(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
以下の説明において、フィルムが「長尺」とは、幅に対して、5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。幅に対する長さの倍率の上限は、特に限定されないが、通常10万倍以下としうる。
【0012】
以下の説明において、「偏光板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0013】
〔1.光学フィルムの概要〕
本発明の光学フィルムは、1層のコア層、並びにコア層の一方の面側及び他方の面にそれぞれ設けられたスキン層(1)及びスキン層(2)を備える。
【0014】
図1は、本発明の光学フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図1において、光学フィルム100は、コア層111、及びコア層111の一方の面側に設けられたスキン層(1)121、及びコア層111の他方の面側に設けられたスキン層(2)122を備える。
【0015】
〔2.コア層:樹脂(C)〕
コア層は、樹脂(C)からなる。樹脂(C)は、その厚み30μmのフィルムの衝撃強度が16.0×10
−2J以上であり、且つその厚み30μmのフィルムの屈曲性が100000回以上、好ましくは150000回以上の樹脂である。樹脂(C)としてこのような樹脂を採用し、特定のスキン層と特定の態様で組み合わせることにより、高い衝撃強度、高い屈曲性、及び高い表面硬度等の様々な優れた特性を有する光学フィルムを得ることができる。衝撃硬度の値の上限は、特に限定されないが例えば30×10
−2J以下としうる。また、屈曲性の上限も特に限定されないが例えば400000回以下としうる。
【0016】
本願において、フィルムの衝撃強度は、以下に述べる特定の方法により測定されたものである。即ち、本願におけるフィルムの衝撃強度は、特定の治具により水平に固定された測定対象のフィルムの上面に、様々な高さhから鋼球を落下させることにより測定され、フィルムが破れなかった場合及びフィルムが破れた場合の境界の高さhにおける、鋼球の位置エネルギーを衝撃強度とする。
【0017】
図2及び
図3は、本願におけるフィルムの衝撃強度の測定方法を説明する斜視図及び側面図である。ここでは、フィルム100の衝撃強度の測定を説明している。本願における衝撃強度の測定においては、
図2及び
図3に示す通りの円筒形の形状を有する上側の筒201及び下側の筒202を備える治具を用いる。筒201及び筒202の内径(矢印A3で示される)はいずれも4cmとする。上側の筒201を下側に付勢し、且つ下側の筒202を上側に付勢することにより、フィルム100を治具に固定する。フィルム100の上面100Uの、治具内の中央の位置20Pに、鋼球211(パチンコ玉、重さ5g、直径11mm)を様々な高さh(鋼球211の最下部の水準H1とフィルム100の上面100Uとの距離;矢印A2で示す高さ)から、矢印A1方向に落下させる。フィルム100が破れなかった場合及びフィルム100が破れた場合の境界の高さhにおける、鋼球211の位置エネルギー(×10
−2J)を衝撃強度とする。
【0018】
本願において、フィルムの屈曲性は、以下に述べる特定の方法により測定されたものである。即ち、本願におけるフィルムの屈曲性は、測定対象のフィルムを切断し、30mm×400mmの試験片とし、これについて、特定の屈曲を繰り返し行い、クラック又は折れ目が入った時点の回数を、屈曲性の指標とする。屈曲は、R=2.5mmのマンドレルを用いて、フィルムが165°屈曲するように試験片をセッティングし、試験片の400mmの辺の延長上に、500gの錘を吊るし、30mmの辺と平行に折れ曲げ線が入るように行う。屈曲スピードは、100rpmとする。屈曲のための装置としては、屈曲試験機(商品名「TCDMLH−P150」、ユアサシステム機器株式会社製)を用いうる。
【0019】
樹脂(C)としては、上に述べた特性を有する樹脂であって、光学フィルムの構成要素として用いうるものを適宜選択しうる。好ましい例において、樹脂(C)は、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)及び鎖状共役ジエン化合物水素化物単位(b)を有する重合体を含む樹脂からなる。かかる重合体は、芳香族ビニル化合物単位及び鎖状共役ジエン化合物単位を有する重合体を水素化することにより得られる。芳香族ビニル化合物単位とは、芳香族ビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位である。鎖状共役ジエン化合物単位とは、鎖状共役ジエン化合物を重合して形成される構造を有する構造単位である。
【0020】
樹脂(C)を構成する、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)及び鎖状共役ジエン化合物水素化物単位(b)を有する重合体としては、芳香族ビニル化合物単位を主成分とする、共重合体1分子あたり2個以上の重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物単位を主成分とする、共重合体1分子あたり1個以上の重合体ブロック[B]とを有する特定のブロック共重合体を水素化した水素化物が好ましい。かかる共重合体を水素化することにより、共重合体の芳香族ビニル化合物単位が、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)となり、共重合体の鎖状共役ジエン化合物単位が、鎖状共役ジエン化合物水素化物単位(b)となる。これらのブロック共重合体及びその水素化物は、例えばアルコキシシラン、カルボン酸、カルボン酸無水物等で変性されていてもよい。以下、この特定のブロック共重合体を水素化した水素化物について説明する。
【0021】
〔3.特定のブロック共重合体〕
前記のように、特定のブロック共重合体が有する重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物単位を有する。この重合体ブロック[A]が有する芳香族ビニル化合物単位に対応する芳香族ビニル化合物の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましい。更に、工業的入手のし易さ、衝撃強度の観点から、スチレンが特に好ましい。
【0022】
重合体ブロック[A]における芳香族ビニル化合物単位の含有率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、さらにより好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック[A]において芳香族ビニル化合物単位の量を前記のように多くすることにより、樹脂(C)の耐熱性を高めることができる。
