特許第6711052号(P6711052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6711052環状エステル重合触媒及びそれを用いた環状エステル重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711052
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】環状エステル重合触媒及びそれを用いた環状エステル重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/87 20060101AFI20200608BHJP
   C08G 63/82 20060101ALI20200608BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20200608BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20200608BHJP
【FI】
   C08G63/87
   C08G63/82
   C08G63/08ZBP
   !C08L101/16
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-56109(P2016-56109)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-171709(P2017-171709A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 善彰
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏秀
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−178131(JP,A)
【文献】 特開平11−035668(JP,A)
【文献】 特開2002−265579(JP,A)
【文献】 特開2013−227457(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/024577(WO,A1)
【文献】 特開2017−141431(JP,A)
【文献】 特開2017−141432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 − 63/91
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるホスファゼニウム塩とルイス酸とを含有することを特徴とする環状エステルの開環重合触媒。
【化1】
(上記一般式(1)中、R及びRは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。ここで、RとRが互いに結合した環構造、又はR同士若しくはR同士が互いに結合した環構造を形成しても良い。Xはヒドロキシアニオン、炭素数1〜4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンを表す。Yは炭素原子を表し、aは2である。)。
【請求項2】
ルイス酸が、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の環状エステルの開環重合触媒。
【請求項3】
上記一般式(1)で示されるホスファゼニウム塩とルイス酸との割合が、ホスファゼニウム塩:ルイス酸=1:0.1〜100(モル比)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の環状エステルの開環重合触媒。
【請求項4】
上記一般式(1)で示されるホスファゼニウム塩、ルイス酸、及び活性水素含有化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環状エステルの開環重合触媒。
【請求項5】
活性水素含有化合物中の活性水素1モルに対し、上記一般式(1)で示されるホスファゼニウム塩が0.001〜10モルの範囲であることを特徴とする請求項4に記載の環状エステルの開環重合触媒。
【請求項6】
活性水素含有化合物中の活性水素1モルに対し、ルイス酸が0.001〜10モルの範囲であることを特徴とする請求項4又は5に記載の環状エステルの開環重合触媒。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の環状エステルの開環重合触媒存在下、環状エステルの開環重合を行うことを特徴とする環状エステルの開環重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状エステルの開環重合触媒及びそれを用いた環状エステルの開環重合体の製造方法に関する。特に高分子量かつ狭分子量分布を示す環状エステルの開環重合体を、効率良く製造することが可能となる環状エステルの開環重合触媒及びそれを用いた環状エステルの開環重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環状エステルの開環重合を行い環状エステルの開環重合体を製造する方法として、例えば、オクチル酸スズ、アルキルアルミニウム化合物等の金属触媒を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に提案の方法では、使用するスズ触媒の毒性が懸念されるとともに、生成するポリマーの分子量分布が広くなるという課題を抱えていた。また、特許文献2に提案の方法では、生成するポリマーの分子量分布が広くなるという課題を抱えていた。
【0004】
一方、非金属系触媒を用いて環状エステルの開環重合体を製造する方法として、例えば、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)等の有機塩基触媒を用いる方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献3に提案の方法は、溶媒として超臨界二酸化炭素を用いるため厳しい重合条件が必要であったり、生成するポリマーの分子量分布が広くなるという課題を抱えていた。
