特許第6711369号(P6711369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711369
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】発光装置ならびに発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20200608BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20200608BHJP
【FI】
   H01L33/60
   H01L33/62
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-94558(P2018-94558)
(22)【出願日】2018年5月16日
(62)【分割の表示】特願2016-226813(P2016-226813)の分割
【原出願日】2016年11月22日
(65)【公開番号】特開2018-142724(P2018-142724A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2018年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2015-255502(P2015-255502)
(32)【優先日】2015年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】中 亮二
(72)【発明者】
【氏名】板東 篤史
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−225942(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/081794(WO,A1)
【文献】 特開2012−142426(JP,A)
【文献】 特開2005−136378(JP,A)
【文献】 特開2015−153856(JP,A)
【文献】 特開2012−099544(JP,A)
【文献】 特開2009−164157(JP,A)
【文献】 特開2012−079817(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/075530(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する樹脂成形体と、前記凹部の底面に配置された第1電極及び第2電極と、前記凹部の底面の素子載置領域を取り囲み前記素子載置領域の高さよりも高い上面を有する光反射性の第1樹脂部と、を備えるパッケージを複数有する集合基板を準備する工程と、
前記素子載置領域に複数の発光素子を前記素子載置領域の平面視において上下方向および/または左右方向にずれて載置する工程と、
前記凹部の側面から前記第1樹脂部に渡って光反射面が形成され、前記発光素子の側面と離間し、前記光反射面の高さは端部で最も高さが低くなる光反射性の第2樹脂部を形成する工程と、
前記集合基板を切断し発光装置を得る工程と、
を備え、
前記第1樹脂部は前記樹脂成形体の一部と接続され、前記第1樹脂部は金型により前記樹脂成形体と一体的に形成され、
前記第1樹脂部は、平面視の前記上下方向および/または左右方向において、各発光素子の互いに反対側に位置する一対の側面と前記第1樹脂部との間隔が互いに異なるように非対称の形状を有し、
前記平面視において、前記複数の発光素子が、前記パッケージの中心からずれて配置されることによって、前記第2樹脂部の前記上下方向および/または左右方向の断面において、前記第2樹脂部の前記光反射面の傾斜角度は、各発光素子の両側で異なっている、発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記素子載置領域は平面視において非対称な形状を有する請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1樹脂部は前記発光素子の活性層よりも低く形成される請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
凹部を有する樹脂成形体と、前記凹部の底面に配置された第1電極および第2電極とを有し、前記底面に素子載置領域を備えるパッケージと、
前記素子載置領域の平面視における上下方向および/または左右方向にずれて、前記素子載置領域に載置された複数の発光素子と、
前記素子載置領域を取り囲み、前記素子載置領域の高さよりも高い上面を有する光反射性の第1樹脂部と、
前記凹部の側面から前記第1樹脂部に渡って光反射面が形成され、端部が前記第1樹脂部の表面に位置する光反射性の第2樹脂部と、
を備え、
前記第1樹脂部は前記樹脂成形体の一部と接続され、前記第1樹脂部は前記樹脂成形体と同じ材料によって一体的に形成されており、
前記第1樹脂部は、平面視の前記上下方向および/または左右方向において、各発光素子の互いに反対側に位置する一対の側面と前記第1樹脂部との間隔が互いに異なるように非対称の形状を有し、
前記平面視において、前記複数の発光素子が、前記パッケージの中心からずれて配置されることによって、前記第2樹脂部の前記上下方向および/または左右方向の断面において、前記第2樹脂部の前記光反射面の傾斜角度は、各発光素子の両側で異なっており、
前記第2樹脂部の光反射面の高さは前記端部で最も高さが低くなる発光装置。
【請求項5】
前記第2樹脂部は、前記凹部の側面と前記第1樹脂部との間に露出した前記第1電極および前記第2電極上に位置している、請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1樹脂部は前記発光素子の活性層よりも低く形成される請求項4または5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記素子載置領域は平面視において非対称な形状を有する請求項4から6のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置ならびに発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に実装された発光素子と、基板上かつ発光素子の実装領域の外側に形成された反射層と、発光素子の実装領域の周囲に形成された隔壁とを備えた発光装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−158011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような発光装置においては、製造時の樹脂を硬化させる際の熱や発光素子の発熱により、反射層及び隔壁の各々の樹脂部が膨張し樹脂部間で剥離が生じる虞がある。
