数の違いや車載搭載時の振動や衝撃を吸収しつつ、大電流伝送を可能とする構造を形成している。
大電流を流すために、パワー半導体デバイスは数チップ並列に接続されているため、デバイスの不適切な設計や動作中の経時変化により電流分布がチップ毎に異なる可能性がある。
【0018】
本発明は、かかるパワー半導体デバイスにおいて、チップ間およびチップ内の電流バラツキを測定し、不良発見や故障を未然に防ぐことが可能な電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の課題を解決するため、本発明の第1の構成のロゴスキ型電流センサは、複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記最初のコイルの巻き始め側端子と前記復線路の端子との間に誘起される電圧を前記閉じた線の内部に挿通される被測定回路の電流の関数として検出するロゴスキ型電流センサにおいて、
前記複数のコイルを構成する各コイルが、前記閉じた線に直交する平面上に形成され、隣り合うコイルのうち、あるコイルの巻き終わりと次のコイルの巻き始めとの間に、コイル同士を接続する往線路が前記閉じた線に並行するように設けられ、前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路に近接して配置されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第2の構成は、複数のコイルを、1つの閉じた線に沿って連続的に接続するとともに前記複数のコイルの最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの前記閉じた線に並行した復線路を有し、前記最初のコイルの巻き始め側端子と前記復線路の端子との間に誘起される電圧を前記閉じた線の内部に挿通される被測定回路の電流の関数として検出するロゴスキ型電流センサにおいて、
前記複数のコイルを構成する各コイルは、前記閉じた線に直交する平面に投影したときに矩形となる形状で形成され、当該各コイルのうち前記復線路から離隔した3辺は前記閉じた線に直交する平面上に形成され、残りの1辺は次のコイルと接続するように斜めに形成された往線路であり、前記コイル全体において前記往線路が形成する面は前記閉じた線が作る面と平行で、かつ前記復線路が、前記往線路と反対側に位置するコイル部分側より、前記往線路側に近接して配置されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の第3の構成は、第1の構成において、前記各コイルが、中央に被測定回路を挿通する穴を有し、少なくとも3層の導電パターン層を有する環状基板の異なる2層に形成された第1コイルパターン及び第2コイルパターンと、これらの第1コイルパターンと第2コイルパターン間を接続するスルーホールとによって形成され、前記往線路は、前記3層のうちいずれかの層に形成され、前記復線路は、前記往線路に近接した、当該往線路とは異なる層に形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の第4の構成は、第3の構成において、前記往線路は、前記第1コイルパターンと同じ層に形成され、前記復線路は、前記往線路と近接した、前記第1コイルパターンおよび第2コイルパターンとは異なる層に形成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明の第5の構成は、第4の構成において、前記復線路は、前記第1コイルパターンおよび前記第2コイルパターンの間にある層に形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の第6の構成は、第3から5のいずれかの構成において、前記最後のコイルの前記第1コイルパターンのうち、前記復線路と接続された第1コイルパターンは、前記第2コイルパターンと接続された前記スルーホールから、前記復線路と同じ層に配線されたことを特徴とする。
【0025】
本発明の第7の構成は、第3の構成において、前記ロゴスキ型電流センサにおいて、前記閉じた線の長さ(L)、前記往線路と前記復線路の距離(d)、各コイルの面積の総和(A)が、d<0.1・A/Lの関係となっていることを特徴とする。
【0026】
本発明の第8の構成は、第3の構成において、前記コイルと前記復線路とのいずれか一方が接続された第1の電極パッドが中心にありその両側に他方が接続された第2の電極パッドがあることを特徴とする。
【0027】
本発明の第9の構成は、第8の構成において、前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとに、コネクタが接続されたことを特徴とする。
【0028】
本発明の第10の構成は、第3の構成において、前記環状基板の、前記コイル、往線路、または復線路が形成されていない部分に、前記被測定回路を前記環状基板の穴に挿通するための切り込みを設けたことを特徴とする。
【0029】
本発明の第11の構成は、第10の構成において、前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みの近傍まで配線され、前記コイル群に接続された前記復線路が第2の電極パッドまで配線されたことを特徴とする。
【0030】
本発明の第12の構成は、第10の構成において、前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群は、第1のコイル群と第2のコイル群とに分割され、前記第1のコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みに向かってまで配線され、前記第1のコイル群に接続された前記復線路が前記切り込みに向かって配線され、前記復線路に接続された前記第2のコイル群が第2の電極パッドまで配線されたことを特徴とする。
【0031】