【0023】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物単位以外に、任意の構造単位を含んでいてもよい。任意の構造単位の例としては、鎖状共役ジエン化合物単位、芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位、などが挙げられる。
【0024】
鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物の例としては、重合体ブロック[B]が有する鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物の例として挙げるものと同様の例が挙げられる。また、鎖状共役ジエン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0025】
芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物の例としては、鎖状ビニル化合物;環状ビニル化合物;ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、又はハロゲン基を有するビニル化合物;不飽和の環状酸無水物;不飽和イミド化合物などが挙げられる。中でも、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の環状オレフィン;などの、極性基を含有しないものが、吸湿性の面で好ましい。その中でも、鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン及びプロピレンが特に好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0026】
重合体ブロック[A]における任意の構造単位の含有率は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらにより好ましくは1重量%以下である。
【0027】
ブロック共重合体1分子における重合体ブロック[A]の数は、好ましくは2個以上であり、好ましくは5個以下、より好ましくは4個以下、さらにより好ましくは3個以下である。1分子中に複数個ある重合体ブロック[A]は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
1分子のブロック共重合体に、異なる重合体ブロック[A]が複数存在する場合、重合体ブロック[A]の中で、重量平均分子量が最大の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(A1)とし、重量平均分子量が最少の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(A2)とする。このとき、Mw(A1)とMw(A2)との比「Mw(A1)/Mw(A2)」は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下である。これにより、各種物性値のばらつきを小さく抑えることができる。
【0029】
他方、ブロック共重合体が有する重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物単位を有する。この重合体ブロック[B]が有する鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、1,3−ブタジエン及びイソプレンが特に好ましい。
【0030】
重合体ブロック[B]における鎖状共役ジエン化合物単位の含有率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、さらにより好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック[B]において鎖状共役ジエン化合物単位の量を前記のように多くすることにより、樹脂(C)の低温での衝撃強度を向上させることができる。
【0031】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物単位以外に、任意の構造単位を含んでいてもよい。任意の構造単位の例としては、芳香族ビニル化合物単位、並びに、芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位などが挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物単位、並びに、芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位の例としては、重合体ブロック[A]に含まれていてもよいものとして例示したものが挙げられる。
【0032】
重合体ブロック[B]における任意の構造単位の含有率は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらにより好ましくは1重量%以下である。特に、重合体ブロック[B]における芳香族ビニル化合物単位の含有率を低くすることにより、樹脂(C)の低温での柔軟性を向上させて、樹脂(C)の低温での衝撃強度を向上させることができる。
【0033】
ブロック共重合体1分子における重合体ブロック[B]の数は、通常1個以上であるが、2個以上であってもよい。ブロック共重合体における重合体ブロック[B]の数が2個以上である場合、重合体ブロック[B]は、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
【0034】
また、1分子のブロック共重合体に、異なる重合体ブロック[B]が複数存在する場合、重合体ブロック[B]の中で、重量平均分子量が最大の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(B1)とし、重量平均分子量が最少の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(B2)とする。このとき、Mw(B1)とMw(B2)との比「Mw(B1)/Mw(B2)」は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下である。これにより、各種物性値のばらつきを小さく抑えることができる。
【0035】
ブロック共重合体のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもよく、ラジアル型ブロックでもよい。中でも、鎖状型ブロックが、機械的強度に優れ、好ましい。
