(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を
図1〜
図10を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る検体搬送システムが適用される検体検査システムの全体構成を概略的に示す図であり、
図2は
図1における検体搬送システムの要部を拡大して示す図である。また、
図3は、検体搬送システムの検体移載ユニットを拡大して示す図であり、
図4は検体ラックバッファユニットを拡大して示す図である。
【0013】
図1〜
図4において、検体検査システムは、検体容器5に収容された血液や尿などの生体試料(以下、検体と称する)を分析可能な状態にする前処理を行う検体前処理システム1と、検体容器5を搬送する検体搬送システム2と、検体搬送システム2の検体搬送ライン22に沿って配置され、検体に含まれる特定成分の定量・定性分析を行う分析処理を行う複数(本実施の形態では3つ)の分析装置31a〜31c(以降、各分析装置を区別しない場合は分析装置3と称する)と、検体搬送システム2の動作を制御するとともに、検体検査システム全体の動作を制御する制御装置4とから概略構成されている。
【0014】
検体前処理システム1は、検体容器5に収容された検体に前処理を行うための複数の処理ユニット11〜19から構成されている。本実施の形態では各処理ユニット11〜19の詳細は省略するが、処理ユニット11〜19は、検体が収容された検体容器5が投入される処理ユニット11、血清と血餅を分離する遠心分離を行う処理ユニット12、検体容器5の栓を抜き取る開栓動作を行う処理ユニット13、検体容器5から血清部分を別容器(子検体容器などが該当し、ここでは特に検体容器5と区別しない)に移し替える分注動作を行う処理ユニット14、検体移載ユニット21を介して検体搬送ライン22から回収された検体容器5を保持する処理ユニット15などを含んで構成されている。検体前処理システム1においては、検体容器5を1つずつ保持する検体ホルダ59が検体搬送システム2の一部を構成する検体搬送ライン6によって各処理ユニット11〜19間で搬送されている。検体前処理システム1での前処理が終了した検体容器5は、検体搬送システム2の検体移載ユニット21を介して検体搬送ライン22に搬出されるとともに、検体搬送ライン22から検体移載ユニット21を介して回収された検体容器が処理ユニット15に回収されて保持される。
【0015】
分析装置31a〜31cは、それぞれ、検体搬送システム2の検体搬送ライン22に検体ラックバッファユニット23a〜23cを介して接続されており、検体ラックバッファユニット23a〜23cを介して搬送された検体容器5に収容された検体の分析処理を行う。
【0016】
検体搬送システム2は、検体移載ユニット21(検体搬出回収部)と、検体搬送ライン22(基幹ライン)と、検体ラックバッファユニット23a〜23cと、制御装置4とから概略構成されている。
【0017】
検体搬送ライン22は、5つの検体容器を搭載する検体ラック7を単一の経路で双方向に搬送可能に構成されている。また、検体搬送ライン22には、予め複数の区間22a〜22cが設定されている。区間22a〜22cは、各区間に複数の分岐を含まないように設定されれば良い。例えば、本実施の形態では、検体移載ユニット21から検体ラックバッファユニット23aまでを第1区間22a(区間a)、検体ラックバッファユニット23aから検体ラックバッファユニット23bまでを第2区間22b(区間b)、検体ラックバッファユニット23bから検体ラックバッファユニット23cまでを第3区間(区間c)と設定した場合を例示して説明する。なお、本実施の形態では、各区間で一度に搬送できる検体ラック7は1つである。
【0018】
図3に示すように、検体移載ユニット21(検体搬出回収部)は、検体前処理システム1における検体搬送ライン6での検体容器5の搬送に用いる検体ホルダ59(1つの検体容器5を搭載する)と検体搬送システム2における検体搬送ライン22での検体容器5の搬送に用いる検体ラック7(5つの検体容器5を搭載する)との間で検体容器5の移載を行う移載処理を行うものであり、複数の空の検体ラック7を収納するラック収納エリア121と、ラック収納エリア121から検体搬送ライン22へ検体ラック7を送り出すための送りライン122aと、検体搬送ライン22からラック収納エリア121に検体ラック7を回収するための戻りライン122と、送りライン122a及び戻りライン122bと検体搬送ライン22の間に配置され、検体ラック7を載置した状態で送り位置100aと戻り位置100bとの間をシフトすることにより、検体ラック7の搬送方向を送りライン122aと戻りライン122bのいずれか一方に切り替えるシフタ機構100とを有している。