本発明の第13の構成は、第10の構成において、前記第1コイルパターン、第2コイルパターン、スルーホールおよび往線路が並ぶコイル群が、第1のコイル群と第2のコイル群に分割され、前記復線路は、第1の線路と第2の線路に分割され、前記第1のコイル群が第1の電極パッドから前記切り込みまで配線され、前記第1のコイル群に接続された前記第1の線路が前記第1の電極パッドの位置まで配線され、前記第1の線路に接続された前記第2のコイル群が前記切り込みまで配線され、前記第2のコイル群に接続された前記第2の線路が第2の電極パッドまで配線されたことを特徴とする。
【0032】
本発明の第14の構成は、第3の構成において、前記複数のコイルのコイル間隔が等間隔であることを特徴とする。
【0033】
本発明の第15の構成は、第3の構成において、アンプ回路が前記環状基板に搭載されていることを特徴とする。
【0034】
本発明の第16の構成は、第3の構成において、前記環状基板がノイズシールドで覆われていることを特徴とする。
【0035】
本発明の第17の構成は、第16の構成において、前記ノイズシールドが、前記各コイルが形成された内層より外側のそれぞれの外層に形成された第1の導電パターンおよび第2の導電パターンを備えたことを特徴とする。
【0036】
本発明の第18の構成は、第17の構成において、前記ノイズシールドが、更に、前記第1の導電パターンおよび前記第2の導電パターンが形成された層間を貫通し、前記コイルの内周側と外周側との両方に、円周方向に沿って形成された第1のスルーホールおよび第2のスルーホールとを備え、前記第1の導電パターンと、前記第1のスルーホールと、前記第2の導電パターンと、前記第2のスルーホールとによるループの形成を回避するために、前記ループに非接続部が形成されたことを特徴とする。
【0037】
本発明の第19の構成は、第3の構成において、前記環状基板をパワー半導体チップまたはパワー半導体モジュールに搭載する場合に、前記環状基板が、前記パワー半導体チップまたはパワー半導体モジュールと接続する電極、導電部およびボンディングワイヤを取り囲むように構成されていることを特徴とする。
【0038】
本発明の第20の構成は、第19の構成において、パワー半導体のボンディングワイヤ1本ずつに取り囲むように構成されていることを特徴とする。
【0039】
本発明においては、プリント基板を用い、電流測定範囲内の信号が均一であり電流測定範囲外の信号は発生しないような理想的なセンサを用いパワー半導体デバイス内の電流経路に挿入する。この電流信号により、デバイス内の電流分布測定を可能にする。センサ基板には、特殊なコイルパターンと特殊なコイル間の配線パターンを用い、さらに必要であればアンプを同一基板内に搭載する。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、パワー半導体デバイスの改善が可能となり、出荷時の電流分布の均一化が可能になり初期不良が減る。また本センサをパワー半導体デバイス内に搭載した場合は、経時変化を測定することにより故障を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1A】本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサを示す斜視図である。
図1B図1Aに示すロゴスキ型電流センサの断面図である。
図1C図1Aに示すロゴスキ型電流センサの平面図である。
図2A】本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサの第1層のパターンを示す図である。
図2B】本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサの第2層のパターンを示す図である。
図2C】本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサの第3層のパターンを示す図である。
図2D】本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサの第4層のパターンを示す図である。
図3A】本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサの信号取り出し部と「戻り」パターンの構成を示す図であり、1層目を示す図である。
図3B図3Aに示すロゴスキ型電流センサの信号取り出し部と「戻り」パターンの構成を示す図であり、2層目を示す図である。
図3C図3Aに示すロゴスキ型電流センサの信号取り出し部と「戻り」パターンの構成を示す図であり、4層目を示す図である。
図4A】本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサのハンダ付けパッドを示す図であり、1層目を示す図である。
図4B図4Aに示すロゴスキ型電流センサのハンダ付けパッドの2層目を示す図である。
図4C図4Aに示すロゴスキ型電流センサのハンダ付けパッドの3層目を示す図である。
図4D図4Aに示すロゴスキ型電流センサのハンダ付けパッドの4層目を示す図である。
図5A】本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサの誤差検出の評価を説明するための斜視図である。
図5B図5Aに示すロゴスキ型電流センサを上方から見た図である。
図5C図5Aに示すロゴスキ型電流センサを側方から見た図である。
図6A】本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサのプリント配線基板に近接して配置した電線に、測定電流を流している状態を示す平面図である。
図6B図6Aに示すロゴスキ型電流センサと電線との側面図である。
図6C図6Aに示すロゴスキ型電流センサのコイルごとのノイズ信号を示すグラフである。
図6D図6Cに示すグラフにおける0A付近の拡大図である。
図7A】本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサの他の例を示す平面図である。
図7B図7Aに示すロゴスキ型電流センサの拡大図である。
図8A】本発明の他の実施の形態に係る矩形のロゴスキーコイルにおける誤差検出の評価を説明するための斜視図である。