【0006】
また、2種類の化合物の混合触媒を用いて環状エステルの開環重合体を製造する方法として、例えば、ルイス酸及びルイス塩基の混合触媒を用いる方法(例えば、特許文献4参照)、有機塩基及び有機塩基・HX塩(HXは鉱物酸又は有機酸を表す)の混合触媒を用いる方法(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0007】
しかしながら、特許文献4、5に提案の方法においては、生成するポリマーの分子量分布は狭いものではあったが、触媒1モル当たりの反応モノマー量(触媒回転数)は、200モル以下であり、効率的な製造方法と言えるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3715100号明細書
【特許文献2】国際公開第2010/087422号
【特許文献3】特許第5668354号明細書
【特許文献4】特開2013−227457号公報
【特許文献5】特開2015−17251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、高分子量かつ狭分子量分布を示す環状エステルの開環重合体を、少ない触媒使用量であっても効率良く製造することが可能となる環状エステルの開環重合触媒及びそれを用いた環状エステルの開環重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のホスファゼニウム塩とルイス酸、場合によっては活性水素含有化合物とを含有する環状エステルの開環重合触媒が、少ない触媒使用量であっても、高分子量かつ狭分子量分布の環状エステルの開環重合体を効率良く製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりの環状エステルの開環重合触媒及びそれを用いた環状エステルの開環重合体の製造方法に関するものである。
【0012】
[1]下記一般式(1)で示されるホスファゼニウム塩とルイス酸とを含有することを特徴とする環状エステルの開環重合触媒。
【0013】
【化1】
【0014】
(上記一般式(1)中、R及びRは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。ここで、RとRが互いに結合した環構造、又はR同士若しくはR同士が互いに結合した環構造を形成しても良い。Xはヒドロキシアニオン、炭素数1〜4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンを表す。Yは炭素原子又はリン原子を表し、aはYが炭素原子のとき2であり、Yがリン原子のとき3である。)。
【0015】
[2]ルイス酸が、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする上記[1]に記載の環状エステルの開環重合触媒。
【0016】
[3]上記一般式(1)で示されるホスファゼニウム塩とルイス酸との割合が、ホスファゼニウム塩:ルイス酸=1:0.1〜100(モル比)であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の環状エステルの開環重合触媒。
【0017】
[4]上記一般式(1)で示されるホスファゼニウム塩、ルイス酸、及び活性水素含有化合物を含有することを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の環状エステルの開環重合触媒。
【0018】
[5]活性水素含有化合物中の活性水素1モルに対し、上記一般式(1)で示されるホスファゼニウム塩が0.001〜10モルの範囲であることを特徴とする上記[4]に記載の環状エステルの開環重合触媒。
【0019】
[6]活性水素含有化合物中の活性水素1モルに対し、ルイス酸が0.001〜10モルの範囲であることを特徴とする上記[4]又は[5]に記載の環状エステルの開環重合触媒。
【0020】
[7]上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の環状エステルの開環重合触媒存在下、環状エステルの開環重合を行うことを特徴とする環状エステルの開環重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の環状エステルの開環重合触媒は、少ない触媒使用量であっても、効率良く環状エステルの開環重合を進行させることができる。また、本発明の製造方法をおこなうことによって、高分子量かつ狭分子量分布な環状エステルの開環重合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明の環状エステルの開環重合触媒は、上記一般式(1)で示されるホスファゼニウム塩とルイス酸とを含有するものである。
【0024】
本発明において、ホスファゼニウム塩としては、上記一般式(1)で示されるホスファゼニウム塩の範疇に属するものであれば如何なるものであってもよい。その際のR及びRは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。ここで、RとRが互いに結合した環構造、R同士又はR同士が互いに結合した環構造を形成してもよい。
【0025】
炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、ビニル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、へプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基、シクロデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基等を挙げることができる。
【0026】