【0019】
検体移載ユニット21では、検体ホルダ59に搭載された検体容器が検体搬送ライン6の検体移載位置6aまで搬送されてくると、ラック収納エリア121から送りライン122aを介して検体移載位置21aまで空の検体ラック7が搬送され、検体移載機構(図示せず)によって検体移載位置6aの検体ホルダ59から検体容器5が抜き取られて検体移載位置21aの検体ラック7に移載される。また、検体搬送ライン22からシフタ機構100を介して戻りライン122bに搬送されてきた検体ラック7が検体移載位置21bまで搬送されてくると、検体移載機構によって検体移載位置21bの検体ラック7から検体容器5が抜き取られ、検体搬送ライン6の検体移載位置6bまで搬送されてきた空の検体ホルダ59に移載される。搭載した全ての検体容器5の移載が完了して空になった検体ラック7は、戻りライン122bを介してラック収納エリア121に収納される。
【0020】
図4に示すように、検体ラックバッファユニット23a〜23c(以降、各検体ラックバッファユニットを区別しない場合は検体ラックバッファユニット23と称する)は、検体搬送ライン22上に配置された搬入側回転機構231及び搬出側回転機構232と、搬入側回転機構231を介して検体搬送ライン22上から検体ラック7を搬入する搬入ライン234と、搬入ライン234に搬入された検体ラック7を一時的に貯留する待機レーン235と、待機レーン235に貯留された検体ラック7よりも優先して搬入ライン234から分析装置3に検体ラック7を搬送する追い越しレーン236と、待機レーン235及び追い越しレーン236を介した検体ラック7を分析装置3側に搬送する搬送ライン237と、分析装置3から排出された検体ラック7を検体搬送ライン22の搬出側回転機構232に搬送する搬出ライン239と、搬送ライン237と搬出ライン239に跨って配置され、検体ラック7を載置した状態で搬送位置238aと搬出位置238bとの間をシフトすることにより、検体ラック7を搬送ライン237と搬出ライン239の間で搬送するラックシフタ238とから概略構成されている。なお、搬入側回転機構231、搬出側回転機構232、及び、搬入側回転機構231を搬出側回転機構232の間をつなぐ搬送ライン233は、検体搬送ライン22の一部を構成する。
【0021】
搬入側回転機構231は水平方向に回転可能に構成されており、検体搬送ライン22に沿う方向に向いた場合には、検体搬送ライン22上を搬送される検体ラック7を通過させることができる。また、検体ラック7を載せた状態で回転することにより、検体搬送ライン22と検体ラックバッファユニット23の搬入ライン234との間で検体ラック7の授受を行うことができる。なお、搬入側回転機構231の回転角度は検体搬送ライン22と搬入ライン234との位置関係によって異なるが、本実施の形態では
図4等に示されるように90度の回転によって各搬送ラインと接続される。
【0022】
搬入ライン234は、検体搬送ライン22側(言い換えると搬入側回転機構231側)から待機レーン235や追い越しレーン236側への検体ラック7の搬送と、待機レーン235や追い越しレーン236側から検体搬送ライン22側(言い換えると搬入側回転機構231側)への検体ラック7の搬送との両方を行うことができる。すなわち、搬入ライン234は、検体ラック7を双方向に搬送することが可能である。なお、搬入側回転機構231の回転角度は検体搬送ライン22と搬出ライン239との位置関係によって異なるが、本実施の形態では
図4等に示されるように90度の回転によって各搬送ラインと接続される。
【0023】
搬出側回転機構232は水平方向に回転可能に構成されており、検体搬送ライン22に沿う方向に向いた場合には、検体搬送ライン22上を搬送される検体ラック7を通過させることができる。また、検体ラック7を載せた状態で回転することにより、検体搬送ライン22と検体ラックバッファユニット23の搬出ライン239との間で検体ラック7の授受を行うことができる。
【0024】
なお、検体ラックバッファユニット23は、その下流側に分析装置3を接続せずに、検体搬送ライン22上を搬送される検体ラック7を一時的に貯留するためだけの用途として使用することもできる。また、回転機構を別途設けることにより直線のみではなく、折れ曲がった搬送ラインを構成することも可能である。
【0025】