【0005】
そこで、本開示に係る実施形態は、樹脂部間の剥離が抑制される発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
また、本開示に係る実施形態は、光取り出し効率の高い発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る実施形態の発光装置の製造方法は、凹部と、凹部の底面に配置された第1電極及び第2電極と、凹部の底面の素子載置領域を取り囲み素子載置領域の高さよりも高い上面を有する光反射性の第1樹脂部とを備えるパッケージを複数有する集合基板を準備する工程と、素子載置領域に発光素子を載置する工程と、凹部の側面から第1樹脂部に渡って光反射面が形成され、少なくとも第1樹脂部の上面を被覆し発光素子の側面と離間し、光反射面の高さは端部で最も高さが低くなる光反射性の第2樹脂部を形成する工程と、集合基板を切断し発光装置を得る工程を備える。
【0008】
また、本開示に係る実施形態の発光装置は、凹部と、凹部の底面に配置された一対の電極部とを有し、底面に素子載置領域を備えるパッケージと、素子載置領域に載置された発光素子と、素子載置領域を取り囲み、素子載置領域の高さよりも高い上面を有する光反射性の第1樹脂部と、凹部の側面から第1樹脂部に渡って光反射面が形成され、少なくとも第1樹脂部の上面を被覆し端部が第1樹脂部の表面に位置する光反射性の第2樹脂部と、を備え、第2樹脂部の光反射面の高さは端部で最も高さが低くなる。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る実施形態によれば、樹脂部間の剥離が抑制される発光装置及び発光装置の製造方法を提供することができる。
【0010】
また、本開示に係る実施形態によれば、光取り出し効率の高い発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の集合基板Bを示す模式上面図である。
図2A】本開示の実施形態に係る発光装置を示す模式斜視図である。
図2B】本開示の実施形態に係る発光装置の模式上面図である。
図2C図2BのA−A断面を示す模式断面図である。
図3A】本開示の第1樹脂部が発光素子を取り囲む状態を示す模式上面図である。
図3B】本開示の第1樹脂部が発光素子を取り囲む状態を示す模式上面図である。
図3C】本開示の第1樹脂部が発光素子を取り囲む状態を示す模式上面図である。
図4A】本開示の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す概略断面図である。
図4B】本開示の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す概略断面図である。
図4C】本開示の実施形態に係る発光装置の製造方法を示す概略断面図である。
図5】本開示の実施形態に係る発光装置の第2樹脂部の形状を表す模式平断面である。
図6】本開示の実施形態に係る発光装置の第1樹脂部の形状を表す模式断面図である。
図7】本開示の実施形態に係る発光装置を示す概略上面図である。
図8】本開示の実施形態に係る発光装置を示す概略上面図である。
図9A】本実施形態に係る発光装置の第1樹脂部の形状を表す模式上面図である。
図9B】本実施形態に係る発光装置の第1樹脂部の形状を表す模式上面図である。
図9C】本実施形態に係る発光装置の第1樹脂部の形状を表す模式上面図である。
図9D】本実施形態に係る発光装置の第1樹脂部の形状を表す模式上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであり、本発明の技術的範囲を限定することを意図したものではないことに留意されたい。1つの実施形態において説明する構成は、特段の断りがない限り、他の実施形態にも適用可能である。以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。
【0013】
各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある点も留意されたい。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
【0014】
また、以下に説明する実施形態においては集合基板又は樹脂成形体付リードフレームの用語は発光素子、ワイヤ又は樹脂部等の部材を形成する前と後において同じ用語を適宜用いることがある。また、樹脂成形体等のように個片化する前と後で同じ用語を適宜用いることがある。
【0015】
本開示に係る発光装置100の製造方法は、光反射性の第1樹脂部4が形成されたパッケージ1を複数有する集合基板Bを準備する工程と、発光素子3を載置する工程と、光反射性の第2樹脂部5を形成する工程と、集合基板Bを個片化し発光装置100を得る工程を備える。図1は本実施形態の集合基板Bを示す模式上面図であり、図2Aは本実施形態の発光装置100を示す模式斜視図であり、図2Bは本実施形態の発光装置100を示す模式上面図であり、図2C図2BのA−A断面を示す模式断面図である。
【0016】
1.集合基板Bを準備する工程
図1で示すように、本開示に係る集合基板Bは側面と底面を備えた凹部2を有するパッ
ケージ1を複数備え、複数のパッケージ1は一体に形成されている。図1は発光素子3及び第1樹脂部4等の部材を設ける前の集合基板Bの状態を示す。次に、パッケージ1について図2A乃至図2Cを用いて説明する。凹部2の底面には少なくとも第1電極6及び第2電極7を有し、さらに発光素子3が載置される領域(以下、「素子載置領域X」ということがある)を有する。素子載置領域Xは後述する光反射性の第1樹脂部4によって画定される。素子載置領域Xは凹部2の底面において複数個形成されてもよい。