図8B図8Aに示すロゴスキーコイルを上方から見た図である。
図8C図8Aに示すロゴスキーコイルを側方から見た図である。
図9A】本発明の電流センサを用いて電流通過位置ごとの電流信号強度を測定したときの波形と信号強度の定義を示す図である。
図9B】電流通過位置ごとの電流信号強度を示す図である。
図10】本発明の第1変形例を示す平面図である。
図11A図2A図2Dに示すハンダ付けパッドに同軸ケーブルを直接接続した状態を説明するための平面図である。
図11B図10に示すハンダ付けパッドに同軸ケーブルを直接接続した状態を説明するための平面図である。
図12A】コネクタを接続するためのハンダ付けパッドを示す図である。
図12B図12Aに示すハンダ付けパッドに接続されるコネクタの斜視図である。
図12C図11Aに示すハンダ付けパッドに同軸ケーブルを直接接続した場合と、図12Bに示すコネクタを図12Aに示すハンダ付けパッドに接続した場合とで、ノイズ電圧を比較したグラフである。
図13】本発明の第2変形例を示す平面図である。
図14A】切り込み位置について説明するための図であり、図13に示すプリント配線基板の状態の図である。
図14B】切り込み位置について説明するための図であり、第1のコイル群と第2のコイル群との他端部同士を復線路が接続した状態の図である。
図14C】切り込み位置について説明するための図であり、第1のコイル群の次に第1の線路が配線され、第2のコイル群の次に第2の線路が配線された状態の図である。
図15】測定誤差を評価したプリント配線基板の形状を示す図である。
図16A図14Aに示すプリント配線基板の信号強度の誤差(測定誤差)を説明するための図である。
図16B図14Bに示すプリント配線基板の信号強度の誤差(測定誤差)を説明するための図である。
図16C図14Cに示すプリント配線基板の信号強度の誤差(測定誤差)を説明するための図である。
図17A】ノイズシールドを説明するためのプリント配線基板の断面図である。
図17B図16Aに示すノイズシールドの変形例を説明するためのプリント配線基板の断面図である。
図18A】第1の導電パターンと第1のスルーホールとが非接続状態であることを示すプリント配線基板の断面図である。
図18B】第1の導電パターンと第2のスルーホールとが非接続状態であることを示すプリント配線基板の断面図である。
図18C】第2の導電パターンと第1のスルーホールとが非接続状態であることを示すプリント配線基板の断面図である。
図18D】第2の導電パターンと第2のスルーホールとが非接続状態であることを示すプリント配線基板の断面図である。
図19A】ノイズシールドを有するプリント配線基板の第1層を示す図である。
図19B】ノイズシールドを有するプリント配線基板の第2層を示す図である。
図19C】ノイズシールドを有するプリント配線基板の第3層を示す図である。
図19D】ノイズシールドを有するプリント配線基板の第4層を示す図である。
図19E】ノイズシールドを有するプリント配線基板の第5層を示す図である。
図19F】ノイズシールドを有するプリント配線基板の第6層を示す図である。
図20】ノイズシールドの効果を説明するためのグラフである。
図21A】円形コイルの誤差検出の評価を説明するための斜視図である。
図21B図21Aに示す円形コイルを上方から見た図である。
図21C図21Aに示す円形コイルを側方から見た図である。
図22A】プリント配線基板で矩形のロゴスキーコイルを形成した例における誤差検出の評価を説明するための斜視図である。
図22B図22Aに示す矩形のロゴスキーコイルを上方から見た図である。
図22C図22Aに示す矩形のロゴスキーコイルを側方から見た図である。
【符号の説明】
【0042】
1 コイル
1A 第1コイルパターン
1B 第2コイルパターン
1C,1D ビア(スルーホール)
1E ビア(ランド,スルーホール)
1F 取り出しパターン
2 往線路
20 コイル群
20a 一端部
20b 他端部
201 第1のコイル群
201a 一端部
201b 他端部
202 第2のコイル群
202a 一端部
202b 他端部
3 復線路
301 第1の線路
302 第2の線路
4,5,6,7 ハンダ付けパッド
8 切り込み
9a〜9d 電極パッド
10,10x,10y,10s,10t プリント配線基板
10a 穴
11,11s 第1層
12,12s 第2層
13,13s 第3層
14,14s 第4層
15s 第5層
16s 第6層
C0 同軸ケーブル
C1 芯線
C2 網状線
40 コネクタ
401 中心端子
402 外側端子
403 接続端子
403a〜403d 第1〜第4接続端子
41 コイル
41’ 往線路
42 復線路
51,52 導電パターン
53,54 スルーホール
L 線
S0 平面
S1,S2 面積
W1 電線
L1,L2,L3 ループ
G1 隙間
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明を、図面に示す実施の形態に基づいて具体的に説明する。
図1A図1Cは、本発明の実施の形態に係るロゴスキ型電流センサを示すものであり、図1Aは斜視図、図1Bは断面図、図1Cは平面図である。
【0044】
これらの図に示されるように、全体が1つの閉じた線Lに沿って連続的に接続される複数のコイル1(一部のみ直線状に示す)は、矩形状であり、それぞれが閉じた線Lに垂直な一つの平面S0上に形成され、各コイル1間は、線Lに並行する往線路2によって接続される。複数のコイル1の個数をnターンとすると、1ターン目のコイル1から始まってnターン目のコイル1の巻き終わりから、線Lに沿って1ターン目のコイル1の巻き始めまで1ターン分の復線路3が設けられることがロゴスキーコイルの特徴である。
【0045】
このロゴスキーコイルをプリント配線基板により形成する場合、図1Bに示すように、4層積層プリント配線基板10(以下、単にプリント配線基板10と称する場合がある。)を用い、第1層11にコイル1の第1コイルパターン1Aと往線路2を形成し、第2層12に復線路3を形成し、第3層13はダミーとし、第4層14にコイル1の第2コイルパターン1Bを形成する。そして、第1コイルパターン1Aの端部と第2コイルパターン1Bの端部とは、ビア(スルーホール)1C,1Dにより接続する。