ここで、検体ラックバッファユニット23aの搬入側回転機構231及び搬入ライン234は第1区間22a(区間a)、検体ラックバッファユニット23bの搬入側回転機構231及び搬入ライン234は第2区間22b(区間b)、検体ラックバッファユニット23cの搬入側回転機構231及び搬入ライン234は第3区間(区間c)に配置されている。つまり、検体ラックバッファユニット23の少なくとも一部(搬入ライン234)は、検体搬送ライン22上に予め定められた複数の区間ごとに配置され、検体搬送ライン22上から検体容器5(検体容器5を搭載した検体ラック7)を退避させる機能を有する退避機能部として機能する。
【0026】
図5は、制御装置により制御される検体ラックバッファユニットの各レーンの搬送条件を設定する搬送条件設定画面を示す図である。
【0027】
図5において、搬送条件設定画面50は、検体搬送ライン22と分析装置31a〜31cとの間に接続された検体ラックバッファユニット23a〜23cの各レーン235,236の使用方法を選択的に決定する設定ボタン51a,51b,52a,52b,53a,53bを設けた設定部51〜53と、設定内容を決定するOKボタン54と、設定内容をキャンセルするキャンセルボタン55とを備えている。
【0028】
例えば、追い越しレーン236を、緊急検体が追い越せるように空けておきたい場合には、複数あるレーンのうちの一方(例えば、本実施の形態では追い越しレーン236)を緊急検体追い越し用として指定しておくことができる。すなわち、レーン235,236は、通常は、一方のレーンを使用して検体ラックをバッファリングし、到着した順番に分析装置3に送りこむが、緊急検体が到着した場合には、通常空きとなっているレーン236を通ることにより、至急度の低い検体を追い越して緊急の検体を分析装置3に送ることが可能となり、迅速に緊急検体の結果が得られる。
図5においては、バッファレーン(No.2)の設定ボタン51bを「迂回用空き」に設定することにより、レーン(No.2)236は、は通常状態では、検体ラック7を保持しない。そして、緊急検体を搭載した検体ラック7が到着した場合には、レーン(No.1)235に保持した検体ラックを追い越すためにレーン(No.2)236を通って搬送ライン237経由で分析装置3に検体ラック7を搬送する。
【0029】
また、再検査が必要となった検体が生じた場合でも、再検査の対象となる検体容器5を優先的に分析装置3に送ることによって、検体容器5を投入した順に結果を確定することができる。
図5においては、分析装置(No.2)31bのレーン(No.1)235を「一般」に、レーン(No.2)236を「再検待ち」に指定することにより、レーン321には、一般検体のまだ1回も分析を行っていない検体ラックをバッファすることができる。なお、一度分析を行い、結果が出力されるのを待っている検体ラック7は分析装置3から戻った後、一端、搬送ライン22を経由してレーン(No.2)236で待機する。そして、分析結果が出力され、再検査が必要となった場合には、レーン(No.1)235に保持された検体ラック7より優先して分析装置3に搬送される。また、分析結果が出力され、再検査が不要となった検体ラック7は、分析装置3と他のラインの空いている時に、搬送ライン237ラックシフタ238、搬出ライン239、及び搬出側回転機構232を介して検体搬送ライン22に戻され、他の分析装置3に搬送、または、検体移載ユニット21に戻る。また、再検査が必要となった検体ラック7がレーン236の先頭に無い場合には、先頭の検体ラック7をラックシフタ238及び検体搬送ライン22を経由して同じレーン236に戻す処理を繰り返すことにより、再検査が必要になった検体ラック7をレーン236の先頭にし、分析装置3へ搬送することができる。
【0030】
また、未検査の検体容器5を分析装置3にいち早く搬送することが重要ではあるが、分析装置3内に保持できるラックの数には制限がある。分析装置3側から見た場合に、新規の検体の分析受け付けは可能であるが、分析済みの検体ラック7が満杯になり、新規に検体ラック7を受け付けることができない状態になってしまう可能性がある。このような場合には、検体ラックバッファユニット23を分析装置3への投入待ちの役割だけではなく、分析終了後の戻り待ちとしても使用可能である。すなわち、分析装置3で分析を終えた検体ラック7が分析装置3内で満杯になり検体ラックバッファユニット23側からの受け入れができなくなった場合などには、分析装置3への検体ラック7の搬送が連続している場合、検体搬送ライン22を検体移載ユニット21方向への戻りの搬送が行えない。この場合に、分析装置320bから受け取った検体ラック7を搬送ライン22を経由して他の検体ラックバッファユニット23のレーン236に一旦待機する。これにより、分析装置3は新たな検体ラック7を受け入れることができ、分析を継続することができる。