ブロック共重合体が鎖状型ブロックの形態を有する場合、その両端が重合体ブロック[A]であることが、樹脂(C)のベタツキを低減できるので、好ましい。
【0036】
ブロック共重合体の特に好ましいブロックの形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体;重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体である。特に、[A]−[B]−[A]のトリブロック共重合体であることが、製造が容易であり且つ粘度等の物性を所望の範囲とすることができるため、特に好ましい。
【0037】
ブロック共重合体において、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率wAと、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率wBとの比(wA/wB)は、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上であり、好ましくは60/40以下、より好ましくは55/45以下である。前記の比wA/wBを前記範囲の下限値以上にすることにより、樹脂(C)の耐熱性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、樹脂(C)の柔軟性を高めて、良好な物性の光学フィルムを得ることができる。
【0038】
前記のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30,000以上、より好ましくは40,000以上、さらにより好ましくは50,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、さらにより好ましくは100,000以下である。前記ブロック共重合体の重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の値として測定しうる。
また、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下であり、好ましくは1.0以上である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。
【0039】
ブロック共重合体の製造方法は、特に限定されず、例えば国際公開第2015/099079号に記載の方法により製造しうる。
【0040】
〔4.特定のブロック共重合体の水素化物〕
ブロック共重合体の水素化物は、前述した特定のブロック共重合体の不飽和結合を水素化して得られるものである。ここで、ブロック共重合体の不飽和結合には、ブロック共重合体の主鎖及び側鎖の、芳香族性及び非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合をいずれも含む。水素化率は、ブロック共重合体の全不飽和結合の、好ましくは90%以上、より好ましくは97%以上、さらにより好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、樹脂(C)の耐熱性及び耐光性を良好にできる。ここで、水素化物の水素化率は、
1H−NMRによる測定により求めることができる。
【0041】
特に、非芳香族性の不飽和結合の水素化率は、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、樹脂(C)の耐光性及び耐酸化性を更に高くできる。
また、芳香族性の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上である。芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、重合体ブロック[A]を水素化して得られる重合体ブロックのガラス転移温度が高くなるので、樹脂(C)の耐熱性を効果的に高めることができる。さらに、樹脂(C)の光弾性係数を下げて、レターデーションの発現を低減することができる。
【0042】
ブロック共重合体の水素化物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30,000以上、より好ましくは40,000以上、さらにより好ましくは45,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、さらにより好ましくは100,000以下である。前記ブロック共重合体の水素化物の重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算の値で測定しうる。また、ブロック共重合体の水素化物の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下であり、好ましくは1.0以上である。ブロック共重合体の水素化物の重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnを前記の範囲に収めることにより、樹脂(C)の機械強度及び耐熱性を向上させることができる。
【0043】
ブロック共重合体の水素化物における、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率wAと、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率wBとの比(wA/wB)は、通常、水素化する前のブロック共重合体における比wA/wBと同様の値となる。
【0044】
ブロック共重合体の水素化物は、その分子構造にアルコキシシリル基を有しうる。このアルコキシシリル基を有するブロック共重合体の水素化物は、例えば、アルコキシシリル基を有さないブロック共重合体の水素化物に、アルコキシシリル基を結合させることにより得られる。この際、ブロック共重合体の水素化物にアルコキシシリル基を直接結合させてもよく、例えばアルキレン基などの2価の有機基を介して結合させてもよい。
【0045】
ブロック共重合体の水素化物の製造方法は、通常、前述した特定のブロック共重合体を水素化することを含む。具体的な水素化の方法及び必要に応じて行われるアルコキシシリル基の導入の具体的な方法は、特に限定されず、例えば国際公開第2015/099079号に記載の方法により行いうる。得られたブロック共重合体の水素化物は、ペレット形状などの任意の形状とし、その後の操作に用いうる。
【0046】