【0046】
本実施例での閉じた線Lの長さはおおむね50mmであり、ターン数は96、1ターンの面積が約0.6mm2である。往線路と復線路で囲まれる面積は、往線路と復線路の距離をdとすると、d・Lで表される。一方各コイルの面積の総和Aは57.6mm2である。往線路と復線路で囲まれる部分では磁束による起電力の発生を抑える必要があり、十分な測定精度を得るには、各コイルの面積の総和Aに対してd・Lの値を10%以下、すなわち、d<0.1・A/Lの関係とすることが望ましい。
【0047】
プリント配線基板10の全体の厚みtは例えば0.6mmとし、第1層11と第2層12との距離dは例えば50〜60μmとする。これによりd・Lの値は各コイルの面積の総和Aに対して10%以下を実現する。
【0048】
図2A図2Dは4層積層プリント配線基板10の第1層11〜第4層14の形成例を示したものである。第1層11は、図2Aに示すように第1コイルパターン1Aと往線路2が形成され、全体は環状となっている。また、最初のパターンにはハンダ付けパッド4が形成されている。
第2層12は、図2Bに示すように復線路3が形成され、端部にはハンダ付けパッド5が形成されている。復線路3と図2Aの往線路2とは、同じ径の円周上に形成されている。本実施の形態では、最後のコイルの第1コイルパターン1Aのうち、閉じた線と並行となる復線路3に接続された第1コイルパターン1Aは、第2コイルパターン1Bと接続されたスルーホール1Dから、復線路3と同じ第2層12に配線されている。
第3層13には、図2Cに示すようにパターンは形成されていない。
第4層14には、図2Dに示すように第2コイルパターン1Bが形成されている。
【0049】
上述したように、図2Aに示した第1コイルパターン1Aの端部と図2Dに示した第2コイルパターン1Bの端部とは、図1Bに示したようにビア(スルーホール)1C,1Dにより接続される。また、ハンダ付けパッド4,5と第1コイルパターン1Aの端部、復線路3の端部、第2コイルパターン1Bの端部間も、ビアで接続される。
【0050】
図3A図3Cは、信号取り出し部と復線路パターンの構成を示す拡大図である。図3Aは第1層11、図3Bは第2層12、図3Cは第4層14のパターンを示している。図中1Eは、ビア(スルーホール)により接続されるランドを示している。コイルにより発生した信号を、外部磁束(ロゴスキーコイルの内部を通らない、計測目的外の電流等による磁束)の影響なく取り出すために、往線路と復線路に接続された取出し配線は1層目(図3A参照)、2層目(図3B参照)を利用し上下に近接するように構成されている。また、各コイルの第1コイルパターン1Aとその前後の往線路2との接続部分は、概ね45度の角度を有するパターンで短絡することなく接続されている。概ね45度の角度を有することで、接続部分が作る面積(四角形部分)を最小にすることができ、センサ外の電流による磁束の影響を最小限に抑えることができる。
【0051】
一連のコイルの最終コイル(巻終わり)では、図2Dあるいは図3C(裏面、4層目)の第2コイルパターン1Bからビア1E(スルーホール)を通って図2Bあるいは図3Bに示す復線路3と同じ2層目の第1コイルパターン1Aに接続され、そのまま直角に曲がり、閉じた線L(図1A参照)と並行となるような復線路3のパターンとなる。
こうすることで、2つの異なる層にある往線路2と復線路3を、専用のビアにより接続する必要はない。最終コイルの面積が、他のコイルの面積より若干小さくなるが、d(図1B参照)を十分小さくとっていれば、影響は十分小さい。もしこの方法を採用しない場合は、専用のビアを形成するためのスペースが必要になり、巻き始めと巻終わりのコイル同士の間隔を開く必要がある。この結果コイル間隔に不揃いが生じるか、コイルの間隔を全体にわたって広げる必要があり、検出の精度の低下や、ターン数減少による検出出力が低下するといった問題が発生する。
【0052】
図4A図4Dはハンダ付けパッドの拡大図である。第1層11〜第4層14に形成される各パッドは、ビア(スルーホール)によって導通される。本形状により、2層目の信号取出し配線は、1層目のパッドと同電位のパターンおよびビアに囲まれた部分を引き回すため、センサ外の電流などによる磁束の影響を最小限に抑えることができる。
【0053】
図5A図5Cは、本発明の実施の形態における誤差検出の評価を説明するための図であり、図5Aは斜視図、図5Bは上方から見た図、図5Cは側方から見た図である。図中2は円形コイルの往線路、3は復線路であり、実際は往線路2、復線路3とも、環状であるが、説明の簡略化のために直線状に記載している。
本実施の形態において、電流経路に近い側の磁束が通過するエリアの面積S1(図示せず)と、電流経路から遠い側の磁束が通過するエリアの面積S2(図示せず)とにより、次の関係が導かれる。
電流経路に近い側の面積S1のエリアで誘起される電圧は以下の関係式(再掲)で導かれる。
ここで、V1は誘起される電圧、B1は磁束密度である。
電流経路から遠い側の面積S2のエリアで誘起される電圧は以下の関係式で導かれる。
ここで、V2は誘起される電圧、B2は磁束密度である。
図5A図5Cに示されているように、往線路2と復線路3とは、上方から見た場合経路が一致しており、高さがd異なるのみである。したがって、上から見た場合はS1=S2であるので、電流経路が遠方の場合はB1=B2と仮定してV=V1+V2=0、つまり誘起される電圧がない理想的な状態になる。
横から見た場合は、S1=S2≒0であるので微小となる。
したがって、コイルの内部を貫通する電線路に流れる電流は検出するが、コイルの外部に流れる電流に対しては往線路2と復線路3の高さdをコイルの厚みtに比べて微小となるように設定することにより、無視できる大きさとなり、ノイズを低減することができる。
【0054】