【0017】
素子載置領域Xは、その上に配置される発光素子3の外周に対応した形状、又は発光素子3の平面形状に対応する形状を有する部位を指す。つまり、素子載置領域Xの外形は、その上に配置される発光素子3の外周形状と一致、略一致(例えば、+10%以内の面積割合)、若しくはより大きい形状を有する。
【0018】
1つの素子載置領域X上に配置される発光素子3は1つであってもよいし、2つ以上でもよい。後者の場合は、配置された複数の発光素子3の最外形を、上述した発光素子3の外周形状とみなすことができる。
【0019】
具体的な素子載置領域Xの面積は、その上に搭載する発光素子3の平面積、数、配列状態等によって適宜設定することができる。素子載置領域Xの面積は、発光素子3が1つの場合、例えば発光素子3の平面積の1.2〜2倍であることが好ましく、1.5〜1.8倍であることがより好ましい。
【0020】
本開示に係るパッケージ1は、例えば、鉄、銅、銀、コバール、ニッケル板等の金属板が樹脂を含む樹脂成形体に埋設された樹脂パッケージ、又は配線を備えるセラミック等の絶縁性基板を用いることができる。パッケージ1は少なくとも第1電極6及び第2電極7を含む電極部を有するが、それ以外に放熱を目的とする部位を有していてもよい。
【0021】
パッケージ1が樹脂パッケージである場合は、樹脂成形体と一対の電極が一体に形成されており、凹部2の底面には一対の電極が配置される。
【0022】
本開示に係るパッケージ1の凹部2の底面には素子載置領域Xを取り囲むように光反射性の第1樹脂部4が形成される。後述するが、第1樹脂部4はパッケージ1と別の工程で形成されてもよいし、パッケージ1と同時に同じ工程で形成されてもよい。第1樹脂部4は発光素子3の周囲に形成され、素子載置領域Xの高さよりも高い上面を有する。これにより、第1樹脂部4は後述する光反射性の第2樹脂部5が発光素子3の側面まで流動し発光素子3の側面を覆うことを防止することができる。また、発光素子3の近傍を取り囲むように第1樹脂部4を配置することで、第2樹脂部5の傾斜面をより上方に傾斜させることができ発光素子3から出射される光を効率良く上方に取り出すことができる。
【0023】
第1樹脂部4は、パッケージ1の凹部2の側面よりも内側に、後述の第2樹脂部5の流入を抑制するための壁(堰き止め部)として機能する部材である。そのため、第1樹脂部4は、第2樹脂部5が形成される領域と発光素子3との間に配置されればよい。例えば、第2樹脂部5が発光素子3の周囲の全周に渡って形成される場合は、第1樹脂部4は発光素子3の周囲の全周に渡って配置される。この場合、第1樹脂部4は、図3Aで示すように連続する1つの第1樹脂部4であってもよく、あるいは、図3Bで示すように分離した複数の第1樹脂部4であってもよい。いずれの場合も、発光素子3の全周において、換言すると発光素子3の全辺に対応する領域において、第1樹脂部4が環状に配置される。
【0024】
また、図3Cで示すように、第2樹脂部5を発光素子3の全周囲ではなく、発光素子3の周囲の一部、例えば、平面視四角形の発光素子3の周囲のうち、1〜3辺に対応する領域に形成される場合は、その1〜3辺に対応する位置に、第1樹脂部4は配置される。換
言すると、発光素子3と凹部2の側面との間に、第1樹脂部4が形成されない領域が存在する。このように環状ではない第1樹脂部4は、直線状、又は、曲線状、さらに、これらを組み合わせた形状とすることができる。そして、環状ではない第1樹脂部4の一部は、凹部2の内壁に接していてよい。
【0025】
以上のように、第1樹脂部4は、発光素子3の全周囲に配置される場合、発光素子3の一部に配置される場合のいずれであってもよく、これらのいずれもを指して「発光素子を取り囲む」と称する。
【0026】
第1樹脂部4を形成する方法は、特に限定されないが、樹脂を描画して形成する方法(以下、樹脂描画法と言う)及び金型により第1樹脂部4を形成する方法を例示する。
【0027】
第1樹脂部4を形成する方法として樹脂描画法を用いることができる。
【0028】
樹脂描画法では、所定の樹脂を溶融状態で内部に保持するシリンジ(注射器)を準備し、シリンジ内部にピストンを押し込む等によりシリンジの先端に取り付けた貫通孔を有するニードル(注射針)から溶融樹脂を吐出させながら、基板の主面に垂直な方向から平面視した場合、溶融樹脂が発光素子3の周囲を取り囲むように、シリンジを移動させて溶融樹脂を配置する。その後、パッケージ1の凹部2の底面に配置した溶融樹脂を例えば、加熱または紫外線照射等により硬化させて第1樹脂部4を得ることができる。
【0029】
用いる樹脂は、溶融状態(溶融樹脂)を形成可能でかつ、得られた溶融樹脂を硬化可能な樹脂であれば任意の樹脂を用いてよい。例えば、溶融樹脂の母体となる樹脂として熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができ、好ましい樹脂として、シリコーン系樹脂、フェノール樹脂、BTレジン、PPA、およびエポキシ系樹脂を例示できる。また、これらの母体となる樹脂に、発光素子3からの光を吸収しにくく、かつ母体となる樹脂に対して屈折率差の大きい反射部材(例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム)等を含有させることで、効率よく光を反射させることができる。
【0030】
第1樹脂部4の高さ及び幅は、ニードルから吐出する樹脂の量(例えば、シリンジを移動させる距離あたりの樹脂の量)、溶融樹脂の粘度等の特性、シリンジからの塗布回数等を調整することにより所望の値とすることができる。
【0031】
