【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の新規な超高分子量ポリエチレン粒子を用いてなり、特定の空隙率と平均細孔径を有する多孔質焼結体が、高い強度と耐熱性を有する多孔質焼結体となることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0010】
即ち、本発明は、少なくとも下記(1)〜(3)に示す特性のいずれをも満足することを特徴とする超高分子量ポリエチレン粒子を用いてなる焼結体であって、空隙率10〜70%、平均細孔径0.5〜200μmを有すること特徴とする超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体に関するものである。
(1)固有粘度([η])が10dl/g以上80dl/g以下、
(2)嵩密度が130kg/m
3以上700kg/m
3以下、
(3)示差走査型熱量計(DSC)にて、0℃から10℃/分の昇温速度で230℃まで昇温(1stスキャン)した際の1stスキャンの融点(Tm
1)、その後、5分間放置後、10℃/分の降温速度で−20℃まで降温し、5分間放置後、再度、10℃/分の昇温速度で−20℃から230℃まで昇温(2ndスキャン)した際の2ndスキャンの融点(Tm
2)をそれぞれ測定し、該Tm
1と該Tm
2の差(ΔTm=Tm
1−Tm
2)が9℃以上30℃以下。
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体は、空隙率10〜70%、好ましくは20〜70%を有するものである。ここで、空隙率が10%未満である場合、焼結体の通気性、透過性が劣り、分離膜、透過膜としての処理速度低下の原因となる。一方、空隙率が70%を越える場合、焼結体は強度、剛性が低くなる。なお、本発明における空隙率は、例えば、水、水銀等の各種流体の加圧下での充填量から求める方法の他、より簡便には、比重計を用いて測定した見掛け比重と真比重の関係より、
空隙率(%)=(1−(見掛け比重)/(真比重))×100
との計算式により求めることもできる。
【0013】
また、本発明の超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体は、平均細孔径0.5〜200μm、好ましくは0.5〜50μmを有するものである。ここで、平均細孔径が0.5μm未満である場合、焼結体は通気性、透過性が劣り、分離膜、透過膜としての処理速度低下の原因となる。一方、平均細孔径が200μmを越える場合、焼結体は融着性が劣り、強度が劣る焼結体となる。
【0014】
本発明の超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体は、少なくとも(1)固有粘度(以下、[η]と記す。)が10dl/g以上80dl/g以下、(2)嵩密度が130kg/m
3以上700kg/m
3以下、(3)示差走査型熱量計(以下、DSCと記す。)にて、0℃から10℃/分の昇温速度で230℃まで昇温(以下、1stスキャンと記す。)した際の1stスキャンの融点(以下、Tm
1と記す。)、その後、5分間放置後、10℃/分の降温速度で−20℃まで降温し、5分間放置後、再度、10℃/分の昇温速度で−20℃から230℃まで昇温(以下、2ndスキャンと記す。)した際の2ndスキャンの融点(以下、Tm
2と記す。)をそれぞれ測定し、該Tm
1と該Tm
2の差(ΔTm=Tm
1−Tm
2)が9℃以上30℃以下、という特性のいずれをも満足する超高分子量ポリエチレン粒子を用いてなるものである。
【0015】
該超高分子量ポリエチレン粒子は、超高分子量ポリエチレンが粒子形状を有するものであり、超高分子量ポリエチレンには、ポリエチレンと称される範疇のものが属し、例えば超高分子量エチレン単独重合体;超高分子量エチレン−プロピレン共重合体、超高分子量エチレン−1−ブテン共重合体、超高分子量エチレン−1−ヘキセン共重合体、超高分子量エチレン−1−オクテン共重合体等の超高分子量エチレン−α−オレフィン共重合体;等を挙げることができる。
【0016】
該超高分子量ポリエチレン粒子は、(1)[η]が10dl/g以上80dl/g以下のものである。ここで、[η]が10dl/g未満である場合、得られる焼結体は力学特性、耐熱性に劣るものとなる。一方、[η]が80dl/gを越える場合、成形時の流動性に劣るため、焼結体とすることが困難なものとなる。なお、本発明における[η]は、例えばウベローデ型粘度計を用い、デカヒドロナフタレン、を溶媒(極限粘度は溶媒によって違いますので、デカヒドロナフタレンに統一します。)としたポリマー濃度0.0005〜0.01%の溶液にて、135℃において測定する方法により測定することが可能である。
【0017】
また、該超高分子量ポリエチレン粒子は、(2)嵩密度が130kg/m
3以上700kg/m
3以下であり、良好な細孔分布の多孔質焼結体となることから、200kg/m
3以上600kg/m
3以下であることが好ましい。ここで、嵩密度が130kg/m
3未満である場合、粒子の流動性が低下する、保管設備、保管容器、ホッパーでの充満率が低下する等、操作性を著しく低下させる等の課題を発生しやすくなる。一方、嵩密度が700kg/m
3を超える場合、成形加工時における加工性に劣り、得られる焼結体の物性低下等の課題を発生しやすくなる。なお、嵩密度は、例えばJIS K6760(1995)に準拠した方法で測定することが可能である。
【0018】
該超高分子量ポリエチレン粒子は、(3)DSCにて、1stスキャンした際の1stスキャンのTm