図6A図6Dは、測定対象外の電流によるノイズ信号を示す。全てのコイル構造で対象とする電流の信号強度は同じである。図6Aはプリント配線基板に近接して配置した電線W1に測定電流を流している状態を示す平面図、図6Bは同じく側面図、図6Cは電流バラツキを示す状態グラフ、図6D図6Cに示すグラフにおける0[A]付近の拡大図である。なお、図6Cにおいて、F1は本発明の実施の形態のコイル、F2は本発明の実施の形態のコイル構造F1から、復線路を除いたもの、T1は図22Aから図22Cに示した第1矩形コイル、S1は図8Aから図8Cに示した実施の形態の別の例を示している。図6A図6D(特に図6D)から、本発明の実施の形態のコイル(F1)と別の例(S1)では、対象とする電流の信号強度が同じであるにも拘らず、ノイズ信号が小さいことが分かる。
【0055】
以上の実施の形態では、複数のコイルを環状に形成した例を示したが、図7Aおよび図7Bに示すように、四角形(正方形)のコイルとすることができる。この際、往線路または復線路と電極パット間の取出し配線はコーナー部分のコイル間(ビア間)を通過することが望ましい。
その理由を以下に述べる。すなわち、四角形のコーナー部分では、曲率半径が小さいため、コイル全体で、コーナー部分の内側のビアの間隔は、四角形の辺の部分のビアの間隔より狭く、逆に外側のビアの間隔は広くなっている。結果として、コーナー部分の外側のビアでは隣り合うビアの間隔が最も広く、信号取り出しパターン1F(図3A図3B参照)を、コーナー部分の外側の隣り合うビア1E,1Eの間に形成することにより、信号取り出しパターン1Fの形成によるコイル間隔の拡大を防ぎ、コイルのターン数を最大にできるという効果がある。
【0056】
図8A図8Cは、プリント配線基板で矩形のロゴスキーコイルを形成した別の例を示すものであり、図8Aは斜視図、図8Bは上方から見た図、図8Cは側方から見た図である。この例では、閉じた線L(図1A参照)に直交する平面に投影したときに矩形となる形状で形成されたコイル41のうち、3辺は傾斜しない同一平面上に形成されているが、残りの1辺の往線路41’は、次のコイルと接続するために斜めに形成されている。前記3辺と離隔した復線路42は、複数のコイル41の最後のコイルの巻き終わりから最初のコイルの巻き始め側までの閉じた線Lに並行している。
このロゴスキーコイルでは、コイル41全体において斜めの辺となる往線路41’が形成する面は、閉じた線Lが作る面と平行でかつ復線路42と近接して配置されている。
【0057】
図8B図8Cに示されているように、電流経路に近い側の磁束が通過するエリアの面積S1と、電流経路から遠い側の磁束が通過するエリアの面積S2とにより、次の関係が導かれる。
すなわち、図8A図8Cは上から見た場合はS1=S2であるので、電流経路が遠方の場合はB1=B2と仮定してV=V1+V2=0、つまり誘起される電圧がない理想的な状態になる。電流経路が近い場合はB1≠B2であるので電圧が誘起されノイズとして影響する。
しかし横から見た場合は、往復線路間の面積が無視できるほど小さいので誘起される電圧がほとんどないため、本構造においても低ノイズ化に対し一定の効果が得られる。
【0058】
本発明の応用例として、次のものを挙げることができる。
(1)パワー半導体チップまたはパワー半導体と接続する電極、導電部およびボンディングワイヤをプリント配線基板が取り囲むように構成する。これにより、従来では測定困難であったチップ間の電流バランスを測定することができる。
(2)プリント配線基板を、パワー半導体のボンディングワイヤ1本ずつに取り囲むように構成する。これにより、従来見ることができなかったチップ内の電流バランスを見ることができる。
【0059】
上述した環状のプリント配線基板(環状基板)10を電流センサとして用いて、電流バラツキを測定した。
電流センサを用いて電流通過位置ごとの電流信号強度を測定したときの波形と信号強度の定義を図9Aに示す。電流通過位置ごとの電流信号強度を図9Bに示す。電流センサ内を通った電流による信号強度は、電流センサ外の電流による信号強度より非常に大きく、電流センサ内の電流通過位置による信号強度の誤差(バラツキ)は2〜3%であった。電流センサ外の電流による信号強度は電流センサから遠くなるほど徐々に小さくなっており、信号強度の最大値は電流センサ内信号強度の7%程度であった。この電流センサは電流トランス(CT)と同等の波形観測ができ、外部磁界からの影響をほとんど受けないことがわかる。
【0060】
変形例
(1)図10に示す第1変形例のように、環状のプリント配線基板(環状基板)10の芯線(往線路2)の取出し電極パターンであるハンダ付けパッド4(第1の電極パッド)が中心にありその両側にグランド線の電極パターンであるハンダ付けパッド5,6(第2の電極パッド)を設ける。これにより、プリント配線基板10の往線路2と同じように遠方磁界をキャンセルする効果がある。
すなわち、2本の取り出し電極パターンのいずれかが、ハンダ付けパッド4に接続され、もう一方が、ハンダ付けパッド4を取り囲むように形成されたハンダ付けパッド5,6に接続されることにより、プリント配線基板に形成されたコイルの取り出し配線を、ハンダ付けパッドを介して同軸ケーブル等に接続する際、接続部分での外部磁束等によるノイズの混入を低減することができる。図10の例は、同軸ケーブルの芯線をハンダ付け接続するパターンを左右から取り囲むようにグランド線を接続するパターンを形成し、それぞれ取り出しパターンに接続されている例である。
【0061】
ここで、図2A図2Dに示すハンダ付けパッド4,5に同軸ケーブルを接続する場合と、図10に示すハンダ付けパッド4〜6に同軸ケーブルを接続する場合について、図面に基づいて説明する。
図2A図2Dに示すように、第1層11に形成されたハンダ付けパッド4,5に同軸ケーブルを接続する場合には、例えば、図11Aに示すように、同軸ケーブルC0の芯線C1がハンダ付けパッド4に接続され、同軸ケーブルC0の網状線C2がハンダ付けパッド5に接続される。
このように同軸ケーブルC0がハンダ付けパッド4,5に接続されていると、芯線C1と網状線C2との間で、不要なループL1ができてしまい、この不要なループL1が電流の時間変化による磁束の影響を受ける。
【0062】