樹脂(C)を構成する重合体が、上に述べたブロック共重合体の水素化物等の、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)及び鎖状共役ジエン化合物水素化物単位(b)を有する重合体である場合、かかる重合体においては、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)と、鎖状共役ジエン化合物水素化物単位(b)との重量比(a)/(b)が、特定の範囲内であることが好ましい。(a)/(b)は、好ましくは40/60以上、より好ましくは45/55以上であり、一方好ましくは60/40以下、より好ましくは55/45である。(a)/(b)がかかる範囲内であることにより、上記各種の特性において優れた光学フィルムを容易に得ることができる。
【0047】
〔5.任意の成分〕
樹脂(C)は、上に述べた重合体に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分の例としては、ガラス転移温度及び弾性率を調整するための可塑剤、耐候性及び耐熱性を向上させるための光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、無機フィラーなどが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0048】
ガラス転移温度及び柔軟性を調整するための可塑剤の例としては、ポリイソブテン、水素化ポリイソブテン、水素化ポリイソプレン、水素化1,3−ペンタジエン系石油樹脂、水素化シクロペンタジエン系石油樹脂、水素化スチレン・インデン系石油樹脂などが挙げられる。これらの可塑剤の配合量は、ブロック共重合体の水素化物100重量部に対して、通常40重量部以下で、樹脂特性を調整する目的に合わせて適宜選択される。
【0049】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、構造中に例えば3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基、又は、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基などを有している化合物が特に好ましい。
【0050】
光安定剤の具体例としては、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−N−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−アルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルアルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスアルキレン脂肪酸アミド類、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、及びN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重合体とN−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物が、耐光性に優れるため好ましく、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルアルキレンジアミン類、及びN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重合体とN−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物が特に好ましい。
【0051】
光安定剤の量は、ブロック共重合体の水素化物100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上、さらにより好ましくは0.03重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは2重量部以下、さらにより好ましくは1重量部以下である。光安定剤の量を前記範囲の下限値以上とすることにより、樹脂(C)の耐候性を高くできる。また、上限値以下とすることにより、樹脂(C)を成形して光学フィルムを製造する際に、押出し機のTダイ及び冷却ロールの汚れを防止でき、加工性を高めることができる。
【0052】
紫外線吸収剤の例としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸3水和物、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデカロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0053】
また、サリチル酸系紫外線吸収剤の例としては、フェニルサリチレート、4−t−ブチルフェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、フェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0054】
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]などが挙げられる。
【0055】
紫外線吸収剤の量は、ブロック共重合体の水素化物100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上、さらにより好ましくは0.04重量部以上であり、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下、さらにより好ましくは0.3重量部以下である。紫外線吸収剤を前記範囲の下限値以上用いることにより、樹脂(C)の耐光性を改善することができるが、上限を超えて過剰に用いても、更なる改善は得られ難い。
【0056】
酸化防止剤の例としては、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、着色がより少ないリン系酸化防止剤が好ましい。
リン系酸化防止剤の例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物;6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン、6−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピンなどの化合物を挙げることができる。
【0057】
フェノ−ル系酸化防止剤の例としては、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどの化合物を挙げることができる。
【0058】
硫黄系酸化防止剤の例としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどの化合物を挙げることができる。
【0059】
