【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を説明するが、本実施例により本発明は何ら限定して解釈されるものではない。
【0050】
まず、本発明の環状エステルの開環重合体の製造方法における環状エステル(モノマー)の転化率、触媒回転数の算出方法、本発明により製造される環状エステルの開環重合体(ポリマー)の分析方法について説明する。
【0051】
(1)環状エステル(モノマー)の転化率(単位:%)
核磁気共鳴スペクトル測定装置(日本電子社製、JNM−ECZ400S/LI)を用い、重溶媒に重クロロホルムを用いて
1H−NMRを測定し、モノマー由来のピークとポリマー由来のピークの積分比からモノマーの転化率を算出した。
【0052】
(2)触媒回転数(単位:mol/mol)
反応したモノマー量をa(単位:mol)、用いたホスファゼニウム塩の使用量をb(単位:mol)とし、次式により触媒回転数を算出した。
【0053】
触媒回転数=a/b。
【0054】
(3)ポリマーの分子量(単位:g/mol)及び分子量分布分布(単位:無し)
ゲル・パーミェション・クロマトグラフ(GPC)(東ソー社製、(商品名)HLC8020)、標準物質としてポリスチレン、溶媒としてテトラヒドロフランを用い、40℃で測定を行い、環状エステルの開環重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0055】
合成例1(ホスファゼニウム塩Aの合成)
攪拌翼を付した2リットルの4つ口フラスコを窒素雰囲気下とし、五塩化リン96g(0.46mol)、脱水トルエン800mlを加え、20℃で攪拌した。撹拌を維持したまま、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン345g(2.99mol)を3時間かけて滴下した後、100℃に昇温し、さらに1,1,3,3−テトラメチルグアニジン107g(0.92mol)を1時間かけて滴下した。得られた白色のスラリー溶液を100℃で14時間攪拌した後、80℃まで冷却し、イオン交換水250mlを加え、30分間撹拌した。撹拌を止めると、スラリーは全て溶解し、2相溶液が得られた。得られた2相溶液の油水分離を行い、水相を回収した。得られた水相にジクロロメタン100mlを加え、油水分離を行い、ジクロロメタン相を回収した。得られたジクロロメタン溶液をイオン交換水100mlで洗浄した。
【0056】
得られたジクロロメタン溶液を、撹拌翼を付した2リットルの四つ口フラスコに移液し、2−プロパノール900gを加えた後、常圧下で温度を80〜100℃に昇温し、ジクロロメタンを除去した。得られた2−プロパノール溶液を撹拌しながら内部温度を60℃に放冷した後、85重量%水酸化カリウム31g(0.47mol、ホスファゼニウム塩に対して1.1mol当量)を加えて、60℃で2時間反応した。温度を25℃まで冷却し、析出した副生塩を濾過により除去することによって、目的とするホスファゼニウム塩A[上記一般式(1)におけるR
1がメチル基、R
2がメチル基、X
−がヒドロキシアニオン,Yが炭素原子、aが2に相当するホスファゼニウム塩]の2−プロパノール溶液860gを、濃度25重量%、収率92%で得た。
【0057】
合成例2(ホスファゼニウム塩Bの合成)
磁気回転子を付した100mlシュレンク管を窒素雰囲気下とし、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムクロリド5.7g(7.4mmol、Aldrich社製)、2−プロパノール16mlを加え、25℃で攪拌し溶解させた。攪拌を維持したまま、85重量%水酸化カリウム0.53g〔8.1mmol、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムクロリドに対して1.1mol当量〕を2−プロパノールに溶解した溶液を加えた。25℃で5時間攪拌後、析出した副生塩を濾過により除去することによって、目的とするホスファゼニウム塩B[上記一般式(1)におけるR
1がメチル基、R
2がメチル基、X
−がヒドロキシアニオン、Yがリン原子、aが3に相当するホスファゼニウム塩]の2−プロパノール溶液32.7gを、濃度17重量%、収率98%で得た。
【0058】
実施例1.