図10に示すように、ハンダ付けパッド4が中心にあり、その両側にハンダ付けパッド5,6が設けられていると、図11Bに示すように、芯線C1がハンダ付けパッド4に接続され、網状線C2が二股に分かれ、ハンダ付けパッド5,6に接続される。
このように同軸ケーブルC0がハンダ付けパッド4〜6に接続されていると、芯線C1と網状線C2との間で、一対のループL2,L3ができあがるが、このループL2,L3により発生する電圧は、電流の方向が反対方向であるためキャンセルされる。従って、ノイズの影響を小さく抑えることができることができる。
【0063】
更に、図12Aに示すような電極パッドとすることも可能である。図12Aに示す電極パッドは、ハンダ付けパッド5,6(第2の電極パッド)との並び方向の中心に、ハンダ付けパッド4(第1の電極パッド)が位置している。ハンダ付けパッド4は、ハンダ付けパッド5,6より短く形成されている。
また、ハンダ付けパッド5,6の中間位置を中心として、ハンダ付けパッド4が形成された側とは反対となる位置にハンダ付けパッド7が設けられている。ハンダ付けパッド7は、ハンダ付けパッド4と同じ長さに形成されている。
【0064】
このように形成されたハンダ付けパッド4〜7には、図12Bに示すコネクタ40が接続される。
コネクタ40は、同軸ケーブルが接続されたコネクタ(図示せず)と嵌合する表面実装用のコネクタである。コネクタ40には、ピン状の中心端子401と、円環状の外側端子402と、接続端子403とを備えている。
接続端子403は、中心端子401と接続された第1接続端子403aと、外側端子402と接続された第2〜第4接続端子403b〜403dとを備えている。
従って、このコネクタ40を、図12Aに示すプリント配線基板10に搭載したときには、第1接続端子403aはハンダ付けパッド4と接続され、第2〜第4接続端子403b〜403dは、ハンダ付けパッド5〜7に接続される。
【0065】
このようにプリント配線基板10にコネクタ40が搭載されることで、同軸ケーブルはプラグコネクタとコネクタ40とを介してプリント配線基板10に接続される。従って、コネクタ(コネクタ40およびプラグコネクタ)を介して同軸ケーブルをプリント配線基板10に接続することで、同軸ケーブルからの芯線C1および網状線C2によるループができないため、ノイズの発生を抑えることができる。
【0066】
図11Aに示すプリント配線基板10のハンダ付けパッド4,5に同軸ケーブルを直接接続した場合(直接接続)と、図12Bに示すコネクタ40を図12Aに示すハンダ付けパッド4〜7に接続して、同軸ケーブルを、プラグコネクタを介してコネクタ40に接続した場合(コネクタ接続)とで、同軸ケーブルの接続部分におけるノイズ電圧を比較した。
図12Cに示すグラフでは、ハンダ付けパッド4,5に同軸ケーブルを直接接続したときのノイズ電圧を100%としている。
図12Cに示すグラフからも判るように、プラグコネクタを介して同軸ケーブルを、コネクタ40に接続したコネクタ接続の場合では、83%もノイズが低減できた。
【0067】
なお、本実施の形態では、コネクタ40の第1接続端子403aがハンダ付けパッド4と接続されることから、中心端子41と往線路2とが接続され、第2〜第4接続端子403b〜403dがハンダ付けパッド5〜7に接続されることから、外側端子402と復線路3とが接続されている。しかし、復線路3がハンダ付けパッド4と接続されることで、中心端子401と接続され、往線路2が第2〜第4接続端子403b〜403dと接続されていることで、外側端子402と接続されていてもよい。
【0068】
(2)図13に示す第2変形例のように、環状のプリント配線基板(環状基板)10の配線の無い部分に、被測定回路を環状基板10の穴10aに挿通するための切り込み8を設ける。
ここで、切り込み8の位置について、図14Aから図14Cに基づいて説明する。
なお、図14Aから図14Cにおいては説明を容易とするために、環状に形成された複数のコイルを直線状に延ばした状態を示している。従って、切り込み8が複数のコイル1の両端部にあるが、2つの切り込み8は同じ位置である。
また、図14Aから図14Cにおいては、第1コイルパターン1Aおよび往線路2を示す実線は第1層、復線路3を示す細かい点線は第2層、第2コイルパターン1Bを示す粗い点線は第4層に配線されている。スルーホール1C,1Dを示す一点鎖線は第1層から第4層まで貫通している。
更に、第1コイルパターン1A、第2コイルパターン1Bおよびスルーホール1C,1Dによるコイル1と、往線路2とが並ぶものをコイル群20と称す。
【0069】
図14Aに示すプリント配線基板10では、ハンダ付けパッド4が他端部20bに接続したコイル群20が切り込み8に向かって配線され、そして、コイル群20の一端部20aに接続された復線路3がハンダ付けパッド5まで戻るように配線されている。このようにプリント配線基板10に切り込み8が形成されている。そうすることで、電線に流れる電流を測定するときに、電線をプリント配線基板10の穴10aに切り込み8の位置から挿通させることができるので、長尺の電線の途中にプリント配線基板10を差し込むことができる。
【0070】
図13および図14Aに示すプリント配線基板10では、切り込み8が、ハンダ付けパッド4,5に隣接して設けられている。従って、図12Bのようなコネクタ40をプリント配線基板10に搭載したときには、コネクタや、同軸ケーブルが接続されたプラグコネクタが邪魔になって電線をプリント配線基板10の穴10aに通し難い。
【0071】
そこで、図14Bに示すプリント配線基板10xでは、円周方向に並ぶコイル1と往線路2とにより形成されたコイル群を、第1のコイル群201と第2のコイル群202とに分割する。
ハンダ付けパッド4が一端部201aに接続された第1のコイル群201が切り込み8に向かって配線され、第1のコイル群201の他端部201bに接続された復線路3が第2のコイル群202の他端部202bの位置となる切り込み8に向かって戻るように配線されている。そして、第2のコイル群202の一端部202aがハンダ付けパッド5に接続されるように配線される。