【0031】
制御装置4は、検体移載ユニット21での検体容器5の移載、検体搬送ライン22を介しての検体移載ユニット21から各分析装置3への検体ラック7の搬送、異なる分析装置3の間の検体ラック7の搬送、検体搬送ライン22を介しての検体移載ユニット21への検体ラック7の回収などの処理を制御する。また、検体ラック7の搬送に係る処理の1つとして退避処理を行う。退避処理は、検体容器5の予め定められた優先度を検体搬送ライン22上の同じ区間を同時に搬送される予定の検体容器5と比較し、相対的に優先度の低い検体容器5を退避機能部としての搬入ライン234に退避させる処理である。
【0032】
ここで、退避処理に用いる各検体容器5に設定される優先度の決定方法について説明する。
【0033】
図6は、検体容器に収容された検体種別ごとの優先度を設定する搬送優先度設定画面を示す図である。また、
図7は、検体優先度設定画面で設定された優先度ごとに割り当てられる優先度の値の一例を示す図である。
【0034】
図6において、搬送優先度設定画面60は、一般検体の優先度を設定する設定部61と、緊急検体の優先度を設定する設定部62と、再検査の対象である再検検体の優先度を設定する設定部63と、検査終了後の検体の優先度を設定する設定部64と、搬送優先度設定画面60の設定内容を決定するOKボタン65と、搬送優先度設定画面60の設定内容をキャンセルするキャンセルボタン66とを有している。
【0035】
図7に示すように、例えば、優先度中に設定された一般検体及び再検検体の優先度の値は20に設定され、優先度高に設定された緊急検体の優先度の値は30に設定され、優先度低に設定された検査終了後の検体の優先度の値は10に設定される。このように、各検体の優先度の設定に応じて優先度の値が設定される。なお、上記の各優先度に割り当てられた値は一例を示したものであり、各優先度間で相対的に優先の度合いが決定されるように設定すれば良い。
【0036】
図8は、各検体容器の優先度の決定に用いられる複数のデータテーブルを示すテーブル群を示す図である。また、
図9は、検体搬送ラインで優先的に搬送される検体容器ラックを決定する手順を示すフローチャートである。
【0037】
図8において、データテーブル70は、検体搬送ライン22使用した搬送要求があるかを確認して優先度の値を格納する搬送開始要求テーブル71と、区間ごとに最も優先度の値の高い要求を優先度とともに格納する要求テーブル72と、現在の搬送状態を区間ごとに格納する現状テーブル73と、要求テーブル72と現状テーブル73との比較結果を用いて搬送を開始すると判断した結果を格納する結果テーブル74とを有している。
【0038】
図9において、制御装置4は、まず、検体搬送ライン22を用いる搬送要求があるかを確認し、搬送開始要求テーブル71に優先度を含む情報を格納する(ステップS81)。つまり、検体移載ユニット21からの搬送要求があるか否かを確認し、あった場合にはそのラックの優先度ポイントを求めて結果をテーブル710に格納する。また、分析装置(No.1)から戻ってきた検体ラック7の検体搬送ライン22への搬送要求があるか否かを同様に確認し、確認結果をテーブル711に格納する。同様に、検体搬送ライン22への搬送について開始位置数ぶん繰り返して結果をテーブル712〜Nに格納する
次に、搬送開始要求テーブル71に格納された各搬送要求の優先度ポイントに基づいて搬送区間ごとに最も優先度ポイントの高い搬送要求を要求テーブル72に格納する(ステップS82)。つまり、例えば、搬送区間aについてテーブル711〜Nを比較し、一番優先度の高い搬送開始要求を決定する。そして、決定した搬送開始地点とその優先度を示す値を要求テーブル72に格納する。同様に、搬送区間b〜Xについても比較し、区間ごとに一番優先度の高い搬送開始要求を決定して要求テーブル72に格納する。
【0039】
次に、現在の搬送状態を区間ごとに現状テーブル73に格納する(ステップS83)。つまり、各区間で現在搬送中の検体ラック7について優先度ポイントを求め、現状テーブル73に格納する。
【0040】