酸化防止剤の量は、ブロック共重合体の水素化物100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、さらにより好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下、さらにより好ましくは0.3重量部以下である。酸化防止剤を前記範囲の下限値以上用いることにより、樹脂(C)の熱安定性を改善することができるが、上限を超えて過剰に用いても、更なる改善は得られ難い。
【0060】
ブロック共重合体の水素化物と任意の成分とを混合する方法の例としては、任意の成分を適切な溶媒に溶解してブロック共重合体の水素化物の溶液と混合した後、溶媒を除去して任意の成分を含む樹脂(C)を回収する方法;二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機等の混練機で、ブロック共重合体の水素化物を溶融状態にして任意の成分と混練する方法;などが挙げられる。
【0061】
〔6.スキン層:樹脂(S)〕
スキン層(1)及びスキン層(2)は、樹脂(S)からなる。樹脂(S)は、その厚み100μmのフィルムの押込弾性率が2500MPa以上、好ましくは2800MPa以上である。樹脂(S)としてこのような樹脂を採用し、特定のコア層と特定の態様で組み合わせることにより、高い衝撃強度、高い屈曲性、及び高い表面硬度等の様々な優れた特性を有する光学フィルムを得ることができる。本願において、フィルムの押込弾性率は、押込弾性率試験機(フィッシャーインスツルメンツ社製、商品名「ピコメーター Hm−500」)を用いて測定しうる。本発明のフィルムの押込弾性率の上限は、特に限定されないが例えば5000MPa以下としうる。
【0062】
樹脂(S)としては、上に述べた特性を有する樹脂であって、光学フィルムの構成要素として用いうるものを適宜選択しうる。好ましい例において、樹脂(S)は、アクリル系樹脂である。
【0063】
アクリル系樹脂は、アクリル重合体を含む樹脂である。アクリル重合体の例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体;アルキル基の水素がOH基、COOH基もしくはNH
2基などの官能基によって置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体;及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、スチレン、酢酸ビニル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの不飽和結合を有するビニル系モノマーとの共重合体を挙げることができる。アクリル重合体としては、これらのうち1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アクリル重合体はメタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ブチルが単量体単位として含まれているものがより好ましい。また、アクリル重合体は、ガラス転移温度Tgが80℃以上のものが好ましい。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの意味である。樹脂(S)のガラス転移温度は、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツルメント製 示差走査熱量計 DSC−6100)で測定しうる。
【0064】
樹脂(S)は、上に述べたアクリル重合体に加え、任意の成分を含みうる。任意の成分の例としては、樹脂(C)の任意の成分として上に述べたものと同様のものを挙げることができる。樹脂(S)における、アクリル重合体と任意の成分との割合も、樹脂(C)おけるブロック共重合体の水素化物と任意の成分との割合と同様としうる。
【0065】
〔7.コア層及びスキン層の厚み〕
本発明の光学フィルムにおいては、コア層、スキン層(1)及びスキン層(2)の合計の厚みは60μm以下である。本発明の光学フィルムにおいては、スキン層(1)及びスキン層(2)が実質的に同じ厚みを有することが好ましい。本願において、スキン層(1)及びスキン層(2)が「実質的に同じ厚みを有する」とは、具体的には、スキン層(1)の厚みt
S1及びスキン層(2)の厚みt
S2の比t
S1/t
S2が0.8〜1.2の範囲内であることをいう。上に述べた特定の特性を有する樹脂(C)及び樹脂(S)でコア層及びスキン層を構成し、このような要件及び他の要件を満たす構成を採用することにより、高い衝撃強度、高い屈曲性、及び高い表面硬度等の様々な優れた特性を有する光学フィルムを得ることができる。
【0066】
本発明の光学フィルムにおいては、コア層の厚みt
Cに対するスキン層(1)の厚みt
S1の比t
S1/t
C及びコア層の厚みt
Cに対するスキン層(2)の厚みt
S2の比t
S2/t
Cが、いずれも0.03以上0.25以下である。t
S1/t
Cの値及びt
S2/t
Cの値を前記下限以上とすることにより、高い表面硬度を得ることができる。一方t
S1/t
Cの値及びt
S2/t
Cの値を前記上限以下とすることにより、高い衝撃強度、高い屈曲性、及びその他の優れた特性を得ることができる。さらに、本発明では、t
S1/t
Cの値及びt
S2/t
Cの値が当該範囲内であることに加えて、コア層及びスキン層として上に述べた他の要件を満たすものを採用することにより、高い衝撃強度、高い屈曲性、及び高い表面硬度等の様々な優れた特性を有する光学フィルムを得ることができる。
【0067】
〔8.光学フィルムの物性〕
本発明の光学フィルムは、その衝撃強度、屈曲性、及び表面硬度、並びにその他の特性において優れたフィルムとしうる。これらの特性は、上に述べた要件を満たすことにより達成することができる。
【0068】
本発明の光学フィルムの衝撃強度は、好ましくは5×10
−2J以上であり、より好ましくは8×10
−2J以上である。また、本発明の光学フィルムの屈曲性は、好ましくは10,000回以上であり、より好ましくは20,000回以上である。かかる高い衝撃強度及び屈曲性を有する光学フィルムは、表示装置において、高い耐久性を有する材料として有用に用いうる。光学フィルムの衝撃強度及び屈曲性は、樹脂(C)のフィルムについて上に述べた測定方法と同様の方法により測定しうる。本発明の光学フィルムの衝撃強度の上限は、特に限定されないが例えば25×10
−2J以下としうる。本発明の光学フィルムの屈曲性の上限は、特に限定されないが例えば400,000回以下としうる。
【0069】
本発明の光学フィルムの表面硬度は、鉛筆硬度により評価しうる。本発明の光学フィルムの鉛筆硬度は、好ましくはHB以上、より好ましくはF以上である。かかる高い表面硬度を有する光学フィルムは、表示装置において、高い耐久性を有する材料として有用に用いうる。HB以上の表面硬度を有する光学フィルムは、その表面にさらにハードコート層を設けた場合において、容易にH以上の表面硬度を得ることができ、従って偏光板保護フィルム等の光学フィルムの用途において有用に用いることができる。本発明の光学フィルムの表面硬度の上限は、特に限定されないが例えば10H以下としうる。