このように往線コイル群20が第1のコイル群201と第2のコイル群202とに分割され、第1のコイル群201と第2のコイル群202との他端部201b,202b同士を復線路3が接続することで、ハンダ付けパッド4,5から離れた任意の位置に切り込み8を形成することができる。従って、プリント配線基板10xに搭載されるコネクタに邪魔されることなく、長尺の電線の途中にプリント配線基板10xを差し込むことができる。
【0072】
図14Bに示すプリント配線基板10xでは、第1のコイル群201と第2のコイル群202との他端部201b,202b同士間に復線路3が形成されていたが、図14Cに示すように、復線路3が第1の線路301と第2の線路302とに分割され、第1のコイル群201および第2のコイル群202と交互に配線されていてもよい。
図14Cに示すプリント配線基板10yでは、ハンダ付けパッド4が一端部201aに接続された第1のコイル群201が切り込み8に向かって配線され、第1のコイル群201の他端部201bに接続された第1の線路301が第2のコイル群202の一端部202aに接続され、切り込み8側に位置する第2のコイル群202の他端部202bが第2の線路302に接続され、そして、第2のコイル群202の一端部202aがハンダ付けパッド5に接続されるように配線される。
【0073】
このように、第1のコイル群201の次に第1の線路301、第2のコイル群202の次に第2の線路302が配線されていても、ハンダ付けパッド4,5から離れた任意の位置に切り込み8を形成することができる。なお、図14A図14Cにおいては、第1の電極パッドをハンダ付けパッド4、第2の電極パッドをハンダ付けパッド5として説明したが、第1の電極パッドをハンダ付けパッド5、第2の電極パッドをハンダ付けパッド4としてもよい。
【0074】
また、図14Aから図14Cに示すプリント配線基板10,10x,10yの信号強度の誤差(測定誤差)について測定を行った。なお、プリント配線基板の形状については、図15に示すように、角部が丸まった四角形状のものを使用した。切り込み8は、ハンダ付けパッド4〜7が形成された端部とは反対側の端部に形成されている。
図14Aに示すパターンのプリント配線基板10では、図16Aに示すように最大誤差は4%であった。また、図14Bに示すパターンのプリント配線基板10xでは、図16Bに示すように最大誤差6%であった。また、図14Cに示すパターンのプリント配線基板10yでは、図16Cに示すように最大誤差16%であった。
【0075】
このように、図14Aに示すプリント配線基板10における測定誤差が小さいものの、図14Bおよび図14Cに示すプリント配線基板10x,10yにおいても、測定誤差6%、16%程度にて測定することができる。また、プリント配線基板10x,10yでは、図15に示すように、細長のプリント配線基板の切り込み8が、ハンダ付けパッド4,5を形成した端部とは反対側の端部に形成されているため、例えば、薄い長尺板状のバスバーなどを挟み込み、電流を測定する場合でも、狭い隙間に図15に示すプリント配線基板を差し込んで測定することができるため、バスバーの上下に余計な空間が不要である。
【0076】
(3)第3変形例としては、アンプ回路をプリント配線基板に搭載する。これにより、出力信号にノイズが載る前に電流信号を増幅するので、S/N比を高くすることが可能である。
(4)また、第4変形例としては、本電流センサ(環状基板)を複数個使い相互に接続して1つのセンサとして用いる。これにより外部磁界の相殺効果が高まる。
【0077】
なお、上述した環状のプリント配線基板(環状基板)のコイル配線や信号取り出しパターンに電界の変動による変位電流が流れることを妨げるように、少なくとも第1層(最表面層)あるいは第4層(最裏面層)のコイルパターンの表面に金属箔を、コイルと絶縁して設けることで電界シールド(ノイズシールド)を行うことが有効である。
また、電界シールドは計測信号配線とは別に配線され、測定器の接地に接続されることが望ましい。こうすることで、ロゴスキーコイル部分に加わる電界の変動は最小限に抑えることができる。
【0078】
ここで、ノイズシールドについて図面に基づいて説明する。
図17Aに示すようにロゴスキ型電流センサのプリント配線基板10sは、6層により形成されている。このプリント配線基板10sは、各コイル1が、第2層12sから第5層15sに渡って形成されている。また、プリント配線基板10sには、最外層である第1層11sと、第6層16sとに、ノイズシールドとしてベタパターンによる導電パターン51,52(第1の導電パターン,第2の導電パターン)が形成されている。この導電パターン51,52は、グランドに接続される電極パッド(図示せず)に接続され、測定器の接地に接続される。
このように、プリント配線基板10sは、ノイズシールドとして、各コイル1が形成された内層(第2層12sから第5層15s)より外側の一対の外層(第1層11s,第6層16s)に導電パターン51,52が形成されているため、外来ノイズによる影響を抑えることができる。
【0079】
このノイズシールドは、図17Bに示すように導電パターン51,52をスルーホール53,54により接続するようにしてもよい。このスルーホール53,54は、導電パターン51,52が形成された層間(第1層11s,第6層16s)を貫通し、各コイル1の内周側と外周側との両方に、円周方向に沿って所定間隔ごとに形成されている。
導電パターン51,52にスルーホール53,54を加えることで、コイル1の上下面だけでなく、側面方向もシールドすることができ、ノイズシールドにより、各コイル1を囲うことができるため、更にシールド効果を向上させることができる。
【0080】
このとき、導電パターン51(第1の導電パターン)と、スルーホール53(第1のスルーホール)と、導電パターン52(第2の導電パターン)と、スルーホール54(第2のスルーホール)と、導電パターン51とによるループの形成を回避するために、このループに非接続部が形成されていてもよい。
【0081】