また、RとRが互いに結合し環構造を形成した場合としては、ピロリジニル基、ピロリル基、ピペリジニル基、インドリル基、イソインドリル基等を挙げることができる。R同士又はR同士が互いに結合した環構造としては、例えば、一方の置換基がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基となって、他方の置換基と互いに結合した環構造を挙げることができる。そして、これらの中で、R及びRとしては、特に触媒性能に優れる環状エステルの開環重合触媒となり、原料の入手が容易という点から、メチル基、エチル基、イソプロピル基であることが好ましい。
【0027】
また、上記ホスファゼニウム塩におけるXは、ヒドロキシアニオン、炭素数1〜4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンである。ここで、炭素数1〜4のアルコキシアニオンとしては、例えば、メトキシアニオン、エトキシアニオン、n−プロポキシアニオン、イソプロポキシアニオン、n−ブトキシアニオン、イソブトキシアニオン、t−ブトキシアニオン等を挙げることができる。炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオンとしては、例えば、アセトキシアニオン、エチルカルボキシアニオン、n−プロピルカルボキシアニオン、イソプロピルカルボキシアニオン、n−ブチルカルボキシアニオン、イソブチルカルボキシアニオン、t−ブチルカルボキシアニオン等を挙げることができる。これらの中で、Xとしては、特に触媒性能に優れる環状エステルの開環重合触媒となることから、ヒドロキシアニオン、炭酸水素アニオンが好ましい。
【0028】
そして、上記ホスファゼニウム塩としては、具体的には、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラエチルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−プロピル)グアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトライソプロピルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−ブチル)グアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラフェニルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラベンジルグアニジノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イミノ)ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,1,3,3−テトラエチルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−プロピル)グアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,1,3,3−テトライソプロピルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−ブチル)グアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,1,3,3−テトラフェニルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,1,3,3−テトラベンジルグアニジノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イミノ)ホスホニウムハイドロゲンカーボネート等を例示することができる。
【0029】
また、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(ジエチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(ジn−プロピルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(ジイソプロピルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(ジn−ブチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(ジフェニルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス[トリス(ジエチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス[トリス(ジn−プロピルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス[トリス(ジイソプロピルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス[トリス(ジn−ブチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス[トリス(ジフェニルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス[トリス(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムハイドロゲンカーボネート等を例示することができる。
【0030】
これらの中で、より触媒性能に優れる環状エステルの開環重合触媒となることから、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムハイドロゲンカーボネート、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシドが特に好ましい。
【0031】
本発明において、ルイス酸としては、例えば、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
【0032】
アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、ジフェニルモノイソブチルアルミニウム、モノフェニルジイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム;メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、メチル−イソブチルアルミノキサン等のアルミノキサン;塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等の無機アルミニウムを挙げることができる。
【0033】
亜鉛化合物としては、例えば、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等の有機亜鉛;塩化亜鉛、酸化亜鉛等の無機亜鉛を挙げることができる。
【0034】
ホウ素化合物としては、例えば、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素、トリエチルボロン、トリメトキシボロン、トリエトキシボロン、トリイソプロポキシボロン、トリ−n−プロポキシボロン、トリフェニルボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン等を挙げることができる。
【0035】
そして、これらルイス酸の中でも、高分子量かつ狭分子量分布を示す環状エステルの開環重合体を、効率よく製造することが可能となる環状エステルの開環重合触媒となることから、有機アルミニウム、有機亜鉛、ホウ素化合物が好ましく、特に有機アルミニウムが好ましい。
【0036】
本発明の環状エステルの開環重合触媒におけるホスファゼニウム塩とルイス酸との割合は、環状エステルの開環重合触媒としての作用が発現する限りにおいて任意であり、その中でも特に触媒性能に優れる重合触媒となることから、ホスファゼニウム塩:ルイス酸=1:0.1〜100(モル比)であることが好ましく、特にホスファゼニウム塩:ルイス酸=1:1〜50(モル比)であることが好ましい。
【0037】
また、本発明の環状エステルの開環重合触媒は、末端に反応性の活性水素を有する環状エステルの開環重合体を製造することが可能となることから、活性水素含有化合物をも用いることが好ましい。その際の活性水素含有化合物としては、例えば、水、ヒドロキシ化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、チオール化合物、末端に水酸基を有するポリエーテルポリオール等を挙げることができる。
【0038】
ヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、シュークローズ、グルコース、2−ナフトール、ビスフェノール等を挙げることができる。アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン等を挙げることができる。カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、アジピン酸等を挙げることができる。チオール化合物としては、例えば、エタンジチオール、ブタンジチオール等を挙げることができる。末端に水酸基を有するポリエーテルポリオールとしては、例えば、分子量200〜3000のポリエーテルポリオール等を挙げることができる。そして、これら活性水素含有化合物は、単独で用いても良いし、数種類を混合して用いても良い。
【0039】
また、活性水素含有化合物を用いる際には、より高分子量かつ狭分子量分布を示す環状エステルの開環重合体を効率よく製造することが可能となることから、活性水素含有化合物中の活性水素1モルに対し、ホスファゼニウム塩0.001〜10モルであることが好ましく、より0.001〜1モルが好ましく、特に0.001〜0.5モルであることが好ましい。また、活性水素含有化合物中の活性水素1モルに対し、ルイス酸は0.001〜10モルであることが好ましく、より0.001〜1モルが好ましく、特に0.001〜0.5モルであることが好ましい。
【0040】
本発明の環状エステルの開環重合触媒の調製方法としては、環状エステルの開環重合触媒の調製が可能であれば如何なる方法をも用いることが可能であり、特に限定されない。例えば、ホスファゼニウム塩とルイス酸を混合する方法を挙げることができる。その際には、溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等を用いても良い。
【0041】
また、ホスファゼニウム塩、ルイス酸、及び活性水素含有化合物を含有する環状エステルの開環重合触媒を調整する方法としては、ホスファゼニウム塩、ルイス酸、及び活性水素含有化合物を同時に混合して調製する方法、1成分に2成分を混合し調製する方法、2成分に1成分を混合し調製する方法、等の如何なる調製方法を用いても良い。それらの中でも、より触媒性能に優れる環状エステルの開環重合触媒となることから、ホスファゼニウム塩と活性水素含有化合物とを混合した後に、ルイス酸を混合し、環状エステルの開環重合触媒を調製することが好ましい。その際には、加熱・減圧処理等を行ってもよい。加熱処理の温度としては、例えば、50〜150℃、好ましくは70〜130℃を挙げることができる。また、減圧処理の際の圧力としては、例えば、50kPa以下、好ましくは20kPa以下を挙げることができる。
【0042】
本発明の環状エステルの開環重合触媒は、高分子量かつ狭分子量分布を示す環状エステルの開環重合体を効率よく製造することが可能である。
【0043】
本発明の環状エステルの開環重合体の製造方法は、上記した本発明の環状エステルの開環重合触媒存在下、環状エステルの開環重合を行うことをその特徴とする。
【0044】