第1樹脂部4の高さは、第2樹脂部5となる樹脂の流動を堰き止めることができる程度の高さであればよいが、発光素子3の活性層より低く形成されることが好ましい。これにより、発光素子3の活性層からの出射光が第1樹脂部4によって遮られることを抑制でき、発光装置の光取り出し効率を高くすることができる。上記を理由に第1樹脂部4の高さは低ければ低いほどよいが、一方、第1樹脂部4の幅は第1樹脂部4の高さの寸法よりも大きいことが好ましい。このように第1樹脂部4の幅を比較的大きな幅とすることで、第1樹脂部4と後述する第2樹脂部5が密着する面積が大きくなり、第1樹脂部4と第2樹脂部5の剥離をより抑制することができる。例えば、第1樹脂部4の高さは40μm〜60μmであることが好ましく、第1樹脂部4の幅は50μm〜100μmであることが好ましい。また、第1樹脂部4と発光素子3の側面との距離は50μm〜400μmであることが好ましい。
【0032】
また、第1樹脂部4の上面を平面にするために、シリンジを用いて溶融樹脂を凹部2の底面に配置した後、溶融樹脂を硬化させる前に、ブレード等の治具を用いて溶融樹脂の上面を平坦にしてもよい。
【0033】
あるいは、凹部2の底面に配置された溶融樹脂の表面に平板を押し当てて、溶融樹脂の
上面を拘束し側面は自由表面とした状態で溶融樹脂を硬化させた後、平板を除去して上面が平面である第1樹脂部4を得てもよい。
【0034】
硬化前の第1樹脂部4の粘度は硬化前の第2樹脂部5の粘度よりも高いことが好ましい。これにより第2樹脂部5をポッティング法等により形成した際に、第1樹脂部4で堰き止める効果をより高めることができる。また、第1樹脂部4の粘度を比較的高い粘度に設定することで、任意の第1樹脂部4の形状(例えば、幅が狭い形状や高さが高い形状等)をより容易に形成することができる。
【0035】
第1樹脂部4を形成する別の方法として、複数の樹脂パッケージを備える集合基板Bにおいて、集合基板Bを製造する際に金型により第1樹脂部4を集合基板Bと同時に形成する方法を用いることができる。図4A乃至図4Cを用いてその製造方法を説明する。
【0036】
まず、図4Aで示すように上金型Uと下金型Dを備える金型でリードフレームを挟み込む。上金型Uは、上金型Uの上部を構成する平板の本体部と、本体部の端部から枠状に形成された外壁部と、本体部から突出した複数の突出部Tと、突出部Tに設けられた小凹部Cと、外壁部の一部を水平方向に貫通する注入口とを有する。突出部Tに設けられた小凹部Cは、後に第1樹脂部4となる樹脂が注入され第1樹脂部4が形成される所である。また、下金型Dは所定の厚みを有する板材であって表面が平坦に形成されている。下金型Dは、上金型Uと接触させることにより、小凹部Cを含む空間部を形成するものである。
【0037】
次に図4Bで示すように、上金型Uと下金型Dとで挟み込まれた金型内の小凹部Cを含む空間部に、光反射性物質が含有された樹脂を注入する。この時、金型内において所定の温度を加えて仮硬化を行い、その後、金型から抜脱して、仮硬化よりも高い温度を加えて本硬化を行うことが好ましい。
【0038】
その後、図4Cで示すように各発光装置となるように樹脂成形体付リードフレームを切断する。図4Cでは簡略化のために発光素子、ワイヤ及び第2樹脂部等の部材を省いて示している。
【0039】
また、以上は集合基板Bを形成する工程を示しているが、予め形成された集合基板Bを購入する等して準備してもよい。
【0040】
2.発光素子3を載置する工程
パッケージ1の凹部2の底面において、第1樹脂部4で画定される素子載置領域Xに発光素子3が載置される。発光素子3と第1電極6及び第2電極7はワイヤ等によって電気的に接続される。また、1つの素子載置領域Xに載置される発光素子3の個数は1つでも複数でもよい。
【0041】
発光素子3は、発光ダイオード素子などの半導体発光素子を用いることができる。発光素子3は、種々の半導体で構成される素子構造と、正負一対の電極と、を有するものであればよい。特に、紫外〜可視域の発光が可能な窒化物半導体(InxAlyGa1-x-yN、
0≦x、0≦y、x+y≦1)の発光素子3が好ましい。発光素子3の正負一対の電極が同一面側に設けられている場合、発光素子3の各電極とパッケージ1の第1電極6及び第2電極7はワイヤによって電気的に接続されるか、若しくは発光素子3の各電極とパッケージ1の第1電極6及び第2電極7とが対向するように配置され導電性の接合部材を介して接続される。このような導電性の接合部材としては、具体的には、例えば錫-ビスマス
系、錫-銅系、錫-銀系、金-錫系などの半田(具体的には、銀と銅と錫とを主成分とする
合金、銅と錫とを主成分とする合金、ビスマスと錫とを主成分とする合金等)、共晶合金(金と錫とを主成分とする合金、金と珪素とを主成分とする合金、金とゲルマニウムとを
主成分とする合金等)、銀、金、パラジウムなどの導電性ペースト、バンプ、異方性導電材、低融点金属などのろう材等が挙げられる。1つのパッケージ1に複数の発光素子3が載置される場合は、各発光素子3はワイヤによって直列又は並列に接続される。また、1つのパッケージ1に、例えば青色・緑色・赤色発光の3つの発光素子3が搭載されてもよい。また、発光素子3は成長基板ではない基板を貼り合わせたものを用いてもよい。
【0042】
3.光反射性の第2樹脂部5を形成する工程
第2樹脂部5は、凹部2の側面から第1樹脂部4に渡って、その光反射面が形成される。第2樹脂部5は発光素子3から出射される光を凹部2の開口側に偏向させる役割を持つ。第2樹脂部5は、例えば、図3Aで示すように凹部2の側面から第1樹脂部4に渡って全体的に連続して形成されていてもよいし、図3Cで示すように第2樹脂部5の一部が途中で途切れている場合であってもよい。図3Cで示す発光装置では、2つの第1樹脂部4と2つの第2樹脂部5を備える。より具体的には、図3Cで示す発光装置は、上面視において長手方向と長手方向に直交する短手方向を有する略四角形状の外形形状を備えている。そして、2つの第1樹脂部4は短手方向に延び、発光素子3の2つの側面を挟み込むように形成される。この時、2つの第1樹脂部4は発光素子3の近傍に配置され、発光素子3の側面と離間するように形成される。一方、2つの第2樹脂部5は凹部2の長手方向の2つの側面から第1樹脂部4に渡って形成される。このような発光装置においては、第1樹脂部4や第2樹脂部5の使用される樹脂量を少なくすることができるので安価な発光装置とすることができる。ここでは、上面視における外形形状が長方形の発光装置を例に挙げて説明したが、発光装置の外形形状は特に限定されず、例えば、上面視においてその外形形状が正方形である発光装置であっても同様の構成を備えることができる。
【0043】
