【実施例1】
【0033】
図1は本発明に係るアワビ類育成用海底設置型網生け簀の一例を示す斜視図、
図2は本発明に係るアワビ類育成用海底設置型網生け簀の魚礁ブロック支持体に支持されている複数個の魚礁ブロックの配置状態を示す説明図、
図3は本発明に係るアワビ類育成用海底設置型網生け簀の魚礁ブロック支持体の説明図、
図4は海底に設置された状態の本発明に係るアワビ類育成用海底設置型網生け簀と海底との関係を示す説明図である。
【0034】
本発明に係るアワビ類育成用海底設置型網生け簀の一例である生け簀10は、
図1に示すように、複数個の魚礁ブロック12と、魚礁ブロック12を下方から支持する魚礁ブロック支持体14と、複数個の魚礁ブロック12を上方から被覆する上部ネット16とからなる。魚礁ブロック支持体14と上部ネット16とによって魚礁ブロック12を囲む空間が形成されている。
【0035】
ここで、魚礁ブロック12は、下側(裏面側)にアワビが棲息できるような隙間が形成される形状のものが好ましく、例えば断面H状、断面コ字状又は断面L字状、不規則形状など、種々の形状のものを使用することができる。魚礁ブロック12は魚礁ブロック支持体14の上に、
図2に示すように、複数個が表裏を互い違いにし、所定間隔をおいて載置されている。隣り合う魚礁ブロック12はロープ等(図示せず)により相互に連結されて、台風等の嵐で生け簀が攪乱されても、魚礁ブロック12が一カ所に集まらないようになっている。
【0036】
魚礁ブロック支持体14は、
図3に示すように、支持フレーム18と、支持フレーム18に引っ張った状態で張られた下部ネット20とからなる。支持フレーム18は、長さ5mで、太さが8.5cmφのパイプ4本からなる。4本のパイプは井桁状に組まれ、交差している部分は連結金具ないし結束バンドで固定されている。
【0037】
下部ネット20の中央部には貫通穴24が形成され、下部ネット20の対角線の位置には補強ロープ26が取り付けられている。下部ネット20は、中間層と、該中間層の表面側に積層された表面層と、該中間層の裏面側に積層された裏面層とを積層一体化させたものからなる。中間層、表面層及び裏面層は網材からなり、中間層の網材の目合いは1.5cm、表面層の目合いは5cm、裏面層の目合いは5cmである。
【0038】
上部ネット16は網材からなり、上部ネット16を形成している網材の目合いは5cmである。この例の上部ネット16は箱状に形成され、箱状に形成された上部ネット16の上面と側面は一体的に形成されている。上部ネット16の上面の対角線の位置には補強ロープ28が取り付けられている。上部ネット16の上面には開口部(図示せず)が形成され、該開口部には扉(図示せず)が取り付けられている。
【0039】
支持フレーム18の四隅の各連結部の近傍には隅アンカー30が海底に各々打ち込まれている。隅アンカー30は、長さ3mで、太さが8.5cmφのパイプ4本からなり、海底に2m打ち込まれ、海底から1mが上に出ている。
【0040】
下部ネット20の中央部の貫通穴24を貫通する状態で中央アンカー32が海底に打ち込まれている。中央アンカー32は、長さ4mで、太さが8.5cmφのパイプからなり、海底に2m打ち込まれ、海底から2mが上に出ている。下部ネット20の中央部は貫通穴24を貫通する中央アンカー32によって、
図4に示すように支えられ、海底22から間隔が形成されるようになっている。
【0041】
下部ネット20の補強ロープ26の一方の端部は中央アンカー32に連結され、補強ロープ26の他方の端部は隅アンカー30に連結されている。また、上部ネット16の補強ロープ28の一方の端部は中央アンカー32に連結され、補強ロープ28の他方の端部は隅アンカー30に連結されている。
【0042】
なお、上部ネット16は、
図1に示すような平板な直方体の形状のものに限らず、