1、その後、5分間放置後、10℃/分の降温速度で−20℃まで降温し、5分間放置後、再度、2ndスキャンした際の2ndスキャンのTm
2をそれぞれ測定し、該Tm
1と該Tm
2の差(ΔTm=Tm
1−Tm
2)が9℃以上30℃以下であり、特に耐熱性、機械的強度、成形性のバランスに優れる超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体となることからΔTmが9℃以上15℃以下であることが好ましい。ここでΔTmが9℃未満である場合、得られる焼結体は、耐熱性、強度等に劣るものとなる。一方、ΔTmが30℃を超える場合、得られる超高分子量ポリエチレン粒子を成形加工に供した際の成形加工性に劣るものとなるばかりか、得られる焼結体も物性に劣るものとなる。
【0019】
なお、一般的なポリエチレンにおいては、高融点を有するポリエチレンとして、高密度ポリエチレンに属するエチレン単独重合体が知られている。しかし、該高密度ポリエチレンにおける融点は130〜135℃程度と低いものである。一方、本発明の多孔質焼結体に用いる超高分子量ポリエチレン粒子は、従来から知られているポリエチレンと比較しても極めて高い融点(Tm)を有するものであり、例えばエチレン単独重合体であるならば、Tm
1として140℃を超える極めて高い融点を有している。該超高分子量ポリエチレン粒子においては、ポリエチレンの分子鎖が配向するなどして、高度に結晶化されているため、示差走査型熱量計(DSC)にて測定した際のTm
1とTm
2差であるΔTmが9℃以上30℃以下という極めて大きな差となると考えている。
【0020】
また、本発明の多孔質焼結体に用いる超高分子量ポリエチレン粒子は、耐熱性、強度に優れる多孔質焼結体となることから、分子量分布が狭いものが好ましく、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が4以下、さらに1.5以上4以下のものであることが好ましい。その際のMw、Mnは、例えばゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として測定することができる。
【0021】
さらに、該超高分子量ポリエチレン粒子は、チタンが原因で発生する変色(黄変)や酸化劣化等の抑制が可能で色調が良好なものとなり、耐候性にも優れる超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体を提供することが可能となるから、チタンの含有量が少ないものであることが好ましく、特に(4)チタンの含有量が0.02ppm以下又は検出限界以下、のものが好ましい。なお、チタンの含有量は、化学滴定法、蛍光X線分析装置、ICP発光分析装置等による測定等により求めることができる。
【0022】
該超高分子量ポリエチレン粒子は、より強靭な超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体を提供することが可能となることから、(5)プレス温度190℃、プレス圧力20MPaで加熱圧縮した後、前記(3)により測定した2ndスキャンのTm
2より10℃〜30℃低い金型温度で冷却して成形したシートの引張破断強度(TS(MPa))が、下記関係式(a)を満たすものであることが好ましく、更により強靭で機械強度、耐摩耗性に優れる超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体を提供することが可能となることから、下記関係式(c)を満たすものであることが好ましい。
TS≧1.35×Tm
2−130 (a)
1.35×Tm
2−130≦TS≦2×Tm
2−175 (c)
なお、一般的なポリエチレンの引張破断強度は、最も高い高密度ポリエチレンでも45MPa程度と低いものである。また、従来の超高分子量ポリエチレンも、その高い分子量を十分生かすことができておらず、引張破断強度は一般的なポリエチレンと同等であり、50MPaを超えることはなかった。
【0023】
しかし、本発明の多孔質焼結体に用いる超高分子量ポリエチレン粒子は、高分子鎖が適度に絡み合っているため、固有粘度が10dl/gを超える超高分子量ポリエチレンの領域であっても、更にその分子量を高くしても引張破断強度が低下せず、むしろ、さらに向上する傾向を示すものである。そして、本発明の多孔質焼結体に用いる超高分子量ポリエチレン粒子としては、焼結体とした際により強度が優れるものとなることから、高密度ポリエチレンの領域に属するものであるならば前記(5)により測定した引張破断強度として、40MPa以上を有するものであることが好ましく、より好ましくは50MPa以上を有するものである。
【0024】
なお、引張破断強度の測定条件としては、特に制限はなく、例えば厚み0.1〜5mm、幅1〜50mmの短冊形、ダンベル型等の試験片を、引張速度1mm/分〜500mm/分の速度で測定する方法を例示することができる。
【0025】
該超高分子量ポリエチレン粒子は、比較的低分子量成分の含有量が低く、高分子鎖の適度な絡み合いが可能となり、特に耐熱性にも優れる超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体となることから、(6)加熱圧縮成形したシートを、前記(3)により測定した2ndスキャンのTm
2より20℃高い温度で溶融延伸したときの破断応力(MTS(MPa))が2MPa以上を有するものであることが好ましく、更に3MPa以上を有するものであることが好ましい。
【0026】