また、図5で示すように、第2樹脂部5の傾斜面(光反射面)は凹部2の側面の傾斜面よりもなだらかであることが好ましい。または、図5で示すように、第2樹脂部5の傾斜面(光反射面)の上端部と下端部(第1樹脂部4と第2樹脂部5が接する点)とを結ぶ線
と凹部2の底面と平行な面により形成される傾斜角αは、凹部2の側面の傾斜面の上端部と下端部とを結ぶ線と凹部2の底面により形成される傾斜角βよりも小さいことが好ましい。このように配置することで、発光素子3から出射される光が第2樹脂部5で反射された後、その反射光が発光素子3側へ戻ることを抑えることができ、発光装置の光取り出しが良好となる。
【0044】
第2樹脂部5は少なくとも第1樹脂部4の上面を被覆する。第2樹脂部5が第1樹脂部4の上面を被覆することで、第1樹脂部4と第2樹脂部5の樹脂部間の接合面積が増え、その結果樹脂部間の剥離をより抑制することができる。
【0045】
この場合の「第1樹脂部4の上面」とは、第1樹脂部4が樹脂描画法や金型で形成される場合は、一般的には第1樹脂部4の自重、ブレード等の治具又は金型により、第1樹脂部4の形状は断面視において天面に平坦な面を有する。この場合はその平坦な面を第1樹脂部4の上面とする。また、断面視における第1樹脂部4の表面の形状が曲線を含む形状又は放物線で構成される形状の場合、頂点と変曲点から構成される面、上面視における第1樹脂部4の中心、重心又は垂心と変曲点から構成される面、又は第1樹脂部4の高さの半分よりも上の面のいずれか1つから選ばれる面を第1樹脂部4の上面とすることができる。
【0046】
第2樹脂部5は、第2樹脂部5の端部と第1樹脂部4の外側上端縁Pとが一致していても良いが、好ましくは第2樹脂部5の一部が外側上端縁Pを超えて配置され、より好ましくは第2樹脂部5の一部が内側上端縁Qを超えて配置される。なお、第2樹脂部5は発光素子3の側面と離間して配置される。本発明の第1樹脂部4の外側上端縁Pとは、図6で示すように、第1樹脂部4の上面で幅方向に対向する2つの縁部(上端縁)のうち、パッ
ケージ1の凹部2の底面に配置される発光素子3から遠い縁部であり、内側上端縁Qとは、第1樹脂部4の上面で幅方向に対向する2つの縁部(上端縁)のうち、パッケージ1の凹部2の底面に配置される発光素子3に近い縁部である。第2樹脂部5の一部が第1樹脂部4の外側上端縁P又は内側上端縁Qを超えて配置される場合、第2樹脂部5と第1樹脂部4とが接する表面積が増大することにより樹脂部同士の密着性が良くなり樹脂部間の剥離をより抑制することができる。
【0047】
第2樹脂部5は発光素子3の側面と離間して配置される。これにより発光素子3の側面は第2樹脂部5で直接覆われる虞が無いので光取出し効率が良好な発光装置とすることができる。また、好ましくは第2樹脂部5の端部は第1樹脂部4の表面に配置される。このように第2樹脂部5と発光素子3の側面との距離を十分に離間させることで、製造時の樹脂を硬化させる際の熱や発光素子3の発熱等で第2樹脂部5が膨張し第2樹脂部5が発光素子3の側面と接することを防止することができる。また、第2樹脂部5の端部と第1樹脂部4の表面が密着していることにより、第2樹脂部5の端部が膨張したとしても発光素子3の側面に達することをより抑制することができる。
【0048】
第2樹脂部5の光反射面の高さは第2樹脂部5の発光素子3側の端部で最も高さが低くなる。言い換えると、凹部2の底面から規定される光反射面の高さのうち、第2樹脂部5の発光素子3側の端部でその高さが最小となる。これにより、第2樹脂部5の光出射面は第2樹脂部5の端部から凹部2の側面に向かって全体的に勾配が上がる形状になるため、発光素子3から出射される光を凹部2の開口に向けて効率よく出射させることができる。
【0049】
第2樹脂部5の反射率はパッケージ1を構成する部材の反射率よりも高いことが好ましい。具体的には、パッケージ1が樹脂パッケージである場合は、樹脂パッケージを構成する樹脂成形体の反射率よりも第2樹脂部5の反射率が高くなることが好ましい。言い換えると、第2樹脂部5に含有される光反射性物質(例えば酸化チタン)は、樹脂成形体に含有される光反射性物質よりも多い。この場合第2樹脂部5に含有される光反射性物質は、樹脂成形体に含有される光反射性物質の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることが好ましく、2.5倍以上であることがより好ましい。例えば、第2樹脂部5には酸化チタンが40%重量含有されている。
【0050】
また、第2樹脂部5は第1電極6及び第2電極7部に形成されたメッキ層(例えばAgメッキ)よりも光反射率が高いことが好ましい。この場合の「光反射率が高い」とは、発光素子3から出射される全ての波長に対する光反射率の平均のことを指し、第2樹脂部5の全ての波長に対する光反射率の平均値がメッキ層のそれよりも高いことをいう。なお、仮に第2樹脂部5の光反射率がメッキ層の光反射率よりも低い場合であっても、発光素子3からの光を吸収するワイヤを第2樹脂部5で被覆することや、発光素子3からの光を上方に偏向させる第2樹脂部5の光反射面をより上方に向ける(傾斜角α<傾斜角β)ことなどで光取り出しの効果が大きい場合は、光取り出し性に優れた発光装置とすることができる。
【0051】
パッケージ1が樹脂パッケージである場合は、第2樹脂部5はパッケージ1を構成する樹脂成形体よりも光や熱による変色がしにくい耐変色性に優れた樹脂を用いることが好ましい。発光素子3からの光や熱が直接触れる部位は特に変色が起きやすいので、例えばエポキシ系樹脂の樹脂成形体の表面を、樹脂成形体よりも耐変色性に優れたシリコーン系樹脂等の第2樹脂部5で被覆することが好ましい。第2樹脂部5は高い粘度を有していることが好ましい。例えば、第2樹脂部5の粘度は1〜100Pa・s、より好ましくは5〜10Pa・sである。これにより、第2樹脂部5を形成する際に第2樹脂部5を発光素子3の側面と容易に離間することができ第2樹脂部5が発光素子3の側面に達することを防止することができる。
【0052】
第2樹脂部5は、断面視において凹部2の側面の少なくとも一部を被覆していればよいが、図2Cで示すように凹部2の側面の全てを被覆していてもよい。言い換えると、第2樹脂部5の上端部と凹部2の側面の上端部が一致していてもよい。このようにすることで、パッケージを構成する部材の光反射率よりも光反射率が高い第2樹脂部5で凹部2の側面全体を被覆することができるので、光取出し効率の良い発光装置とすることができる。