【0070】
光学フィルムの表面硬度は、試料のフィルムを、コロナ処理によりガラス上に密着させた状態で測定しうる。具体的な測定方法は、JIS K5600−5−4に準拠し、鉛筆の傾きは45°とし、上から負荷する荷重は750g重としうる。各硬度の鉛筆について5回試験を行い、2回以上において鉛筆跡が確認された場合はきず跡が生じたものと判定し、きず跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を、鉛筆硬度としうる。
【0071】
本発明の光学フィルムは、その水蒸気透過率が20g/m
2・day以下であり、好ましくは18g/m
2・day以下である。かかる低い水蒸気透過率を有する光学フィルムは、表示装置において、偏光子層、発光層等の、変質しやすい他の層を保護する能力に優れた層として、有用に用いうる。水蒸気透過率は、水蒸気透過度測定装置(例えばMOCON社製「PERMATRAN−W」)を用い、JIS K 7129 B法に従って、温度40℃、湿度90%RHの条件にて測定しうる。本発明の光学フィルムの水蒸気透過率の下限は、特に限定されないが理想的には0g/m
2・dayとしうる。
【0072】
本発明の光学フィルムは、その軟化温度が135℃以上である。かかる高い軟化温度を有する光学フィルムは、表示装置において、高い耐熱性を有する材料として有用に用いうる。軟化温度の測定は、測定対象のフィルムを5mm×20mmの形状に切り出し試料とし、TMA(熱機械的分析)測定装置(例えばエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「TMA/SS7100」)を用い、TMA測定において、試料の長手方向に50mNの張力を加えた状態で、温度を変化させ、線膨張が5%変化した時の温度(℃)を記録することにより行いうる。本発明の光学フィルムの軟化温度の上限は、特に限定されないが、フィルムの成型性を考慮すると、例えば160℃以下としうる。
【0073】
〔9.任意の層〕
本発明の光学フィルムは、スキン層(1)、コア層及びスキン層(2)に加えて、任意の層を有しうる。任意の層の例としては、フィルムの滑り性を良くするマット層、耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層、反射防止層、防汚層等が挙げられる。
【0074】
特に、本発明の光学フィルムは、ハードコート層を有することが好ましい。ハードコート層を有することにより、例えば液晶表示装置において、表示面側の偏光子よりも表示面側に位置し、装置の表示面最外層を構成する保護フィルムとして、本発明の光学フィルムを好適に用いうる。
表示装置において、装置の表示面最外層を構成する面の鉛筆硬度はH以上であることが求められる場合が多い。本発明の光学フィルムは、スキン層(1)、コア層及びスキン層(2)のみからなる場合であっても、その表面の鉛筆硬度をHB以上としうるので、その上にさらにハードコート層を形成することにより、その表面の鉛筆硬度を、容易に、H以上といった高い値とすることができる。
ハードコート層を構成する材料の例としては、有機系シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、アクリル系、ウレタンアクリレート系などの有機ハードコート材料;および、二酸化ケイ素などの無機系ハードコート材料が挙げられる。なかでも、接着力が良好であり、生産性に優れる観点から、ウレタンアクリレート系および多官能アクリレート系ハードコート材料の使用が好ましい。ハードコート層の厚みは、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.8μm以上、特に好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
【0075】
〔10.光学フィルムの製造方法〕
本発明の光学フィルムの製造方法は特に限定されず、任意の製造方法を採用しうる。例えば、樹脂(C)及び樹脂(S)を所望の形状に成形することにより、本発明の光学フィルムを製造しうる。
【0076】
樹脂(C)及び樹脂(S)の成形方法は、特に限定されず、任意の成形方法を採用しうる。成形方法の例としては、樹脂(C)のフィルム、及び樹脂(S)のフィルムを成形してこれらを貼合する方法、及び樹脂(C)及び樹脂(S)のフィルムを、所望の層構成となるよう共押出する方法が挙げられる。特に、樹脂(C)及び樹脂(S)のフィルムを共押出する方法は、効率よく本発明の光学フィルムを製造しうる観点から特に好ましい。押出成形法による成形を行うと、長尺のフィルムを得ることができる。フィルムの形状に成形された樹脂は、そのまま本発明の光学フィルムとしうる。又は、フィルムの形状に成形された樹脂を、さらに任意の処理に供し、それにより得られたものを本発明の光学フィルムとしうる。かかる任意の処理としては、延伸処理が挙げられる。
【0077】
〔11.偏光板〕
本発明の偏光板は前記本発明の光学フィルムと、ポリビニルアルコール偏光子層とを備える。本発明の偏光板はさらに、光学フィルムと偏光子層との間に、これらを接着するための接着剤層を備えてもよい。本発明の光学フィルムは、高い衝撃強度、高い屈曲性、高い表面硬度、低い水蒸気透過率、及び高い耐熱性等の特性を有しうるため、偏光板において、偏光子層を保護する保護フィルムとして特に良好に機能することができる。
【0078】
ポリビニルアルコール偏光子層とは、ポリビニルアルコールフィルム(ポリビニルアルコール、又はポリビニルアルコールに修飾基が導入された重合体のフィルム)を主成分とし、偏光子層としての機能を有する層であり、具体的にはポリビニルアルコールフィルムに、ヨウ素、二色性染料等の材料を吸着させた後、延伸加工したものが挙げられる。接着剤層を構成する接着剤としては、各種の重合体をベースポリマーとしたものが挙げられる。かかるベースポリマーの例としては、例えば、アクリル重合体、シリコーン重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、及び合成ゴムが挙げられる。
【0079】
本発明の偏光板が備える偏光子層と保護フィルムの層の数は任意であるが、本発明の偏光板は、通常は、1層の偏光子層と、その両面に設けられた2層の保護フィルムを備えうる。かかる2層の保護フィルムのうち、両方が本発明の光学フィルムであってもよく、どちらか一方のみが本発明の光学フィルムであってもよい。特に、光源及び液晶セルを備え、かかる液晶セルの光源側及び表示面側の両方に偏光板を有するもの等の通常の液晶表示装置において、表示面側の偏光子よりも表示面側に位置し、装置の表示面最外層を構成する保護フィルムとして、本発明の光学フィルムを備えることが特に好ましい。かかる構成を有することにより、高い衝撃強度、高い屈曲性、高い表面硬度、低い水蒸気透過率、及び高い耐熱性等の特性を生かし、良好な表示品質及び耐久性を有する液晶表示装置を容易に構成することができる。