なお、分子量50万以下の一般的なポリエチレンは、融点(Tm)より20℃高い温度では、流動性が高く、自重で成形体が変形してしまい、溶融延伸はできない。また、従来の超高分子量ポリエチレンは、融点(Tm)より20℃高い温度でも、溶融延伸は可能であるが、含有する低分子量成分の影響により、歪み硬化が起きず、応力が低い状態のまま、1MPa前後の応力で破断してしまい、耐熱性に劣るものであった。
【0027】
そして、溶融延伸に用いる加熱圧縮成形シートの成形条件としては、制限はなく、例えばプレス温度100〜250℃、プレス圧力5〜50MPaの条件であり、その中でも特に前記(5)に記載した加熱圧縮成形法を例示することができる。また、溶融延伸方法としては、例えば厚み0.1〜5mm、幅1〜50mmの短冊形、ダンベル型等の試験片を、引張速度1mm/分〜500mm/分の速度で延伸する方法を例示することができる。さらに、溶融延伸時の破断応力としては、歪み硬化が起き、延伸に伴い応力が増加した場合はその最大値を破断応力とし、歪み硬化が起きず、延伸しても応力が増加しない場合は、降伏後の平坦領域の応力を破断応力とした。
【0028】
該超高分子量ポリエチレン粒子は、特に耐熱性に優れる超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体となることから、(7)前記(6)により測定した溶融延伸したときの破断時の応力(MTS(MPa))と[η]が、下記関係式(b)を満たすものであることが好ましく、特に溶融延伸性、成形性にも優れるものとなることから、下記関係式(d)を満たすものであることが好ましい。
MTS≧0.079×[η] (b)
0.079×[η]≦MTS≦0.23×[η] (d)
該超高分子量ポリエチレン粒子は、特に粉体としての流動性に優れ、成形加工性、物性に優れる超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体となることから、(8)平均粒径が1μm以上1000μm以下であるものが好ましい。なお、平均粒径に関しては、例えばJIS Z8801で規定された標準篩を用いたふるい分け試験法等の方法により測定することができる。
【0029】
本発明の超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体に用いられる超高分子量ポリエチレン粒子の製造方法としては、該超高分子量ポリエチレン粒子の製造が可能であれば如何なる方法を用いても良く、例えばポリエチレン製造用触媒を用い、エチレンの単独重合、エチレンと他のオレフィンとの共重合を行う方法を挙げることができ、その際のα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等を挙げることができる。また、重合方法としては、例えば溶液重合法、塊状重合法、気相重合法、スラリー重合法等の方法を挙げることができ、その中でも、特に粒子形状が整った超高分子量ポリエチレン粒子の製造が可能となると共に、高融点、高結晶化度を有し、機械強度、耐熱性、耐摩耗性に優れる超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体を提供しうる超高分子量ポリエチレン粒子を効率よく安定的に製造することが可能となることからスラリー重合法であることが好ましい。また、スラリー重合法に用いる溶媒としては、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、イソブタン、プロパン等の液化ガス、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、1−ヘキセンなどのオレフィンを溶媒として用いることもできる。
【0030】
また、該超高分子量ポリエチレン粒子を製造するのに用いる、ポリエチレン製造用触媒としては、該超高分子量ポリエチレン粒子の製造が可能であれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば少なくとも遷移金属化合物(A)、脂肪族塩にて変性した有機変性粘土(B)及び有機アルミニウム化合物(C)より得られるメタロセン系触媒を挙げることができる。
【0031】
そして、該遷移金属化合物(A)としては、例えば(置換)シクロペンタジエニル基と(置換)フルオレニル基を有する遷移金属化合物、(置換)シクロペンタジエニル基と(置換)インデニル基を有する遷移金属化合物、(置換)インデニル基と(置換)フルオレニル基を有する遷移金属化合物等を挙げることができ、その際の遷移金属としては、例えばジルコニウム、ハフニウム等を挙げることができ、その中でも特に超高分子量ポリエチレン粒子を効率よく製造することが可能となることから、(置換)シクロペンタジエニル基とアミノ基置換フルオレニル基を有するジルコニウム化合物、(置換)シクロペンタジエニル基とアミノ基置換フルオレニル基を有するハフニウム化合物であることが好ましい。
【0032】