ここで、要求テーブル72と現状テーブル73とを比較して各搬送区間で現在搬送中であるかどうかを判定して結果テーブル74に格納し(ステップS84)、判定結果がNOの場合、すなわち、該当する区間が未使用である場合には、その区間で要求されている搬送を開始する(ステップS85)。つまり、要求テーブル72の区間cに搬送開始要求があり、現状テーブル73の区間cには現在搬送中の検体ラック7が無いため、要求テーブル72の区間cにおける要求である、分析装置(No.2)から分析装置(No.3)への検体ラック7搬送を開始する。
【0041】
また、ステップS84での判定結果がNOの場合、すなわち、該当する区間が使用中である場合には、その区間の搬送要求の優先度ポイントが現在搬送中の検体の優先度ポイントよりも高いかどうかを判定し(ステップS86)、判定結果がYESの場合、すなわち、搬送要求の優先度が高い場合には、現在搬送中の検体ラック7に対して退避処理を実施するとともに結果テーブル74に格納する(ステップS87)。要求テーブル72の区間aおよび区間bについて搬送開始要求があり、現状テーブル73の区間aおよび区間bについて現在搬送中の検体ラック7があるため、要求テーブル72の区間aにおける要求である、検体移載ユニット21から分析装置(No.1)への搬送を開始できない。しかし、要求テーブル72の区間aおよび区間bの搬送開始要求は現状テーブル73の区間aおよび区間bの優先度よりも高いため、現状テーブル73の区間aおよび区間bで現在搬送中の検体ラック7を検体搬送ライン22から退避させる退避処理を開始する。そして、退避処理が完了し、区間aおよび区間bの搬送状態が搬送なしとなった後に、検体移載ユニット21から分析装置(No.2)への搬送を開始する。
【0042】
また、ステップS86で優先度が低いと判定された場合、及び、ステップS85,S87が終了した場合には、搬送区間の全てにおいて確認が終了したかどうかを判定し(ステップS88)、判定結果がNOの場合には、ステップS88での判定結果がYESになるまで、すなわち、搬送区間の全てについて確認が終了するまでステップS84〜S87の処理を繰り返す。また、ステップS88での判定結果がYESの場合には処理を終了する。
【0043】
ここで、
図8において、開始位置とは、双方向に搬送可能な検体搬送ライン22への検体ラック7の搬入位置、すなわち、検体移載ユニット21の位置である。
【0044】
また、優先度ポイントとは検体種別、開始位置ごとの優先度などから算出した数値であり、大きいほど優先度が高いことを示している。優先度ポイントは以下の計算式により求める。すなわち、優先度ポイントX=α×(検体種別ごとの優先度)+β×(開始位置の優先度)+γ×(ラック待機時間)で求められる。
【0045】
上記で求めた優先度を表す値を目的位置までのテーブル710に格納する。本実施の形態では、α=10、β=1、γ=0としている。また、検体種別ごとの優先度は、内部データとして
図9に示した優先度の値に変換する。開始位置毎の優先度は、移載機=5、分析装置(No.1)=3、分析装置(No.2)=2、分析装置(No.3)=1としている。
【0046】
例えば、
図8の例では、搬送開始要求として、「移載機から分析装置(No.2)への緊急検体の搬送」、「分析装置(No.2)から分析装置(No.3)への一般検体の搬送」、「分析装置(No.3)から検体移載ユニット21への分析終了後の検体の搬送(戻り)」の要求がある場合を例示している。また、検体搬送ライン22では「分析装置(No.2)から検体移載ユニット21への検体ラック7が搬送中」である場合を示している。なお、
図9において、空欄は、当該データが無いことを表す。
【0047】
ここで、退避処理における検体ラックの具体的な退避動作について以下に例示して説明する。
【0048】
例えば、緊急検体を優先して搬送させる場合の退避動作では、分析装置3で分析を終えた検体ラック7を検体ラックバッファユニット23の搬出ライン239で待機させ、緊急の検体を優先的に目的の分析装置3の検体ラックバッファユニット23に搬送する。
【0049】
また、搬入側回転機構231を利用した退避動作では、検体搬送ライン22上を搬送中の優先度の低い方の検体ラック7を、搬入側回転機構231を介して検体ラックバッファユニット23の搬入ライン234上に一時的に退避する。そして、優先度の高い検体ラック7の検体搬送ライン22上での搬送を行ってから、搬入ライン234に退避した検体ラック7を搬入側回転機構231を介して再び検体搬送ライン22上に戻し、搬送を継続する。
【0050】