本発明の環状エステルの開環重合体の製造方法において、環状エステルとしては、特に限定するものではないが、例えば、ラクトン、ラクチド等を挙げることができる。具体的には、メソラクチド、D−ラクチド、L−ラクチド等のラクチド類;α−アセトラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;グリコリド等を挙げることができる。これらの中で、環状エステルの入手が容易で、得られる環状エステルの開環重合体の工業的価値が高いことから、L−ラクチド、ε−カプロラクトンが好ましい。環状エステルは、単一で用いても2種以上を混合して用いても良い。2種以上を混合して用いる場合は、例えば第1の環状エステルを反応させた後、第2、第3の環状エステルを反応させても良いし、2種以上の環状エステルを同時に反応させても良い。
【0045】
本発明の環状エステルの開環重合体の製造方法において、重合は、溶媒中又は無溶媒中で行うことができる。使用する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等を挙げることができる。
【0046】
本発明の環状エステルの開環重合体の製造方法において、重合温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、特に20〜130℃が好ましい。また、本発明の環状エステルの開環重合体の製造方法において、重合時間は、24時間以内が好ましく、特に10時間以内が好ましい。
【0047】
本発明の環状エステルの開環重合体の製造方法においては、効率的な環状エステルの開環重合体の製造方法となることから、環状エステル(モノマー)の転化率は、70%以上が好ましく、特に85%以上であることが好ましい。
【0048】
本発明の製造方法により得られる環状エステルの開環重合体としては、ゲル・パーミェション・クロマトグラフ(GPC)により算出した分子量が、500〜50000g/molであることが好ましく、特に1000〜30000g/molが好ましい。また、得られる環状エステルの開環重合体のゲル・パーミェション・クロマトグラフ(GPC)により算出した分子量分布が、1.5以下であることが好ましく、特に1.3以下が好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を説明するが、本実施例により本発明は何ら限定して解釈されるものではない。
【0050】
まず、本発明の環状エステルの開環重合体の製造方法における環状エステル(モノマー)の転化率、触媒回転数の算出方法、本発明により製造される環状エステルの開環重合体(ポリマー)の分析方法について説明する。
【0051】
(1)環状エステル(モノマー)の転化率(単位:%)
核磁気共鳴スペクトル測定装置(日本電子社製、JNM−ECZ400S/LI)を用い、重溶媒に重クロロホルムを用いてH−NMRを測定し、モノマー由来のピークとポリマー由来のピークの積分比からモノマーの転化率を算出した。
【0052】
(2)触媒回転数(単位:mol/mol)
反応したモノマー量をa(単位:mol)、用いたホスファゼニウム塩の使用量をb(単位:mol)とし、次式により触媒回転数を算出した。
【0053】
触媒回転数=a/b。
【0054】
(3)ポリマーの分子量(単位:g/mol)及び分子量分布分布(単位:無し)
ゲル・パーミェション・クロマトグラフ(GPC)(東ソー社製、(商品名)HLC8020)、標準物質としてポリスチレン、溶媒としてテトラヒドロフランを用い、40℃で測定を行い、環状エステルの開環重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0055】
合成例1(ホスファゼニウム塩Aの合成)
攪拌翼を付した2リットルの4つ口フラスコを窒素雰囲気下とし、五塩化リン96g(0.46mol)、脱水トルエン800mlを加え、20℃で攪拌した。撹拌を維持したまま、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン345g(2.99mol)を3時間かけて滴下した後、100℃に昇温し、さらに1,1,3,3−テトラメチルグアニジン107g(0.92mol)を1時間かけて滴下した。得られた白色のスラリー溶液を100℃で14時間攪拌した後、80℃まで冷却し、イオン交換水250mlを加え、30分間撹拌した。撹拌を止めると、スラリーは全て溶解し、2相溶液が得られた。得られた2相溶液の油水分離を行い、水相を回収した。得られた水相にジクロロメタン100mlを加え、油水分離を行い、ジクロロメタン相を回収した。得られたジクロロメタン溶液をイオン交換水100mlで洗浄した。
【0056】
得られたジクロロメタン溶液を、撹拌翼を付した2リットルの四つ口フラスコに移液し、2−プロパノール900gを加えた後、常圧下で温度を80〜100℃に昇温し、ジクロロメタンを除去した。得られた2−プロパノール溶液を撹拌しながら内部温度を60℃に放冷した後、85重量%水酸化カリウム31g(0.47mol、ホスファゼニウム塩に対して1.1mol当量)を加えて、60℃で2時間反応した。温度を25℃まで冷却し、析出した副生塩を濾過により除去することによって、目的とするホスファゼニウム塩A[上記一般式(1)におけるRがメチル基、Rがメチル基、Xがヒドロキシアニオン,Yが炭素原子、aが2に相当するホスファゼニウム塩]の2−プロパノール溶液860gを、濃度25重量%、収率92%で得た。
【0057】
合成例2(ホスファゼニウム塩Bの合成)
磁気回転子を付した100mlシュレンク管を窒素雰囲気下とし、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムクロリド5.7g(7.4mmol、Aldrich社製)、2−プロパノール16mlを加え、25℃で攪拌し溶解させた。攪拌を維持したまま、85重量%水酸化カリウム0.53g〔8.1mmol、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムクロリドに対して1.1mol当量〕を2−プロパノールに溶解した溶液を加えた。25℃で5時間攪拌後、析出した副生塩を濾過により除去することによって、目的とするホスファゼニウム塩B[上記一般式(1)におけるRがメチル基、Rがメチル基、Xがヒドロキシアニオン、Yがリン原子、aが3に相当するホスファゼニウム塩]の2−プロパノール溶液32.7gを、濃度17重量%、収率98%で得た。
【0058】
実施例1.