そして、より具体的には、例えばジフェニルメチレン(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2−(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2−(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2−(ジベンジルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,7−ビス(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,7−ビス(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,7−ビス(ジベンジルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4−(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4−(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4−(ジベンジルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−(ジベンジルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ビス(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ビス(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ビス(ジベンジルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(4−(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(4−(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(4−(ジベンジルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、7−ビス(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、7−ビス(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、7−ビス(ジイソプロピルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、7−ビス(ジ−n−ブチル−アミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、7−ビス(ジベンジルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3、6−ビス(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3、6−ビス(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3、6−ビス(ジ−n−プロピル−アミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、5−ビス(ジメチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、5−ビス(ジエチルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2、5−ビス(ジイソプロピルアミノ)−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドなどのジルコニウム化合物;これらのジクロロ体をジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体に変えたジルコニウム化合物、およびこれら化合物のジルコニウムをハフニウムに変えたハフニウム化合物などを例示することができる。
【0033】
該脂肪族塩にて変性した有機変性粘土(B)としては、例えばN,N−ジメチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−エチル−ベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン塩酸塩、N,N−ジオレイル−メチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N−メチル−N−エチル−ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミンフッ化水素酸塩、N,N−ジオレイル−メチルアミンフッ化水素酸塩、N,N−ジメチル−ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N−メチル−N−エチル−ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン臭化水素酸塩、N,N−ジオレイル−メチルアミン臭化水素酸塩、N,N−ジメチル−ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N−メチル−N−エチル−ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミンヨウ化水素酸塩、N,N−ジオレイル−メチルアミンヨウ化水素酸塩、N,N−ジメチル−ベヘニルアミン硫酸塩、N−メチル−N−エチル−ベヘニルアミン硫酸塩、N−メチル−N−n−プロピル−ベヘニルアミン硫酸塩、N,N−ジオレイル−メチルアミン硫酸塩等の脂肪族アミン塩;P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン塩酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィンフッ化水素酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィンフッ化水素酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィンフッ化水素酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン臭化水素酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィンヨウ化水素酸塩、P,P−ジメチル−ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P−ジエチル−ベヘニルホスフィン硫酸塩、P,P−ジプロピル−ベヘニルホスフィン硫酸塩等の脂肪族ホスフォニウム塩;等の脂肪族塩により変性された粘土を挙げることができる。