【0080】
〔12.表示装置〕
本発明の表示装置は、前記本発明の偏光板、及び液晶表示素子又は有機エレクトロルミネッセンス表示素子を備える。本発明の表示装置は、液晶表示装置又は有機エレクトロルミネッセンス表示装置としうる。本発明の表示装置において、本発明の光学フィルムは、偏光板において偏光子を保護する保護フィルムとして設けうる。
【0081】
通常、液晶表示装置は、光源、光源側偏光板、液晶セル及び視認側偏光板を、この順に備える。本発明の表示装置が液晶表示装置である場合、本発明の光学フィルムは、例えば光源側偏光板及び視認側偏光板のいずれか又は両方の両面又は片面の保護フィルムとして用いうる。液晶表示装置の液晶セルの駆動方式としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどが挙げられる。
【0082】
本発明の表示装置において、本発明の偏光板はまた、上記の用途以外の用途に用いられる偏光板として設けうる。例えば、反射防止機能を発現するための構成要素、所謂サングラスリーダブル機能(観察者が偏光サングラスを着用している場合において、観察角度による表示の相違を低減する機能)を発現するための構成要素の一部である偏光板として、本発明の偏光板を設けうる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0084】
〔評価項目〕
(分子量等)
重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、THFを溶離液とするGPCによる標準ポリスチレン換算値として38℃において測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8020GPCを用いた。また、重合体の水素化率は
1H−NMRにより測定した。
【0085】
(押込弾性率)
測定対象のフィルムについて、押込弾性率試験機(フィッシャーインスツルメンツ社製、商品名「ピコメーター Hm−500」)を用いて押込弾性率(単位:MPa)を測定した。測定に際して、圧子は対面角136°正四角錐ダイヤモンド圧子を用いた。荷重速度は2.5mF/secで一定とし、dF/dtは一定の条件で実施した。最大荷重は50mN、荷重時間は20sec、クリープ時間は60secとした。
【0086】
(衝撃強度)
図2〜
図3に概略的に示す装置を用いて測定した。実施例、比較例及び参考例で得られたフィルム100を、上側の筒201及び下側の筒202を備える治具により、水平に固定した。筒201及び筒202の内径(矢印A3で示される)は4cmであった。治具に固定されたフィルム100の上面100Uの、治具内の中央の位置20Pに、鋼球211(パチンコ玉、重さ5g、直径11mm)を様々な高さh(鋼球211の最下部の水準H1とフィルム100の上面100Uとの距離;矢印A2で示す高さ)から、矢印A1方向に落下させて、フィルム100が破れなかった場合及びフィルム100が破れた場合の境界の高さhにおける、鋼球211の位置エネルギー(×10
−2J)を衝撃強度とした。
【0087】
(屈曲性)
測定対象のフィルムを切断し、30mm×400mmの試験片を準備した。
小型卓上型 屈曲試験機(商品名「TCDMLH−P150」、ユアサシステム機器株式会社製)を用いて、屈曲性を試験した。R=2.5mmのマンドレルを用いて、フィルムが165°屈曲するようにセッティングした。試験片の400mmの辺の延長上に、500gの錘を吊るし、30mmの辺と平行に折れ曲げ線が入るように屈曲を行った。屈曲スピードは、100rpmとした。屈曲を行った後、クラック又は折れ目の発生の有無を、LEDライトを当て、状態をビデオカメラで撮影し記録した。クラック又は折れ目が入った時点の回数を、屈曲性の指標として記録した。
【0088】
(表面硬度)
測定対象のフィルム、並びに測定対象のフィルムの表面にハードコート層を形成したもののそれぞれについて、鉛筆硬度を測定した。
ハードコート層用材料としては、日立化成株式会社ヒタロイド7975Dを用いた。このハードコート層用材料を測定対象のフィルム上に、乾燥後の膜厚が3μmとなるよう塗布し、乾燥させた。
鉛筆硬度は、試料のフィルムを、コロナ処理によりガラス上に密着させた状態で測定した。具体的な測定方法は、JIS K5600−5−4に準拠した。鉛筆の傾きは45°とし、上から負荷する荷重は750g重とした。各硬度の鉛筆について5回試験を行い、2回以上において鉛筆跡が確認された場合はきず跡が生じたものと判定し、きず跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を、鉛筆硬度として記録した。
下記の表中において、鉛筆硬度は、Fを0とし、Hを1、2Hを2、3Hを3・・・とし、HBを−1、Bを−2、2Bを−3・・・として記載した。また、測定対象のフィルムそのものついての鉛筆硬度の測定結果は「HCなし」の欄に、測定対象のフィルムの表面にハードコート層を形成したものについての鉛筆硬度の測定結果は「HCあり」の欄に、それぞれ記載した。
【0089】
(水蒸気透過率)
水蒸気透過率は、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN−W」)を用い、JIS K 7129 B法に従って、温度40℃、湿度90%RHの条件にて測定した。
【0090】
(軟化温度)
測定対象のフィルムを5mm×20mmの形状に切り出し試料とした。測定装置として、TMA/SS7100(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いた。TMA(熱機械的分析)測定において、試料の長手方向に50mNの張力を加えた状態で、温度を変化させた。線膨張が5%変化した時の温度(℃)を、軟化温度とした。
【0091】
(総合評価)
偏光板保護フィルムに求められる条件である、衝撃強度5×10
−2J以上、屈曲性強度1万回以上、ハードコート層ありの鉛筆硬度1H(1)以上、ハードコート層なしの鉛筆硬度HB(−1)以上、水蒸気透過率20g/m
2・day以下、及び軟化温度135℃以上の条件の全てを満たす場合、「良」と判定し、それ以外の場合を「不良」と判定した。
【0092】
(樹脂(S)のガラス転移温度)
示差走査熱量計(セイコーインスツルメント製 示差走査熱量計 DSC−6100)で測定した。
【0093】
〔実施例1〜18、比較例1〜36及び参考例1〜3〕
(1−1.樹脂(C)の製造)