磁気回転子を付した50mLのシュレンク管の内部を窒素雰囲気とし、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液2g(1.0mmol)とトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mol/Lヘキサン溶液2ml(2mmol)を加えた。内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノール及びヘキサンを除去することによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0059】
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、得られた環状エステルの開環重合触媒及びL−ラクチド72g(500mmol)を加えた。フラスコの内温を120℃に保ちながら2時間撹拌することで、L−ラクチドの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は92%、触媒回転数は4600mol/mol、得られたポリマーの分子量は66000g/mol、分子量分布は1.15であった。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例2.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液0.2g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。その後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mol/Lヘキサン溶液0.2ml(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.010モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下でヘキサンを除去することによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0062】
得られた環状エステルの開環重合触媒に、ε−カプロラクトン57g(500mmol)を加えた。フラスコの内温を100℃に保ちながら8時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は95%、触媒回転数は4750mol/mol、得られたポリマーの分子量は5800g/mol、分子量分布は1.21であった。結果を表1に示す。
【0063】
実施例3.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液0.2g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。その後、トリイソプロポキシアルミニウム(Al(OiPr)
3)の1.0mol/Lヘキサン溶液0.2ml(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.010モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下でヘキサンを除去することによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0064】
得られた環状エステルの開環重合触媒に、ε−カプロラクトン57g(500mmol)を加えた。フラスコの内温を100℃に保ちながら8時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は94%、触媒回転数は4700mol/mol、得られたポリマーの分子量は5700g/mol、分子量分布は1.11であった。結果を表1に示す。
【0065】
実施例4.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液0.2g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。その後、ジエチル亜鉛(ZnEt
2)の1.0mol/Lトルエン溶液0.2ml(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.010モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下でヘキサンを除去することによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0066】
得られた環状エステルの開環重合触媒に、ε−カプロラクトン57g(500mmol)を加えた。フラスコの内温を100℃に保ちながら8時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は88%、触媒回転数は4400mol/mol、得られたポリマーの分子量は56000g/mol、分子量分布は1.08であった。結果を表1に示す。
【0067】
実施例5.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液0.2g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。その後、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン(B(C
6F
5)
3)102mg(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.010モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaで減圧処理を行うことによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0068】
得られた環状エステルの開環重合触媒に、ε−カプロラクトン57g(500mmol)を加えた。フラスコの内温を100℃に保ちながら8時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は89%、触媒回転数は4450mol/mol、得られたポリマーの分子量は5600g/mol、分子量分布は1.09であった。結果を表1に示す。
【0069】
参考例6.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例2で得られたホスファゼニウム塩Bの17重量%2−プロパノール溶液0.5g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。その後、トリイソプロポキシアルミニウム(Al(OiPr)
3)の1.0mol/Lヘキサン溶液0.2ml(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.010モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下でヘキサンを除去することによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0070】
得られた環状エステルの開環重合触媒に、ε−カプロラクトン114g(1000mmol)を加えた。フラスコの内温を120℃に保ちながら8時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は91%、触媒回転数は9100mol/mol、得られたポリマーの分子量は11000g/mol、分子量分布は1.23であった。結果を表1に示す。
【0071】
実施例7.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液0.2g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。その後、トリイソプロポキシアルミニウム(Al(OiPr)
3)の1.0mol/Lヘキサン溶液0.2ml(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.010モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下でヘキサンを除去することによって、環状エステルの開環重合触媒を得た。
【0072】
得られた環状エステルの開環重合触媒に、L−ラクチド72g(500mmol)を加えた。フラスコの内温を120℃に保ちながら1時間撹拌することで、L−ラクチドの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は95%、触媒回転数は4750mol/mol、得られたポリマーの分子量は7200g/mol、分子量分布は1.11であった。結果を表1に示す。
【0073】
比較例1.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、合成例1で得られたホスファゼニウム塩Aの25重量%2−プロパノール溶液0.2g(0.1mmol、活性水素1モルに対して0.005モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。
【0074】
ε−カプロラクトン57g(500mmol)を加え、フラスコの内温を100℃に保ちながら24時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は78%、触媒回転数は3900mol/mol、得られたポリマーの分子量は4800g/mol、分子量分布は1.53であった。
【0075】
比較例2.
撹拌翼を付した0.2Lの四つ口フラスコの内部を窒素雰囲気とし、活性水素含有化合物として2個の水酸基を有する分子量400のポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製サンニックスPP400;水酸基価280mgKOH/g)4.0g(10mmol、活性水素量20mmol)、トリイソプロポキシアルミニウム(Al(OiPr)
3)の1.0mol/Lヘキサン溶液0.2ml(0.2mmol、活性水素1モルに対して0.01モル)を加え、内温を80℃とし、0.5kPaの減圧下で2−プロパノールを除去した。
【0076】
ε−カプロラクトン57g(500mmol)を加え、フラスコの内温を100℃に保ちながら24時間撹拌することで、ε−カプロラクトンの開環重合をおこなった。反応終了後のモノマー転化率は0%で、原料であるポリエーテルポリオール(PP400)が回収された。