また、検体ラックバッファユニット23のラックシフタ238を利用した迂回による追い越し(退避動作)では、例えば、分析装置3から検体移載ユニット21へ戻る搬送優先度の低い検体ラック7が検体搬送ライン22を搬送中に、優先度の高い検体ラック7を検体移載ユニット21から分析装置3に搬送する必要が生じた場合には、優先度の低い検体ラック7を搬入側回転機構231を介して検体ラックバッファユニット23の搬入ライン234上に一時的に退避する。続いて、レーン236およびラックシフタ238を介して検体ラック7を搬送し、搬出ライン239および搬出側回転機構232を介して検体搬送ライン22に戻し、搬送を継続する。なお、このラックシフタ238は、分析装置3が分析動作中に使用不可となってしまった場合には、レーン235,236にバッファ済の検体ラック7を他の分析装置3に転送する場合にも利用可能である。
【0051】
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
【0052】
検体検査システムにおいては、分析処理の優先度が高い検体が投入される場合があり、このような検体は検体搬送システムによって優先度が相対的に低い他の検体よりも優先的に分析装置に搬送されて分析処理を施される必要がある。しかしながら、上記従来技術においては、各分析装置のバッファ部に取り込んだ未処理のラック数から分析処理の所要時間を管理し、所要時間の短いものに優先度の高いラックを搬送しているに過ぎない。したがって、優先度の高いラックの搬送が他のラックの搬送に妨げられる場合や、分析装置に搬送された優先度の高いラックの分析処理がすでに分析装置に搬送された他のラックの分析処理の完了まで行えない場合が生じる。このため、検体の分析効率が低下してしまうという問題があり、検体の優先度に応じた搬送処理や分析処理のさらなる効率改善が求められていた。
【0053】
これに対して本実施の形態においては、検体を収容した検体容器5(つまり、検体ラック7)を単一の経路で双方向に搬送可能な検体搬送ライン22と、検体搬送ライン22の一端に配置され、検体搬送ライン22に検体容器5を搬出するとともに、検体搬送ライン22から検体容器5を回収する検体移載ユニット21と、検体搬送ライン22上に予め定められた複数の区間ごとに配置され、検体搬送ライン22上から検体容器5を退避させる機能を有する退避機能部とを備え、検体容器5の予め定められた優先度を検体搬送ライン22上の同じ区間を同時に搬送される予定の検体容器5で比較し、相対的に優先度の低い検体容器5を退避機能部に退避させる退避処理を行うように構成したので、検体の優先度に応じた搬送処理や分析処理の効率改善を行うことができる。
【0054】
<第1の実施の形態の変形例>
本発明の第1の実施の形態の変形例を
図10を参照しつつ説明する。
【0055】
本変形例は、第1の実施の形態の検体ラックバッファユニットにより簡潔な構成のものを用いたものである。
【0056】
図10は、本変形例の検体ラックバッファユニットを拡大して示す図である。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0057】
図10において、検体ラックバッファユニット23Aは、検体搬送ライン22上に配置された搬入側回転機構231及び搬出側回転機構232と、搬入側回転機構231を介して検体搬送ライン22上から検体ラック7を搬入する搬入ライン234と、搬入ライン234に搬入された検体ラック7を一時的に貯留する待機レーン235と、待機レーン235を介した検体ラック7を分析装置3側に搬送する搬送ライン237と、分析装置3から排出された検体ラック7を検体搬送ライン22の搬出側回転機構232に搬送する搬出ライン239と、搬送ライン237と搬出ライン239に跨って配置され、検体ラック7を載置した状態で搬送位置238aと搬出位置128bとの間をシフトすることにより、検体ラック7を搬送ライン237と搬出ライン239の間で搬送するラックシフタ238とから概略構成されている。
【0058】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0059】
以上のように構成した本変形例においても、検体搬送ライン22上から検体容器5(検体容器5を搭載した検体ラック7)を退避させる機能を有する退避機能部として機能する。
【0060】
なお、本発明は、上記した実施の形態及び各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例や組み合わせが含まれる。つまり、上記した実施の形態は本願発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。