【0034】
また、該有機変性粘土(B)を構成する粘土化合物としては、粘土化合物の範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、一般的にシリカ四面体が二次元上に連続した四面体シートと、アルミナ八面体やマグネシア八面体等が二次元上に連続した八面体シートが1:1又は2:1で組合わさって構成されるシリケート層と呼ばれる層が何枚にも重なって形成され、一部のシリカ四面体のSiがAl、アルミナ八面体のAlがMg、マグネシア八面体のMgがLi等に同型置換されることにより層内部の正電荷が不足し、層全体として負電荷を帯びており、この負電荷を補償するために層間にはNa
+やCa
2+等の陽イオンが存在しているものとして知られているものである。そして、該粘土化合物としては天然品、または合成品としてのカオリナイト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、脆雲母、縁泥石等が存在し、これらを用いることが可能であり、その中でも入手のしやすさと有機変性の容易さからスメクタイトが好ましく、特にスメクタイトのなかでもヘクトライトまたはモンモリロナイトがさらに好ましい。
【0035】
該有機変性粘土(B)は、該粘土化合物の層間に該脂肪族塩を導入し、イオン複合体を形成することにより得る事が可能である。該有機変性粘土(B)を調製する際には、粘土化合物の濃度0.1〜30重量%、処理温度0〜150℃の条件を選択して処理を行うことが好ましい。また、該脂肪族塩は固体として調製して溶媒に溶解させて使用しても良いし、溶媒中での化学反応により該脂肪族塩の溶液を調製してそのまま使用しても良い。該粘土化合物と該脂肪族塩の反応量比については、粘土化合物の交換可能なカチオンに対して当量以上の脂肪族塩を用いることが好ましい。処理溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;エチルアルコール、メチルアルコール等のアルコール類;エチルエーテル、n−ブチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;アセトン;1,4−ジオキサン;テトラヒドロフラン;水、等を用いることができる。そして、好ましくは、アルコール類または水を単独もしくは溶媒の一成分として用いることである。
【0036】
また、本発明のポリエチレン製造用触媒を構成する有機変性粘土(B)の粒径に制限はなく、その中でも触媒調製時の効率、ポリエチレン製造時の効率に優れるものとなることから1〜100μmであることが好ましい。その際の粒径を調節する方法にも制限はなく、大きな粒子を粉砕して適切な粒径にしても、小さな粒子を造粒して適切な粒径にしても良く、あるいは粉砕と造粒を組み合わせても良い。また、粒径の調節は有機変性前の粘土に行っても、変性後の有機変性粘土に行っても良い。
【0037】
該有機アルミニウム化合物(C)としては、有機アルミニウム化合物と称される範疇に属するものであれば如何なるものも用いることができ、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0038】
該ポリエチレン製造用触媒を構成する該遷移金属化合物(A)(以下(A)成分ということもある。)、該有機変性粘土(B)(以下、(B)成分ということもある。)、および該有機アルミニウム化合物(C)(以下、(C)成分ということもある。)の使用割合に関しては、ポリエチレン製造用触媒としての使用が可能であれば如何なる制限を受けるものでなく、その中でも、特に超高分子量ポリエチレン粒子を生産効率よく製造することが可能なポリエチレン製造用触媒となることから、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比は(A)成分:(C)成分=100:1〜1:100000の範囲にあることが好ましく、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましい。また、(A)成分と(B)成分の重量比が(A)成分:(B)成分=10:1〜1:10000にあることが好ましく、特に3:1〜1:1000の範囲であることが好ましい。
【0039】
該ポリエチレン製造用触媒の調製方法に関しては、該(A)成分、該(B)成分および該(C)成分を含むポリエチレン製造用触媒を調製することが可能であれば如何なる方法を用いてもよく、例えば各(A)、(B)、(C)成分に関して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法などを挙げることができる。また、これらの成分を反応させる順番に関しても制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も制限はない。また、(A)成分、(B)成分、(C)成分のそれぞれを2種類以上用いてポリエチレン製造用触媒を調製することも可能である。
【0040】