【0053】
第2樹脂部5は、図2Bに示すように、凹部2の底面において素子載置領域X及び第1樹脂部4を除く全領域を被覆していることが好ましい。特に、発光素子3の電極と第1電極6及び第2電極7を接続するワイヤのボンディング領域や、保護素子等の電子部品の一部又は全部が埋まるように第2樹脂部5が設けられることが好ましい。これにより、発光素子3からの光がワイヤや保護素子等に吸収されることを防ぐことができる。
【0054】
第2樹脂部5は発光素子3からの光や外光などに対して透過や吸収しにくい部材が好ましい。例えば、第2樹脂部5の母体となる樹脂として熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができ、より具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、BTレジンや、PPAやシリコーン樹脂などを用いることができる。これら母体となる樹脂に、発光素子3からの光を吸収しにくくかつ母体となる樹脂に対して屈折率差の大きい反射部材(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム)などの光散乱粒子を分散することで、効率よく光を反射させることができる。
【0055】
また、第2樹脂部5には、発光装置のコントラストを向上させるために、発光装置の外光(多くの場合、太陽光)に対して光反射率が低いものを用いてもよい。この場合、通常は黒色ないしそれに近似した色であることが好ましい。この時の充填剤としてはアセチレンブラック、活性炭、黒鉛などのカーボンや、酸化鉄、二酸化マンガン、酸化コバルト、酸化モリブデンなどの遷移金属酸化物、もしくは有色有機顔料などを目的に応じて利用することができる。
【0056】
4.集合基板Bを個片化し発光装置を得る工程
発光素子3が載置された集合基板Bを個片化し、個々の発光装置100を得る。個片化の方法としては、リードカット金型、ダイシングソーによる切断、又はレーザー光による切断等の種々の方法を用いることができる。
【0057】
(第1実施形態に係る発光装置の製造方法)
以下に、第1実施形態に係る発光装置100の製造方法をパッケージ1が樹脂パッケージである場合を例示する。
【0058】
まず、金属板をエッチングして第1電極6及び第2電極7を複数備えたリードフレームを形成する。その後リードフレームの表面にはNi、Pd、Au、Ag等のメッキ層が形成される。ただし、メッキ層は樹脂成形体を形成した後であって、発光素子3を載置する前に形成してもよい。
【0059】
次に凸部を有する上金型と平坦な上面を有する下金型を備える金型によりリードフレームを挟み込む。そして、樹脂注入口から光反射性物質が含有される樹脂を注入して、所定の温度と圧力とを加えてリードフレームに樹脂成形体を形成する。この時、上金型の凸部に挟みこまれる領域はパッケージ1の凹部2に相当し、凸部に挟みこまれない領域は空隙となりこの空隙に樹脂成形体が形成される。金型により樹脂成形体を形成する方法としては、トランスファモールド法、射出成形法、圧縮成形法等を用いることが出来る。樹脂成形体が形成されたリードフレーム(以下、樹脂成形体付リードフレームと言う)は複数の凹部2と、複数の凹部2の底面に配置される複数の第1電極6及び第2電極7を備える。
【0060】
そして、樹脂成形体付リードフレームが有する凹部2の底面の素子載置領域Xにダイボンド材を用いて発光素子3を載置する。
【0061】
次いで、樹脂描画法により第1樹脂部4となる溶融樹脂を素子載置領域Xを取り囲むように形成する。その後、溶融樹脂を仮硬化させることで第1樹脂部4を得ることができる。仮硬化の条件として、100℃にて5分間保持することを例示できる。この時、第1樹脂部4の高さは素子載置領域Xの高さよりも高くなるように形成される。
【0062】
そして、導電性のワイヤによって発光素子3の電極と凹部2の底面に配置された第1電極6及び第2電極7とが電気的に接続される。
【0063】
次に、第2樹脂部5は、導電性のワイヤの少なくとも一部を被覆するように、凹部2の側面から第1樹脂部4に渡って形成される。この時、第2樹脂部5はワイヤのボンディング領域を少なくとも被覆し、より好ましくはワイヤの長さの50%以上を被覆する。このようにすることで、発光素子3からの出射光がワイヤによって吸収されることを抑制することができる。また、保護素子等の電子部品を備える場合は、保護素子等の電子部品の一部を被覆又は全部が埋まるように第2樹脂部5を形成することが好ましい。これにより、発光素子3からの光が保護素子等に吸収されることを防ぐことができる。
【0064】
第2樹脂部5はポッティング法で形成してよい。第2樹脂部5がポッティング法で形成される場合は、例えば、凹部2の底面のいずれか1点に第2樹脂部5をポッティング(1点塗布)して樹脂の自然流動により形成することができる。この場合、簡易に第2樹脂部5を形成することができるので好ましい。また、第2樹脂部5は凹部2の隅部又は端部にポッティングをすることで形成してもよい。例えば、平面視において凹部2の底面の形状が矩形形状である場合、4つの角部に第2樹脂部5をポッティング(4点塗布)して形成してもよい。これにより、光が減衰されやすい角部に確実に第2樹脂部5を形成することができるので、光取出しの良好な発光装置を製造することができる。ポッティングの回数はこれに限らず、任意の回数で行うことができる。
【0065】
第2樹脂部5を形成した後に、第2樹脂部5を硬化する硬化工程を行う。なお、第1樹脂部4の硬化工程と、第2樹脂部5の硬化工程は同時に行ってもよいし、別々の工程であってもよい。例えば、第1樹脂部4が未硬化、または完全に硬化されていない状態で第2樹脂部5を形成し、その後、第1樹脂部4と第2樹脂部5を同時に硬化させてもよい。これにより、第1樹脂部4と第2樹脂部5との間の界面の形成を緩和させることができ、両者の密着性を向上させることができる。
【0066】