図5に示すような、平板な直方体の上部に四角錐からなるテント状(笠状)の形状のものを載せた形状のものでもよい。このような形状の上部ネットを使用した場合、漁業者が生け簀10の中に入って作業する場合、作業がし易いという利点がある。また、支持フレーム18及びアンカー30,32の材料としては、合成樹脂又は金属を用いることができる。合成樹脂を用いる場合は強度が高いものが好ましく、金属を用いる場合はステンレスのような耐食性のあるものが好ましい。また、ステンレスアンカー杭には腐食防止用電池メタルを付けることがなお好ましい。
【0043】
次に、以上説明したアワビ類育成用海底設置型網生け簀の設置の仕方とこの網生け簀の使い方について説明する。
【0044】
生け簀の設置: 支持フレーム18に下部ネット20を取り付けた魚礁ブロック支持体14をあらかじめ陸上で作成しておく。ここで、下部ネット20の対角線の位置には4本の補強ロープ26をあらかじめ一体的に取り付け、下部ネット20の中央部には貫通穴24をあらかじめ形成しておく。
【0045】
次に、生け簀を設置したい場所の海上まで魚礁ブロック支持体14を船で運び、魚礁ブロック支持体14を海中に降ろして、海底22に魚礁ブロック支持体14を敷設する。魚礁ブロック支持体14の下部ネット20の中央部の貫通穴24に中央アンカー32を貫通させて海底22に打ち込む。魚礁ブロック支持体14の下部ネット20の上に魚礁ブロック12を置く。隣り合う魚礁ブロック12をロープ又は結束バンド(図示せず)で相互に連結する。
【0046】
次に、魚礁ブロック支持体14の支持フレーム18の四隅の近くの海底22に隅アンカー30を各々打ち込む。下部ネット20に取り付けられた4本の補強ロープ26について、各一方の端部を中央アンカー32にしっかり結び付け、各他方の端部を隅アンカー30にしっかり結び付ける。
【0047】
次に、船から上部ネット16を海中に降ろし、上部ネット16を魚礁ブロック支持体14の上に載せ、魚礁ブロック支持体14の支持フレーム18に上部ネット16の下縁を連結する。上部ネット16に取り付けられた4本の補強ロープ28について、各一方の端部を中央アンカー32にしっかり結び付け、各他方の端部を隅アンカー30にしっかり結び付ける。
【0048】
中央アンカー32にはロープ(図示せず)を介して浮球(図示せず)を取り付けておく。浮球は海上を漂い、生け簀の位置を知らせる。
【0049】
稚貝アワビの放流: 稚貝アワビを放流する漁業者は船で生け簀の場所まで行く。生け簀の場所は浮球を目印とする。生け簀の場所まで行った漁業者は放流する稚貝アワビを持って海中に潜る。潜った漁業者は生け簀の出入口の扉を開け、出入口から生け簀内に入り、魚礁ブロック12の上から稚貝アワビを放流する。稚貝アワビを放流した漁業者は、生け簀の出入口から外に出て、生け簀の出入口の扉を閉め、浮上して船上に戻る。
【0050】
アワビへの給餌: アワビに給餌する漁業者は船で生け簀の場所まで行く。生け簀の場所は浮球を目印とする。浮球が取り付けられているロープを船の上に引き上げ、ロープにバケツを取り付けておく。アワビの餌として準備した褐藻類をミキサーで海水とともに破砕し、得られた褐藻類のスラリー(褐藻類の破砕片と海水とからなる液状の混合物)をバケツに入れる。スラリーを入れたバケツをロープとともに海中に降ろし、海中に降ろしたバケツを生け簀の上でひっくり返す。バケツの中のスラリーは生け簀に向かって自重でゆっくり降下し、生け簀の上部ネットをすり抜けて生け簀の内部に入り、魚礁ブロック12の上に落ちる。魚礁ブロック12の上に落ちたスラリー、すなわち褐藻類の破砕片は魚礁ブロック12の隙間に棲息しているアワビの稚貝が食べる。
【0051】
アワビの収獲: アワビを収獲する漁業者は船で生け簀の場所まで行く。生け簀の場所は浮球を目印とする。生け簀の場所まで行った漁業者は収獲用のネット袋を持って海中に潜る。潜った漁業者は生け簀の出入口の扉を開け、出入口から生け簀内に入り、魚礁ブロック12の上から魚礁ブロック12をひっくり返し、魚礁ブロック12の裏側に貼り付いているアワビを剥がし取る。アワビを収獲した漁業者は、生け簀の出入口から外に出て、生け簀の出入口の扉を閉め、浮上して船上に戻る。