芳香族ビニル化合物としてスチレンを用い、鎖状共役ジエン化合物としてイソプレンを用いて、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック構造を有するブロック共重合体を、以下の手順により製造した。
【0094】
内部が充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン256部、脱水スチレン25.0部、及びn−ジブチルエーテル0.615部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.95部を加えて重合を開始させ、さらに、攪拌しながら60℃で60分反応させた。この時点での重合転化率は99.5%であった(重合転化率は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。以下にて同じ。)。
【0095】
次に、脱水イソプレン50.0部を加え、同温度で30分攪拌を続けた。この時点での重合転化率は99%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、同温度で60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
次いで、反応液にイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させて、ブロック共重合体を含む溶液(i)を得た。
得られた溶液(i)中のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は43,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。
【0096】
次に、溶液(i)を攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒としてシリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(E22U、ニッケル担持量60%;日揮化学工業社製)4.0部及び脱水シクロヘキサン350部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行なうことによりブロック共重合体を水素化して、ブロック共重合体の水素化物(ii)を含む溶液(iii)を得た。溶液(iii)中の水素化物(ii)の重量平均分子量(Mw)は45,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0097】
水素化反応の終了後、溶液(iii)をろ過して水素化触媒を除去した。その後、ろ過された溶液(iii)に、リン系酸化防止剤である6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン(住友化学社製「スミライザー(登録商標)GP」。以下、「酸化防止剤A」という。)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させ、溶液(iv)を得た。
【0098】
次いで、溶液(iv)を、ゼータプラス(登録商標)フィルター30H(キュノー社製、孔径0.5μm〜1μm)にて濾過し、更に別の金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて順次濾過して微小な固形分を除去した。ろ過された溶液(iv)から、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。そして、前記の濃縮乾燥器に直結したダイから、固形分を溶融状態でストランド状に押出し、冷却し、ペレタイザーでカットして、ブロック共重合体の水素化物及び酸化防止剤Aを含有する、樹脂(C)のペレット85部を得た。得られたペレット中のブロック共重合体の水素化物の重量平均分子量(Mw)は45,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。また、水素化率は99.9%であった。
【0099】
(1−2.樹脂(S))
樹脂(S)として、以下の樹脂(S1)〜(S3)のペレットを用意した。
・樹脂(S1):商品名「AZP」(旭化成ケミカルズ株式会社製、ガラス転移温度135℃)
・樹脂(S2):商品名「デルペット80NH」(旭化成ケミカルズ株式会社製、ガラス転移温度105℃)
・樹脂(S3):商品名「スミペックスHT55Z」(住友化学株式会社製、ガラス転移温度105℃)
【0100】
(1−3.樹脂(C)及び樹脂(S)の評価)
(1−1)で得られた樹脂(C)及び(1−2)で用意した樹脂(S1)〜(S3)のそれぞれのペレットを、押出機(OCS社製)にて、加熱し溶融させた状態で単層押出成形し、厚み30μmのフィルムを形成した。このフィルムについて、衝撃強度及び屈曲性を測定した。結果を表1に示す。
【0101】
また、(1−1)で得られた樹脂(C)及び(1−2)で用意した樹脂(S1)〜(S3)のそれぞれのペレットを、押出機(OCS社製)にて、加熱し溶融させた状態で単層押出成形し、厚み100μmのフィルムを形成した。このフィルムについて、押込弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
(1−4.光学フィルムの製造)
実施例(1−1)で得た樹脂(C)のペレット、及び実施例(1−2)で用意した樹脂(S)(樹脂(S1)〜(S3)のいずれか)のペレットを、押出機(Dr.Collin製)にて、加熱し溶融させた状態で共押出成形し、樹脂(C)からなるコア層及び樹脂(S)からなるスキン層(1)及びスキン層(2)を備え、スキン層(1)/コア層/スキン層(2)の2種3層の層構成を有する光学フィルム(実施例及び比較例)並びに樹脂(C)からなるコア層のみからなるフィルム(参考例)を得た。光学フィルムの総厚みは、参考例1、実施例1〜6及び比較例1〜12はいずれも30μm、参考例2、実施例7〜12及び比較例13〜24はいずれも45μm、参考例3、実施例13〜18及び比較例25〜36はいずれも60μmとした。実施例及び比較例のt
S1/t
S2はいずれも1.00とした。各層の厚みは、下記表2〜表4に示す通りとした。
【0104】
(1−5.光学フィルムの評価)
(1−3)で得た光学フィルムについて、衝撃強度、屈曲性、表面硬度、水蒸気透過率及び軟化温度を評価した。結果を表5〜表7に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
【表5】
【0109】
【表6】
【0110】
【表7】
【0111】
上記結果から明らかな通り、本発明の要件を満たす実施例においては、偏光板保護フィルムに求められる諸条件をいずれも満たす光学フィルムが得られた。