次に、発光素子3を被覆するように凹部2内に透光性の封止部材を形成する。この時、封止部材には蛍光体粒子が含有されていることが好ましい。封止部材の母体となる樹脂としては、第1樹脂部4で用いられる母体の樹脂材料と同じ樹脂材料を用いることができる。蛍光体粒子としては、具体的には、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット、ユウロピウム及び/若しくはクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(カルシウムの一部をストロンチウムで置換可)、ユウロピウムで賦活されたサイアロン、ユウロピウムで賦活されたシリケート、ユウロピウムで賦活されたアルミン酸ストロンチウム、マンガンで賦活されたフッ化珪酸カリウムなどを用いることができる。また、封止部材を形成する方法としてポッティング法等を挙げることができる。封止部材は発光素子3を外力や埃、水分などから保護すると共に、発光素子3の耐熱性、耐候性、耐光性を良好なものにする。
【0067】
そして、上記の工程を経た後、発光素子3が載置され、第1樹脂部4及び第2樹脂部5等が形成された樹脂成形体付リードフレームを個片化する。その結果、個々の発光装置100を得ることができる。個片化の方法としてはダイシング等による切断方法を用いることができる。
【0068】
個片化された後の発光装置100について簡単に説明する。
【0069】
発光装置100は、凹部2の底面に素子載置領域Xを備えるパッケージ1と、素子載置領域Xに載置された発光素子3と、素子載置領域Xを取り囲む光反射性の第1樹脂部4と、凹部2の側面から第1樹脂部4に渡って形成される光反射面を有する第2樹脂部5を備える。
【0070】
第2樹脂部5は少なくとも第1樹脂部4の上面を被覆する。これにより、第1樹脂部4と第2樹脂部5の接合する面積が増えるので、発光素子3の発熱により第1樹脂部4及び/又は第2樹脂部5が膨張したとしても樹脂部間の剥離が抑制でき信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0071】
また、第2樹脂部5の端部が第1樹脂部4の表面に位置しているので第2樹脂部5が発光素子3の側面を被覆することを抑制でき光取出し効率の高い発光装置とすることができる。
【0072】
(第2実施形態に係る発光装置の製造方法)
次に、第2実施形態に係る発光装置200の製造方法をパッケージ1が樹脂パッケージである場合を例示する。
【0073】
第1実施形態に係る発光装置100の製造方法との違いは、第1樹脂部4の形成工程及びワイヤの接続工程の順番が異なるので異なる点について重点的に説明する。図7は第2実施形態に係る発光装置200を示す概略上面図である。
【0074】
まず、第1実施形態と同様の製造方法で、第1樹脂部が形成される前の樹脂成形体付リードフレームを準備する。そして、凹部2の底面の素子載置領域Xであって第1電極6又は第2電極7の一方の面に発光素子3がダイボンド材を用いて載置される。この時、例えば、外形が四角形を有するパッケージ1を上から視た場合に、発光素子3はパッケージ1の中心からずれてその載置された電極面側に寄って載置される。
【0075】
次に、発光素子3の電極(例えばn電極)と第1電極6又は第2電極7のうち発光素子3が載置された電極面とが第1ワイヤによって電気的に接合される。図7では、発光素子3は第1電極6に載置されており、第1ワイヤと第1電極6とが電気的に接続される。
【0076】
次に、第1ワイヤのワイヤボンディング部を被覆し発光素子3を取り囲むように第1樹脂部4を形成する。第1ワイヤのワイヤボンディング部を第1樹脂部4で被覆することで、ワイヤの接合強度を向上する効果を奏し、さらに発光素子3からの出射光がワイヤによって吸収される光の割合を抑制することができる。また、第1電極6の上面において、第1樹脂部4と第2樹脂部5の側壁との距離が短く、第1ワイヤのワイヤボンディング領域Fが十分に確保できない場合であっても、第1樹脂部4が形成される領域に第1ワイヤのワイヤボンディング部を配置することができるので発光装置の小型化を実現することができる。なお、図7では、第2電極7の上面において、第2ワイヤのワイヤボンディング領域Gには第1樹脂部4が形成されていない。しかし、第1樹脂部4が第2電極7の上面にも形成される場合は、同様に、第2ワイヤのワイヤボンディング部は第1樹脂部4で被覆されてよい。この時の第1樹脂部4の形成方法としては、第1実施形態と同様に樹脂描画
法を用いることができる。
【0077】
次に、発光素子3の電極(例えばp電極)と第1電極6又は第2電極7のうち発光素子3が載置されていない電極面とを、第1樹脂部4を跨ぐように第2ワイヤで電気的に接合する。図7では、第2ワイヤと第2電極7が電気的に接続される。この時、第1ワイヤと第2ワイヤの長さは異なっており、図7では第2ワイヤの長さは第1ワイヤの長さよりも長く形成されている。このような工程を経ることで、第1電極6及び第2電極7のどちらか一方の電極面でワイヤボンディング領域が小さい場合であっても、その電極面のワイヤボンディング部を第1樹脂で被覆することで、発光装置の大型化を防ぐことができ小型の発光装置とすることができる。
【0078】
(第3実施形態に係る発光装置の製造方法)
次に、第3実施形態に係る発光装置300の製造方法をパッケージ1が樹脂パッケージである場合を例に挙げて詳細に説明する。第1実施形態に係る発光装置100の製造方法との違いは、第2樹脂部5の形成工程が異なるので異なる点について重点的に説明する。図8は第3実施形態に係る発光装置300を示す概略上面図である。
【0079】
まず、第1実施形態と同様の製造方法で、複数の凹部2と、複数の凹部2の底面に配置された複数の第1電極6及び第2電極7と、凹部2に載置された発光素子3と、素子載置領域Xを取り囲む第1樹脂部4とを備える樹脂成形体付リードフレームを準備する。
【0080】