例えば、図18Aでは、スルーホール53は、導電パターン51との間に、非接続部として、隙間G1が形成されていることで、導電パターン51と非接続状態である。図18Bでは、スルーホール54は、導電パターン51との間に、隙間G1が形成されていることで非接続状態である。図18Cでは、スルーホール53は、導電パターン52との間に、隙間G1が形成されていることで非接続状態である。図18Dでは、スルーホール54は、導電パターン52との間に、隙間G1が形成されていることで非接続状態である。
このように、導電パターン51,52とスルーホール53,54との間で、隙間G1による非接続部が形成されていることで、コイル1を囲うノイズシールドに、コイル1の周囲を周回するような電流が発生を抑止することができる。従って、コイル1による電流測定への影響を抑えることができる。
【0082】
ノイズシールドを有するプリント配線基板について、図19A図19Fに基づいて説明する。
図19A図19Fは、プリント配線基板10tの第1層11sから第6層16sまでを示すものである。
図19Aに示す第1層11sには、コネクタ40(図12B参照)を実装するための電極パッド(ハンダ付けパッド4〜7)が形成されており、この電極パッドは、第1層11sから第6層16sまでの全てに形成され、図示しないスルーホールにより導通接続されている。
図19Aに示す第1層11sから図19Fに示す第6層16sの全部に、ノイズシールドをグランドに接続するためのコネクタが実装される電極パッド9a〜9dが形成され、図示しないスルーホールにより導通接続されている。
また、図19Aに示す第1層11sから図19Fに示す第6層16sの全部に、スルーホール53,54が、円周方向に沿って2列に配置され、貫通している。
図19Bに示す第2層12sから図19Eに示す第5層までには、スルーホール1C,1Dが形成され、貫通している。
【0083】
図19Aに示す第1層11sには、導電パターン51がほぼ全面に形成されている。また、第1層11sでは、このスルーホール53,54と導電パターン51とは隙間G1により非接触となっている。この導電パターン51は、電極パッド9a〜9dと接続されている。
図19Bに示す第2層12sには、第1コイルパターン1Aと往線路2とが形成されている。更に、第1層11sには、往線路2とハンダ付けパッド4とを接続する配線パターンが形成されている。
図19Cに示す第3層13sには、復線路3が形成されている。第3層13sには、復線路3と、ハンダ付けパッド5〜7とを接続する配線パターンが形成されている。
図19Dに示す第4層14sには、スルーホール53,54およびスルーホール1C,1D以外は形成されていない。
図19Eに示す第5層15sには、第2コイルパターン1Bが形成されている。
図19Fに示す第6層16sには、導電パターン52がほぼ全面に形成されている。導電パターン52は、第1層11sからのスルーホール53,54と接続されている。
【0084】
このように、図19A図19Fに示すプリント配線基板10tでは、スルーホール53,54が、第6層16sにて導電パターン52と接続されているものの、導電パターン51と非接続である。そのため、プリント配線基板10tは、導電パターン51からスルーホール53、導電パターン52、スルーホール54を経由して導電パターン51へ戻るループが形成されない。従って、第1コイルパターン1A、第2コイルパターン1B,スルーホール1C,1Dからなるコイルの周囲を周回するような電流が発生を抑止することができる。
【0085】
図19A図19Fに示すプリント配線基板10tでは、図18Aに示す接続状態と、図18Bとに示す接続状態とを組み合わせているが、コイル1を周回するようなループが形成されなければ、他の組み合わせとしてもよい。
例えば、図18Aに示す接続状態と、図18Dに示す接続状態を組み合わせたり、図18Cに示す接続状態と、図18Dに示す接続状態を組み合わせたりすることができる。
更に、スルーホール53が、円周方向に沿って、図18Aに示す接続状態と、図18Cに示す接続状態とが交互に配置されているようにしてもよい。
【0086】
更に、ループの形成を回避するための非接続部は、スルーホール53,54の両端部が導電パターン51,53と接続されていても、スルーホール53,54が、例えば、第3層13sと第4層14sとの間で隙間により分断するようにしてもよい。また、スルーホール53,54が導電パターン51,52に接続された状態であっても、コイル1が並ぶ円周方向に沿って隙間が形成されていてもよい。
【0087】
ノイズシールドを備えていない、図1Bに示すロゴスキ型電流センサと、ノイズシールドを備えた図17Aに示すロゴスキ型電流センサと、ノイズシールドとスルーホールとを備えた図17Bに示すロゴスキ型電流センサとについて、それぞれノイズ電圧を測定した。結果を図20に示す。図1Bに示すロゴスキ型電流センサを100%としたときに、図17Aに示すロゴスキ型電流センサでは3%、図17Bに示すロゴスキ型電流センサでは2%であった。
このように、ノイズシールドを設けたり、スルーホールによりノイズシールドを接続したりすることで、外来ノイズによる影響を大幅に抑えることができる。
【0088】
なお、本実施の形態では、図17Aおよび図17Bに示すように、第1層11sから第6層16sの6層により構成され、最外層である第1層11sと第6層16sとに、ノイズシールド(導電パターン51,52)が形成されていた。しかし、ノイズシールドは、各コイル1が形成された内層より外側の外層であれば、プリント配線基板の最外層に形成されていなくてもよい。
【0089】
また、図4A図4D等に示す電極パッド部分は、電界シールドおよび磁界シールド双方の目的から、パッド部分を覆う、ないしは、取り囲むように金属箔等でシールドすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、特に外部磁界の影響を受けにくく、また量産性に富む超小型ロゴスキ型電流センサとして、研究・開発段階でのパワー半導体デバイスの実装形態の改善および内蔵による異常検出に使用可能である。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図20
図21A
図21B
図21C
図22A
図22B
図22C