本発明の超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体に用いられる超高分子量ポリエチレン粒子を製造する際の重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件については任意に選択可能であり、その中でも、重合温度0〜100℃、重合時間10秒〜20時間、重合圧力常圧〜100MPaの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて、2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られるポリエチレン粒子は、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0041】
また、本発明の超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体においては、強度、耐熱性等を損なわない範囲で、融着性を向上させ効率よく焼結体とすることが可能となることから、固有粘度の異なる超高分子量ポリエチレン粒子を2種類以上併用した混合粒子を用いることも可能である。さらに、該超高分子量ポリエチレン粒子にポリエチレン粒子を配合した混合粒子を用いることも可能である。この際のポリエチレン粒子としては、強度、耐熱性と焼結体としての成形加工性のバランスに優れるものとなることから[η]=8dl/g以下であることが好ましく、特に1.5dl/g以上6dl/g以下であることが好ましい。また、その配合量としては該超高分子量ポリエチレン粒子100重量部に対して、30重量部以下であることが好ましく、特に10重量部以下であることが好ましい。
【0042】
本発明の超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体の製造方法としては、本発明の超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体を製造できる方法であれば如何なる方法を用いてもよく、例えば該超高分子量ポリエチレン粒子を加圧した密閉容器に入れて、もしくは、加圧後、密閉容器に入れて、外部加熱、スチーム加熱、電磁波、超音波等により加熱する方法、また、融点以下の温度で圧縮成形し、多孔質体を成形後、無加圧、もしくは開放状態で加熱成形する方法、等を挙げることができる。特に、該超高分子量ポリエチレン粒子は、融点以下の温度での圧着性に優れることから、例えば、室温おいて圧縮成形することにより、壊れにくい圧着成形体が得られる。(例えば、市販の超高分子量PEパウダーを室温で圧着成形した成形体は、壊れやすく、焼結工程へ移送することができない。)これを、無加圧もしくは開放状態で加熱溶融(焼結)させることによっても、本発明の超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体を得ることができる。より具体的な方法としては、例えば、前記(3)に記載の1stスキャンのT
m1以下の温度、より好ましくはT
m1より10℃以上低い温度、更に好ましくは−30℃〜50℃の温度で、適度な空隙率となるように圧縮成形した後、開放状態、加圧状態、もしくは密閉容器にいれて、加熱焼成することで成形する方法である。そして、圧縮成形時の温度をT
m1以下とすることにより、細孔径分布の狭い良質な多孔質焼結体とすることができる。また、圧縮成形の際の圧力は、より容易に空隙率10〜70%を有する多孔質焼結体を得ることができることから、20MPa以下とすることが好ましい。次に、加熱焼成の条件としては、より効率的に多孔質焼結体を得ることが可能となることから、該T
m1以上の温度であることが好ましく、特に該T
m1+10℃以上200℃以下であることが好ましく、その際の圧力は、無加圧でも加圧圧縮してもよく、加圧圧縮の場合は20MPa以下であることが好ましい。
【0043】
本発明の超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体とする際の雰囲気としては、大気中でも不活性ガス雰囲気下でも構わない。中でも超高分子量ポリエチレンの酸化劣化を抑制するため、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で成形を行うこともできる。また、真空下において成形しても良い。さらに、焼結後に、アニーリングを施すことも可能である。
【0044】
本発明の超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体は、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、抗ブロッキング剤、スリップ剤、滑剤、核剤、顔料等;カーボンブラック、タルク、ガラス粉、ガラス繊維、金属粉等の無機充填剤または補強剤;有機充填剤または補強剤;難燃剤;中性子遮蔽剤等の公知の添加剤、更には、ポリプロピレン系樹脂、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、これらの無水マレイン酸グラフト物等の樹脂を配合していても良く、このような添加剤の添加方法としては、超高分子量ポリエチレン粒子に配合する方法、超高分子量ポリエチレン粒子と、成形の際にブレンドする方法、予めドライブレンドもしくはメルトブレンドする方法、等を挙げることができる。
【0045】
本発明の超高分子量ポリエチレン製多孔質焼結体は、高い強度を有し、耐熱性、滑り性等にも優れることから、産業用機械等の摺動部材、工業部品、各種テープ、シート、フィルム、パイプ、分離膜、チューブ等の部材として用いることができる。