次に、第1樹脂部4を取り囲むように複数の樹脂枠部を備える第2樹脂部5を樹脂描画法等により形成する。複数の樹脂枠部は凹部2の底面から積層されて形成される。具体的な形成方法としては、図8で示すように第1樹脂部4と接するように1つ目の樹脂枠部51を形成する。そして、1つ目の樹脂枠部51よりも凹部2の側面側であって1つ目の樹脂枠部51と接するように2つ目の樹脂枠部52を形成する。この工程を複数回行うことで第1樹脂部4から凹部2の側面に渡って第1段目の複数の樹脂枠部が形成される。その後第2段目の樹脂枠部を第1段目の上に、同様の工程で形成する。第3段目以降の樹脂枠部も同様に形成される。これにより複数の樹脂枠部が積層されて形成された第2樹脂部5を形成することができる。この時段ごとの樹脂枠部の数、段数等は適宜調整することにより制御することができる。これらの工程は、同じ樹脂量で各樹脂枠部を形成することができるので、樹脂描画を行う装置内でシリンジ等の交換をする必要が無く簡略な工程で製造することが可能となる。
【0081】
また、複数の樹脂枠部を積層させて第2樹脂部5を形成する方法以外にも、各樹脂枠部の樹脂量を調整することで、第1樹脂部4側から凹部2の側面に向かって樹脂枠部の高さを高く形成することで第2樹脂部5を形成してもよい。
【0082】
なお、本開示の実施形態に係る発光装置300の製造方法は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、各実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0083】
上記の各実施形態では、第1電極6及び第2電極7に二酸化ケイ素等の絶縁部材からなる保護層が設けられていてもよい。これにより、第1電極6及び第2電極7に銀メッキが形成されている場合に、大気中の硫黄成分等で銀メッキが変色することを抑制することができる。保護層の成膜方法は、例えばスパッタ等の真空プロセスによって成膜することができる。
【0084】
保護層は発光素子3を載置しワイヤで接続した後で、第1樹脂部4を形成した後かつ第2樹脂部5を形成する前に形成してもよい。それ以外にも、第1樹脂部4を形成する前や
第2樹脂部5を形成した後に凹部2の露出する部分に部分的に形成してもよい。
【0085】
上記の各実施形態では、第1樹脂部4の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、平面視において四角形、多角形、円形、楕円形、及びそれらを組み合わせた形状とすることができる。
【0086】
第1樹脂部4の外周形状が平面視において円形形状である場合、図9Aに示すように、第1樹脂部4の周囲に形成される第2樹脂部5の内形状が円形形状となる。このように第2樹脂部5が角部を有しない形状であれば、発光素子3から出射される光成分の内、角部で減衰される光成分を抑えることができる。したがって、光取出し効率の高い発光装置とすることができる。また、この時の発光素子3の平面視における形状は、第1樹脂部4の円形形状に対応して、例えば6角形等の円形に近い形状であることが好ましい。このような形状の発光素子3を用いることで、同じ面積の素子載置領域Xに対して比較的大きな発光素子3を用いることができるので、光取出し効率を向上させることができる。
【0087】
上記の各実施形態では、図9Bに示すように第1樹脂部4の形状又は素子載置領域Xの形状は平面視において非対称性を有する形状であってもよい。このような形状では、発光素子3を除く素子載置領域Xに形成される蛍光体の個数分布が方向によって異なるので、配光色温度の制御が容易になる。
【0088】
さらに、図9Bで示すように、素子載置領域Xに複数の発光素子3が載置される場合、平面視において上下方向又は左右方向にずれて配置されることが好ましい。このような配置にすることで、発光素子3の側面方向に出る光が隣接する別の発光素子3に吸収されることを抑制することができる。この場合のずれ(一の発光素子3の側面から隣接する発光素子3の同方向の側面までの平面上の距離)は、平面視における発光素子3の長辺側の長さをLとすると、好ましくはL/10より大きく、さらに好ましくはL/3より大きく、特に好ましくはLより大きい。
【0089】
上記の各実施形態では、図9Cで示すように、第1樹脂部4はその幅が異なる形状であってもよい。言い換えると、第1樹脂部4は、その一部に幅が広い領域を有する形状であってもよい。このような形状にすることで、第1樹脂部4に配置される蛍光体の個数分布を変えることができるので、意図する方向の色温度を高くする等の配光制御をすることができる。この時、第1樹脂部4の幅の最大値はその最小値の1.5倍以上であることが好ましい。図9Cでは、第1樹脂部4の幅は、上面視において発光素子3の左右方向に形成される領域で最大値となり、上面視において発光素子3の上下方向に形成される領域で最小値となる。
【0090】
また、図9Dに示すように、発光素子3の側面から第1樹脂部4までの距離は一律ではなく異なっていてもよい。図9Dで示す第1樹脂部4は、上面視においてひし形形状に形成されている。これにより、発光素子3と第2樹脂部5までの距離を任意の方向において長くすることや短くすることができるので、発光装置自身の配光を任意に制御することができる。
【0091】
上記の各実施形態では、パッケージ1の凹部2の底面に素子載置領域Xを取り囲むように溝部が形成されていてもよく、その溝部内に第1樹脂部4が形成されてもよい。これにより、例えば幅が狭い第1樹脂部4を形成する場合であっても、第1樹脂部4とパッケージ1との接合する面積が増えるので第1樹脂部4とパッケージ1との密着性をより向上することができる。また、樹脂描画法により第1樹脂部4を形成する場合は、溝部により第1樹脂部4を形成する位置又は領域を認識できるので、この場合は溝部は位置決めガイドとしての役割も果たす。この時、第1樹脂部4の高さは素子載置領域Xよりも高くなるよ
うに形成される。これにより、第1樹脂部4で第2樹脂部5を堰き止めることができ第2樹脂部5が発光素子3の側面まで達することを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0092】
100、200、300 発光装置
1 パッケージ
2 凹部
3 発光素子
4 第1樹脂部
5 第2樹脂部
6 第1電極
7 第2電極
B 集合基板
F 第1電極のワイヤボンディング領域
G 第2電極のワイヤボンディング領域
X 素子載置領域
P 外側上端縁
Q 内側上端縁
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D