磁気回転子を付した50mLのシュレンク管の内部を窒素雰囲気とし、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液2g(1.0mmol)とトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mol/Lヘキサン溶液2ml(2mmol)を加えた。内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノール及びヘキサンを除去することによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0059】
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、得られた環状エステルの開環重合触媒及びL−ラクチド72g(500mmol)を加えた。フラスコの内温を120℃に保ちながら2時間撹拌することで、L−ラクチドの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は92%、触媒回転数は4600mol/mol、得られたポリマーの分子量は66000g/mol、分子量分布は1.15であった。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例2.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液0.2g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。その後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mol/Lヘキサン溶液0.2ml(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.010モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下でヘキサンを除去することによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0062】
得られた環状エステルの開環重合触媒に、ε−カプロラクトン57g(500mmol)を加えた。フラスコの内温を100℃に保ちながら8時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は95%、触媒回転数は4750mol/mol、得られたポリマーの分子量は5800g/mol、分子量分布は1.21であった。結果を表1に示す。
【0063】
実施例3.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液0.2g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。その後、トリイソプロポキシアルミニウム(Al(OiPr))の1.0mol/Lヘキサン溶液0.2ml(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.010モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下でヘキサンを除去することによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0064】
得られた環状エステルの開環重合触媒に、ε−カプロラクトン57g(500mmol)を加えた。フラスコの内温を100℃に保ちながら8時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は94%、触媒回転数は4700mol/mol、得られたポリマーの分子量は5700g/mol、分子量分布は1.11であった。結果を表1に示す。
【0065】
実施例4.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液0.2g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。その後、ジエチル亜鉛(ZnEt)の1.0mol/Lトルエン溶液0.2ml(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.010モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下でヘキサンを除去することによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0066】
得られた環状エステルの開環重合触媒に、ε−カプロラクトン57g(500mmol)を加えた。フラスコの内温を100℃に保ちながら8時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は88%、触媒回転数は4400mol/mol、得られたポリマーの分子量は56000g/mol、分子量分布は1.08であった。結果を表1に示す。
【0067】
実施例5.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液0.2g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。その後、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン(B(C)102mg(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.010モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaで減圧処理を行うことによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0068】
得られた環状エステルの開環重合触媒に、ε−カプロラクトン57g(500mmol)を加えた。フラスコの内温を100℃に保ちながら8時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は89%、触媒回転数は4450mol/mol、得られたポリマーの分子量は5600g/mol、分子量分布は1.09であった。結果を表1に示す。
【0069】
参考例6
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例2で得られたホスファゼニウム塩Bの17重量%2−プロパノール溶液0.5g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。その後、トリイソプロポキシアルミニウム(Al(OiPr))の1.0mol/Lヘキサン溶液0.2ml(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.010モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下でヘキサンを除去することによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0070】
得られた環状エステルの開環重合触媒に、ε−カプロラクトン114g(1000mmol)を加えた。フラスコの内温を120℃に保ちながら8時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は91%、触媒回転数は9100mol/mol、得られたポリマーの分子量は11000g/mol、分子量分布は1.23であった。結果を表1に示す。
【0071】
実施例7.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液0.2g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。その後、トリイソプロポキシアルミニウム(Al(OiPr))の1.0mol/Lヘキサン溶液0.2ml(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.010モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下でヘキサンを除去することによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0072】
得られた環状エステルの開環重合触媒に、L−ラクチド72g(500mmol)を加えた。フラスコの内温を120℃に保ちながら1時間撹拌することで、L−ラクチドの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は95%、触媒回転数は4750mol/mol、得られたポリマーの分子量は7200g/mol、分子量分布は1.11であった。結果を表1に示す。
【0073】
比較例1.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液0.2g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。
【0074】
ε−カプロラクトン57g(500mmol)を加え、フラスコの内温を100℃に保ちながら24時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は78%、触媒回転数は3900mol/mol、得られたポリマーの分子量は4800g/mol、分子量分布は1.53であった。
【0075】
比較例2.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、トリイソプロポキシアルミニウム(Al(OiPr))の1.0mol/Lヘキサン溶液0.2ml(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.01モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。
【0076】
ε−カプロラクトン57g(500mmol)を加え、フラスコの内温を100℃に保ちながら24時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は0%で、原料であるポリエーテルポリオール(PP400)が回収された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の環状エステルの開環重合触媒を用いることにより、少ない触媒使用量であっても、効率良く環状エステルの開環重合体を製造することができる。得られる環状エステルの開環重合体は、ポリエステル、ポリ乳酸として、衣料品、日用生活品、医療材料、産業資材などへの展開が期待される。また、各種イソシアネート化合物と反応させ、ポリウレタンとすることで、接着剤、塗料、シーリング材、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーなどへの展開が期待される。